説明

冷暖房システム

【課題】室内スペースの有効利用を図ることができ、室内空間を好適に冷暖房可能な冷暖房システムを提供する。
【解決手段】冷暖房システム1は、多数の管部材21を備えた冷暖房パネル2と、流体供給装置3とを備えている。多数の管部材21は、それぞれ室内空間における床面4から天井面5までに亘って鉛直方向に略沿って延び、所定間隔をおいて並列して設けられて、室内空間を仕切る仕切壁を形成し、かつ、仕切壁に対する所定方向からは仕切壁の反対側を視認できない状態に設けられている。流体供給装置3は、配管31と、ポンプ32,33と、燃料ボイラ36と、ヒートポンプ37とを備えており、外気温度がヒートポンプ37が十分に能力を発揮する所定温度未満の場合は、燃料ボイラ36にて閉経路内の流体を加熱し、外気温度が所定温度以上の場合は、ヒートポンプ37にて閉経路内の流体を加熱あるいは冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷暖房パネルと、この冷暖房パネルの内部に高温あるいは低温の流体を流通させる流体供給装置とを備えた冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば病院や学校、一般家屋の室内に設置される暖房装置として、温水管路内に温水を流通させて室内空間を暖めるパネルヒータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のパネルヒータは、熱源機から送出される温水を通す温水管路と、この温水管路内の温水の熱を放熱する放熱部を形成する第1の熱伝導性パネルおよび第2の熱伝導性パネルとを備えている。温水管路は、第1の熱伝導性パネルのパネル面に沿って折り返し蛇行形成された温水管路嵌合溝に嵌合して、第1の熱伝導性パネルのパネル面に沿って蛇行配置されている。また、第2の熱伝導性パネルは、第1の熱伝導性パネルの温水管路配設面側に配設され、第1の熱伝導性パネルとで温水管路1を挟持する。かかるパネルヒータは、部屋の壁や床にねじ等によって固定可能に構成されている。
このようなパネルヒータによれば、トイレや脱衣所などの比較的狭い空間にも設置することができ、パネルヒータを容易に組み立てることが可能となっている。
【0004】
このような特許文献1に記載のパネルヒータのように、一般的なパネルヒータは、熱水管内に温水を流通させて、暖房装置として使用することのみを目的としている。このため、かかるパネルヒータは冬場にしか利用価値がなく、夏場においてはパネルヒータを室内に設置しておく意味がないばかりか、単に室内スペースを狭小にするだけである。
【0005】
ここにおいて、夏場において、熱水管内に冷水を流通させる構成とすれば、放熱部により室内の熱を吸収させることができ、上記のようなパネルヒータを冷房としても利用することができる。これにて、上述した問題を解決できるものと考えられる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−77070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のパネルヒータでは、省スペース化を図っているものの、パネルヒータを室内の壁や床に取り付ける構成であるため、パネルヒータの設置スペース分だけ室内空間が狭くなってしまう。
また、放熱部を第1,第2の熱伝導性パネルの平面部にて形成する構成であるため、放熱面積が当該平面部の面積に限定されてしまう。このため、十分に広い放熱面積が得られず、高い暖房効率が得られないおそれがある。これと同様に、仮に特許文献1に記載の熱水管内に冷水を流通させて当該パネルヒータを冷房として使用した場合であっても、十分に広い吸熱面積が得られず高い冷房効率が得られない。
さらに、省エネルギーおよび地球温暖化対策の観点からも、低い消費エネルギーおよび低いCO排出量で、室内空間を一年中快適な温度に調整可能な技術も求められている。
【0008】
本発明は、上述したような問題点に鑑みて、室内スペースの有効利用を図ることができ、室内空間を好適に冷暖房可能な冷暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、図1を参照して説明すると、多数の管部材21を備えて構成された冷暖房パネル2と、この冷暖房パネル2の内部に高温あるいは低温の流体を流通させる流体供給装置3とを備えた冷暖房システム1であって、多数の管部材21は、それぞれ室内空間における床面4から天井面5までに亘って鉛直方向に略沿って延び、所定間隔をおいて並列して設けられて、室内空間を仕切る仕切壁を形成し、かつ、仕切壁に対する所定方向からは仕切壁の反対側を視認できない状態に設けられており、流体供給装置3は、一端側が多数の管部材21のそれぞれの上端に接続され、他端側が多数の管部材21のそれぞれの下端に接続されて、多数の管部材21とで閉経路(317,318)を形成する配管31と、閉経路内の流体を循環させるポンプ32,33と、閉経路内の流体を加熱する燃料ボイラ36と、閉経路内の流体を加熱あるいは冷却するヒートポンプ37と、を備えており、外気温度がヒートポンプ37が十分に能力を発揮する所定温度未満の場合は、燃料ボイラ36にて閉経路内の流体を加熱し、外気温度が所定温度以上の場合は、ヒートポンプ37にて閉経路内の流体を加熱あるいは冷却することを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明において、管部材21の内部を流通させる流体としては、コストおよび管理の観点から水を使用することが好ましいが、例えば二酸化炭素ガスや高熱容量のオイル等を使用してもよい。
