内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構
【課題】複リンク機構に特有の高次振動成分の発生を抑制する。
【解決手段】この複リンク機構は、支点31Aを中心に揺動可能に機関本体に支持されるロッカアーム31と、このロッカアーム31の一端とピストンのピストンピン34とを連結する第1リンク32と、ロッカアーム31の他端とクランクシャフト4のクランクピン5とを連結する第2リンク33と、を有する。ロッカアーム31と第2リンク33との連結点の軌跡36Aの端部36B,36C同士を結んだ直線を第1の直線46とし、ピストン上死点のときにロッカアーム31と第2リンク33との連結点36とロッカアームの支点31Aとを結ぶ直線に直交する直線を第2の直線47とすると、第1の直線46と第2の直線47とに挟まれる領域45内に、クランクシャフト4の回転中心4Aを配置する。
【解決手段】この複リンク機構は、支点31Aを中心に揺動可能に機関本体に支持されるロッカアーム31と、このロッカアーム31の一端とピストンのピストンピン34とを連結する第1リンク32と、ロッカアーム31の他端とクランクシャフト4のクランクピン5とを連結する第2リンク33と、を有する。ロッカアーム31と第2リンク33との連結点の軌跡36Aの端部36B,36C同士を結んだ直線を第1の直線46とし、ピストン上死点のときにロッカアーム31と第2リンク33との連結点36とロッカアームの支点31Aとを結ぶ直線に直交する直線を第2の直線47とすると、第1の直線46と第2の直線47とに挟まれる領域45内に、クランクシャフト4の回転中心4Aを配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンとクランクシャフトとを複数のリンクで連結した複リンク式ピストン−クランク機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の主運動系として、特許文献1には、ピストンとクランクシャフトとを複数のリンクで連結した複リンク式ピストン−クランク機構(以下、「複リンク機構」とも呼ぶ)が記載されている。この複リンク機構は、支点を中心に機関本体に回転可能に支持されるロッカアームと、このロッカアームの一端とピストンのピストンピンとを連結する第1リンクと、ロッカアームの他端とクランクシャフトのクランクピンとを連結する第2リンクと、を有している。この複リンク機構は、ロッカアームの支点の支持位置を変更することで、リンクジオメトリを変化させて、ピストンの上死点位置及び下死点位置の変化を伴って、機関圧縮比を変化させる可変圧縮比機構として構成することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−52667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複リンク機構では、リンクジオメトリを適切に設定することで、ピストンとクランクシャフトとをコネクティングロッドのような一本のリンクにより連結した単リンク式のピストン−クランク機構(以下、「単リンク機構」とも呼ぶ)に比して、ピストンに連結される第1リンク(単リンク機構のコネクティングロッドに相当)の揺動範囲を小さく抑えることができ、従って、シリンダボア下端と第1リンクとの干渉を招くことなく、ピストンストローク長を長く確保して、機関圧縮比を高めて熱効率を向上することができる。
【0005】
但し、このような複リンク機構においては、機関実動中に、ピストンとクランクシャフトとを連結する複数のリンクがそれぞれ異なる軌跡で複雑な運動を行うために、単リンク機構とは異なり、ピストンが上死点に向かう上り区間とピストンが下死点に向かう下り区間とで、ピストン変位・速度及び加速度などのピストンストローク特性が異なるものとなる。また、ピストン上死点近傍とピストン下死点近傍との間でも、ピストンストローク特性が異なるものとなる。このようなことから、複リンク機構においては、クランクシャフトの一回転当たりに複数回の振動を生じる二次、三次の高次振動成分を含んだ振動を生じ易い、という特有の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複リンク機構に特有の高次振動成分の発生を抑制することを目的としている。すなわち、本発明に係る内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構は、支点を中心に揺動可能に機関本体に支持されるロッカアームと、このロッカアームの一端とピストンのピストンピンとを連結する第1リンクと、上記ロッカアームの他端とクランクシャフトのクランクピンとを連結する第2リンクと、を有している。
【0007】
そして、ロッカアームと第2リンクとの連結点の、クランクシャフトの回転に伴う半円弧状の軌跡の端部同士を結んだ直線を第1の直線とし、ピストン上死点のときに、上記ロッカアームと第2リンクとの連結点を通って、この連結点とロッカアームの支点とを結ぶ直線に直交する直線を第2の直線とすると、上記第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に、上記クランクシャフトの回転中心を配置したことを特徴としている。
【0008】
クランクシャフトの回転に伴ってロッカアームは支点を中心に所定の回転角度範囲内を揺動するために、ロッカアームと第2リンクの連結点の軌跡は、ロッカアームの支点を原点とする半円弧状のものとなり、典型的には、この軌跡の両端でピストン上死点とピストン下死点となる。従って、この軌跡の端部同士を結んだ第1の直線の近傍にクランクシャフトの回転中心が配置されていると、ピストン上死点の近傍とピストン下死点の近傍とで、クランク角の変化に対するロッカアームの揺動角度の大きさ及び両者の相違(ばらつき)が小さくなり、ひいては、このロッカアームの揺動運動に連動するピストンの変位・速度及び加速度の大きさ及び相違(ばらつき)が抑制されるために、高次振動成分、特に、二次振動成分を抑制することができる。
【0009】
また、クランクシャフトの回転中心が第2の直線上にある場合、ピストン上死点のときに、第2リンクの中心線がロッカアームの支点と第2リンクとの連結点を結ぶ線に対して直交し、かつ、この第2リンクの中心線上にクランクシャフトの回転中心が存在する形となる。従って、クランクシャフトの回転中心が第2の直線の近傍に位置していると、ピストン上死点近傍で、クランク角の変化に対するロッカアームの揺動角度が小さくなるとともに、ピストンが下死点から上死点へ向かうピストン上り区間と、ピストンが上死点から下死点へ向かうピストン下り区間とで、クランクシャフトの回転に対するロッカアームの揺動角度,角速度及び角加速度がほぼ等しくなり、ひいてはピストンの変位,速度及び加速度がほぼ等しくなる。これによって、燃焼圧力に起因する大きな荷重が作用するピストン上死点近傍における高次振動成分、特に、三次及び四次の振動成分を抑制することができる。
【0010】
従って、本発明のように、クランクシャフトの回転中心を第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に設定することで、クランクシャフトの回転中心を第1の直線と第2の直線の双方に近い位置に配置することができ、複リンク機構における二次〜四次の振動成分を含む高次振動成分を有効に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、複リンク機構のリンクジオメトリを適切なものとすることで、この複リンク式に特有の高次振動成分を有効に抑制することができ、この振動に起因する騒音の発生や操安性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構の一例を示す断面図。
