説明

内皮機能障害に伴う障害の治療のための免疫調節化合物の使用

内皮機能障害および他の障害を治療、予防または管理する方法を開示する。その方法は、本明細書で提供する免疫調節化合物の投与を包含する。その免疫調節化合物を第2の活性薬剤と共に用いる治療をさらに説明する。本明細書で提供する方法での使用に適した医薬組成物および単一の単位剤形も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本明細書では、内皮機能障害(endothelial dysfunction)に伴う様々な障害を治療(treating)、予防(preventing)または管理(managing)する方法を提供する。免疫調節化合物を、任意選択で他の第2の活性薬剤と共に用いる医薬組成物および投与レジメン(dosing regimens)も提供する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
2.1 内皮機能障害
内皮機能障害は、血管、例えば動脈および静脈の内部表面を覆う細胞である内皮によって実行される正常な生化学的過程の生理学的機能障害である。内皮機能障害は、凝固の媒介、血小板粘着、免疫機能、血管内および血管外空間の容積および電解質含有量の制御を含む内皮細胞の正常機能が損なわれることを特徴とするものである。
【0003】
内皮機能障害は様々な因子によってもたらされる可能性があるが、その因子の1つは、機能内皮細胞中への内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells, “EPCs”)(「EPC」)の分化の機能的障害である。一般に、EPCを増大させる、したがって機能内皮細胞中への分化を高めるために、2つの治療アプローチが現在用いられている。その第1のアプローチは、GM−CSF、G−CSFおよびVEGFなどの成長因子またはスタチンなどの小分子を用いてEPCの増殖(expansion)および動員を対象とする。第2のアプローチは、全身循環させる静脈内注入または虚血部位での大動脈内注入を用いたEPCの移植を対象とする。
【0004】
これらのアプローチは様々な成功度で実施されているが、正常でかつ機能的な内皮細胞へのEPCの分化を高めるための効果的な方法が必要である。
【0005】
2.2 免疫調節薬
TNF−αの異常産生に伴う疾患を治療するのに安全でかつ効果的に使用できる化合物を提供することを目的としていくつかの研究がなされてきている。例えば、Marriott、J.B等、Expert Opin.Biol.Ther.1(4):1〜8頁(2001年);G.W.Muller等、Journal of Medicinal Chemistry 39(17):3238〜3240頁(1996年);およびG.W.Muller等、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 8:2669〜2674頁(1998年)を参照されたい。いくつかの研究は、LPS刺激PBMCにより、TNF−α産生を強力に阻害するその能力のため選択された化合物の群に焦点を当てている。L.G.Corral等、Ann.Rheum.Dis.58:(Suppl I)1107〜1113頁(1999年)。免疫調節薬と称されるこれらの化合物はTNF−αの強力な阻害だけでなく、LPS誘発による単球IL1βおよびIL12産生の著しい阻害も示す。LPS誘発IL6は、部分的ではあるが、免疫調節化合物によっても阻害される。これらの化合物は、LPS誘発IL10.Idの強力な刺激物質である。免疫調節薬の具体的な例には、これらに限定されないが、米国特許第6,281,230号および同第6,316,471号(どちらもG.W.Muller等)に記載されている置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)フタルイミドおよび置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドールが含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.サマリー(SUMMARY)
本明細書では、機能内皮細胞へのEPCの分化を高める(enhancing the differentiation of EPCs into functional endothelial cells)方法を提供する。一実施形態では、この方法は、本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体もしくはプロドラッグを、任意選択で、これらに限定されないが、VEGF、FGFおよびSCFなどの成長因子の存在下でEPCと接触させることを含む。他の実施形態では、この方法は、内皮機能障害に苦しむかまたはそれに苦しむことになる恐れのある患者(patient、受動者)に、有効量の本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体もしくはプロドラッグを、任意選択で、これらに限定されないが、VEGF、FGFおよびSCFなどの成長因子と併用して投与することを含む。
【0007】
本明細書では、内皮機能障害に伴う様々な障害を治療および予防する方法も提供する。この方法は、治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体もしくはプロドラッグを患者に投与することを含む。
【0008】
本明細書では、治療上または予防上有効な量の本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグを患者に投与することを含む、内皮機能障害に伴う様々な障害を管理する方法も提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、内皮機能障害に伴う障害を治療、予防または管理するのに用いられる従来の治療法と合わせて、免疫調節化合物を投与する。そうした従来の治療法の例には、これらに限定されないが、化学的薬剤および適応免疫療法が含まれる。
【0010】
本明細書では、医薬組成物、単一の単位剤形、投与レジメンならびに免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグと第2のすなわち追加の活性薬剤を含むキットも提供する。第2の活性薬剤は、薬物の特定の組合せまたは「カクテル」を含む。
【0011】
4.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、CD133前駆細胞の内皮細胞の分化に対する免疫調節化合物の効果を検討するための手順の略図である。
【図2】図2は、免疫調節化合物2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩の存在下、内皮成長因子により分化されたCD133細胞の形態を示す図である。
【図3A】図3Aは、異なる血清(FBSおよびHS:条件1;またはFBSのみ:条件2)を用いて、成長因子および免疫調節化合物2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩その存在下、または成長因子だけの存在下で分化されたCD133細胞の表現型をまとめた表である。
【図3B】図3Bは、表示した様々な条件でのVEGFR−2(KDR)の表面発現を示す図である。
【図3C】図3Cは、表示した様々な条件でのVE−カドヘリンの表面発現を示す図である。
【図3D】図3Dは、表示した様々な因子の存在下で分化されたCD133細胞をまとめた表である。
【図4】図4は、内皮細胞系列の方へ分化されたCD133細胞の機能的特性評価を示す図である。フローサイトメトリーを用いて、成長因子のみ、0.05%と0.1%のDMSO、2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリンおよびサリドマイドの存在下で培養されたUAE1−レクチン発現細胞によるアセチルLDLの再摂取を測定した。
【図5】図5は、成長因子のみ、2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩、DMSO、1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリン、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリンおよびサリドマイドの存在下で培養されたCD133+細胞中での内皮マーカーの調節を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2、図3A、図3B、図3C、図3D、図4および図5では、化合物1は2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩を指す。
【0014】
5.詳細な説明
一実施形態では、機能内皮細胞へのEPCの分化を高める方法を提供する。一実施形態では、この方法は、本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体もしくはプロドラッグを、任意選択で、これらに限定されないが、VEGF、FGFおよびSCFなどの成長因子の存在下でEPCと接触させることを含む。他の実施形態では、この方法は、内皮機能障害に苦しむかまたはそれに苦しむことになる恐れのある患者に、有効量の本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体もしくはプロドラッグを、任意選択で、これらに限定されないが、VEGF、FGFおよびSCFなどの成長因子と併用して投与することを含む。
【0015】
他の実施形態では、治療上または予防上有効な量の本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグを患者に投与することを含む、内皮機能障害に伴う障害を治療、管理および/または予防する方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、免疫調節化合物を、他の薬物(「第2の活性薬剤」)またはそうした障害を治療、管理および/または予防する方法と合わせて投与する。第2の活性薬剤には、これらに限定されないが、小分子および巨大分子(例えば、タンパク質および抗体)が含まれる。その例を本明細書で提供する。
【0017】
本明細書で開示する方法で使用できる医薬組成物(例えば、単一の単位剤形)も提供する。具体的な医薬組成物は、本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグと第2の活性薬剤を含む。
【0018】
5.1 定義
本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」という用語は、別段の表示がない限り、その用語が指す化合物の非毒性の酸および塩基付加塩を包含する。許容される非毒性酸付加塩には、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボル酸、エナント酸などを含む当業界で知られている有機および無機の酸または塩基から誘導されるものが含まれる。
【0019】
本来酸性である化合物は、薬学的に許容される様々な塩基と塩を形成することができる。そうした酸性化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を作製するのに使用できる塩基は、非毒性の塩基付加塩すなわち、これらに限定されないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはカリウム塩などの薬理学的に許容されるカチオンを含む塩を形成するものである。適切な有機塩基には、これらに限定されないが、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)(meglumaine (N-methylglucamine))、リシンおよびプロカインが含まれる。
【0020】
本明細書で用いる「プロドラッグ」という用語は、別段の表示がない限り、生物学的状況下で(インビトロまたはインビボで)加水分解、酸化または他の反応をしてその化合物を提供できる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例には、これらに限定されないが、バイオ加水分解性アミド、バイオ加水分解性エステル、バイオ加水分解性カルバメート、バイオ加水分解性カーボネート、バイオ加水分解性ウレイドおよびバイオ加水分解性ホスフェート類似物などのバイオ加水分解性部分を含む免疫調節化合物の誘導体が含まれる。プロドラッグの他の例には、−NO、−NO、−ONOまたは−ONO部分を含む免疫調節化合物の誘導体が含まれる。プロドラッグは一般に、1Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery、172〜178、949〜982頁(Manfred E.Wolff ed.、5th ed.1995年)およびDesign of Prodrugs(H.Bundgaard ed.、Elselvier、New York 1985年)に記載されている方法などの周知の方法を用いて調製することができる。
【0021】
本明細書で用いる「バイオ加水分解性アミド」、「バイオ加水分解性エステル」、「バイオ加水分解性カルバメート」、「バイオ加水分解性カーボネート」、「バイオ加水分解性ウレイド」、「バイオ加水分解性ホスフェート」という用語は、別段の表示がない限り:1)その化合物の生物学的活性を妨げないが、摂取、作用の持続時間または作用の発現などのインビボでの有利な特性をその化合物に付与することができるか;あるいは、2)生物学的に不活性であるが、インビボで生物学的に活性な化合物に転換される化合物のアミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイドまたはホスフェートをそれぞれ意味する。バイオ加水分解性エステルの例には、これらに限定されないが、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(アセトキシルメチル、アセトキシエチル、アミノカルボニルオキシメチル、ピバロイルオキシメチルおよびピバロイルオキシエチルエステルなど)、ラクトニルエステル(フタリジルおよびチオフタリジルエステルなど)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(メトキシカルボニル−オキシメチル、エトキシカルボニルオキシエチルおよびイソプロポキカルボニルオキシエチルエステルなど)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、およびアシルアミノアルキルエステル(アセトアミドメチルエステルなど)が含まれる。バイオ加水分解性アミドの例には、これらに限定されないが、低級アルキルアミド、α−アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミドおよびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが含まれる。バイオ加水分解性カルバメートの例には、これらに限定されないが、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環および複素芳香族アミンならびにポリエーテルアミンが含まれる。
【0022】
その方法および組成物において使用する免疫調節化合物はキラル中心を含む。したがって、R型およびS型の鏡像異性体のラセミ混合物として存在することができる。本明細書で提供する方法および組成物は、化合物の立体構造的に純粋な形態物の使用、ならびにこれらの形態の混合物の使用を包含する。例えば、等量かまたは等量でない鏡像異性体(複数)を含む混合物を、本明細書で提供する方法および組成物において使用することができる。これらの異性体は、非対称的に合成するか、またはキラルカラムもしくはキラル分割剤などの標準的方法を用いて分割することができる。例えば、Jacques、J等、Enantiomers、Racemates and Resolutions(Wiley−Interscience、New York、1981年);Wilen、S.H等、Tetrahedron 33:2725頁(1977年);Eliel、E.L.、Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill、NY、1962年);およびWilen、S.H.、Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions 268頁(E.L.Eliel、Ed.、Univ.of Notre Dame Press、Notre Dame、IN、1972年)を参照されたい。
【0023】
本明細書で用いる「立体構造的に純粋な」という用語は、別段の表示がない限り、ある化合物が実質的に1つの立体異性体を含み、他の立体異性体は実質的に含まないことを意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体構造的に純粋な化合物は、実質的に1つの鏡像異性体を含み、反対の鏡像異性体は実質的に含まない。2つのキラル中心を有する立体構造的に純粋な化合物は実質的に1つの立体異性体(例えば、ジアステレオ異性体)を含み、その化合物の他のジアステレオマーは実質的に含まない。典型的な立体構造的に純粋な化合物は、その化合物の約80重量%超の1つの立体異性体とその化合物の約20重量%未満の他の立体異性体、その化合物の約90重量%超の1つの立体異性体とその化合物の約10重量%未満の他の立体異性体、その化合物の約95重量%超の1つの立体異性体とその化合物の約5重量%未満の他の立体異性体、その化合物の約97重量%超の1つの立体異性体とその化合物の約3重量%未満の他の立体異性体を含む。本明細書で用いる「立体構造的に高濃度の」という用語は、別段の表示がない限り、化合物の約55重量%超の1つの立体異性体、化合物の60重量%の1つの立体異性体、化合物の約70重量%超または約75重量%超の1つの立体異性体を含む組成物を意味する。本明細書で用いる「鏡像異性的に純粋」という用語は、別段の表示がない限り、1つのキラル中心を有する化合物からなる立体構造的に純粋な組成物を意味する。同様に、「立体構造的に高濃度の」という用語は、1つのキラル中心を有する化合物の立体構造的に高濃度な組成物を意味する。言い換えれば、本明細書で提供する方法は、免疫調節化合物のR型またはS型の鏡像異性体の使用を包含する。
【0024】
本明細書で用いる「治療する(treating)」という用語は、別段の指定がない限り、特定の疾患の症状が発現した後、追加の他の活性薬剤を用いるかまたは用いないで、本明細書で提供する化合物を投与することを指す。
【0025】
本明細書で用いる「予防する(preventing)」という用語は、別段の指定がない限り、症状が発現する前に、特に、内皮機能障害および/またはそれに関連する障害のリスクのある患者に、他の追加の活性化合物を用いるかまたは用いないで、免疫調節化合物で治療するかまたはそれを投与することを指す。「予防」という用語は、特定の疾患の症状の阻止または低減を含む。とりわけ疾患の家族歴を有する患者は、いくつかの実施形態において、予防的レジメンの候補者である。さらに、反復症状の履歴を有する患者もそうした予防の潜在的な候補者である。この関連で、「予防」という用語は、「予防的治療」という用語と互換的に用いることができる。
【0026】
本明細書で用いる「管理する(managing)」という用語は、別段の表示がない限り、疾患の再発を予防または最小化し、かつ/または患者の死亡率を低下させるために、特定の疾患に苦しむ患者を治療することを包含する。
【0027】
5.2 免疫調節化合物(IMMUNOMODULATORY COMPOUNDS)
本明細書で用いる「免疫調節化合物」という用語は、別段の表示がない限り、LPS誘発単球TNF−α、IL−1β、IL−12、IL−6、MIP−1α、MCP−1、GM−CSF、G−CSFおよびCOX−2の産生を阻害する特定の小有機分子を包含する。具体的な免疫調節化合物を以下で論じる。
【0028】
TNF−αは、急性炎症の際にマクロファージおよび単球によって産生される炎症性サイトカインである。TNF−αは、細胞内での広範囲のシグナル伝達現象に関与している。特定の理論に限定されるものではないが、本明細書で提供する免疫調節化合物によって与えられる生物学的効果の1つは、骨髄性細胞TNF−α産生の低減である。本明細書で提供する免疫調節化合物はTNF−αmRNAの分解を増進させることができる。
【0029】
免疫調節化合物の具体的な例には、米国特許第5,929,117号に開示されているものなどの置換スチレンのシアノおよびカルボキシ誘導体;米国特許第5,874,448号および同第5,955,476号に記載されているものなどの1−オキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3−イル)イソインドリンおよび1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3−イル)イソインドリン;米国特許第5,798,368号に記載されているテトラ置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン;これらに限定されないが、米国特許第5,635,517号、同第6,281,230号、同第6,316,471号、同第6,403,613号、同第6,476,052号および同第6,555,554号に記載されているものを含む1−オキソおよび1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン(例えば、サリドマイドの4−メチル誘導体)、置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)フタルイミドおよび置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドール;米国特許第6,380,239号に記載されているインドリン環の4−もしくは5−位で置換された1−オキソおよび1,3−ジオキソイソインドリン(例えば、4−(4−アミノ−1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)−4−カルバモイルブタン酸);米国特許第6,458,810号に記載されている、2−位において2,6−ジオキソ−3−ヒドロキシピペリジン−5−イルで置換されたイソインドリン−1−オンおよびイソインドリン−1,3−ジオン(例えば、2−(2,6−ジオキソ−3−ヒドロキシ−5−フルオロピペリジン−5−イル)−4−アミノイソインドリン−1−オン);米国特許第5,698,579号および同第5,877,200号に開示されている非ポリペプチ環状アミドの部類;ならびに2003年3月6日公開の米国特許公開番号第2003/0045552号、2003年5月22日公開の同第2003/0096841号および国際出願番号第PCT/US01/50401号(国際公開番号第WO02/059106号)に記載されているものなどのイソインドール−イミド化合物が含まれる。本明細書で特定した上記特許および特許出願のそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む。免疫調節化合物にはサリドマイドは含まれない。
【0030】
本明細書で提供する種々の免疫調節化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含み、鏡像異性体のラセミ混合物またはジアステレオマーの混合物として存在することができる。本明細書での方法および組成物は、そうした化合物の立体構造的に純粋な形態物の使用、ならびにこれらの形態の混合物の使用を包含する。例えば、特定の免疫調節化合物の等量かまたは等量でない鏡像異性体(複数)を含む混合物を、本明細書で提供する方法および組成物において使用することができる。これらの異性体は、非対称的に合成するか、またはキラルカラムもしくはキラル分割剤などの標準的方法を用いて分割することができる。例えば、Jacques、J等、Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley−Interscience、New York、1981年);Wilen、S.H等、Tetrahedron 33:2725頁(1977年);Eliel、E.L.、Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill、NY、1962年);およびWilen、S.H.、Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions 268頁(E.L.Eliel、Ed.、Univ.of Notre Dame Press、Notre Dame、IN、1972年)を参照されたい。
【0031】
一実施形態では、提供する免疫調節化合物には、これらに限定されないが、米国特許第5,635,517号(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているベンゾ環中のアミノで置換された1−オキソ−および1,3ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリンが含まれる。これらの化合物は、次の構造I:
【0032】
【化1】


