説明

内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ及びそれを用いた電力用直流同軸ケーブル接続部

【課題】接続部の外径増大が小さく、製作が容易で、欠陥の少ない電力用直流同軸ケーブルの接続部を提供する。
【解決手段】帰路導体5の露出区間Sの外側に、2本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を直列状に被せてそれぞれを熱収縮させる。熱収縮したチューブ11の端部と端部が突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層12、12同士を接続すると共に、当該チューブの絶縁層13、13同士を接続する。熱収縮したチューブ11の端部と、ケーブルの帰路内部半導電層6及び帰路絶縁層7の端部とが突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層12と両ケーブルの帰路内部半導電層6とを接続すると共に、当該チューブの絶縁層13と両ケーブルの帰路絶縁層7とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブと、それを用いた電力用直流同軸ケーブルの接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用直流同軸ケーブルは一般に図6に示すような構造となっている。すなわち、中心に主導体1を有し、その外側に主内部半導電層2、主絶縁層3、主外部半導電層4を順次介して帰路導体(中性線導体、外部導体ともいう)5を設け、その外側に帰路内部半導電層6、帰路絶縁層7、帰路外部半導電層8を順次介して鉛被9を設け、その外側にポリエチレン等からなる防食層10を設けた構造となっている(特許文献1参照)。なお、電力用直流同軸ケーブルを海底ケーブルとして使用する場合には、防食層10の外側に、さらに座床、鉄線鎧装、サービング層が設けられる。
【0003】
帰路導体5は、多数の帰路導体素線5aを同心撚りすることにより形成される。主絶縁層3は架橋ポリエチレンにより形成され、帰路絶縁層7は非架橋のポリエチレンにより形成される。帰路絶縁層7は主絶縁層3より厚さが薄い。主内部半導電層2及び主外部半導電層4は主絶縁層3との同時押出等により形成され、帰路内部半導電層6及び帰路外部半導電層8は半導電性テープ巻き等により形成される。
【0004】
電力用直流同軸ケーブルは、連系線として長距離海底ケーブルなどに使用されることが多い。しかし工場で一連続で製造できるケーブルの長さは限られているため、工場では製造可能な長さのケーブルを複数本製造し、これらのケーブルを接続することで、長距離用の直流同軸ケーブルを製造している。工場で製作される直流同軸ケーブル同士の接続部は一般に工場ジョイントといわれる。この工場ジョイントは、敷設船への積み込みや敷設船からの繰り出しの際に加わる曲げに対応できるように、できるだけ外径を小さく抑えること(ケーブル外径に近い外径で接続すること)が要求される。
【0005】
直流同軸ケーブルを接続する場合には、中心の主導体を接続した後、主内部半導電層の接続、主絶縁層の接続、主外部半導電層の接続、帰路導体の接続、帰路内部半導電層の接続、帰路絶縁層の接続、帰路外部半導電層の接続、鉛被の接続、防食層の接続が順次行われる。接続部外径を小さく抑えるため、主導体の接続は突き合わせ溶接により行われ、帰路導体の接続は素線突き合わせ溶接、素線周方向重ね合わせ溶接又は素線割り入れ溶接などにより行われる。また、接続部の主内部半導電層、主絶縁層、主外部半導電層の形成には通常のCVケーブルの接続技術をそのまま適用できる。また、接続部の帰路内部半導電層、帰路絶縁層の形成は、TJ方式(絶縁ゴムテープ巻き絶縁)又はTMJ方式(ポリエチレンテープ巻きモールド絶縁)により行うことが提案されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−120836号公報
【非特許文献1】2000年電線ケーブル技術研究会発表論文EC−00−21「直流同軸ケーブルの開発」
【非特許文献2】平成14年電気学会全国大会発表論文7−139「小容量直流同軸XLPEケーブル並びに工場ジョイント」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電力用直流同軸ケーブルの要求性能が高くなると、TJ方式では、高い絶縁性能が要求される場合にはその絶縁性能から接続部の帰路絶縁層が厚くなるために、接続部帰路絶縁層の外径がケーブル帰路絶縁層の外径よりもかなり大きくなってしまい、ケーブル接続部の外径を小さく抑えることが困難である。
【0008】
またTMJ方式で接続部の帰路絶縁層を形成すると、TJ方式よりも絶縁性能が優れているために接続部外径を小さくできるが、次のような問題がある。すなわち、電力用直流同軸ケーブルの帰路導体の接続は、ケーブルの主外部半導電層同士を接続した後に行われるため、帰路導体が露出する区間が長くなる。その結果、TMJ方式の場合は、広範囲(例えば1.6m)にわたって半導電性テープ及び絶縁テープを巻き、それぞれを加圧、加熱してモールド成形することになるため、加熱時の温度管理が難しく、かつモールド成形体全域で欠陥(突起/変形、異物、ボイド)の発生を抑制し、品質を安定させることが難しい。
【0009】
本発明の目的は、電力用直流同軸ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の接続に好適な内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブと、それを用いた、接続部の外径増大が小さく、製作が容易で、欠陥の少ない電力用直流同軸ケーブルの接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブは、一軸延伸半導電性フィルム又はテープをその延伸方向が周方向に向くように多層巻きして径方向に熱収縮可能な内部半導電層を所要厚さに形成し、その上に一軸延伸絶縁フィルム又はテープをその延伸方向が周方向に向くように多層巻きして径方向に熱収縮可能な絶縁層を所要厚さに形成したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る電力用直流同軸ケーブルの接続部は、中心に主導体を有し、その外側に主内部半導電層、主絶縁層、主外部半導電層を順次有し、その外側に多数の帰路導体素線を同心撚りしてなる帰路導体を有し、その外側に帰路内部半導電層、帰路絶縁層を順次有する電力用直流同軸ケーブル同士の接続部であって、
