説明

内燃機関の燃料制御装置

【課題】冷態始動時の燃圧を安定させ、排ガスの悪化を抑制することができる内燃機関の燃料制御装置を提供する。
【解決手段】車両の冷態始動時に、アクセルペダルの開度が全閉又はほぼ全閉である場合、クランキング中及び始動後所定期間TA’の間、高圧燃料ポンプの駆動を禁止又は抑制して、燃圧の上昇を抑制し(ステップS1〜S5、S15〜S16)、エンジン回転数Neが所定回転数より大きくなると、高圧燃料ポンプの加圧信号をONにし(ステップS6〜S7)、所定期間TA’経過後、アクセルペダルの開度が全閉、かつ、燃圧が所定値P2より大きいである場合、圧縮スライトリーン運転を実施する(ステップS9〜S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関として、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射型の内燃機関が知られている。筒内噴射型の内燃機関では、燃料タンクから供給された燃料を高圧燃料ポンプで加圧した後、加圧後の燃料をインジェクタから気筒内へ直接噴射するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−162942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒内噴射型の内燃機関では、そのクランクシャフト等の駆動力を利用して、高圧燃料ポンプを駆動している。この場合、始動時において、クランキング中は、通常エンジン回転数が低いので、高圧燃料ポンプの加圧力が弱く、燃料の圧力(以降、燃圧と呼ぶ。)が上がらない。又、初爆後は、エンジン回転数が上昇するので、高圧燃料ポンプにより加圧可能となるが、エンジン回転数等が依然として不安定な状態であり、それに伴い、加圧の制御タイミングもばらついてしまい、燃圧の上昇もばらつき、燃料の噴射量が変わり、空燃比がずれてしまい、その結果、排ガスが悪化するという問題がある。例えば、クランキングが終了し、始動を確認した後、高圧燃料ポンプへの加圧信号をONにする場合、図4に示す実線のグラフのように、エンジン回転数、燃圧は大きくばらついてしまい、排ガス中のHC(炭化水素)量も増加する。
【0005】
そこで、始動確認後においても、低い燃圧のみの状態とすれば、燃圧のばらつき、燃料噴射量の変動、空燃比のずれを抑制することが可能である。ところが、排ガスを処理する触媒の昇温のためには、圧縮スライトリーン(以降、圧縮S/Lと呼ぶ。)を実施する必要があり、低い燃圧のままでは圧縮S/Lにおける燃焼が不安定となり、触媒も十分に昇温できず、更に排ガスが悪化する問題がある。例えば、図4に示す点線のグラフのように、高圧燃料ポンプへの加圧信号をONにする時期を遅らせると、エンジン回転数、燃圧の不安定性は多少改善するが、逆に、排ガス中のHC量は更に増加している。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、冷態始動時の燃圧を安定させ、排ガスの悪化を抑制することができる内燃機関の燃料制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る内燃機関の燃料制御装置は、
内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段と、
前記燃料噴射手段へ供給する燃料の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記圧力調整手段から供給される燃料の圧力を検出する燃圧検出手段と、
前記内燃機関が搭載される車両のアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記燃圧検出手段及び前記アクセル開度検出手段に基づいて、前記燃料噴射手段及び前記圧力調整手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記車両の冷態始動時に、前記アクセル開度検出手段により検出されたアクセルペダルの開度が全閉又はほぼ全閉である場合には、クランキング中及び始動後所定期間の間、前記圧力調整手段の駆動を抑制することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る内燃機関の燃料制御装置は、
上記第1の発明に記載の内燃機関の燃料制御装置において、
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記回転数検出手段により検出された回転数が所定回転数より大きくなるまで、前記圧力調整手段の駆動の抑制を維持することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る内燃機関の燃料制御装置は、
