説明

内燃機関の排気還流装置

【課題】EGR装置内に凝縮水が発生することを防止するとともにEGRガスを所望の流量にできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】排気通路12と吸気通路11とを連通するEGR通路34に設けられEGRガスを冷却するEGRクーラ31と、EGRクーラ31よりも排気通路12側に設けられ、開状態と閉状態との間で駆動されるとともに、閉状態の場合にEGRガスがEGR通路34に流入するのを遮断する切替えバルブ35と、EGRクーラ31よりも吸気通路11側に設けられ、EGRガスを吸気通路11に流入する量を調整するEGRバルブ32と、を備え、切替えバルブ35は、EGRバルブ32が閉状態から開状態に移行する条件が成立する前に閉状態から開状態への移行条件が成立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気還流装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の燃料消費量の低減を図るために、燃焼室において燃焼したガスをEGRガスとして吸気通路に還流させる排気還流装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された排気還流装置は、排気通路を流れる排気の一部を吸気通路に還流させるEGR通路と、このEGR通路に設けられ、吸気通路に還流させるEGRガスの流量を調整するEGRバルブと、EGRバルブより排気通路側に設けられ、還流させるEGRガスを機関冷却水との熱交換により冷却するEGRクーラとを有している。EGRクーラにはウォーターポンプから吐き出される機関冷却水の一部が供給され、EGRクーラの内部を流れるEGRガスと機関冷却水との熱交換によりEGRガスが冷却される。
【0004】
また、特許文献1に開示された排気還流装置を搭載した内燃機関にあっては、排気通路内の排気の脈動により、EGRバルブが全閉となっているにもかかわらずEGRクーラにEGRガスが流入して、EGR通路内等で凝縮水が発生し、この凝縮水が各部材の腐食を引き起こす原因になっていた。
【0005】
このため、特許文献1に開示された排気還流装置の他に、EGRクーラよりも排気通路側に設けられるとともに、排気通路からEGR通路に供給されるEGRガスを遮断する切替え弁をさらに備えた排気還流装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この特許文献2に開示された排気還流装置は、吸気通路と排気通路とを接続し内燃機関からの排気の一部を吸気通路に還流させるEGR通路と、EGR通路の途中でEGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRクーラにてEGRガスが冷却されることにより発生する凝縮水がEGRクーラに滞留するか否かを判定する判定手段と、判定手段によりEGRクーラに凝縮水が滞留すると判定され、かつEGRガスが吸気通路に還流されないときにEGRクーラへのEGRガスの流入を抑制する切替え弁と、を備える。
【0007】
この特許文献2に開示された排気還流装置は、EGRバルブが全閉となっているときに切替え弁が閉弁されるので、EGRガスがEGRクーラへ流入することを抑制して、EGRクーラ内における凝縮水の滞留を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−228530号公報
【特許文献2】特開2007−303381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の排気還流装置は、排気を還流させるEGR制御の開始条件が成立すると、EGRバルブと切替え弁とが同時に開弁するようになっている。そのため、EGR制御を開始するためにEGRバルブが開状態に移行した時点では、EGR通路に排気ガスが流入しておらず、EGRガスの吸気通路への導入遅れが発生する可能性があった。
【0010】
また、EGR制御の終了条件が成立すると、EGRバルブと切替え弁とが同時に閉弁するようになっている。そのため、EGRバルブが閉状態に近づくと、切替え弁も閉状態に近づいているため、本来必要とされる吸気通路へのEGRガスの流量を確保できない可能性があった。
【0011】
したがって、いずれの場合においても、切替え弁の開閉タイミングが最適化されていないため、EGRガスが所望の流量にならない状況が生じ、結果として、エンジンにおいて所望の燃焼特性が得られず燃費特性が低下する可能性があった。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、EGR装置内に凝縮水が発生することを防止するとともにEGRガスを所望の流量にできる内燃機関の排気還流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、上記目的達成のため、内燃機関から排気通路に排出された排気の一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる内燃機関の排気還流装置であって、前記排気通路と前記吸気通路とを連通するEGR通路に設けられ前記EGRガスを冷却するEGRクーラと、前記EGRクーラよりも前記排気通路側に設けられ、開状態と閉状態との間で駆動されるとともに、前記閉状態の場合に前記EGRガスが前記EGR通路に流入するのを遮断する第1の弁と、前記EGRクーラよりも前記吸気通路側に設けられ、前記EGRガスを前記吸気通路に流入する量を調整する第2の弁と、を備え、前記第1の弁は、前記第2の弁が閉状態から開状態に移行する条件が成立する前に閉状態から開状態への移行条件が成立することを特徴とする。
【0014】
