説明

円盤状ガラス基板及び円盤状ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板

【課題】本発明は、コアドリルによる加工効率を高めると共に、ガラス素基板の裏面側に発生するチッピングを小さくすることを課題とする。
【解決手段】コアドリル10は、回転軸12と、支持板14と、円筒部16と、研削部18とを有する。また、研削部18の先端部19は、縦断面形状が同一の半径による円弧状に形成されている。そのため、ガラス素基板20の表面に最初に接触する刃先の接触幅がガラス素基板20の表面に対して小さくなっており、コアドリル10を降下するのに連れてガラス素基板20の表面に接触するコアドリル10の刃先の接触幅が徐々に幅広に変化する。ガラス素基板20が載置されるステージ40の上面には、コアドリル10の先端部19が挿入される環状溝42が形成されている。環状溝42は、コアドリル10の先端部19と接触しないように半径方向の溝幅X1がコアドリル10の先端部19のドリル幅Xよりも大きく形成されている(X1>X)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円盤状ガラス基板及び円盤状ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板に係り、特にガラス素基板をステージ上に載置し、円筒形状のコアドリルを用いてガラス素基板から円盤状ガラス基板を切り抜く円盤状ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、磁気記録媒体用ディスクの基材として使用される厚さが1.5mm以下の薄い円盤状ガラス基板の製造工程においては、ガラス素基板をステージ上に載置し、円筒形状のコアドリルを用いてガラス素基板から円盤状ガラス基板を切り抜く工程によって円盤状ガラス基板を加工している。この磁気記録媒体用ディスクの加工工程では、高い加工精度が要求されるため、砥粒を所定の割合で結合させた研削部が円筒形状のコアドリルによりガラス基板を一枚ずつ加工する方式が用いられている。
【0003】
また、コアドリルは、研削部の表面にダイヤモンド砥粒を電着または焼結され、研削部の縦断面形状が矩形状に形成されている。そして、コアドリルを回転させながらコアドリルの研削部の先端部をガラス素基板の表面に接触させ、コアドリルを軸線方向に移動させてガラス素基板の加工溝を徐々に深くする。このようなコアドリルを用いた加工工程では、ガラス素基板が脆い材質であるので、加工溝を研削する過程において、ガラス素基板にクラック発生による割れ(チッピング)の防止や切り屑(カレット)の除去が重要となる。
【0004】
従来の円盤状ガラス基板の製造方法としては、例えば、第1のコアドリルによりガラス素基板の下面側に第1の加工溝を研削し、次に第1のコアドリルと同径または小径の第2のコアドリルによりガラス素基板の上面側に第2の加工溝を研削し、第2の加工溝の底部が第1の加工溝の底部に連通したとき、円盤状ガラス基板の内周または外周が切り取られる(例えば、特許文献1参照)。さらに、ガラス素基板から切り取られた円盤状ガラス基板の内周縁及び外周縁を砥石により研削し、内周及び外周の角部の面取り加工を行ないながら内周及び外周を所定寸法に仕上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−18922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された円盤状ガラス基板の製造方法では、ガラス素基板から円盤状ガラス基板を切り抜く工程において、チッピング防止のため、第1のコアドリルによる下面側の第1の加工溝をガラス素基板の厚さ寸法のほぼ1/2の深さまで行い、次に第2のコアドリルによる上面側の第2の加工溝をガラス素基板の厚さ寸法のほぼ1/2の深さまで行っており、その分加工数が多く、手間がかかるので、加工効率を高めることが難しいという問題があった。
【0007】
また、加工効率を高めるためにコアドリルによる溝加工を1回の加工で行うとした場合には、コアドリルがガラス素基板を貫通する直前に加工溝の内側からガラス素基板にクラックが発生して大きなチッピングが発生するため、厚さが1.5mm以下の薄い円盤状ガラス基板を加工する場合には、チッピングの拡大によって加工不良が増大するという問題が生じる。
【0008】
また、ガラス素基板から円盤状ガラス基板を切り抜く際、あるいは円盤状ガラス基板の内周端部と外周端部とを研削加工する際、円盤状ガラス基板をステージに載置しなおすと、円盤状ガラス基板のステージ上の吸着位置がずれやすく、加工後の内周と外周との同芯度が低下するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した円盤状ガラス基板及び円盤状ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体用ガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0011】
(1)本発明は、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板をステージ上に載置し、円筒形状のコアドリルを用いてガラス素基板から円盤状ガラス基板を一枚ずつ加工する方式で切り抜く工程を有する円盤状ガラス基板の製造方法において、
前記コアドリルは、半径方向のドリル幅が0.5mm〜2.0mmであり、前記ガラス素基板の表面を切削する先端部の刃先形状が、当該コアドリルの先端部をガラス素基板に挿入するに連れて前記ガラス素基板の表面に接触する刃先の接触幅が徐々に幅広に変化するように形成されており、前記表面に対して半径方向に傾斜または湾曲するような輪郭形状を有し、当該輪郭形状の溝を前記ガラス素基板の表面に形成しながら前記先端部が前記ガラス素基板を貫通する位置まで挿入され、
前記ガラス素基板を吸着する前記ステージの表面には、前記ガラス素基板を貫通した前記コアドリルの先端部が挿入される環状溝が形成され、
前記環状溝は、半径方向の溝幅が前記コアドリルの半径方向のドリル幅より5〜50%大きいことを特徴とする。
【0012】
(2)本発明は、前記ガラス素基板を貫通し、前記ガラス素基板の下面より下方に突出する前記コアドリルの先端部の突出量は、0.1mm〜0.5mmであり、
前記環状溝の上下方向の深さは、前記先端部の突出量より大きく形成されることを特徴とする。
【0013】
(3)本発明の前記コアドリルの先端部は、表面にダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固着され、且つ半径方向のドリル幅が0.5mm〜2.0mmであることを特徴とする。
【0014】
(4)前記コアドリルを用いて前記ステージに載置された前記ガラス素基板から前記円盤状ガラス基板を切り抜く工程を行った際に発生するガラス屑を、次に加工するガラス素基板をステージ上に載置する前に、前記ステージ上から除去する工程を有することを特徴とする。
【0015】
(5)本発明の前記ガラス屑を前記ステージ上から除去する工程は、前記ステージに形成された環状溝に対して流体を吹付けることによって行われることを特徴とする。
【0016】
(6)本発明の前記コアドリルは、先端部の曲率半径が0.1mm〜0.5mmに形成されることを特徴とする。
【0017】
(7)本発明の前記円盤状ガラス基板は、磁気記録媒体用ディスクの基材として使用されることを特徴とする。
【0018】
(8)本発明の前記コアドリルを用いて前記ガラス素基板から前記円盤状ガラス基板を切り抜く工程は、前記ガラス基板の外径加工および内径加工のうち少なくとも何れか一方を行うことを特徴とする。
【0019】
(9)本発明の前記ステージの環状溝は、前記円盤状ガラス基板の内径と外径の径寸法と同一寸法の内側周縁部、外側周縁部を形成され、または前記円盤状ガラス基板の外径より内側の位置となる内側周縁部を形成され、または前記円盤状ガラス基板の内径より外側の位置となる外側周縁部を形成されることを特徴とする。
【0020】
(10)本発明の前記ステージに形成された環状溝は、前記円盤状ガラス基板の内周側および/または外周側に設けられ、
前記内周側の環状溝は、内側周縁部が内側に傾斜するテーパ面を形成され、
前記外周側の環状溝は、外側周縁部が外側に傾斜するテーパ面が形成されたことを特徴とする。
【0021】
(11)本発明は、前記ガラス素基板から前記コアドリルを用いて円盤状ガラス基板を切り抜く工程は、前記円盤状ガラス基板の外径加工と内径加工とを同一のステージで行われることを特徴とする。
【0022】
(12)本発明は、前記(1)〜(11)の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤状ガラス基板であって、
