説明

円弧型角度センサ

【課題】コイルを巻回するスロットの数にかかわらずオフセットを抑制し、円弧型角度センサの両端の検出精度を向上させることが可能な円弧型角度センサを提供する。
【解決手段】両端のスロット30を除くスロット30に、電流により磁界を生成する副コイル43を備え、両端のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数を、両端以外のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数より多くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角を検出するための円弧型角度センサに係り、特にセンサの両端部における角度の検出精度を向上させた円弧型角度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
円弧型角度センサはコイルを巻回した複数のスロットを有するステータと電磁鋼板により形成された、円弧状に回動するロータとを有する。
【0003】
円弧型角度センサを搭載する機器によってはスペースの制約上からこのスロットの数が制限されることがある。例えば、検出用のコイルがsin波とcos波の2つである場合、スロットの数は4の倍数であることが望ましい。スロットの数を4の倍数にすると、磁界を生じさせる励磁コイルの巻き方を交互に逆にすることにより、検出用コイルの電圧を平衡にすることができる。このため検出用のコイルの出力電圧は0を対称軸とする波形となり、円弧型角度センサの出力を角度に変換する変換装置であるR/Dコンバータ(レゾルバ ディジタル コンバータ)の入力に適したものとなる。
【0004】
しかし、スロットの数を4の倍数にできない場合、例えば次のような問題が生じる。スロットの数が4の倍数ではない10である場合について考える。図2はスロットの数が10である円弧型角度センサを示した図である。図2(a)は円弧型角度センサの側面図であり、図2(b)は各スロットにおける各コイルの巻き方向を示す図である。数字は巻き数を表す。
【0005】
このように両端のスロットには検出コイル41を巻回しないとすると、図2(c)の波形53、54に示すように円弧型角度センサの両端部において出力が得られない。このため、図2(d)の線62の両端の点線部分に示すように、円弧型角度センサの両端部においてR/Dコンバータからの角度の出力が得られないという問題がある。
【0006】
そこで、両端のスロットに検出用コイルを巻回することが考えられる。図3は、両端のスロットに検出用コイルを巻回した場合を示した図である。両端のスロットのコイルからは磁束の漏れが生じるため、図3(c)の波形55、56に示すように、両端のスロットの検出用コイルからの出力電圧が低下し、検出精度が低下するという問題があった。
【0007】
さらに、励磁コイルにより生成された磁界が相殺されず、検出用のコイルの出力電圧は増加し、0から離れた波形となる。このため、R/Dコンバータが入力信号を角度に変換することができなくなる場合があるという問題があった。
【0008】
なお、以下、グラフの波形が横軸の0から離れることをオフセットするという。
【0009】
この点に関し、ロータの回転の中心をステータ側にずらし、ステータの両端においてロータとの距離を短くすることにより検出精度を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−55183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、ステータの両端において短くできるロータとの距離には限界があり、所望の精度向上が得られないという問題があった。
【0011】
また、特許文献1に記載の技術においては、オフセットするという点を解決できないという問題があった。
【0012】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、スロットの数にかかわらずオフセットを抑制し、円弧型角度センサの両端の検出精度を向上させることが可能な円弧型角度センサ及び円弧型角度センサの精度向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために本発明は、電磁鋼板により形成され、円弧状に回動するロータと、ロータが回動する円弧に沿って湾曲し、円弧に沿ってロータに対向して一列に設けられた複数のスロットを有するステータと、隣り合うスロットにおいて互いに逆巻きになるように巻回され、電流により磁界を生成する励磁コイルと、端から一つ置きのスロットに巻回されたsin波検出用コイルと、sin波検出用コイルが巻回されていないスロットに巻回されたcos波検出用コイルと、両端の前記スロットを除くスロットに、励磁コイルとは逆巻きに巻回され、電流により磁界を生成する副コイルと、を備え、両端のスロットのsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数を、両端以外のスロットのsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数より多くしたことを特徴とする円弧型角度センサを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オフセットを抑制し、両端のスロットのsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの出力電圧の低下を抑制するため、両端のスロットにおける角度検出精度が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による円弧型角度センサ及び円弧型角度センサの精度向上方法の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0016】
図1は本実施形態の円弧型角度センサ及び円弧型角度センサの精度向上方法を示した図である。図1(a)に示すように、本実施形態の円弧型角度センサは、電磁鋼板により形成され、円弧状に回動するロータ10と、ロータ10が回動する円弧に沿って湾曲し、この円弧に沿ってロータ10に対向して一列に設けられた複数のスロット30を有するステータ20と、を備える。
【0017】
スロット30にはコイル40が巻回されている。このコイル40は、隣り合うスロット30において互いに逆巻きになるように巻回され、電流により磁界を生成する励磁コイル42と、検出コイル41と、を備える。
【0018】
検出コイル41は、端から一つ置きのスロット30に巻回されたsin波検出用コイルと、sin波検出用コイルが巻回されていないスロット30に巻回されたcos波検出用コイルと、を備える。
【0019】
励磁コイル42に励磁信号sinωtを励磁した場合、ロータ10がスロット30に近づくと、ロータ10のホームポジションからのロータ10までの角度をθとするとき、sin波検出コイルからはsinθsinωt、cos波検出コイルからはcosθsinωtの信号が生じる。R/Dコンバータはこのsinθsinωとcosθsinωtの組み合わせからθを判定する。
【0020】
さらに、本実施形態の円弧型角度センサは両端のスロット30を除くスロット30に、励磁コイル42とは逆巻きに巻回され、電流により磁界を生成する副コイル43を備える。
【0021】
