説明

円すいころ軸受及び円すいころ軸受用保持器の製造方法

【課題】潤滑不良状態での耐久性向上、即ち、焼き付きにより回転不能に至るまでの時間の延長をより十分に図れる構造を実現する。
【解決手段】保持器5dを構成する大径側リム部12aのうちで、円周方向に関する位相が各ポケット15aに整合する部分の内周面部分に、径方向外方に凹んだ保油凹部19を設ける。これら各保油凹部19の底面のうちで前記各ポケット15aの内面に開口している部分を、これら各ポケット15a内に保持された各円すいころ4aの大径側端面10に形成された凹部20に対向させる。潤滑不良時に、前記各保油凹部19に残った潤滑油を、前記大径側端面10と大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺動部の潤滑に有効利用し、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両の車軸や駆動装置を構成する伝達軸、或は、自動車用デファレンシャルギヤを構成するピニオン軸の如く、大きなラジアル荷重及びスラスト荷重が加わる状態で回転する各種回転軸を支承する為の円すいころ軸受、及び、この円すいころ軸受に組み込む保持器の製造方法の改良に関する。具体的には、円すいころ軸受の発明に関しては、円すいころ軸受を構成する複数個の円すいころを転動自在に保持する保持器の形状、構造を工夫する事により、潤滑不良状態での耐久性向上、即ち、潤滑不良状態になってから焼き付きにより回転不能に至るまでの時間の延長を図るものである。又、円すいころ軸受用保持器の製造方法に関しては、上述の様な保持器を、工業的に能率良く造れる様にするものである。
【背景技術】
【0002】
例えばデファレンシャルギヤのピニオン軸の如く、大きなラジアル荷重及びスラスト荷重を支承しつつ回転する回転軸の為の回転支持部に、図16に示す様な円すいころ軸受1が組み込まれている。この円すいころ軸受1は、互いに同心に配置された外輪2及び内輪3と、複数個の円すいころ4、4と、保持器5とを備える。このうちの外輪2は、内周面に部分円すい凹面状の外輪軌道6を有する。又、前記内輪3は、この外輪2の内径側に配置されたもので、外周面に部分円すい凸面状の内輪軌道7を有する。又、前記内輪3の外周面のうちの大径側端部に大径側鍔部8を、同じく小径側端部に小径側鍔部9を、それぞれ前記内輪軌道7から径方向に関して外方に突出する状態で形成している。又、前記各円すいころ4、4は、前記外輪軌道6と前記内輪軌道7との間に、転動自在に配置された状態で、それぞれの大径側端面(頭部)10を、前記大径側鍔部8の軸方向内側面11と対向させている。又、前記保持器5は、前記各円すいころ4、4を保持する為のものである。
【0003】
この保持器5は、互いに同心に、且つ、軸方向に間隔をあけて配置された、それぞれが円環状である大径側リム部12及び小径側リム部13と、これら両リム部12、13同士の間に掛け渡された複数本の柱部14、14とを備える。そして、これら両リム部12、13と円周方向に隣り合う1対ずつの柱部14、14とにより四周を囲まれる部分を、それぞれ前記各円すいころ4、4を転動自在に保持する為のポケット15、15としている。尚、図16に示した保持器5は、金属板を曲げ加工して成るもので、小径側端部から径方向内方に折れ曲がった、内向フランジ状の曲げ板部16を形成する事により、全体の剛性確保を図っている。
【0004】
又、図17〜19は、従来から知られている円すいころ軸受の第2例として、形状の異なる保持器5aを組み込んだ円すいころ軸受1を示している。この保持器5aは、合成樹脂を射出成形する事により、或は金属製の素材に削り出し加工を施す事により、一体に造られている。基本的構造は、上述の図16に示した従来構造の第1例に組み込まれた保持器5と同様に、軸方向に間隔をあけて配置された、それぞれが円環状である大径側リム部12a及び小径側リム部13aと複数本の柱部14a、14aとを備え、これら両リム部12a、13aと円周方向に隣り合う1対ずつの柱部14a、14aとにより四周を囲まれる部分を、それぞれポケット15a、15aとしている。本例の場合には、前記両リム部12a、13a自体で剛性を十分に確保できる為、上述の第1例の保持器5の様な曲げ板部16(図16参照)は設けていない。又、円すいころ4aの大径側端面10の中央部に、円形の凹部20を設けている。
【0005】
何れの構造の場合でも、円すいころ軸受1の運転時に前記各円すいころ4、4aは、部分円すい凹面状の外輪軌道6と部分円すい凸面状の内輪軌道7とから加わる大きなラジアル荷重により、これら両軌道6、7の大径側に変位する傾向になる。この結果、前記円すいころ軸受1の運転時に前記各円すいころ4、4aは、前記外輪2と前記内輪3との相対回転に伴って、それぞれの大径側端面10と大径側鍔部8の軸方向内側面11とを摺接させつつ、自転及び公転する。この場合に於いて、これら大径側端面10と大径側鍔部8の軸方向内側面11との摩擦状態は、殆ど滑り摩擦だけの状態になる為、耐摩耗性及び耐焼き付け性を確保する面からは、非常に厳しい条件となる。この為従来から、上述の様な円すいころ軸受1を組み込んだ回転支持部には、十分な潤滑油を供給して、前記大径側端面10と前記大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺動面に、十分な潤滑油膜を介在させる様に構成している。
【0006】
前記円すいころ軸受1を組み込んだ回転支持部に十分な量の潤滑油を供給できる平常状態であれば、上述の様な従来構造の円すいころ軸受1でも、特に問題を生じる事はない。但し、この円すいころ軸受1を組み込んだ回転支持装置の種類に拘らず、何らかの故障や整備不良等により、この円すいころ軸受1に供給される潤滑油が不足乃至は枯渇する可能性を、完全に否定する事はできない。この円すいころ軸受1に供給される潤滑油が不足乃至は枯渇した場合、先ず、最も条件が厳しい、前記大径側端面10と前記大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺動面の摩耗が著しく進行する。更に著しい場合には、これら大径側端面10と軸方向内側面11とが凝着して前記各円すいころ4、4aの自転及び公転が不能になり、更にはこれら各円すいころ4、4aの転動面と前記外輪軌道6とが凝着して、前記外輪2と前記内輪3との相対回転が不能になる、所謂焼き付きを発生する。
【0007】
この様な焼き付きが発生すると、車両(鉄道車両や自動車)の通常運行はおろか、この車両を移動させる事も困難となり、鉄道の復旧が遅れたり、交通渋滞を引き起こす等の問題を生じ易くなる。又、回転支持部の回転不能が他の部分の故障の原因となって、修理に要する費用並びに時間が嵩む等の問題も生じ易い。この様な問題は、図23に示す様に、接触角が大きな、即ち、外輪2の内周面に形成した外輪軌道6、及び、内輪3の外周面に形成した内輪軌道7の、中心軸に対する傾斜角度が大きく、各円すいころ4aの自転軸と前記外輪2及び内輪3の中心軸との傾斜角度が大きな円すいころ軸受1の場合に、顕著になり易い。例えば、接触角が20度以上である円すいころ軸受1は、使用時に加わる大きな荷重(ラジアル荷重及びスラスト荷重)に基づいて各円すいころ4aを大径側に変位させる分力が大きくなり、これら各円すいころ4aの大径側端面10と、前記内輪3の端部外周面に形成した大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺動面の摺接部の面圧が高くなる。この結果、潤滑不良の状態で、これら両面10、11同士の摺接部の磨耗が著しくなり易い。特に、接触角が25度以上の場合に、その傾向が著しくなる。
