説明

内燃機関の排気加熱装置

【課題】排気通路に配された受け板に向けて燃料を噴射する従来の排気加熱装置は、偏向板に付着した燃料の蒸発が円滑に行われない場合がある。
【解決手段】内燃機関から排気浄化装置11に導かれる排気を加熱するための本発明による排気加熱装置25は、排気浄化装置11よりも上流側の排気通路23aに燃料を供給するための燃料供給弁26と、この燃料供給弁26と対向するように排気通路23aに配されて燃料供給弁26から供給される燃料を受ける燃料受け板27と、この燃料受け板27を所定温度範囲に加熱するための受け板加熱手段28と、燃料供給弁26から供給された燃料を着火させるための発熱部29aを有する着火手段とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置が設けられた内燃機関において、排気浄化装置を活性化および活性状態の維持のために排気の温度を高める排気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関に対する厳しい排気規制に対処するため、内燃機関の始動時に排気浄化装置の活性化を促進させたり、内燃機関の運転中にその活性状態を維持したりすることが必要となっている。このため、排気浄化装置よりも上流側の排気通路に排気加熱装置を組み込んだ内燃機関が特許文献1などで提案されている。この排気加熱装置は、排気中に加熱ガスを生成し、この生成された加熱ガスを下流側の排気浄化装置に供給することにより、排気浄化装置の活性化を促進させたり、活性状態を維持するものである。このため、排気加熱装置は、燃料を排気通路中に供給する燃料供給弁と、この燃料を加熱して着火させることにより、加熱ガスを生成させるグロープラグなどの着火装置とを一般的に有する。また、この特許文献1に開示された従来の排気加熱装置においては、着火装置が燃料供給弁に近接して配されているため、燃料供給弁から排気通路に供給される燃料と排気との混合が充分になされず、着火した燃料が不完全燃焼となる場合がある。このため、燃料供給弁から噴射された燃料を受けてこれを排気通路に飛散させる受け板を排気通路に組み込むことが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された排気加熱装置において、燃料供給弁から噴射された燃料を受けてこれを排気通路に飛散させる受け板を追加した場合、受け板の表面に気化せずに残留した燃料滴がここを通過する排気からの熱を受けて変成する。また、排気に含まれる粒子状物質がこの変成物と混ざり合って受け板に付着し、これらがスラッジとして受け板に次第に堆積する結果、受け板に本来の機能を発揮させることができなくなってしまうという可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、受け板を所望の温度に設定することにより、受け板における燃料蒸発を促進させて燃焼性能を向上した排気加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関から排気浄化装置に導かれる排気を加熱するための排気加熱装置であって、排気浄化装置よりも上流側の排気通路に燃料を供給するための燃料供給弁と、この燃料供給弁と対向するように前記排気通路に配されて当該燃料供給弁から供給される燃料を受ける燃料受け板と、この燃料受け板を所定温度範囲に加熱するための受け板加熱手段と、前記燃料供給弁から供給された燃料を着火させるための発熱部を有する着火手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、排気浄化装置よりも上流側の排気通路に燃料供給弁から燃料が供給され、この燃料供給弁と対向するように排気通路に配された燃料受け板が燃料供給弁から供給された燃料を受ける。燃料受け板は受け板加熱手段によって所定温度範囲に加熱され、これによって燃料の気化が促進される。気化した燃料は着火手段の発熱部によって着火し、燃焼することによって排気通路を流れる排気の温度を上昇させ、加熱された排気が排気浄化装置へと送り込まれる。
【0008】
本発明による排気加熱装置において、受け板加熱手段は燃料受け板に組み込まれて電源に接続するヒーターと、このヒーターと電源とを接続する接続回路の途中に組み込まれたオン/オフスイッチと、このオン/オフスイッチの作動を制御するスイッチ駆動手段と、燃料受け板の温度を検出するための温度センサーとを含み、スイッチ駆動手段は、温度センサーからの検出情報に基づいて燃料受け板が所定温度範囲に収まるようにオン/オフスイッチのオン/オフを制御するものであってよい。
【0009】
所定温度範囲が燃料の沸点±50℃か、あるいは燃料の50%分留点±50℃であってよい。
