説明

冷却方法および冷却装置

【課題】被冷却物への品温センサの挿し忘れを確実に判断し、過剰な冷却等による被冷却物の品質低下を防止する技術を提供する。
【解決手段】処理槽2内に収容された被冷却物7の温度を検出する品温センサ6の挿し忘れ判定方法であって、冷却処理運転開始前または冷却処理運転開始直後に前記品温センサ6の検出温度を判定する第一ステップと、予め設定した温度と比較によって前記品温センサ6の挿し忘れを判定する第二ステップと、品温センサの挿し忘れを判定したとき前記被冷却物7の冷却を開始させないか、冷却を停止する第三ステップを行なうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理槽内を減圧して冷却処理を行う真空冷却装置や処理槽内に設けた冷却用熱交換器と送風手段によって冷風を発生させる冷風冷却装置、さらに前記冷風冷却装置に加えて処理槽内を減圧して冷却処理を行う冷風真空複合冷却装置などの食品機械に適用される冷却方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気釜、蒸煮装置、炊飯器などによって加熱調理された食品や米飯などは、食中毒菌の繁殖が著しくなる温度帯(50℃〜20℃)をできる限り早く通過させるよう冷却することが必要であるため、この冷却装置として、真空冷却装置や冷風冷却装置、冷風真空複合冷却装置といった食品機械が使用されている(特許文献1参照)。前記食品機械は、被冷却物の温度を直接検出して、その検出値に基づいて減圧速度を調節したり、冷却終了を判定することが行われている。これに使用される温度センサが前記被冷却物に直接挿し込んで被冷却物の温度を測定する品温センサである。ところが前記食品機械の運転において、前記品温センサの挿入作業を忘れて冷却運転を開始すると、制御上は前記被冷却物の温度が下がらないと判断するため冷却運転が終了せず、被冷却物によっては過剰に冷却されて被冷却物の品質を損ねるという課題があった。
【0003】
この課題に対して、食品が加熱処理される処理槽内の温度と前記品温センサの検出値がほぼ等しくなると前記品温センサが前記食品から抜けたと判定して検出温度に基づく制御から時間による制御へ切り替える方法(特許文献2)や品温センサを2本使用して作業者が両方の品温センサの温度を評価し、正しい品温センサを選択的に用いる(特許文献3)といった方法が採用されている。
【特許文献1】特開2004−69289号公報
【特許文献2】特開平11−137227号公報
【特許文献3】特開2001−208617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の時間による代替制御では、前記被冷却物の実際の温度と必要な減圧度(飽和温度)との差異が生じ、なおかつ被冷却物によっては、その温度差によって品質不良や飛散による歩留まりの減少がおこるといった問題がある。一方、特許文献3に記載される前記処理槽と前記品温センサの2本の温度センサを使用する方法は、2本の品温センサに個体差によって誤判定する可能性や、冷風冷却装置など冷却装置においては前記処理槽の温度と被冷却物の温度がほぼ等しく遷移するものがあって前記処理槽内の検出温度と前記品温センサの検出温度がほぼ等しくなれば前記品温センサが抜けているとは判定できない。さらに、2本の温度センサを使用することによるコスト高になるといった短所もある。
この発明が解決しようとする課題は、被冷却物への品温センサの挿し忘れによって過剰な冷却等による被冷却物の品質低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被冷却物に品温センサを挿し込み、少なくとも品温センサの検出温度に基づいて冷却手段を制御して被冷却物の冷却を行う冷却方法であって、冷却開始前または冷却開始後に品温センサの検出温度を判定する第一ステップと、この判定に基づき、品温センサの挿入忘れを判定する第ニステップと、品温センサの挿し忘れを判定したとき被冷却物の冷却を開始させないか、冷却を停止する第三のステップを行うことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、被冷却物の冷却開始前または冷却開始後に品温センサの被冷却物への挿し忘れを判定し、品温センサの挿し忘れが判定された場合には被冷却物の冷却を開始させないので、被冷却物に対して過剰な冷却が起こるといった品質の劣化を防