説明

冷却ファン装置およびこの冷却ファン装置を備えたジルコニア式酸素計

【課題】簡単な構成で回転部の異常を検出することができる冷却ファン装置を実現する。
【解決手段】駆動時に所定の電流が流れる回転部の異常を検出する冷却ファン装置において、
回転部1に流れる電流Iに応じた検出電圧Vsを発生する電圧変換部2と、
前記検出電圧Vsが所定の閾値電圧Vl以下となった場合に異常検出信号S1を出力する下限値監視部4と、
前記検出電圧Vsが所定の閾値電圧Vh以上となった場合に異常検出信号S2を出力する上限値監視部5と、
を備えたことを特徴とする冷却ファン装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却ファン装置およびこの冷却ファン装置を備えたジルコニア式酸素計に関し、詳しくは、冷却ファン装置の異常や故障を検出する構成およびこのような構成の冷却ファン装置を用いるジルコニア式酸素計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発熱部品や発熱機構が組み込まれている電子機器では、機器内部の温度上昇を抑制するために、冷却ファン装置を取り付けて強制空冷を行うのが一般的である。冷却ファン装置の運転にあたっては、機器内部の温度が予め設定された上限値を超えたら回転駆動させて下限値まで低下したら停止させたり、常時一定速度で回転駆動させたり、発熱部品や発熱機構の負荷電流の大きさに連動して回転数を制御することが行われている。
【0003】
ところで、冷却ファン装置は、回転部分への異物混入による詰まりや配線の断線などの異常が発生したことにより、機器内部の温度が上限値を超えているにも拘らず起動回転できなかったり、回転途中で停止してしまう場合がある。このような冷却ファン装置の回転停止は、機器内部を異常加熱状態に陥らせてしまうおそれがあり、冷却ファン装置の異常や故障の有無を的確に監視検知する必要がある。
【0004】
下記特許文献1には、異常検出機能付きの冷却ファン装置として、冷却ファン装置の回転部の回転数または回転周波数を検出し、数値データ化して演算処理を行うものが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平04−128599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような異常検出の手法では、回転部の回転数や回転周波数の検出を行うための検出部が必要となるため、構造が複雑となり、コスト的にも高価なものとなっていた。
【0007】
本発明は、従来の問題をなくし、簡単な構成で異常の有無を的確に検出できる冷却ファン装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、請求項1の発明は、
回転部の異常を検出する異常検出手段を備えた冷却ファン装置であって、
前記異常検出手段は、前記回転部に流れる電流値に基づき異常検出信号を出力することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、
請求項1に記載の冷却ファン装置において、前記異常検出手段は、
前記回転部に流れる電流を検出電圧に変換する電圧変換部と、この検出電圧と少なくとも下限値の閾値電圧を比較して前記検出電圧が前記閾値電圧を超えたら異常検出信号を出力する電圧監視部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、
請求項2に記載の冷却ファン装置において、前記電圧監視部は、前記閾値電圧にヒステリシスを持っていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の冷却ファン装置において、前記検出電圧を平滑化するフィルタを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、
回転部の異常を検出する異常検出手段を備えた冷却ファン装置であって、
前記回転部の電源ラインに直列接続され、前記回転部に流れる電流に応じた検出電位を発生する抵抗と、
前記検出電位を平滑化するローパスフィルタと、
平滑化された前記検出電位を所定の電圧下限値と比較する第1のコンパレータと、
平滑化された前記検出電位を所定の電圧上限値と比較する第2のコンパレータと、
前記第1のコンパレータに入力される電圧下限値にヒステリシスを与える第1のヒステリシス回路と、
