説明

内燃機関用オイルポンプ

【課題】オイルポンプ外部から内部への空気の吸い込みを防止することで、エンジンへの給油遅れや給油できない不具合の発生を防止する。
【解決手段】ポンプケース11と、ポンプケース11内に回転可能に支持されたポンプギア12、13とを備え、ポンプギア12、13を回転させることにより吸込側から吐出側にオイルを吐出する内燃機関用オイルポンプにおいて、ポンプケース11に設けられポンプギア12、13の回転軸を支持する軸受部20、21とポンプケース11外部とを連通するオイル通路39を、ポンプケース11内に密閉して設け、オイル通路39の出口43に、オイル通路39からポンプケース11外部へのオイルの排出を許容し、ポンプケース11外部からオイル通路39への空気の吸い込みを阻止するワンウェイバルブ40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプケースと、ポンプケース内に回転可能に支持されたポンプギアとを備える内燃機関用オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのオイルポンプ(内燃機関用オイルポンプ)として、外接ギアオイルポンプが用いられている。外接ギアオイルポンプは、ポンプケースと、ポンプケース内に回転可能に支持され、且つ互いに噛合する複数のポンプギア(ポンプドリブンギア、ドライブギア)とを備えている。外接ギアオイルポンプは、ポンプギアが回転することにより、一次側(吸込側)に負圧を発生させてオイルを吸い込み、一次側(吸込側)から二次側(吐出側)にオイルを吐き出している。
【0003】
また、ポンプケースに設けられポンプギアの回転軸を支持する軸受部への給油の為、ポンプケースの内側面に、二次側(吐出側)から軸受部へと延出する給油溝を設けている。ポンプケースの軸受部とポンプギアの回転軸との間には数十μm程度の隙間(クリアランス)があり、ポンプケースの軸受部及びポンプギアの回転軸を潤滑したオイルは前記隙間を通ってポンプケース外へと排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−233776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、外接ギアオイルポンプは、ポンプギアが回転することにより、一次側(吸込側)に負圧を発生させてオイルを吸い込み、一次側(吸込側)から二次側(吐出側)にオイルを吐き出している。
【0006】
ポンプケースの軸受部のオイルが無くなると、ポンプケースの軸受部とポンプギアの回転軸との間の隙間からオイルポンプ内部に空気を吸い込むことにより、ストレーナーからオイルを吸えなくなり、エンジンへの給油遅れや給油できないなどの不具合が発生する虞がある。エンジンへの給油遅れや給油できない不具合が発生すると、最悪の場合エンジンが焼きつく可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、オイルポンプ外部から内部への空気の吸い込みを防止することで、エンジンへの給油遅れや給油できない不具合の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ポンプケースと、該ポンプケース内に回転可能に支持されたポンプギアとを備え、該ポンプギアを回転させることにより吸込側から吐出側にオイルを吐出する内燃機関用オイルポンプにおいて、前記ポンプケースに設けられ前記ポンプギアの回転軸を支持する軸受部と前記ポンプケース外部とを連通するオイル通路を、前記ポンプケース内に密閉して設け、該オイル通路の出口に、前記オイル通路から前記ポンプケース外部へのオイルの排出を許容し、前記ポンプケース外部から前記オイル通路への空気の吸い込みを阻止するワンウェイバルブを設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オイルポンプ外部から内部への空気の吸い込みを防止することで、エンジンへの給油遅れや給油できない不具合の発生を防止することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関用オイルポンプの正面断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る内燃機関用オイルポンプの正面断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る内燃機関用オイルポンプの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1から図3に示すように、本実施形態に係るエンジンのオイルポンプ(内燃機関用オイルポンプ)10は、外接ギアオイルポンプである。外接ギアオイルポンプ10は、ポンプケース(ケーシング)11と、ポンプケース11内に回転可能に支持され、且つ互いに噛合する複数のポンプギア(ポンプドリブンギア12、ドライブギア13)とを備えている。なお、図1は図3のI−I線断面を示し、図2は図3のII−II線断面を示す。
【0013】
ポンプケース11内は、ポンプドリブンギア12及びドライブギア13によって、一次側(吸込側)、即ち一次側オイル室(吸込側オイル室)14と、二次側(吐出側)、即ち二次側オイル室(吐出側オイル室)15とに区画されている。