上記第2の発明に記載の内燃機関の燃料制御装置において、
前記所定回転数は、前記圧力調整手段により燃料の圧力を高圧にしたとき、一行程間の燃料の圧力の変化が所定範囲内となるような回転数であることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る内燃機関の燃料制御装置は、
上記第1乃至第3のいずれか1つの発明に記載の内燃機関の燃料制御装置において、
前記制御手段は、
前記所定期間経過後、前記アクセル開度検出手段により検出されたアクセルペダルの開度が全閉又はほぼ全閉、かつ、燃料の圧力が所定値より大きい場合、排気空燃比がストイキよりもややリーンとなるように圧縮行程において前記燃料噴射手段から燃料を噴射させる圧縮スライトリーン運転を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の冷態始動時に、クランキング中及び始動後所定期間の間、圧力調整手段(高圧燃料ポンプ)の駆動を抑制して、燃圧の上昇を抑制するので、冷態始動時の燃圧を安定させて、排ガスの悪化を抑制することができる。
【0012】
一方、内燃機関の回転数が所定回転数より大きくなるまでは、圧力調整手段(高圧燃料ポンプ)の駆動を抑制しているが、内燃機関の回転数が所定回転数より大きくなると、圧力調整手段(高圧燃料ポンプ)により燃圧を上昇させるので、燃料の圧力、内燃機関の回転数が安定した状態で圧縮S/Lを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る内燃機関の燃料制御装置の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施例1)
図1は、本発明に係る内燃機関の燃料制御装置の実施形態の一例を示す概略構成図であり、図2、図3は、図1に示す内燃機関の燃料制御装置における制御のタイムチャート及びフローチャートである。
【0015】
本実施例において、内燃機関(以降、エンジンと呼ぶ。)10は、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射型のものである。なお、エンジン10は、複数の気筒を有するものであるが、図1では、1つの気筒のみ図示して、その構成を説明する。
【0016】
エンジン10は、図1に示すように、気筒を構成するシリンダ11と、シリンダ11内に設けられ、シリンダ11の内壁に沿って往復運動をするピストン12とを有し、シリンダ11とピストン12とにより形成される空間が燃焼室13となっている。
【0017】
又、エンジン10は、吸気系機構として、外部からの空気を吸入する際、吸入した空気を清浄化するエアクリーナ14と、清浄化された空気の流量を検出するエアフローセンサ15と、吸気系を通過する空気の流量を制御するスロットルバルブ16と、燃焼室13と接続されて、流量が制御された空気を燃焼室13に導く吸気管17とを有している。
【0018】
又、エンジン10は、燃料系機構として、燃料タンク(図示省略)から供給された燃料を、後述のインジェクタ19に供給する際、燃料の圧力を調整して高圧にする高圧燃料ポンプ18(圧力調整手段)と、高圧にされた燃料を燃焼室13内に直接噴射するインジェクタ19(燃料噴射手段)とを有しており、高圧燃料ポンプ18から供給される燃料の圧力は、高圧燃料ポンプ18に設けた燃圧センサ20(燃圧検出手段)で検出するようにしている。
【0019】
従って、上記吸気系機構から供給された空気と、上記燃料系機構から供給された燃料が、燃焼室13に設けた点火プラグ21により点火されて、燃焼することになる。
【0020】
又、エンジン10は、排気系機構として、燃焼室13と接続されて、燃焼室13で燃焼した燃料(排ガス)を排気する排気管22と、排気管22に設けられ、排気ガスを浄化する触媒23とを有しており、燃焼室13で燃焼した燃料(排ガス)は、この排気系機構を介して、外部へ排出されることになる。その際、触媒23の下流側に設けた空燃比センサ24により、空燃比を検出するようにしている。
【0021】
又、エンジン10には、排ガス再循環系機構として、吸気管17と排気管22との間を接続するEGR(Exhaust Gas Recirculation)管25と、EGR管25に設けられ、その開度を変更するEGRバルブ26とが設けられている。なお、排ガス再循環系機構は本発明に必須の構成ではない。
【0022】
又、エンジン10には、ピストン12に連結されたクランクシャフト27の角度を検出するクランク角センサ28が設けられており、このクランク角センサ28の検出値に基づいて、エンジン10のエンジン回転数Neを算出するようにしている(回転数検出手段)。更に、エンジン10には、エンジン10を冷却する冷却水の水温を検出する温度センサ29、エンジン10が搭載される車両のアクセルペダル30の開度を検出するアクセル開度センサ31(アクセル開度検出手段)も設けられている。