【図2】本発明の第1実施例に係る複リンク式ピストン−クランク機構を示し、(A)がピストン上死点におけるリンクレイアウトを示すリンク線図、(B)がリンク連結点の軌跡を示すリンク線図。
【図3】本発明の第2実施例に係る複リンク式ピストン−クランク機構を示し、(A)がピストン上死点におけるリンクレイアウトを示すリンク線図、(B)がリンク連結点の軌跡を示すリンク線図。
【図4】本発明の第3実施例に係る複リンク式ピストン−クランク機構を示し、(A)がピストン上死点におけるリンクレイアウトを示すリンク線図、(B)がリンク連結点の軌跡を示すリンク線図。
【図5】図4の第3実施例の所定クランク角毎のリンクレイアウトを示す説明図。
【図6】クランクシャフトの回転中心が第1の直線上にある場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示す説明図。
【図7】クランクシャフトの回転中心が第1の直線から離れている場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示す説明図。
【図8】クランクシャフトの回転中心が第1の直線上にある場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示し、第2連結ピンの軌跡を直線上に展開して示す説明図。
【図9】クランクシャフトの回転中心が第1の直線から離れている場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示し、第2連結ピンの軌跡を直線上に展開して示す説明図。
【図10】クランクシャフトの回転中心が第2の直線上にある場合のリンクレイアウトを示す説明図。
【図11】クランクシャフトの回転中心が第2の直線から離れている場合のリンクレイアウトを示す説明図。
【図12】図4(B)と同様のリンク連結点の軌跡を示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、ピストン3が往復運動するシリンダ6の軸方向(図1の上下方向)を機関上下方向もしくはシリンダ軸方向Fhと呼び、クランクシャフト4の軸方向つまり気筒列方向(図1の紙面に直交する方向)を機関前後方向もしくはクランク軸方向Flと呼び、これらシリンダ軸方向Fhとクランク軸方向Flの双方に直交するピストン3のスラスト−反スラスト方向(図1の左右方向)を機関幅方向Fbと呼ぶ。
【0014】
図1は、本発明に係るレシプロ式内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構を簡略的に示す断面対応図である。このレシプロ式内燃機関Eは、複数(例えば、4又は6個)のシリンダ6が気筒列方向に沿って一列に配列された直列多気筒内燃機関であって、車両前方に配置されたエンジンルーム内に機関上下方向Fhが車両鉛直方向に沿うとともに機関幅方向Fbが車両前後方向に沿う横置き姿勢で搭載される。
【0015】
シリンダブロック21にはシリンダ6が気筒列方向Flに沿って複数形成されており、各シリンダ6内にピストン3が摺動可能に嵌合している。シリンダブロック21の上面には、シリンダ6の上面を覆うようにシリンダヘッド8が固定されており、このシリンダヘッド8の下面には、ピストン3の上面との間に燃焼室22を画成するペントルーフ型の燃焼室22が形成されている。シリンダヘッド8の上面には、このシリンダヘッド8とともに吸気カムシャフト9I及び排気カムシャフト9Eを回転可能に支持するヘッドカバー23が固定されている。また、シリンダヘッド8には、燃焼室22に接続する吸気ポート24I及び排気ポート24Eが形成されている。シリンダヘッド8の側面に取り付けられる排気マニホールド25Eには、排気ポート24Eに連通する内部通路が形成されている。また、シリンダブロック21の下面には、潤滑油を受け止めて貯留するオイルパン26が取り付けられている。
【0016】
このレシプロ式内燃機関Eでは、ピストン3とクランクシャフト4のクランクピン5とを機械的に連係し、ピストン3のシリンダ6内での往復直線運動をクランクシャフト4の回転運動に変換する主運動系として、ピストン3とクランクピン5とを複数のリンクにより連係した複リンク式ピストン−クランク機構30が用いられている。この複リンク機構30は、シリンダブロック21などの機関本体側に支持される支点31Aを中心に揺動可能なロッカアーム31と、このロッカアーム31の一端とピストン3とを連結する第1リンク32と、ロッカアーム31の他端とクランクシャフト4のクランクピン5とを連結する第2リンク33と、からなるリンク列を有している。ピストン3と第1リンク32の上端とはピストンピン34によって相対回転可能に連結されている。第1リンク32の下端とロッカアーム31の一端とは第1連結ピン35によって相対回転可能に連結されている。ロッカアーム31の他端と第2リンク33の下端とは第2連結ピン36によって相対回転可能に連結されている。
【0017】
この複リンク機構30は、ロッカアーム31の揺動支点31Aの位置を機関本体側に対して変化させることにより、ピストン3のストローク特性及び機関圧縮比を連続的に変化させる可変圧縮比手段を有しており、つまり機関圧縮比を可変とする可変圧縮比機構として構成されている。この可変圧縮比手段は、クランクシャフト4と平行に気筒列方向Flに延びる制御軸41と、各シリンダ6に対応して制御軸41に偏心して設けられた複数の制御偏心軸部42と、を有している。各制御偏心軸部42の円形の外周面には、ロッカアーム31の中央部が揺動可能に取り付けられている。従って、ロッカアーム31は、制御偏心軸部42の中心を支点31Aとして揺動可能である。そして、制御軸41の回転位置を変更することによって、ロッカアーム31の揺動支点31Aの位置が変位し、ロッカアーム31,第1リンク32及び第2リンク33からなるリンク列のリンクジオメトリが変化して、ピストン3の上死点位置及び下死点位置を含めたピストンストローク特性の変化を伴って、機関圧縮比が変化することとなる。制御軸41の回転位置は電動式又は油圧式等の可変圧縮比アクチュエータ43によって変更・保持される。この可変圧縮比アクチュエータ43の動作は、エンジン制御部44から出力される制御信号によって、機関負荷及び機関回転数等の機関運転条件に応じて制御される。
【0018】
次に、図2〜図4は、それぞれ本発明の第1〜第3実施例に係る複リンク機構30のリンクジオメトリを示す説明図である。なお、上記の図1とは左右逆向きのレイアウトとなっている。これらの図2〜図4は、クランク軸方向視の直交座標系を表しており、ロッカアーム41の揺動支点31Aを原点とし、この支点31Aを通ってシリンダ軸方向Fhに機関上方へ延びる直線をY軸、支点31Aを通って機関幅方向Fbに延びる直線をX軸としている。また、図2〜図4の(A)は、ピストン上死点位置におけるリンクジオメトリを示しており、32Aはクランクシャフト4の回転に伴う第1リンク32の重心位置の軌跡を表している。図2〜図4の(B)は、クランクシャフト4の回転に伴うリンク連結点の軌跡を表している。具体的には、34Aはピストンピン34の中心の軌跡、35Aは第1連結ピン35の中心の軌跡、36Aは第2連結ピン36の中心の軌跡、5Aはクランクピン5の中心の軌跡を表している。また、図5は第3実施例における所定のクランク角毎のリンクジオメトリを示している。
【0019】