両ケーブルの主導体同士、主内部半導電層同士、主絶縁層同士、主外部半導電層同士、帰路導体同士を接続した上で、
帰路導体露出区間の外側に請求項1記載の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを被せて熱収縮させ、
熱収縮したチューブの端部と、ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部とが突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層とを接続すると共に、当該チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層とを接続した、
ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る上記の電力用直流同軸ケーブルの接続部は、
熱収縮したチューブの両端部並びに両ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部はそれぞれ外径が漸減するテーパー形状に形成され、
前記チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層との接続部及び前記チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層との接続部はそれぞれ、前記テーパー形状の間のV字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電力用直流同軸ケーブルの接続部は、中心に主導体を有し、その外側に主内部半導電層、主絶縁層、主外部半導電層を順次有し、その外側に多数の帰路導体素線を同心撚りしてなる帰路導体を有し、その外側に帰路内部半導電層、帰路絶縁層を順次有する電力用直流同軸ケーブル同士の接続部であって、
両ケーブルの主導体同士、主内部半導電層同士、主絶縁層同士、主外部半導電層同士、帰路導体同士を接続した上で、
帰路導体露出区間の外側に、当該区間より長さが短い複数本の請求項1記載の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを直列状に被せてそれぞれを熱収縮させ、
熱収縮したチューブの端部と端部が突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層同士を接続すると共に、当該チューブの絶縁層同士を接続し、
かつ熱収縮したチューブの端部と、ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部とが突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層とを接続すると共に、当該チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層とを接続した、
ことを特徴とするものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る上記の電力用直流同軸ケーブルの接続部は、
熱収縮したチューブの両端部並びに両ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部はそれぞれ外径が漸減するテーパー形状に形成され、
前記チューブの内部半導電層同士の接続部及び絶縁層同士の接続部はそれぞれ、前記テーパー形状の間のV字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成され、
前記チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層との接続部及び前記チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層との接続部はそれぞれ、前記テーパー形状の間のV字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る上記の各電力用直流同軸ケーブルの接続部は、帰路導体露出区間の外側に、半導電性テープ巻き層を設けた上で、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを熱収縮させた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明により提供される内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブは、熱収縮性絶縁チューブの内側に熱収縮性内部半導電層が一体に設けられているので、これを帰路導体露出区間に被せて、加熱、収縮させるだけで、接続部の帰路内部半導電層及び帰路絶縁層を形成することができる。したがってテープ巻きモールド方式により内部半導電層及び絶縁層を形成する場合に比べ、接続部形成を大幅に簡素化できると共に、加熱時の温度管理が容易であり、かつ欠陥(突起/変形、異物、ボイド)の発生要因が少なく、接続部の品質を安定させることができる。
【0017】
また請求項2の発明によれば、接続部の帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の大部分を熱収縮した内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブで形成したので、TJ方式で帰路内部半導電層及び帰路絶縁層を形成する場合に比べ、接続部の帰路絶縁層の厚さを薄くでき、接続部外径の増大を抑えることができる。またTMJ方式で帰路内部半導電層及び帰路絶縁層を形成する場合に比べ、接続部形成を大幅に簡素化できると共に、加熱時の温度管理が容易であり、かつ欠陥(突起/変形、異物、ボイド)の発生要因が少なく、接続部の品質を安定させることができる。