(式中、XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり、Rは水素または低級アルキル、特にメチルである)
を有する。具体的な免疫調節化合物には、これらに限定されないが、
【0033】
【化2】


ならびにその光学的に純粋な異性体が含まれる。これらの化合物は、標準的な合成方法(例えば、米国特許第5,635,517号を参照されたい。これを参照により本明細書に組み込む)により得ることができる。これらの化合物は、Celgene Corporation、Warren、NJから入手することもできる。
【0034】
他の具体的な免疫調節化合物は、米国特許第6,281,230号、同第6,316,471号、同第6,335,349号および同第6,476,052号ならびに国際特許出願番号第PCT/US97/13375号(国際公開番号第WO98/03502号)(そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む)に記載されているものなどの置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)フタルイミドおよび置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドールの部類に属する。代表的な化合物は次式:
【0035】
【化3】


(式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり;
(i)R、R、RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキルもしくは1〜4個の炭素原子のアルコキシであるか、または(ii)R、R、RおよびRの1つは−NHRであり、R、R、RおよびRの残りは水素であり;
は、水素または1〜8個の炭素原子のアルキルであり;
は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキル、ベンジルまたはハロであり;
但し、XおよびYがC=Oであり、(i)R、R、RおよびRのそれぞれがフルオロであるかまたは(ii)R、R、RもしくはRの1つがアミノである場合、Rは水素以外である)
の化合物である。
この部類を代表する化合物は以下の式の化合物である:
【0036】
【化4】


(式中、Rは水素またはメチルである)
別の実施形態では、本明細書で提供する方法および組成物は、これらの化合物の鏡像異性的に純粋な形態物(例えば、光学的に純粋な(R)型または(S)型の鏡像異性体)の使用を包含する。
【0037】
さらに他の特定の免疫調節化合物は、米国特許出願公開番号第US2003/0096841号、同第US2003/0045552号および国際出願番号第PCT/US01/50401号(国際公開番号第WO02/059106号)(そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む)に開示されているイソインドール−イミドの部類に属する。代表的な化合物は、式IIの化合物:
【0038】
【化5】