全実施例に共通するリンクジオメトリとして、ロッカアーム31の支点31Aに対し、ピストンピン34とクランクシャフト4の回転中心4Aとが、機関上方側に位置し、かつ、機関幅方向(X軸方向)で互いに反対側に配置されている。具体的には、図2に示すように、ピストンピン34が第1象限Iに位置し、クランクシャフトの回転中心4Aが第2象限IIに位置している。なお、左右逆向きのレイアウトとすることも可能であり、この場合、ピストンピン34が第2象限IIに位置し、クランクシャフトの回転中心4Aが第1象限Iに位置することとなる。
【0020】
また、全ての実施例に共通する第1の特徴として、クランクシャフトの回転中心4Aが、第1の直線46と第2の直線47の双方に近接するように、第1の直線46と第2の直線47とにより挟まれた領域45内に配置されている。
【0021】
この第1の特徴による作用効果について図6〜図11を参照して説明する。先ず、図6〜図9を参照して、クランクシャフトの回転中心4Aが第1の直線46に近接して配置されることによる作用効果について説明する。図6及び図7は、ピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)でのリンクレイアウトを示しており、図6は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第1の直線46上に配置されているリンクレイアウト、図7は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第1の直線46から大きく離間しているリンクレイアウトを示している。また、図中の実線で示すリンク線は、ピストン上死点位置及び下死点位置でのものであり、破線のリンク線は、ピストン上死点位置及び下死点位置に対して所定のクランク角度αだけ変位した位置でのものである。また、図8は図6のリンクレイアウトにおける第2連結ピン36の軌跡36Aを直線上に投影した図であり、図9は図7のリンクレイアウトにおける第2連結ピン36の軌跡36Aを直線上に投影した図である。
【0022】
ロッカアーム31と第2リンク33とを回転可能に連結する第2連結ピン36の中心は、クランクシャフト4の回転に伴ってロッカアーム31の支点31Aを中心とする半円弧状の軌跡36Aを揺動運動する。そして、ピストン下死点(A)のときには、クランクシャフト4のクランクアームのリンク中心線4Bが第2リンク33上に折り畳まれるように同一線上に配置されて、第2連結ピン36が最も引き上げられた軌跡36Aの上端36Bに位置する。このために、ロッカアーム31及び第1リンク32を介してピストン3が最も押し下げられた形となって、ピストン3が下死点に位置することとなる。一方、ピストン上死点(B)のときには、クランクシャフト4のクランクアーム4Bが第2リンク33の同一線上に引き伸ばされるように配置されて、第2連結ピン36が最も押し下げられた軌跡36Aの下端36Cに位置する。このために、ロッカアーム31及び第1リンク32を介してピストン3が最も引き上げられた形となって、ピストン3が上死点に位置することとなる。
【0023】
上記の第1の直線46は、軌跡36Aの上端36Bと下端36Cを結んだ直線である。従って、図6に示すように、クランクシャフトの回転中心4Aが第1の直線46上に配置されている場合、ピストン上死点及びピストン下死点では、第2リンク33が第1の直線46上に配置されることとなり、クランク角αの変化に対するロッカアーム31(第2連結ピン36)の揺動角β1,β2がほぼ同等かつ小さくなり、ひいては、ロッカアーム31の角速度及び角加速度がほぼ同等かつ小さなものとなる。この結果、ピストン上死点及びピストン下死点の近傍でのピストン3の変位,速度及び加速度がほぼ等しくなるとともに、その値そのものも低く抑制されたものとなる。従って、上記実施例のようにクランクシャフトの回転中心4Aを第1の直線46に近接して配置することによって、高次振動成分、特に、回転二次振動成分を大幅に抑制することができる。
【0024】
一方、図7に示すように、クランクシャフトの回転中心4Aが第1の直線46から大きく離れて配置されていると、ピストン上死点及びピストン下死点の近傍では、第2リンク33と第1の直線46とに大きな角度差を生じ、ピストン上死点・下死点の近傍におけるクランクシャフト4の回転角αの変化に対し、ロッカアーム41(第2連結ピン36)の揺動角β3,β4が大きくなり、この例ではピストン下死点近傍での揺動角度β3に比してピストン上死点近傍での揺動角度β4が大きくなり、その角速度や角加速度も大きくなる。この結果、図6のようにクランクシャフトの回転中心4Aを第1の直線46上に配置したものに比して、ピストン上死点及びピストン下死点の近傍でピストン3の変位,速度及び加速度が増大し、かつ、その偏差も大きくなるために、高次振動成分、特に、回転二次振動成分が増大する。
【0025】
次に、図10及び図11を参照して、クランクシャフトの回転中心4Aが第2の直線47に近接して配置されることによる作用効果について説明する。図10及び図11は、ピストン下死点(A)でのリンクレイアウトを示しており、図10は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第2の直線47上に配置されているリンクレイアウト、図11は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第2の直線47から大きく離間しているリンクレイアウトを示している。また、図中の実線のリンク線はピストン上死点位置でのものであり、破線のリンク線はピストン上死点位置に対して所定のクランク角αだけ進み側、遅れ側の双方に離れた位置でのものである。
【0026】
上述した第2の直線47は、ピストン上死点のクランク角位置において、ロッカアーム31の支点31Aを通り、この支点31Aと第2連結ピンの中心36Cとを結ぶ直線に対して直交する直線である。従って、図10に示すように、クランク中心4Aが第2の直線47上に配置されていると、ピストン上死点では第2リンク33のリンク中心線とクランクアーム4Bの中心線とが引き延ばされた形で同一線上、つまり第2の直線47に配置されることから、クランクシャフトの回転中心4Aが第2の直線47上に配置されることとなる。この結果、ピストン上死点から所定のクランク角度αだけ離れたピストン下死点から上死点に向かう上り区間とピストン上死点から下死点に向かう下り区間とで、ロッカアーム31の揺動角度β5,β6が小さくなるとともに、揺動角度β5,β6及びその角速度や角加速度がほぼ等しくなり、ひいてはピストン3の変位、速度及び加速度が小さくかつほぼ等しくなる。従って、クランクシャフトの回転中心4Aを第2の直線47に近接して配置することによって、特に大きな燃焼荷重が作用するピストン上死点近傍における上り区間と下り区間とで、ピストンの変位、速度及び加速度を小さくすることができるとともに、その偏差・ばらつきを低減することができ、これによって、高次振動成分、特に、三次及び四次の振動成分を大幅に抑制することができる。
【0027】
これに対して、図11に示すように、クランクシャフトの回転中心4Aが第2の直線47から大きく離れて配置されていると、図10の例に比して、ピストン上死点から所定のクランク角度αにおける上り区間と下り区間とで、ロッカアーム31の揺動角度及びその角速度や角加速度が大きく異なり、ひいてはピストンの変位、速度及び加速度が大きく異なるものとなる。
【0028】
このようなことから、クランクシャフトの回転中心4Aを、第1の直線46と第2の直線47とにより挟まれた領域45内に配置して、第1の直線46と第2の直線47の双方に近接する位置に配置することによって、複リンク機構に特有の高次振動成分をバランス良く効果的に低減し、振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0029】