前記第2のコンパレータに入力される電圧上限値にヒステリシスを与える第2のヒステリシス回路と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、
円筒状に形成され高温に加熱されたジルコニア素子の一方の面に試料ガスを流して他方の面に空気を流すことにより前記ジルコニア素子の内外面に酸素濃度差を与え、前記ジルコニア素子の内外面に発生する起電力に基づき前記試料ガスの酸素濃度を測定するジルコニア式酸素計において、
前記ジルコニア素子を内部に格納して加熱する電気炉と、
この電気炉の外部を冷却する、請求項1〜5のいずれかに記載の冷却ファン装置と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、
回転部に流れる電流に基づき異常検出信号を出力するため、簡単な構成で異常を検出することができる冷却ファン装置を実現することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、
電圧監視部は、少なくとも検出電圧が閾値電圧の下限値以下となった場合を異常レベルとして異常検出信号を出力するため、回転部が断線したり、あるいは異物等の混入により強制的に停止させられて回転部に電流が流れなくなったような場合に、簡単な構成で冷却ファン装置の異常を検出することができる。
また、閾値電圧に上限値を設ければ、検出電圧が所定の閾値電圧以上となった場合も異常レベルとして異常検出信号を出力するため、回転部に負荷がかかって電流が多く流れているような場合も、簡単な構成で冷却ファン装置の異常を検出することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、
電圧監視部の閾値電圧はヒステリシスを持っているため、電圧監視部の動作を安定化させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、
検出電圧を平滑化するフィルタを備えているため、回転部に流れる電流にノイズや脈動がある場合でも、検出電圧からこの脈動を取り除いて信号を安定化させることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、
回転部に流れる電流に応じた検出電圧を発生させ、この検出電圧の上限値と下限値を監視することにより、簡単な構成で回転部の異常を検出することができる冷却ファン装置を実現することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、
簡単な構成で異常を検出することができる冷却ファン装置を備えたジルコニア式酸素計を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明をジルコニア式酸素計の冷却ファン装置に適用した実施例の構成について説明する。ジルコニア式酸素計のセンサ部は、円筒状に形成されたジルコニア素子の内側と外側にそれぞれ電極が取り付けられた構造となっている。
【0021】
ジルコニア素子は固体電解質(イオン導電性固体)の性質を持ち、選択的に酸素イオンを通過させる。すなわち、ジルコニア素子で円筒の内側と外側に酸素濃度差があると、濃度の高い側の電極では酸素分子がイオン化される還元反応が起こり、濃度の低い側の電極では酸素イオンを酸素分子に戻す酸化反応が起こる。このとき、ジルコニア素子の内外の電極間には酸素濃度比に応じた起電力が発生する。これら電極間に発生する電圧を測定すすることにより、ジルコニア素子の円筒の内外の酸素濃度比が分かる。そこで、ジルコニア素子の円筒の外側には基準ガス(通常は大気)を流し、円筒の内側には酸素濃度を測定したい試料ガスを流すことによって、試料ガス中の酸素濃度を求めることができる。
【0022】
このようなジルコニア素子に上記のような固定電解質の性質を発揮させるためには、ジルコニア素子を700℃程度の高温に加熱する必要がある。そのため、ジルコニア式酸素計には加熱用の電気炉が設けられており、ジルコニア素子はこの電気炉内部に配置されて所定温度まで加熱される。ジルコニア式酸素計は、このような電気炉が配線ケーブルや演算処理装置などその他の必要な構成物とともに共通の筐体内に格納されて、ひとつの機器として一体構成される。
【0023】