ならびに薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物および立体異性体の混合物である。但し、
XおよびYの一方はC=Oであり、その他方はCHまたはC=Oであり;
は、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、C(O)R、C(S)R、C(O)OR、(C〜C)アルキル−N(R、(C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、C(O)NHR、C(S)NHR、C(O)NR3’、C(S)NR3’または(C〜C)アルキル−O(CO)Rであり;
は、H、F、ベンジル、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニルまたは(C〜C)アルキニルであり;
およびR3’は独立に、(C〜C)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−N(R、(C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、(C〜C)アルキル−O(CO)RまたはC(O)ORであり;
は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C)アルキル−OR、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキルまたは(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリールであり;
は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリールまたは(C〜C)ヘテロアリールであり;
は出現ごとに独立に、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)ヘテロアリールまたは(C〜C)アルキル−C(O)O−Rであるか、あるいは、R基は結合してヘテロシクロアルキル基を形成することができ;
nはOまたは1であり;
*はキラル−炭素中心を表す。
式IIの特定の化合物では、nが0である場合、Rは、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、C(O)R、C(O)OR、(C〜C)アルキル−N(R、(C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、C(S)NHRまたは(C〜C)アルキル−O(CO)Rであり;
はHまたは(C〜C)アルキルであり;
は、(C〜C)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−N(R;(C〜C)アルキル−NH−C(O)O−R;( C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、(C〜C)アルキル−O(CO)RまたはC(O)ORであり;他の変数は同じ定義を有する。
【0039】
式IIの他の特定の化合物では、RはHまたは(C〜C)アルキルである。
【0040】
式IIの他の特定の化合物では、Rは(C〜C)アルキルまたはベンジルである。
【0041】
式IIの他の特定の化合物では、Rは、H、(C〜C)アルキル、ベンジル、
【0042】
【化6】


である。
【0043】
式IIの化合物の他の実施形態では、R
【0044】
【化7】


(式中、QはOまたはSであり、Rは出現ごとに独立に、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、ハロゲン、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−N(R、(C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、(C〜C)アルキル−O(CO)RまたはC(O)ORであるか、あるいは、隣接して出現するRは一緒になって二環式アルキルまたはアリール環を形成することができる)である。
式IIの他の特定の化合物では、RはC(O)Rである。
【0045】
式IIの他の特定の化合物では、Rは、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、(C〜C)アルキル、アリールまたは(C〜C)アルキル−ORである。
【0046】
式IIの他の特定の化合物では、ヘテロアリールは、ピリジル、フリルまたはチエニルである。
【0047】
式IIの他の特定の化合物では、RはC(O)ORである。
【0048】
式IIの他の特定の化合物では、C(O)NHC(O)のHは、(C〜C)アルキル、アリールまたはベンジルで置き換えられていてよい。
【0049】
この部類の化合物の他の例には、これらに限定されないが、[2−(2,6−ジオキソ−ピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−4−イルメチル]−アミド;(2−(2,6−ジオキソ−ピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−4−イルメチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル;4−(アミノメチル)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオン;N−(2−(2,6−ジオキソ−ピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−4−イルメチル)−アセトアミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}シクロプロピル−カルボキサミド;2−クロロ−N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}アセトアミド;N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)−3−ピリジルカルボキサミド;3−{1−オキソ−4−(ベンジルアミノ)イソインドリン−2−イル}ピペリジン−2,6−ジオン;2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−4−(ベンジルアミノ)イソインドリン−1,3−ジオン;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}プロパンアミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}−3−ピリジルカルボキサミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}ヘプタンアミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}−2−フリルカルボキサミド;{N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)カルバモイル}メチルアセテート;N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)ペンタンアミド;N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)−2−チエニルカルボキサミド;N−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}(ブチルアミノ)カルボキサミド;N−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}(オクチルアミノ)カルボキサミド;およびN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}(ベンジルアミノ)カルボキサミドが含まれる。
【0050】
さらに他の特定の免疫調節化合物は、米国特許出願公開番号第US2002/0045643号、国際公開番号第WO98/54170号および米国特許第6,395,754号(そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む)に開示されているイソインドール−イミドの部類に属する。代表的な化合物は式IIIの化合物:
【0051】
【化8】


ならびに薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物、包接化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物および立体異性体の混合物である。式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、その他方はCHまたはC=Oであり;
RはHまたはCHOCOR’であり;
(i)R、R、RまたはRのそれぞれは互いに独立に、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキルもしくは1〜4個の炭素原子のアルコキシであるか、あるいは(ii)R、R、RまたはRの1つはニトロまたは−NHRであり、R、R、RまたはRの残りは水素であり;
は水素または1〜8個の炭素のアルキルであり、
水素、1〜8個の炭素原子のアルキル、ベンゾ、クロロまたはフルオロであり;
R’は、R−CHR10−N(R)であり;
は、m−フェニレンもしくはp−フェニレンまたは−(C2n)−(nは0〜4の値を有する)であり;
およびRのそれぞれは互いに独立に、水素または1〜8個の炭素原子のアルキルであるか、あるいはRおよびRは合わせてテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンまたは−CHCHCHCH−(Xは−O−、−S−または−NH−である)であり;
10は、水素、炭素原子数8個までのアルキルまたはフェニルであり;
*はキラル−炭素中心を表す。
【0052】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0053】
【化9】


である。式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり;
(i)R、R、RまたはRのそれぞれは互いに独立に、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキルもしくは1〜4個の炭素原子のアルコキシであるか、または(ii)R、R、RおよびRの1つは−NHRであり、R、R、RおよびRの残りは水素であり;
は、水素または1〜8個の炭素原子のアルキルであり;
は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキル、ベンゾ、クロロまたはフルオロであり;
は、m−フェニレンもしくはp−フェニレンまたは−(C2n)−(nは0〜4の値を有する)であり;
およびRのそれぞれは互いに独立に、水素または1〜8個の炭素原子のアルキルであるか、あるいはRおよびRは合わせてテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンまたは−CHCHCHCH−(Xは−O−、−S−または−NH−である)であり;
10は、水素、炭素原子数8個までのアルキルまたはフェニルである。
【0054】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0055】
【化10】


である。式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり;
、R、RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキルもしくは1〜4個の炭素原子のアルコキシであるか、または(ii)R、R、RおよびRの1つはニトロまたは保護されたアミノであり、R、R、RおよびRの残りは水素であり;
は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキル、ベンゾ、クロロまたはフルオロである。
【0056】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0057】
【化11】


である。式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり;
(i)R、R、RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキルもしくは1〜4個の炭素原子のアルコキシであるか、または(ii)R、R、RおよびRの1つは−NHRであり、R、R、RおよびRの残りは水素であり;
は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキルまたはCO−R−CH(R10)NR(R、R、RおよびR10のそれぞれは本明細書で定義の通りである)であり;
は、1〜8個の炭素原子のアルキル、ベンゾ、クロロまたはフルオロである。
その化合物の具体的な例は次式の化合物である:
【0058】
【化12】


式中、
XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり;
は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキル、ベンジル、クロロまたはフルオロであり;
は、m−フェニレン、p−フェニレンまたは−(C2n)−(nは0〜4の値を有する)であり;RおよびRのそれぞれは互いに独立に、水素または1〜8個の炭素原子のアルキルであるか、あるいはRおよびRは合わせてテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンまたは−CHCHCHCH−(Xは−O−、−S−または−NH−である)であり;
10は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキルまたはフェニルである。
【0059】
他の具体的な免疫調節化合物には、これらに限定されないが、米国特許第5,874,448号および同第5,955,476号(そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む)に記載されているものなどの1−オキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3−イル)イソインドリンおよび1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3−イル)イソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式の化合物:
【0060】
【化13】


である。式中、
Yは酸素またはHであり、
、R、RおよびRのそれぞれは互いに独立に、水素、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシまたはアミノである。
【0061】
他の具体的な免疫調節化合物には、これらに限定されないが、米国特許第5,798,368号(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されているテトラ置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式の化合物:
【0062】
【化14】


である。式中、R、R、RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキルまたは1〜4個の炭素原子のアルコキシである。
【0063】
他の具体的な免疫調節化合物には、これらに限定されないが、米国特許第6,403,613号(これを参照により本明細書に組み込む)に開示されている1−オキソおよび1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式の化合物:
【0064】
【化15】


である。式中、
Yは酸素またはHであり、
およびRの第1は、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノまたはカルバモイルであり、RおよびRの第2は、第1とは独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノまたはカルバモイルであり、
は、水素、アルキルまたはベンジルである。
化合物の具体的な例は次式の化合物:
【0065】
【化16】


である。式中、
およびRの第1は、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、各アルキルが1〜4個の炭素原子であるジアルキルアミノ、シアノまたはカルバモイルであり;
およびRの第2は、第1とは独立に、水素、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、アルキルが1〜4個の炭素原子であるアルキルアミノ、各アルキルが1〜4個の炭素原子であるジアルキルアミノ、シアノまたはカルバモイルであり;
は、水素、1〜4個の炭素原子のアルキルまたはベンジルである。具体的な例には、これらに限定されないが、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−メチルイソインドリンが含まれる。
【0066】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0067】
【化17】


である。式中、
およびRの第1は、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、各アルキルが1〜4個の炭素原子であるジアルキルアミノ、シアノまたはカルバモイルであり;
およびRの第2は、第1とは独立に、水素、ハロ、1〜4個の炭素原子のアルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ、アルキルが1〜4個の炭素原子であるアルキルアミノ、各アルキルが1〜4個の炭素原子であるジアルキルアミノ、シアノまたはカルバモイルであり;
は、水素、1〜4個の炭素原子のアルキルまたはベンジルである。
【0068】
他の具体的な免疫調節化合物には、これらに限定されないが、米国特許第6,380,239号および2006年4月20日に公開の米国特許出願公開番号第2006/0084815号(これらを参照により本明細書に組み込む)に記載されているインドリン環の4−または5−位で置換された1−オキソおよび1,3−ジオキソイソインドリンが含まれる。代表的な化合物は次式の化合物:
【0069】
【化18】