【0010】
着火手段が受け板加熱手段を兼ね、着火手段の発熱部と燃料受け板の表面との間隔を0.5から2mmまでの範囲に設定することが可能である。この場合、着火手段がグロープラグであってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排気加熱装置によると、排気温が低温であっても燃料受け板にて燃料の気化が促進される結果、着火手段によってこれを確実に着火させることができる。
【0012】
受け板加熱手段が温度センサーからの検出情報に基づいてオン/オフスイッチのオン/オフを制御するスイッチ駆動手段を具え、燃料受け板を所定温度範囲に収めるようにした場合、燃料受け板を效率よく加熱することができる。
【0013】
所定温度範囲が燃料の沸点±50℃または燃料の50%分留点±50℃の場合、燃料を極めて効率よく気化させることができる。
【0014】
着火手段が受け板加熱手段を兼ね、着火手段の発熱部と燃料受け板の表面との間隔を0.5から2mmまでの範囲に設定した場合、受け板加熱手段を着火手段と別に設ける必要がなくなり、その製造コストを下げることができる。特に、グロープラグを着火手段として用いた場合、構造をより簡略化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による排気加熱装置の一実施形態の概念図である。
【図2】図1に示した実施形態の制御ブロック図である。
【図3】図1に示した実施形態における主要部の抽出拡大断面図である。
【図4】図3中のIV−IV矢視に沿った断面図である。
【図5】温度と燃料の蒸発量との関係を模式的に表すグラフである。
【図6】図1に示した実施形態における排気加熱装置の操作の流れを表すフローチャートである。
【図7】グロープラグに対する通電時間と燃料受け板の表面温度との関係を表すグラフである。
【図8】排気温と燃料受け板の表面温度との関係を表すグラフである。
【図9】排気の平均流速と燃料受け板の表面温度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を圧縮点火方式の内燃機関に応用した実施形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、要求される特性に応じてその構成を自由に変更することが可能である。例えば、ガソリンやアルコールまたはLNG(液化天然ガス)などを燃料としてこれを点火プラグにて着火させる火花点火式内燃機関に対しても本発明は有効である。
【0017】
本実施形態におけるエンジンシステムの主要部を模式的に図1に示し、その主要部の制御ブロックを図2に模式的に示す。なお、図1にはエンジン10の吸排気のための動弁機構や消音器の他に、このエンジン10の補機として一般的な排気ターボ式過給機やEGR装置の他にスロットル弁なども省略されている。また、エンジン10の円滑な運転や、後述する排気浄化装置11の再生処理のために必要とされる各種センサー類もその一部が便宜的に省略されている。
【0018】
本実施形態におけるエンジン10は、燃料である軽油を燃料噴射弁12から圧縮状態にある燃焼室10a内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火式の多気筒内燃機関である。しかしながら、本発明の特性上、単気筒の内燃機関であってもかまわない。
【0019】
燃焼室10aにそれぞれ臨む吸気ポート13aおよび排気ポート13bが形成されたシリンダーヘッド13には、吸気ポート13aを開閉する吸気弁14aおよび排気ポート13bを開閉する排気弁14bを含む図示しない動弁機構が組み込まれている。燃焼室10aの上端中央に臨む先の燃料噴射弁12もまた、これら吸気弁14aおよび排気弁14bに挟まれるようにシリンダーヘッド13に組み付けられている。燃料噴射弁12から燃焼室10a内に供給される燃料の量および噴射タイミングは、運転者によるアクセルペダル15の踏み込み量を含む車両の運転状態に基づいてECU(Electronic Control Unit)16により制御される。アクセルペダル15の踏み込み量は、アクセル開度センサー17により検出され、その検出情報がECU16に出力される。
【0020】
ECU16は、このアクセル開度センサー17や後述する各種センサー類などからの情報に基づき、車両の運転状態を判定する運転状態判定部16aと、燃料噴射設定部16bと、燃料噴射弁駆動部16cとを有する。燃料噴射設定部16bは、運転状態判定部16aでの判定結果に基づいて燃料噴射弁12からの燃料の噴射量や噴射時期を設定する。燃料噴射弁駆動部16cは、燃料噴射設定部16bにて設定された量の燃料が設定された時期に燃料噴射弁12から噴射されるように、燃料噴射弁12の作動を制御する。