第2の特徴として、図3,図4に示す第2,第3実施例では、クランクピン5の中心の軌跡5Aが、第1の直線46と第2の直線47とにより挟まれた領域45内に内包されるように配置されている。つまり、クランクピン5のクランクスローを短くすることなどのリンクレイアウトの設定によって、クランクピン5の中心の軌跡5Aの全てが領域45内に含まれるように設定している。これによって、クランクピン5の中心位置が第1の直線46と第2の直線47の双方に更に近接する形となって、複リンク機構に特有の高次振動成分を更に確実に低減して、振動や騒音の発生を抑制することができる。また、クランクピン5の中心の軌跡5Aを領域45に内包させることで、クランクスロー4Bの短縮化及び第2リンク33の長尺化が図られ、第2リンク33の揺動角(例えば、第2リンク33の重心位置を原点する座標系における第2リンク33の重心位置まわりの振れ角)が小さくなるために、振動成分を抑制することができる。
【0030】
第3の特徴として、図4に示すように、ロッカアーム31の支点31Aと、このロッカアーム31と第1リンク32との連結点である第1連結ピン35と、を結ぶ線を第1アーム中心線31B、ロッカアーム31の支点31Aと、このロッカアームと第2リンクとの連結点である第2連結ピン36と、を結ぶ線を第2アーム中心線31Cとすると、クランクシャフトの回転に伴う第1連結ピン35の揺動軌跡35Aにおける、クランク軸方向とシリンダ中心線6Aとに直交する機関幅方向における距離35Bが最小となるように、第1アーム中心線31Bと第2アーム中心線31Cとの挟角γが設定されている。言い換えると、第1連結ピン軌跡35Aの上死点位置及び下死点位置である両端を結ぶ直線がシリンダ中心線6Aと一致する場合に、上記の距離35Bが最小となることから、第1連結ピン35の軌跡35Aの両端を結ぶ直線がシリンダ中心線6Aと一致するように、上記の挟角γが設定されている。すなわち、クランクシャフトの回転中心4A(あるいはクランクピン軌跡5A)が領域45に位置するように第2連結ピン36の揺動軌跡36Aを設定した上で、更に、上記の距離35Bが最小となるように挟角γが設定されている。
【0031】
このように、上記の距離35Bを最小とし、ピストン上死点位置での第1リンク32のリンク中心線をシリンダ中心線6Aと平行とすることで、クランクシャフトの回転に伴う第1リンク32の機関幅方向(スラスト−反スラスト方向)における振れ幅を小さくして、ピストンストローク長を長く確保しつつ、第1リンク32とシリンダ下端との干渉を回避するとともに、振動・騒音を抑制することができる。
【0032】
このような挟角γを実現する具体的な構成について、図12を参照して説明する。図12は、図4(B)に示すリンクレイアウトを、ロッカアームの支点31Aを原点とし、この支点31Aから第1リンク32とロッカアーム31との連結点である第2連結ピン36へ向かう方向をX軸とした座標系で示したものである。同図に示すように、第2リンク33とロッカアーム31との連結点である第2連結ピン軌跡36Aに対し、クランクシャフトの回転中心4Aがロッカアームの支点31Aと機関幅方向について反対側に配置されるとともに、ロッカアームの支点31Aに対し、クランクシャフトの回転中心4Aがシリンダ中心線6Aと機関幅方向について反対側に配置されている。そして、第2リンク33とロッカアーム31との連結点である第2連結ピン36が、この座標系における第3象限IIIに配置されている。言い換えると、第2ピン36によるリンク連結点が、X軸方向に平行なロッカアーム31の第1アーム中心線31Bよりもクランクシャフトの回転中心4Aから遠い側に配置されている。このように第3象限IIIに第2連結ピン36を配置することで、第2連結ピン36が第2象限IIに配置されている場合に比して、第1連結ピンの軌跡35Aにおける機関幅方向の距離35Bを短くすることができる。
【0033】
次に、第3の特徴として、第2リンク33のリンク長、つまりピストンピン34と第1連結ピン35との中心間距離が、第1リンク32のリンク長、つまり第2連結ピン36とクランクピン5との中心間距離よりも長く設定されている。ここで、第1リンク32は、一方のピストンピン34側が上下運動で、他方の第1連結ピン35側が揺動運動であるのに対し、第2リンク33は、一方の第2連結ピン36側が揺動運動で、他方のクランクピン5側が回転運動という、第1リンク32に比して複雑な運動を行うものであるために、振動を生じ易い。従って、上述したように第2リンク33を長くすることで、振動悪化の要因となる第2リンク33の揺動角を小さく抑えることができ、ひいては、複リンク機構30全体の振動を低減することができる。
【0034】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。例えば、上記実施例では、可変圧縮比機構としての機能を備えた複リンク式ピストン−クランク機構について説明しているが、これに限らず、可変圧縮比機構としての機能を備えない簡素な複リンク式ピストン−クランク機構に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
E…内燃機関
3…ピストン
4…クランクシャフト
5…クランクピン
6…シリンダ
8…シリンダヘッド
10…ドライブシャフト
30…複リンク式ピストン−クランク機構
31…ロッカアーム
32…第1リンク
33…第2リンク
34…ピストンピン
35…第1連結ピン
36…第2連結ピン
41…制御軸(可変圧縮比手段)
42…制御偏心軸部(可変圧縮比手段)
43…アクチュエータ(可変圧縮比手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンとクランクシャフトとを複数のリンクで連結した複リンク式ピストン−クランク機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の主運動系として、特許文献1には、ピストンとクランクシャフトとを複数のリンクで連結した複リンク式ピストン−クランク機構(以下、「複リンク機構」とも呼ぶ)が記載されている。この複リンク機構は、支点を中心に機関本体に回転可能に支持されるロッカアームと、このロッカアームの一端とピストンのピストンピンとを連結する第1リンクと、ロッカアームの他端とクランクシャフトのクランクピンとを連結する第2リンクと、を有している。この複リンク機構は、ロッカアームの支点の支持位置を変更することで、リンクジオメトリを変化させて、ピストンの上死点位置及び下死点位置の変化を伴って、機関圧縮比を変化させる可変圧縮比機構として構成することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−52667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような複リンク機構では、リンクジオメトリを適切に設定することで、ピストンとクランクシャフトとをコネクティングロッドのような一本のリンクにより連結した単リンク式のピストン−クランク機構(以下、「単リンク機構」とも呼ぶ)に比して、ピストンに連結される第1リンク(単リンク機構のコネクティングロッドに相当)の揺動範囲を小さく抑えることができ、従って、シリンダボア下端と第1リンクとの干渉を招くことなく、ピストンストローク長を長く確保して、機関圧縮比を高めて熱効率を向上することができる。
【0005】