である。式中、Cと表示した炭素原子はキラリティーの中心を構成し(nがゼロでない場合、RはRと同じではない);XおよびXの一方は、アミノ、ニトロ、1〜6個の炭素のアルキルまたはNH−Zであり、XおよびXの他方は水素であり;RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ヒドロキシまたはNH−Zであり;Rは、水素、1〜6個の炭素のアルキル、ハロまたはハロアルキルであり;Zは、水素、アリール、1〜6個の炭素のアルキル、ホルミルまたは1〜6個の炭素のアシルであり;nは0、1または2の値を有し;但し、Xがアミノであり、nが1または2である場合、RとRはどちらもヒドロキシではない。
【0070】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0071】
【化19】


である。式中、nがゼロでなく、RがRでない場合、Cと表示した炭素原子はキラリティーの中心を構成し;XおよびXの一方は、アミノ、ニトロ、1〜6個の炭素のアルキルまたはNH−Zであり、XおよびXの他方は水素であり;RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ヒドロキシまたはNH−Zであり;Rは、1〜6個の炭素のアルキル、ハロまたは水素であり;Zは、水素、アリールまたはアルキルまたは1〜6個の炭素のアシルであり;nは0、1または2の値を有する。
【0072】
具体的な例には、これらに限定されないが、以下の構造
【0073】
【化20】


をそれぞれ有する2−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−4−カルバモイル−酪酸および4−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−4−カバモイル−酪酸(4-(4-amino-l-oxo-l,3-dihydro- isoindol-2-yl)-4-cabamoyl-butyric acid)ならびに薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体が含まれる。
【0074】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0075】
【化21】


またはその塩である。式中、nがゼロでなく、RがRでない場合、Cと表示した炭素原子はキラリティーの中心を構成し;XおよびXの一方は、アミノ、ニトロ、1〜6個の炭素のアルキルまたはNH−Zであり、XおよびXの他方は水素であり;RおよびRのそれぞれは互いに独立に、ヒドロキシまたはNH−Zであり;Rは、1〜6個の炭素のアルキル、ハロまたは水素であり;Zは、水素、アリールまたは1〜6個の炭素のアルキルもしくはアシルであり;nは0、1または2の値を有する。
【0076】
具体的な例には、これらに限定されないが、以下の構造
【0077】
【化22】


をそれぞれ有する、4−カルバモイル−4−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−酪酸、4−カルバモイル−2−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−酪酸、2−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−4−フェニルカルバモイル−酪酸および2−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−ペンタン二酸ならびに薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体が含まれる。
【0078】
化合物の他の具体的な例は次式の化合物:
【0079】
【化23】


である。式中、
およびXの一方は、ニトロまたはNH−Zであり、XおよびXの他方は水素であり;
およびRのそれぞれは互いに独立に、ヒドロキシまたはNH−Zであり;
は、1〜6個の炭素のアルキル、ハロまたは水素であり;
Zは、水素、フェニル、1〜6個の炭素のアシルまたは1〜6個の炭素のアルキルであり;
nは0、1または2の値を有し;
−CORと−(CHCORが異なっている場合、Cと表示した炭素原子はキラリティーの中心を構成する。
【0080】
他の代表的な化合物は次式の化合物:
【0081】
【化24】


である。式中、
およびXの一方は、1〜6個の炭素のアルキルであり;
およびRのそれぞれは互いに独立に、ヒドロキシまたはNH−Zであり;
は、1〜6個の炭素のアルキル、ハロまたは水素であり;
Zは、水素、フェニル、1〜6個の炭素のアシルまたは1〜6個の炭素のアルキルであり;
nは0、1または2の値を有し;
−CORと−(CHCORが異なっている場合、Cと表示した炭素原子はキラリティーの中心を構成する。
【0082】
さらに他の具体的な免疫調節化合物には、これらに限定されないが、米国特許第6,458,810号(これを参照により本明細書に組み込む)に記載されている2,6−ジオキソ−3−ヒドロキシピペリジン−5−イルで2−位において置換されたイソインドリン−1−オンおよびイソインドリン−1,3−ジオンが含まれる。代表的な化合物は次式の化合物:
【0083】
【化25】