【0023】
そして、クランク角センサ28、温度センサ29、アクセル開度センサ31のみならず、前述のエアフローセンサ15、燃圧センサ20、空燃比センサ24における検出値は、ECU(Electronic Control Unit;電子制御装置/制御手段)32に入力され、それらの入力値に基づいて、後述の制御が実施される。
【0024】
次に、図2、図3を参照して、本実施例の燃料制御装置における制御を説明する。
なお、本実施例の制御においては、予め、後述する所定期間TA、TA’、TBをマップデータとして取得しておき、これらの所定期間TA、TA’、TBに基づいて、以下の制御手順が実施される。
【0025】
まず、エンジンスイッチがONにされると、温度センサ29を用いて、エンジン10の冷却水の水温を検出し、水温が10℃より大きいかどうか確認する(ステップS1)。そして、水温が10℃より大きい場合には、ステップS12へ進み、水温が10℃以下の場合には、ステップS2へ進む。
【0026】
このステップS1は、冷態始動であるかどうか確認する手順である。なお、ここでは、冷却水の水温により冷態始動であるかどうか判断しているが、冷態始動が確認できれば、他の方法を用いてもよく、例えば、触媒23の温度により、冷態始動であるかどうか判断してもよい。
【0027】
水温が10℃より大きい場合には、冷態状態での始動ではないため、通常モードの制御を行う(ステップS12)。通常モードの場合には、クランキング後、即座に高圧燃料ポンプ18の加圧信号をONにし、燃圧を上昇させ、高圧にされた燃料をインジェクタ19から噴射している。
【0028】
一方、水温が10℃以下の場合には、冷態状態での始動であるため、エンジン10がクランキング中であるどうか確認する(ステップS2)。そして、クランキング中である場合には、ステップS15、S16へ進み、クランキング中でない場合には、ステップS3へ進む。
【0029】
クランキング中である場合には、高圧燃料ポンプ18の駆動を禁止し、即ち、高圧燃料ポンプ18の加圧信号をOFF状態とし(ステップS15)、燃圧の上昇を抑制して、燃圧が低い低圧モードとする(ステップS16)。この低圧モードでは、吸気行程において、要求噴射量に応じたパルス幅で、低圧の燃料をインジェクタ19から噴射しており、クランキング中は低圧モードを維持するようにしている。なお、ここでの制御においては、燃圧を低い状態に維持できれば、高圧燃料ポンプ18の駆動を禁止しないまでも、例えば、ポンプ回転数を低く抑えることにより、その駆動を抑制するようにしてもよい。
【0030】
一方、クランキング中でない場合には、つまり、エンジン10の始動が確認されたら、始動(時間T0)から所定期間TA内であるかどうか確認する(ステップS3)。そして、始動(時間T0)から所定期間TA内である場合には、ステップS4へ進み、始動(時間T0)から所定期間TAより後、つまり、時間T2以降である場合には、ステップS9へ進み、後述するように、圧縮S/Lを実施するための判断ステップ(ステップS9〜S11)へ移行することになる。
【0031】
なお、所定期間TAは、エンジン10の始動後、後述する高圧燃料ポンプ18の加圧信号がON(又はポンプ回転数が高い状態)とされて、燃圧が所定値(例えば、図2中の所定値P2)より大きくなるまでの期間であり、例えば、ステップS1で検出したエンジン10の冷却水の水温に対応させて、マップデータとして、予め取得しておく。そして、所定期間TA経過後である時間T2(始動後圧縮S/L許可時間)以降に、圧縮S/Lを許可することになる。なお、後述するように、所定期間TA経過後であっても、燃圧が低ければ、圧縮S/Lは実施されず、又、エンジン回転数Neが所定回転数より大きくならないと、高圧燃料ポンプ18の駆動の禁止(又は抑制)を維持して、燃圧は高圧にならず、圧縮S/Lは実施されない。
【0032】
始動(時間T0)から所定期間TA内である場合には、アクセル開度センサ31を用いて、アクセルが「全閉」(又はほぼ全閉)であるかどうか確認する(ステップS4)。そして、アクセルが全閉である場合は、ステップS5へ進み、アクセルが全閉で無い場合には、ステップS12へ進み、通常モードの制御を行う。
【0033】
このステップS4は、アクセルペダル30が踏まれて、アクセルが全閉で無い場合には、低圧モードでエンジンを運転することが難しいため、低圧モードを抜けて、通常モードに移行するためのものである。
【0034】