この構成により、第2の弁が閉状態から開状態に移行する際には、第1の弁が閉状態から開状態に移行を開始しているので、EGRガスの吸気通路への導入遅れを防止することができる。したがって、第2の弁による排気還流量制御の開始時には、確実にEGRガスを内燃機関に供給できるので、燃費を向上することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、前記第1の弁は、前記第2の弁が開状態から閉状態に移行する条件が成立したことを条件として、開状態から閉状態への移行条件が成立することを特徴とする。
【0016】
この構成により、第1の弁が第2の弁よりも早く閉状態に移行することを防止できるので、所望のEGRガス流量を確保することが可能となり、燃費を向上することができる。
【0017】
また、本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、前記第1の弁は、前記内燃機関の冷却水の温度に応じて開度が変化する感温弁により構成されることを特徴とする。
【0018】
この構成により、第1の弁は、内燃機関の運転状況に応じた開度をとることが可能となる。したがって、例えば、冷却水温がEGRガスの露点温度よりも低い場合に閉状態となるよう第1の弁を構成した場合には、第1の弁は内燃機関の暖機中に閉状態となるので、EGR通路を形成するEGR管やEGRクーラが露点温度よりも低く、排気ガスが導入されると凝縮水が発生する状況下においては、EGR通路に排気ガスが導入されることを防止することができる。一方、内燃機関の暖機終了後には開状態となるので、EGRガスの吸気通路への導入遅れを防止できる。
【0019】
また、本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、前記第1の弁は、前記冷却水の温度が前記EGRガスの露点温度以上であることを前記閉状態から開状態への移行条件とすることを特徴とする。
【0020】
この構成により、第1の弁は、冷却水温が低い場合には閉状態をとるため、排気脈動により排気ガスがEGR通路に入り込み、EGR装置内に凝縮水を発生させることを抑制できる。また、冷却水温が高く凝縮水の発生する可能性が低下している場合には、第1の弁は開状態に移行するので、第2の弁による排気還流量制御に影響を与えることを防止できる。
【0021】
また、本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、前記第1の弁は、前記冷却水の温度が前記第2の弁により前記吸気通路に流入する前記EGRガスの量の調整を開始する温度に到達する前に全開状態に移行することを特徴とする。
【0022】
この構成により、排気還流量制御の実行が開始される前に第1の弁を全開状態に移行できるので、排気還流量制御が開始された際に所望の排気還流量を実現することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、前記第1の弁は、前記EGR通路に設置される弁体と、前記内燃機関の冷却水を流入する冷却水路と、前記冷却水路に設置され前記冷却水の温度に応じて変形する感熱変形部材と、前記弁体と前記感熱変形部材とを接続する連結部材と、を備え、前記第1の弁は、前記弁体が前記感熱変形部材の変形に応じて駆動されることにより閉状態と開状態との間で移行することを特徴とする。
【0024】
この構成により、第1の弁が弁体、感熱変形部材および連結部材のいずれをも備えるので、排気還流装置を小型化することができる。
【0025】
また、本発明に係る内燃機関の排気還流装置は、前記内燃機関の冷却水を流入する冷却水路が形成されたアクチュエータを備え、前記第1の弁は、前記EGR通路に設置される弁体を備え、前記アクチュエータは、前記冷却水路に設置され前記冷却水の温度に応じて変形する感熱変形部材と、前記弁体と前記感熱変形部材とを接続する連結部材と、を備え、前記第1の弁は、前記弁体が前記感熱変形部材の変形に応じて駆動することにより閉状態と開状態との間で移行することを特徴とする。
【0026】
この構成により、アクチュエータが第1の弁と隔離されているので、第1の弁が高温の排気ガスに曝される位置に配置される場合においても、アクチュエータおよびアクチュエータを通過する冷却水が過熱されることを防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、EGR装置内に凝縮水が発生することを防止するとともにEGRガスを所望の流量にできる内燃機関の排気還流装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の排気還流装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る排気還流装置およびその周辺の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る冷却水回路の構成を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る切替えバルブのバイメタル周辺の平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る切替えバルブのバイメタル周辺の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る切替えバルブの弁体周辺の平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る排気還流装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の排気還流装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、本発明に係る排気還流装置を4気筒のガソリンエンジンを搭載した車両に適用する場合について説明する。
【0030】