前記コアドリルを用いて円盤状ガラス基板を切り抜く工程における、前記円盤状ガラス基板の切断面にあるクラックの大きさが、前記円盤状ガラス基板の主平面方向では0.3mm以下、前記円盤状ガラス基板の板厚方向では0.15mm以下であることを特徴とする。
【0023】
(13)本発明は、前記(1)〜(11)の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤状ガラス基板であって、
前記円盤状ガラス基板の内径の真円度が10μm以下、外径の真円度が10μm以下、内径と外径の同芯度が40μm以下であることを特徴とする。
【0024】
(14)本発明は、前記(1)〜(11)の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤状ガラス基板であって、
前記コアドリルを用いて円盤状ガラス基板を切り抜く工程における、前記円盤状ガラス基板の切断面にあるクラックの大きさが、前記円盤状ガラス基板の主平面方向では0.3mm以下、前記円盤状ガラス基板の板厚方向では0.15mm以下であり、
且つ前記円盤状ガラス基板の内径の真円度が10μm以下、外径の真円度が10μm以下、内径と外径の同芯度が40μm以下であることを特徴とする。
(15)本発明は、中心部に円孔を有し、前記(1)〜(11)の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤形状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記磁気記録媒体用ガラス基板の内径の真円度が10μm以下、前記磁気記録媒体用ガラス基板の外径の真円度が10μm以下、内径と外径の同芯度が40μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コアドリルの半径方向のドリル幅が0.5mm〜2.0mmであり、ガラス素基板の表面を切削する先端部の刃先形状が、当該コアドリルの先端部をガラス素基板に挿入するに連れて前記ガラス素基板の表面に接触する刃先の接触幅が徐々に幅広に変化するように形成されており、コアドリルの先端部の形状がガラス素基板の表面に対して半径方向に傾斜または湾曲するような輪郭形状を有し、ガラス素基板を吸着するステージの表面には、コアドリルの先端部が挿入される環状溝が形成されるため、当該コアドリルの先端部の輪郭形状の溝をガラス素基板の表面に形成しながら先端部がガラス素基板を貫通する位置まで挿入されることにより、1回の加工により円盤状ガラス基板の内周及び/または外周を切り抜くように加工してコアドリルによる加工効率を高められると共に、ガラス素基板の裏面側に発生するチッピングを小さくすることが可能になる。従って、厚さが1.5mm以下の薄い円盤状ガラス基板をコアドリルによって研削する際に生じるクラック発生による割れ(チッピング)の大きさを後工程による研削代の範囲内に小さく抑えることが可能になり、チッピングによる不良率を大幅に低下させることができる。また、環状溝の半径方向の溝幅がコアドリルの半径方向のドリル幅より5〜50%大きく、コアドリルの先端部が貫通して環状溝に挿入される際、研削加工時の応力に対してチッピングが拡張されにくいようにガラス素基板の下面を支持しているため、コアドリルの先端部がガラス素基板を貫通する際のチッピングの拡大を抑制することが可能になる。また、研削による切り屑がステージの環状溝に落下して周辺への飛散が防止される。
【0026】
また、ガラス素基板を同じステージに吸着したまま円盤状ガラス基板の内周及び外周をコアドリルによって加工することができるので、加工された円盤状ガラス基板の内周と外周との同芯度をより高めことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による円盤状ガラス基板の製造方法に用いられるコアドリルを拡大して示す縦断面図である。
【図2】本発明による円盤状ガラス基板の製造方法を用いた切り抜き工程Aの手順を示すフローチャートである。
【図3A】図1に示すコアドリルによる加工中の状態を模式的に示す縦断面図である。
【図3B】図1に示すコアドリルの先端部がガラス素基板を抜けた状態を模式的に示す縦断面図である。
【図3C】図1に示すコアドリルによる修正動作を模式的に示す縦断面図である。
【図3D】図1に示すコアドリルによる加工終了を模式的に示す縦断面図である。
【図4】コアドリルの先端部がガラス素基板を貫通した状態を説明するための図である。
【図5】ガラス素基板の加工代とチッピングとの関係を拡大して示す縦断面図である。
【図6】本発明による円盤状ガラス基板の製造方法を用いた切り抜き工程Bの手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明による円盤状ガラス基板の製造方法を用いた切り抜き工程Cの手順を示すフローチャートである。
【図8】コアドリルの変形例1を示す縦断面図である。
【図9】コアドリルの変形例2を示す縦断面図である。
【図10】コアドリルの変形例3を示す縦断面図である。
【図11】ステージ上のカレット(切り屑)を除去する工程を示す図である。
【図12】ステージ上に形成される環状溝の変形例を示す縦断面図である。
【図13】円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工するコアドリル及びステージを示す縦断面図である。
【図14】図13に示すコアドリルを用いて円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工した状態を示す縦断面図である。
【図15】コアドリルを用いて円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工する際のステージ上の環状溝の変形例を示す縦断面図である。
【図16】図15に示すコアドリルを用いて円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明による円盤状ガラス基板の製造方法に用いられるコアドリルを拡大して示す縦断面図である。図1に示されるように、コアドリル10は、円盤状ガラス基板の内周または外周に相当する位置に加工溝を研削する研削用ドリルである。また、コアドリル10は、回転軸12と、支持板14と、円筒部16と、研削部18とを有する。回転軸12、支持板14、円筒部16は、ステンレス等の金属材により形成されており、例えば、ボール盤のような昇降可能に支持されたモータ駆動部によって回転駆動される。
【0030】
研削部18は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドによって固着させてなり、電着によるものよりもダイヤモンド砥粒の層が厚く形成されている。また、研削部18は、円筒部16の端部に一体的に固着されており、最終的な製品となる磁気記録用ディスクの内周または外周に相当する径寸法となるように形成されている。つまり、実際にコアドリル10を製作する際には、面取り工程、端面研磨工程で研削・研磨される加工代の分を残すように、研削部18を形成する。
【0031】
また、研削部18の先端部19は、縦断面形状が同一の半径による円弧状に形成されている。すなわち、研削部18の先端部19は、ガラス素基板の表面に対して半径方向に湾曲する輪郭形状とされている。
【0032】
また、先端部19は、軸方向の高さYaの位置まで形成されており、ガラス素基板に溝を加工して円盤状ガラス基板を切り抜く際、高さYaの部分がガラス素基板を貫通して下面側に突出するまで挿入される。
【0033】
本実施例において、コアドリル10の研削部18は、表面にダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固着されている。そのため、コアドリル10は、ダイヤモンドを電着するものよりも研削部18のダイヤモンド砥粒層を厚く形成することができるので、研削の耐久性が高められている。
【0034】
また、研削部18のダイヤモンド砥粒の砥粒サイズは、目がきめ細かい番手#100番〜番手#400番であることが望ましい。そのため、コアドリル10は、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かいため、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板を研削部18により研削する際のクラック発生が抑制される。また、研削部18のダイヤモンド砥粒が番手#400番を超える場合、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かすぎて、目詰りが発生しやすく、研削速度の低下が生じやすく、生産性に劣るおそれがある。
【0035】