である。式中、
と表示した炭素原子はキラリティーの中心を構成し;
Xは−C(O)−または−CHであり;
は、1〜8個の炭素原子のアルキルまたは−NHRであり;
は、水素、1〜8個の炭素原子のアルキルまたはハロゲンであり;
は、水素、
置換されていないか、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、ハロ、アミノまたは1〜4個の炭素原子のアルキルアミノで置換されている1〜8個の炭素原子のアルキル、
3〜18個の炭素原子のシクロアルキル、
置換されていないか、1〜8個の炭素原子のアルキル、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、ハロ、アミノまたは1〜4個の炭素原子のアルキルアミノで置換されているフェニル、
置換されていないか、1〜8個の炭素原子のアルキル、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、ハロ、アミノ、1〜4個の炭素原子のアルキルアミノまたは−CORで置換されているベンジル、
は、水素、
置換されていないか、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、ハロ、アミノまたは1〜4個の炭素原子のアルキルアミノで置換されている1〜8個の炭素原子のアルキル、
3〜18個の炭素原子のシクロアルキル、
置換されていないか、1〜8個の炭素原子のアルキル、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、ハロ、アミノまたは1〜4個の炭素原子のアルキルアミノで置換されているフェニル、あるいは
置換されていないか、1〜8個の炭素原子のアルキル、1〜8個の炭素原子のアルコキシ、ハロ、アミノまたは1〜4個の炭素原子のアルキルアミノで置換されているベンジルである。
【0084】
説明する化合物のすべては市販品を購入するか、または、本明細書で開示する特許もしくは特許出願に記載されている方法で調製することができる。さらに、光学的に純粋な化合物は非対称的に合成するか、または、既知の分割剤またはキラルカラムならびに他の標準的な合成有機化学の手法を用いて分割することができる。
【0085】
本明細書で用いる化合物は、約1,000g/モル未満の分子量を有する小有機分子であってよいが、それらはタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖または他の巨大分子ではない。
【0086】
表示された構造とその構造につけられた名称との間に相違がある場合、表示された構造によりウェイトがかけられることに留意すべきである。さらに、構造または構造の部分の立体構造が、例えば、太線または点線で表示されていない場合、その構造または構造の部分は、そのすべての立体異性体を包含するものと解釈すべきである。
【0087】
5.3 治療、予防および管理の方法
本明細書では、内皮機能障害および/または内皮機能障害に伴う様々な障害を治療、予防および/または管理する方法を提供する。特定の理論に限定されるものではないが、EPCの動員は、細胞および組織の損傷の修復過程における正常な生理学的応答の一部である。特定の生理学的現象および応答因子はEPCを新血管形成の部位へ押しやり、EPCがインビボで内皮細胞中に分化できるようにする。さらに、特定の理論に限定されるものではないが、本明細書で提供する免疫調節化合物は、迅速でかつ制御可能な仕方でこれらの分化の自然な過程を増進させることができると考えられる。
【0088】
本明細書で提供する方法は、例えば、本明細書で提供する内皮機能障害に伴う内皮機能障害および/または様々な障害に苦しむかまたはそれに苦しむことになる恐れのある患者(例えば、ヒト)に、本明細書で提供する1つもしくは複数の免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグを投与することを含む。
【0089】
本発明の一実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物は、約0.10〜約150mg/日の量で、単一日用量または分割日用量で経口投与することができる。特定の実施形態では、4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオンを、約0.1〜約1mg/日、あるいは1日おきに約0.1〜約5mgの量で投与することができる。他の特定の実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを、約1〜約25mg/日、あるいは1日おきに約10〜約50mgの量で投与することができる。他の特定の実施形態では、2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩を約0.10〜約150mg/日の量で投与することができる。
【0090】
一実施形態では、4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオンを、約1、2または5mg/日の量で患者に投与することができる。特定の実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを、最初に1mg/日の量で投与し、用量を1週間ごとに10、20、25、30、50mg/日と段階的に増やして投与することができる。他の実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを、最大で約30mg/日の量で患者に投与することができる。他の実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを、最大で約40mg/日の量で患者に投与することができる。
【0091】
一実施形態では、4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオンを、約0.1〜約1mg/日、あるいは1日おきに約0.1〜約5mgの量で患者に投与することができる。
【0092】
他の実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを、約1〜約25mg/日、あるいは1日おきに約10〜約50mgの量で患者に投与することができる。
【0093】
本明細書では、エクスビボでの治療法を用いて内皮機能障害および/またはそれに伴う様々な障害を治療、予防および/または管理する方法も提供する。その方法は、EPCを免疫調節化合物と接触させ、免疫調節化合物と接触したそのEPCを患者に投与する(例えば、接種して)ことを含む。特定の理論に限定されるものではないが、例えば本明細書で提供する免疫調節化合物は、エクスビボでのEPCの増殖を刺激するかまたは増進させることができ、増殖したそのEPCを、内皮機能障害および/またはそれに付随する様々な障害、例えば本明細書で提供する障害の治療、予防および/または管理のために患者に投与することができると考えられる。
【0094】
本明細書で提供する免疫調節化合物で治療、予防または管理する障害の例には、これらに限定されないが、動脈性高血圧症、起立性低血圧症、失神、動脈硬化症、冠動脈疾患、心不全(heart failure)、ショック、不整脈、心臓弁膜症、心内膜炎、心膜疾患、末梢動脈障害、心臓腫瘍および大動脈およびその血管枝部の疾患;糖尿病;全身性硬化症ならびに慢性腎不全などの循環器障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
動脈性高血圧症の例には、これらに限定されないが、腎血管性高血圧症および高血圧性脳症が含まれる。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は動脈性高血圧症である。
【0096】
動脈硬化症の例には、これらに限定されないが、アテローム性動脈硬化症および非アテローム性動脈硬化症が含まれる。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は動脈硬化症である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は非アテローム性動脈硬化症である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害はアテローム性動脈硬化症ではない。
【0097】
心不全の例には、これらに限定されないが、うっ血性心不全、心筋症、慢性心不全および肺高血圧症が含まれる。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は心不全である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は慢性心不全である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害はうっ血性心不全または肺高血圧症ではない。
【0098】
心臓弁膜症の例には、これらに限定されないが、僧帽弁疾患(例えば、僧帽弁逸脱症、僧帽弁逆流症および僧帽弁狭窄症)、大動脈弁疾患(例えば、大動脈弁逆流症、肺動脈弁逆流症、大動脈弁狭窄症および肺動脈弁狭窄症)および三尖弁膜症(例えば、三尖弁逆流症および三尖弁狭窄症)が含まれる。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は心臓弁膜症である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は僧帽弁疾患である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は大動脈弁疾患である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は三尖弁膜症である。
【0099】
心内膜炎の例には、これらに限定されないが、感染性心内膜炎および非感染性心内膜炎が含まれる。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は心内膜炎である。
【0100】
大動脈およびその血管枝部の疾患の例には、これらに限定されないが、動脈瘤、大動脈解離、大動脈の炎症(例えば、Takayasu動脈炎(Takayasu’s arteritis))および大動脈およびその血管枝部の閉塞が含まれる。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は大動脈およびその血管枝部の疾患である。
【0101】
一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は起立性低血圧症である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は失神である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は冠動脈疾患である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害はショックである。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は不整脈である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は心膜疾患(例えば、心膜炎)である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は末梢動脈障害である。
【0102】
一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は糖尿病である。他の実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は慢性腎不全である。一実施形態では、本明細書で提供する方法を用いて治療、予防および/または管理される障害は全身性硬化症である。
【0103】
他の実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物を、創傷治癒を促進させるのに使用する。特定の理論に限定されるものではないが、EPCは、創傷治癒において役割を果たすことが示されている。例えば、骨髄由来前駆細胞の動員およびホーミングの刺激によって、血管形成や脈管形成は、新たな血管の成長および創傷治癒を誘発することができることが報告されている(Velazquez、Journal of Vascular Surgery、45(6):A39〜47頁(2007年)を参照されたい)。創傷治癒の促進のために免疫調節化合物を使用する1つの実施形態では、その免疫調節化合物は、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−メチルイソインドリンではない。
【0104】
本明細書で開示する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグの用量は、治療、予防および/または管理する具体的な適応症;患者の年齢および状態;もしあれば、使用する第2の活性薬剤の量などの因子によって変わる。一般に、本明細書で開示する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグは、約0.1mg〜約500mg/日の量で使用することができ、慣行的な仕方(例えば、治療、予防または管理の期間、毎日同じ量を投与する)、周期的に(例えば、1週間投薬し、1週間それを休止する)、あるいは治療、予防または管理の過程にわたって量を増加または低減させる仕方で調節することができる。
【0105】
他の実施形態では、その用量は、約1mg〜約300mg、約0.1mg〜約150mg、約1mg〜約200mg、約10mg〜約100mg、約0.1mg〜約50mg、約1mg〜約50mg、約10mg〜約50mg、約10mg〜約25mg、約20mg〜約30mgまたは約1mg〜約20mgであってよい。
【0106】
5.4 第2の活性薬剤との併用療法
5.4.1 第2の活性薬剤(SECOND ACTIVE AGENT)
本明細書で提供する方法および組成物において、免疫調節化合物を、他の薬理学的に活性な化合物(「第2の活性薬剤または成分」)と共に、またはそれと組み合わせて用いることができる。ある種の組合せは、本明細書で提供する方法において相乗的に作用すると考えられる。免疫調節化合物は、特定の第2の活性薬剤に伴う副作用を軽減するようにも作用し、いくつかの第2の活性薬剤は、本発明の免疫調節化合物に伴う副作用を軽減するように用いることができる。
【0107】
本明細書で提供する方法および組成物において、1つまたは複数の第2の活性成分または薬剤を、免疫調節化合物と一緒に使用することができる。第2の活性薬剤は、巨大分子(例えば、タンパク質)または小分子(例えば、合成した無機、有機金属または有機分子)であってよい。
【0108】
循環器障害を治療、予防および/または管理する一実施形態では、第2の活性薬剤には、これらに限定されないが、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メトラゾン、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、アミルリド(amilride)、スピロノラクトンおよびトリアムテレンなどの利尿薬;これらに限定されないが、アセブトロール、ベタキソロール、プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール、チモロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロールおよびピンドロールなどのβ遮断薬;これらに限定されないが、ジルチアゼム、ベラパミル、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピンおよびニソルジピンなどのCaチャンネル遮断薬;これらに限定されないが、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、キナプリル、ラミプリルおよびトランドラプリルなどのACE阻害剤;これらに限定されないが、イルベサルタン、ロサルタンおよびバルサルタンなどのアンジオテンシン受容体遮断薬;これらに限定されないが、クロニジン、グアナベンズ、グアンファシン、メチルドーパ、ラベタロール、エスモロール、フェントラミン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、グアナドレル、グアネチジン、ラウオルフィアアルカロイドおよびレセルピンなどのアドレナリン遮断薬;これらに限定されないが、ニトロプルシドナトリウム;ニカルジピン、フェノルドパム、ニトログリセリン、エナラプリラート、ヒドララジン(hydlarazine)、ジアゾキシドおよびミノキシジルなどの血管拡張剤;これらに限定されないが、アスピリンおよびチクロピジンなどの抗血小板薬;これらに限定されないが、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、モリシジン、フェニトイン、フレカイニドおよびプロパフェノンなどのNaチャンネル遮断薬;これらに限定されないが、アミオダロン、ソタロールおよびブレチリウムトシレートなどのカリウムチャンネル遮断薬;これらに限定されないが、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、クリンダマイシン、セファレキシン、セファドロキシル、アジスロマイシン、クラリスロマイシンおよびセフェゾリン(cefezolin)などの抗生物質;ならびにその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
糖尿病を治療、予防および/または管理する一実施形態では、第2の活性薬剤には、インスリン;これらに限定されないが、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリドおよびグリメピリドなどのスルホニル尿素剤;これらに限定されないが、メトホルミン、アカルボース、トログリタゾンおよびレパグリニドなどの高血糖治療薬;ならびにその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
一実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物は、これらに限定されないが、VEGF、FGFおよびSCFなどの成長因子と併用して投与することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、免疫調節化合物を、内皮機能障害および本明細書で示す他の障害の治療、予防または管理のための他の医療処置と組み合わせることができる。そうした他の処置の例には、これらに限定されないが、食事制限、エクササイズ、血管形成術、動脈カテーテル処置および外科処置が含まれる。
【0112】
5.4.2 併用療法(COMBINATION THERAPY)
特定の実施形態では、本明細書で開示するものなどの1つまたは複数の第2の活性薬剤と併用するか、かつ/または本明細書で開示するものなどの他の医療処置と併用する、免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグ。
【0113】
免疫調節化合物および第2の活性薬剤の患者への投与は、同じかまたは異なる投与経路により、同時かまたは逐次的に行うことができる。特定の活性薬剤のために用いる具体的な投与経路の適切性は、活性薬剤自体(例えば、血流中に入る前に分解することなく経口で投与することができるかどうか)、および治療を受ける疾患に依存することになる。一実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物を経口で投与する。本明細書で提供する第2の活性薬剤または成分のための典型的な投与経路は当業者に周知である。例えば、Physicians’ Desk Reference、(2006年)を参照されたい。
【0114】
本明細書で提供する免疫調節化合物を本明細書で示す疾患のための既知のレジメンと合わせて投与する、併用療法を用いることができることをさらに考慮する。本明細書で提供する免疫調節化合物と慣用的治療法の併用は、特定の患者に有効な独特の治療レジメンを提供することができる。理論に限定されるものではないが、本明細書で提供する免疫調節化合物は、他の治療法と同時に与えられた場合、追加的または相乗的な効果を提供できると考えられる。
【0115】
本発明の一実施形態では、第2の活性薬剤を静脈内または皮下で約1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mgまたは約50〜約200mgの量で1日に1回かまたは2回投与する。第2の活性薬剤の具体的な量は、具体的な使用薬剤、治療、予防または管理される疾患の種類、疾患の重篤度や病期および本発明の免疫調節化合物の量、ならびに患者に同時投与される任意選択の追加の活性薬剤に依存する。
【0116】
他の実施形態では、免疫調節化合物を約0.1mg〜約150mg/日の量で第2の活性薬剤と併用して患者に投与する。
【0117】
患者(例えば、ヒト)に本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグを投与することを含む、患者に安全でかつ効果的に投与できる治療薬の投薬量を増加させる方法も本明細書で提供する。この方法によって利益を受けることができる患者は、本明細書で提供する治療薬に伴う副作用に苦しむ恐れのある患者である。本明細書で提供する免疫調節化合物の投与は、そうでなければ治療薬の量が制限されることになる、重篤な副作用を緩和または低減する。
【0118】
一実施形態では、本発明の免疫調節化合物は、患者への治療薬の投与に伴う副作用が起こる前、その最中またはその後に約0.1〜約150mg、約1〜約50mgおよび約2〜約25mgの量で毎日経口投与することができる。
【0119】
他の実施形態では、本明細書で説明する他の医療処置と一緒(例えば、その前、その最中またはその後)に、本発明の免疫調節化合物または薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグを投与することを含む、本明細書で示す疾患を治療、予防および/または管理する方法を本明細書で提供する。本発明の免疫調節化合物と医療処置の併用は、特定の患者には予想外に効果的な独特の治療レジメンを提供することができる。理論に限定されるものではないが、そうした処置と同時に施した場合、本明細書で提供する免疫調節化合物は追加的または相乗的な効果を提供できると考えられる。
【0120】
例えば、本明細書で提供する免疫調節化合物は、内皮機能障害および本明細書で示す他の疾患の治療で用いる慣用的な医療処置に伴う副作用または望ましくない作用を低減、治療および/または予防するのに有効である。一実施形態では、本明細書で提供する1つまたは複数の免疫調節化合物を、慣用的治療法に伴う副作用が起こる前、その最中またはその後に患者に投与する。
【0121】
一実施形態では、本発明の免疫調節化合物を、慣用的治療法を用いる前か、その最中かまたはその後に、単独かまたは本明細書で開示する第2の活性薬剤と併用して、1日に約0.1〜約150mg、約1〜約25mgおよび約2〜約10mgの量で経口投与することができる。
【0122】
5.5 周期的治療法(CYCLING THERAPY)
特定の実施形態では、本明細書で開示する予防薬または治療薬を、患者に周期的に投与する。周期的治療法は、ある期間活性薬剤を投与し、続いてある期間それを休止し、この逐次的な投与を繰り返すことを含む。周期的治療法により、その治療の1つまたは複数に対する耐性の発現を抑制し、その治療法の副作用を避けるかまたは低減し、かつ/またはその治療の効能を増進させることができる。
【0123】
したがって、本発明の一実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物を、単一用量または分割用量で毎日4〜6週間投与し、約1または2週間の休止期間をおくサイクルで投与する。他の実施形態では、投与サイクルの頻度、回数を増やし、期間を長くすることができる。したがって、本明細書では、典型的な場合より多いサイクルでの免疫調節化合物の投与も提供する。さらに他の実施形態では、免疫調節化合物を、第2の活性成分がやはり投与されていない患者に用量規定毒性を通常もたらすことになる、より多くのサイクル回数で投与する。
【0124】
一実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物を、約0.1〜約150mg/日の用量で3〜4週間毎日連続して投与し、続いて1〜2週間休止する。4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオンを好ましくは、最初の用量を0.1〜5mg/日で、次いで、1〜10mg/日(毎週)で段階的に増大させながら、治療に許容される限り、50mg/日の最大用量まで毎日連続して投与する。特定の実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを、約1、5、10または25mg/日の量、好ましくは約10mg/日の量で3〜4週間投与し、1または2週間の休止をおき、4または6週間のサイクルで投与する。
【0125】
一実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物および第2の活性成分を経口で投与する。ここでは、4〜6週間のサイクルの間に、第2の活性成分の前に30〜60分間、免疫調節化合物の投与を行う。他の実施形態では、本明細書で提供する免疫調節化合物と第2の活性成分の組合せを、各サイクル約90分間で静脈内注入により投与する。一実施形態では、1つのサイクルは、日に約1〜約25mg/日の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンと約50〜約200mg/m/日の第2の活性成分を3〜4週間投与し、次いで1〜2週間の休止をおくことを含む。他の実施形態では、各サイクルは、約5〜約10mg/日の4−(アミノ)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオンと約50〜約200mg/m/日の第2の活性成分を3〜4週間投与し、続いて1〜2週間の休止をおくことを含む。一般に、併用治療をその間に施すサイクル数は、約1〜約24サイクル、約2〜約16サイクルおよび約4〜約3サイクルである。
【0126】
5.6医薬組成物および剤形(PHARMACEUTICAL COMPOSITIONS AND DOSAGE FORMS)
医薬組成物を、個々の単一単位剤形(single unit dosage forms)を調製するのに用いることができる。本明細書で提供する医薬組成物および剤形は、本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを含む。本明細書で提供する医薬組成物および剤形は、1つまたは複数の賦形剤をさらに含むことができる。
【0127】
本明細書で提供する医薬組成物および剤形は、1つまたは複数の追加の活性成分を含むこともできる。したがって、本明細書での医薬組成物および剤形は、本明細書で開示する活性成分(例えば、免疫調節化合物および第2の活性薬剤)を含む。任意選択の第2のまたは追加的な活性成分の例は本明細書で別に説明する。
【0128】
