説明

円筒部材の製造方法および製造装置

【課題】連続的もしくは間欠的に成形されて送給される薄肉の連続円筒膜の内周側に支持体を挿入配置できない場合であっても、その連続円筒膜の切断時の、切断刃と連続円筒膜との接触面積を十分小さく抑える等して、連続円筒膜の変形、変位等を十分に防止することで、所定の長さに切断分離された円筒膜の切断面を、常に平滑かつ平坦なものとして、OA機器の転写ベルト、中間転写ベルト等としての適用を十分可能とする円筒部材の製造方法を提供する。
【解決手段】連続的もしくは間欠的に送給される合成樹脂製の連続円筒膜1から所定の長さの円筒膜を切断分離させるに当り、連続円筒膜1を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に保持した状態で、前記中心軸線を隔てて配置されて、それぞれの偏平面1aに対向して位置する二枚の切断刃4のそれぞれを、前記中心軸線と直交する方向へ、順次に、往動切断変位および復動切断変位させて、所定の長さの円筒膜を切断分離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンター、カラー電子写真装置等のOA機器の、転写ベルト、中間転写ベルト等の薄肉エンドレスベルトその他に適用される薄肉円筒膜を、合成樹脂製の連続円筒膜から切断分離してなる円筒部材の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続的もしくは間欠的に成形されて送給される合成樹脂製の薄肉連続円筒膜から、手作業によって所定の長さの円筒膜を切断分離する場合は、製造される転写ベルト等に、折れ曲がり、傷等の致命的な欠陥が発生し易く、また、寸法精度も自と低くなって、不良品の発生率が高くなるため、これらの問題を解決するべく、特許文献1、2のそれぞれには、成形された連続円筒膜を、高い精度をもって機械的に切断する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された合成樹脂製円筒膜の切断装置は、「重力方向にチューブを押出しする機構、空冷機構、水冷サイジング機構、チューブ引き取り機構、チューブ切断機構を有する、芯金上の弾性体にシームレスチューブを被覆する帯電部材用被覆チューブ製造装置において、該水冷サイジング機構以降に、1つ以上の該チューブと接触する接触型切断振動抑え機構を有することにより、該被覆チューブの真直度が1mm以下、かつ長手方向の5箇所以上の外径測定位置での周方向3箇所以上の外径平均値の最大値と最小値の差異Δが、全外径測定値の平均値Daとの100分率値(Δ/Da×100)で0.2%以下とした帯電部材用被覆チューブ製造装置」にあり、この装置によれば、「弾性体層に被覆するシームレスチューブ長手形状を真直に近いものとし、更には外径むらを抑制した帯電ローラを提供し、またその被覆チューブ製造過程での切断機構によって発生する振動を抑えることにより該シームレスチューブの真直度における課題を解決した帯電部材用被覆チューブ」を提供できるとする。
【0004】
また、特許文献2に記載された合成樹脂製円筒膜の切断方法は、「樹脂材料を用いて所定内径かつ所定肉厚に連続押出し成形されるシームレスチューブを所定長さに切断してシームレスベルトを得るシームレスチューブの切断方法であって、前記押出し成形後に、前記シームレスチューブの前記所定内径部を低摩擦材料からなるチューブ支持体により支持しつつ所定速度で搬送し、前記チューブ支持体を挿通状態にして前記所定速度と同速度で移動体を移動しつつ、該移動体に搭載され、かつ前記チューブ支持体回りに回動駆動される環状体に搭載されるカッター手段を待機位置から切断位置に移動して、シームレスチューブを前記所定長さに切断するように連動させることを特徴とする」ものであり、この方法によれば、「シームレスチューブの押出しを中断しないので生産性が確保でき、薄い肉厚のシームレスチューブ側に切断痕跡を残さず、かつ無駄な切断部分を発生せずに切断することができる」とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82495号公報
【特許文献2】特開平8−57799号公報