また、研削部18の半径方向のドリル幅(厚さ)Xが0.5mm〜2.0mmに形成され、研削部18の先端部19の曲率半径が0.1mm〜0.5mmに形成される。そのため、研削部18の先端部19が極細形状に形成されており、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板を研削する際にガラス表面にかかる応力が小さくなるので、発生するチッピングが小さくなり、ドリル幅Xに納まるので、薄いガラス素基板を高精度に加工することが可能になる。
【0036】
また、研削部18の半径方向のドリル幅が、0.5mm未満の場合、コアドリル10の強度が不足して耐久性が低下する。また、ドリル幅が、2.0mmを超える場合、研削時に研削部18の内周と外周において周速差が発生し、研削部18の先端形状が変形してしまい、安定した品質で研削加工することが難しい。さらに、研削部18の先端部19の曲率半径が、0.1mm未満の場合、クラック発生による割れ(チッピング)を抑制する効果が低くなるおそれがある。
【0037】
ここで、図2を参照して円盤状ガラス基板の切り抜き工程Aの各手順について説明する。図2は本発明による円盤状ガラス基板の製造方法を用いた切り抜き工程Aの手順を示すフローチャートである。
【0038】
図2に示されるように、先ず、円盤状ガラス基板加工装置のステージ上に加工前のガラス素基板を載置し、当該ガラス素基板をステージ上に真空吸着させる(手順A1)。
【0039】
次に、ガラス素基板の下方から内周加工用に製作された下側小径コアドリルにより円盤状ガラス基板に設けられる中央孔の内周の溝加工を行う(手順A2)。尚、手順A2においては、コアドリルの先端部が矩形状に形成されているので、割れ(チッピング)防止のために上、下方向の2回に分けて行っており、ガラス素基板の厚さの約1/2以上に達したとき加工を停止させてコアドリルをガラス素基板から離間させる。また、ガラス素基板を研削する工程では、コアドリルの研削部が接触する被加工部分を冷却するクーラント等の研削液を供給している。
【0040】
次に、ガラス素基板の上方から内周加工用に製作された上側小径コアドリルにより円盤状ガラス基板に設けられる中央孔の内周の溝加工を行う(手順A3)。尚、手順A3においては、コアドリルの先端部をガラス素基板の厚さの約1/2以上に達したとき加工を停止させてコアドリルをガラス素基板から離間させる。これにより、上下方向から加工された2つの溝が互いに連通されて内周の切り抜きが終了する。
【0041】
次に、上記ガラス素基板から切り取られた中央孔の破片を除去し、研削液が中央孔に流出することを防止するため、中央孔を下方から上昇する円形部材によって塞ぐ(手順A4)。これにより、次工程で円盤状ガラス基板の外周を研削する際、外周側に研削液が充分に供給されることになる。
【0042】
次に、ガラス素基板の上方から大径のコアドリル10により円盤状ガラス基板の外周の溝加工を行う(手順A5)。また、手順A5では、コアドリル10の先端部19をガラス素基板に貫通させてステージ上に形成された環状溝に挿入される位置まで降下させる。これにより、円盤状ガラス基板の外周端部が高精度に研削される。その後、コアドリル10を上昇させてガラス素基板から離間させる。これにより、ガラス素基板から中心部に円形の中央孔を有する円盤状ガラス基板(製品)が切り抜かれる。このように、円盤状ガラス基板の外周に対する加工は、コアドリル10による1回の加工で終了する。
【0043】
次に、ガラス素基板から円盤状ガラス基板(製品)を取り出し、円盤状ガラス基板が取り出されたガラス素基板の残りをステージ上から除去する(手順A6)。また、取り出された円盤状ガラス基板は、次工程(内周、外周の面取り加工や内周、外周、基板上下面の研磨)に搬送される。
【0044】
次に、ステージ上に残された切り屑(カレット)をエアブローにより除去する(手順A7)。エアブローは、エアノズルを旋回させながら螺旋状の空気流をステージ上に吹き付けることでステージ上の切り屑を効率良く吹き飛ばすことができる。尚、圧縮空気以外の気体(例えば、窒素ガスなど)をステージに吹き付けても良いし、あるいはエアブローの代わりに切削液や洗浄液などの液体(流体)をステージに吹き付けて切り屑をステージ上から除去しても良い。
【0045】
図2に示す切り抜き工程Aの手順で加工した場合、円盤状ガラス基板の切断面にあるクラックの大きさは、前記円盤状ガラス基板の主平面方向では0.3mm以下、前記円盤状ガラス基板の板厚方向では0.15mm以下であり、後工程で容易に除去できる程度の大きさであった。
【0046】
また、円盤状ガラス基板の内径の真円度(内径の最小値と最大値との差)は15μm以下、外径の真円度(外径の最小値と最大値との差)は15μm以下、内径と外径の同芯度(内径の中心と外径の中心の距離)は50μm以下であった。このように、図2に示す切り抜き工程Aの手順で加工した場合の真円度及び同芯度は、より高い精度が得られた。
【0047】
ここで、図3A〜図3Dを参照してコアドリル10による研削工程(切り抜き工程)について説明する。尚、図3A〜図3Dにおいて、上記手順A2、A3によるガラス素基板20に対する内周側の溝加工を省略してある。
【0048】
図3Aは図1に示すコアドリルによる加工中の状態を模式的に示す縦断面図である。図3Aに示されるように、加工中においては、コアドリル10を回転させながら降下させて研削部18の先端部19をガラス素基板20の表面に接触させる。また、ガラス素基板20を研削する工程では、コアドリル10の研削部18の先端部19が接触する被加工領域にクーラント等の研削液が供給されている。
【0049】
研削部18の先端部19は、先端部形状が円弧状であるので、ガラス素基板20の表面に対して湾曲するように形成されている。そのため、ガラス素基板20の表面に最初に接触する刃先の接触幅がガラス素基板20の表面に対して小さくなっており、コアドリル10を降下するのに連れてガラス素基板20の表面に接触するコアドリル10の刃先の接触幅が徐々に幅広に変化する。したがって、研削開始時では、ガラス素基板20にかかる負荷が小さく、また研削工程において、コアドリル10の刃先の接触幅が拡幅されてもガラス素基板20にクラックが発生しにくい。
【0050】
図3Bは図1に示すコアドリルの先端部がガラス素基板を抜けた状態を模式的に示す縦断面図である。図3Bに示されるように、研削部18の先端部19が回転しながらガラス素基板20の厚さ方向に移動することでガラス素基板20には、研削部18の先端部19の輪郭形状(円弧形状)に応じた底部を有する加工溝21が加工される。従って、加工溝21は、底部形状が湾曲した曲面(円弧形状)になるため、被加工面に応力集中が発生せず、加工中のクラック発生が抑制され、かつクラックが発生しても大部分がドリル幅に納まり修正される。
【0051】
ここで、コアドリル10による作用について従来のものと対比して説明する。
【0052】
従来のコアドリルでは、ガラス素基板の平面に研削部の先端部が接触して研削する場合、研削部の先端部の断面形状が矩形状であるので、ガラス素基板に形成された加工溝部分に矩形状の角部に対応する箇所でクラックが発生しやすい。そのため、従来のコアドリルを用いた場合には、研削部の先端部がガラス素基板の下面に到達する前に加工溝内に発生したクラックの先端が斜め方向に進行してガラス素基板の下面に到達したとき、下面側の一部が剥がれ落ちることになる(チッピングの発生現象)。また、従来のコアドリルは、研削部の先端部の断面形状が矩形状であるので先端部の幅がドリルの幅と等しく、発生したチッピングを修正することができない。
【0053】
これに対し、本発明のコアドリル10によれば、研削部18の先端部19は、先端部形状が円弧状であるので、加工溝21内の壁面(被加工面)に応力集中が発生せず、加工中のクラック発生が抑制され、かつクラックが発生しても大部分がドリル幅に納まり修正されるため、後工程で問題となる大きさのチッピングがほとんど発生しない。
【0054】
図3Cは図1に示すコアドリルによる修正動作を模式的に示す縦断面図である。図3Cに示されるように、研削部18の先端部19がガラス素基板20を貫通する位置まで降下すると、コアドリル10の研削部18は、軸方向に延在する内周面と外周面とを有するため、加工溝21の内周壁及び外周壁も研削する。これにより、研削部18の先端部19によって加工されなかった加工溝21の底部に残る薄い残留部分22(図3Bに示す先端部19の輪郭形状の外側部分)を研削する。
【0055】
尚、残留部分22は、ガラス素基板20の下面側につながっており、研削部18の先端部19がガラス素基板20を貫通することで、研削部18の内周面と外周面によって除去され、ガラス素基板20の下面側から剥がれるチッピングが抑制、または修正される。
【0056】
図3Dは図1に示すコアドリルによる加工終了を模式的に示す縦断面図である。図3Dに示されるように、研削部18の先端部19をガラス素基板20に貫通させた後は、コアドリル10を上方に移動させて研削部18をガラス素基板20から離間させる。これで、上記手順A5のコアドリル10による加工が終了し、円盤状ガラス基板30の取出しが可能になる。このようにガラス素基板20から切り抜かれた円盤状ガラス基板30は、磁気記録媒体用ディスクの基材として使用される。