【0008】
尚、上述した、図23に示す様な、接触角が大きな円すいころ軸受1に組み込まれる保持器5fは、図24〜25に示す様に、大径側リム部12cの直径と、小径側リム部13bの直径との差が大きく、これら両リム部12c、13b同士の間に掛け渡した柱部14b、14bの傾斜角度が大きくなっている。この様な図24〜25に示した保持器5fにしても、前述の図18〜19に示した保持器5aにしても、合成樹脂により造る場合には、図26に示す様な、軸方向に関して互いに遠近動する1対の金型22、23を備えた金型装置24を利用する、所謂アキシアルドローにより射出成形する。即ち、これら両金型22、23を突き合わせた状態で、これら両金型22、23同士の間に画成される成形用空間(キャビティ)内に熱可塑性の合成樹脂を、加熱溶融した状態で、ゲートと呼ばれる複数の送り込み口を通じ、圧力を加えた状態で送り込む。そして、前記合成樹脂が冷却・固化した後、前記両金型22、23を離隔させて、成形された前記保持器5f(5a)を取り出す。
【0009】
何れの構造の保持器5、5a、5fを使用した円すいころ軸受1にしても、前述した様に、著しい磨耗や焼き付きが発生する可能性を有する。
この様な事情に鑑みて、特許文献1、2には、少ない潤滑油を有効利用して、各円すいころの大径側端面と大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部を潤滑する構造が記載されている。図20〜22は、このうちの特許文献1に記載された、従来構造の2例を示している。
【0010】
先ず、図20に示した従来から知られている対策済構造の第1例の場合には、金属板製の保持器5bの大径側端部を径方向内方に向け折り曲げる事により、この保持器5bの内周面の大径側端部に保油部17を、全周に亙って設けている。この従来構造の第1例は、この保油部17に貯溜された潤滑油を、円すいころ4の大径側端面10と大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺接部に供給して、潤滑不良の際の摩耗を抑えるとしている。
【0011】
次に、図21〜22に示した従来から知られている対策済構造の第2例の場合には、保持器5cの小径側端部を径方向外方に向け折り曲げる事により、この保持器5cの外周面の小径側端部に保油部17aを設けている。又、仕切板部18、18によりこの保油部17aを円周方向に関して複数に分割している。この従来構造の第2例は、前記保持器5cの外周面に付着してこの保持器5cの小径側端部に達した潤滑油の流失を防止し、この潤滑油を、円すいころ4の大径側端面10と大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺接部に供給して、潤滑不良の際の摩耗を抑えるとしている。
【0012】
上述の様な従来から知られている対策済構造の2例の場合、前述の図16〜19に示した、未対策構造に比べれば優れた耐久性を得られるにしても、少量の潤滑油を大径側端面10と軸方向内側面11との摺接部に必ずしも効率良く供給できる(少量の潤滑油を有効利用できる)とは言えない。先ず、図20に示した第1例の構造の場合には、保油部17に溜まったままの状態で各円すいころ4の大径側端面10に付着しない潤滑油の量が多くなり、残された少量の潤滑油の有効利用を図りにくい。又、図21〜22に示した第2例の構造は、保油部17aが大径側端面10と軸方向内側面11との摺接部から大きく外れた部分に設けられている為、やはり少量の潤滑油をこの摺接部の潤滑に有効利用する事が難しい。この様に、少量の潤滑油を前記大径側端面10と前記軸方向内側面11との摺接部の潤滑に有効利用できない点は、前記両対策済構造の2例を組み合わせ、図20に示した保油部17に図22に示した仕切板部18、18を設けたとしても同様である。
【0013】
特許文献2には、保持器の内周面に沿って導いた潤滑油を、この保持器の大径側端縁部に設けた内向の大径側フランジにより、円すいころの大径側端面と内輪外周面の大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部に導く構造が記載されている。この様な特許文献2に記載された、対策済構造の第3例の場合も、前記未対策構造に比べれば優れた耐久性を得られるにしても、少量の潤滑油を前記大径側端面と軸方向内側面との摺接部により効率良く供給する面からは、改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、潤滑不良状態での耐久性向上、即ち、潤滑不良状態になってから、焼き付きにより回転不能に至るまでの時間の延長をより十分に図れる構造、並びに、当該構造を実現する為の保持器を得る為に適切な製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象となる円すいころ軸受は、前述した従来から知られている円すいころ軸受と同様に、外輪と、内輪と、複数個の円すいころと、保持器とを備える。
このうちの外輪は、内周面に部分円すい凹面状の外輪軌道を有する。
又、前記内輪は、前記外輪の内径側にこの外輪と同心に配置されたもので、外周面に、部分円すい凸面状の内輪軌道、及び、この内輪軌道の大径側端部から径方向に関して外方に突出した大径側鍔部を有する。
又、前記各円すいころは、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に転動自在に配置されており、それぞれの大径側端面を前記大径側鍔部の軸方向側面と対向させている。
又、前記保持器は、前記各円すいころを保持する為のものである。
そして、この保持器は、互いに同心に、且つ、軸方向に間隔をあけて配置された、それぞれが円環状である大径側リム部及び小径側リム部と、これら両リム部同士の間に掛け渡された複数本の柱部とを備える。そして、これら両リム部と円周方向に隣り合う1対ずつの柱部とにより四周を囲まれる部分を、それぞれ前記各円すいころを保持する為のポケットとした構造を有するものである。
【0016】
特に、本発明の円すいころ軸受に於いては、前記大径側リム部のうちで、円周方向に関する位相が少なくとも前記各ポケットのうちの一部のポケットに整合する部分の内周面部分に、径方向外方に凹んだ保油凹部を設けている。
そして、この保油凹部の底面のうちで前記ポケットの内面に開口している部分を、当該ポケット内に保持された円すいころの大径側端面(好ましくは、この大径側端面に形成された凹部)に対向させている。但し、この大径側端面の凹部は、省略する事もできる。
【0017】
この様な本発明の円すいころ軸受を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記保油凹部の大径側リム部の外端面側に、これら保油凹部の内部と大径側リム部の外端面とを遮断する(これら保油凹部の内部と大径側リム部の外端面とが軸方向に貫通する事を防止する)堰を設ける。具体的には、前記保油凹部を、前記ポケット側の開口側端部から、前記外端面側の奥端部まで、前記大径側リム部の内周面よりも径方向外方に凹入する方向の深さを持たせる。言い換えれば、前記保油凹部の底面の奥端部と前記大径側リム部の内周面との間に段差を設ける。
