説明

内視鏡装置

【課題】精度の高い血管深さ情報と分光推定情報とを同時に取得し、血管深さ画像と分光画像と同時に生成、表示することによって、病変部をより正確に診断することのできる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】狭帯域光を照射する光源60と、励起され蛍光光を発光する蛍光体24と、を有し、狭帯域光と蛍光光とからなる照明光を照射する光源装置16と、画像信号を出力する撮像素子48とを有する内視鏡本体12と、画像信号を狭帯域光に対応する第1の画像信号と、蛍光光に対応する第2の画像信号とに分離する信号分離部と、第1の画像信号及び第2の画像信号に基づいて血管深さ情報を算出する血管深さ情報算出部と、第2の画像信号に基づいて分光推定情報を算出する分光推定情報算出部と、第1の撮像画像信号、第2の撮像画像信号、血管深さ情報、及び分光推定情報から撮像画像を生成する画像処理部と、を有する処理装置14aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管深さ情報と分光推定情報とを同時に取得することのできる内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の狭い波長帯域光(狭帯域光)を照明光として生体の粘膜組織に照射し、生体組織の所望の深さの組織情報を得る、いわゆる特殊光観察を行うことができる内視鏡装置が活用されている。
この特殊光観察によれば、粘膜層或いは粘膜下層に発生する新生血管の表層微細構造、病変部の強調等、通常の観察像では得られない生体情報を簡単に可視化できる。例えば、観察対象が癌病変部である場合、表層組織の観察に適した青色(B)の狭帯域光と中層組織及び表層組織の観察に適した緑色(G)の狭帯域光とを粘膜組織に照射することにより、組織表層の微細血管や微細構造の状態がより詳細に観察できるため、病変部をより正確に診断することができる。
【0003】
また、以前より、通常光観察により得られた白色画像から所定のアルゴリズムに基づいて分光推定を行い、所定の波長帯域の情報を備えた分光推定画像を得ることのできる内視鏡装置が活用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4504324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分光推定画像(分光画像)によれば、粘膜の凹凸の形状や、組織の褪色の度合が観察し易く、前述と同様、病変部をより正確に診断することができる。また、血管深さ画像、例えば、表層血管部分を強調した血管深さ画像であれば、癌の診断に有用なブラウニッシュ領域等の表層血管の状態をよりよく観察することができる。
【0006】
しかし、血管深さ情報と分光推定情報との同時取得は、狭帯域光源から所定の狭帯域光を照射し蛍光体を蛍光発光させることで疑似白色光を照射する光源装置を備える内視鏡装置では、狭帯域光であるB光成分が強く、分光推定の際にB画像信号が飽和状態となるため、血管深さ情報の取得と共に分光推定を行うことが困難であった。
また、前述の光源装置の場合、血管深さ情報の算出においても、狭帯域光のB光成分に蛍光光のB光成分が加算されるため、狭帯域光単体で血管深さ情報を抽出する場合に比べて精度高い血管深さ情報の算出が困難であった。
【0007】
本発明の目的は、精度の高い血管深さ情報と分光推定情報とを同時に取得し、血管深さ画像と分光画像と同時に生成、表示することで、病変部をより正確に診断することのできる内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、被写体とする生体の構造・成分の分光スペクトル特性に応じて狭帯域化された所定の波長帯域幅を持つ狭帯域光を照射する光源と、前記狭帯域光によって励起され所定の蛍光光を発光する蛍光体と、を有し、前記狭帯域光と前記蛍光光とからなる照明光を照射する光源装置と、前記照明光を前記被写体に向けて照射して、前記照明光の前記被写体からの戻り光により撮像を行い、画像信号を出力する撮像素子とを有する内視鏡本体と、前記画像信号を前記狭帯域光に対応する第1の画像信号と前記蛍光光に対応する第2の画像信号とに分離する信号分離部と、前記第1の画像信号及び第2の画像信号に基づいて血管深さ情報を算出する血管深さ情報算出部と、前記第2の画像信号に基づいて分光推定情報を算出する分光推定情報算出部と、前記第1の撮像画像信号、前記第2の撮像画像信号、前記血管深さ情報、及び前記分光推定情報から撮像画像を生成する画像処理部と、を有する処理装置と、を備えることを特徴とする内視鏡装置を提供する。
【0009】
また、前記画像信号は、前記撮像素子の分光感度特性に応じて出力されるB画像信号、G画像信号及びR画像信号からなり、前記信号分離部は、信号推定手段と補正演算手段とを備え、前記信号推定手段により前記画像信号のG画像信号から、前記蛍光光に対応するB画像信号を推定し、前記補正演算手段により前記画像信号のB画像信号から前記蛍光光に対応するB画像信号を除算することで、前記画像信号を前記狭帯域光に対応する前記第1の画像信号と前記蛍光光に対応する前記第2の画像信号とに分離することが好ましい。
【0010】
また、前記血管深さ情報算出部は、前記第1の画像信号と前記G画像信号との比(B/G比)と血管深さとの対応を記録した深さ情報テーブルを備え、前記B/G比と、前記深さ情報テーブルとに基づいて前記血管深さ情報を算出することが好ましい。
【0011】
また、前記画像処理部は、前記B/G比に基づいて血管深さ画像を生成する血管深さ画像生成手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記分光推定情報は、前記第2の画像信号から、分光画像信号を生成するためのマトリックス情報であり、前記分光推定情報算出部は、前記分光推定情報を算出することで前記第2の画像信号から前記分光画像信号を生成することが好ましい。