【0014】
ポンプケース11は、ギアケース16と、ギアカバー17とによって構成されている(図3参照)。これらギアケース16及びギアカバー17にはそれぞれ、ポンプドリブンギア12の回転軸18又はドライブギア13の回転軸19を支持する軸受部20、21が形成されており、軸受部20、21によってポンプドリブンギア12の回転軸18及びドライブギア13の回転軸19が回転可能に支持されている。ポンプドリブンギア12の回転軸18又はドライブギア13の回転軸19の外周面と軸受部20、21の内周面との間には数十μm程度の隙間(クリアランス)があり、ポンプドリブンギア12の回転軸18又はドライブギア13の回転軸19の外周面と軸受部20、21の内周面との間にオイルが介在するようになっている。ポンプケース11(ギアケース16及びギアカバー17)は、図示しない固定部材によりエンジンのシリンダブロックに固定され、且つシリンダブロックとオイルパンとで囲われた空間に配設されている。
【0015】
ギアケース16は、ポンプドリブンギア12の一側面22及びドライブギア13の一側面23と対向する第一内側面24(図2及び図3参照)と、ポンプドリブンギア12の歯先面25と対向するポンプドリブンギア側内周面26と、ドライブギア13の歯先面27と対向するドライブギア側内周面28とを有している。ポンプドリブンギア12の一側面22及びドライブギア13の一側面23と第一内側面24との間には数十μm程度の隙間(クリアランス)があり、ポンプドリブンギア12の一側面22及びドライブギア13の一側面23と第一内側面24との間にオイルが介在するようになっている。また、ポンプドリブンギア12の歯先面25とポンプドリブンギア側内周面26との間には数十μm程度の隙間(クリアランス)があり、ポンプドリブンギア12の歯先面25とポンプドリブンギア側内周面26との間にオイルが介在するようになっている。さらに、ドライブギア13の歯先面27とドライブギア側内周面28との間には数十μm程度の隙間(クリアランス)があり、ドライブギア13の歯先面27とドライブギア側内周面28との間にオイルが介在するようになっている。
【0016】
本実施形態では、ギアケース16の第一内側面24に、ポンプドリブンギア12とドライブギア13との噛み合い部近傍且つポンプドリブンギア12の回転中心とドライブギア13の回転中心とを結ぶ中心線Zよりも吸込側に設けられ、中心線Zと平行な縁部29を有する吸込側逃げ溝30を設けている(図2参照)。なお、図2中、吸込側逃げ溝30には網掛けが施されている。
【0017】
また、本実施形態では、ギアケース16の第一内側面24に、ポンプドリブンギア12とドライブギア13との噛み合い部近傍且つ中心線Zよりも吐出側に設けられ、中心線Zと平行な縁部31を有する吐出側逃げ溝32を設けている(図2参照)。本実施形態では、吐出側逃げ溝32の縁部31は中心線Z上に配設されている。なお、図2中、吐出側逃げ溝32には網掛けが施されている。
【0018】
さらに、本実施形態では、ギアケース16の第一内側面24に、軸受部20、21への給油の為、吐出側から軸受部20、21へと各々延びる給油溝33を設けている(図2参照)。オイルは給油溝33を通って吐出側オイル室15から軸受部20、21へと供給され、ポンプドリブンギア12の回転軸18及びドライブギア13の回転軸19と軸受部20、21とを潤滑するようになっている。なお、図2中、給油溝33には網掛けが施されている。
【0019】
ギアカバー17は、ポンプドリブンギア12の他側面34及びドライブギア13の他側面35と対向する第二内側面36(図3参照)と、吸込側に貫通形成された吸込口37(図1参照)と、吐出側に貫通形成された吐出口38(図1参照)とを有している。ポンプドリブンギア12の他側面34及びドライブギア13の他側面35と第二内側面36との間には数十μm程度の隙間(クリアランス)があり、ポンプドリブンギア12の他側面34及びドライブギア13の他側面35と第二内側面36との間にオイルが介在するようになっている。吸込口37にはオイルストレーナー等を有する吸込通路(図示せず)が接続され、吐出口38にはオイルクーラー等を有する吐出通路(図示せず)が接続されている。
【0020】
ポンプドリブンギア(駆動ギア)12は、所定歯数の外歯を有する平歯車である。ポンプドリブンギア12の回転軸18は、図示しない伝達機構を介してエンジンのクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転によりポンプドリブンギア12が矢印X方向に回転される(図1参照)。
【0021】
ドライブギア(従動ギア)13は、ポンプドリブンギア12と同一歯数の外歯を有する平歯車である。ドライブギア13はポンプドリブンギア12と噛合しているので、ポンプドリブンギア12の回転によりドライブギア13が矢印Y方向に回転される(図1参照)。
【0022】