アクセルが全閉である場合には、始動(時間T0)から所定期間TA’(但し、TA’<TA)後であるかどうか確認する(ステップS5)。そして、始動(時間T0)から所定期間TA’後である場合には、ステップS6へ進み、始動(時間T0)から所定期間TA’後でない場合には、ステップS15、S16へ進み、引き続き、高圧燃料ポンプ18の駆動を禁止(又は抑制)し、燃圧が低い低圧モードとする。
【0035】
なお、所定期間TA’(始動後低圧モード継続期間)は、エンジン10の始動後、低圧モードにおいて、エンジン10の燃焼が安定する、エンジン10の回転が安定する、エンジン10の回転数が高い等の条件が成り立つときまでの期間であり、これらの条件が成立することにより、後述する高圧燃料ポンプ18の加圧信号をON(又はポンプ回転数を高い状態)とすることが可能となる。所定期間TA’も、所定期間TAと同様に、例えば、ステップS1で検出したエンジン10の冷却水の水温に対応させて、マップデータとして、予め取得しておく。なお、所定期間TA’が短ければ、低圧モードを早く抜けて、圧縮S/Lへ早く移行することになり、その結果、排ガス性能の向上に寄与することになる。
【0036】
始動(時間T0)から所定期間TA’後、つまり、時間T1以降である場合には、クランク角センサ28を用いて算出したエンジン回転数Neが所定回転数より大きいどうか確認する(ステップS6)。そして、エンジン回転数Neが所定回転数より大きい場合には、ステップS7へ進み、エンジン回転数Neが所定回転数以下の場合には、ステップS15、S16へ進み、引き続き、高圧燃料ポンプ18の駆動を禁止(又は抑制)し、燃圧が低い低圧モードとする。
【0037】
なお、ステップS6における所定回転数とは、高圧燃料ポンプ18により燃圧を高圧にしたとき、一行程間の燃圧の変化が所定範囲内となるような回転数であり、図2中では回転数Ne1であり、例えば、アイドル回転数が該当する。
【0038】
そして、エンジン回転数Neが回転数Ne1より大きい場合には、高圧燃料ポンプ18への加圧信号をONにし(ステップS7)、ステップS8へ進む。つまり、ステップS5、S6の条件が両方成立するとき、高圧燃料ポンプ18の加圧信号をONにすることになる。なお、高圧燃料ポンプ18の加圧信号をONにすることに代えて、低く抑えていたポンプ回転数を高い状態とするようにしてもよい。
【0039】
このように、前述したクランキング中と、少なくとも始動後所定期間TA’の間は、高圧燃料ポンプ18の駆動の禁止(又は抑制)を維持し、低圧モードとし、低圧の燃料をインジェクタ19から噴射することになる。
【0040】
次に、燃圧センサ20を用いて検出した燃圧が所定値P1(燃圧が高圧であると判断される圧力)より大きいかどうか確認する(ステップS8)。そして、燃圧が所定値P1より大きい場合には、ステップS13へ進み、燃圧が高い高圧モードとし、燃圧が所定値P1以下である場合には、ステップS16へ進み、低圧モードとしている。
【0041】
このように、高圧燃料ポンプ18の加圧信号ON後(又はポンプ回転数を高い状態とした後)も、燃圧が所定値P1より大きくなるまでは、低圧モードである。一方、高圧燃料ポンプ18の加圧信号ON後(又はポンプ回転数を高い状態とした後)、燃圧が上昇して、所定値P1より大きくなると、高圧モードであり、高圧モードでは、高圧にされた燃料をインジェクタ19から噴射することになる。
【0042】
始動後所定期間TA経過した場合、更に、始動(時間T0)から所定期間TB内(但し、TA<TB)であるかどうか確認する(ステップS9)。そして、始動後所定期間TA経過、かつ、始動(時間T0)から所定期間TB内で無い場合、つまり、時間T3以降である場合には、ステップS12へ進み、通常モードの制御を行い、始動後所定期間TA経過、かつ、始動(時間T0)から所定期間TB内である場合には、ステップS10へ進む。
【0043】
なお、所定期間TBは、エンジン10の始動後、高圧燃料ポンプ18の加圧信号がON(又はポンプ回転数が高い状態)とされ、燃圧が所定値(例えば、図2中の圧力P2)より大きくなり、後述する圧縮S/Lが実施されて、触媒23が所定温度に昇温するまでの期間であり、例えば、ステップS1で検出したエンジン10の冷却水の水温に対応させて、マップデータとして、予め取得しておく。そして、所定期間TB経過後である時間T3(始動後圧縮S/L終了時間)に、圧縮S/Lの終了を判定することになる。
【0044】
始動後所定期間TA経過、かつ、始動(時間T0)から所定期間TB内である場合には、アクセル開度センサ31を用いて、アクセルが「全閉」(又はほぼ全閉)であるかどうか確認する(ステップS10)。そして、アクセルが全閉で無い場合には、ステップS12へ進み、通常モードの制御を行い、アクセルが全閉である場合には、ステップ11へ進む。
【0045】
アクセルが全閉である場合には、燃圧センサ20を用いて検出した燃圧が所定値P2より大きいかどうか確認し、燃圧が所定値P2より大きいとき、ステップS14へ進む(ステップS11)。この所定値P2より大きい燃圧が、後述の圧縮S/L、前述の通常モードで使用される燃圧となる。