ところで、ジルコニア素子の加熱時には、電気炉の内部だけでなく外表面の温度も大幅に上昇してしまう。そのため、電気炉の外表面を冷却するために冷却ファン装置を設け、電気炉の外表面の温度上昇を抑えている。冷却ファン装置により、電気炉自体の外表面の温度上昇は室温+90℃程度、電気炉を覆うカバーの温度上昇は室温+5℃〜10℃程度に抑えられる。なお、筐体には複数の空気穴が形成され、冷却ファン装置の回転部は、筐体と電気炉に対して風が最適に流れるように配置される。
【0024】
ところが、冷却ファン装置は、前述のように、回転部の詰まりや断線などの異常が発生して停止してしまうことがある。酸素計の使用者がこのような冷却ファン装置の異常に気づかないと、電気炉自体の外表面の温度は150℃近く、また電気炉のカバーの温度は100℃近くにまで上昇し、電気炉周辺に配置されているその他の構成物が熱の影響で損傷したり、発火したりする危険性がある。
【0025】
図1は一実施例の機能ブロック図であり、ジルコニア式酸素計における冷却ファン装置の部分のみを取り出して図示したものである。
【0026】
冷却ファン装置の駆動部1には、図示しない回転部を回転駆動するための電流Iが流れている。電圧変換部2にはこの電流Iが入力され、電流Iに応じた検出電圧Vsを変換出力する。この電流Iには、ノイズや駆動部1の動作に起因した脈動があり、検出電圧Vsにもこれらのノイズや脈動が反映されている。そこで、フィルタ3を設けて検出電圧Vsのノイズや脈動を取り除き平滑化し、平滑化された検出電圧Vsを上限値監視部4と下限値監視部5に入力する。
【0027】
下限値監視部4は、入力された検出電圧Vsを閾値電圧Vlと比較する比較部41を備えている。閾値電圧Vlは、検出電圧Vsの下限値となる電圧である。比較部41は、検出電圧Vsが閾値電圧Vl以下となった場合に、異常検出信号S1を出力する。なお、閾値電圧Vlにはヒステリシス回路42により、ヒステリシスを持たせている。すなわち、ヒステリシス回路42は、減少していく検出電圧Vsに対してVlより所定値だけ低いVldを設定するとともに、増大していく検出電圧Vsに対してVlより所定値だけ高いVluを設定する。したがって、比較部41では検出電圧の増減方向に応じて検出電圧VsをVluまたはVldと比較することになる。ただし以下の説明においてとくに必要がない場合には、比較部41で用いるVluおよびVldも下限の「閾値電圧Vl」で代表する。
【0028】
回転部の配線が断線したり、異物等の混入により強制的に停止させられたような場合には、駆動部1には電流が流れなくなる。そのため、検出電圧Vsが下限値(閾値電圧Vl)を下回ったときに、回転部に異常が発生したことを検出することができる。
【0029】
同様に、上限値監視部5は、入力された検出電圧Vsを閾値電圧Vhと比較する比較部51を備えている。閾値電圧Vhは、検出電圧Vsの上限値となる電圧である。比較部51は、検出電圧Vsが閾値電圧Vh以上となった場合に、異常検出信号S2を出力する。なお、閾値電圧Vhにはヒステリシス回路52により、ヒステリシスを持たせている。すなわち、ヒステリシス回路42は、減少していく検出電圧Vsに対してVhより所定値だけ低いVhdを設定するとともに、増大していく検出電圧Vsに対してVhより所定値だけ高いVhuを設定する。したがって、比較部42では検出電圧の増減方向に応じて検出電圧VsをVhuまたはVhdと比較することになる。ただし以下の説明においてとくに必要がない場合には、比較部42で用いるVhuおよびVhdも上限の「閾値電圧Vh」で代表する。
【0030】
回転部にゴミ等の付着や詰まりなどの異常が発生して負荷がかかると、駆動部1は回転部の回転駆動のためにより多くのパワーを必要とし、電流Iが多く流れる傾向にある。そのため、検出電圧Vsが上限値(閾値電圧Vh)を上回ったときに、回転部1に異常が発生したことを検出することができる。
【0031】
異常検出信号S1,S2は、OR回路6に入力される。OR回路6は、異常検出信号S1,S2の少なくともいずれかが出力されると、異常検出信号S3を出力する。異常検出信号S3は、駆動部1に何らかの異常が発生したことを示す信号となる。
【0032】
図2は図1に示した冷却ファン装置の具体的な回路例である。
回転部(図示せず)を駆動する駆動部1(図示せず)の電源ピン(FAN(+))とGNDピン(FAN(−))が、コネクタ8のピンP1,P2にそれぞれ接続される。コネクタ8のピンP1には駆動部1の電源として電圧Vが供給される。
【0033】