【0013】
また、前記画像処理部は、前記分光画像信号から異なる波長帯域の情報を有する複数枚の分光画像を生成する分光画像生成手段を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記複数枚の分光画像は、5nm刻みで波長帯域の異なる分光画像であることが好ましい。
【0015】
また、前記光源は、中心発光波長445nmの青色レーザ光源であることが好ましい。
【0016】
さらに、前記処理装置は、前記画像信号に基づいて通常光観察画像を生成する通常光観察画像生成部と、前記処理装置が生成した画像を表示する表示装置とを有することが好ましい。
【0017】
また、複数の前記表示装置を有し、少なくとも1つの前記表示装置に前記血管深さ画像及び前記分光画像を含む少なくとも1つの特殊光観察画像を表示し、他の少なくとも1つの前記表示装置に前記通常光観察画像を表示することが好ましい。
【0018】
また、前記処理装置は、前記表示装置における画像表示を制御する制御手段を有し、かつ、前記処理装置には、通常光観察画像のみを前記表示装置に表示する表示モード、特殊光観察画像のみを前記表示装置に表示する表示モード、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像の両者の全面を前記表示装置に表示する表示モード、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像の両者を表示して表示範囲を切り替え可能にする表示モード、並びに、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像を切り替え表示する表示モードの少なくとも2つが設定されており、さらに、前記表示モードの選択手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内視鏡観察において、血管深さ情報と分光推定情報とを同時に取得でき、血管深さ画像と分光画像とを同時に生成、表示することができるため、病変部をより正確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る内視鏡装置の一例を示す外観図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図3】図2に示す撮像素子のカラーフィルタの一例を示す概念図である
【図4】図2に示す光源装置の波長プロファイルを示すグラフである。
【図5】図3のカラーフィルタの分光感度特性を示すグラフである。
【図6】被検体である生体の分光反射率を示すグラフである。
【図7】図1に示す内視鏡装置の信号処理系を概念的に示すブロック図である。
【図8】図7に示す信号分離部の作用の概念を説明する説明図である。
【図9】図7に示す血管深さ情報算出部が備える血管深さテーブルを示すグラフである。
【図10】図7の血管深さ画像生成手段における血管深さ画像生成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る内視鏡装置を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図1に、本発明の内視鏡装置10の構成を表す外観図を示し、図2に、図1に示す内視鏡装置の構成を概念的に表すブロック図を示す。
【0022】
図1に示すとおり、内視鏡装置10は、一例として、内視鏡12と、内視鏡が撮影した画像の処理等を行うプロセッサ装置14と、内視鏡12での観察(撮影)を行うための照明光を供給する光源装置16とを有して構成される。また、プロセッサ装置14は、内視鏡が撮影した画像を表示する表示装置18と、各種の指示等を入力するための入力装置20とを有する(表示装置18と入力装置20が接続される)。
なお、本発明の内視鏡装置10は、さらに、内視鏡が撮影した画像をハードコピーとして出力するプリンタ(記録装置)を有してもよい。
【0023】
図1に示すように、内視鏡12は、CCDセンサ48等の撮像素子を用いて、画像を光電的に撮影する、電子内視鏡である。この内視鏡12は、通常の内視鏡と同様、挿入部26と、操作部28と、ユニバーサルコード30と、コネクタ32と、ビデオコネクタ36とを有する。
内視鏡12は、通常の観察時(診断時)には、ビデオコネクタ36をプロセッサ装置14の接続部14aに、コネクタ32を光源装置16の接続部16aに、それぞれ接続される。なお、コネクタ32には、通常の内視鏡と同様、観察部位の吸引や送気を行う吸引手段や観察部位に水を噴射するための吸水手段等が接続される。
【0024】
また、通常の内視鏡と同様、内視鏡12の挿入部26は、基端側の長尺な軟性部38と、CCDセンサ48等が配置される先端のスコープ部(内視鏡先端部)42と、軟性部38とスコープ部42との間の湾曲部(アングル部)40とを有し、さらに、操作部28には、湾曲部48を湾曲させる、操作ノブ28a等が設けられる。
【0025】
図2に概念的に示すように、スコープ部42には、撮影レンズ46、CCDセンサ(撮像素子)48、カラーフィルタ48a、照明用レンズ50、及び、光ファイバ52や、レンズ等を保護するためのカバーガラス(図示省略)等が配置される。
また、光源装置16の一部としての蛍光体24が光ファイバ52の先端に配置される。蛍光体24は、B光の一部を吸収して、緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、B光を励起光とする緑色〜黄色の蛍光光と、蛍光体24で吸収されずに透過したB光とが合わされて、疑似的な白色光となる。