【0018】
また請求項3の発明によれば、熱収縮した内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層との接続及び前記チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層との接続を、短い区間で、簡単に、確実に行うことができる。したがって接続部形成作業を簡素できる。
【0019】
また請求項4の発明によれば、帰路導体露出区間の外側に、当該区間より長さが短い複数本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを直列状に被せてそれぞれを熱収縮させ、熱収縮したチューブ同士を接続することで、帰路導体露出区間をカバーするようにしたので、1本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブの長さを短くすることができる。帰路導体露出区間は前述のようにかなり長くなる(例えば1.6mにもなる)ので、この区間を1本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブでカバーしようとすると、かなり長い内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブが必要となる。しかし、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブの製造設備や品質管理の面から、帰路導体露出区間が長い場合には、複数本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを用いて全域をカバーするのも一つの方法である。上記以外の効果は請求項2の発明と同じである。
【0020】
また請求項5の発明によれば、熱収縮した内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブの内部半導電層同士の接続及び絶縁層同士の接続を、短い区間で、簡単に、確実に行うことができる。上記以外の効果は請求項3の発明と同じである。
【0021】
また請求項6の発明によれば、熱収縮したチューブの内部半導電層が帰路導体の素線の間の隙間に落ち込むのを抑制できるので、チューブの内部半導電層と絶縁層の界面の平滑性がよくなり、接続部の品質を安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態1> 図1は本発明に係る内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブの一実施形態を示す。この内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11は、径方向に熱収縮可能な円筒状の内部半導電層12の上に、径方向に熱収縮可能な円筒状の絶縁層13を一体に形成したものである。
【0023】
このような内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11は、図2のようにして製造することができる。すなわち、マンドレル14上に、半導電性材料製の一軸延伸フィルム(一軸延伸半導電性フィルム)をその延伸方向が周方向に向くように多層巻きして所要厚さの径方向に熱収縮可能な内部半導電層12を形成し、その上に絶縁性材料製の一軸延伸フィルム(一軸延伸絶縁フィルム)13aをその延伸方向が周方向に向くように多層巻きして所要厚さの径方向に熱収縮可能な絶縁層13を形成した後、マンドレル14を引き抜くことにより製造できる。一軸延伸半導電性フィルム及び一軸延伸絶縁フィルムの幅は、製造すべき内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11の長さと同じである。一軸延伸半導電性フィルムの材質は及び一軸延伸絶縁フィルムの材質は例えばポリオレフィン系材料である。
【0024】
<実施形態2> 図3は上記の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を用いた本発明に係る電力用直流同軸ケーブル接続部の一実施形態を示す。接続すべき直流同軸ケーブル20A、20Bはそれぞれ、中心に主導体1を有し、その外側に主内部半導電層2、主絶縁層3、主外部半導電層4を順次設け、その外側に多数の帰路導体素線5aを同心撚りしてなる帰路導体5を設け、その外側に帰路内部半導電層6、帰路絶縁層7、帰路外部半導電層8、鉛被9、防食層10を順次設けたものである。
【0025】
両ケーブル20A、20Bの端部は段剥ぎされ、主導体1、1同士は、外径増大を抑制するため、突き合わせ溶接により接続される。21はその溶接接続部である。また、両ケーブルの主内部半導電層2、2同士は両者の端部に跨るように接続部主内部半導電層22を形成することにより接続され、主絶縁層3、3同士は両者の端部に跨るように接続部主絶縁層(補強絶縁体)23を形成することにより接続され、主外部半導電層4、4同士は両者の端部に跨るように接続部外部半導電層24を形成することにより接続される。接続部の主内部半導電層22、主絶縁層23、主外部半導電層24の形成には、周知のCVケーブルの接続技術がそのまま適用される。
【0026】
両ケーブル20A、20Bの帰路導体5、5の接続は、外径増大を抑制するため、例えば素線5aを突き合わせ溶接することにより行われる。25はその溶接接続部である。帰路導体5、5の接続は、ケーブルの主外部半導電層4、4の端部に跨る接続部外部半導電層24を形成した後に行われるため、帰路導体5、5の露出区間Sがかなり長くなる。
【0027】
本発明では、この長い帰路導体露出区間Sの外側に帰路内部半導電層及び帰路絶縁層を形成するために、図1に示した内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を使用する。内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11は、主導体1、1の接続を行う前に予めどちらかのケーブル20A又は20Bの外側に配置しておき、帰路導体5、5の接続が終わった時点で帰路導体露出区間Sに引き戻す。このようにして帰路導体露出区間Sの外側に被せられた内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を、加熱して帰路導体5、5上に熱収縮させる。この実施形態では、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11が帰路導体露出区間Sのほぼ全長をカバーするだけの長さを有している。