【発明の概要】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された技術は、接触型切断振動抑え機構で、押出しチューブの振動を抑制しつつ、その押出しチューブを、円弧状運動を行う一枚のカッタ刃をもって、上下方向に定寸切断するものであって、チューブとカッタ刃との接触面積が必然的に大きくなるため、チューブの肉厚、剛性等との関連の下で、そのチューブの、切断時の変形、変位等が大きくなって、切断面それ自体の平滑度、真直度等の低下が不可避となることがあり、切断面に凹凸、ねじれ等の発生した切断円筒膜は、OA機器の転写ベルト、中間転写ベルト等として適用することができないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載された技術は、連続押出し成形されるシームレスチューブを、チューブの内周側に入れ込んだチューブ支持体によって支持しながら、所要の速度で円弧運動を行う複数個の超音波カッターで切断するものであって、シームレスチューブの、切断時の変形、変位等をチューブ支持体によって拘束するものであることから、所定の長さに切断分離される円筒膜チューブの切断面を、十分平滑で平坦なものとすることができるが、この切断方法は、機構上、シームレスチューブの内周側にチューブ支持体を挿入配置できない場合には適用不能であった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、連続的もしくは間欠的に成形されて送給される薄肉の連続円筒膜の内周側に支持体を挿入配置できない場合であっても、その連続円筒膜の切断時の、切断刃と連続円筒膜との接触面積を十分小さく抑える等して、連続円筒膜の変形、変位等を十分に防止することで、所定の長さに切断分離された円筒膜の切断面を、常に平滑かつ平坦なものとして、OA機器の転写ベルト、中間転写ベルト等としての適用を十分可能とする円筒部材の製造方法および製造装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の円筒部材の製造方法は、連続的もしくは間欠的に成形されて送給される、合成樹脂製の薄肉の連続円筒膜から、所定の長さの円筒部材を切断分離させるに当って、連続円筒膜を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に保持した状態で、その中心軸線を隔てて配置されて、それぞれの偏平面に対向して位置する二板の切断刃のそれぞれを、それぞれの偏平面に対し、前記中心軸線と直行する方向へ、順次に、往動切断変位および復動切断変位させることによって、連続円筒膜を、切断刃との小さな接触面積の下で、全周にわたって切断分離して、所定の長さの円筒部材とするにある。
【0010】
なおここで、「所定の長さ」とは、切断分離された円筒部材を、転写ベルト、中間転写ベルト等の用途に用いるに当って必要とされるベルト幅に対応する長さをいうものとする。
【0011】
この方法において好ましくは、二枚の切断刃のそれぞれを、連続的に送給される連続円筒膜の送給速度に同期させて等速変位させる。
また好ましくは、連続円筒膜を、相互に接近および離隔変位する一対以上の押え部材間で偏平は形状に保持する。
【0012】
そしてまた、連続的に送給される連続円筒膜に対しては、相互に接近および離隔変位するとともに、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位する一対以上の押え部材間、いわゆる、一対以上のボックスモーション押え部材間で、連続円筒膜を偏平な形状に保持することが好ましい。
ところで、上述したいずれの場合にあっても、一対以上の押え部材の各々に設けた、連続円筒膜の中心軸線と直行する方向に延在するスリット内で各切断刃を切断作動させることが好ましい。
【0013】
なお、二枚の切断刃のそれぞれは、偏平な形状に保持した連続円筒膜の側縁位置より外側から順次に、切断作動させることができる他、扁平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向の途中に、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を突き刺した後に切断作動させることもできる。
【0014】
またこの方法においては、二枚の切断刃のそれぞれを、一対の押え部材で偏平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向の途中に突き刺した、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を、対向する押え部材に設けられて、連続円筒膜の中心軸線と直交する方向に延在するスリッド内まで進入させた状態で各切断刃を切断作動させることもできる。
【0015】
また好ましくは、偏平形状とされる連続円筒膜の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材で、連続円筒膜を挟み込んで偏平な形状に保持する。
【0016】