【0057】
ここで、コアドリル10の先端部19がガラス素基板20を抜けた状態について説明する。図4はコアドリルの先端部がガラス素基板を貫通した状態を説明するための図である。図4に示されるように、コアドリル10による加工は、ガラス素基板20をステージ40に載置して行なわれる。ステージ40は、金属材、または金属材にゴムや樹脂を薄く貼ったプレートであり、載置されたガラス素基板20を真空吸着するための吸着孔を有する。
【0058】
ガラス素基板20が載置されるステージ40の上面には、コアドリル10の先端部19が挿入される環状溝42が形成されている。環状溝42は、円盤状ガラス基板30の内周と外周の径寸法と同一寸法、または円盤状ガラス基板30の内周より内側の位置となる内側周縁部、または円盤状ガラス基板30の外周より外側の位置となる外側周縁部を形成するように設けられている。すなわち、ステージ40の上面は、コアドリル10の先端部19が貫通して環状溝42に挿入される際、研削加工時の応力に対してチッピングが拡張されにくいようにガラス素基板20の下面を支持している。
【0059】
また、環状溝42は、コアドリル10の先端部19と接触しないように半径方向の溝幅X1がコアドリル10の先端部19のドリル幅X(本実施例では、X=0.5mm〜2.0mm)よりも大きく形成されている(X1>X)。本実施例において、環状溝42は、半径方向の溝幅X1がコアドリル10の研削部18の半径方向のドリル幅Xより5%〜50%大きくなるように設定されることが好ましい。
【0060】
環状溝42の内周側、外周側の縁部(ステージ40の上面の縁部)は、コアドリル10の研削部18のドリル幅Xよりそれぞれ僅かに内側、外側に位置するため、コアドリル10の先端部19がガラス素基板20を貫通する際のチッピングの拡大を抑制することが可能になる。
【0061】
また、環状溝42の上下方向の深さY1は、ガラス素基板20の下面より下方に突出するコアドリル10の先端部19の突出量Y(本実施例では、Y=0.1mm〜0.5mm)よりも大きく形成されている(Y1>Y)。
【0062】
そのため、研削部18の先端部19がガラス素基板20に加工溝21を研削しながら加工溝21を貫通するとき、研削による切り屑(カレット)が環状溝42に落下して周辺への飛散が防止される。
【0063】
また、ステージ40上に環状溝42を設けることによりコアドリル10の先端部19をガラス素基板20に貫通させることが可能になり、且つ先端部19を貫通させた状態で研削部18の内周面と外周面とが、加工溝21の内周壁及び外周壁を研削して下面側に発生するチッピングを除去することも可能になる。
【0064】
更に、図4に示す研削工程においても、コアドリル10の先端部19の内周壁と外周壁とが修正動作中もガラス素基板20をステージ40に載置した状態で保持し続けるため、コアドリル10の研削部18の内周面と外周面にクーラント等の研削液を充分に効かせる(行き届かせる)ことができる。
【0065】
図5はガラス素基板の内周部分または外周部分の加工代とチッピングとの関係を拡大して示す縦断面図である。図5に示されるように、ガラス素基板20から切り抜かれた円盤状ガラス基板30は、上面側及び下面側に研削される加工代32a、32bと、内周縁及び外周縁に半径方向の加工代32cとを有する。図5において、加工代32a、32b、32cは、梨地模様で示す。
【0066】
上下面側の各加工代32a、32bは、(T1−T2)/2であり、内周縁及び外周縁の加工代32cはLである。本実施例において、例えば、T1=1.28mm、T2=0.84mm、L=0.58mmとした場合、チッピング34は、0.3mm×0.15mm(主平面方向×板厚方向)以下に小さくすることができる。尚、本実施例において、チッピング34の好ましい大きさとしては、主平面方向×板厚方向の寸法が0.2mm×0.10mm以下、さらに好ましくは0.1mm×0.05mm以下である。
【0067】
すなわち、上記コアドリル10によりガラス素基板20に加工溝21を研削する加工工程で研削部18の先端部19をガラス素基板20に貫通させることで、加工溝21の下面側に発生するチッピング34を加工代32a、32b、32cの範囲よりも小さくなるように抑制することが可能になる。
【0068】
よって、コアドリル10を用いて円盤状ガラス基板30を切り抜く工程における、円盤状ガラス基板30の切断面にあるクラックの大きさが、円盤状ガラス基板30の主平面方向では0.3mm以下、円盤状ガラス基板30の板厚方向では0.15mm以下となる。
【0069】
また、コアドリル10を用いて円盤状ガラス基板30を切り抜く工程により、円盤状ガラス基板30の内径の真円度が15μm以下、外径の真円度が15μm以下、内径と外径の同芯度が50μm以下となる。
【0070】
尚、本実施例において、円盤状ガラス基板30の内径の真円度の好ましい値は、10μm以下、さらに好ましくは8μm以下であり、外径の真円度の好ましい値は、10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。また、円盤状ガラス基板30の同芯度の好ましい値は、40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0071】
ここで、変形例の切り抜き工程Bについて説明する。図6は本発明による円盤状ガラス基板の製造方法を用いた切り抜き工程Bの手順を示すフローチャートである。
【0072】
図6に示されるように、先ず、円盤状ガラス基板加工装置のステージ40上に加工前のガラス素基板20を載置し、当該ガラス素基板20をステージ40上に真空吸着させる(手順B1)。
【0073】
次に、ガラス素基板20の上方から外周加工用の大径コアドリルにより円盤状ガラス基板30に設けられる外周の溝加工を行う(手順B2)。大径コアドリルは、研削部の先端部形状が前述したコアドリル10の研削部18の先端部19と同様に円弧状に湾曲した輪郭形状に形成されている。また、ガラス素基板20を研削する工程では、大径コアドリルの研削部が接触する被加工部分を冷却するクーラント等の研削液を供給している。
【0074】
また、手順B2では、大径コアドリルの先端部19がガラス素基板20を貫通してステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下し、その後大径コアドリルを上昇させてガラス素基板20から離間させる。円盤状ガラス基板30の外周に対する加工は、大径コアドリルによる1回の加工で終了する。
【0075】
尚、大径コアドリルにより外周加工された円盤状ガラス基板30は、ステージ40上から取りださずにそのまま内周加工を行う。何故なら外周加工された円盤状ガラス基板30を一旦取り出してステージを変更した場合、内周と外周との同芯度がズレてしまう。そのため、本実施例では、外周加工と内周加工は同一のステージで行なう。また、円盤状ガラス基板30を取り出された残りは除去してもしなくても良い。円盤状ガラス基板30を載置したステージ40は、同芯度向上のために外周加工と内周加工が終わるまで同一のものを用いる。
【0076】
次に、ガラス素基板20の上方から上記外周加工用の大径コアドリルよりも小径に製作された内周加工用の小径コアドリルにより円盤状ガラス基板30の内周の溝加工を行う(手順B3)。小径コアドリルは、研削部の先端部形状が前述したコアドリル10の研削部18の先端部19と同様に円弧状に湾曲した輪郭形状に形成されている。
【0077】
また、手順B3では、小径コアドリルの先端部19がガラス素基板20を貫通してステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下し、その後小径コアドリルを上昇させてガラス素基板20から離間させる。円盤状ガラス基板30の内周に対する加工は、小径コアドリルによる1回の加工で終了する。
【0078】
また、手順B3では、コアドリル10の先端部19をガラス素基板20に貫通させてステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下させるため、円盤状ガラス基板30の内周端部が高精度に研削される。
【0079】
これにより、ガラス素基板20から円盤状ガラス基板30(製品)が切り抜かれる。
【0080】
次に、内周縁部が加工された円盤状ガラス基板30(製品)を取り出し、円盤状ガラス基板30を取り出されたガラス素基板20の残りをステージ40上から除去する(手順B4)。また、取り出された円盤状ガラス基板30は、次工程(内周、外周の面取り加工や内周、外周、基板上下面の研磨)に搬送される。
【0081】