まず、構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、エンジン1は、シリンダヘッド10と、不図示のシリンダブロックを備えており、シリンダヘッド10およびシリンダブロックは、4つの気筒5を形成している。これらの気筒5には、ピストンにより燃焼室7がそれぞれ画成されている。また、シリンダヘッド10には、外気を気筒5に導入するための吸気ポートおよび排気ガスを気筒5から排出するための排気ポートが形成されている。
【0032】
各吸気ポートには、燃料を噴射するためのインジェクタが設置されており、噴射された燃料は空気と混ざり混合気として燃焼室7に導入される。シリンダヘッド10には、各燃焼室7に導入された混合気に点火するための点火プラグ15が配置されており、点火プラグ15は後述するECU(Electronic Control Unit)80によって点火時期を制御されるようになっている。
【0033】
また、インジェクタは電磁駆動式の開閉弁により構成されており、ECU80により所定電圧が印加されると、開弁して各気筒5の吸気ポートに燃料を噴射するようになっている。
【0034】
エンジン1は、さらに、シリンダヘッド10に接続される吸気マニホールド11aを有しており、この吸気マニホールド11aは吸気通路11の一部を構成している。吸気通路11には、上流側から順に図示しないエアクリーナやエアフロメータ22が設けられている。吸気通路11には、さらに、吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ18が吸気マニホールド11aの上流側に設けられている。
【0035】
スロットルバルブ18は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁により構成されており、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整するようになっている。ECU80は、スロットルバルブ18に設置されたスロットルモータを制御してスロットルバルブ18の開度を調節するようになっている。
【0036】
エンジン1は、さらに、シリンダヘッド10に接続される排気マニホールド12aを有しており、この排気マニホールド12aは排気通路12の一部を構成している。排気通路12には、例えば三元触媒により構成されている触媒装置13が配置されている。
【0037】
エンジン1は、さらに、排気還流装置(以下、EGR装置という)30を備えている。EGR装置30は、排気通路12を流れる排気ガスの一部を吸気通路11に還流させて、各気筒5の燃焼室7へEGRガスとして供給するようになっている。これにより、ポンピングロスが低減し、燃費が向上するようになっている。
【0038】
EGR装置30は、吸気マニホールド11aと排気管16とを接続し、内部にEGR通路34が形成されたEGR管33を備えている。このEGR管33には、EGRガス流れの上流側から順に、EGR通路34を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ31およびEGRバルブ32が設けられている。
【0039】
EGRバルブ32は、その内部に設けられたリニアソレノイド32aと、基端部分がリニアソレノイド32aに挿通された状態で配設され、その先端部分にEGR通路34を開閉する弁体32bが設けられたシャフト32cとを備えている。そして、リニアソレノイド32aを通電制御することにより、その電磁力と図示しないスプリングの付勢力によりシャフト32cがその軸方向に往復駆動され、弁体32bによりEGR通路34が開閉される。
【0040】
本実施の形態におけるEGRバルブ32は、リニアソレノイド32aが通電された状態で開状態となり、リニアソレノイド32aが通電されていない状態で閉状態となるノーマリークローズ型のバルブにより構成されている。ここで、本実施の形態に係るEGRバルブ32は、本発明に係る第2の弁を構成する。
【0041】
ECU80は、EGRバルブ32の開度を調整することによって、排気通路12と吸気通路11とを連通し排気マニホールド12aから吸気マニホールド11aに導入されるEGRガス量、すなわち排気還流量を調整するようになっている。
【0042】
EGRクーラ31は、筐体内におけるEGRガスの通路の外周部に冷却水配管が張り巡らされた構成を有している。EGR管33から供給されたEGRガスは、EGRガスの通路を通過する際に冷却水配管を流れる冷却水との熱交換により冷却され、下流側へ導かれるようになっている。
【0043】
本実施の形態に係るEGR装置30は、EGRクーラ31の上流側に切替えバルブ35を備えている。切替えバルブ35は、後述するように、エンジン1の冷却水温に応じて開閉するようになっている。ここで、本実施の形態に係る切替えバルブ35は、本発明に係る第1の弁を構成する。
【0044】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るエンジン1を搭載した車両は、冷却水温センサ21、エアフロメータ22、吸気温センサ23、圧力センサ24、A/Fセンサ25、排気温センサ26、スロットル開度センサ27、アクセル開度センサ29、バルブ開度センサ36、エンジン回転数センサ37、車速センサ38および切替えバルブ開度センサ39を備えている。これらのセンサは、検出結果を表す信号をECU80にそれぞれ出力するようになっている。
【0045】
冷却水温センサ21は、エンジン1のシリンダブロックに形成されたウォータージャケットに配置されており、エンジン1の冷却水温THWに応じた検出信号をECU80に出力する。エアフロメータ22は、吸気通路11のスロットルバルブ18の上流側に配置され、吸入空気量に応じた検出信号をECU80に出力する。
【0046】
吸気温センサ23は、吸気マニホールド11aに配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号をECU80に出力する。圧力センサ24は、吸気マニホールド11aに配置され、吸気圧に応じた検出信号をECU80に出力する。
【0047】