【0046】
燃圧が所定値P2より大きい場合には、時間T3までの間、圧縮S/Lを実施する(ステップS14)。この圧縮S/Lとは、圧縮行程時に、スライトリーンと呼ばれる排気空燃比がストイキより少し薄い空燃比となるようなパルス幅で、高圧の燃料をインジェクタ19から噴射すると共に、点火時期を遅らせて燃料を燃焼させる制御であり、排気温度を高くして、触媒23を効率的に昇温することができる。
【0047】
つまり、上記制御により、クランキング中及び少なくとも始動後所定期間TA’までは、高圧燃料ポンプ18の駆動を禁止(又は抑制)し、燃圧の上昇を抑制して、低圧の燃圧の燃料を噴射する制御を行うと共に、始動開始後所定期間TA’を経過したら、高圧燃料ポンプ18による加圧を開始し、燃圧を上昇させ、燃圧が所定値P2より大きくなったのを確認後、圧縮S/Lを実施するようにしている。これにより、始動時の燃圧を安定させて、排ガスの安定化を図ると共に、その後、安定した燃圧で圧縮S/Lを実施して、触媒を昇温し、排ガスの悪化を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、筒内噴射型の内燃機関の冷態始動時に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る内燃機関の燃料制御装置の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す内燃機関の燃料制御装置における制御のタイムチャートである。
【図3】図1に示す内燃機関の燃料制御装置における制御のフローチャートである。
【図4】従来の内燃機関の燃料制御装置における制御のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 エンジン
18 高圧ポンプ
19 インジェクタ
20 燃圧センサ
21 点火プラグ
28 クランク角センサ
29 温度センサ
30 アクセルペダル
31 アクセル開度センサ
32 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段と、
前記燃料噴射手段へ供給する燃料の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記圧力調整手段から供給される燃料の圧力を検出する燃圧検出手段と、
前記内燃機関が搭載される車両のアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記燃圧検出手段及び前記アクセル開度検出手段に基づいて、前記燃料噴射手段及び前記圧力調整手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記車両の冷態始動時に、前記アクセル開度検出手段により検出されたアクセルペダルの開度が全閉又はほぼ全閉である場合には、クランキング中及び始動後所定期間の間、前記圧力調整手段の駆動を抑制することを特徴とする筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置において、
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記回転数検出手段により検出された回転数が所定回転数より大きくなるまで、前記圧力調整手段の駆動の抑制を維持することを特徴とする筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置において、
前記所定回転数は、前記圧力調整手段により燃料の圧力を高圧にしたとき、一行程間の燃料の圧力の変化が所定範囲内となるような回転数であることを特徴とする筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置において、
前記制御手段は、
前記所定期間経過後、前記アクセル開度検出手段により検出されたアクセルペダルの開度が全閉又はほぼ全閉、かつ、燃料の圧力が所定値より大きい場合、排気空燃比がストイキよりもややリーンとなるように圧縮行程において前記燃料噴射手段から燃料を噴射させる圧縮スライトリーン運転を実施することを特徴とする筒内噴射型内燃機関の燃料制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−121579(P2010−121579A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297588(P2008−297588)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】