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽と、被冷却物を冷却する冷却手段と、被冷却物に挿入して被冷却物の温度を検出する品温センサと、少なくとも品温センサの検出温度に基づいて冷却手段を制御して被冷却物の冷却を行う制御手段とを備える冷却装置であって、制御手段は、品温センサの挿し忘れを判定し、挿し忘れを判定したとき被冷却物の冷却を行わないようにしたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、被冷却物の冷却において品温センサの挿し忘れを判定し、挿し忘れが判定された場合は冷却を行わせないようにしたので、被冷却物に対して過剰な冷却が起こるといった被冷却物の品質の低下を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、前記被冷却物の品質を保ちながら、前記被冷却物の安定した冷却品質を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この実施形態は処理槽内を減圧手段により減圧する冷却手段を有する真空冷却装置、冷風冷却による冷却手段と処理槽内を減圧手段により減圧する冷却手段を有する冷風真空複合冷却装置および冷風冷却による冷却手段を有する冷風冷却装置、冷却水をシャワー噴霧する冷却手段を有するシャワー冷却装置などの冷却機能を持つ食品機械において実施される。また、加熱調理を行ったのち、被処理物を移し替えることなく冷却工程に移行する蒸煮冷却装置にも適用できる。
【実施例1】
【0011】
以下、この発明の具体的実施例1を図1および図2に基づいて詳細に説明する。ここで、図1はこの発明の実施例1の真空冷却装置の概略構成図であり、図2はこの実施例における品温センサの被冷却物への挿し忘れを判定を含む制御フローの説明図である。
【0012】
この真空冷却装置1は、冷却を図りたい加熱調理済み食品(食材を含む)が収容される処理槽2と、この処理槽2内の気体を外部に吸引排出して前記処理槽2内を減圧する減圧手段3と、減圧された前記処理槽2内へ外気を導入して前記処理槽2内を復圧する復圧手段4と、前記処理槽2内の圧力を検出する圧力センサ23と、前記処理槽2内に収容される被冷却物7の温度(品温)を検出するための品温センサ6と、前記圧力センサ23、前記品温センサ6の検出信号などに基づき前記各手段3、4を制御する制御手段5とを備える。
【0013】
この実施例1では、前記冷却槽2内の圧力を検出する前記圧力センサ23を備える構成としたが、前記圧力センサ23を備えず、前記処理槽2内に収容される前記被冷却物7の温度(品温)を検出するための前記品温センサ6と、前記品温センサ6の検出信号などに基づき前記各手段3,4を制御する制御手段5とを備えた構成のものも含まれる。
【0014】
さらに、前記制御手段5は、前記品温センサ6または前記圧力センサ23の検出信号に基づき、予め設定された冷却完了温度または冷却完了圧力に到達したと判定し、被冷却物3の冷却を完了するよう、前記各手段3、4を制御する。
【0015】
本実施例1の前記処理槽2は、正面へ開口して中空部24を有する処理槽本体25と、この処理槽本体25の開口部を開閉する扉(図示省略)とを備えた金属製の缶体である。このような構成であるから、扉を閉じることで、前記処理槽本体25の前記中空部24は密閉される。前記処理槽2内への食品の収容は、前記処理槽2内に出し入れされるワゴン(図示省略)を介して行ってもよいし、図1に示すように前記処理槽2内に棚板9,9,・・・を設けることで対応してもよい。また、食品は、適宜、ホテルパン、ばんじゅうなどの容器8に入れて、前記処理槽2内に収容される。
【0016】
前記処理槽2には、前記圧力センサ23と前記品温センサ6とが設けられる。本実施例の前記品温センサ6は、測温部を前記被冷却物7に挿し込んで、前記被冷却物7の温度を検出する。この際、前記品温センサ6は、前記処理槽2内に収容される前記被冷却物7の中へ前記品温センサ6を挿入できる範囲であれば、特に測定箇所を定める必要はない。
【0017】
前記処理槽2には、前記処理槽2内の空気や蒸気を外部に吸引排出して、前記処理槽2内を減圧する減圧手段3が接続される。本実施例1では、前記処理槽2からの排気路26には、前記処理槽2の側から順に、排気弁31、蒸気エゼクタ15、熱交換器14、逆止弁12および水封式真空ポンプ11が設けられる。この減圧手段3は、この発明の冷却手段を構成する。