但し、このような複リンク機構においては、機関実動中に、ピストンとクランクシャフトとを連結する複数のリンクがそれぞれ異なる軌跡で複雑な運動を行うために、単リンク機構とは異なり、ピストンが上死点に向かう上り区間とピストンが下死点に向かう下り区間とで、ピストン変位・速度及び加速度などのピストンストローク特性が異なるものとなる。また、ピストン上死点近傍とピストン下死点近傍との間でも、ピストンストローク特性が異なるものとなる。このようなことから、複リンク機構においては、クランクシャフトの一回転当たりに複数回の振動を生じる二次、三次の高次振動成分を含んだ振動を生じ易い、という特有の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複リンク機構に特有の高次振動成分の発生を抑制することを目的としている。すなわち、本発明に係る内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構は、支点を中心に揺動可能に機関本体に支持されるロッカアームと、このロッカアームの一端とピストンのピストンピンとを連結する第1リンクと、上記ロッカアームの他端とクランクシャフトのクランクピンとを連結する第2リンクと、を有している。
【0007】
そして、ロッカアームと第2リンクとの連結点の、クランクシャフトの回転に伴う半円弧状の軌跡の端部同士を結んだ直線を第1の直線とし、ピストン上死点のときに、上記ロッカアームと第2リンクとの連結点を通って、この連結点とロッカアームの支点とを結ぶ直線に直交する直線を第2の直線とすると、上記第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に、上記クランクシャフトの回転中心を配置したことを特徴としている。
【0008】
クランクシャフトの回転に伴ってロッカアームは支点を中心に所定の回転角度範囲内を揺動するために、ロッカアームと第2リンクの連結点の軌跡は、ロッカアームの支点を原点とする半円弧状のものとなり、典型的には、この軌跡の両端でピストン上死点とピストン下死点となる。従って、この軌跡の端部同士を結んだ第1の直線の近傍にクランクシャフトの回転中心が配置されていると、ピストン上死点の近傍とピストン下死点の近傍とで、クランク角の変化に対するロッカアームの揺動角度の大きさ及び両者の相違(ばらつき)が小さくなり、ひいては、このロッカアームの揺動運動に連動するピストンの変位・速度及び加速度の大きさ及び相違(ばらつき)が抑制されるために、高次振動成分、特に、二次振動成分を抑制することができる。
【0009】
また、クランクシャフトの回転中心が第2の直線上にある場合、ピストン上死点のときに、第2リンクの中心線がロッカアームの支点と第2リンクとの連結点を結ぶ線に対して直交し、かつ、この第2リンクの中心線上にクランクシャフトの回転中心が存在する形となる。従って、クランクシャフトの回転中心が第2の直線の近傍に位置していると、ピストン上死点近傍で、クランク角の変化に対するロッカアームの揺動角度が小さくなるとともに、ピストンが下死点から上死点へ向かうピストン上り区間と、ピストンが上死点から下死点へ向かうピストン下り区間とで、クランクシャフトの回転に対するロッカアームの揺動角度,角速度及び角加速度がほぼ等しくなり、ひいてはピストンの変位,速度及び加速度がほぼ等しくなる。これによって、燃焼圧力に起因する大きな荷重が作用するピストン上死点近傍における高次振動成分、特に、三次及び四次の振動成分を抑制することができる。
【0010】
従って、本発明のように、クランクシャフトの回転中心を第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に設定することで、クランクシャフトの回転中心を第1の直線と第2の直線の双方に近い位置に配置することができ、複リンク機構における二次〜四次の振動成分を含む高次振動成分を有効に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、複リンク機構のリンクジオメトリを適切なものとすることで、この複リンク式に特有の高次振動成分を有効に抑制することができ、この振動に起因する騒音の発生や操安性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構の一例を示す断面図。
【図2】本発明の第1実施例に係る複リンク式ピストン−クランク機構を示し、(A)がピストン上死点におけるリンクレイアウトを示すリンク線図、(B)がリンク連結点の軌跡を示すリンク線図。
【図3】本発明の第2実施例に係る複リンク式ピストン−クランク機構を示し、(A)がピストン上死点におけるリンクレイアウトを示すリンク線図、(B)がリンク連結点の軌跡を示すリンク線図。
【図4】本発明の第3実施例に係る複リンク式ピストン−クランク機構を示し、(A)がピストン上死点におけるリンクレイアウトを示すリンク線図、(B)がリンク連結点の軌跡を示すリンク線図。
【図5】図4の第3実施例の所定クランク角毎のリンクレイアウトを示す説明図。
【図6】クランクシャフトの回転中心が第1の直線上にある場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示す説明図。
【図7】クランクシャフトの回転中心が第1の直線から離れている場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示す説明図。
【図8】クランクシャフトの回転中心が第1の直線上にある場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示し、第2連結ピンの軌跡を直線上に展開して示す説明図。
【図9】クランクシャフトの回転中心が第1の直線から離れている場合のピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)におけるリンクレイアウトを示し、第2連結ピンの軌跡を直線上に展開して示す説明図。
【図10】クランクシャフトの回転中心が第2の直線上にある場合のリンクレイアウトを示す説明図。
【図11】クランクシャフトの回転中心が第2の直線から離れている場合のリンクレイアウトを示す説明図。
【図12】図4(B)と同様のリンク連結点の軌跡を示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、ピストン3が往復運動するシリンダ6の軸方向(図1の上下方向)を機関上下方向もしくはシリンダ軸方向Fhと呼び、クランクシャフト4の軸方向つまり気筒列方向(図1の紙面に直交する方向)を機関前後方向もしくはクランク軸方向Flと呼び、これらシリンダ軸方向Fhとクランク軸方向Flの双方に直交するピストン3のスラスト−反スラスト方向(図1の左右方向)を機関幅方向Fbと呼ぶ。
【0014】
図1は、本発明に係るレシプロ式内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構を簡略的に示す断面対応図である。このレシプロ式内燃機関Eは、複数(例えば、4又は6個)のシリンダ6が気筒列方向に沿って一列に配列された直列多気筒内燃機関であって、車両前方に配置されたエンジンルーム内に機関上下方向Fhが車両鉛直方向に沿うとともに機関幅方向Fbが車両前後方向に沿う横置き姿勢で搭載される。
【0015】
シリンダブロック21にはシリンダ6が気筒列方向Flに沿って複数形成されており、各シリンダ6内にピストン3が摺動可能に嵌合している。シリンダブロック21の上面には、シリンダ6の上面を覆うようにシリンダヘッド8が固定されており、このシリンダヘッド8の下面には、ピストン3の上面との間に燃焼室22を画成するペントルーフ型の燃焼室22が形成されている。シリンダヘッド8の上面には、このシリンダヘッド8とともに吸気カムシャフト9I及び排気カムシャフト9Eを回転可能に支持するヘッドカバー23が固定されている。また、シリンダヘッド8には、燃焼室22に接続する吸気ポート24I及び排気ポート24Eが形成されている。シリンダヘッド8の側面に取り付けられる排気マニホールド25Eには、排気ポート24Eに連通する内部通路が形成されている。また、シリンダブロック21の下面には、潤滑油を受け止めて貯留するオイルパン26が取り付けられている。