電圧変換部2は、コネクタ8のピンP2を抵抗R1を介して共通電位GNDに接続して構成されている。回転部が駆動されて電流Iが流れると、抵抗R1にも電流Iが流れ、抵抗R1の両端に電位が発生する。この電位が検出電位Vsである。
【0034】
フィルタ3は、コネクタ8のピンP2に直列接続された抵抗R2,R3と、抵抗R3の両端と共通電位GND間に接続されたコンデンサC1,C2とでローパスフィルタを形成し、検出電位Vsを平滑化する。平滑化された検出電位Vsは、抵抗R10を介して比較部41としてのコンパレータU1の反転入力端子に入力されるとともに、抵抗4を介して比較部51としてのコンパレータU2の反転入力端子にも入力される。
【0035】
コンパレータU1の非反転入力端子には、検出電圧Vsの下限値となる閾値電圧Vlが抵抗R11とR12の直列回路で構成されるヒステリシス回路42を介して入力される。この閾値電圧Vlは、電源Vを抵抗R13とR14の直列回路で分圧して生成する。抵抗R11の一端は抵抗R13,R14の接続中点に接続され、抵抗R11,R12の接続中点はコンパレータU1の非反転入力端子に接続され、抵抗R12の他端はコンパレータU1の出力端子に接続されている。このヒステリシス回路42により、検出電圧Vsが増大する時にコンパレータU1が動作する閾値電圧Vl(Vlh)と、減少する時にコンパレータU1が動作する閾値電圧Vl(Vld)とが異なっている。ヒステリシスの大きさは、抵抗R11,R12の抵抗値で設定される。なお、コンパレータU1の出力端子には抵抗R15を介して電源Vが接続されている。
【0036】
コンパレータU1は検出電圧Vsが閾値電圧Vlを上回った場合にはL信号を出力し、検出電圧Vsが閾値電圧Vlを下回った場合にはH信号を出力する。すなわち、検出電圧Vsに異常が発生するとH信号が出力される。コンパレータU1の出力はOR回路6に入力される。
【0037】
コンパレータU2の非反転入力端子には、検出電圧Vsの上限値となる閾値電圧Vhが抵抗R5とR6の直列回路で構成されるヒステリシス回路52を介して入力される。閾値電圧Vhは、電源Vを抵抗R7とR8の直列回路で分圧して生成する。抵抗R5の一端は抵抗R7,R8の接続中点に接続され、抵抗R5,R6の接続中点はコンパレータU2の非反転入力端子に接続され、抵抗R6の他端はコンパレータU2の出力端子に接続されている。実際には、このヒステリシス回路52により、検出電圧Vsが増大する時にコンパレータU2が動作する閾値電圧Vh(Vhu)と、減少する時にコンパレータU2が動作する閾値電圧Vh(Vhd)とが異なっている。ヒステリシスの大きさは、抵抗R5,R6の抵抗値で設定される。なお、コンパレータU2の出力端子には抵抗R9を介して電源Vが接続されている。
【0038】
コンパレータU2は検出電圧Vsが閾値電圧Vhを下回った場合にはH信号を出力し、検出電圧Vsが閾値電圧Vhを上回った場合にはL信号を出力する。すなわち、検出電圧Vsに異常が発生するとL信号が出力される。異常発生時のコンパレータU2の論理(L/H)をコンパレータU1の論理に揃えるため、インバータU3でコンパレータU2の出力の論理を逆転させる。インバータU3の出力は、OR回路6に入力される。
ここでは、コンパレータU2とインバータU3とで比較部51を構成している。
【0039】
OR回路6は、コンパレータU1の出力とインバータU3の出力の論理和を取り、少なくともいずれか一方の出力がH信号となった場合にH信号を出力する。
【0040】
ところで、近年の冷却ファンは、回転部が強制的に停止させられると、一時的に回転部に電流を多く流した後に、過電流防止のため電流を0mAに低下させ、その後定期的に電流を流して再起動を試みる処理が施されたものが多い。冷却ファンの機種によって再起動の周期は異なり、たとえば、ある冷却ファンでは2.5s周期で500msずつ電流が流れ、また別の冷却ファンでは1.2s周期で200msずつ電流が流れる。
【0041】
回転部にこのような過電流防止機能があると、異常検出信号S3がL/H、すなわち正常と異常を繰り返す可能性がある。そこで、異常検出信号S3を適切にサンプリングすることによって、回転部の異常を検出する。
【0042】
異常検出信号S3は演算部7に入力される。演算部7は、異常検出信号S3を所定のサンプリング期間T(たとえば数秒間)積算し、異常検出信号S3がサンプリング期間T中にH信号であった期間tの割合を求める。そして、t/Tを演算し、演算の結果が所定の閾値(たとえば50%)以上であれば、回転部に異常が発生したと判断して異常検出信号S4を出力する。演算部7は、実際にはプログラムがダウンロードされたCPUなどで構成される。