【0018】
又、本発明を実施する場合に、好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記保油凹部の数を、前記ポケットの数と同じとする。そして、円周方向に関して互いに独立した状態で設けられたこれら各保油凹部を、それぞれ前記各ポケットに向けて開口させる。
又、好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記保油凹部の底部を、前記ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜させる。
更に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記大径側リム部の内周面を、前記保持器の中心軸と平行な円筒状面乃至は前記ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜した傾斜面とする。
【0019】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項6に記載した発明の様に、前記保持器を合成樹脂製とする。この請求項6に記載した発明を実施する場合に、より好ましくは、請求項7に記載した発明の様に、前記保持器を、熱可塑性を有する合成樹脂を溶融状態で金型装置の成形用空間内に、複数の送り込み口を通じ、圧力を加えた状態で送り込む事により造られるものとする。従って前記保持器は、一部に、異なる送り込み口から前記成形用空間内に送り込まれた溶融状態の合成樹脂がこの成形用空間内で突き当たる事により生じるウェルドが存在する。前記請求項7に記載した発明の場合、このウェルドを、前記両リム部と前記各柱部との連続部から外れた部分に存在させる。
【0020】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項8に記載した発明の様に、前記円すいころ軸受を、自走式車両(トラクタや機関車等に牽引されて走行するのではなく、自身に走行用の駆動源を備えた車両)の駆動源と駆動用車輪との間に設けられて、この駆動源の回転駆動力をこの駆動用車輪に伝達する車両駆動系を構成する回転軸の支持部に使用する。尚、この様な車両駆動系を構成する回転軸としては、例えば自動車のデファレンシャルギヤを構成するピニオン軸、自動車用トランスミッション(自動変速機、手動変速機、トランスアクスルを含む)を構成する動力伝達軸、鉄道車両用駆動部の動力伝達軸等が含まれる。
【0021】
又、請求項9に記載した円すいころ軸受の製造方法は、前記請求項7に記載した合成樹脂製の保持器を射出成形する為の金型装置として、前記成形用空間内に溶融状態の合成樹脂を送り込む為の送り込み口を、この成形用空間のうちで前記両リム部を形成する為のリム部成形用空間部分にそれぞれ設けると共に、前記各送り込み口の設置位置を、これら両リム部成形用空間部分の円周方向に関して、これら両リム部成形用空間部分同士の間で互いに一致させたものを使用する。
【0022】
或は、請求項10に記載した発明の様に、前記金型装置として、次の(1)〜(3)の条件を総て満たすものを使用する。
(1) 互いに同心に配置された1対の金型を軸方向に関して互いに遠近動させる、アキシアルドロー構造である。
(2) 前記両金型の互いに対向する軸方向端面のうちの一方の金型の軸方向端面に成形用凹部が、他方の金型の軸方向端面に成形用凸部が、それぞれ設けられている。
(3) 前記一方の金型の軸方向端面に、前記保油凹部を形成すべき保油凹部成形用凸部が設けられている。
この様な請求項10に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項11に記載した発明の様に、前記一方の金型として、前記保油凹部成形用凸部の先端部に段部が存在するものを使用する。
【発明の効果】
【0023】
上述の様に構成する本発明の円すいころ軸受は、次の様に作用する事により、潤滑不良状態での耐久性向上、即ち、潤滑不良状態になってから、焼き付きにより回転不能に至るまでの時間の延長を、より十分に図れる。
本発明の円すいころ軸受を組み込んだ回転機械装置の運転時に潤滑油は、一般的な円すいころ軸受の場合と同様に、円すいころ軸受特有の、各円すいころの公転運動に伴う遠心力に基づくポンプ作用により、外輪の内周面と内輪の外周面との間の軸受内部空間を、外輪軌道及び内輪軌道の小径側から大径側に向けて流れる。潤滑油の供給量が十分である場合には、この様に軸受内部空間を流れる潤滑油が、前記各円すいころの大径側端面と内輪外周面の大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部も十分に潤滑する。又、この状態では、前記軸受内部空間を流れる潤滑油の一部が、大径側リム部の内周面に形成した保油凹部内に、各ポケット側の開口部から流入しつつ、この大径側リム部の軸方向外端縁側に排出される。言い換えれば、先に前記保油凹部内に入り込んでいた潤滑油が、前記開口部から新たに流入する潤滑油によって、この保油凹部から押し出される。従って、潤滑油供給が十分に行われている通常運転時には、この保油凹部内に、常に潤滑油が溜まっている(存在している)状態となる。
【0024】
この状態から、例えば潤滑油供給ポンプの故障、ケーシング内からの潤滑油の漏洩等により、前記軸受内部空間内の潤滑油の流通量が、減少乃至は零になった場合には、前記ポケット側の開口部から前記保油凹部内への潤滑油の送り込みは、減少乃至は停止する。この様に、開口部からの潤滑油の送り込みが減少乃至は停止した状態では、既に前記保油凹部内に溜まっていた潤滑油は、この保油凹部から大径側リム部の外端縁側に押し出される事はなくなり、この保油凹部内に留まる。そして、この保油凹部内に留まった潤滑油は、前記ポケット内に保持された円すいころの大径側端面部分に(好ましくは、この大径側端面に形成された凹部内に)入り込み、この円すいころの自転運動に伴って、この大径側端面と前記大径側鍔部の軸方向内側面の摺接部に送られ、この摺接部を潤滑する。前記故障或は漏洩等が発生した時点で前記保油凹部内に留まっている潤滑油は、そのうちの多くの部分を前記摺接部の潤滑に利用できる。従って、潤滑不良状態の発生時から、焼き付きにより回転不能に至るまでの時間を十分に長くできる。この為、車両を邪魔にならない場所にまで運行する事ができ、鉄道の復旧までに要する時間を短くしたり、道路渋滞を引き起こしにくくできる。更に、前記潤滑不良が、回転支持部の回転不能にまで至りにくくして、他の部分の故障を誘発しにくくでき、修理に要する費用並びに時間が嵩む等の問題を生じにくくできる。
【0025】
尚、前記保油凹部は、少なくとも一部のポケットに整合する部分に形成すれば、当該ポケットに保持された円すいころの大径側端面(好ましくは、この大径側端面に形成された凹部)を通じて、大径側鍔部の軸方向内側面に潤滑油が供給され、この軸方向内側面と他の円すいころの大径側端面との摺接部の潤滑も行える。従って、前記保油凹部は、例えば円周方向に関して一つ置き或は二つ置きのポケット部分に設ける事もできる。又、前記保油凹部は、前記円すいころの大径側端面に対向する前記大径側リム部の内端面側で、或る程度の深さを有し、潤滑油を一時貯溜できるものであれば、この大径側リム部の外端面側では深さがゼロになっている(内端面側から外端面側に向かって深さが漸減して、この大径側リム部の内周面の軸方向中間部で消滅する)形状であっても良い。