A/Fセンサ25は、触媒装置13の上流側の排気通路12に配置されており、排気ガス中の酸素濃度(排気A/F)に応じた検出信号をECU80に出力する。また、排気温センサ26は、触媒装置13の下流側の排気通路12に配置されており、排気温度に応じた検出信号をECU80に出力する。
【0048】
スロットル開度センサ27は、スロットルバルブ18の開度に応じた検出信号をECU80に出力する。アクセル開度センサ29は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号をECU80に出力する。
【0049】
エンジン回転数センサ37は、エンジン1のクランクシャフトの回転数を検出し、エンジン回転数としてECU80に出力する。車速センサ38は、車輪の回転数を検出し、車速を表す信号としてECU80に出力する。
【0050】
バルブ開度センサ36は、直流駆動される抵抗体と、抵抗体の表面を摺動するブラシとを有している。ブラシは、EGRバルブ32のシャフト32cと一体に作動し得るように構成されている。そして、シャフト32cのリフト位置、すなわちEGRバルブ32の開度に応じた電圧信号がブラシに現れる。したがって、ECU80は、バルブ開度センサ36のブラシに現れる信号を取得することにより、EGRバルブ32の開度を検出することができる。切替えバルブ開度センサ39は、切替えバルブ35の開度に応じた信号をECU80に出力する。
【0051】
ECU80は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83およびバックアップメモリ84などを備えている。
【0052】
ROM82は、排気還流量制御を実施するためのプログラムおよび気筒5に対する燃料噴射量を制御するための制御プログラムを含む各種制御プログラムや、これらの各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されている。CPU81は、ROM82に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行するようになっている。また、RAM83は、CPU81による演算結果や、上述した各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するようになっている。バックアップメモリ84は、不揮発性のメモリにより構成されており、例えばエンジン1の停止時に保存すべきデータ等を記憶するようになっている。
【0053】
CPU81、ROM82、RAM83およびバックアップメモリ84は、バス87を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース85および出力インターフェース86と接続されている。
【0054】
入力インターフェース85には、冷却水温センサ21、エアフロメータ22、吸気温センサ23、圧力センサ24、A/Fセンサ25、排気温センサ26、スロットル開度センサ27、アクセル開度センサ29、バルブ開度センサ36、エンジン回転数センサ37、車速センサ38および切替えバルブ開度センサ39が接続されている。なお、車両がECU80以外の他のECUを搭載し、これらのセンサのうち少なくとも一部から出力された信号が、当該他のECUを介してECU80に入力されるようにしてもよい。
【0055】
出力インターフェース86は、点火プラグ15、スロットルバルブ18、EGRバルブ32や、インジェクタなどに接続されている。
【0056】
そして、ECU80は、上記した各種センサの出力に基づいて、排気還流量制御、燃料噴射量制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0057】
図3は、本実施の形態に係るEGR装置30に冷却水を供給する冷却水回路40を示す模式図である。冷却水回路40は、ウォーターポンプ44から吐出した冷却水を、エンジン1、ヒータコア45、切替えバルブ35、EGRクーラ31、EGRバルブ32およびスロットルバルブ18の順に供給し、ウォーターポンプ44に戻す第1経路47と、エンジン1を構成するシリンダヘッド10の下流に設置されている図示しないサーモスタットにより第1経路47から分岐され、エンジン1から流出した冷却水の一部をラジエータ46に供給し、ウォーターポンプ44に戻す第2経路48とを有している。
【0058】
第1経路47を還流する冷却水は、エンジン1を構成するシリンダブロックおよびシリンダヘッド10との熱交換により加熱されると、ヒータコア45との熱交換により冷却され、その後EGRクーラ31に供給される。
【0059】
一方、第2経路48を還流する冷却水は、シリンダヘッド10の下流に設置されているサーモスタットにより第1経路47から分岐されると、ラジエータ46に供給され外気との熱交換により冷却される。また、サーモスタットは、暖機中や寒冷地域の走行に起因してエンジン1の冷却水温THWが通常走行時の冷却水温と比較して低温となっている場合には、第2経路48を遮断するようになっている。また、サーモスタットは、冷却水温THWが上昇するにしたがって、第2経路48を徐々に開放し、第1経路47を還流する冷却水量に対する第2経路48を還流する冷却水量の割合を増加するようになっている。
【0060】
以下、本発明の実施の形態に係るEGR装置30のより特徴的な構成について説明する。
【0061】
切替えバルブ35は、冷却水回路40の第1経路47の一部を構成する冷却水配管41が内部に配設されている。この冷却水配管41にはバイメタル52が設置されており、エンジン1の冷却水温THWに応じて変形するようになっている。ここで、本実施の形態に係る冷却水配管41およびバイメタル52は、本発明に係る冷却水路および感熱変形部材をそれぞれ構成する。
【0062】
また、切替えバルブ35は、EGR通路34に設置される弁体51と、バイメタル52と弁体51とを連結する連結部材53とを有している。弁体51は、バイメタル52の変形に応じて、排気ガスがEGR通路34に流入するのを遮断する遮断位置と排気ガスがEGR通路34へ流入することを可能とする開放位置との間で回動するようになっている。