【0026】
なお、図示は省略するが、内視鏡12には、鉗子等の各種の処置具を挿通するための鉗子チャンネル及び鉗子口、吸引、送気、送水等を行うための送気/送水チャンネルおよび送気/送水口も設けられる。
鉗子チャンネルは、湾曲部40及び軟性部48を通って操作部28に設けられる鉗子挿入口に連通し、送気/送水チャンネルは、湾曲部40、軟性部38、操作部28、及びユニバーサルコード30を通って、コネクタ32の吸引手段、送気手段、送水手段との接続部に連通する。
【0027】
光ファイバ52は、湾曲部40、軟性部38、操作部28、及びユニバーサルコード30を通って、光源装置16に接続されるコネクタ32まで挿通されている。
後述する光源装置16が照射する狭帯域光は、コネクタ32から光ファイバ52に入射して、光ファイバ52で伝搬されて、スコープ部42において、光ファイバ52の先端部からその先に設置された蛍光体24へ入射して蛍光体24を励起発光させる。励起発光された蛍光光は、前記狭帯域光と共に、照明用レンズ50に入射し、照明用レンズ50によって照明光として観察部位に照射される。
なお、本発明において、照明光とは、前記狭帯域光と前記蛍光光とを問わず観察部位に照射される光をいう。
【0028】
また、照明光が照射された観察部位の画像は、撮像レンズ46によってCCDセンサ48の受光面に結像される。
ここで、本発明において、内視鏡12に用いられるCCDセンサ48は、図2に示すとおりカラーフィルタ48aを備え、図3に示すように、各画素に、B(青)フィルタ、G(緑)フィルタ、及び、R(赤)フィルタの何れかが設けられ、入射した光を、B光、G光、及び、R光に分光して測光する。カラーのCCDセンサである。言い換えれば、本発明の内視鏡装置10における内視鏡12で用いるCCDセンサ48は、入射した光を分光しないで、B光、G光及びR光を、順次測光する、いわゆる面順次式のモノクロセンサではなく、カラーフィルタ48aによって入射した光をB光、G光及びR光に分光して同時に測光する、同時式のカラーセンサである。
【0029】
なお、本発明において、撮像素子はCCDセンサ48に限定はされず、CMOSイメージセンサ等、B光、G光及びR光を分光して同時に測光するカラーセンサであれば、各種の撮像素子が利用可能である。
【0030】
CCDセンサ48の出力信号は、信号線によって、スコープ部42から湾曲部40、軟性部38、操作部28、ユニバーサルコード30、及びコネクタ32を通ってビデオコネクタ36に送られる。
【0031】
図示例においては、ビデオコネクタ36に、AFE(Analog Front End)基板56が配置される。
AFE基板56には、一例として、相関二重サンプリング回路、アンプ(自動利得制御回路)、A/D変換器が配置される。CCDセンサ48の出力信号は、AFE基板56において、相関二重サンプリングによるノイズ除去、アンプによる増幅が行われ、さらに、A/D変換器によってアナログ信号からデジタル信号に変換されて、デジタルの画像信号として、プロセッサ装置14(後述するDSP76)に、出力される。
なお、本発明の内視鏡装置において、これらの処理は、ビデオコネクタ36ではなく、コネクタ32で行ってもよく、あるいは、プロセッサ装置14で行ってもよい。
【0032】
前述のように、内視鏡装置10において、内視鏡12のコネクタ32は、光源装置16の接続部16aに接続される。
光源装置16は、生体内での観察を行うための照明光を内視鏡12に供給するものである。前述のように、光源装置16から内視鏡12に供給された狭帯域光は、コネクタ32から光ファイバ52に入射して伝搬されて、スコープ部42において、光ファイバ52の先端部からその先に設置された蛍光体24へ入射して蛍光体24を励起発光させる。励起発光された蛍光光は、前記狭帯域光と共に、照明用レンズ50に入射し、照明用レンズ50によって照明光として観察部位に照射される。
【0033】
図2に概念的に示すように、内視鏡装置10において、光源装置16は、光源60と、光ファイバ62と、前述の接続部16aと、前述の蛍光体24とを有する。
【0034】
光源60は、中心波長445nmの狭帯域光を照射する青色レーザ光源であり、前述の蛍光体24を励起して蛍光光は発光させ、観察部位へ狭帯域光と蛍光光とが混合した疑似白色の照明光を照射する。
【0035】
図4は、本発明の内視鏡装置10から観察部位へ照明光として照射される光の発光スペクトルを示すグラフである。前述のように、図4は、中心波長445nmの青色レーザ光(Bの狭帯域光)と、蛍光体の蛍光光とからなる混合光である。
本発明の内視鏡装置10は、照明光として、前述の青色レーザ光と蛍光光と用い、これらの光を同時に観察部位に照射し、かつ、入射光をB光、G光及びR光に分光して測光するCCDセンサ48によって、観察部位の画像を撮影する。
また、後に詳述するが、内視鏡装置10(プロセッサ装置14)は、内視鏡12のCCDセンサ48が撮影したB画像、G画像及びR画像を用いて、通常光観察画像(通常光画像)を生成し、さらに、CCDセンサ48が撮影したB画像、G画像及びR画像を用いて、特殊光観察画像(特殊光画像)を生成する。ここで、特殊光観察画像とは、後述する血管深さ画像及び分光画像(狭帯域光画像)である。
【0036】
図5に概念的に示すように、CCDセンサ48は、多くの場合、B、G及びRの各色のフィルタ特性(カラーフィルタ特性)により、B、G及びRの各色の画素は、隣接する色の領域まで感度を有する。
すなわち、G画素には、Gの帯域光に加えてRの帯域光(もしくは、その一部)も入射して、測光される。また、B画素には、Bの狭帯域光(青色レーザ光)に加えてGの帯域光(もしくは、その一部)も入射して、測光される。
【0037】