【0016】
このレシプロ式内燃機関Eでは、ピストン3とクランクシャフト4のクランクピン5とを機械的に連係し、ピストン3のシリンダ6内での往復直線運動をクランクシャフト4の回転運動に変換する主運動系として、ピストン3とクランクピン5とを複数のリンクにより連係した複リンク式ピストン−クランク機構30が用いられている。この複リンク機構30は、シリンダブロック21などの機関本体側に支持される支点31Aを中心に揺動可能なロッカアーム31と、このロッカアーム31の一端とピストン3とを連結する第1リンク32と、ロッカアーム31の他端とクランクシャフト4のクランクピン5とを連結する第2リンク33と、からなるリンク列を有している。ピストン3と第1リンク32の上端とはピストンピン34によって相対回転可能に連結されている。第1リンク32の下端とロッカアーム31の一端とは第1連結ピン35によって相対回転可能に連結されている。ロッカアーム31の他端と第2リンク33の下端とは第2連結ピン36によって相対回転可能に連結されている。
【0017】
この複リンク機構30は、ロッカアーム31の揺動支点31Aの位置を機関本体側に対して変化させることにより、ピストン3のストローク特性及び機関圧縮比を連続的に変化させる可変圧縮比手段を有しており、つまり機関圧縮比を可変とする可変圧縮比機構として構成されている。この可変圧縮比手段は、クランクシャフト4と平行に気筒列方向Flに延びる制御軸41と、各シリンダ6に対応して制御軸41に偏心して設けられた複数の制御偏心軸部42と、を有している。各制御偏心軸部42の円形の外周面には、ロッカアーム31の中央部が揺動可能に取り付けられている。従って、ロッカアーム31は、制御偏心軸部42の中心を支点31Aとして揺動可能である。そして、制御軸41の回転位置を変更することによって、ロッカアーム31の揺動支点31Aの位置が変位し、ロッカアーム31,第1リンク32及び第2リンク33からなるリンク列のリンクジオメトリが変化して、ピストン3の上死点位置及び下死点位置を含めたピストンストローク特性の変化を伴って、機関圧縮比が変化することとなる。制御軸41の回転位置は電動式又は油圧式等の可変圧縮比アクチュエータ43によって変更・保持される。この可変圧縮比アクチュエータ43の動作は、エンジン制御部44から出力される制御信号によって、機関負荷及び機関回転数等の機関運転条件に応じて制御される。
【0018】
次に、図2〜図4は、それぞれ本発明の第1〜第3実施例に係る複リンク機構30のリンクジオメトリを示す説明図である。なお、上記の図1とは左右逆向きのレイアウトとなっている。これらの図2〜図4は、クランク軸方向視の直交座標系を表しており、ロッカアーム41の揺動支点31Aを原点とし、この支点31Aを通ってシリンダ軸方向Fhに機関上方へ延びる直線をY軸、支点31Aを通って機関幅方向Fbに延びる直線をX軸としている。また、図2〜図4の(A)は、ピストン上死点位置におけるリンクジオメトリを示しており、32Aはクランクシャフト4の回転に伴う第1リンク32の重心位置の軌跡を表している。図2〜図4の(B)は、クランクシャフト4の回転に伴うリンク連結点の軌跡を表している。具体的には、34Aはピストンピン34の中心の軌跡、35Aは第1連結ピン35の中心の軌跡、36Aは第2連結ピン36の中心の軌跡、5Aはクランクピン5の中心の軌跡を表している。また、図5は第3実施例における所定のクランク角毎のリンクジオメトリを示している。
【0019】
全実施例に共通するリンクジオメトリとして、ロッカアーム31の支点31Aに対し、ピストンピン34とクランクシャフト4の回転中心4Aとが、機関上方側に位置し、かつ、機関幅方向(X軸方向)で互いに反対側に配置されている。具体的には、図2に示すように、ピストンピン34が第1象限Iに位置し、クランクシャフトの回転中心4Aが第2象限IIに位置している。なお、左右逆向きのレイアウトとすることも可能であり、この場合、ピストンピン34が第2象限IIに位置し、クランクシャフトの回転中心4Aが第1象限Iに位置することとなる。
【0020】
また、全ての実施例に共通する第1の特徴として、クランクシャフトの回転中心4Aが、第1の直線46と第2の直線47の双方に近接するように、第1の直線46と第2の直線47とにより挟まれた領域45内に配置されている。
【0021】
この第1の特徴による作用効果について図6〜図11を参照して説明する。先ず、図6〜図9を参照して、クランクシャフトの回転中心4Aが第1の直線46に近接して配置されることによる作用効果について説明する。図6及び図7は、ピストン下死点(A)及びピストン上死点(B)でのリンクレイアウトを示しており、図6は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第1の直線46上に配置されているリンクレイアウト、図7は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第1の直線46から大きく離間しているリンクレイアウトを示している。また、図中の実線で示すリンク線は、ピストン上死点位置及び下死点位置でのものであり、破線のリンク線は、ピストン上死点位置及び下死点位置に対して所定のクランク角度αだけ変位した位置でのものである。また、図8は図6のリンクレイアウトにおける第2連結ピン36の軌跡36Aを直線上に投影した図であり、図9は図7のリンクレイアウトにおける第2連結ピン36の軌跡36Aを直線上に投影した図である。
【0022】
ロッカアーム31と第2リンク33とを回転可能に連結する第2連結ピン36の中心は、クランクシャフト4の回転に伴ってロッカアーム31の支点31Aを中心とする半円弧状の軌跡36Aを揺動運動する。そして、ピストン下死点(A)のときには、クランクシャフト4のクランクアームのリンク中心線4Bが第2リンク33上に折り畳まれるように同一線上に配置されて、第2連結ピン36が最も引き上げられた軌跡36Aの上端36Bに位置する。このために、ロッカアーム31及び第1リンク32を介してピストン3が最も押し下げられた形となって、ピストン3が下死点に位置することとなる。一方、ピストン上死点(B)のときには、クランクシャフト4のクランクアーム4Bが第2リンク33の同一線上に引き伸ばされるように配置されて、第2連結ピン36が最も押し下げられた軌跡36Aの下端36Cに位置する。このために、ロッカアーム31及び第1リンク32を介してピストン3が最も引き上げられた形となって、ピストン3が上死点に位置することとなる。
【0023】
上記の第1の直線46は、軌跡36Aの上端36Bと下端36Cを結んだ直線である。従って、図6に示すように、クランクシャフトの回転中心4Aが第1の直線46上に配置されている場合、ピストン上死点及びピストン下死点では、第2リンク33が第1の直線46上に配置されることとなり、クランク角αの変化に対するロッカアーム31(第2連結ピン36)の揺動角β1,β2がほぼ同等かつ小さくなり、ひいては、ロッカアーム31の角速度及び角加速度がほぼ同等かつ小さなものとなる。この結果、ピストン上死点及びピストン下死点の近傍でのピストン3の変位,速度及び加速度がほぼ等しくなるとともに、その値そのものも低く抑制されたものとなる。従って、上記実施例のようにクランクシャフトの回転中心4Aを第1の直線46に近接して配置することによって、高次振動成分、特に、回転二次振動成分を大幅に抑制することができる。