【0021】
ピストン18aが往復動するシリンダーブロック18には、連接棒18bを介してピストン18aが連結されるクランク軸18cの回転位相、つまりクランク角を検出してこれをECU16に出力するクランク角センサー19が取り付けられている。ECU16の運転状態判定部16aは、このクランク角センサー19からの情報に基づき、クランク軸18cの回転位相やエンジン回転数の他に車両の走行速度などを実時間で把握する。
【0022】
吸気ポート13aに連通するようにシリンダーヘッド13に連結される吸気管20は、吸気ポート13aと共に吸気通路20aを画成する。途中にサージタンク21が形成された吸気管20の上流端側には、大気中に含まれる塵埃などを除去して吸気通路20aに導くためのエアークリーナー22が設けられている。
【0023】
排気ポート13bに連通するようにシリンダーヘッド13に連結される排気管23は、排気ポート13bと共に排気通路23aを画成する。下流端側に取り付けられた図示しない消音器よりも上流側の排気管23の途中には、燃焼室10a内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化するための排気浄化装置11が取り付けられている。本実施形態における排気浄化装置11は、酸化触媒11aと、DPF(Diesel Particulate Filter)11bとを有し、これらは排気通路23aの上流側、つまり排気管23の基端側から順に間隔をあけて設けられている。酸化触媒11aは、主として排気中に含まれる未燃ガスを酸化、つまり燃焼させるためのものであり、DPF11bは、排気中に含まれる粒子状物質を捕集してこれを無害化させるためのものである。酸化触媒11aにはその温度(以下、これを触媒温度と記述する)Tnを検出してこれをECU16に出力する触媒温度センサー24が組み込まれている。ECU16の運転状態判定部16aは、この触媒温度センサー24からの情報に基づき、酸化触媒11aの活性状態を把握する。
【0024】
吸気通路20aから燃焼室10a内に供給される吸気は、燃料噴射弁12から燃焼室10a内に噴射される燃料と混合気を形成する。そして、ピストン18aの圧縮上死点近傍にて自然着火して燃焼し、これによって生成する排気が排気浄化装置11を通って排気管23から大気中に排出される。
【0025】
この排気浄化装置11よりも上流側の排気管23の途中には、排気加熱装置25が配されている。排気加熱装置25は、加熱ガスを生成してこれらを下流側に配された排気浄化装置11に供給し、その活性化および活性状態を維持するためのものである。この排気加熱装置25の部分を図3に抽出拡大して示し、そのIV−IV矢視に沿った断面構造を図4に示す。本実施形態における排気加熱装置25は、排気浄化装置11よりも上流側の排気通路23aに燃料を供給するための燃料供給弁26と、この燃料供給弁26から供給される燃料を受ける燃料受け板27と、受け板加熱手段28と、グロープラグ29とを具えている。
【0026】
燃料供給弁26から排気通路23aに供給される燃料の量は、排気温や酸化触媒11aの温度を含む車両の運転状態に基づいてECU16により制御される。このため、燃料供給弁26よりも上流側の排気通路23aを流れる排気の温度を検出してその検出情報をECU16に出力する排気温センサー30が設けられている。ECU16の燃料供給量設定部16dは、この排気温センサー30および先の触媒温度センサー24からの情報を介した運転状態判定部16aでの判定結果に基づいて燃料供給弁26からの燃料の供給量を設定する。ECU16の燃料供給弁駆動部16eは、燃料供給量設定部16dにて設定された量の燃料が燃料供給弁26から排気通路23aに供給されるように、燃料供給弁26の作動を制御する。
【0027】
燃料を効率よく気化させてグロープラグ29による着火性を高めるための燃料受け板27は、ホルダー25aを介して排気管23に取り付けられた燃料供給弁26と対向するように排気通路23aに配されている。
【0028】
この燃料受け板27を所定温度範囲に加熱するための受け板加熱手段28は、車載の電源31に接続するヒーター28aと、オン/オフスイッチ28bと、ECU16のヒーター駆動部16fと、受け板温度センサー32とを含む。第1のオン/オフスイッチ28b(以下、便宜的に第1のオン/オフスイッチと記述する)は、燃料受け板27に組み込まれたヒーター28aと電源31とを接続する接続回路25bの途中に組み込まれている。また、燃料受け板27に取り付けられた受け板温度センサー32は、燃料受け板27の温度TVを検出してこれをECU16に出力する。本発明におけるスイッチ駆動手段としてのECU16のヒーター駆動部16fは、受け板温度センサー32からの検出情報に基づいて燃料受け板27の温度が所定温度範囲に収まるように、第1のオン/オフスイッチ28bのオン/オフを制御する。