これに対して、例えば、Bの帯域の光量をGの帯域の光量よりも高くすることにより、CCDセンサ48のB画素に入射するBの帯域の光(帯域光)及びGの帯域光において、Bの帯域光を支配的にすることができる。同様に、Gの帯域光の光量をRの帯域光の光量よりも高くすることにより、CCDセンサ48のG画素に入射するGの帯域光及びRの帯域光において、Gの帯域光を支配的にすることができる。
本発明の光源装置16は、光源60として青色レーザ光源と、青色レーザ光によって蛍光光を励起発光する蛍光体20とからなるため、上述の構成(B光>G光及びG光>R光)を有する。
このような構成(B光>G光及びG光>R光)を有することにより、CCDセンサ48が読み取った画像から、適正に通常光観察画像を生成することが可能になる。
【0038】
なお、本発明において、Bの帯域光とGの帯域光との光量比、及び、Gの帯域光とRの帯域光との光量比は、光源として青色レーザ光源及び蛍光体からなる照明光を用いているため、青色レーザ光の光量に応じて蛍光光であるG帯域光とR帯域光が決定される関係にあり、青色レーザ光の光量に応じて前述の光量比も決定される。青色レーザ光の光量は、後述する制御部14bによって制御される図示しない光量調整手段によって調整される。
【0039】
光源装置16の接続部16aに供給された光は、内視鏡12のコネクタ32に供給され、コネクタ32から光ファイバ52に入射し、伝搬され、照明光として、内視鏡12のスコープ部42から観察部位に照射される。
照射された照明光は、図6に示す生体の分光反射率に基づいて、生体で反射し、撮影レンズ46へ入射して、CCDセンサ48の受像面に結像する。
【0040】
照明光が照射された観察部位の画像は、CCDセンサ48によって撮影される。CCDセンサ48が撮影した画像(CCDセンサ48の出力信号)は、前述のように、AFE基板56によってA/D変換等の処理を行われて、デジタルの画像信号(画像データ/画像情報)として、プロセッサ装置16に供給される。
プロセッサ装置16は、内視鏡装置10の全体的な制御を行うと共に、内視鏡12から供給(出力)された画像信号に所定の処理を施して、内視鏡12が撮影した画像として表示装置18に表示するもので、画像信号の処理部14a、並びに、プロセッサ装置16及び内視鏡装置10の全体を制御する制御部14bを有する。
【0041】
図7に、プロセッサ装置16における画像信号の処理部14aを、ブロック図によって概念的に示す。
図7に示すように、処理部14aは、DSP76と、記憶部78と、通常光画像生成部80と、特殊光画像生成部82と、表示信号生成部84とを有する。
【0042】
プロセッサ装置16では、CCDセンサ48によって撮影され、AFE54において処理された画像信号(B画像信号、G画像信号及びR画像信号)に、まず、DSP(Digital Signal Processor)76において、ガンマ補正、色補正処理等の所定の処理を施した後、記憶部(メモリ)78に記憶する。
【0043】
画像信号が記憶部78に記憶されると、通常光画像生成部80が記憶部78からB、G、及びRの画像信号を読み出して、通常光観察画像を生成し、また、同様に、特殊光画像生成部82が、記憶部78からB、G、及びRの画像信号を読み出して、特殊光観察画像を生成する。
なお、予め入力装置20等によって、通常光観察画像のみの生成(表示)、又は、特殊光観察画像のみの生成を、指示されている場合には、生成を指示された画像生成部のみが記憶部78から画像信号を読み出し、後述する処理を行えばよい。
【0044】
前述のように、内視鏡装置10においては、光源装置16から供給された図4に示す照明光、つまり、青色レーザ光と蛍光光とを同時に観察部位に照射する。また、入射光をB光、G光及びR光に分光して測光するCCDセンサ48によって、観察部位の画像を撮影する。
すなわち、本発明の内視鏡装置10においては、青色レーザ光と蛍光光とを混合してなる、疑似的な白色光を照明光として用い、入射光のB光、G光及びR光(各色の光成分)を同時に測光するカラーのCCDセンサ48によって、観察部位の撮影を行っている。
【0045】
従って、CCDセンサ48が測光したB画像信号、G画像信号及びR画像信号を用いて、表示用画像を生成することにより、白色光すなわち通常光を照明光として用いた、通常光観察の画像を生成することができる。
また、後述するように、CCDセンサ48が測光したB画像信号及びG画像信号を用いて、表示用画像を生成することにより、特殊光観察の画像を生成することができる。
すなわち、本発明の内視鏡装置によれば、一般的な内視鏡装置(内視鏡システム)の構成を基本として、通常光観察と特殊光観察との切り替えタイムラグを生じることなく、1つの撮影画像から、同時に、通常光観察画像と特殊光観察画像とを得ることができる。
【0046】
通常光画像生成部80は、ゲイン調整部80a及び画像処理部80bを有する。
ゲイン調整部80aは、好ましい態様として、記憶部78から読み出したB、G及びRの画像信号のゲイン調整を行い、通常の白色光による観察と同様の画像信号とするものである。
【0047】
ゲイン調整部80aは、B、G及びRの画像信号のゲイン調整、例えば、G及びRの画像信号の増幅処理や、B及びGの画像信号の減縮処理を行うことにより、画像信号を、B、G及びRの光量が等しい白色の照明光で撮影を行った場合と、同様の画像信号にするものである。
【0048】
ゲイン調整の方法には、特に限定はなく、照明光のB、G及びRの光量差を相殺して、画像信号(CCDセンサ48が撮影した画像)を、B、G及びRの光量が均一な照明光で撮影を行った場合と同様の画像信号にできる方法であれば、各種の方法が利用可能である。