【0063】
つまり、弁体51が遮断位置に移動した場合に、切替えバルブ35は閉状態となり、弁体51が開放位置に移動した場合に切替えバルブ35は開状態となる。
【0064】
本実施の形態においては、切替えバルブ35は、冷却水温THWが所定値X1以下の場合には閉状態となる一方、冷却水温THWが所定値X1を超えた場合には冷却水温THWに応じた開度をとるようになっている。
【0065】
所定値X1としては、想定される外気温および湿度の範囲において露点温度が最も高くなった場合においても、露点温度以下であるならば切替えバルブ35が閉状態をとるように設定される。本実施の形態においては、所定値X1は60℃に設定されている。これにより、切替えバルブ35は、EGR管33やEGRクーラ31などが露点温度以下となるエンジン1の暖機中において閉状態をとるようになっている。
【0066】
つまり、切替えバルブ35は、エンジン1の暖機中に排気ガスが排気脈動によりEGR装置30に流入し、EGR管33やEGRクーラ31により露点温度以下に冷やされ凝縮水が発生することを防止するようになっている。
【0067】
また、切替えバルブ35は、冷却水温THWがさらに上昇し、所定値X1よりも高く、かつ、所定値X2より低い所定の温度に達すると全開状態となるよう構成されている。この所定値X2は、ECU80がEGRバルブ32を閉状態から開状態に移行し排気還流量制御を開始する温度を表しており、本実施の形態においては、所定値X2は70℃に設定されている。
【0068】
なお、排気還流量は、EGR装置30における下流側、すなわち吸気通路11になるべく近い位置で調整すると流量制御の精度が向上する。そのため、排気還流量の調整はEGRバルブ32により行う一方、切替えバルブ35は、全閉状態と全開状態の2つの状態をとればよい。したがって、切替えバルブ35は、冷却水温THWの上昇により閉状態から開状態への移行を開始すると、なるべく低い温度で全開状態に移行するようバイメタル52などが構成されていると好適である。
【0069】
次に、図4〜図6を参照して、切替えバルブ35の機構について説明する。
【0070】
図4に示すように、バイメタル52は渦巻き状に形成されており、渦巻きの外側に配設される金属の材質は、渦巻きの内側に配設される金属の熱膨張率よりも低いものが採用されている。したがって、バイメタル52を通過する冷却水温THWが高くなるほど、バイメタル52の渦巻きは広がるように変形する。
【0071】
バイメタル52の基端部52bは、冷却水配管41の内壁42に固定されている。また、バイメタル52は、渦巻きの中心軸に直交する側面が、冷却水の流れ方向に沿うように配設されている。そして、バイメタル52は、基端部52bを固定端として渦巻きの中心軸方向に伸縮する。具体的には、図4に示すように、このバイメタル52は、冷却水配管41を流通する冷却水の冷却水温THWが高くなるときほど、矢印Xの方向への変形量が大きくなり、渦巻きの中心を巻き込む量(巻き込み量)が少なくなる。
【0072】
一方、バイメタル52の先端部52aには、バイメタル52の伸縮、すなわち渦巻きの中心の巻き込み量の変化に伴い回動する出力用回動軸54が、渦巻きの中心軸方向に沿って接続されている。図5に示すように、この出力用回動軸54は、冷却水配管41の壁部に形成された貫通孔51Aを貫通している。そして、出力用回動軸54において冷却水配管41から突出した先端部には、この出力用回動軸54の回動に同期して回動するバイメタル側連結部材53aの一端が接続されている。バイメタル側連結部材53aは、後述する連結部材53の一部を構成する。また、冷却水配管41の壁部に形成された貫通孔51Aには、冷却水の漏出を抑制する図示しないシールが設けられている。
【0073】
冷却水配管41の外周には、バイメタル側連結部材53aの移動を制限するよう、出力用回動軸54に略平行となる方向に突出した図示しない2つの制限部材が形成されている。バイメタル側連結部材53aは、冷却水温THWが所定値X1以下の場合には、図4に2点鎖線で示す位置で一方の制限部材に当接することにより移動が制限され、冷却水温THWが上昇するにつれて、矢印Aの方向に移動する。そして、冷却水温THWがさらに上昇すると、もう一方の制限部材に当接することにより図4に実線で示す位置に制限される。
【0074】
連結部材53は、バイメタル側連結部材53aと、弁体51(図6参照)に連結される弁体側連結部材53bと、バイメタル側連結部材53aと弁体側連結部材53bとを繋ぐ繋部53cにより構成されている。したがって、バイメタル52の伸縮に伴って出力用回動軸54が回動すると、その回動量に応じてバイメタル側連結部材53aも回動する。そして、バイメタル側連結部材53aの回動が繋部53cを介して弁体側連結部材53bに伝達されることにより、弁体側連結部材53bも回動され、その弁体側連結部材53bの回動が弁体51に伝達される。
【0075】
図6に示すように、弁体51は、切替えバルブ35内に形成されているEGR通路34に配設されており、その外径はEGR通路34の内径と略同一で、かつ、熱膨張してもEGR管33の内壁により回動が制限されないように定められている。また、弁体51は、略円盤状に形成されており、この弁体51の周縁部には、弁体51の中心に関して互いに対称な位置において、入力用回動軸55と固定軸とがそれぞれ延設されている。この固定軸は、EGR通路34の壁部に対して回動可能に支持されている。
【0076】
入力用回動軸55は、EGR管33の壁部に形成された貫通孔を貫通しており、EGR管33から突出した先端部には、弁体側連結部材53bの端部が接続されている。そして、入力用回動軸55は、この弁体側連結部材53bの回動に同期して回動する。これにより、弁体51は、入力用回動軸55と固定軸とに沿った軸を中心に回動し、この弁体51の回動によってEGR通路34の流通面積が調整される。なお、EGR管33に形成された貫通孔には、図示しないシールが設けられている。