この発明の、円筒膜の切断装置は、連続的もしくは間欠的に送給される、合成樹脂製の薄肉円筒膜から、所定の長さの円筒膜を切断分離するものであって、送給される連続円筒膜を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に押圧する、相互に対応する一対の押え部材を、連続円筒膜の送給方向の後方側から前方側に向けて、対をなす押え部材の対向間隔を次第に狭めながら、複数段整列させて配設し、前記送給方向の最も前方側の一対の押え部材に、連続円筒膜の中心軸と直交する方向に延在する一対のスリットを相互に対向させて設け、各押え部材のスリットから突出するとともに、各スリットの延在方向に切断作動される二枚の切断刃を設けてなるものである。
【0017】
この装置において好ましくは、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材を、相互に接近する方向および離隔する方向へ相対変位可能とするとともに、連続円筒膜の中心軸方向に往復変位可能とする。
【0018】
ここで、二枚の切断刃のそれぞれは、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材の、いわゆるボックスモーションと一体的に変位可能とするとともに、それぞれの押え部材のスリットからの順次の突出状態下での往動切断変位および復動切断変位のそれぞれを可能とすることが好ましい。
【0019】
また好ましくは、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材を、偏平形状とされる連続円筒膜の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材とする。
【0020】
以上に述べたところにおいて、二枚の切断刃のそれぞれは、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材のそれぞれのスリットからの突出姿勢で、対向するスリット内へ進入可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の、円筒部材の製造方法では、折れ曲がり、傷等の欠陥が生じない程度の適度の偏平度で、偏平形状に保持された連続円筒膜のそれぞれの偏平面に対し、二枚一対の切断刃のそれぞれを、その円筒膜の中心軸線と直交する方向へ、順次に往動切断変位および復動切断変位させて、その連続円筒膜から、所定の長さの円筒部材を切断分離させることにより、連続円筒膜の切断時の、各個の切断刃と連続円筒膜との接触面積を小さくして、連続円筒膜の意図しない変形、変位等を十分に防止できるので、切断面への凹凸、ねじれ等の発生を抑制し、切断面の平滑度、平坦度の低下を有効に防止することができる。
【0022】
そしてこのことは、二対以上の押え部材間に連続円筒膜を挟み込んでそれに所要の偏平形状を付与することで、連続円筒膜の切断時の、その円筒膜に対する拘束度合を高めて、連続円筒膜の意図しない変形、変位等を抑制した場合に一層効果的である。
【0023】
従ってここでは、連続円筒膜から切断分離した所定長さの円筒部材を、高い歩留りの下で、転写ベルト、中間転写ベルト等として適正に適用することができる。
【0024】
この方法において、二枚の切断刃のそれぞれを、連続的に送給される連続円筒膜の送給速度に同期させて、送給方向に等速変位させる場合は、所定の長さの円筒部材の切断精度を十分高め得ることはもちろん、連続円筒膜の、押出成形等による製造能率を大きく高めることができる。
【0025】
また、相互に接近および離隔変位する二対以上の押え部材間で、連続円筒膜を偏平な形状に保持するときは、製造される連続円筒膜の直径寸法等との関連の下で、その連続円筒膜を、折れ曲がり、傷等の発生なしに、連続円筒膜に所要の拘束力等を及ぼすに適した、所期した通りの偏平形状を簡易に実現することができる。
【0026】
なおここで、相互に接近および離隔変位することに加え、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位することもできる一対の押え部材間で連続円筒膜を偏平な形状に保持する場合は、対をなす押え部材を、連続的に送給される連続円筒膜に同期させて、送給方向に等速変位させることができるので、対をなすこれらの押え部材に十分近接した位置で二枚の切断刃のそれぞれを切断変位させることで、連続円筒膜の製造能率を高く確保しつつ、所定長さの円筒部材の切断精度をより高めることができる。
【0027】
そして、所定長さの円筒部材の切断精度は、一対の押え部材の各々に設けた、連続円筒膜の中心軸線と直交する方向に延在するスリット内で各切断刃を切断作動させることによって、切断刃の、外乱その他による振れ等を防止した場合に一層高めることができる。