一例として、BとGの光量差(光量比)及びGとRの光量差に応じて、各光の光量差を相殺するように作成した補正係数を、各画像信号に乗算若しくは加算、又は、除算若しくは減算する方法が例示される。また、BとGの光量差及びGとRの光量差に応じて、各光の光量差を相殺するように作成したLUTを用いて、各画像信号を処理する方法も利用可能である。
【0049】
画像処理部80bは、ゲイン調整を施した画像信号に、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT処理などによる色変換処理; 画面内の血管と粘膜との色味の差をつけて血管を見易くなるように、画像の平均的な色味よりも血管と粘膜との色味の差をつける方向に強調する色彩強調処理; シャープネス処理や輪郭強調などの像構造強調処理; 等を行って、通常光観察画像の画像信号として、表示信号生成部84に供給するものである。
【0050】
他方、特殊光画像生成部82は、信号分離部86、血管深さ情報算出部88、分光推定情報算出部90及び画像処理部92を有する。
信号分離部86は、好ましい態様として、信号推定手段86aと補正演算手段86bとを備え、画像信号を青色レーザ光に基づく第1の画像信号と、蛍光光に基づく第2の画像信号とに分離する。具体的には、青色レーザ光は、B光成分のみであり、生体からの反射光もB光成分であるため、画像信号のB画像信号を、青色レーザ光による第1のB画像信号と、蛍光光による第2のB画像信号とに分離する。
【0051】
図8は、信号分離部86において、(A)画像信号を(B)第1の画像信号と(C)第2の画像信号とに分離する概念を説明する説明図である。なお、図8(A)にもあるように、実際には、図4の照明光の分光プロファイルに、図5に示した「CCDセンサのカラーフィルタ特性」と、図6に示した「生体の分光反射率」と、が乗算された信号が、CCDセンサ48において測定され、信号分離部86へ出力される。
信号分離部86では、出力された画像信号を狭帯域光に基づく画像信号と、蛍光光に基づく画像信号に分離するが、前述の「生体の分光反射率」及び「CCDセンサのカラーフィルタ特性」は、両画像信号に共通するため、便宜上、図8(A)〜(C)に示すように、画像信号の分離を照明光の分光プロファイルに基づいて説明している。
【0052】
具体的には、まず、信号分離部86において、信号推定手段86aを用いて、画像信号におけるG画像信号の値から、蛍光光に基づくB画像信号である第2のB画像信号の値を推定する。
いま、照明光の分光プロファイルは、前述のとおり図4に示す形状をしており、その発光強度は励起光である445nmレーザ光の照射光量(発光強度)に応じて変わるが、その分光プロファイルの全体的な形状は概ね変わらないため、蛍光光のG光成分、つまり画像信号のG光画像信号から、蛍光光のB光成分、つまり第2のB画像信号が推定できる。
【0053】
信号分離部86は、信号推定手段86aにより推定された第2のB画像信号を用いて、補正演算手段86bにおいて、画像信号のB画像信号から、第2のB画像信号を除算することで、第1のB画像信号を算出する。算出された第1のB画像信号は、第1の画像信号と、第2のB画像信号、G画像信号及びR画像信号は、第2の画像信号とされる。
こうして、信号分離部86は、記憶部78より読み出した画像信号を、青色レーザ光に基づく第1の画像信号と、蛍光光に基づく第2の画像信号とに分離する。分離された第1の画像信号及び第2の画像信号は、血管深さ情報算出部88と分光推定情報算出部90とへそれぞれ送出される。
【0054】
血管深さ情報算出部88は、取得した第1の画像信号である第1のB画像信号と、第2の画像信号におけるG画像信号とから、それらの比であるB/G比を算出し、算出されたB/G比と、図9に示す深さ情報テーブル88aとから、血管深さ情報を算出する。
血管深さ情報は、B/G比と共に画像処理部92のへ出力される。
【0055】
また、分光推定情報算出部90は、マトリックス算出手段90a及び画像信号補正手段90bを備え、画像信号(第2の画像信号)から分光推定情報であるマトリックスを算出し、分光画像信号を生成する。
分光画像信号の生成は、特許文献1にも開示のとおり周知技術であるため、以下、簡単に説明する。
【0056】
マトリックス算出手段90aは、カラー画像信号である第2の画像信号から、分光画像信号を生成する際に用いられる所定の係数であるマトリックスを算出する。
マトリックスの算出は、撮像素子であるCCDセンサ48の分光感度特性としてのカラー感度特性を数値データ化して、例えば、n次元の列ベクトル「R」・「G」・「B」とする。
【0057】
次に、抽出したい分光信号、例えば3つの分光信号の基本分光特性としての分光画像用狭帯域バンドパスフィルタF1・F2・F3の特性を数値データ化して、n次元の列ベクトル「F1」・「F2」・「F3」とする。
そして、得られた数値を元に、以下の(1)式の関係を近似する最適な係数セットを求める。即ち、
(R、G、B)・A=(F1、F2、F3) ・・・(1)
となるマトリックス「A」を求めればよい。
マトリックス「A」の算出方法は上述のとおり公知であり、分光推定情報算出部90は、算出されたマトリックス「A」を用いて、第2の画像信号から分光画像信号を生成する。
【0058】
また、分光推定情報算出部90は、より正確なマトリックス(分光推定情報)を算出し、正確な分光画像信号を求めるために、画像信号補正手段90bを備える。
【0059】
上述のマトリックス算出手段90aは、CCDセンサ48が受光する光束が、完全な白色光である場合(即ち、RGBの出力がいずれも同じ場合)に正確に適用され、最適な近似とされるものである。
しかし、実際の内視鏡観察下では、照明する光束(光源の光束)は完全な白色光ではなく、生体の反射スペクトル(分光反射率)も一律ではないので、固体撮像素子が受光する光束も白色光ではない。