次に、ステージ40上に残された切り屑(カレット)をエアブローにより除去する(手順B5)。エアブローは、エアノズルを旋回させながら螺旋状の空気流をステージ上に吹き付けることでステージ40上に形成された環状溝42に溜った切り屑を効率良く吹き飛ばすことができる。尚、圧縮空気以外の気体(例えば、窒素ガスなど)をステージ40に吹き付けても良いし、あるいはエアブローの代わりに切削液や洗浄液などの液体(流体)をステージ40に吹き付けて切り屑をステージ40上から除去しても良い。
【0082】
次に、変形例の切り抜き工程Cについて説明する。図7は本発明による円盤状ガラス基板の製造方法を用いた切り抜き工程Cの手順を示すフローチャートである。
【0083】
図7に示されるように、先ず、円盤状ガラス基板加工装置のステージ40上に加工前のガラス素基板20を載置し、当該ガラス素基板20をステージ40上に真空吸着させる(手順C1)。
【0084】
次に、ガラス素基板20の上方から内周加工用の小径コアドリルにより円盤状ガラス基板30の内周の溝加工を行う(手順C2)。小径コアドリルは、研削部の先端部形状が前述したコアドリル10の研削部18の先端部19と同様に円弧状に湾曲した輪郭形状に形成されている。また、ガラス素基板20を研削する工程では、小径コアドリルの研削部が接触する被加工部分を冷却するクーラント等の研削液を供給している。
【0085】
また、手順C2では、小径コアドリルの先端部19がガラス素基板20を貫通してステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下し、その後小径コアドリルを上昇させてガラス素基板20から離間させる。円盤状ガラス基板30の内周に対する加工は、小径コアドリルによる1回の加工で終了する。
【0086】
また、手順C2では、コアドリル10の先端部19をガラス素基板20に貫通させてステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下させるため、円盤状ガラス基板30の内周端部が高精度に研削される。
【0087】
図7に示す製造方法の場合、円盤状ガラス基板30の内周を上方から加工したあと、中央孔の破片を除去せず、そのまま外周を上方から加工し、最後に円盤状ガラス基板30を取り出す。
【0088】
次に、ガラス素基板20の上方から外周加工用の大径コアドリルにより円盤状ガラス基板30の外周の溝加工を行う(手順C3)。また、手順C3では、大径コアドリルの先端部19がガラス素基板20を貫通してステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下し、その後大径コアドリルを上昇させてガラス素基板20から離間させる。円盤状ガラス基板30の外周に対する加工は、大径コアドリルによる1回の加工で終了する。
【0089】
また、手順C3では、大径コアドリルの先端部19をガラス素基板20に貫通させてステージ40上に形成された環状溝42に挿入される位置まで降下させるため、円盤状ガラス基板30の外周端部が高精度に研削される。これにより、ガラス素基板20から円盤状ガラス基板30(製品)が切り抜かれる。
【0090】
次に、ガラス素基板20から円盤状ガラス基板30(製品)を取り出し、円盤状ガラス基板30を取り出されたガラス素基板20の残りをステージ40上から除去する(手順C4)。また、取り出された円盤状ガラス基板30は、次工程(内周、外周の面取り加工や内周、外周、基板上下面の研磨)に搬送される。
【0091】
次に、ステージ40上に残された切り屑(カレット)をエアブローにより除去する(手順C5)。エアブローは、エアノズルを旋回させながら螺旋状の空気流をステージ40上に吹き付けることでステージ40上に形成された環状溝42に溜った切り屑を効率良く吹き飛ばすことができる。尚、圧縮空気以外の気体(例えば、窒素ガスなど)をステージ40に吹き付けても良いし、あるいはエアブローの代わりに切削液や洗浄液などの液体(流体)をステージ40に吹き付けて切り屑をステージ40上から除去しても良い。
【0092】
尚、上記手順C2の内周加工は別の装置、例えば多数のガラス素基板を積層した積層体にして複数枚の内径を纏めて抜き取る方法を用いても良い。この場合、内周加工と外周加工で異なる研削装置で加工を行うため、研削加工前の真円度及び同芯度を維持するようにステージ上の位置調整操作を行う必要がある。
【0093】
図8はコアドリルの変形例1を示す縦断面図である。図8に示されるように、コアドリル50は、回転軸52と、支持板54と、円筒部56と、研削部58とを有し、研削部58の先端部59の縦断面形状が楕円形状に形成されている。従って、変形例1の先端部59の輪郭形状は、曲率半径の異なる複数の円弧が連続する放物線形状に形成されている。
【0094】
本変形例1において、コアドリル50の研削部58は、表面にダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固着されている。そのため、コアドリル50は、ダイヤモンドを電着するものよりも研削部58のダイヤモンド砥粒層を厚く形成することができるので、研削の耐久性が高められている。
【0095】
また、研削部58のダイヤモンド砥粒の砥粒サイズは、目がきめ細かい番手#100番〜番手#400番であることが望ましい。そのため、コアドリル50は、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かいため、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板20を研削部58により研削する際のクラック発生が抑制され、かつ大部分がドリル幅に納まり修正される。尚、研削部58のダイヤモンド砥粒が番手#400番を超える場合、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かすぎて、目詰りが発生しやすく、研削速度の低下が生じやすく、生産性に劣る。
【0096】
また、コアドリル50によって加工された加工溝21は、前述したコアドリル10の場合と同様に、底部形状が湾曲した曲面(放物線形状)となるため、被加工面に応力集中が発生せず、加工中のクラック発生が抑制され、かつクラックが発生しても大部分がドリル幅に納まり、修正される。
【0097】
また、先端部59は、軸方向の高さYbの位置まで形成されており、ガラス素基板20に溝21を加工して円盤状ガラス基板30を切り抜く際、高さYbの部分がガラス素基板20を貫通して下面側に突出するまで挿入する。尚、コアドリル50の先端部59は、前述したコアドリル10よりも軸方向の高さYbが長い(Yb>Ya)ので、加工時の上下方向のストローク(コアドリルの昇降変位量)を長くする設定する。
【0098】
図9はコアドリルの変形例2を示す縦断面図である。図9に示されるように、コアドリル60は、回転軸62と、支持板64と、円筒部66と、研削部68とを有し、研削部68の先端部69の縦断面形状が円弧と台形状とを組み合わせた形状に形成されている。従って、変形例2の先端部69の輪郭形状は、曲率半径の異なる複数の円弧と傾斜部とが連続する台形形状に形成されている。
【0099】
研削部68の先端部69は、ガラス素基板20の表面に対して所定角度(角度θ)傾斜する傾斜面69aと、傾斜面69aの外側に形成された外側円弧状部69bと、傾斜面69aの内側に形成された内側円弧状部69cとを有する。
【0100】
本変形例において、コアドリル60の研削部68は、表面にダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固着されている。そのため、コアドリル60は、ダイヤモンドを電着するものよりも研削部68のダイヤモンド砥粒層を厚く形成することができるので、研削の耐久性が高められている。
【0101】
また、研削部68のダイヤモンド砥粒の砥粒サイズは、目がきめ細かい番手#100番〜番手#400番であることが望ましい。そのため、コアドリル60は、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かいため、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板を研削部68により研削する際のクラック発生が抑制され、かつ大部分がドリル幅に納まり修正される。尚、研削部68のダイヤモンド砥粒が番手#400番を超える場合、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かすぎて、目詰りが発生しやすく、研削速度の低下が生じやすく、生産性に劣るおそれがある。
【0102】
コアドリル60によりガラス素基板20を加工する際は、先ず、外側円弧状部69bが最初にガラス素基板20に接触し、コアドリル60を降下させることにより、ガラス素基板20に対する切削幅が徐々に拡幅される。さらに、コアドリル60が降下すると、傾斜面69aもガラス素基板20に接触しはじめ、ガラス素基板20に対する切削幅が徐々に拡幅される。そして、コアドリル60が降下すると共に、内側円弧状部69cガラス素基板20に接触し、研削部68の先端部69がガラス素基板20の表面を研削して加工溝21を形成すると、加工溝21の溝幅が研削部68のドリル幅Xに拡幅される。