【0018】
前記蒸気エゼクタ15は、吸入口27が前記処理槽2に接続されて設けられる。そして、前記蒸気エゼクタ15には、入口28から出口29に向けて、給蒸路19からの蒸気が噴出される。この蒸気は前記処理槽2内を吸引排出する駆動源である。前記入口28から前記出口29へ向けて蒸気を噴出させることで、前記処理槽2内の気体も前記出口29へ向けて吸引排出される。前記給蒸路19に設けた給蒸弁16の開閉を操作することで、前記蒸気エゼクタ15の作動の有無を切り替えることができる。
【0019】
前記熱交換器14は、前記蒸気エゼクタ15によって吸引排出される排気路26内の蒸気を冷却し凝縮させるものである。そのために、前記熱交換器14には、熱交給水弁13を介して水が供給され、前記熱交換器14からの排水は、排水口へ排出される。前記排気路26内の蒸気を予め凝縮させておくことで、その後の前記水封式真空ポンプ11の負荷を軽減して、前記処理槽2内の減圧を有効に図ることができる。
【0020】
前記水封式真空ポンプ11には、封水給水弁10を介して水が供給され、前記水封式真空ポンプ11からの排水は、排出口へ排出される。前記水封式真空ポンプ11を作動させる際、前記封水給水弁10は、前記水封式真空ポンプ11に連動して開かれる。
【0021】
前記処理槽2には、減圧された前記処理槽2内へ外気を導入して、前記処理槽2内を復圧する前記復圧手段4が接続される。本実施例では、前記処理槽2への給気路30には、前記処理槽2に向けて順に、除菌フィルター21、復圧操作弁20および逆止弁18が設けられる。従って、前記処理槽2内が減圧された状態で、前記復圧操作弁20を開くと、前記除菌フィルター21を介して外気を処理槽2内へ導入し、前記処理槽2内を復圧させることができる。
【0022】
前記復圧操作弁20は、比例制御弁またはモータ弁のように、開度調整可能なものが好ましい。この場合、前記処理槽2内の減圧時または復圧時に、前記復圧操作弁20の開度を調整することで、前記処理槽2内の減圧や復圧を徐々に変化させることができる。減圧が早いことによって被冷却物におこる割れや被冷却物の飛散、減圧状態から復圧する際に被冷却物によって起こる割れや食味の変化を防止するのに好適である。前記復圧弁20は、また、電磁弁としてON−OFFによって前記給気路30の流通を制御するものでもよい。この場合、前記処理槽2内の減圧時または復圧時に、前記復圧操作弁20の開時間、閉時間を調整することで、前記処理槽2内の減圧や復圧を徐々に変化させることができる。
【0023】
前記減圧手段3や前記復圧手段4などは、制御手段5により制御される。この制御手段5は、それぞれが把握する経過時間のほか、前記品温センサ6の検出信号に基づき、前記各手段3,4を制御する制御器22である。前記制御器22は、前記品温センサ6の検出信号のみによって前記各手段3,4を制御するが、前記圧力センサ23の検出信号のみに基づいて前記各手段3,4を制御するや前記品温センサ6と前記圧力センサ23の両方の検出信号に基づいて、前記各手段3,4を制御することもできる。具体的には、前記給蒸弁16、前記熱交給水弁13、前記封水給水弁10、前記水封式真空ポンプ11、前記復圧操作弁20、前記圧力センサ23および前記品温センサ6などは、前記制御器22に接続されている。そして、前記制御器22は、図2に示す所定の制御手順(プログラム)に従い、前記処理槽2内の前記被冷却物7の真空冷却を図る。前記制御手順は、冷却開始前に品温センサの検出温度を判定する第一ステップと、この判定に基づき、品温センサの挿入忘れを判定する第ニステップと、品温センサの挿し忘れを判定したとき被冷却物の冷却を開始させないか、または冷却を停止させるようにする。
【0024】
さらに、前記制御器22は、前記処理槽2に別途設けられる前記処理槽2内の温度を検出する温度センサ(図示省略)と前記品温センサ6の両方の検出信号に基づくなど前記品温センサ6とそのほかの温度および/または圧力の検出手段を設け、これらから得られる検出信号づいて前記各手段3,4を制御することもできる。
【0025】
つぎに、この実施例1の動作を、図1、図2に基づいて説明する。
【0026】
(第一ステップ)