【0060】
従って、実際の処理においては、CCDセンサ48の分光感度特性(カラーフィルタ特性)、照明光の分光感度特性、及び生体の分光反射率を考慮することが望ましい。よって、画像信号補正手段90bにおいて、第2の画像信号に対して、これらを考慮した信号補正が行われる。補正方法については、前述のとおり特許文献1に記載の、公知の補正方法が利用される。
【0061】
第2の画像信号より算出されたR、G、Bそれぞれの分光画像信号は、画像処理部92へ出力される。
【0062】
画像処理部92は、血管深さ画像生成手段92aと分光画像生成手段92bとを備え、前述の血管深さ情報及びB/G比から血管深さ画像を、また、前述の分光画像信号から分光画像を、それぞれ生成する。
【0063】
血管深さ画像生成手段92aによる血管深さ画像の生成は、前述のB/G比に基づいて血管深さ画像を生成することで行う。血管深さ画像の生成は、例えば、図10に示すように、画素のB/G比に基づいて、輝度信号Yと色差信号Cr,Cbと(以下、YCC信号という)を算出し、算出されたYCC信号を再度RGB画像信号に変換することで行う。これは、図10の点線内に示すとおり、所定のB画像信号及びG画像信号の入力に対して、所定のR、G、B画像信号を出力する信号変換と同義である。
【0064】
これらの信号変換に基づいて血管深さ画像生成手段92aにおいて、血管深さ画像が生成される。なお血管深さ情報算出部88で算出された血管深さ情報が、生成された血管深さ画像と対応付けられてもよい。血管深さ画像と血管深さ情報とが対応付けられることで、画像の所定領域における血管深さがどの程度が容易に判断できる。
生成された血管深さ画像及び対応付けされた血管深さ情報は、表示信号生成部84へ出力される。
【0065】
分光画像生成手段92bは、分光推定情報算出部90からの分光画像信号に基づいて、分光画像を生成する。
分光画像は、所定の分光画像信号をR、G、Bそれぞれの画像信号に割り付けることで生成することができる。分光画像信号は、例えば、5nm刻みで算出することができ、分光画像生成手段92bにおいて、5nm刻みで波長帯域の異なる複数分光画像が生成される。生成された複数の分光画像は、表示信号生成部84へ出力される。
【0066】
その他、画像処理部92は、それぞれの画像信号に対して、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT処理などによる色変換処理; 画面内の血管と粘膜との色味の差をつけて血管が見易くなるように、画像の平均的な色味よりも血管と粘膜との色味の差をつける方向に強調する色彩強調処理; シャープネス処理や輪郭強調などの像構造強調処理; 等を行って、特殊光観察画像(血管深さ画像及び分光画像)の画像信号として、表示信号生成部84に供給する。
【0067】
表示信号生成部84は、供給された通常光観察画像の画像信号及び特殊光観察画像の画像信号に、色空間の変換等の必要な処理を行って、表示装置18による表示用の画像信号とするものである。
【0068】
ここで、内視鏡装置10においては、一例として、通常光観察画像のみを表示する表示モード; 特殊光観察画像(血管深さ画像又は分光推定画像)のみを表示する表示モード; 表示装置18の1画面に収まるサイズで、通常光観察画像の全面及び特殊光画像の全面、又は2種類の異なる特殊光観察画像(血管深さ画像及び分光推定画像を含む)の全面を並べて表示する表示モード(量が面のサイズは、同じでも異なっても調整可能でもよい); 表示装置18の1画面を超えるサイズで通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像を並べて表示して、スライダバーやトラックボール等によって表示範囲の切り替えを可能にする表示モード; 入力装置20及び/又は内視鏡12の操作部28に設定された切替手段からの切替指示に応じて、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像を切替表示する表示モード(切替表示には、分光推定画像の波長帯域の切替を含む); の少なくとも2つが設定されている。
また、これらの表示モードは、入力装置20及び/又は内視鏡12の操作部28に設定された選択手段によって、選択/指示が可能になっている。
【0069】
表示信号生成部84は、選択された表示モードに応じて、画像の拡大/縮小、画像の割り付け、更には、被験者の氏名などの文字情報の組み込み等を行って、表示用の画像信号を生成し、表示装置18に、この画像を表示させる。
また、血管深さの情報の数値表示、分光画像において対応する波長帯域の数値表示等も表示信号生成部84において前述の表示用の画像信号に組み込まれる。
【0070】
また、表示装置18を、複数台、有する場合には、表示信号生成部84は、1台の表示装置18に通常光観察画像を、他の1台の表示装置18に特殊光観察画像を、それぞれ表示するように、画像信号を生成してもよい。
あるいは、3台以上の表示装置18を有する場合には、上記の様に、通常光観察画像及び特殊光観察画像を、1台ずつに表示した上で、他の1台に、上記各表示モードに応じた画像表示を行うようにしてもよい。
【0071】
また表示信号生成部84は、入力装置20からの指示により、表示する分光画像の波長帯域に基づいて、分光画像を選択し、表示画像を生成する。
また、表示装置18に表示された分光画像は、入力装置20からの指示により、対応する波長帯域を段階的に変更できてもよい。
【0072】
以下、内視鏡装置10の動作の一例を説明する。
入力装置20によって、内視鏡12による撮影開始が指示されると、光源装置16の光源60が点灯し、所定光量の照明光が被写体に照射され、さらにCCDセンサ48が画像の撮影(測光)を開始する。
【0073】