【0028】
ところで、連続円筒膜の切断に当っては、偏平な形状に保持した連続円筒膜の側縁位置より側方から、各切断刃を切断作動させることができ、この場合にあっても、各個の切断刃と連続円筒膜との接触面積を小さく抑えて、切断面の所要の平滑度、平坦度等を十分に確保することができる。
【0029】
この一方で、二枚の切断刃のそれぞれは、偏平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向で、それの途中に、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を突き刺した後に切断作動させることもできる。
このことによって、各個の切断刃の、突き刺し深さ、切断ストローク量等との関連の下で、所定の円筒部材を、連続円筒膜から切断分離するに当り、切断時の円筒部材の変位等をより適正に抑制することができる。
【0030】
ここで、一対の押え部材で偏平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向の途中に突き刺した、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を、対向する押え部材に設けられて、連続円筒膜の中心軸線と直交する方向に延在するスリット内まで進入させた状態で各切断刃を、そのスリットに沿わせて切断作動させる場合は、各切断刃が、一回の切断変位によって、偏平形状とされた連続円筒膜の、近接する側の偏平面のみならず、離隔した側の偏平面をも同時に切断することになるので、各切断時の、切断刃と連続円筒膜との接触面積は、特許文献1に記載された技術と同様の大きさとなるも、ここでは、対をなす押え部材で連続円筒膜を偏平形状に保持することに基き、連続円筒膜が、押え部材による変形拘束力等を受けることになって、前記切断時の、連続円筒膜の変形、変位等が有効に防止されるので、切断面の所要の平滑度、平坦度等を十分に担保することができる。
【0031】
なおここで、偏平形状とされる連続円筒膜の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材で連続円筒膜を挟み込んで偏平な形状に保持する場合は、偏平形状とされた連続円筒膜の幅方向の各端部分に、幅方向の外側方向および、偏平形状とされた連続円筒膜の厚み方向のそれぞれに向けて膨出する膨満部を形成することができるので、軸端を揃えて配設した一対の押え部材によって連続円筒膜を所定の偏平形状に保持する場合に比し、連続円筒膜の各側縁への、それの中心軸線方向に延びる、意図しない折り目等の発生をより効果的に防止することができる。
【0032】
また、この発明の、円筒部材の製造装置では、対をなす押え部材を、合成樹脂製の連続円筒膜の送給方向の後方側から前方側に向けて複数段にわたって配設することで、送給される連続円筒膜の偏平度を、前記送給方向の最も前方側の押え部材に向けて次第に高め、そして、連続円筒膜の偏平度を、最前方の押え部材位置にて所定のものとすることができ、これによれば、連続円筒膜の折り曲げ部への、該円筒膜の中心軸線方向に延びる折り目の発生等を有効に防止することができる。
いいかえれば、連続円筒膜を、一対の押え部材だけによって、所定の偏平度まで偏平化させる場合は、樹脂材料の物性との関連の下で、連続円筒膜の中心軸線方向に延びる折り目が比較的発生し易い。
【0033】
そしてこの装置では、連続円筒膜の最前方の押え部材に、一対のスリットを相互に対向させて設け、各押え部材のスリットから突出するとともに、各スリットの延在方向に切断作動される二枚の切断刃を設けることにより、各切断刃をスリット縁の案内下で切断変位させることができるので、切断刃の振れ、捩れ等のおそれなしに、各切断刃を、連続円筒膜の中心軸線と直交する方向へ所期した通りに正確に切断作動させることができ、切断面を、十分平滑に、かつ平坦なものとすることができる。
【0034】
ここで、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材を、相互に接近する方向および離隔する方向へ相対変位可能とするとともに、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位可能とする場合は、先にも述べたように、連続円筒膜を連続的に送給する連続成形に当り、上記押え部材で、連続円筒膜を所期した通りの偏平形状に保持しつつ、対をなすそれらの押え部材を、連続円筒膜の送給方向へ同期変位させることができる。