前記真空冷却装置1の電源(図示省略)を入れ、前記被冷却物7を前記処理槽2に載置し、冷却開始スイッチ(図示省略)を押すと、前記冷却開始スイッチを押されたかどうかを判定し(S1)、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行う設定(S2)がなされていれば、前記制御器22は前記品温センサ6の検出温度をt1秒間検出する(S3)。この検出時間t1秒は、前記品温センサ6の検出温度の応答遅れのための誤判定を防止するためのもので、通常は5秒としている。この前記検出時間t1秒は、使用する品温センサの応答速度に応じて変更することができる。使用にあたって、検出までの時間設定が短かくなりすぎて、挿入しているにも関わらず検出温度が上昇せず、挿入忘れと判定してしまう不具合を防止することができる。
【0027】
前記品温センサ6の挿し忘れを判定するための判定温度T0℃は、加熱調理済みの前記被冷却物7が前記真空冷却装置1の前記処理槽2に載置されて冷却運転が開始されるときの温度よりもやや低い温度に設定する。例えば、前記処理槽2内に載置されたときの前記被冷却物7の温度が70℃であったときには、前記判定温度T0℃を60℃に設定する。この前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行う温度T0℃は、前記冷却運転ボタンを押す前に、前記真空冷却装置1の操作画面(図示せず)あるいは前記操作画面とは別に設けられる市販の温度調節器などのボタン操作で作業者が自由に変更することができるようにしている。
【0028】
(第二ステップ)
前記品温センサ6の挿し忘れの判定(S4)において、前記検出時間t1秒後の検出温度Ta1℃を前記判定温度T0℃と比較し、Ta1℃≧T0℃であれば、前記品温センサ6は前記被冷却物7に正しく挿入されていると判定し、前記制御器22は前記真空冷却装置1は予め選択された冷却プログラムに従って冷却運転を開始する(S6)。
【0029】
(第三ステップ)
一方、S3において、前記検出時間t1秒後の検出温度Ta1℃と前記判定温度T0℃との比較で、T1℃<T0℃であったときには、前記被冷却物7に前記品温センサ6は正しく挿入されていないと判定し、前記制御器22は、異常を知らせ(S5)、処理をS6へ移行させず、前記真空冷却装置1の冷却運転を行わないようにする。前記異常の報知は、前記操作画面への注意表示で行われるほか、警報ランプの点滅・点灯、処理画面の色の反転、警報ブザーの鳴動などの方法によってもよいし、またはこれらの組み合わせで行ってもよい。
【0030】
前記品温センサ6の挿し忘れが一度判定され、異常が報知されると、作業者は前記処理槽2の前記扉を開き前記品温センサ6が被冷却物へ正しく挿入されているかどうかを確認し、前記品温センサ6を前記被冷却物7へ挿入したことを確認して、前記処理槽2の前記扉を密閉して、再び前記冷却開始ボタンを押す。この操作により、前記異常報知(S5)はリセットされ、前記制御器22は、再び、前記検出時間t1秒間の前記品温センサ6による品温検出を行い(S3)、前記検出時間t1秒後の温度Ta2℃と前記判定温度T0℃との比較を行う(S4)。このとき、Ta2℃≧T0℃であれば、冷却運転は開始され、Ta2℃<T0℃のときには、前記制御器22は異常を知らせ(S5)、冷却運転を行わないようにする。
【0031】
以上の判定制御を繰り返すことにより、前記品温センサ6は前記被冷却物7に確実に挿入されて、前記被冷却物7を選択された冷却プログラムに従って正しく冷却処理することができる。
【0032】
また、この前記品温センサ6の前記被冷却物7への挿し忘れ判定は、選択ボタンなどによって、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行わないように選択することもできる。判定を行わない設定の場合は、S2からS6へ移行する。従って、一度、挿し忘れ判定が行なわれると、前記品温センサ6を前記被冷却物7へ確実に挿入ができるため、挿し忘れを解消して冷却運転を再開する場合には、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行なわないようにすることで、冷却運転の時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0033】
さらに、前記品温センサ6の被冷却物7への挿し忘れ判定実施の有無を選択できる(S2)ようにすることにより、前記品温センサ6を挿し忘れても冷却の品質に影響を及ぼさない被冷却物では、この挿し忘れ判定を行なわないように選択しておけば、冷却作業を簡略化できる。また、冷却途中で冷却装置の異常などによって途中停止した際には、挿し忘れ判定を行わないように選択することで、前記被冷却物7の再冷却を容易に再開することができる。