【0103】
従って、コアドリル60によって加工された加工溝21は、前述したコアドリル10の場合と同様に、底部形状が湾曲した曲面の組合せた形状となるため、被加工面に応力集中が発生せず、加工中のクラック発生が抑制される。
【0104】
また、先端部69は、軸方向の高さYcの位置まで形成されており、ガラス素基板20に溝21を加工して円盤状ガラス基板30を切り抜く際、高さYcの部分がガラス素基板20を貫通して下面側に突出するまで挿入される。
【0105】
図10はコアドリルの変形例3を示す縦断面図である。図10に示されるように、コアドリル70は、回転軸72と、支持板74と、円筒部76と、研削部78とを有し、研削部78の先端部79の縦断面形状が矩形状の角部を面取りした形状に形成されている。従って、変形例3の先端部79の輪郭形状は、ガラス素基板20の表面に最初に接触する幅狭部79aと、幅狭部79aの外周側に傾斜する傾斜部79bと、幅狭部79aの内周側に傾斜する傾斜部79cとを有する。
【0106】
また、変形例3のコアドリル70によりガラス素基板20を加工する際は、先ず、幅狭部79aが最初にガラス素基板20に接触する。そして、コアドリル70を降下させることにより、傾斜部79b、79cがガラス素基板20の表面に加工溝21を加工すると共に、加工溝21に対する切削幅が徐々に拡幅される。さらに、コアドリル70を降下させて先端部79がガラス素基板20を貫通すると、加工溝21の溝幅が研削部78のドリル幅Xに拡幅される。
【0107】
また、傾斜部79b、79cの傾斜角αは、例えば、45°〜60°に設定されており、幅狭部79aと傾斜部79b、79cとの角度βが鈍角(例えば、β=120°〜135°)となるように設定される。従って、コアドリル70によって加工された加工溝21は、底部形状が研削部78の先端部79の輪郭形状に対応した鈍角形状となるため、被加工面に応力集中が発生せず、加工中のクラック発生が抑制される。
【0108】
また、先端部79は、軸方向の高さYdの位置まで形成されており、ガラス素基板20に溝21を加工して円盤状ガラス基板30を切り抜く際、高さYdの部分がガラス素基板20を貫通して下面側に突出するまで挿入される。
【0109】
図11はステージ上のカレット(切り屑)を除去する工程を示す図である。図11に示されるように、前述した手順A7、B5、C5において、ステージ40上の切り屑80をエアノズル90により噴射された空気流によって除去する。エアノズル90は、開口92が大径となるようにテーパ形状に形成されたガイド部94と、テーパ状のガイド部94の内側に挿通されたエア噴射チューブ96とを有する。エア噴射チューブ96は、上端がエアノズル90の上端壁部98の中央孔に挿通され、且つ固着されている。尚、エア噴射チューブ96は、摺接部分の耐摩耗性を高めるため、上端壁部98の中央孔に挿通されて保持される固定部分、及びテーパ状のガイド部94の内壁に修正する旋回部分を樹脂パイプにより覆うように構成しても良い。
【0110】
また、エア噴射チューブ96に圧縮空気を供給すると、エア噴射チューブ96の先端部開口から噴射される圧縮空気の反動によってエア噴射チューブ96自体がテーパ状のガイド部94の内壁に沿うように弾性変形して湾曲しながら捩れ運動を行うため、エア噴射チューブ96の先端部はガイド部94の内周面に沿って旋回運動を開始する。これにより、エア噴射チューブ96の先端部開口から噴射される圧縮空気は、ガイド部94の内周面の延長方向に向けて噴射されながら、エア噴射チューブ96の先端部の旋回動作による旋回流としてステージ40上に噴射される。
【0111】
また、エアノズル90は、上部をブラケット100により支持されており、ブラケット100の高さ位置を調整することで、ガイド部94の垂直方向の軸線に対する傾斜角度の延長線がステージ40上の環状溝42と一致するように調整する。これにより、エア噴射チューブ96の先端部の旋回動作による圧縮空気の吹き付け位置が環状溝42の形成位置に沿う旋回流となる。
【0112】
そのため、環状溝42内に残留する切り屑80は、エア噴射チューブ96の旋回動作によって生じる圧縮空気の旋回流によって効率良くステージ40上から除去される。そのため、次のガラス素基板20をステージ40上に吸着させる際に、ガラス素基板20とステージ40との間に切り屑が挟まることがなく、ガラス素基板20をステージ40上に隙間なく密着させることができる。
【0113】
図12はステージ上に形成される環状溝の変形例を示す縦断面図である。図12に示されるように、環状溝42の外周側には、環状溝42に底部とステージ40の上面とを接続する傾斜面44が設けられている。この傾斜面44は、コアドリル10の研削部18の先端部19がガラス素基板20を貫通させた際の切り屑を溜める空間を形成すると共に、上記エアノズル90による圧縮空気の噴射があった際に切り屑を外側に吹き飛ばしやすくすることができる。
【0114】
また、傾斜面44は、ガラス素基板20から製品としての円盤状ガラス基板30を切り抜く場合、円盤状ガラス基板30側と反対側に設ける。例えば、コアドリル10が円盤状ガラス基板30の外周側を加工する場合には、環状溝42の外周側に傾斜面44を設け、コアドリル10が円盤状ガラス基板30の内周側を加工する場合には、環状溝42の内周側に傾斜面44を設ける。
【0115】
これにより、ステージ40上に円盤状ガラス基板30の下面側で外周縁、内周縁を支持する支持部を確保すると共に、ガラス素基板20を吸着するステージ40の上面から切り屑80を効率良く除去することが可能になる。そのため、次のガラス素基板20をステージ40上に吸着させる際に、ガラス素基板20とステージ40との間に切り屑が挟まることを確実に防止でき、ガラス素基板20をステージ40上に隙間なく密着させることができる。
【0116】
図13は円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工するコアドリル及びステージを示す縦
断面図である。図13に示されるように、コアドリル120は、回転軸122と、支持板124と、内周側円筒部126と、外周側円筒部127と、内周側加工用研削部128と、外周側加工用研削部130を有する。内周側加工用研削部128と、外周側加工用研削部130とは、夫々同心円状(同一の回転中心を有する)となるように形成されている。内周側加工用研削部128は、円盤状ガラス基板30の内周を加工する研削部であり、外周側加工用研削部130は、円盤状ガラス基板30の外周を加工する研削部である。
【0117】
内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131は、夫々前述したコアドリル10の先端部19、コアドリル50の先端部59、コアドリル60の先端部69、コアドリル70の先端部79の何れかと同様な形状に形成されている。
【0118】
また、コアドリル120の内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130は、表面にダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固着されている。そのため、コアドリル120は、ダイヤモンドを電着するものよりも内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130のダイヤモンド砥粒層を厚く形成することができるので、研削の耐久性が高められている。
【0119】
また、内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130のダイヤモンド砥粒の砥粒サイズは、目がきめ細かい番手#100番〜番手#400番であることが望ましい。そのため、コアドリル120は、ダイヤモンド砥粒の目がきめ細かいため、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板を内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130により研削する際のクラック発生が抑制される。
【0120】
また、内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130の半径方向のドリル幅(厚さ)Xが0.5mm〜2.0mmに形成され、内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130の先端部129、131の曲率半径が0.1mm〜0.5mmに形成されることが好ましい。そのため、内周側加工用研削部128、外周側加工用研削部130の先端部129、131が極細形状に形成されており、厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板を研削する際にガラス表面にかかる応力が小さくなるので、溝加工部分でのクラック発生を防止し、薄いガラス素基板を高精度に加工することが可能になる。