【0024】
一方、図7に示すように、クランクシャフトの回転中心4Aが第1の直線46から大きく離れて配置されていると、ピストン上死点及びピストン下死点の近傍では、第2リンク33と第1の直線46とに大きな角度差を生じ、ピストン上死点・下死点の近傍におけるクランクシャフト4の回転角αの変化に対し、ロッカアーム41(第2連結ピン36)の揺動角β3,β4が大きくなり、この例ではピストン下死点近傍での揺動角度β3に比してピストン上死点近傍での揺動角度β4が大きくなり、その角速度や角加速度も大きくなる。この結果、図6のようにクランクシャフトの回転中心4Aを第1の直線46上に配置したものに比して、ピストン上死点及びピストン下死点の近傍でピストン3の変位,速度及び加速度が増大し、かつ、その偏差も大きくなるために、高次振動成分、特に、回転二次振動成分が増大する。
【0025】
次に、図10及び図11を参照して、クランクシャフトの回転中心4Aが第2の直線47に近接して配置されることによる作用効果について説明する。図10及び図11は、ピストン下死点(A)でのリンクレイアウトを示しており、図10は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第2の直線47上に配置されているリンクレイアウト、図11は、クランクシャフト4の回転中心4Aが第2の直線47から大きく離間しているリンクレイアウトを示している。また、図中の実線のリンク線はピストン上死点位置でのものであり、破線のリンク線はピストン上死点位置に対して所定のクランク角αだけ進み側、遅れ側の双方に離れた位置でのものである。
【0026】
上述した第2の直線47は、ピストン上死点のクランク角位置において、ロッカアーム31の支点31Aを通り、この支点31Aと第2連結ピンの中心36Cとを結ぶ直線に対して直交する直線である。従って、図10に示すように、クランク中心4Aが第2の直線47上に配置されていると、ピストン上死点では第2リンク33のリンク中心線とクランクアーム4Bの中心線とが引き延ばされた形で同一線上、つまり第2の直線47に配置されることから、クランクシャフトの回転中心4Aが第2の直線47上に配置されることとなる。この結果、ピストン上死点から所定のクランク角度αだけ離れたピストン下死点から上死点に向かう上り区間とピストン上死点から下死点に向かう下り区間とで、ロッカアーム31の揺動角度β5,β6が小さくなるとともに、揺動角度β5,β6及びその角速度や角加速度がほぼ等しくなり、ひいてはピストン3の変位、速度及び加速度が小さくかつほぼ等しくなる。従って、クランクシャフトの回転中心4Aを第2の直線47に近接して配置することによって、特に大きな燃焼荷重が作用するピストン上死点近傍における上り区間と下り区間とで、ピストンの変位、速度及び加速度を小さくすることができるとともに、その偏差・ばらつきを低減することができ、これによって、高次振動成分、特に、三次及び四次の振動成分を大幅に抑制することができる。
【0027】
これに対して、図11に示すように、クランクシャフトの回転中心4Aが第2の直線47から大きく離れて配置されていると、図10の例に比して、ピストン上死点から所定のクランク角度αにおける上り区間と下り区間とで、ロッカアーム31の揺動角度及びその角速度や角加速度が大きく異なり、ひいてはピストンの変位、速度及び加速度が大きく異なるものとなる。
【0028】
このようなことから、クランクシャフトの回転中心4Aを、第1の直線46と第2の直線47とにより挟まれた領域45内に配置して、第1の直線46と第2の直線47の双方に近接する位置に配置することによって、複リンク機構に特有の高次振動成分をバランス良く効果的に低減し、振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0029】
第2の特徴として、図3,図4に示す第2,第3実施例では、クランクピン5の中心の軌跡5Aが、第1の直線46と第2の直線47とにより挟まれた領域45内に内包されるように配置されている。つまり、クランクピン5のクランクスローを短くすることなどのリンクレイアウトの設定によって、クランクピン5の中心の軌跡5Aの全てが領域45内に含まれるように設定している。これによって、クランクピン5の中心位置が第1の直線46と第2の直線47の双方に更に近接する形となって、複リンク機構に特有の高次振動成分を更に確実に低減して、振動や騒音の発生を抑制することができる。また、クランクピン5の中心の軌跡5Aを領域45に内包させることで、クランクスロー4Bの短縮化及び第2リンク33の長尺化が図られ、第2リンク33の揺動角(例えば、第2リンク33の重心位置を原点する座標系における第2リンク33の重心位置まわりの振れ角)が小さくなるために、振動成分を抑制することができる。
【0030】
第3の特徴として、図4に示すように、ロッカアーム31の支点31Aと、このロッカアーム31と第1リンク32との連結点である第1連結ピン35と、を結ぶ線を第1アーム中心線31B、ロッカアーム31の支点31Aと、このロッカアームと第2リンクとの連結点である第2連結ピン36と、を結ぶ線を第2アーム中心線31Cとすると、クランクシャフトの回転に伴う第1連結ピン35の揺動軌跡35Aにおける、クランク軸方向とシリンダ中心線6Aとに直交する機関幅方向における距離35Bが最小となるように、第1アーム中心線31Bと第2アーム中心線31Cとの挟角γが設定されている。言い換えると、第1連結ピン軌跡35Aの上死点位置及び下死点位置である両端を結ぶ直線がシリンダ中心線6Aと一致する場合に、上記の距離35Bが最小となることから、第1連結ピン35の軌跡35Aの両端を結ぶ直線がシリンダ中心線6Aと一致するように、上記の挟角γが設定されている。すなわち、クランクシャフトの回転中心4A(あるいはクランクピン軌跡5A)が領域45に位置するように第2連結ピン36の揺動軌跡36Aを設定した上で、更に、上記の距離35Bが最小となるように挟角γが設定されている。
【0031】
このように、上記の距離35Bを最小とし、ピストン上死点位置での第1リンク32のリンク中心線をシリンダ中心線6Aと平行とすることで、クランクシャフトの回転に伴う第1リンク32の機関幅方向(スラスト−反スラスト方向)における振れ幅を小さくして、ピストンストローク長を長く確保しつつ、第1リンク32とシリンダ下端との干渉を回避するとともに、振動・騒音を抑制することができる。
【0032】
このような挟角γを実現する具体的な構成について、図12を参照して説明する。図12は、図4(B)に示すリンクレイアウトを、ロッカアームの支点31Aを原点とし、この支点31Aから第1リンク32とロッカアーム31との連結点である第2連結ピン36へ向かう方向をX軸とした座標系で示したものである。同図に示すように、第2リンク33とロッカアーム31との連結点である第2連結ピン軌跡36Aに対し、クランクシャフトの回転中心4Aがロッカアームの支点31Aと機関幅方向について反対側に配置されるとともに、ロッカアームの支点31Aに対し、クランクシャフトの回転中心4Aがシリンダ中心線6Aと機関幅方向について反対側に配置されている。そして、第2リンク33とロッカアーム31との連結点である第2連結ピン36が、この座標系における第3象限IIIに配置されている。言い換えると、第2ピン36によるリンク連結点が、X軸方向に平行なロッカアーム31の第1アーム中心線31Bよりもクランクシャフトの回転中心4Aから遠い側に配置されている。このように第3象限IIIに第2連結ピン36を配置することで、第2連結ピン36が第2象限IIに配置されている場合に比して、第1連結ピンの軌跡35Aにおける機関幅方向の距離35Bを短くすることができる。