【実施例2】
【0034】
つぎに、この発明の具体的実施例2を図3に基づいて詳細に説明する。ここで、実施例1との違いは、実施例1が冷却運転開始前すなわち減圧操作前であるのに対して、本実施例2は、冷却運転を開始した直後に判定を行なうものである。この実施例2において、前記真空冷却装置1は前記実施例1と同じである。図3は、この実施例2における品温センサの被冷却物への挿し忘れを判定を含む制御フローの説明図である。本実施例2は、例えば、冷却運転を開始する時点における前記被冷却物7の品温が概略80℃以下の場合や、前記被冷却物7が一度冷却運転が開始されて、挿し忘れの判定が行われて、復圧(S29)されても、被冷却物7の冷却品質に大きく影響しない食材や冷え難い食材などに用いることができる。
【0035】
本実施例2では、冷却運転を行いながら、品温センサの挿し忘れ判定が行なわれるため、冷却運転の時間を一層短くすることができる。
【0036】
(第一ステップ)
前記真空冷却装置1の電源(図示省略)を入れ、前記被冷却物7を前記処理槽2に載置し、冷却開始スイッチ(図示省略)を押すと、前記冷却開始スイッチを押されたかどうかを判定し(S21)、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行うよう選択(S22)がされていれば、前記制御器22は前記真空冷却装置1は予め選択された冷却プログラムに従って冷却運転を開始する(S23)。冷却運転開始直後は、前記冷却槽2内の圧力が前記被冷却物7の品温に相当する飽和蒸気圧力まで低下しない。この時間を利用して、前記品温センサ6の検出温度をt2秒間検出する(S24)。この検出時間t2秒は、前記品温センサ6の検出温度の応答遅れのための誤判定を防止するためのもので、通常は5秒としている。この前記検出時間t2秒は、使用する品温センサの応答速度に応じて変更することができる。使用にあたって、検出までの時間設定が短かくなりすぎて、挿入しているにも関わらず検出温度が上昇せず、挿し忘れと判定してしまう不具合を防止することができる。
【0037】
前記品温センサ6の挿し忘れを判定するための判定温度T0℃は、加熱調理済みの被冷却物7が前記真空冷却装置1の前記処理槽2に載置されて冷却運転が開始されるときの温度よりもやや低い温度に設定する。例えば、前記処理槽2内に載置されたときの前記被冷却物7の温度が70℃であったときには、前記判定温度T0℃を60℃に設定する。この前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行う温度T0℃は、前記冷却運転ボタンを押す前に、前記真空冷却装置1の操作画面(図示せず)あるいは前記操作画面とは別に設けられる市販の温度調節器などのボタン操作で作業者が自由に変更することができるようにしている。
【0038】
(第二ステップ)
前記品温センサ6の挿し忘れの判定(S26)において、前記t2秒後の検出温度Tb1℃を前記判定温度T0℃と比較し、Tb1℃≧T0℃であれば、前記品温センサ6は前記被冷却物7に正しく挿入されていると判定し、前記制御器22は前記真空冷却装置1は予め選択された冷却プログラムに従って冷却運転を開始する(S27)。
【0039】
(第三ステップ)
一方、S26において、前記検出時間t2秒後の検出温度Tb1℃と前記判定温度T0℃との比較で、Tb1℃<T0℃であったときには、前記被冷却物7に前記品温センサ6は正しく挿入されていないと判定し、前記制御器22は、異常を知らせる(S28)とともに前記処理槽7内を前記復圧手段4により復圧させ(S29)、前記真空冷却装置1は前記被冷却物7の冷却を行わないようにする。S27へは移行させず、前記真空冷却装置1の冷却運転を行わないようにする。前記異常の報知は、前記操作画面への注意表示で行われるほか、警報ランプの点滅・点灯、処理画面の色の反転、警報ブザーの鳴動などの方法によってもよいし、またはこれらの組み合わせで行ってもよい。
【0040】