【0026】
但し、請求項2に記載した発明の様に、前記保油凹部の大径側リム部の外端面側に堰を設ければ、この保油凹部の容積を増大して、この保油凹部内に貯溜しておける潤滑油の量を増大させると共に、潤滑不良時に、この保油凹部内に貯溜されていた潤滑油を、前記大径側リム部の外端面側に流失させずに、前記各円すいころの大径側端面と前記大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部の潤滑に、より有効に利用できる。或は、請求項3に記載した発明の様に、前記保油凹部の数を前記ポケットの数と同じとして、円周方向に関して互いに独立した状態で設けられたこれら各保油凹部を、それぞれ前記各ポケットに向けて開口させれば、全保油凹部内に溜まる潤滑油の総量(保持器全体に溜めておける潤滑油の総量)を確保して、潤滑不良状態の発生時から回転不能に至るまでの時間を長くする面から有利である。
【0027】
又、請求項4に記載した発明の様に、前記保油凹部の底部を、前記ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜させたり、請求項5に記載した発明の様に、前記大径側リム部の内周面を、前記保持器の中心軸と平行な円筒状面乃至は前記ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜した傾斜面とすれば、前記保油凹部内に溜まった潤滑油、更には前記大径側リム部の内周面に付着した潤滑油を、前記各円すいころの大径側端面に向けて効率良く導ける。特に、傾斜面とすれば、前記大径側リム部の外端面側に流失する潤滑油をゼロ乃至は僅少に抑えて、前記内周面に付着した潤滑油の、より効率的利用を図れる。この結果、潤滑不良状態が発生した時点で、前記保持器の大径側端部に残留している潤滑油を、前記各円すいころの大径側端面と大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部の潤滑に有効利用できて、前記潤滑不良状態の発生時から回転不能に至るまでの時間をより長くできる。
【0028】
又、請求項6に記載した発明の様に、前記保持器を合成樹脂製とすれば、この保持器の軽量化及び低コスト化を図れる。即ち、この保持器は、鉄系合金や銅系合金等の金属製とする事もできる。金属製の保持器を造る場合、先ず、円環状の素材に削り加工を施したり、或は板状の素材にプレスによる曲げ加工を施す事で、前記各保油凹部を持たない中間素材を得る。その後、これら保油凹部となるべき部分に削り加工を施して、前記各保油凹部を形成する。この様にして造られる金属製の保持器は、大きな強度及び剛性を得られて、通常の使用状態での耐久性確保の面から有利な反面、重量及び製造コストが嵩む。これに対し、前記保持器を合成樹脂製とすれば、材料の比重が小さい事による重量の軽減を図れる。又、この保持器を、次述する様な射出成形により造れば、前記各保油凹部を、この保持器の他の部分と同時に成形する事が可能になり、製造コストの低減を図れる。
【0029】
合成樹脂製の保持器を造る場合、熱可塑性の合成樹脂を加熱し溶融させた状態で、金型装置の成形用空間(キャビティ)内に、圧力を加えた状態で送り込む、射出成形による事が、製造コスト低減の面から一般的である。合成樹脂を射出成形する場合、ゲートと呼ばれる送り込み口から前記成形用空間内に送り込まれた合成樹脂が、この成形用空間の所定部分に互いに反対側から進入してこの所定部分で突き当たり、当該部分にウェルドと呼ばれる、応力に対する強度が低い部分が生じる。一方、保持器の使用時には、各ポケット内に保持された各円すいころが、それぞれの公転速度の差等に基づいて、これら各ポケットの周方向両側部分を仕切る各柱部を、周方向に押圧する事がある。この押圧の結果、これら各柱部の両端部と、大径側、小径側両リム部との連続部に曲げ方向の応力が加わる。そして、上述の様なウェルドがこれら各連続部に存在すると、長期間に亙る使用に伴って、これら各連続部に、亀裂等の損傷が発生する可能性がある。これに対して請求項7に記載した発明によれば、前記各連続部にウェルドが存在しない為、前記保持器の耐久性を確保し易くなる。言い換えれば、この保持器の断面積を大きくしなくても(保持器を大型化しなくても)、必要とする耐久性を確保し易くなる。
【0030】
本発明の円すいころ軸受の使用部位は特に限定しないが、請求項8に記載した発明の様に、自走式車両の駆動系の回転支持部に使用する事が好ましい。自走式車両の駆動系の場合、潤滑油を外部から供給しにくく、円すいころ軸受の内部に封入したグリースや、前記回転支持部を収めたハウジング内に貯溜した潤滑油(デファレンシャルオイルやミッションオイル)だけで潤滑する事が一般的である。又、使用期間が長期間に亙る場合が多く、潤滑状態の監視も頻繁に行われないのが実情である。これらの理由により、潤滑不良が突然生じる可能性が、例えば工作機械や産業機械の回転支持部に比べて多い。そして、潤滑不良に基づいて焼き付き等の損傷が発生した場合に、周囲に与える影響(迷惑)が、前述した通り、前記工作機械や産業機械の場合に比べて大きい。そこで、本発明の円すいころ軸受を、上述の様な、自走式車両の駆動系の回転支持部に使用すれば、前述した様な本発明による効果を顕著に得られる。
【0031】
上述の請求項7に記載した発明の様に、前記ウェルドを、前記両リム部と前記各柱部との連続部から外れた部分に存在させた合成樹脂製の保持器は、請求項9に記載した発明を実施する事により、容易に得られる。即ち、両リム部成形用空間のうちで、円周方向に関する位相が互いに一致する部分に設けられた送り込み口から金型装置の成形用空間内に送り込まれた、溶融状態の合成樹脂は、前記両リム部成形用空間を周方向に流れてから、各柱部を成形する為の、各柱部成形用空間内に、これら各柱部成形用空間の両端から進入し、これら各柱部成形用空間の中間部で突き当たり、当該部分でウェルドを形成する。従って前記各柱部の端部と前記両リム部との連続部にウェルドが形成される事はない。この為、前記請求項7に記載した様な、耐久性を確保し易い保持器を低コストで得られる。
【0032】
又、請求項10に記載した発明の様に、成形用凹部の一部に保油凹部成形用凸部を設けた一方の金型と、成形用凸部を設けた他方の金型とから成る、アキシアルドロー構造の金型装置を使用すれば、比較的簡単な金型装置で、前記各保油凹部を備えた合成樹脂製の保持器を、能率良く造れる。
更に、請求項11に記載した発明の様に、前記一方の金型として、前記保油凹部成形用凸部の先端部に段部が存在するものを使用すれば、前述の請求項2に記載した発明の様に、潤滑油の有効利用をより高度に図れる合成樹脂製の保持器を能率良く造れる。又、前記保油凹部成形用凸部の先端部の断面積を確保して(この先端部が薄肉にならない様にして)この先端部を破損しにくくでき、金型装置の耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、円すいころ軸受の部分断面図。
【図2】図1のイ部拡大図。
【図3】実施の形態の第1例に組み込んだ保持器を取り出して、大径側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図4】図3のロ部拡大図。