【0077】
また、図4においてバイメタル側連結部材53aが二点鎖線の位置にある場合、すなわち冷却水温THWが所定値X1以下の場合には、弁体51は図6に二点鎖線で示す位置にあり、切替えバルブ35は全閉状態となる。そして、冷却水温THWが上昇し、バイメタル側連結部材53aが図4に示す矢印Aの方向に移動すると、弁体51が図6に示す矢印Bの方向に移動する。そして、冷却水温THWが所定値X2に達する前に、弁体51は図6の実線に示す位置に移動し、切替えバルブ35は全開状態となる。
【0078】
一方、エンジン1が停止し冷却水温THWが所定値X1以下に低下すると、切替えバルブ35は、全閉状態になっている。しかしながら、この状態において、ECU80は排気還流量制御をすでに終了している。つまり、排気還流量制御を終了するためにECU80がEGRバルブ32を閉状態に移行する時点では、切替えバルブ35は開状態を継続している。そして、EGRバルブ32が全閉状態に移行するまでは、排気ガスがEGR装置30に流入し続け、EGRバルブ32による排気還流量の調節が継続するようになっている。
【0079】
また、冷却水温がX1以下の場合には、切替えバルブ35は閉状態に移行しているので、再びエンジン1が始動した際に、排気ガスが排気脈動に起因してEGR装置30に流入することを防止するようになっている。
【0080】
次に、本実施の形態に係るEGR装置30の動作について図7を参照して説明する。なお、ECU80は、冷却水温センサ21から冷却水温THWを表す信号を常時取得している。
【0081】
まず、エンジン1が始動され暖機運転が開始されると、冷却水温THWが上昇を開始する。このとき、冷却水温THWが所定値X1以下であるならば、連結部材53は図4に二点鎖線で示す位置にあり、これにより弁体51も図6に二点鎖線で示す位置にあるため、切替えバルブ35は閉状態となる。したがって、冷却水温THWが露点温度以下であり、排気ガスがEGR管33やEGRクーラ31により冷却されると凝縮水が発生する可能性がある状況下では、切替えバルブ35が閉状態となり、排気脈動に起因して排気ガスがEGR通路34に流入することが防止されるので、EGR管33やEGRクーラ31に凝縮水が発生することを抑制できる。
【0082】
そして、冷却水温THWが所定値X1を超えると(ステップS11でYES)、切替えバルブ35が閉状態から開状態に移行を開始する。そして、上述したように、冷却水温THWが所定値X2に達する前に、切替えバルブ35は全開状態となる(ステップS12)。
【0083】
一方、冷却水温THWが所定値X1以下のままであるならば(ステップS11でNO)、切替えバルブ35は閉状態を維持し(ステップS13)、EGR装置30への排気ガスの流入を抑制し続ける。また、この場合には、冷却水温THWが当然所定値X2以下であるため、EGRバルブ32も閉状態に維持される(ステップS16)。
【0084】
次に、冷却水温THWが上昇を続け、冷却水温センサ21から入力される信号が、冷却水温THWが所定値X2を超えたことを表しているとECU80により判断された場合には(ステップS14でYES)、ECU80による排気還流量制御が開始される(ステップS15)。このとき、切替えバルブ35はすでに全開状態となっているため、ECU80がEGRバルブ32の開度を制御することにより適切な排気還流量を実現できる。
【0085】
一方、ECU80により冷却水温THWが所定値X2以下であると判断された場合には(ステップS14でNO)、ECU80による排気還流量制御が実行されずEGRバルブ32が閉状態に維持される(ステップS16)。
【0086】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るEGR装置30は、EGRバルブ32が閉状態から開状態に移行する際には、切替えバルブ35が閉状態から開状態に移行を開始しているので、EGRガスの吸気通路11への導入遅れを防止することができる。したがって、EGRバルブ32による排気還流量制御の開始時には、確実にEGRガスをエンジン1に供給できるので、燃費を向上することが可能となる。
【0087】
また、切替えバルブ35がEGRバルブ32よりも早く閉状態に移行することを防止できるので、所望のEGRガス流量を確保することが可能となり、燃費を向上することができる。
【0088】
また、切替えバルブ35は、エンジン1の運転状況に応じた開度をとることが可能となる。具体的には、切替えバルブ35は、冷却水温THWがEGRガスの露点温度よりも低い場合に閉状態となるよう構成されており、エンジン1の暖機中には閉状態となる。したがって、EGR通路34を形成するEGR管33やEGRクーラ31が露点温度よりも低く、排気ガスが導入されると凝縮水が発生する状況下においては、EGR通路34に排気ガスが導入されることを防止することができる。一方、冷却水温THWが高く凝縮水の発生する可能性が低下しているエンジン1の暖機終了後には、切替えバルブ35は開状態に移行するので、吸気通路11へのEGRガスの導入遅れを防止できる。
【0089】
また、排気還流量制御の実行が開始される前に切替えバルブ35を全開状態に移行できるので、排気還流量制御が開始された際に所望の排気還流量を実現することが可能となる。
【0090】
また、切替えバルブ35が弁体32b、バイメタル52および連結部材53のいずれをも備えるので、EGR装置30を小型化することができる。
【0091】
なお、以上の説明においては、切替えバルブ35が、バイメタル52の変形に応じて開状態と閉状態との間で移行する場合について説明した。しかしながら、切替えバルブ35は、冷却水温THWにより開度が変わる感温弁により構成されていればよく、例えば、バイメタル52に代えてサーモスタット等に用いられるワックスの変形を利用して開度が変わるようにしてもよい。この場合、暖機中はスプリングにより保持される軸状部材が、冷却水温の上昇に応じて膨張したワックスにより移動されることにより、EGR通路34に配設された弁体51を回動するようにすると好適である。