本明細書で提供する単一の単位剤形(single unit dosage forms)は、患者への経口、粘膜、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注入法、筋肉内または動脈内)、局所、経皮投与(transdermal or transcutaneous administration)に適している。剤形の例には、これらに限定されないが:錠剤;カプレット剤;柔軟な弾力性のあるゼラチンカプセル剤などのカプセル剤;カシェ剤;トローチ剤;薬用キャンデー;散剤;坐剤;粉剤;ゲル剤;懸濁剤(例えば、水性または非水性の液状懸濁剤、水中油型乳剤または油中水型の液状乳剤)、液剤およびエリキシル剤を含む患者への経口または粘膜投与に適した液体剤形;患者に非経口投与するのに適した液体剤形;および再構成して患者に非経口投与するのに適した液体剤形を提供できる滅菌固形剤(例えば、結晶性または無晶形固体)が含まれる。
【0129】
本明細書で提供する剤形の組成、形状および種類は、一般にその用途に応じて変わる。例えば、疾患の急性期治療で用いられる剤形は、活性成分の1つまたは複数を、同じ疾患の慢性期治療で用いる剤形において含まれる量より多く含むことができる。同様に、非経口剤形は、活性成分の1つまたは複数を、同じ疾患を治療するのに用いられる経口用剤形での量より少なく含むことができる。本明細書で包含する具体的な剤形が互いに変わることになる上記および他の方法は、当業者に容易に明らかであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、20th ed.、Mack Publishing、Easton PA(2000年)を参照されたい。
【0130】
典型的な医薬組成物および剤形は1つまたは複数の賦形剤を含む。適切な賦形剤は薬学の技術分野の技術者に周知であり、適切な賦形剤の非限定的な例を本明細書で提供する。特定の賦形剤が医薬組成物または剤形中に混ぜ込むのに適しているかどうかは、これらに限定されないが、その剤形を患者に投与する仕方を含む当業界で周知の様々な因子に依存する。例えば、錠剤などの経口用剤形は、非経口剤形での使用に適さない賦形剤を含むことができる。具体的な賦形剤の適切性は、剤形における具体的な活性成分にも依存する。例えば、ある活性成分の分解は、ラクトースなどのある種の賦形剤が存在した場合、または水に曝された場合に加速される可能性がある。第一および第二アミンを含む活性成分は、そうした加速的分解の影響を特に受けやすい。したがって、特定の実施形態では、ラクトース、他の単糖類もしくは二糖類を僅かしか含まない(あったとしても)医薬組成物および剤形を提供する。本明細書で用いる「ラクトース−フリー(lactose-free)」という用語は、存在するラクトースの量が、あったとしても、活性成分の分解速度を実質的に増大させるのに不十分であることを意味する。
【0131】
ラクトース−フリーな組成物は、当業界で周知であり、例えば、米国薬局方(USP)25−NF20(2002年)に挙げられている賦形剤を含むことができる。一般に、ラクトース−フリー組成物は、薬学的に適合しかつ薬学的に許容される量で活性成分、結合剤/充てん剤および滑剤を含む。一実施形態では、ラクトース−フリー剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化(pre-gelatinized)澱粉およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0132】
水はある種の化合物を分解しやすくする恐れがあるので、活性成分を含む無水の医薬組成物および剤形をさらに包含する。例えば、水を添加(例えば、5%)することは、処方物の貯蔵寿命または安定性などの特性を判定するために長期貯蔵をシミュレーションする手段として、当薬剤業界で広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensen,Drugs Stability:Principles & Practice、2d.Ed.、Marcel Dekker、NY、NY、1995年、379〜80頁を参照されたい。実際、水や熱は、ある種の化合物の分解を加速する。水分および/または湿気は処方物の製造、取扱い、包装、貯蔵、出荷および使用の際によく遭遇することなので、処方物に対する水の影響は非常に重要である。
【0133】
本明細書で提供する無水の医薬組成物および剤形は、無水の成分かまたは低水分含有の成分と、低水分または低湿度の条件を用いて調製することができる。製造、包装および/または貯蔵の間に水分および/または湿気との実質的な接触が見込まれる場合、ラクトースと、少なくとも1つの第一または第二アミンを含む活性成分を含む医薬組成物および剤形は無水とする。
【0134】
無水の医薬組成物は、その無水であるという特性が保持されるように調製し、貯蔵すべきである。したがって、例えば、無水の組成物は、適切な処方キットに含められるように、水への曝露を阻止することが分かっている材料を用いて包装される。適切な包装の例には、これらに限定されないが、密封ホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスター包装およびストリップ包装が含まれる。
【0135】
さらに、活性成分が分解する速度を低減させる1つまたは複数の化合物を含む医薬組成物および剤形を提供する。本明細書で「安定剤(stabilizers)」と称するそうした化合物には、これらに限定されないが、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が含まれる。
【0136】
賦形剤の量および種類と同様に、剤形における活性成分の量および具体的な種類は、これらに限定されないが、患者への投与経路などの因子に応じて異なってくる。特定の実施形態では、その剤形は、本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを約0.10〜約150mgの量で含む。他の実施形態では、剤形は、本明細書で提供する免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、包接化合物もしくはプロドラッグを約0.1、1、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、50、100、150または200mgの量で含む。一実施形態では、剤形は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを約1、2.5、5、10、15、20、25または50mgの量で含む。特定の実施形態では、剤形は、第2の活性成分を1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mgまたは約50〜約200mgの量で含む。第2の薬剤の具体的な量は、使用する具体的な薬剤、治療または管理を施される疾患の種類および本明細書で提供する免疫調節化合物の量、ならびに患者へ同時に投与される任意選択の追加的な活性薬剤に依存することになる。
【0137】
5.6.1 経口用剤形(ORAL DOSAGE FORMS)
経口投与に適した医薬組成物は、これらに限定されないが、錠剤(例えば、チュアブルタイプの錠剤)、カプレット剤、カプセル剤および液剤(例えば、香味付きシロップ剤)などの離散した剤形で提供することができる。そうした剤形は、予め定められた量の活性成分を含み、当業者に周知の薬学的方法でそれを調製することができる。一般的には、Remington’s Pharmaceutical Sciences、20th ed.、Mack Publishing、Easton PA(2000年)を参照されたい。
【0138】
一実施形態では、剤形は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを約1、2.5、5、10、15、20、25または50mgの量含むカプセル剤または錠剤である。一実施形態では、そのカプセル剤または錠剤の剤形は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを約5または10mgの量含む。
【0139】
特定の実施形態では、本明細書で提供する経口用剤形を、従来の薬剤配合技術によって少なくとも1つの賦形剤と密に混合して活性成分を一緒にすることによって調製する。賦形剤は、投与のための望ましい製剤の形態に応じて広範囲の形態をとることができる。例えば、経口液剤またはエアロゾル剤形での使用に適した賦形剤には、これらに限定されないが、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤および着色剤が含まれる。固体の経口用剤形(例えば、粉剤、錠剤、カプセル剤およびカプレット剤)での使用に適した賦形剤の例には、これらに限定されないが、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑剤(lubricants)、結合剤および崩壊剤が含まれる。
【0140】
その投与の容易さのため、錠剤およびカプセル剤は、固体賦形剤を使用するケースの最も有利な経口投薬単位形態を代表するものである。望むなら、錠剤を、標準的な水性または非水性の手法でコーティングすることができる。そうした剤形は、製薬方法のいずれによっても調製することができる。一般に、医薬組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微細に分割された担体またはその両方と均一かつ密に混合し、次いで、必要なら、その製品を所望の形に成形することによって調製する。
【0141】
例えば、錠剤は圧縮または成形によって調製することができる。圧縮した錠剤は、任意選択で賦形剤と混合した粉末または顆粒などの自由流動形態の活性成分を適切な機械中で圧縮することによって調製することができる。成形した錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状化合物の混合物を適切な機械中で成形することによって作製することができる。
【0142】
経口用剤形において使用できる賦形剤の例には、これらに限定されないが、結合剤、充てん剤、崩壊剤および滑剤が含まれる。医薬組成物および剤形で使用するのに適した結合剤には、これらに限定されないが、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉または他の澱粉、ゼラチン、アカシアなどの天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば2208、2906、2910番)、微結晶性セルロースならびにその混合物が含まれる。
【0143】
微結晶性セルロースの適切な形態には、これらに限定されないが、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105(FMC Corporation、American Viscose Division、Avicel Sales、Marcus Hook、PAから市販されている)として販売されている材料、およびその混合物が含まれる。具体的な結合剤は、AVICEL RC−581として販売されている微結晶性セルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースの混合物である。適切な無水もしくは低水分の賦形剤または添加剤には、AVICEL−PH−103(商標)およびStarch 1500 LMが含まれる。
【0144】
本明細書で開示する医薬組成物および剤形で使用するのに適した充てん剤の例には、これらに限定されないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末状セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、アルファ化澱粉およびその混合物が含まれる。医薬組成物における結合剤または充てん剤は、医薬組成物または剤形の約50〜約99重量%の量で存在する。
【0145】
水性環境に曝されたとき分解する錠剤を提供するために、崩壊剤を組成物中に用いる。あまり多くの崩壊剤を含む錠剤は貯蔵時に分解する可能性があり、崩壊剤が少なすぎる錠剤は所望の速度または所望の条件下で分解しない可能性がある。したがって、活性成分の放出をデトリメンタリーに(detrimentally)変えるのに多すぎずかつ少なすぎない十分な量の崩壊剤を用いて、本明細書で提供する固体の経口用剤形を形成させるべきである。使用する崩壊剤の量は処方物の種類により変わるが、当業者は容易にそれを理解されよう。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤または約1〜約5重量%の崩壊剤を含む。
【0146】
医薬組成物および剤形で使用できる崩壊剤には、これらに限定されないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、他の澱粉、アルファ化澱粉、他の澱粉、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴムならびにその混合物が含まれる。
【0147】
医薬組成物および剤形で使用できる滑剤には、これらに限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびその混合物が含まれる。他の滑剤には、例えば、syloidシリカゲル(W.R.Grace Co.of Baltimore、MDによって製造されているAEROSIL200)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa Co.of Plano、TXによって販売されている)、CAB−O−SIL(Cabot Co.of Boston、MAによって販売されている発熱性二酸化ケイ素製品)およびその混合物が含まれる。仮に使用する場合、滑剤は一般に、その中に混ぜ込むことになる医薬組成物または剤形の約1重量%未満の量で使用する。
【0148】
特定の実施形態では、固体経口用剤形は、本明細書で提供する免疫調節化合物、無水のラクトース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカおよびゼラチンを含む。
【0149】
5.6.2 制御放出剤形(CONTROLLED RELEASE DOSAGE FORMS)
本明細書で提供する活性成分は、当業者によく知られている制御放出手段または送達デバイスで投与することができる。その例には、これらに限定されないが、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,639,480号、同第5,733,566号、同第5,739,108号、同第5,891,474号、同第5,922,356号、同第5,972,891号、同第5,980,945号、同第5,993,855号、同第6,045,830号、同第6,087,324号、同第6,113,943号、同第6,197,350号、同第6,248,363号、同第6,264,970号、同第6,267,981号、同第6,376,461号、同第6,419,961号、同第6,589,548号、同第6,613,358号、同第6,699,500号および同第6,740,634号(そのそれぞれを参照により本明細書に組み込む)に記載されているものが含まれる。そうした剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、ミクロスフェアまたはその組合せを用いて、1つもしくは複数の活性成分の持続放出または制御放出を提供して様々な割合で所望の放出プロファイルを提供するのに用いることができる。本明細書で記載するものを含む、当業者に知られている適切な制御放出処方物は、本明細書で提供する活性成分と共に用いるために、容易に選択することができる。したがって、本明細書では、これらに限定されないが、制御放出用に適合させた錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤およびカプレット剤などの経口投与に適した単一単位剤形を提供する。
【0150】
すべての制御放出医薬品は、その非制御型の対応物によって達成されるものを凌いで、薬物治療を改善するという共通の目的を有している。理想的には、医療処置において最適設計された制御放出製剤を使用するということは、最小量の薬物を使用して、その状態を最小の時間で治癒させるかまたは制御することを特徴とする。制御放出処方物の利点には、薬物の持続的活性、少ない投薬頻度および高い患者コンプライアンスが含まれる。さらに、制御放出処方物を使用して、作用の発現の時間または薬物の血中濃度などの他の特徴に影響を及ぼすことができ、したがって、副作用(例えば、悪影響)の発現に影響を及ぼすことができる。
【0151】
最も制御された放出処方物は、所望の治療効果を速やかにもたらすある量の薬物(活性成分)を最初に放出し、異なる量の薬物を徐々にかつ連続的に放出して、長期間にわたってこのレベルの治療または予防効果を維持するように設計される。体内での薬物のこの一定レベルを維持するためには、代謝され、身体から排出された量の薬物を置き換える速度で剤形から薬物が放出されなければならない。活性成分の制御放出は、これらに限定されないが、pH、温度、酵素、水または他の生理学的状態もしくは化合物を含む様々な条件で刺激することができる。
【0152】
特定の実施形態では、その薬剤を、静脈内注入、埋め込み型の浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたは他の投与方式を用いて投与することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201頁(1987年);Buchwald等、Surgery 88:507頁(1980年);Saudek等、N.Engl.J.Med.321:574頁(1989年)を参照されたい)。他の実施形態では、高分子材料を使用することができる。さらに他の実施形態では、制御放出システムを、専門医の判断で対象の適切な部位に配置することができる。すなわち、全身用量の一部だけしか必要としない(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release、vol.2、115〜138頁(1984年)を参照されたい)。他の制御放出系はLanger(Science 249:1527〜1533頁(1990年))の概説で論じられている。活性成分は、固体内部マトリックス、例えばポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレ、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲルなどの親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコールおよび架橋部分加水分解ポリビニルアセテートの中に分散させることができ、この内部マトリックスは、体液に不溶性である外側の高分子膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマーおよびエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれている。次いで活性成分は、放出速度制御段階で外側の高分子膜を通して拡散する。そうした非経口組成物中の活性成分の割合は、その具体的な特性ならびに対象のニーズに大きく依存する。
【0153】
5.6.3 非経口剤形(PARENTERAL DOSAGE FORMS)
皮下か、筋肉内かまたは静脈内での注入を一般に特徴とする非経口投与も本明細書で考慮する。注入物質は、液剤もしくは懸濁剤か、注入する前に液体中に溶解もしくは懸濁させるのに適した固体形態か、または乳剤として慣用的な形態で調製することができる。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。さらに、望むなら、投与する医薬組成物は、少量の非毒性の補助剤、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性向上剤、ならびに、例えば酢酸ナトリウム、モノステアリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリンなどのそうした他の薬剤も含むことができる(米国特許第5,134,127号を参照されたい)。
【0154】
組成物の非経口投与は、静脈内、皮下および筋肉内投与を含む。非経口投与用の製剤には、注入するようにした滅菌液剤、皮下用錠剤を含む、使用直前に溶媒と一緒にするようにした凍結乾燥粉剤などの滅菌した乾燥可溶性製剤、注入するようにした滅菌懸濁剤、使用直前に媒体と一緒にするようにした滅菌した乾燥不溶性製剤、および滅菌乳剤が含まれる。液剤は水性であっても非水性であってもよい。
【0155】
静脈内に投与する場合、適切な担体には、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびその混合物などの増粘剤および可溶化剤を含む液剤が含まれる。
【0156】
非経口製剤で用いられる薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤には、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局部麻酔薬、懸濁化剤および分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤および他の薬学的に許容される物質が含まれる。
【0157】
水性媒体の例には、塩化ナトリウム注射剤、リンガー注射剤、等張性デキストロース注射剤、滅菌水注射剤、デキストロースおよび乳酸加リンガー注射剤が含まれる。非水性非経口媒体には、植物由来固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油およびピーナッツ油が含まれる。静菌または静真菌濃度の抗菌剤を、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む複数用量容器中にパッケージ化された非経口製剤に加えなければならない。等張剤には、塩化ナトリウムおよびデキストロースが含まれる。緩衝剤には、リン酸塩およびクエン酸塩が含まれる。酸化防止剤には重硫酸ナトリウムが含まれる。局部麻酔薬にはプロカイン塩酸塩が含まれる。懸濁化剤および分散剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルオース(sodium carboxymethylcelluose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。乳化剤にはポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が含まれる。金属イオンの封鎖剤またはキレート剤にはEDTAが含まれる。薬剤用担体には、水混和性媒体用のエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールならびにpH調整用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸も含まれる。
【0158】
活性成分の濃度は、その注入が所望の薬理効果をもたらすのに有効な量を提供するように調節する。正確な用量は、当業界で周知のように、患者または動物の年齢、体重および状態に依存する。
【0159】
単位用量非経口製剤は、アンプル、バイアル、または針を備えた注射器中に詰める。当業界で知られておりまた実践されるように、非経口投与用のすべての製剤は滅菌されていなければならない。
【0160】
例としては、活性成分を含む滅菌水溶液の静脈内または動脈内注入は、有効な投与方式である。別の実施形態は、所望の薬理効果をもたらすのに必要なものとして注入される活性物質を含む滅菌した水溶液もしくは油性溶液または懸濁液である。
【0161】
注入物質は、局所および全身投与用に設計される。一般に、治療上有効な投薬量は、少なくとも約0.1重量/重量%から約90重量/重量%もしくはそれ以上、または1重量/重量%を超える濃度の治療組織への活性成分を含むように処方する。活性成分は一度に投与することも、また、複数のより少ない用量に分割して時間間隔をおいて投与することもできる。正確な投薬量および治療期間は、治療される組織によって変わるものであり、既知の試験手順を用いるか、またはインビボまたはインビトロでの試験データを外挿することによって実験的に判定することができることを理解されよう。濃度および投薬値は、治療を受ける個体の年齢によっても変わることに留意されたい。任意の具体的対象について、具体的な投薬レジメンは、個々の必要性、および処方物の投与を管理または監督している人の専門的判断によって経時的に調節すべきであり、本明細書で示す濃度範囲は、例示に過ぎず、特許請求する処方物の範囲または実施を限定するものではないことをさらに理解されたい。
【0162】
化合物は、微粉化した形態かもしくは他の適切形態で懸濁するか、あるいは、より可溶性の活性産物を生成するかまたはプロドラッグを生成するように誘導体化することができる。得られる混合物の形態は、対象とする投与方式および選択された担体または媒体への化合物の溶解性を含むいくつかの因子に依存する。効果的な濃度は、その状態の症状を改善するのに十分なものであり、それは実験的に決定することができる。
【0163】
5.6.4 凍結乾燥粉剤(LYOPHILIZED POWDERS)
液剤、乳剤および他の混合物として投与用に再構成することができる凍結乾燥粉剤も本明細書で興味深いものである。それらは、固体またはゲルとして再構成し、処方することもできる。
【0164】
滅菌した凍結乾燥粉末は、活性成分または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグを適切な溶媒中に溶解させて調製する。その溶媒は、粉末もしくはその粉末から調製された再構成溶液の安定性または他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含むことができる。使用できる賦形剤には、これらに限定されないが、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、トウモロコシシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたは他の適切な薬剤が含まれる。溶媒は、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムまたは当業者に知られている他の緩衝剤などの緩衝剤(一般におおよそ中性)も含むことができる。続く溶液の滅菌ろ過、次の当業者に周知の標準的条件下での凍結乾燥によって所望の処方物が提供される。一般に、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、単回投薬量(10〜1000mgまたは100〜500mg)または複数回投薬量の活性成分を含む。凍結乾燥粉末は、約4℃〜室温などの適切な条件下で貯蔵することができる。
【0165】
注入用にこの凍結乾燥粉末を水で再構成すると、非経口投与で使用する処方物が得られる。再構成するには、滅菌水または他の適切な担体1mL当たり約1〜50mg、5〜35mgまたは約9〜30mgの凍結乾燥粉末を加える。正確な量は使用する化合物によって変わる。そうした量は実験的に決定することができる。