【図5】本発明の実施の形態の第2例を示す、円すいころ軸受の部分断面図。
【図6】本発明の実施の形態の第3例を示す、円すいころ軸受の部分断面図。
【図7】図6のハ部拡大図。
【図8】実施の形態の第3例に組み込んだ保持器を取り出して、大径側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図9】図3のニ部拡大図。
【図10】本発明の実施の形態の第4例を示す、円すいころ軸受の部分断面図。
【図11】同第5例を示す、円すいころ軸受の部分断面図。
【図12】図11のホ部拡大図。
【図13】実施の形態の第5例に組み込んだ保持器を取り出して、小径側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図14】図13のヘ部拡大図。
【図15】各実施の形態を構成する保持器を合成樹脂の射出成形により造る場合に使用する金型装置を構成する1対の金型を、互いに離隔した状態で示す部分切断斜視図。
【図16】従来から知られている一般的な円すいころ軸受の第1例を示す、部分切断斜視図。
【図17】同第2例を示す部分断面図。
【図18】この第2例に組み込んだ保持器を取り出して示す、図3と同様の斜視図。
【図19】図18のト部拡大図。
【図20】焼き付き防止の為の対策済の従来構造の第1例を示す部分断面図。
【図21】同第2例を示す部分断面図。
【図22】この第2例に組み込む保持器の一部を取り出して、大径側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図23】潤滑不良時に問題が大きくなり易い、接触角が大きな円すいころ軸受の部分断面図。
【図24】同じく保持器を取り出して、大径側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図25】図24のチ部拡大図。
【図26】従来構造を構成する保持器を合成樹脂の射出成形により造る場合に使用する金型装置を構成する1対の金型を、互いに離隔した状態で示す部分切断斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[実施の形態の第1例]
図1〜4は、請求項1、3、4(6〜8)に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の構造を含めて、本発明の特徴は、保持器の大径側端部、並びに各円すいころの大径側端面の形状及び構造を工夫する事により、潤滑不良状態の発生時から回転不能に至るまでの時間の延長を図る点にある。その他の、円すいころ軸受の基本的構成に就いては、前述の図16、20、21に示した従来から知られている円すいころ軸受と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分、並びに、先に説明しなかった部分を中心に説明する。
【0035】
本例の円すいころ軸受1を構成する保持器5dは、合成樹脂を射出成形する事により、或は金属材料に削り出し加工を施す事により、一体に造った、所謂籠型保持器で、全体を部分円すい筒状に形成している。射出成形用の合成樹脂の種類は特に問わず、例えばポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(PA46)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等、合成樹脂製保持器の射出成形用として従来から一般的に使用されていた、各種合成樹脂を使用できる。何れの合成樹脂にしても、単独で、或は炭素繊維、ガラス繊維等の強化用繊維或は強化用のセラミックウィスカ等と混合したものを使用できる。又、金属材料としては、鋼材、ステンレス鋼材等の鉄系合金や、真鍮等の銅系合金等を使用できる。
【0036】
何れの場合でも大径側リム部12aのうちで、円周方向に隣り合う柱部14a、14a同士の間部分、言い換えれば、円周方向に関する位相が各ポケット15a、15aと一致する(これら各ポケット15a、15aの大径側端部に整合する)部分の内周面に、それぞれ保油凹部19、19を設けている。これら各保油凹部19、19は、前記保持器5dの径方向に(内径側から)見た形状が爪型であって、円周方向に関する幅が、前記各ポケット15a、15aの側ほど広く、これら各ポケット15a、15aから離れるに従って狭くなる。又、前記保持器5dの径方向(厚さ方向)に関する、前記各保油凹部19、19の深さは、前記各ポケット15a、15aの側ほど深く、これら各ポケット15a、15aから離れるに従って漸減する。
【0037】
又、前記各保油凹部19、19の深さは、前記大径側リム部12aの外端縁部分で零になっている。従ってこれら各保油凹部19、19は、前記保持器5dの内径側及び前記各ポケット15a、15aの側にのみ開口しており、円周方向両側及び軸方向外側には開口していない。又、前記各保油凹部19、19のうち、円周方向に関する幅方向中央部で、この幅方向に関して最も深くなった部分である底部は、前記各ポケット15a、15aに向かうに従って径方向外方に向かう方向に、前記保持器5dの中心軸に対し、角度θ1分だけ傾斜している。要するに、前記各保油凹部19、19を、幅方向中央部ほど、更に(軸方向に関しては)この幅方向中央部で前記各ポケット15a、15aに向かう程、それぞれ深くして、これら各ポケット15a、15aに近付くに従って前記保持器5dの径方向外方に向かう方向に傾斜させている。
【0038】
又、前記各ポケット15a、15a内にそれぞれ転動自在に保持された各円すいころ4aの大径側端面10の中央部に凹部20を形成している。図示の例の場合、この凹部20を円形としているが、円輪状とする(前記大径側端面10の中心部を凹ませずに残す)事もできる。何れの場合でも、この凹部20の中心を、前記各円すいころ4aの中心軸上に位置させる。そして、前記各保油凹部19、19の底面のうちで前記各ポケット15a、15aの内面に開口している部分を、当該ポケット15a、15a内に保持された前記円すいころ4aの大径側端面10に形成された凹部20に対向させる。尚、これら各円すいころ4aの径方向に関し、前記各保油凹部19、19の底部のうちで前記各ポケット15a、15aの内面に開口している部分(図2の点X部分)は、前記凹部20の外周縁よりも内側に位置させている。従って、前記各保油凹部19、19の前記各ポケット15a、15aの内面側開口は、その全体が、前記凹部20に対向している。この為、前記各保油凹部19、19内に存在して、前記保持器5dの回転に基づく遠心力によりこれら各保油凹部19、19の底部に押し付けられた潤滑油は、そのほぼ全量が、前記各ポケット15a、15aの内面側開口から前記凹部20に流入する傾向になる。尚、前記各保油凹部19、19の前記各ポケット15a、15a側の開口縁部は、前記大径側端面10のうちで、前記凹部20の周囲に位置する平坦部に、ほぼ全長に亙って、摺接若しくは微小隙間を介して近接対向している。従って、前記凹部20内に流入した潤滑油は、前記各円すいころ4aの公転運動や前記保持器5dの回転運動に基づく遠心力に拘らず、前記円すいころ軸受1の径方向に関して外方に流失しにくい。
【0039】