【0121】
ガラス素基板20が載置されるステージ40の上面には、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部129、131が挿入される環状溝42A、42Bが形成されている。環状溝42Aは、円盤状ガラス基板30の内周の径寸法と同一寸法、または円盤状ガラス基板30の内周より外側となる外側周縁部を形成するように設けられている。また、環状溝42Bは、円盤状ガラス基板30の外周の径寸法と同一寸法、または円盤状ガラス基板30の外周より内側となる内側周縁部を形成するように設けられている。
【0122】
また、環状溝42A、42Bは、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131と接触しないように半径方向の溝幅X1が内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131のドリル幅Xよりも大きく形成されている(X1>X)。本実施例において、環状溝42は、半径方向の溝幅X1がコアドリル10の研削部18の半径方向のドリル幅Xより5%〜50%大きくなるように設定されることが好ましい。
【0123】
環状溝42A、42Bの内周側、外周側の縁部(ステージ40の上面の縁部)は、コアドリル120の研削部128、130のドリル幅Xより僅かに内側、外側に位置するため、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131がガラス素基板20を貫通する際のチッピングの拡大を抑制することが可能になる。
【0124】
図14は図13に示すコアドリルを用いて円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工した状態を示す縦断面図である。図14に示されるように、環状溝42A、42Bの上下方向の深さY1は、ガラス素基板20の下面より下方に突出する内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131の突出量よりも大きく形成されている。
【0125】
そのため、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131がガラス素基板20に加工溝21を研削しながら加工溝21を貫通するとき、研削による切り屑(カレット)が環状溝42A,42Bに落下して周辺への飛散が防止される。
【0126】
また、ステージ40上に環状溝42A、42Bを設けることにより内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131をガラス素基板20に貫通させることが可能になり、且つ内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131を貫通させた状態で研削部128、130の内周面と外周面とが、加工溝21の内壁及び外壁を研削して下面側に発生するチッピングを除去することも可能になる。
【0127】
このように、コアドリル120は、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131が同時にガラス素基板20の表面に加工溝21と加工することができるので、加工時間を大幅に短縮することができる。
【0128】
尚、コアドリル120において、内周側加工用研削部128の先端部129の下方突出長さを外周側加工用研削部130の先端部131よりも短くすることで、外周側加工用研削部130が先にガラス素基板20に加工溝21を加工し、ガラス素基板20を貫通した後に、内周側加工用研削部128がガラス素基板20に加工溝21を加工し、ガラス素基板20を貫通させる構成としても良い。
【0129】
この場合、内周側加工用研削部128と外周側加工用研削部130との研削に時間差が生じるため、コアドリル120及びガラス素基板20の負担が軽減され、チッピングを小さくなるようにクラック発生を抑制することができる。また、内周側加工用研削部128と外周側加工用研削部130との周速が同じ速度となるようにコアドリルの回転数を変更する事が可能になり、内周側加工用研削部128と外周側加工用研削部130の磨耗量が周速差によって変らないように設定することができる。
【0130】
また、内周側加工用研削部128よりも外周側加工用研削部130が先にガラス素基板20を貫通するように内周側加工用研削部128と外周側加工用研削部130との突出長さの差を設けると共に、この突出長さの差に応じて外側の環状溝42Bの深さ寸法を内側の環状溝42Aよりも深くなるように設定する。
【0131】
また、内周側加工用研削部128を支持する支持板と、外周側加工用研削部130を支持する支持板とを個別に設け、各支持板を回転駆動する回転軸を同心円状に配置すると共に、各回転軸を個別のモータで回転駆動する駆動機構とすることにより、内周側加工用研削部128と外周側加工用研削部130との周速が同じになるように各回転軸の回転数を制御するようにしても良い。
【0132】
また、コアドリル120を製作する際、内周側加工用研削部128に比べて外周側加工用研削部130の方が耐久性高くなるようにし、内周側加工と外周側加工を同じ回転数で加工しても、周速の速い外周側加工用研削部130が内周側加工用研削部128に比べて早く摩耗して形状変化してしまわないように設定しても良い。
【0133】
図15はコアドリルを用いて円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工する際のステージ上の環状溝の変形例を示す縦断面図である。図16は図15に示すコアドリルを用いて円盤状ガラス基板の内周及び外周を加工した状態を示す縦断面図である。
【0134】
図15に示されるように、ステージ40の上面には、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131が挿入される環状溝42A、42Bと、環状溝42A、42Bに底部とステージ40の上面とを接続する傾斜面44A、44Bが設けられている。一方の傾斜面44Aは、環状溝42Aの内周側に設けられ、他方の傾斜面44Bは、環状溝42Bの外周側に設けられている。すなわち、傾斜面44A、44Bは、ガラス素基板20のうち製品となる円盤状ガラス基板30と対向しない位置に設けられている。
【0135】
図16に示されるように、内周側加工用研削部128の先端部129及び外周側加工用研削部130の先端部131がガラス素基板20を貫通する際に、円盤状ガラス基板30となる環状溝42Aの外周側、及び環状溝42Bの内周側におけるガラス素基板20の下面側のチッピングの発生を抑制することができる。そのため、図5に示すように加工溝21の下面側に発生するチッピング34を加工代32a、32b、32cの範囲よりも小さくなるように抑制することが可能になる。
【0136】
また、環状溝42A、42Bに傾斜面44A、44Bが形成されているので、前述したエアノズル90による圧縮空気の旋回流を噴射されると、環状溝42A、42Bに溜った切り屑を効率良く環状溝42A、42Bの外側に除去することが可能になる。そのため、次のガラス素基板20をステージ40上に吸着させる際に、ガラス素基板20とステージ40との間に切り屑が挟まることを確実に防止でき、ガラス素基板20をステージ40上に隙間なく密着させることができる。
【0137】
次に、磁気記録媒体用ガラス基板と磁気ディスクの製造方法について説明する。
【0138】
一般に、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程は、以下の工程を含む。(工程1)フロート法、フュージョン法またはプレス成形法で成形されたガラス素基板を、中央部に円孔を有する円盤形状に加工した後、内周側面と外周側面を面取り加工する。
(工程2)ガラス基板の側面部と面取り部を端面研磨する。
(工程3)ガラス基板の主平面を研磨する。研磨工程は、1次研磨のみでもよく、1次研磨と2次研磨を行ってもよく、2次研磨の後に3次研磨を行ってもよい。
(工程4)ガラス基板の精密洗浄を行い、磁気ディスク用ガラス基板を得る。
(工程5)磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成し、磁気ディスクを製造する。
【0139】
上記磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、(工程2)端面研磨工程の前後のうち少なくとも一方で主平面のラップ(例えば、遊離砥粒ラップ、固定砥粒ラップなど)を実施してもよく、各工程間にガラス基板の洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。なお、主平面のラップ(例えば、遊離砥粒ラップ、固定砥粒ラップなど)は広義の主平面の研磨である。