6.実施例
【実施例】
【0166】
本明細書で提供する特定の実施形態を以下の非限定的な実施例で示す。
【0167】
6.1 内皮細胞系列への臍帯血(CB)CD133前駆細胞の分化
CB−CD133前駆細胞はAllCellsから入手した。これを、VEGFおよびb−FGFまたはSCFの存在下、Iscove’s MDM+FBS(20%)中で30〜50日間培養した。内皮前駆細胞の生成に対する免疫調節化合物の影響を検討するため、CD133前駆細胞を、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリン、1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリン、2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩またはサリドマイドと共に(with)、またはそれなし(without)で30〜50日間培養した。培養の2、3および4週間後にフローサイトメトリーを用いて造血および内皮マーカー(CD36、CD71、グリコホリンAおよび胎児性ヘモグロビン)についての細胞の表現型の特性評価を実施した。30日後に、UEA−1レクチンを発現する細胞におけるアセチル化LDL摂取をモニターすることによって機能的特性評価を実施した。遺伝子発現プロファイリングを、CD133分化の30日目および40日にモニターした。その手順を図1に示す。
【0168】
図2に示すように、免疫調節化合物の存在下で、VEGFおよびB−FGFまたはSCFと共に培養したCD133+細胞は、紡錘形細胞(spindle shaped cells)の増加と索状構造形成(cord-like structure formation)を伴う典型的な形態を示した。さらに、図3および図5に示すように、免疫調節化合物による治療は、KDR(VEGFR−2)ならびにVE−カドヘリン(CD144)、Pl−H12(CD146)、およびUEA1レクション(UEA 1 lection)などのより特異的な内皮マーカーの細胞表面発現を増進させた。さらに、培養の30日後に、UEA−1レクチンを発現する細胞におけるアセチル化低密度リポタンパク質(LDL)の摂取をモニターすることによって実施した分化EPCの機能的特性評価にもとづき、免疫調節化合物による治療はEPCの数を増大させ、それがLDLおよびアセチル化LDLを摂取する能力を増進させることが分かった(図4)。
【0169】
これらの結果は、免疫調節化合物が、EPCの分化を増進させることができることを示している。
【0170】
本明細書で提供するすべての文献のその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0171】
上記した実施形態は単に例示に過ぎず、当業者は、日常的な実験、特定の化合物、材料および手順の多くの等価物を用いて認識するか、または確認することができよう。そうしたすべての等価物は、特許請求する対象の範囲内にあるものと考えられ、それらは添付の特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内皮機能障害に伴う障害を治療、管理または予防する方法であって、1)有効量の免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくは立体異性体を、内皮前駆細胞と接触させるステップと;2)免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくは立体異性体と接触した前記内皮前駆細胞を患者に投与するステップとを含む方法。
【請求項2】
治療上または予防上有効な量の免疫調節化合物または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくは立体異性体を患者に投与することを含む、内皮機能障害に伴う障害を治療、管理または予防する方法。
【請求項3】
前記障害が、循環器障害、糖尿病、全身性硬化症または慢性腎不全である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記循環器障害が、動脈性高血圧症、起立性低血圧症、失神、冠動脈疾患、ショック、不整脈、心臓弁膜症、心不全、心内膜炎、心膜疾患、末梢動脈障害、心臓腫瘍または大動脈および血管枝部の疾患である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記心不全がうっ血性心不全である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記障害が糖尿病である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記障害が慢性腎不全である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
第2の活性薬剤を投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の活性薬剤が、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メトラゾン、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン、アセブトロール、ベタキソロール、プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール、チモロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、ジルチアゼム、ベラパミル、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル、イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタン、クロニジン、グアナベンズ、グアンファシン、メチルドーパ、ラベタロール、エスモロール、フェントラミン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、グアナドレル、グアネチジン、ラウオルフィアアルカロイド、レセルピン、ニトロプルシドナトリウム;ニカルジピン、フェノルドパム、ニトログリセリン、エナラプリラート、ヒドララジン、ジアゾキシド、ミノキシジル、アスピリン、チクロピジン、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、メキシレチン、トカイニド、モリシジン、フェニトイン、フレカイニド、プロパフェノン、アミオダロン、ソタロール、ブレチリウムトシレート、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、クリンダマイシン、セファレキシン、セファドロキシル、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、セファゾリンまたはその混合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第2の活性薬剤を投与することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の活性薬剤が、インスリン、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリド、グリメピリド、メトホルミン、アカルボース、トログリタゾン、レパグリニドまたはその混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
治療有効量の免疫調節化合物を患者に投与することを含む創傷治癒を促進する方法。
【請求項13】
前記免疫調節化合物が、1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリンである、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記免疫調節化合物が鏡像異性的に純粋である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫調節化合物が、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリンである、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記免疫調節化合物が鏡像異性的に純粋である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫調節化合物が、2−アミノ−N−(2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)アセトアミド塩酸塩である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記免疫調節化合物が鏡像異性的に純粋である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫調節化合物が次式(I)の化合物:
【化26】