上述の様に構成する本例の円すいころ軸受を組み込んだ回転機械装置の運転時に潤滑油は、前記各円すいころ4aの公転運動に伴う遠心力に基づくポンプ作用により、外輪2の内周面と内輪3の外周面との間の軸受内部空間21を、外輪軌道6及び内輪軌道7の小径側から大径側に向けて(図1の左上から右下に向けて)流れる。潤滑油の供給量が十分である場合には、この様に前記軸受内部空間21内を流れる潤滑油が、前記各円すいころ4aの大径側端面10と前記内輪3の外周面の大径側端部に設けた大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺接部も十分に潤滑する。又、この状態では、前記軸受内部空間21内を流れる潤滑油の一部が、前記大径側リム部12aの内周面の複数箇所に形成した前記各保油凹部19、19内に、前記各ポケット15a、15a側の開口部から流入しつつ、この大径側リム部12aの軸方向外端縁側に排出される。即ち、先に前記各保油凹部19、19内に入り込んでいた潤滑油が、前記各ポケット15a、15aの側の開口部から新たに流入する潤滑油によって、前記各保油凹部19、19から押し出される。従って、潤滑油供給が十分に行われている通常運転時には、これら各保油凹部19、19内に、常に潤滑油が溜まっている(存在している)状態となる。
【0040】
この状態から、例えば潤滑油供給ポンプの故障、ケーシング内からの潤滑油の漏洩等により、前記軸受内部空間21内の潤滑油の流通量が、減少乃至は零になった場合には、前記各ポケット15a、15a側の開口部から前記各保油凹部19、19内への潤滑油の送り込みは、減少乃至は停止する。この様に、開口部からの送り込みが減少乃至は停止した状態では、既に前記各保油凹部19、19内に溜まっていた潤滑油は、これら各保油凹部19、19から前記大径側リム部12aの外端縁側に押し出される事はなくなり、これら各保油凹部19、19内に留まる。この状態でこれら各保油凹部19、19内の潤滑油は、前記保持器5dの回転に伴う遠心力により、これら各保油凹部19、19の底面に押し付けられる傾向になる。これら各保油凹部19、19の底面は、前述の様に、幅方向及び軸方向に関して傾斜している為、これら各保油凹部19、19内に留まった潤滑油の大部分は、前記各ポケット15a、15a内に保持された前記各円すいころ4aの大径側端面10に形成された凹部20のうち、前記円すいころ軸受1の径方向に関して外寄り部分に入り込む。そして、この凹部20内に入り込んだ潤滑油は、前記各円すいころ4aの自転運動に伴って、前記大径側端面10と前記大径側鍔部8の軸方向内側面11の摺接部に送られて(この摺接部に染み込んで)、この摺接部を潤滑する。
【0041】
上述の説明から明らかな通り、前記故障或は漏洩等が発生した時点で前記各保油凹部19、19内に留まっている潤滑油は、そのうちの多くの部分を前記摺接部の潤滑に利用できる。従って、潤滑不良状態の発生時から、焼き付きにより回転不能に至るまでの時間を十分に長くできる。本発明者が行った、オイルディッピングによる焼き付き実験によれば、図1〜4に示した構造を有する円すいころ軸受は、図17〜19に示した従来構造の場合に比べて、潤滑油枯渇下で焼き付きが発生するまでに要する時間を、凡そ3倍に延ばせた。この為、潤滑不良の発生をセンサにより検知する等の対策を講じれば、焼き付き発生以前に、運転速度を遅くしたり安全な状態で停止する等の対策を、十分に余裕を持って行う事が可能になる。そして、焼き付きが発生する以前に、車両を邪魔にならない場所にまで運行する事ができて、鉄道の復旧までの時間を短くしたり、道路渋滞を引き起こしにくくできる。更に、前記潤滑不良が、回転支持部の回転不能にまで至りにくくして、他の部分の故障を誘発しにくくでき、修理に要する費用並びに時間が嵩む等の問題を生じにくくできる。
【0042】
[実施の形態の第2例]
図5は、請求項1、3〜5(6、7)に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、大径側リム部12bの内周面で各ポケット15aに整合する部分に形成した保油凹部19の底部だけでなく、これら各保油凹部19から円周方向に外れた、前記大径側リム部12b本来の内周面も、各ポケット15aに向かうに従って径方向外方に向かう方向に、保持器5eの中心軸に対し、角度θ2分だけ傾斜させている。この様な本例の構造によれば、前記保油凹部19だけでなく、前記大径側リム部12bの内周面に付着した潤滑油に就いても、前記各ポケット15a内に保持した各円すいころ4aの大径側端面10に向けて効率良く導ける。この結果、潤滑不良状態が発生した時点で、前記保持器5eの大径側端部に残留している潤滑油を、前記各円すいころ4aの大径側端面10と内輪3の外周面の大径側端部に設けた大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺接部の潤滑に有効利用できて、前記潤滑不良状態の発生時から回転不能に至るまでの時間をより長くできる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0043】
[実施の形態の第3例]
図6〜9は、請求項1、3、4(6〜8)に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例は、各円すいころ4aの接触角が大きな円すいころ軸受1に関して、本発明を適用した場合に就いて示している。前述した通り、外輪2の内周面に形成した外輪軌道6、及び、内輪3の外周面に形成した内輪軌道7の、中心軸に対する傾斜角度が大きく、各円すいころ4aの自転軸と前記外輪2及び内輪3の中心軸との傾斜角度が、20度以上、更には25度以上と、大きな円すいころ軸受1の場合、潤滑不良時も問題が顕著になり易い。言い換えれば、潤滑不良状態になってから、焼き付き等の重大な損傷に結び付くまでの時間が短くなり易い。
【0044】
一方、接触角が大きな円すいころ軸受は、スラスト負荷容量を大きくできる為、大きなスラスト荷重が加わる回転支持部に使用される場合がある。そこで本例の場合には、接触角が大きな円すいころ軸受1に関して本発明を適用し、大きなスラスト荷重が加わる回転支持部の潤滑状態が不良になった場合でも、焼き付き等の重大な損傷に結び付くまでに要する時間を長くできる様にしている。この様に、接触角が大きな円すいころ軸受1に本発明を適用する為に、本例の構造に組み込む保持器5gとして、大径側リム部12cの直径と、小径側リム部13bの直径との差が大きく、これら両リム部12c、13b同士の間に掛け渡した柱部14b、14bの傾斜角度が大きいものを使用している。
その他の部分の構成及び作用は、前述の図1〜4に示した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0045】
[実施の形態の第4例]
図10は、請求項1、3〜5(6、7)に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合も、上述した実施の形態の第3例の場合と同様に、各円すいころ4aの接触角が大きな円すいころ軸受1に関して、本発明を適用した場合に就いて示している。この接触角が大きい事に合わせて、保持器5hを構成する大径側リム部12cの直径と小径側リム部13bの直径との差を大きくし、各柱部14bの傾斜角度を大きくした点は、上述した実施の形態の第3例と同様であり、前記大径側リム部12cの内周面で各保油凹部19から円周方向に外れた部分の内周面を、各ポケット15aに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜させた点は、前述の図5に示した実施の形態の第2例の場合と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0046】