【0033】
次に、第3の特徴として、第2リンク33のリンク長、つまりピストンピン34と第1連結ピン35との中心間距離が、第1リンク32のリンク長、つまり第2連結ピン36とクランクピン5との中心間距離よりも長く設定されている。ここで、第1リンク32は、一方のピストンピン34側が上下運動で、他方の第1連結ピン35側が揺動運動であるのに対し、第2リンク33は、一方の第2連結ピン36側が揺動運動で、他方のクランクピン5側が回転運動という、第1リンク32に比して複雑な運動を行うものであるために、振動を生じ易い。従って、上述したように第2リンク33を長くすることで、振動悪化の要因となる第2リンク33の揺動角を小さく抑えることができ、ひいては、複リンク機構30全体の振動を低減することができる。
【0034】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。例えば、上記実施例では、可変圧縮比機構としての機能を備えた複リンク式ピストン−クランク機構について説明しているが、これに限らず、可変圧縮比機構としての機能を備えない簡素な複リンク式ピストン−クランク機構に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
E…内燃機関
3…ピストン
4…クランクシャフト
5…クランクピン
6…シリンダ
8…シリンダヘッド
10…ドライブシャフト
30…複リンク式ピストン−クランク機構
31…ロッカアーム
32…第1リンク
33…第2リンク
34…ピストンピン
35…第1連結ピン
36…第2連結ピン
41…制御軸(可変圧縮比手段)
42…制御偏心軸部(可変圧縮比手段)
43…アクチュエータ(可変圧縮比手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支点を中心に揺動可能に機関本体に支持されるロッカアームと、このロッカアームの一端とピストンのピストンピンとを連結する第1リンクと、上記ロッカアームの他端とクランクシャフトのクランクピンとを連結する第2リンクと、を有する内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構において、
上記ロッカアームと第2リンクとの連結点の、クランクシャフトの回転に伴う半円弧状の軌跡の端部同士を結んだ直線を第1の直線とし、
ピストン上死点のときに、上記ロッカアームと第2リンクとの連結点を通って、この連結点とロッカアームの支点とを結ぶ直線に直交する直線を第2の直線とすると、
上記第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に、上記クランクシャフトの回転中心を配置したことを特徴とする内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項2】
上記第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に、上記クランクシャフトのクランクピンの回転軌跡を配置したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項3】
上記ロッカアームの支点と、このロッカアームと第1リンクとの連結点と、を結ぶ線を第1アーム中心線、
上記ロッカアームの支点と、このロッカアームと第2リンクとの連結点と、を結ぶ線を第2アーム中心線とすると、
上記ロッカアームと第1リンクとの連結点の軌跡における、クランク軸方向とシリンダ軸方向とに直交する機関幅方向の距離が最小となるように、上記第1アーム中心線と第2アーム中心線との挟角が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項4】
上記第2リンクが第1リンクよりも長く設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項5】
上記ロッカアームの支点を原点とし、この支点を通ってシリンダ軸方向と平行に機関上方へ延びる直線をY軸とする直交座標系において、
上記ピストンピンが第1象限に位置する場合に、上記クランクシャフトの中心が第2象限に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項6】
上記ロッカアームの支点の位置を変更することにより、機関圧縮比を可変とする可変圧縮比手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項1】
支点を中心に揺動可能に機関本体に支持されるロッカアームと、このロッカアームの一端とピストンのピストンピンとを連結する第1リンクと、上記ロッカアームの他端とクランクシャフトのクランクピンとを連結する第2リンクと、を有する内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構において、
上記ロッカアームと第2リンクとの連結点の、クランクシャフトの回転に伴う半円弧状の軌跡の端部同士を結んだ直線を第1の直線とし、
ピストン上死点のときに、上記ロッカアームと第2リンクとの連結点を通って、この連結点とロッカアームの支点とを結ぶ直線に直交する直線を第2の直線とすると、
上記第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に、上記クランクシャフトの回転中心を配置したことを特徴とする内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項2】
上記第1の直線と第2の直線とに挟まれる領域内に、上記クランクシャフトのクランクピンの回転軌跡を配置したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項3】
上記ロッカアームの支点と、このロッカアームと第1リンクとの連結点と、を結ぶ線を第1アーム中心線、
上記ロッカアームの支点と、このロッカアームと第2リンクとの連結点と、を結ぶ線を第2アーム中心線とすると、
上記ロッカアームと第1リンクとの連結点の軌跡における、クランク軸方向とシリンダ軸方向とに直交する機関幅方向の距離が最小となるように、上記第1アーム中心線と第2アーム中心線との挟角が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項4】
上記第2リンクが第1リンクよりも長く設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項5】
上記ロッカアームの支点を原点とし、この支点を通ってシリンダ軸方向と平行に機関上方へ延びる直線をY軸とする直交座標系において、
上記ピストンピンが第1象限に位置する場合に、上記クランクシャフトの中心が第2象限に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【請求項6】
上記ロッカアームの支点の位置を変更することにより、機関圧縮比を可変とする可変圧縮比手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−225164(P2012−225164A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90735(P2011−90735)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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