従って、それらの押え部材に近接させた位置で、二枚の切断刃のそれぞれを切断作動させることで、所要の円筒膜を高い精度で切断分離させることができる。
【0035】
そして、上記の場合において、二枚の切断刃のそれぞれを、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材と一体的に変位可能とし、また、それぞれの押え部材のスリットからの順次の突出状態での往動切断変位および復動切断変位のそれぞれを可能としたときは、それぞれの切断刃を、スリット縁をガイドとして切断変位させることにより、所要の円筒部材を、より高精度に切断分離させることができる。
【0036】
ところで、上述したところにおいて、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材を、偏平形状とされる該連続円筒膜の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材としたときは、それらの押え部材で、連続円筒膜を所要の偏平形状とするに当っては、連続円筒膜のそれぞれの幅方向端部分を、幅方向の外側方向および、偏平形状とされる連続円筒膜の厚み方向のそれぞれに向けて膨出変形させることができるので、各端縁位置を揃えて配設した一対の押え部材で連続円筒膜を所要の偏平形状とする場合に比し、連続円筒膜の各側縁位置への、意図しない折り目等の発生をより効果的に防止することができる。
【0037】
そしてさらに、二枚の切断刃のそれぞれを、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材のそれぞれのスリットからの突出姿勢で、対向するスリット内へ進入可能とした場合は、各切断刃の切断作動を二個所のスリット縁の案内下で行うことにより、各切断刃を所期した通りに、高い精度で作動させることができ、また、各切断刃の一回の切断作動により、偏平形状とされた連続円筒膜の、近接する側の偏平面のみならず、離隔した側の偏平面をも同時に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係る方法の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う、切断刃の作動説明断面図である。
【図3】切断刃の、連続円筒膜との同期作動説明である。
【図4】他の実施形態を示す、図2と同様の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に示すところにおいて、1は連続円筒膜を示す、この連続円筒膜1は、たとえば図示しない押出機の口金を経て連続的に、または間欠的に成形することができる。
【0040】
また、図中2,3は、連続円筒膜1の送給方向の前後二段にわたって、相互の整列姿勢で配設した、各々が対をなす押え部材を示し、これらの各押え部材2,3は、送給される連続円筒膜1を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に保持するべく機能する。
ここで、図の下段側、いいかえれば、連続円筒膜1の送給方向の前方側に位置する押え部材2は、対をなす押え部材2間の対向間隔を、上段側の押え部材3の対向間隔より狭く設定されており、これにより、連続円筒膜1は、相互に整列させて配設された対をなす上下の押え部材3,2間を通過するに伴って、次第に偏平度を高められる。
【0041】
なお、図1に示すところでは、対をなす押え部材を上下二段に配設することとしているも、押え部材対は三段以上の複数対とすることもできる。
これはすなわち、所定の直径に成形される連続円筒膜1を所要の偏平度まで急激に偏平化させる場合は、連続円筒膜の材質等との関連において、偏平化された連続円筒膜の各側縁に、中心軸線方向に延びる折れ目が発生し易いことによる。
【0042】
また図に示すところでは、下段側に位置して、連続円筒膜1を所要の偏平度とする、前方側の、対をなす押え部材2のそれぞれに、連続円筒膜1の中心軸線と直交する方向に延在するスリット2aを相互に対向させて設けるとともに、押え部材2の各スリット2aに対し、二枚の切断刃4の各々を、前方側へ、図1に示すように突出可能に配設する。
なおこの場合、押え部材2の各スリット2aから突出させた各切断刃4を、スリット縁の案内下で、各スリット2aの延在方向に、直線状に切断変位可能とすることができる。
【0043】
ところで、二枚の切断刃4のそれぞれは、押え部材2のスリット2a内で作動させることは必須ではなく、対をなす押え部材2の前方側もしくは後方側に隣接する位置で切断変位させることもできる。
【0044】