[実施の形態の第5例]
図11〜14は、請求項1〜5(6〜8)に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、保持器5iを構成する大径側リム部12cの内周面で、円周方向に関する位相が各ポケット15a、15aに整合する部分にそれぞれ形成した保油凹部19a、19aの深さ寸法を、これら各保油凹部19a、19aの奥端部でも十分に大きくしている。言い換えれば、前記大径側リム部12cの外端面側(図11〜12の右端側、図13〜14の下端側)に、前記各保油凹部19a、19aの内部と前記大径側リム部12cの外端面とを遮断する堰25、25を設けて、これら保油凹部19a、19aの内部とこの大径側リム部12cの外端面とが軸方向に貫通しない様にしている。即ち、前記各保油凹部19a、19aに、前記各ポケット15a、15a側の開口側端部から、前記大径側リム部12cの外端面側の奥端部まで、この大径側リム部12cの内周面よりも径方向外方に凹入する方向の深さを持たせて、前記各保油凹部19a、19aの底面の奥端部と前記大径側リム部12cの内周面との間に段差26、26を設けている。尚、本例の場合には、この大径側リム部12cの内周面のうちで前記各保油凹部19a、19aから外れた部分を、軸方向に関して内径が変化しない、単なる円筒面状としている。
【0047】
それぞれが上述の様な形状を有する、前記各保油凹部19a、19aを前記各ポケット15a、15a毎に設けた本例の構造によれば、これら各保油凹部19a、19aの容積を増大して、これら各保油凹部19a、19a内に貯溜しておける潤滑油の量を増大させる事ができる。更に、潤滑不良時に、これら各保油凹部19a、19a内に貯溜されていた潤滑油を、前記大径側リム部12cの外端面側に流失させずに、各円すいころ4aの大径側端面10と、内輪3の外周面に設けた大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺接部の潤滑に、より有効に利用できる。この結果、潤滑不良状態になってから、焼き付き等の重大な故障が発生するまでの時間を、より一層長くできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した各実施の形態のうちの何れかと同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0048】
[実施の形態の第6例]
図15は、請求項9〜11に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例は、以上に述べた各実施の形態の構造に組み込む保持器(例えば、上述した実施の形態の第5例に組み込む保持器5i)を合成樹脂の射出成形により造る、円すいころ軸受用保持器の製造方法に関する。この製造方法の実施に使用する金型装置24aの基本構成は、前述の図26に示した金型装置24と同様である。即ち、本例の金型装置24aは、互いに同心に配置された状態で、軸方向に関して互いに遠近動する、1対の金型22a、23aを備える。これら両金型22a、23aは、互いに対向する軸方向端面同士を突き合わせた状態で、突き合わせ部の内部に成形用空間(キャビティ)を画成する。そして、この成形用空間内に、前記両金型22a、23aの一方又は双方に設けた送り込み口(ゲート)を通じて加熱溶融した熱可塑性合成樹脂を、圧力を加えた状態で送り込み、前記保持器5iを、アキシアルドローにより射出成形する。
【0049】
前記両金型22a、23aのうちの一方(図15の上側)の金型22aの軸方向端面(図15の下面)の中央部には成形用凹部27を、他方(図15の下側)の金型の軸方向端面(図15の上面)の中央部には成形用凸部28を、それぞれ形成している。それぞれの金型22a、23aの軸方向端面の外径寄り部分で、それぞれ前記成形用凹部27又は前記成形用凸部28を囲む部分は、互いに密に(前記成形用空間内に送り込んだ、溶融した合成樹脂が漏れ出ない様に)当接可能な平坦面29a、29bとしている。そして、これら両平坦面29a、29b同士を当接させた状態で、前記成形用凹部27と前記成形用凸部28とにより囲まれた部分に、前記成形用空間が画成される様にしている。
【0050】
特に、本例の場合には、前記一方の金型22aの軸方向端面に設けた成形用凹部27の開口周縁部よりも少し径方向内側に寄った部分で、射出成形すべき前記保持器5iのポケット15a、15aに整合する(円周方向に関する位相が一致する)部分に、それぞれ保油凹部成形用凸部30、30を設けている。これら各保油凹部成形用凸部30、30は、前記保持器5iを構成する大径側リム部12cの内周面のうちで前記各ポケット15a、15aに整合する部分に保油凹部19a、19aを成形する為のもので、前記大径側リム部12cを成形する為の大径側リム部成形用空間部分のうちの内径寄り部分に設けている。前記各保油凹部成形用凸部30、30の先端面(下端面)は平坦面として、前記平坦面29aよりも、軸方向(上下方向)に関して少し凹んだ部分に位置させている。そして、前記各保油凹部19a、19aの奥端部に、前述の図11〜14で説明した堰25、25を形成できる様にしている。又、前記各保油凹部成形用凸部30、30の先端部の断面積を確保して、言い換えれば、これら各保油凹部成形用凸部30、30の先端部が、薄く尖った形状になる事を防止している。そして、これら各保油凹部成形用凸部30、30の先端部を傷みにくくし、前記金型装置24aの耐久性を確保できる様にしている。又、前記両金型22a、23aの何れの部分にも、先端側部分に比べて基端側部分が径方向に凹んだ、所謂アンダーカットとなる部分が存在しない様にして、1対の金型22a、23aのみで前記保持器5iの射出成形を行う、アキシアルドローを可能としている。
【0051】
それぞれが上述の様な構造を有する、前記両金型22a、22bの平坦面29a、29b同士を当接させた状態で、これら両金型22a、22b同士の間に画成される、前記成形用空間内に、例えば前記一方の金型22a(前記他方の金型23aでも可)に設けた、図示しない送り込み口を通じて、溶融した合成樹脂を送り込み可能としている。この様な送り込み口は、少なくとも前記成形用空間のうち、前記保持器5iの大径側リム部12cを成形する為の大径側リム部成形用空間部分と、同じく小径側リム部13bを成形する為の小径側リム部成形用空間部分とに、それぞれ設ける。更に、前記各送り込み口の設置位置を、これら両リム部成形用空間部分の円周方向に関して、これら両リム部成形用空間部分同士の間で互いに一致させる。好ましくは、前記各送り込み口を、前記大径側リム部成形用空間部分及び前記小径側リム部成形用空間部分の一部で、円周方向に隣り合う各柱部14b、14bを形成すべき部分の中間部毎に設ける。
【0052】