(式中、XおよびYの一方はC=Oであり、XおよびYの他方はC=OまたはCHであり、Rは水素または低級アルキルである)
である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記免疫調節化合物が鏡像異性的に純粋である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫調節化合物が次式(II)の化合物:
【化27】


(式中、XおよびYの一方はC=Oであり、その他方はCHまたはC=Oであり;
は、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、C(O)R、C(S)R、C(O)OR、(C〜C)アルキル−N(R、(C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、C(O)NHR、C(S)NHR、C(O)NR3’、C(S)NR3’または(C〜C)アルキル−O(CO)Rであり;
は、H、F、ベンジル、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニルまたは(C〜C)アルキニルであり;
およびR3’は独立に、(C〜C)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−N(R、(C〜C)アルキル−OR、(C〜C)アルキル−C(O)OR、(C〜C)アルキル−O(CO)RまたはC(O)ORであり;
は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C)アルキル−OR、ベンジル、アリール、(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロシクロアルキルまたは(C〜C)アルキル−(C〜C)ヘテロアリールであり;
は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリールまたは(C〜C)ヘテロアリールであり;
は出現ごとに独立に、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C〜C)ヘテロアリールまたは(C〜C)アルキル−C(O)O−Rであるか、あるいはR基は結合してヘテロシクロアルキル基を形成し;
nは0または1であり;
*はキラル−炭素中心を表す)
である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記免疫調節化合物が鏡像異性的に純粋である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫調節化合物を約0.1〜約150mg/日の量で投与する、請求項1から22のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−503062(P2011−503062A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533097(P2010−533097)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/012537
【国際公開番号】WO2009/061445
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(500026935)セルジーン コーポレイション (41)
【Fターム(参考)】