すなわち、二枚の切断刃4の配設位置、ないしは、切断作動位置は、各切断作動に当って、切断される連続円筒膜1の不測の変形、変位等を、対をなす押え部材2によって有効に拘束できる程度に押え部材2に近接した位置であることが好ましい。
【0045】
このように配設することができ、連続円筒膜1のそれぞれの偏平面1aに対向して位置する二枚の切断刃4のそれぞれによる連続円筒膜1の切断は、二枚の切断刃4のそれぞれを、それぞれの偏平面1aに対し、連続円筒膜1の中心軸線と直交する方向へ、順次に往動切断変位、および復動切断変位させることにより行うことができ、この場合、各切断刃4で、各一方の偏平面1aだけを切断するときは、各切断刃4の、連続円筒膜1への接触面積を小さくすることによって、連続円筒膜1の切断に際する、その連続円筒膜1の不測の変形、変位等を一層効果的に防止できる利点がある。
【0046】
なお、切断刃4のこのような往動および復動切断変位に当っては、各切断刃4を、図2に示すように、偏平な形状に保持した連続円筒膜の側縁位置より外側から、順次に切断作動させることができる他、偏平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向の途中に、順次作動させるそれぞれの切断刃の先端部を突き刺した後に切断作動させることもでき、これらのいずれによっても、各切断刃4の切断作動の全体もしくは大部分において、切断刃4を、連続円筒膜1の一方の偏平面1aだけに接触させることができる。
【0047】
そして、二枚のこのような切断刃4を、図3に例示するように、連続的に送給される連続円筒膜1の送給速度に同期させて同方向へ等速変位させながら切断変位させる場合は、連続円筒膜1と切断刃4との相対速度を零として、連続的に成形される連続円筒膜1からの、所定長さの円筒部材の切断分離を十分高い精度で行なうことができる。
【0048】
ここにおいて、一対以上の押え部材、図1では、二対の押え部材2,3の少なくとも一方を、相互に接近および離隔変位する構成とし、このような押え部材対をもって連続円筒膜1を偏平な形状に保持する場合は、成形される連続円筒膜1の直径寸法のいかんにかかわらず、連続円筒膜1の最終的な偏平形状を所期した通りのものとすることができる。
【0049】
またここで、一対以上の押え部材を相互に接近および離隔変位するとともに、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位するものとし、かかる押え部材間で、連続円筒膜を所要の偏平形状に保持する場合は、連続的に成形されて連続的に送給される連続円筒膜に所要の偏平度を付与しつつ、押え部材を、連続円筒膜の送給速度に同期させて変位させることができるので、たとえば、連続円筒膜1の送給方向の最前方の押え部材2に関連させて設けた二枚の切断刃4によって、その連続円筒膜1から、所定長さの円筒部材を切断分離させる場合は、円筒部材の寸法精度を一層高めることができる。
【0050】
ところで、対をなす押え部材2のそれぞれに、連続円筒膜1の中心軸線と直交する方向に延在するスリット2aを形成した場合にあって、一対の押え部材2で偏平な形状に保持した連続円筒膜1の幅方向の途中に突き刺した、順次に作動されるそれぞれの切断刃4の先端部を、対向する押え部材2のスリット2a内まで進入させた状態で各切断刃4を切断作動させるときは、二枚の切断4の、順次の往動切断変位および復動切断変位のそれぞれで、各切断刃4が、偏平連続円筒膜の、前後二枚の偏平面1aを同時に切断することができるので、各切断刃4で、いずれかの偏平面1aだけを切断する場合に比し、各切断刃4の切断ストローク量を少なくして切断作業能率を高めることができる。
【0051】
なお、このような切断態様の下では、各切断刃4は、偏平面1aの二枚に同時に接触することになって、一枚だけに接触する場合に比して、切断刃4と連続円筒膜1との接触面積の増加は否めないものの、連続円筒膜1の意図しない、変形変位等は、前述したように、連続円筒膜1を偏平形状に保持する押さえ部材2によって有効に拘束されることになるので、切断面精度等の低下は有効に防止することができる。
【0052】
他の実施形態を示す図4は、たとえば、連続円筒膜1の送給方向の最も前方側に配設した一対の押え部材2を、偏平形状とされる連続円筒膜1の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材とし、この一対のオフセット押え部材2で連続円筒膜1を所要の偏平度とすることで、連続円筒膜1の幅方向端部分を、幅方向の外側方向へ、押え部材2の拘束を逃れて膨出変形させるとともに、偏平形状とされた連続円筒膜1の厚み方向へ、これも押え部材2の拘束を逃れて膨出変形させることで、偏平連続円筒膜1の各幅方向端部分に膨満部を形成することができるので、連続円筒膜1を所要の偏平形状に保持してなお、偏平連続円筒膜1の各側縁への折り目等の傷の発生のおそれを効果的に取り除くことができる。