励磁コイル42とは逆巻きに巻回するとは、励磁コイル42がCW(時計回り:正転)に巻回されているとき副コイル43は逆のCCW(反時計回り:逆転)に巻回し、励磁コイル42がCCWに巻回されているとき副コイル43はCWに巻回する、ことを意味する。
【0022】
両端のスロットにsin波検出用コイルとcos波検出用コイルをそれぞれ巻回すると、sin波検出用コイルとcos波検出用コイルからの出力電圧は上述のオフセットを生じる。ここで、副コイル43には、オフセットした方向と逆の磁界を発生させるように巻回することにより、オフセットを抑制することが可能となる。
【0023】
さらに、本実施形態の円弧型角度センサは両端のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数を、両端以外のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数より多くする。
【0024】
多くする巻数は、磁束の漏れを相殺するのに十分なターン数を巻回することが望ましい。具体的には、両端のスロット以外の検出用コイルの巻数が100ターンであり、両端のスロットの検出用コイルの出力低下率が4%であるとき、多くする巻数は2ターン以上10ターン以下が望ましく、より望ましくは4ターンである。
【0025】
両端のスロット30におけるsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルは、隣に逆巻きのsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルが存在しないため、磁束が漏れる。このため、両端のスロット30におけるsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの出力電圧が低下する。そこで、この低下分だけ両端のスロット30におけるsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルを多く巻回し、出力電圧の低下を抑制する。
【0026】
ここで、各コイルの巻数について説明する。本実施形態の円弧型角度センサにおいては、nをスロット30の数、Eを両端のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数、Sを副コイル43の巻数、Mを両端以外のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数、kを任意の自然数とするとき、
E=M+k
S=E/{(n−2)/2}
であることを特徴とする。
【0027】
例えば、スロット30の数が10であり、両端以外のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数が100ターンであり、両端のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数が104ターンであるとする。このとき副コイル43の巻数は、26ターンとなる。
【0028】
以上述べたように、本実施形態の円弧型角度センサ及び円弧型角度センサの精度向上方法は、両端のスロット30を除くスロット30に、電流により磁界を生成する副コイル43を備え、両端のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数を、両端以外のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの巻数より多くした。このため、本実施形態の円弧型角度センサ及び円弧型角度センサの精度向上方法は、オフセットを抑制し、両端のスロット30のsin波検出用コイル及びcos波検出用コイルの出力電圧の低下を抑制し、両端のスロットにおける角度検出精度が向上するという効果がある。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態の円弧型角度センサを示した図である。
【図2】スロットの数が10である円弧型角度センサを示した図である。
【図3】両端のスロットに検出用コイルを巻回した場合を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
10:ロータ、
20:ステータ、
30:スロット、
40:コイル、
41:検出コイル、
42:励磁コイル、
43:副コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板により形成され、円弧状に回動するロータと、
前記ロータが回動する円弧に沿って湾曲し、前記円弧に沿って前記ロータに対向して一列に設けられた複数のスロットを有するステータと、
隣り合う前記スロットにおいて互いに逆巻きになるように巻回され、電流により磁界を生成する励磁コイルと、
端から一つ置きの前記スロットに巻回されたsin波検出用コイルと、
前記sin波検出用コイルが巻回されていないスロットに巻回されたcos波検出用コイルと、
両端のスロットを除く前記スロットに、前記励磁コイルとは逆巻きに巻回され、電流により磁界を生成する副コイルと、
を備えることを特徴とする円弧型角度センサ。
【請求項2】
両端の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの巻数を、両端以外の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの巻数より多くしたことを特徴とする、請求項1記載の円弧型角度センサ。
【請求項3】
nを前記スロットの数、Eを両端の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの巻数、Sを副コイルの巻数、とするとき、
副コイルの巻き数Sは、
S=E/{(n−2)/2}
であることを特徴とする、請求項2記載の円弧型角度センサ。
【請求項4】
電磁鋼板により形成され、円弧状に回動するロータと、
前記ロータが回動する円弧に沿って湾曲し、前記円弧に沿って前記ロータに対向して一列に設けられた複数のスロットを有するステータと、
隣り合う前記スロットにおいて互いに逆巻きになるように巻回され、電流により磁界を生成する励磁コイルと、
端から一つ置きの前記スロットに巻回されたsin波検出用コイルと、
前記sin波検出用コイルが巻回されていないスロットに巻回されたcos波検出用コイルと、を備える円弧型角度センサであって、
両端のスロットを除く前記スロットに、前記励磁コイルとは逆巻きに巻回された副コイルを設けることにより、両端以外の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの出力電圧の増加を抑制し、
両端の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの巻数を、両端以外の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの巻数より多くすることにより、両端の前記スロットの前記sin波検出用コイル及び前記cos波検出用コイルの出力電圧の低下を抑制する、
ことを特徴とする、円弧型角度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−222671(P2009−222671A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69856(P2008−69856)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】