【0028】
熱収縮したチューブ11の両端部では、当該チューブ11の内部半導電層12と両ケーブル20A、20Bの帰路内部半導電層6とが接続され、当該チューブ11の絶縁層13と両ケーブル20A、20Bの帰路絶縁層7とが接続される。これらの接続は次のように行われる。すなわち、熱収縮したチューブ11の両端部並びに両ケーブル20A、20Bの帰路内部半導電層6及び帰路絶縁層7の端部をそれぞれ、予め外径が漸減するテーパー形状に形成し、前記チューブの内部半導電層12とケーブルの帰路内部半導電層6とを、前記テーパー形状の間のV字状凹部の底部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成した半導電層接続部26により接続し、前記チューブの絶縁層13とケーブルの帰路絶縁層7とを、前記V字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成した絶縁層接続部27により接続する。
【0029】
このようにして、両ケーブルの帰路内部半導電層6、6同士の接続、帰路絶縁層7、7同士の接続を行うと、帰路導体露出区間Sの全長にテープ巻きモールドを施す場合に比べ、欠陥の発生が少なく品質を安定させることができると共に、接続部外径の増大を抑制でき、また接続時間の短縮を図ることができる。
【0030】
この後、両ケーブル20A、20Bの帰路外部半導電層8、8の端部間を半導電性テープ巻き層28の形成により接続し、鉛被9、9の端部間を鉛管29により接続し、防食層10、10の端部間を熱収縮性防食スリーブ30により接続する。これらの点は従来と同じである。
【0031】
<実施形態3> 図4は本発明に係る電力用直流同軸ケーブル接続部の他の実施形態を示す。この実施形態が、実施形態2と異なる点は、帰路導体露出区間Sに、その区間Sのほぼ半分の長さを有する2本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を直列状に被せて、熱収縮させたことである。
【0032】
熱収縮したチューブ11の両端部並びに両ケーブル20A、20Bの帰路内部半導電層6及び帰路絶縁層7の端部はそれぞれ外径が漸減するテーパー形状に形成されている。前記2本のチューブ11の内部半導電層12、12同士は、前記テーパー形状の間のV字状凹部の底部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成された内部半導電層接続部31により接続され、絶縁層13、13同士は、前記V字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成された絶縁層接続部32により接続されている。
【0033】
また、前記2本のチューブ11、11の両外端部では、前記チューブの内部半導電層12とケーブルの帰路内部半導電層6とが、前記テーパー形状の間のV字状凹部の底部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成された半導電層接続部26により接続され、前記チューブの絶縁層13とケーブルの帰路絶縁層7とが、前記V字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成された絶縁層接続部27により接続されている。この点は実施形態2と同様である。
【0034】
上記以外の構成は実施形態2(図3)と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
この実施形態によると、1本の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11の長さが実施形態2の場合のほぼ半分で済むので、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11の製造設備や品質管理の面で長さ制約がある場合には、有効な帰路絶縁層形成方法となる。それ以外の効果は実施形態2と同じである。
【0036】
<実施形態4> 図5は本発明に係る電力用直流同軸ケーブル接続部のさらに他の実施形態を示す。この実施形態が、実施形態3と異なる点は、帰路導体露出区間Sの外側に、半導電性テープ巻き層33を設けた上で、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を熱収縮させたことである。それ以外の構成は実施形態3(図4)と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
この実施形態によると、帰路導体露出区間Sの外側に半導電性テープ巻き層33が設けられているので、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ11を熱収縮させたときに、チューブの内部半導電層12が帰路導体の素線5aの間の隙間に落ち込まなくなる。このため内部半導電層12と絶縁層13の界面の平滑性がよくなり、絶縁性能を高めることができる。なお、半導電性テープ巻き層33は、チューブ11の内部半導電層12と全面で接触するので、モールド成形する必要はなく、半導電性テープ巻き層を設けること自体は容易である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブの一実施形態を示す、(A)は一部切開側面図、(B)は端面図。
【図2】図1の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを製造する方法を示す説明図。
【図3】本発明に係る電力用直流同軸ケーブル接続部の一実施形態を示す縦断面図。
【図4】本発明に係る電力用直流同軸ケーブル接続部の他の実施形態を示す縦断面図。
【図5】本発明に係る電力用直流同軸ケーブル接続部のさらに他の実施形態を示す縦断面図。