ここで、本実施形態に係る外接ギアオイルポンプ10では、外接ギアオイルポンプ10内部から軸受部20、21への給油は可能だが外接ギアオイルポンプ10外部から内部に空気を吸い込まないようにする為、ポンプケース11に設けられた軸受部20、21とポンプケース11外部とを連通するオイル通路39を、ポンプケース11内に密閉して設け、オイル通路39の出口43にワンウェイバルブ(一方向弁)40を設けている(図3参照)。オイル通路39は、ギアケース16に形成されたギアケース側オイル通路41と、ギアカバー17に形成されたギアカバー側オイル通路42とによって構成されている。ワンウェイバルブ40は、オイル通路39からポンプケース11外部へのオイルの排出を許容し、ポンプケース11外部からオイル通路39への空気の吸い込みを阻止するものである。本実施形態では、ワンウェイバルブ40は、オイル通路39の出口43を開閉するボール44と、ボール44を閉方向に付勢するスプリング45とを有している。本実施形態では、オイル通路39の出口43及びワンウェイバルブ40は外接ギアオイルポンプ10全体で一つ設けているが、軸受部20、21毎にオイル通路39の出口43及びワンウェイバルブ40を各々設けても良い。
【0023】
また、本実施形態では、ポンプドリブンギア12の回転軸18の一端部はギアケース16に設けられた貫通穴46を通して外接ギアオイルポンプ10内部から外部へと延出している(図3参照)。貫通穴46から外接ギアオイルポンプ10内部に空気を吸い込まないようにする為、ポンプドリブンギア12の回転軸18の外周面と貫通穴46の内周面との間の隙間(クリアランス)を軸受部20、21との隙間と比べて狭くし(例えば、数μm程度)又はポンプドリブンギア12の回転軸18の外周面と貫通穴46の内周面との間にシール部材(図示せず)を設ける。
【0024】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0025】
ポンプドリブンギア12及びドライブギア13が回転することにより、ポンプドリブンギア12の歯とギアケース16の第一内側面24及びポンプドリブンギア側内周面26とギアカバー17の第二内側面36との間の空間によって、オイルが吸込側オイル室14から吐出側オイル室15へと搬送される。また、ポンプドリブンギア12及びドライブギア13が回転することにより、ドライブギア13の歯とギアケース16の第一内側面24及びドライブギア側内周面28とギアカバー17の第二内側面36との間の空間によっても、オイルが吸込側オイル室14から吐出側オイル室15へと搬送される。
【0026】
また、オイルは給油溝33を通って吐出側オイル室15から軸受部20、21へと供給され、ポンプドリブンギア12の回転軸18及びドライブギア13の回転軸19と軸受部20、21とを潤滑したオイルはポンプドリブンギア12の回転軸18又はドライブギア13の回転軸19の外周面と軸受部20、21の内周面との間の隙間を通ってオイル通路39(ギアケース側オイル通路41、ギアカバー側オイル通路42)に導入される。そして、オイル通路39内のオイルの圧力がワンウェイバルブ40の開弁圧を超えるとワンウェイバルブ40が開かれ、オイル通路39内のオイルの一部がオイル通路39の出口43から外接ギアオイルポンプ10外部へ排出されて、オイルパンへと戻される。
【0027】
本実施形態に係る外接ギアオイルポンプ10によれば、ポンプケース11に設けられポンプドリブンギア12又はドライブギア13の回転軸を支持する軸受部20、21とポンプケース11外部とを連通するオイル通路39を、ポンプケース11内に密閉して設け、オイル通路39の出口43に、オイル通路39からポンプケース11外部へのオイルの排出を許容し、ポンプケース11外部からオイル通路39への空気の吸い込みを阻止するワンウェイバルブ40を設けることにより、外接ギアオイルポンプ10外部から内部への空気の吸い込みを防止することができ、エンジンへの給油遅れや給油できないなどの不具合の発生を防止することができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0029】
例えば、本発明は、外接ギアオイルポンプに限らず、内接ギアオイルポンプに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 内燃機関用オイルポンプ(外接ギアオイルポンプ)
11 ポンプケース
12 ポンプドリブンギア(ポンプギア)
13 ドライブギア(ポンプギア)
20 軸受部
21 軸受部
39 オイル通路
40 ワンウェイバルブ
43 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプケースと、該ポンプケース内に回転可能に支持されたポンプギアとを備え、該ポンプギアを回転させることにより吸込側から吐出側にオイルを吐出する内燃機関用オイルポンプにおいて、
前記ポンプケースに設けられ前記ポンプギアの回転軸を支持する軸受部と前記ポンプケース外部とを連通するオイル通路を、前記ポンプケース内に密閉して設け、
該オイル通路の出口に、前記オイル通路から前記ポンプケース外部へのオイルの排出を許容し、前記ポンプケース外部から前記オイル通路への空気の吸い込みを阻止するワンウェイバルブを設けた
ことを特徴とする内燃機関用オイルポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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