【0029】
ここで燃料の沸騰曲線を模式的に図5に示す。周知のように、燃料の蒸発量は燃料の沸点TB近傍で最大となる。より厳密には、燃料の温度が上昇し、液体の状態から核沸騰状態となる温度領域になるに連れてその蒸発量が増大し、燃料の沸点TBを越えて熱流束が最大となる極大熱流束点TMにてその蒸発量が最大となる。つまり、極大熱流束点TMよりも温度が低すぎても高すぎても蒸発量が低下する。従って、燃料受け板27の温度を燃料の沸点TBに応じた核沸騰領域となるように制御することが最も効率のよい加熱方法であり、本実施形態ではこの所定温度範囲を便宜的に燃料の沸点TB±50℃に設定している。しかしながら、この所定温度範囲を燃料の50%分留点±50℃に設定することも有効である。
【0030】
本発明における着火手段としてのグロープラグ29は、燃料供給弁26から排気通路23aに供給された燃料を着火させるための発熱部29aを有する。このグロープラグ2927は、その発熱部29aが燃料供給弁26から噴射される燃料の噴射領域に臨むように、燃料受け板27の表面に近接した状態で先の燃料受け板27と共に排気管23にホルダー25cを介して固定されている。排気通路23aを横切るように配されたグロープラグ29は、先の接続回路25bおよび第2のオン/オフスイッチ33を介して電源31に接続している。また、この第2のオン/オフスイッチ33の開閉動作は、予め設定されたプログラムに従ってECU16のグロープラグ駆動部16gにより制御される。
【0031】
従って、燃料供給弁26から燃料が排気通路23aの燃料受け板27に向けて供給され、ヒーター28aによって加熱状態にある燃料受け板27の表面に達した燃料がここで効率よく気化する。このようにして気化状態となった燃料は、排気通路23aを流れる排気の流れに乗ってグロープラグ29の発熱部29aの方へと導かれ、発熱部29aによって加熱されて着火し、これによって温度の上昇した排気が排気浄化装置11へと導かれる。
【0032】
このような本実施形態における排気加熱装置25の制御手順の一例を図6のフローチャートに示す。まずS11のステップにてエンジン回転速度Neがアイドル回転速度Ni以上であるか否かを判定する。ここでエンジン回転速度Neがアイドル回転速度Ni以上である、すなわち排気通路23aを排気が流れていると判断した場合には、S12のステップに移行して今度は触媒温度TCが触媒加熱開始温度TL以下であるか否かを判定する。なお、この触媒加熱開始温度TLは、酸化触媒11aの活性化が損なわれる可能性のある最低温度である。S12のステップにて触媒温度TCが触媒加熱開始温度TL以下である、すなわち排気を加熱して酸化触媒11aの活性化を行う必要があると判断した場合には、S13のステップに移行する。そして、触媒温度TCと触媒加熱開始温度TLとの差に基づいて燃料供給量を算出すると共に第2のオン/オフスイッチ33をオン状態に切り換えてグロープラグ29の発熱部29aを加熱する。次いでS14のステップにて燃料受け板27を加熱するためのヒーター28aの通電状態を示すHフラグがセットされているか否かを判定する。最初はHフラグがセットされていないので、S15のステップに移行して燃料受け板27の温度TVが予め設定した閾温度TRL、すなわち(TB−50)℃未満であるか否かを判定する。ここで、燃料受け板27の温度TVが閾温度TRL未満である、すなわち燃料受け板27を加熱する必要があると判断した場合には、S16のステップに移行する。そして、第1のオン/オフスイッチ28bをオン状態に切り換え、ヒーター28aに対する通電を行って燃料受け板27を加熱する。さらにS17のステップにてHフラグをセットした後、S11のステップに戻る。
【0033】
先のS14のステップにてHフラグがセットされている、すなわちヒーター28aへの通電により燃料受け板27を加熱していると判断した場合には、S18のステップに移行して燃料受け板27の温度TVが閾温度TRL以上であるか否かを判定する。ここで、燃料受け板27の温度TVが閾温度TRL以上である、すなわち燃料の蒸発を効率よく行うことができると判断した場合には、S19のステップに移行する。そして、燃料受け板27の温度TVが予め設定した閾温度TRH、すなわち(TB+50)℃以下であるか否かを判定する。ここで、燃料受け板27の温度TVが閾温度TRH以下である、すなわち燃料受け板27を必要以上に加熱していないと判断した場合には、S20のステップに移行して燃料供給弁26から排気通路23aへの燃料の供給を行う。