光源60が照射した青色レーザ光(狭帯域光)は、光ファイバ62を通って接続部16aから内視鏡12のコネクタ32に供給され、光ファイバ52によってスコープ部の先端部42まで伝搬される。伝搬された青色レーザ光は、光ファイバ52の先端に設置された蛍光体24を励起して、蛍光光を発光させ、青色レーザ光と蛍光光とからなる照明光として、照明用レンズ50によって観察部位(生体内)に照射される。
照明光が照射された観察部位の画像は、撮影レンズ46によってCCDセンサ48の受光面に結像され、CCDセンサ48によって撮影(測光)される。
CCDセンサ48の出力信号は、AFE基板56に供給される。AFE基板56は、CCDセンサ48の出力信号に、相関二重サンプリングによるノイズ除去、増幅、A/D変換等を行い、デジタル画像信号として、プロセッサ装置14(画像信号の処理部14a)のDSP76に供給される。
【0074】
DSP76は、画像信号にガンマ補正、色補正処理等の所定の処理を施した後、処理済の画像信号を記憶部78に記憶させる。
画像信号が記憶部78に記憶されると、通常光画像生成部80及び特殊光画像生成部が、それぞれ、記憶部78からB、G及びRの画像信号を読み出す。
【0075】
通常光画像生成部80では、ゲイン補正部80aが、読み出した画像信号にゲイン補正を行って、前述のように、B、G及びRの光量が等しい白色光によって撮影された画像となるようにする。さらに、画像処理部80bが、ゲイン補正済の画像信号に、色変換処理、色彩強調処理、及び、像構造強調処理を行って、通常光観察画像の画像信号として、表示信号生成部84に供給する。
【0076】
他方、特殊光画像生成部82では、信号分離部86が、読み出した画像信号を第1の画像信号(第1のB画像信号)と第2の画像信号(第2のB画像信号、G画像信号、R画像信号)とに分離し、血管深さ情報算出部88と分光推定情報算出部とにそれぞれ出力する。
【0077】
血管深さ情報算出部88では、第1のB画像信号とG画像信号との比であるB/G比を算出し、また、B/G比と深さ情報テーブル88aとに基づいて、血管深さ情報を算出する。算出されたB/G比及び血管深さ情報は、画像処理部92の血管深さ画像生成手段92aへ出力される。
【0078】
また、分光推定情報算出部90では、マトリックス算出手段90a及び画像信号補正手段90bにより、分光推定情報の算出(マトリックスの算出)を行い、分光画像信号を生成する。生成された分光画像信号は、画像処理部92の分光画像生成手段92bへ出力される。
【0079】
画像処理部92は、B/G比及び血管深さ情報に基づいて、血管深さ画像生成手段92aにより図10に示すように血管深さ画像を生成する。また、画像処理部92は、分光画像信号に基づいて、分光画像生成手段92bにより分光画像を生成する。
さらに、画像処理部92は、画像信号に、色変換処理、色彩強調処理、及び、像構造強調処理を行って、血管深さ画像及び分光画像からなる特殊光観察画像の画像信号として、表示信号生成部84に供給する。
【0080】
通常光観察画像及び特殊光観察画像の画像信号を供給された表示信号生成部84は、入力装置20により選択/指示された表示モードに応じて、例えば、表示装置18の1画面に通常光観察画像及び特殊光観察画像の全面を並べて表示する、表示用の画像信号を生成し、この画像を、表示装置18に表示させる。
また、入力装置20から、分光画像の対応する波長帯域を入力することで、表示する分光画像が変更できてもよい。
【0081】
以上が、本発明の実施形態に係る内視鏡装置10の動作である。
【0082】
また、本発明の内視鏡装置10においては、B画像信号及びG画像信号を、そのまま用いて特殊光観察画像を生成してもよい。
この場合、前述のように、CCDセンサ48が撮影した画像は、そのカラーフィルタ特性によって、G画素には、Gの狭帯域光に加えてRの帯域光も入射して測光され、B画素には、Bの狭帯域光に加えてGの狭帯域光も入射して測光される。従って、B画像信号及びG画像信号を、そのまま用いて特殊光観察画像を生成すると、B画像はG画像成分の影響を受け、かつ、G画像はR画像成分の影響を受けた画像となってしまう。
【0083】
そのため、信号分離部86は、R画像信号を用いてG画像信号を処理して、G画像信号からR画像信号の成分を除去し、G画像信号を用いてB画像信号を処理して、B画像信号からG画像信号の成分を除去するのが好ましい。
なお、G画像信号の処理に用いるR画像信号、及び、B画像信号の処理に用いるG画像信号は、共に、処理を行う画素と共に1画素を構成するサブピクセルとなるR画素及びG画素の画像信号を用いればよい。あるいは、処理を行う画素に隣接する画素を適宜選択して、その画素の画像信号を用いてもよい。
【0084】
G画像信号の補正は、一例として、下記式によって行う。
補正G画像信号=G画像信号−α×R画像信号(すなわち、補正G画素=G画素−α×R画素)
ここで、αは、G画素で測光されるR光成分を得るための係数であり、CCDセンサ48のカラーフィルタ特性等に応じて、G画素で測光されるR光成分を算出できる係数を、適宜、設定すればよい。
【0085】
補正G画像信号は、血管深さ情報及び血管深さ画像の算出の際に用いられるB/G比の、G画像信号の代わりに用いてもよい。
【0086】
以上、本発明の内視鏡装置について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 内視鏡装置
12 内視鏡
14 プロセッサ装置
16 光源装置
18 表示装置
20 入力装置
26 挿入部
28 操作部
30 ユニバーサルコード
32 コネクタ
36 ビデオコネクタ
38 軟性部
40 湾曲部
42 スコープ部
46 撮影レンズ
48 CCDセンサ(撮像素子)
48a カラーフィルタ