【0043】
異常出力信号S4が出力されると、冷却ファン装置の筐体に設けられた図示しない表示部にエラーを表示する。また、ジルコニア式酸素計では、リレーで電気炉のヒータを遮断する。これによりヒータに電力が供給されなくなり、筐体内部の温度上昇が抑えられ、機器の損傷や発火が抑えられる。
【0044】
図2に示す回路の具体的な数値例を一部紹介する。電源Vは5Vである。駆動部1には定格0.26Aの電流が流れている。抵抗R1は1Ω前後の非常に小さい抵抗値であり、抵抗R1の両端に発生する検出電圧Vsは0.26A×1Ω=0.26Vとなる。閾値電圧Vlは0.2Vとする。抵抗R13,R14の抵抗値は、分圧点が0.2Vとなるように決定する。閾値電圧Vhは0.4Vとする。抵抗R7,R8の抵抗値は、分圧点が0.4Vとなるように決定する。抵抗R11,R12の抵抗値は、閾値電圧Vlのヒステリシスが数10mV以内となるように決定する。同じく抵抗R5,R6の抵抗値は、閾値電圧Vhのヒステリシスが数10mV以内となるように決定する。
【0045】
なお、抵抗R1は電圧変換部2に相当する。抵抗R2,R3とコンデンサC1,C2はフィルタ3に相当する。コンパレータU1と抵抗R10〜抵抗R15は下限値監視部4に相当する。コンパレータU1は比較部41に相当する。抵抗R11,R12はヒステリシス回路42に相当する。コンパレータU2と抵抗R4〜R9とインバータU3は上限値監視部5に相当する。コンパレータU2は比較部52に相当する。抵抗R5,R6はヒステリシス回路に相当する。コンパレータU1の出力は異常検出信号S1に相当する。インバータU3の出力は異常検出信号S2に相当する。OR回路6の出力は異常検出信号S3に相当する。
【0046】
本実施例は以上のように構成され、駆動部1に流れる電流Iに応じた検出電圧Vsを監視し、この検出電圧Vsが所定の閾値電圧Vl以下となった場合に異常検出信号S1を出力する下限値監視部4を備えているため、回転部が断線したり、あるいは強制的に停止させられて駆動部1に電流が流れなくなったような場合に、回転部の異常を検出することができる。
【0047】
また、本実施例では、駆動部1に流れる電流Iに応じた検出電圧Vsを監視し、この検出電圧Vsが所定の閾値電圧Vh以上となった場合に異常検出信号S2を出力する上限値監視部5を備えているため、駆動部1に負荷がかかって電流Iが多く流れているような場合に、回転部の異常を検出することができる。
【0048】
また、本実施例では、下限値監視部4と上限値監視部5はそれぞれの閾値電圧Vl,Vhにヒステリシスを与えるヒステリシス回路42,52を備えているため、下限値監視部4と上限値監視部5の動作を安定化させることができる。
【0049】
また、本実施例では、検出電圧Vsを平滑化するフィルタ3を備えているため、駆動部1に流れる電流Iにノイズや脈動がある場合でも、検出電圧Vsからこのノイズや脈動を取り除いて信号を安定化させることができる。
【0050】
また、回転部の過電流防止機能に起因して異常検出信号S3が正常と異常を繰り返すような場合であっても、異常検出信号S3を適切にサンプリングすることによって、回転部の異常を検出することができる。
【0051】
なお、本実施例では、t/Tを異常と判断する閾値を50%としたが、閾値はこれに限らない。閾値は、回転部の再起動の周期やその他の設計事項などを考慮して決定すればよい。
【0052】
また、本実施例では、異常検出信号S3がサンプリング期間T中に占めるH信号の期間tの割合に基づいて回転部の異常を検出したが、他のサンプリング手法に基づいて回転部の異常を検出してもよい。たとえば一定周期で異常検出信号S3をサンプリングし、5回中3回以上H信号を検出したら回転部に異常が発生したと判断することが考えられる。
【0053】
なお、本実施例では比較部としてコンパレータを使用したが、コンパレータは専用のICを用いてもよいし、演算増幅器で構成されたものであってもよい。また、その他の構成で比較部を構成してもよい。
【0054】
本実施例の冷却ファン装置は、構成が簡単であるとともに、回転部の種類を問わず適用することができる利点がある。
【0055】
特に、本発明をジルコニア式酸素計の電気炉を冷却する冷却ファン装置に適用することにより、安価な回転部を採用することができるとともに、簡単な構成でこの回転部の異常を検出することができる。