そして、S21のステップにて燃料供給が行われていることを示すFフラグをセットし、S22のステップにて触媒温度TCが触媒加熱停止温度THよりも高いか否かを判定する。なお、この触媒加熱停止温度THは、酸化触媒11aが熱損傷を受ける可能性がある最低温度である。ここで触媒温度TCが触媒加熱停止温度THよりも高い、すなわち酸化触媒11aが熱損傷を受ける可能性があると判断した場合には、S23のステップに移行する。そして、燃料供給弁26からの燃料の供給を停止すると共に第1および第2のオン/オフスイッチ28b,33をオフ状態に切り換え、グロープラグ29の発熱部29aおよび燃料受け板27の加熱を停止する。さらに、S24のステップに移行してHフラグおよびFフラグをそれぞれリセットし、再びS11のステップに戻る。
【0034】
また、先のS19のステップにて燃料受け板27の温度TVが閾温度TRHを越えている、すなわち燃料受け板27を加熱し続けても燃料の蒸発効率が悪くなると判断した場合には、S25のステップに移行する。そして、第1のオン/オフスイッチ28bをオフ状態に切り換え、燃料受け板27の加熱を停止し、S26のステップにてHフラグをリセットした後、S20のステップに移行して排気通路23aへの燃料の供給を行う。
【0035】
このように、TRL≦TV≦TRHとなるようにヒーター28aに対する通電のオン/オフを制御することにより、燃料の蒸発効率が最も良好となる燃料受け板27の温度を最小のエネルギー消費にて実現することができる。
【0036】
一方、S11のステップにてエンジン回転速度Neがアイドル回転速度Ni未満である、すなわち充分な量の排気が排気通路23a22aを流れていないと判断した場合には、S27のステップに移行する。ここで、触媒温度TCが触媒加熱停止温度THよりも高いか否かを判定し、触媒温度TCが触媒加熱停止温度THよりも高い、すなわち酸化触媒11aが熱損傷を受ける可能性があると判断した場合には、S28のステップに移行する。S28のステップではFフラグがセットされているか否かを判定し、ここでFフラグがセットされている、すなわち燃料を排気通路23aに供給中であると判断した場合には、先のS23のステップに移行する。そして、燃料供給弁26からの燃料の供給を停止すると共にグロープラグ29およびヒーター28aに対する通電を停止する。
【0037】
また、先のS28のステップにてFフラグがセットされていない、すなわち燃料供給弁26から排気通路23aに燃料の供給が行われていないと判断した場合には、S29のステップに移行して今度はHフラグがセットされているか否かをさらに判定する。ここでHフラグがセットされている、すなわち燃料受け板27を加熱中であると判断した場合には、S30のステップに移行してヒーター28aを非通電状態に切り換え、S31のステップにてHフラグをリセットした後、S11のステップに戻る。
【0038】
さらに、S27のステップにて触媒温度TCが触媒加熱停止温度TH以下である、すなわち酸化触媒11aは活性状態の可能性があると判断した場合には、何もせずにS11のステップに戻る。同様に、S29のステップにてHフラグがリセットされている、すなわちヒーター28aが非通電状態であると判断した場合にも、何もせずにS11のステップに戻る。
【0039】
このように、排気通路23aを所定量以上の排気が流れている状態において、酸化触媒11aの温度が触媒加熱開始温度TL未満の場合、燃料供給弁26から排気通路23aに燃料が供給される。この結果、エンジン10の運転状態の如何にかかわらず、酸化触媒11aの活性状態を維持することができる。
【0040】
上述した実施形態では、燃料受け板27にヒーター28aを組み込んでこれを加熱するようにしたが、グロープラグ29を本発明の受け板加熱手段として兼用させることも可能である。より具体的には、グロープラグ29の発熱部29aを燃料受け板27の表面の中央部に近接状態に配置し、発熱部29aからの輻射熱によって燃料受け板27を加熱する。この場合、燃料受け板27の表面温度を所定温度範囲、例えば燃料の沸点TB±50℃に維持するため、燃料受け板27の表面と発熱部29aとの間隔を0.5〜2mm程度に設定することが有効である。これによって、着火手段としてのグロープラグ29を受け板加熱手段としても機能させることが可能となり、燃料受け板27に組み込まれるヒーター28aを省略することができる。
【0041】