【0092】
また、以上の説明においては、エンジン1の冷却水が切替えバルブ35を介してEGRクーラ31に供給される場合について説明した。しかしながら、冷却水回路40は図4に示したものに限定されず、例えば、冷却水がEGRクーラ31を介して切替えバルブ35に供給されるようにしてもよい。
【0093】
また、以上の説明においては、切替えバルブ35は、所定値X1が排気ガスの露点温度近傍の60℃に達した場合に開状態への移行を開始し、EGR制御が開始される70℃より低い温度で全開状態に移行する場合について説明したが、これに限定されず、切替えバルブ35は、排気ガスの露点温度と排気還流量制御が開始される温度との間で全閉状態から全開状態に移行するように構成されていればよい。
【0094】
また、以上の説明においては、切替えバルブ35が、弁体51、バイメタル52および連結部材53のいずれをも有する場合について説明した。しかしながら、以下に本発明の第2の実施の形態として説明するように、バイメタル52および連結部材53が切替えバルブ35とは別体の部品として設置されていてもよい。
【0095】
以下、本発明の第2の実施の形態に係る排気還流装置について、図8を参照して説明する。
【0096】
なお、第2の実施の形態に係る排気還流装置において、上述の第1の実施の形態に係る排気還流装置と同様の構成要素については、第1の実施の形態と同様の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0097】
本実施の形態に係るEGR装置30は、EGR管33に設置され少なくとも全開状態と全閉状態の2つの状態をとる切替えバルブ61を備えている。また、EGR装置30は、エンジン1の冷却水温THWに応じて駆動するアクチュエータ62を備えており、このアクチュエータ62は、切替えバルブ61とは別体として構成されている。
【0098】
切替えバルブ61は、第1の実施の形態と同様に構成された弁体51を有している。アクチュエータ62には、冷却水回路40の第1経路47の一部を構成する冷却水配管41が内部に配設されている。また、アクチュエータ62は、冷却水配管41に設置されるバイメタル52およびバイメタル52の伸縮を弁体51に伝達するための連結部材53を有している。
【0099】
連結部材53は、第1の実施の形態と同様、弁体側連結部材、バイメタル側連結部材および繋部により構成されている。そして、切替えバルブ61とアクチュエータ62とは、バイメタル側連結部材、バイメタル側連結部材および繋部を介して接続されている。これにより、本実施の形態に係る切替えバルブ61は、第1の実施の形態に係る切替えバルブ35と同様、冷却水温THWが所定値X1以下の場合には閉状態となるとともに、冷却水温THWが上昇し続けると、所定値X2に達する前に全開状態に移行する。
【0100】
このような構成により、バイメタル52が設置される冷却水配管41は、切替えバルブ61を構成する筐体内ではなく、アクチュエータ62を構成する筐体内に設置されるので、アクチュエータ62を排気マニホールド12aから遠ざけることにより、排気ガスの熱による冷却水の温度上昇を防止できる。
【0101】
なお、以上の説明においては、アクチュエータ62がバイメタル52を有する場合について説明したが、これに限定されず、第1の実施の形態に係る切替えバルブ35と同様、ワックスなど他の感温部材を有するようにしてもよい。
【0102】
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係るEGR装置30は、アクチュエータ62が切替えバルブ61と隔離されているので、切替えバルブ61が高温の排気ガスに曝される位置に配置される場合においても、アクチュエータ62およびアクチュエータ62を通過する冷却水が過熱されることを防止できる。
【0103】
なお、以上の説明においては、切替えバルブ35、61がバイメタルやワックスなど水温に応じて駆動する水温駆動アクチュエータにより構成されている場合について説明した。これにより、EGR装置30は、冷却水温THWに応じて切替えバルブ35、61の開度が調節されるので、暖機中に排気ガスがEGR装置30に流入することを防止できる。また、バルブを駆動するソレノイドなどのアクチュエータを設置する必要がないため、小型で低コストのEGR装置30を実現できる。しかしながら、切替えバルブ35、61は、ソレノイドバルブなどECU80により開度が制御されるバルブにより構成されていてもよい。
【0104】
この場合、ECU80は、冷却水温センサ21から入力される信号に応じて切替えバルブ35、61の開度を制御する。具体的には、ECU80は、冷却水温THWが上述した所定値X1以下の場合には、切替えバルブ35、61を全閉状態に維持し、冷却水温THWが所定値X1を超えた場合には、切替えバルブ35、61を全閉状態から全開状態に移行する。所定値X1としては、排気ガスの露点温度より高く、かつ、排気還流量制御が開始される冷却水温より低い値に設定されていればよい。
【0105】
また、以上の説明においては、EGR装置30がターボユニットを備えないエンジン1に適用される場合について説明したが、これに限定されず、EGR装置30がターボユニットを備えるエンジン1に適用されてもよい。
【0106】
この場合、EGR装置30は、タービンホイールの上流側から排気ガスを取得してコンプレッサホイールの下流側にEGRガスとして還流するいわゆるHPL(High-Pressure Loop)を構成してもよい。また、EGR装置30が、タービンホイールの下流側から排気ガスを取得してコンプレッサホイールの上流側にEGRガスとして還流するLPL(Low-Pressure Loop)を構成していてもよい。
【0107】