以上の様な構成を有する金型装置24aにより前記保持器5iを射出成形するには、前記大径側、小径側両リム部成形用空間に設けた各送り込み口から、前記金型装置24aの成形用空間内に、溶融状態の合成樹脂を送り込む。すると、この合成樹脂は、前記両リム部成形用空間を周方向に流れてから、各柱部を成形する為の、各柱部成形用空間内に、これら各柱部成形用空間の両端から進入する。そして、これら各柱部成形用空間の中間部で突き当たり、当該部分でウェルドを形成する。前記各柱部14b、14bの端部と、前記大径側、小径側両リム部12c、13bとの連続部にウェルドが形成される事はない。この為、長期間に亙る使用に拘らず、これら各連続部に亀裂等の損傷が発生しにくく、前記保持器5iの耐久性を確保し易い。尚、円周方向に隣り合う送り込み口から前記各柱部成形用空間に向けて流れた溶融状態の合成樹脂は、これら各柱部成形用空間の入口部分で合流してから、これら各柱部成形用空間内に進入する。この入口部分では、未だ上記合成樹脂の温度は十分に高いので、当該部分にウェルドが形成される事はない。
【符号の説明】
【0053】
1 円すいころ軸受
2 外輪
3 内輪
4、4a 円すいころ
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i 保持器
6、6a 外輪軌道
7、7a 内輪軌道
8 大径側鍔部
9 小径側鍔部
10 大径側端面
11 軸方向内側面
12、12a、12b、12c 大径側リム部
13、13a、13b 小径側リム部
14、14a、14b 柱部
15、15a ポケット
16 曲げ板部
17、17a 保油部
18 仕切板部
19、19a 保油凹部
20 凹部
21 軸受内部空間
22、22a 金型
23、23a 金型
24、24a 金型装置
25 堰
26 段差
27 成形用凹部
28 成形用凸部
29a、29b 平坦面
30 保油凹部成形用凸部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2007−40512号公報
【特許文献2】特開2007−270851号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に部分円すい凹面状の外輪軌道を有する外輪と、この外輪の内径側にこの外輪と同心に配置された、外周面に部分円すい凸面状の内輪軌道及びこの内輪軌道の大径側端部から径方向に関して外方に突出した大径側鍔部を有する内輪と、この内輪軌道と前記外輪軌道との間に転動自在に配置され、それぞれの大径側端面を前記大径側鍔部の軸方向側面と対向させた複数個の円すいころと、これら各円すいころを保持する為の保持器とを備え、この保持器は、互いに同心に、且つ、軸方向に間隔をあけて配置された、それぞれが円環状である大径側リム部及び小径側リム部と、これら両リム部同士の間に掛け渡された複数本の柱部とを備え、これら両リム部と円周方向に隣り合う1対ずつの柱部とにより四周を囲まれる部分を、それぞれ前記各円すいころを保持する為のポケットとした構造を有するものである円すいころ軸受に於いて、前記大径側リム部のうちで、円周方向に関する位相が少なくとも前記各ポケットのうちの一部のポケットに整合する部分の内周面部分に、径方向外方に凹んだ保油凹部を設けており、この保油凹部の底面のうちで前記ポケットの内面に開口している部分が、当該ポケット内に保持された円すいころの大径側端面に対向している事を特徴とする円すいころ軸受。
【請求項2】
前記保油凹部に、前記ポケット側の開口側端部から前記外端面側の奥端部まで、前記大径側リム部の内周面よりも径方向外方に凹入する方向の深さを持たせる事により、前記保油凹部の大径側リム部の外端面側に、これら保油凹部の内部と大径側リム部の外端面とを遮断する堰を設けている、請求項1に記載した円すいころ軸受。
【請求項3】
前記保油凹部の数がポケットの数と同じであり、円周方向に関して互いに独立した状態で設けられたこれら各保油凹部が、それぞれ前記各ポケットに向けて開口している、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
【請求項4】
前記保油凹部の底部が、前記ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
【請求項5】
前記大径側リム部の内周面が、前記保持器の中心軸と平行な円筒状面乃至は前記ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜した傾斜面である、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
【請求項6】
前記保持器が合成樹脂製である、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
【請求項7】
前記保持器が、熱可塑性を有する合成樹脂を溶融状態で金型装置の成形用空間内に、複数の送り込み口を通じ、圧力を加えた状態で送り込む事により造られるものであって、一部に、異なる送り込み口から送り込まれた溶融状態の合成樹脂が突き当たる事により生じるウェルドが存在しており、このウェルドが、前記両リム部と前記各柱部との連続部から外れた部分に存在する、請求項6に記載した円すいころ軸受。
【請求項8】
車両の駆動源と駆動用車輪との間に設けられて、この駆動源の回転駆動力をこの駆動用車輪に伝達する車両駆動系を構成する回転軸の支持部に使用される、請求項1〜7のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
【請求項9】
請求項7に記載した円すいころ軸受に組み込まれる保持器の製造方法であって、前記金型装置として、前記成形用空間内に溶融状態の合成樹脂を送り込む為の送り込み口を、この成形用空間のうちで前記両リム部を形成する為のリム部成形用空間部分にそれぞれ設けると共に、前記各送り込み口の設置位置を、これら両リム部成形用空間部分の円周方向に関して、これら両リム部成形用空間部分同士の間で互いに一致させたものを使用する事を特徴とする円すいころ軸受用保持器の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜7のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受に組み込まれる保持器の製造方法であって、前記金型装置として、次の(1)〜(3)の条件を総て満たすものを使用する事を特徴とする円すいころ軸受の製造方法。
(1) 互いに同心に配置された1対の金型を、軸方向に関して互いに遠近動させるアキシアルドロー構造である。
(2) 前記両金型の互いに対向する軸方向端面のうちの一方の金型の軸方向端面に成形用凹部が、他方の金型の軸方向端面に成形用凸部が、それぞれ設けられている。
(3) 前記一方の金型の軸方向端面に、前記保油凹部を形成すべき保油凹部成形用凸部が設けられている。
【請求項11】
前記一方の金型として、前記保油凹部成形用凸部の先端部に段部が存在するものを使用する、請求項10に記載した円すいころ軸受の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−87924(P2012−87924A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250480(P2010−250480)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】