【0140】
さらに、磁気ディスク用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。
【0141】
本発明において、磁気ディスク用ガラス基板は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。また、本発明のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでもよく、フュージョン法で造られたものでもよく、プレス成形法で造られたものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
上記実施例では、磁気記録媒体用ディスクの基材として使用される円盤状ガラス基板を切り抜く場合について説明したが、これに限らず、磁気記録媒体用ディスク以外に使用される円盤状ガラス基板を切り抜く場合にも本発明を適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0143】
10、50、60、70、120 コアドリル
12、52、62、72、122 回転軸
14、54、64、74、124 支持板
16、56、66、76 円筒部
18、58、68、78 研削部
19、59、69、79、129、131 先端部
20 ガラス素基板
21 加工溝
22 残留部分
30 円盤状ガラス基板
32a、32b、32c 加工代
34 チッピング
40 ステージ
42、42A、42B 環状溝
44、44A、44B 傾斜面
69a 傾斜面
69b 外側円弧状部
69c 内側円弧状部
79a 幅狭部
79b 傾斜部
79c 傾斜部
80 切り屑
90 エアノズル
92 開口
94 ガイド部
96 エア噴射チューブ
98 上端壁部
100 ブラケット
126 内周側円筒部
127 外周側円筒部
128 内周側加工用研削部
130 外周側加工用研削部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが1.5mm以下の薄いガラス素基板をステージ上に載置し、円筒形状のコアドリルを用いてガラス素基板から円盤状ガラス基板を一枚ずつ加工する方式で切り抜く工程を有する円盤状ガラス基板の製造方法において、
前記コアドリルは、半径方向のドリル幅が0.5mm〜2.0mmであり、前記ガラス素基板の表面を切削する先端部の刃先形状が、当該コアドリルの先端部をガラス素基板に挿入するに連れて前記ガラス素基板の表面に接触する刃先の接触幅が徐々に幅広に変化するように形成されており、前記表面に対して半径方向に傾斜または湾曲するような輪郭形状を有し、当該輪郭形状の溝を前記ガラス素基板の表面に形成しながら前記先端部が前記ガラス素基板を貫通する位置まで挿入され、
前記ガラス素基板を吸着する前記ステージの表面には、前記ガラス素基板を貫通した前記コアドリルの先端部が挿入される環状溝が形成され、
前記環状溝は、半径方向の溝幅が前記コアドリルの半径方向のドリル幅より5〜50%大きいことを特徴とする円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス素基板を貫通し、前記ガラス素基板の下面より下方に突出する前記コアドリルの先端部の突出量は、0.1mm〜0.5mmであり、
前記環状溝の上下方向の深さは、前記先端部の突出量より大きく形成されることを特徴とする請求項1に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記コアドリルの先端部は、表面にダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固着されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記コアドリルを用いて前記ステージに載置された前記ガラス素基板から前記円盤状ガラス基板を切り抜く工程を行った際に発生するガラス屑を、次に加工するガラス素基板をステージ上に載置する前に、前記ステージ上から除去する工程を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス屑を前記ステージ上から除去する工程は、前記ステージに形成された環状溝に対して流体を吹付けることによって行われることを特徴とする請求項4に記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記コアドリルは、先端部の曲率半径が0.1mm〜0.5mmに形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記円盤状ガラス基板は、磁気記録媒体用ディスクの基材として使用されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記コアドリルを用いて前記ガラス素基板から前記円盤状ガラス基板を切り抜く工程は、前記ガラス基板の外径加工および内径加工のうち少なくとも何れか一方を行うことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記ステージの環状溝は、前記円盤状ガラス基板の内径と外径の径寸法と同一寸法の内側周縁部、外側周縁部を形成され、または前記円盤状ガラス基板の外径より内側の位置となる内側周縁部を形成され、または前記円盤状ガラス基板の内径より外側の位置となる外側周縁部を形成されることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記ステージに形成された環状溝は、前記円盤状ガラス基板の内周側および/または外周側に設けられ、
前記内周側の環状溝は、内側周縁部が内側に傾斜するテーパ面を形成され、
前記外周側の環状溝は、外側周縁部が外側に傾斜するテーパ面が形成されたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
前記ガラス素基板から前記コアドリルを用いて円盤状ガラス基板を切り抜く工程は、前記円盤状ガラス基板の外径加工と内径加工とを同一のステージで行われることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記請求項1〜11の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤状ガラス基板であって、
前記コアドリルを用いて円盤状ガラス基板を切り抜く工程における、前記円盤状ガラス基板の切断面にあるクラックの大きさが、前記円盤状ガラス基板の主平面方向では0.3mm以下、前記円盤状ガラス基板の板厚方向では0.15mm以下であることを特徴とする円盤状ガラス基板。
【請求項13】
前記請求項1〜11の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤状ガラス基板であって、
前記円盤状ガラス基板の内径の真円度が10μm以下、外径の真円度が10μm以下、内径と外径の同芯度が40μm以下であることを特徴とする円盤状ガラス基板。
【請求項14】
前記請求項1〜11の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤状ガラス基板であって、
前記コアドリルを用いて円盤状ガラス基板を切り抜く工程における、前記円盤状ガラス基板の切断面にあるクラックの大きさが、前記円盤状ガラス基板の主平面方向では0.3mm以下、前記円盤状ガラス基板の板厚方向では0.15mm以下であり、
且つ前記円盤状ガラス基板の内径の真円度が10μm以下、外径の真円度が10μm以下、内径と外径の同芯度が40μm以下であることを特徴とする円盤状ガラス基板。
【請求項15】
中心部に円孔を有し、前記請求項1〜11の何れかに記載の円盤状ガラス基板の製造方法で加工された円盤形状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記磁気記録媒体用ガラス基板の内径の真円度が10μm以下、前記磁気記録媒体用ガラス基板の外径の真円度が10μm以下、内径と外径の同芯度が40μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−248268(P2012−248268A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194088(P2012−194088)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2010−285177(P2010−285177)の分割
【原出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】