50 照明用レンズ
52、62 光ファイバ
56 AFE基板
60 光源
76 DSP
78 記憶部
80 通常光画像生成部
80a ゲイン調整部
80b、92 画像処理部
82 特殊光画像生成部
84 表示信号生成部
86 信号分離部
86a 信号推定手段
86b 補正演算手段
88 血管深さ情報算出部
88a 深さ情報テーブル
90 分光推定情報算出部
90a マトリックス算出手段
90b 画像信号補正手段
92 画像処理部
92a 血管深さ画像生成手段
92b 分光画像生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体とする生体の構造・成分の分光スペクトル特性に応じて狭帯域化された所定の波長帯域幅を持つ狭帯域光を照射する光源と、前記狭帯域光によって励起され所定の蛍光光を発光する蛍光体と、を有し、前記狭帯域光と前記蛍光光とからなる照明光を照射する光源装置と、
前記照明光を前記被写体に向けて照射して、前記照明光の前記被写体からの戻り光により撮像を行い、画像信号を出力する撮像素子とを有する内視鏡本体と、
前記画像信号を前記狭帯域光に対応する第1の画像信号と前記蛍光光に対応する第2の画像信号とに分離する信号分離部と、前記第1の画像信号及び第2の画像信号に基づいて血管深さ情報を算出する血管深さ情報算出部と、前記第2の画像信号に基づいて分光推定情報を算出する分光推定情報算出部と、前記第1の撮像画像信号、前記第2の撮像画像信号、前記血管深さ情報、及び前記分光推定情報から撮像画像を生成する画像処理部と、を有する処理装置と、を備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記画像信号は、前記撮像素子の分光感度特性に応じて出力されるB画像信号、G画像信号及びR画像信号からなり、
前記信号分離部は、信号推定手段と補正演算手段とを備え、
前記信号推定手段により前記画像信号のG画像信号から、前記蛍光光に対応するB画像信号を推定し、前記補正演算手段により前記画像信号のB画像信号から前記蛍光光に対応するB画像信号を除算することで、前記画像信号を前記狭帯域光に対応する前記第1の画像信号と前記蛍光光に対応する前記第2の画像信号とに分離することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記血管深さ情報算出部は、前記第1の画像信号と前記G画像信号との比(B/G比)と血管深さとの対応を記録した深さ情報テーブルを備え、
前記B/G比と、前記深さ情報テーブルとに基づいて前記血管深さ情報を算出することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記B/G比に基づいて血管深さ画像を生成する血管深さ画像生成手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記分光推定情報は、前記第2の画像信号から、分光画像信号を生成するためのマトリックス情報であり、
前記分光推定情報算出部は、前記分光推定情報を算出することで前記第2の画像信号から前記分光画像信号を生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記分光画像信号から異なる波長帯域の情報を有する複数枚の分光画像を生成する分光画像生成手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記複数枚の分光画像は、5nm刻みで波長帯域の異なる分光画像であることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記光源は、中心発光波長445nmの青色レーザ光源であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項9】
さらに、前記処理装置は、前記画像信号に基づいて通常光観察画像を生成する通常光観察画像生成部と、
前記処理装置が生成した画像を表示する表示装置とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
複数の前記表示装置を有し、少なくとも1つの前記表示装置に前記血管深さ画像及び前記分光画像を含む少なくとも1つの特殊光観察画像を表示し、他の少なくとも1つの前記表示装置に前記通常光観察画像を表示することを特徴とする請求項9に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記処理装置は、前記表示装置における画像表示を制御する制御手段を有し、
かつ、前記処理装置には、通常光観察画像のみを前記表示装置に表示する表示モード、特殊光観察画像のみを前記表示装置に表示する表示モード、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像の両者の全面を前記表示装置に表示する表示モード、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像の両者を表示して表示範囲を切り替え可能にする表示モード、並びに、通常光観察画像及び特殊光観察画像、又は2種類の異なる特殊光観察画像を切り替え表示する表示モードの少なくとも2つが設定されており、
さらに、前記表示モードの選択手段を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−213541(P2012−213541A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81438(P2011−81438)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】