前記品温センサ6の挿し忘れが一度判定され、異常が報知されると、作業者は前記処理槽2の前記扉を開き前記品温センサ6が前記被冷却物7へ正しく挿入されているかどうかを確認し、前記品温センサ6を前記被冷却物7へ挿入したことを確認して、前記処理槽2の前記扉を密閉して、再び前記冷却開始ボタンを押す。この操作により、前記異常報知(S28)はリセットされ、前記制御器22は、再び、前記検出時間t2秒間の前記品温センサ6による品温検出を行い(S25)、前記検出時間t2秒後の温度Tb2℃と前記判定温度T0℃との比較を行う(S26)。このとき、Tb2℃≧T0℃であれば、冷却運転は開始され、Tb2℃<T0℃のときには、前記制御器22は異常を知らせる(S28)とともに前記処理槽7内を前記復圧手段4により復圧させ(S29)、前記真空冷却装置1は被冷却物7の冷却を行わないようにする。冷却運転を行わないようにする。
【0041】
以上の判定制御を繰り返すことにより、前記品温センサ6は被冷却物7に確実に挿入されて、前記被冷却物7を選択された冷却プログラムに従って正しく冷却処理することができる。
【0042】
また、この前記品温センサ6の前記被冷却物7への挿し忘れ判定は、選択ボタンなどによって、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行わないように選択することもできる。判定を行わない設定の場合は、S22からS27へ移行する。従って、一度、挿し忘れ判定が行なわれると、前記品温センサ6を前記被冷却物7へ確実に挿入ができるため、挿し忘れを解消して冷却運転を再開する場合には、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行なわないようにすることで、冷却運転の時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0043】
さらに、前記品温センサ6の前記被冷却物7への挿し忘れ判定実施の有無を選択(S22)できるようにすることにより、前記品温センサ6を挿し忘れても冷却の品質に影響を及ぼさない被冷却物では、この挿し忘れ判定を行なわないように選択しておけば、冷却作業を簡略化できる。また冷却途中において、冷却装置の異常などによって途中停止した際には、挿し忘れ判定を行わないように選択することによって、前記被冷却物7の再冷却を容易に再開することができる。
【0044】
実施例1と実施例2は、互いに組み合わせることができる。すなわち、実施例1において、前記品温センサ6の挿し忘れが判定され、前記品温センサ6を前記被冷却物7に挿入した後、冷却運転を開始した後に品温センサの挿し忘れ判定を行なうことのできる実施例2に記載の方法を選択することができる。この組み合わせを行うことにより、確実に品温センサの挿し忘れを判定しながら、冷却運転を短くすることが可能となる。また、実施例2に記載の方法によって、前記品温センサ6の前記被冷却物7への挿入忘れが判定され、前記品温センサ6を前記被冷却物7に挿入した後、冷却運転開始前に品温センサの挿し忘れ判定を行なうことのできる実施例1記載の方法を選択することもできる。この組み合わせでは、前記被冷却物7の温度を低下させることなく、確実な品温センサの挿し忘れ判定を行なう効果を奏する。
【実施例3】
【0045】
つぎに、この発明の具体的実施例3の動作を図4に基づいて説明する。この実施例3において、前記真空冷却装置1は前記実施例1と構成を同じくしている。
【0046】
(第一ステップ)
前記真空冷却装置1の電源(図示省略)を入れ、前記被冷却物7を前記処理槽2に載置し、冷却開始ボタン(図示省略)を押すと、前記冷却開始ボタンを押されたかどうかを判定し(S31)、前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行う設定がされている場合(S32)は、前記処理槽7を減圧させるため、減圧手段をt3秒間動作させて減圧し(S34)、その間、前記制御器22は前記品温センサ6の検出温度を検出し、t3秒間の温度変化を算出する(S35)。このt3秒間は、前記被冷却物7の品質に影響を及ぼさない時間であり、通常はt3秒を30秒としているが、t3秒は運転前に操作者が自由に変更することができる。
【0047】
前記品温センサ6の挿し忘れを判定するための判定温度変化ΔTc1℃は、被冷却物7の性状(粘度、水分量など)やt3秒の設定時間によって温度設定を変えることができる。この前記品温センサ6の挿し忘れ判定を行う前記判定温度変化ΔTc1℃は、前記冷却運転ボタンを押す前に、前記真空冷却装置1の操作画面(図示せず)あるいは前記操作画面とは別に設けられる市販の温度調節器などのボタン操作で作業者が自由に変更することができるようにしている。
【0048】
(第二ステップ)