【0053】
そして、この場合の連続円筒膜1の切断は、図2に関連して述べたように、偏平な形状に保持した連続円筒膜1の側縁位置より外側から、二枚の切断刃4のそれぞれを交互に切断作動させることによって行うことができる他、偏平連続円筒膜1の幅方向の途中に、順次に作動される二枚のそれぞれの切断刃4の先端部を十分な深さにわたって突き刺した後に、各個を往動切断変位および復動切断変位させることによって行うこともできる。
【0054】
なおここで、順次に作動される二枚のそれぞれの切断刃4の先端部を、偏平連続円筒膜1の幅方向の途中に突き刺して連続円筒膜1を切断するときは、図2に示す場合と、図4に示す場合との別なく、図4に破線矢印A,Bで示すように、偏平連続円筒膜1に突き刺した、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を、対向する押え部材2に設けられて、連続円筒膜1の中心軸線と直交する方向に延在するスリット2a内まで進入させた状態で各切断刃4に切断作動を行わせることが、切断作業効率を高める上で好ましい。
【0055】
ところで、図4に示す一対のオフセット押え部材2もまた連続円筒膜1の所要の偏平度等に応じて相互に接近および離隔変位可能とすることが好ましく、また、このことに加えて、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位可能とすることが、連続的に送給される連続円筒膜1を所要の偏平形状に保持する上で好ましい。
【0056】
連続的もしくは間欠的に送給される合成樹脂製の連続円筒膜から所定の長さの円筒部材を切断分離する以上のような方法の実施は、たとえば図1に示すように、送給される連続円筒膜1を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に押圧する、相互に対抗する一対の押え部材2,3を、連続円筒膜の送給方向の後方側から前方側に向けて、対をなす押え部材3,2の対向間隔を次第に狭めながら、複数段、図では二段に整列させて配設して、各対の押え部材2,3で、連続円筒膜1がともに同方向に偏平とされるようにし、また、連続円筒膜1の送給方向の最も前方側の一対の押え部材2に、連続円筒膜1の中心軸と直交する方向に延在する一対のスリット2aを相互に対向させて設け、各押え部材2のスリット2aから突出するとともに、各スリット2aの延在方向に切断作動される二枚の切断刃4を設けた装置を用いることによって行うことができる。
【0057】
そして、このような円筒部材の製造装置においても、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材2を、相互に接近する方向および離隔する方向へ相対変位可能とするとともに、連続円筒膜1の中心軸線方向に往復変位可能とすること、二枚の切断刃4のそれぞれを、連続円筒膜1の送給方向の最も前方側の一対の押え部材2の上述したような変位と一体的に変位可能とし、また、それぞれの押え部材2のスリット2aからの順次の突出状態での往動切断変位および復動切断変位のそれぞれを可能とすること、連続円筒膜1の送給方向の最も前方側の一対の押え部材2を、偏平形状とされる連続円筒膜1の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材とすること、二枚の切断刃4のそれぞれを、連続円筒膜1の送給方向の最も前方側の一対の押え部材2のそれぞれのスリット2aからの突出姿勢で、対向するスリット2a内へ進入可能とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上この発明を、図面に示すところに基いて説明したが、対をなす押え部材を、連続円筒膜の送給方向の前後に複数段にわたって配設するときは、前段側の押え部材と、後段側の押え部材との相対対向間隔をともに等しくすることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 連続円筒膜
1a 偏平面
2,3 対をなす押え部材
2a スリット
4 切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的もしくは間欠的に送給される合成樹脂製の連続円筒膜から所定の長さの円筒部材を切断分離して円筒部材を製造するに当り、