【図6】電力用直流同軸ケーブルの一例を示す横断面図。
【符号の説明】
【0039】
1:主導体
2:主内部半導電層
3:主絶縁層
4:主外部半導電層
5:帰路導体
5a:素線
6:帰路内部半導電層
7:帰路絶縁層
8:帰路外部半導電層
9:鉛被
10:防食層
11:内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ
12:内部半導電層
13:絶縁層
20A、20B:電力用直流同軸ケーブル
21:主導体溶接接続部
22:接続部主内部半導電層
23:接続部主絶縁層
24:接続部主外部半導電層
25:素線溶接接続部
26:帰路内部半導電層接続部
27:帰路絶縁層接続部
31:半導電層接続部
32:絶縁層接続部
33:半導電性テープ巻き層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸延伸半導電性フィルム又はテープをその延伸方向が周方向に向くように多層巻きして径方向に熱収縮可能な内部半導電層を所要厚さに形成し、その上に一軸延伸絶縁フィルム又はテープをその延伸方向が周方向に向くように多層巻きして径方向に熱収縮可能な絶縁層を所要厚さに形成したことを特徴とする内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブ。
【請求項2】
中心に主導体を有し、その外側に主内部半導電層、主絶縁層、主外部半導電層を順次有し、その外側に多数の帰路導体素線を同心撚りしてなる帰路導体を有し、その外側に帰路内部半導電層、帰路絶縁層を順次有する電力用直流同軸ケーブル同士の接続部であって、
両ケーブルの主導体同士、主内部半導電層同士、主絶縁層同士、主外部半導電層同士、帰路導体同士を接続した上で、
帰路導体露出区間の外側に請求項1記載の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを被せて熱収縮させ、
熱収縮したチューブの端部と、ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部とが突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層とを接続すると共に、当該チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層とを接続した、
ことを特徴とする電力用直流同軸ケーブルの接続部。
【請求項3】
熱収縮したチューブの両端部並びに両ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部はそれぞれ外径が漸減するテーパー形状に形成され、
前記チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層との接続部及び前記チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層との接続部はそれぞれ、前記テーパー形状の間のV字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成されていることを特徴とする請求項2記載の電力用直流同軸ケーブルの接続部。
【請求項4】
中心に主導体を有し、その外側に主内部半導電層、主絶縁層、主外部半導電層を順次有し、その外側に多数の帰路導体素線を同心撚りしてなる帰路導体を有し、その外側に帰路内部半導電層、帰路絶縁層を順次有する電力用直流同軸ケーブル同士の接続部であって、
両ケーブルの主導体同士、主内部半導電層同士、主絶縁層同士、主外部半導電層同士、帰路導体同士を接続した上で、
帰路導体露出区間の外側に、当該区間より長さが短い複数本の請求項1記載の内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを直列状に被せてそれぞれを熱収縮させ、
熱収縮したチューブの端部と端部が突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層同士を接続すると共に、当該チューブの絶縁層同士を接続し、
かつ熱収縮したチューブの端部と、ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部とが突き合さる部分で、当該チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層とを接続すると共に、当該チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層とを接続した、
ことを特徴とする電力用直流同軸ケーブルの接続部。
【請求項5】
熱収縮したチューブの両端部並びに両ケーブルの帰路内部半導電層及び帰路絶縁層の端部はそれぞれ外径が漸減するテーパー形状に形成され、
前記チューブの内部半導電層同士の接続部及び絶縁層同士の接続部はそれぞれ、前記テーパー形状の間のV字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成され、
前記チューブの内部半導電層とケーブルの帰路内部半導電層との接続部及び前記チューブの絶縁層とケーブルの帰路絶縁層との接続部はそれぞれ、前記テーパー形状の間のV字状凹部を埋めるようにテープ巻きモールドにより形成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の電力用直流同軸ケーブルの接続部。
【請求項6】
帰路導体露出区間の外側に、半導電性テープ巻き層を設けた上で、内部半導電層付き熱収縮絶縁チューブを熱収縮させたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の電力用直流同軸ケーブルの接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−44864(P2009−44864A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207441(P2007−207441)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】