また、EGR装置30は、ガソリンエンジンにより構成されたエンジン1を搭載した車両に適用される場合について説明したが、これに限定されず、EGR装置30は、ディーゼルエンジンなど公知の内燃機関を搭載した車両に適用されていればよい。
【0108】
また、以上の説明においては、燃料が吸気ポートに噴射されるポート噴射式エンジンにEGR装置30が適用される場合について説明したが、これに限定されず、燃料が各燃焼室7に直接噴射される筒内噴射式エンジンにEGR装置30が適用されていてもよい。また、筒内噴射およびポート噴射のいずれもが行われるエンジンにEGR装置30が適用されていてもよい。
【0109】
また、EGR装置30は、エンジン1のみを動力源とする車両のみならず、エンジンおよび回転電機を動力源とするハイブリッド車両に適用されていてもよい。この場合、エンジン1のみを動力源とする車両と比較して、エンジン1の始動と停止との繰り返しが頻繁に行われるので、エンジン1の冷却水温THWに応じて駆動するアクチュエータを備えることにより、冷却水温THWに応じて確実に切替えバルブ35、61の開閉を行うことができる。したがって、EGRバルブ32およびEGR管33の温度が低下した場合における凝縮水の発生を確実に防止できるとともに、制御の実行が開始される場合には、切替えバルブ35、61が確実に開状態に移行しているので、エンジン1に対するEGRガスの導入遅れを防止し、燃費を向上することが可能になる。
【0110】
以上のように、本発明に係る排気還流装置は、EGR装置内に凝縮水が発生することを防止するとともにEGRガスを所望の流量にできるという効果を奏するものであり、内燃機関の排気還流装置に有用である。
【符号の説明】
【0111】
1 エンジン
5 気筒
7 燃焼室
11 吸気通路
11a 吸気マニホールド
12 排気通路
12a 排気マニホールド
18 スロットルバルブ
21 冷却水温センサ
22 エアフロメータ
23 吸気温センサ
27 スロットル開度センサ
29 アクセル開度センサ
30 EGR装置(排気還流装置)
31 EGRクーラ
32 EGRバルブ(第2の弁)
33 EGR管
34 EGR通路
35 切替えバルブ(第1の弁)
36 バルブ開度センサ
37 エンジン回転数センサ
39 切替えバルブ開度センサ
40 冷却水回路
41 冷却水配管(冷却水路)
42 内壁
47 第1経路
51 弁体
52 バイメタル(感熱変形部材)
53 連結部材
53a バイメタル側連結部材
53b 弁体側連結部材
53c 繋部
54 出力用回動軸
55 入力用回動軸
61 切替えバルブ
62 アクチュエータ
80 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気通路に排出された排気の一部をEGRガスとして吸気通路に還流させる内燃機関の排気還流装置であって、
前記排気通路と前記吸気通路とを連通するEGR通路に設けられ前記EGRガスを冷却するEGRクーラと、
前記EGRクーラよりも前記排気通路側に設けられ、開状態と閉状態との間で駆動されるとともに、前記閉状態の場合に前記EGRガスが前記EGR通路に流入するのを遮断する第1の弁と、
前記EGRクーラよりも前記吸気通路側に設けられ、前記EGRガスを前記吸気通路に流入する量を調整する第2の弁と、を備え、
前記第1の弁は、前記第2の弁が閉状態から開状態に移行する条件が成立する前に閉状態から開状態への移行条件が成立することを特徴とする内燃機関の排気還流装置。
【請求項2】
前記第1の弁は、前記第2の弁が開状態から閉状態に移行する条件が成立したことを条件として、開状態から閉状態への移行条件が成立することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項3】
前記第1の弁は、前記内燃機関の冷却水の温度に応じて開度が変化する感温弁により構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項4】
前記第1の弁は、前記冷却水の温度が前記EGRガスの露点温度以上であることを前記閉状態から開状態への移行条件とすることを特徴とする請求項3に記載の排気還流装置。
【請求項5】
前記第1の弁は、前記冷却水の温度が前記第2の弁により前記吸気通路に流入する前記EGRガスの量の調整を開始する温度に到達する前に全開状態に移行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項6】
前記第1の弁は、前記EGR通路に設置される弁体と、
前記内燃機関の冷却水を流入する冷却水路と、
前記冷却水路に設置され前記冷却水の温度に応じて変形する感熱変形部材と、
前記弁体と前記感熱変形部材とを接続する連結部材と、を備え、
前記第1の弁は、前記弁体が前記感熱変形部材の変形に応じて駆動されることにより閉状態と開状態との間で移行することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項7】
前記内燃機関の冷却水を流入する冷却水路が形成されたアクチュエータを備え、
前記第1の弁は、前記EGR通路に設置される弁体を備え、
前記アクチュエータは、前記冷却水路に設置され前記冷却水の温度に応じて変形する感熱変形部材と、
前記弁体と前記感熱変形部材とを接続する連結部材と、を備え、
前記第1の弁は、前記弁体が前記感熱変形部材の変形に応じて駆動することにより閉状態と開状態との間で移行することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の内燃機関の排気還流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229678(P2012−229678A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99671(P2011−99671)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】