連続円筒膜を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に保持した状態で、前記中心軸線を隔てて配置されて、それぞれの偏平面に対向して位置する二枚の切断刃のそれぞれを、前記中心軸線と直交する方向へ、順次に、往動切断変位および復動切断変位させて、所定の長さの円筒部材を切断分離させる円筒部材の製造方法。
【請求項2】
連続的に送給される連続円筒膜の送給速度に同期させて二枚の切断刃を変位させる請求項1に記載の円筒部材の製造方法。
【請求項3】
相互に接近および離隔変位する一対以上の押え部材間で、連続円筒膜を偏平な形状に保持する請求項1に記載の円筒部材の製造方法。
【請求項4】
相互に接近および離隔変位するとともに、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位する一対以上の押え部材間で、連続円筒膜を偏平な形状に保持する請求項2に記載の円筒部材の製造方法。
【請求項5】
一対の押え部材の各々に設けた、連続円筒膜の中心軸線と直交する方向に延在するスリット内で各切断刃を切断作動させる請求項1〜4のいずれかに記載の円筒部材の製造方法。
【請求項6】
偏平な形状に保持した連続円筒膜の側縁位置より外側から、各切断刃を切断作動させる請求項1〜5のいずれかに記載の円筒部材の製造方法。
【請求項7】
偏平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向の途中に、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を突き刺した後に切断作動させる請求項1〜5のいずれかに記載の円筒部材の製造方法。
【請求項8】
一対の押え部材で偏平な形状に保持した連続円筒膜の幅方向の途中に突き刺した、順次に作動されるそれぞれの切断刃の先端部を、対向する押え部材に設けられて、連続円筒膜の中心軸線と直交する方向に延在するスリット内まで進入させた状態で各切断刃を切断作動させる請求項1〜5もしくは7のいずれかに記載の円筒部材の製造方法。
【請求項9】
偏平形状とされる連続円筒膜の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押さえ部材で連続円筒膜を挟み込んで偏平な形状に保持する請求項1〜8のいずれかに記載の円筒部材の製造方法。
【請求項10】
連続的もしくは間欠的に送給される合成樹脂製の連続円筒膜から所定の長さの円筒部材を切断分離する装置であって、
送給される連続円筒膜を、中心軸線と直交する方向に偏平な形状に押圧する、相互に対向する一対の押え部材を、連続円筒膜の送給方向の後方側から前方側に向けて、対をなす押え部材の対向間隔を次第に狭めながら、複数段整列させて配設し、前記送給方向の最も前方側の一対の押さえ部材に、連続円筒膜の中心軸と直交する方向に延在する一対のスリットを相互に対向させて設け、各押え部材のスリットから突出するとともに、各スリットの延在方向に切断作動される二枚の切断刃を設けてなる円筒部材の製造装置。
【請求項11】
連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材を、相互に接近する方向および離隔する方向へ相対変位可能とするとともに、連続円筒膜の中心軸線方向に往復変位可能としてなる請求項10に記載の円筒部材の製造装置。
【請求項12】
二枚の切断刃のそれぞれを、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材と一体的に変位可能とし、また、それぞれの押え部材のスリットからの順次の突出状態での往動切断変位および復動切断変位のそれぞれを可能としてなる請求項11に記載の円筒部材の製造装置。
【請求項13】
連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材を、偏平形状とされる該連続円筒膜の幅方向に相対変位させて配設した一対のオフセット押え部材としてなる請求項10〜12のいずれかに記載の円筒部材の製造装置。
【請求項14】
二枚の切断刃のそれぞれを、連続円筒膜の送給方向の最も前方側の一対の押え部材のそれぞれのスリットからの突出姿勢で、対応するスリット内へ進入可能としてなる請求項10〜13のいずれかに記載の円筒部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218533(P2011−218533A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93458(P2010−93458)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】