【0056】
なお、本実施例では、ジルコニア式酸素計に搭載された冷却ファン装置の台数は1台であり、この冷却ファン装置に異常が発生した場合には、電気炉のヒータを遮断することで酸素測定を停止させたが、ジルコニア式酸素計に搭載する冷却ファン装置は1台に限らず複数台であってもよい。
【0057】
たとえば、酸素計に冷却ファン装置を2台備えておき、通常は一方のみを駆動させておく。この冷却ファン装置に異常が発生した場合には、緊急用として他方の冷却ファン装置を駆動させることによって、引き続き電気炉が冷却され、酸素計の酸素測定の中断を防止できる。
【0058】
あるいは、通常は2台ともほぼ半分程度の送風能力で駆動させておき、一方の冷却ファン装置に異常が発生した場合にはその冷却ファン装置を停止させ、他方の冷却ファン装置を制御して送風量を増加させるようにしてもよい。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、比較的簡単な構成で、異常の有無を的確に検出できる冷却ファン装置を実現することができ、特にジルコニア式酸素計に用いることにより、電気炉の過熱による不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例の構成を示す回路例である。
【符号の説明】
【0061】
1 回転部
2 電圧変換部
3 フィルタ
4 下限値監視部
41 比較部
42 ヒステリシス回路
5 上限値監視部
51 比較部
52 ヒステリシス回路
6 OR回路
7 演算部
8 コネクタ
S1〜S4 異常検出信号
Vl,Vh 閾値電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部の異常を検出する異常検出手段を備えた冷却ファン装置であって、
前記異常検出手段は、前記回転部に流れる電流値に基づき異常検出信号を出力することを特徴とする冷却ファン装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、
前記回転部に流れる電流を検出電圧に変換する電圧変換部と、
この検出電圧と少なくとも下限値の閾値電圧を比較して前記検出電圧が前記閾値電圧を超えたら異常検出信号を出力する電圧監視部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン装置。
【請求項3】
前記電圧監視部は、前記閾値電圧にヒステリシスを持っていることを特徴とする請求項2に記載の冷却ファン装置。
【請求項4】
前記検出電圧を平滑化するフィルタを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷却ファン装置。
【請求項5】
回転部の異常を検出する異常検出手段を備えた冷却ファン装置であって、
前記回転部の電源ラインに直列接続され、前記回転部に流れる電流に応じた検出電位を発生する抵抗と、
前記検出電位を平滑化するローパスフィルタと、
平滑化された前記検出電位を所定の電圧下限値と比較する第1のコンパレータと、
平滑化された前記検出電位を所定の電圧上限値と比較する第2のコンパレータと、
前記第1のコンパレータに入力される電圧下限値にヒステリシスを与える第1のヒステリシス回路と、
前記第2のコンパレータに入力される電圧上限値にヒステリシスを与える第2のヒステリシス回路と、
を備えたことを特徴とする冷却ファン装置。
【請求項6】
円筒状に形成され高温に加熱されたジルコニア素子の一方の面に試料ガスを流して他方の面に空気を流すことにより前記ジルコニア素子の内外面に酸素濃度差を与え、前記ジルコニア素子の内外面に発生する起電力に基づき前記試料ガスの酸素濃度を測定するジルコニア式酸素計において、
前記ジルコニア素子を内部に格納して加熱する電気炉と、
この電気炉の外部を冷却する、請求項1〜5のいずれかに記載の冷却ファン装置と、
を備えたことを特徴とするジルコニア式酸素計。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−287414(P2009−287414A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138077(P2008−138077)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】