上述のように、グロープラグ29を本発明の受け板加熱手段として兼用させる場合、グロープラグ29に対する通電条件が特定の運転条件となっていることから、先の実施形態で用いた受け板温度センサー32をさらに省略することも可能である。すなわち、グロープラグ29に対する通電時間と排気温が100℃の場合における燃料受け板27の表面温度との関係を図7に示し、排気温と燃料受け板27の表面温度との関係を図8に示し、排気の平均流速と燃料受け板27の表面温度との関係を図9に示す。これらのグラフから明らかなように、燃料受け板27の表面温度を例えば200〜300℃の間に保つためには、例えばグロープラグ29の通電開始から60秒経過した後、かつ排気温が75〜200℃かつ排気の平均流速が毎秒0.5〜3mの範囲にある場合、燃料供給弁26から排気通路23aに燃料の供給を行えばよいことが理解されよう。ただし、酸化触媒11aの活性化処理のために燃料供給弁26から排気通路23aに燃料の供給が行われるような排気温および排気の平均流速は、一般的に75〜150℃および毎秒1.5〜3mの範囲にある。従って、酸化触媒11aの活性化処理のために燃料供給弁26から排気通路23aに燃料の供給を行う場合、グロープラグ29の通電開始から所定時間後(例えば60秒後)に燃料の供給を開始するだけで、燃料受け板27の表面温度を目的とする温度に自ずと維持することが可能となる。
【0042】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0043】
10 エンジン
10a 燃焼室
11 排気浄化装置
11a 酸化触媒
11b DPF
12 燃料噴射弁
13 シリンダーヘッド
13a 吸気ポート
13b 排気ポート
14a 吸気弁
14b 排気弁
15 アクセルペダル
16 ECU
16a 運転状態判定部
16b 燃料噴射設定部
16c 燃料噴射弁駆動部
16d 燃料供給量設定部
16e 燃料供給弁駆動部
16f ヒーター駆動部
16g グロープラグ駆動部
17 アクセル開度センサー
18 シリンダーブロック
18a ピストン
18b 連接棒
18c クランク軸
19 クランク角センサー
20 吸気管
20a 吸気通路
21 サージタンク
22 エアークリーナー
23 排気管
23a 排気通路
24 触媒温度センサー
25 排気加熱装置
25a ホルダー
25b 接続回路
25c ホルダー
26 燃料供給弁
27 燃料受け板
28 受け板加熱手段
28a ヒーター
28b 第1のオン/オフスイッチ
29 グロープラグ
29a 発熱部
30 排気温センサー
31 電源
32 受け板温度センサー
33 第2のオン/オフスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気浄化装置に導かれる排気を加熱するための排気加熱装置であって、
排気浄化装置よりも上流側の排気通路に燃料を供給するための燃料供給弁と、
この燃料供給弁と対向するように前記排気通路に配されて当該燃料供給弁から供給される燃料を受ける燃料受け板と、
この燃料受け板を所定温度範囲に加熱するための受け板加熱手段と、
前記燃料供給弁から供給された燃料を着火させるための発熱部を有する着火手段と
を具えたことを特徴とする排気加熱装置。
【請求項2】
前記受け板加熱手段は、前記燃料受け板に組み込まれて電源に接続するヒーターと、このヒーターと電源とを接続する接続回路の途中に組み込まれたオン/オフスイッチと、このオン/オフスイッチの作動を制御するスイッチ駆動手段とを含み、前記スイッチ駆動手段は、前記燃料受け板が所定温度範囲に収まるように前記オン/オフスイッチのオン/オフを制御することを特徴とする請求項1に記載の排気加熱装置。
【請求項3】
前記所定温度範囲が燃料の沸点±50℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排気加熱装置。
【請求項4】
前記所定温度範囲が燃料の50%分留点±50℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排気加熱装置。
【請求項5】
前記着火手段が前記受け板加熱手段を兼ねており、前記着火手段の発熱部と前記燃料受け板の表面との間隔が0.5から2mmまでの範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の排気加熱装置。
【請求項6】
前記着火手段がグロープラグであることを特徴とする請求項5に記載の排気加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−50046(P2013−50046A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187321(P2011−187321)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】