前記品温センサ6の挿し忘れの判定(S36)では、前記検出時間t3秒間に検出される温度変化ΔTc1℃を前記判定温度変化ΔTα℃と比較し、ΔTc1℃≧ΔTα℃であれば、前記品温センサ6は前記被冷却物7に正しく挿入されていると判定し、前記制御器22は前記真空冷却装置1の冷却運転を予め選択された冷却プログラムに従って開始する(S37)。
【0049】
(第三ステップ)
一方、S36において、前記t3秒間に検出される温度変化ΔTc1℃と前記判定温度変化ΔTα℃との比較で、ΔTc1℃<ΔTα℃であったときには、前記被冷却物7に前記品温センサ6は正しく挿入されていないと判定し、前記制御器22は、異常を知らせる(S38)とともに前記処理槽7内を復圧手段4により復圧させ(S39)、前記真空冷却装置1は前記被冷却物7の冷却を行わないようにする。前記異常の報知は、前記操作画面への注意表示で行われるほか、警報ランプの点滅・点灯、処理画面の色の反転、警報ブザーの鳴動などの方法によってもよいし、またはこれらの組み合わせで行ってもよい。
【0050】
以上の判定制御を繰り返すことにより、前記品温センサ6は前記被冷却物7に確実に挿入されて、前記被冷却物7を選択された冷却プログラムに従って正しく冷却処理することができる。
【0051】
なお、前記品温センサ6が前記被冷却物7の温度を正しく検出しない場合として、前記品温センサ6の断線がある。前記品温センサ6の断線は、前記品温センサ6の検出温度が測定範囲外となり、前記品温センサ6が正常に判定し得る温度を越えた検出温度となるため、前記品温センサ6の挿し忘れ判定とは検出温度が明確に異なる。こうして前記品温センサ6の断線を判定した前記制御器22は、制御プログラムを予め前記品温センサ6が断線した場合を想定して組まれた冷却プログラムに変更して、前記被冷却物7の冷却を継続することができるが、運転開始前に前記品温センサ6の断線を判定した場合には冷却運転を開始させないようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施例を示す真空冷却装置の構成の概略である。
【図2】この発明の実施例1における品温センサの挿し忘れ判定を説明するフローである。
【図3】この発明の実施例2における品温センサの挿し忘れ判定を説明するフローである。
【図4】この発明の実施例3における品温センサの挿し忘れ判定を説明するフローである。
【符号の説明】
【0053】
1 真空冷却装置
2 処理槽
3 減圧手段
4 復圧手段
5 制御手段
6 品温センサ
7 被冷却物
22 制御器
S1 冷却開始スイッチONの判定
S2 品温センサの挿し忘れ判定
S3 品温センサによる品温検出
S4 温度による品温センサ挿し忘れ判定
S5 異常報知
S21 冷却開始スイッチONの判定
S22 品温センサの挿し忘れ判定
S24 品温センサによる品温検出
S26 温度による品温センサ挿し忘れ判定
S28 異常報知
S31 冷却開始スイッチONの判定
S32 品温センサの挿し忘れ判定
S35 品温センサによる品温変化計算
S36 温度による品温センサ挿し忘れ判定
S38 異常報知


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物に品温センサを挿し込み、少なくとも品温センサの検出温度に基づいて冷却手段を制御して被冷却物の冷却を行う冷却方法であって、冷却開始前または冷却開始後に品温センサの検出温度を判定する第一ステップと、この判定に基づき、品温センサの挿入忘れを判定する第ニステップと、品温センサの挿し忘れを判定したとき被冷却物の冷却を開始させないか、冷却を停止する第三のステップを行うことを特徴とする冷却方法。
【請求項2】
被冷却物を収容する処理槽と、被冷却物を冷却する冷却手段と、被冷却物に挿入して被冷却物の温度を検出する品温センサと、少なくとも品温センサの検出温度に基づいて冷却手段を制御して被冷却物の冷却を行う制御手段とを備える冷却装置であって、制御手段は、品温センサの挿し忘れを判定し、挿し忘れを判定したとき被冷却物の冷却を行わないようにしたことを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−144981(P2010−144981A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321541(P2008−321541)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】