また、管部材21に使用する材料としては、例えば鋼やアルミニウム、銅等の金属材料を使用できるが、室内空間の熱を管部材21内の流体に吸収させることが可能で、かつ、管部材21内の流体の熱を室内空間に放出させることが可能な熱伝導性材料であればいずれでもよい。
そして、仕切壁には、1つの空間を2つの空間に完全に仕切る壁と、1つの空間の一部分を2つの部分に仕切る壁との双方が含まれるものである。
燃料ボイラ36としては、例えば灯油や都市ガス、LPガス等を燃料とするものが挙げられる。
また、ヒートポンプ37には、例えば、圧縮器および膨張弁を備え、冷媒として代替フロンやCOガス等を使用する一般的なヒートポンプを採用することができる。
【0011】
このような冷暖房システム1によれば、多数の管部材21の内部に高温あるいは低温の流体を流通させることで、夏場は冷房として利用でき、冬場は暖房として利用できる。すなわち、冬場のうち外気温度が例えば0℃未満となる厳寒期には、燃料ボイラ36にて流体を加熱することで、室内空間を十分に暖めることができる。そして、外気温度が例えば0℃以上となる比較的温暖な冬場には、ヒートポンプ37にて流体を加熱することで、エネルギー消費を抑えつつ、室内空間を十分に暖めることができる。また、夏場にはヒートポンプ37の運転を切り替えて流体を冷却すれば、室内空間を十分に冷やすことができる。したがって、低い消費エネルギーおよび低いCO排出量で、室内空間を一年中快適な温度に調整できる。
また、多数の管部材21自体を仕切壁として利用するので、パネル設置用の無駄なスペースを必要とせず、室内スペースの有効利用を図ることができる。この際、多数の管部材21を、仕切壁に対する所定方向からは仕切壁の反対側を視認できない状態に設けているので、各管部材21間に隙間を設けていても、目隠し効果という仕切壁に必要な機能を持たせることができる。
そして、多数の管部材21の外周面は、外気中に露出しており、放熱面あるいは吸熱面として機能する。このような管部材21を所定間隔をおいて多数並設することで、大きな放熱・吸熱面積が得られ、これにより高い冷暖房効率が得られる。さらに、それぞれの管部材21を床面4から天井面5までに亘って設けているので、放熱・吸熱面積が更に拡大すると共に、室内空間の上下方の空気をも好適に冷却・加熱できる。しかも、各管部材21間は通気可能であるので室内の空気の流動性も良く、室内全体の温度を均一に調整できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、図3を参照して説明すると、請求項1に記載の冷暖房システム1において、多数の管部材21は、それぞれ軸直交方向における断面形状が長方形状とされて、当該長方形状の長辺が前記仕切壁の厚さ方向に略沿う状態に設置されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、仕切壁の厚さ方向からは仕切壁の反対側を視認できるが、当該厚さ方向に対して斜め方向からは仕切壁の反対側を視認できない、という目隠し効果が得られる。このため、例えば本発明の冷暖房パネル2をトイレに設置した場合に、トイレ室内を暗くすることなく目隠し効果が得られるため好適である。また、各管部材21の断面形状を長方形とすることで、より広い放熱・吸熱面積が得られると共に、各管部材21の製造が容易となるのでコストの低減を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、図3を参照して説明すると、請求項1または請求項2に記載の冷暖房システム1において、多数の管部材21は、前記仕切壁の幅方向に略沿って並列する第1の管部材群211と、この第1の管部材群211に隣接して前記幅方向に略沿って並列する第2の管部材群212とを含んで構成されており、第1の管部材群211における管部材21と、第2の管部材群212における管部材21とは、前記仕切壁の厚さ方向から見て互いに重なり合う位置関係で配置されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、第1の管部材群211と第2の管部材群212とを隣接して設けることで、冷暖房効率をさらに向上することができる。また、第1,第2の管部材群211,212におけるそれぞれの管部材21を仕切壁の厚さ方向から見て互いに重なり合う状態に配設しているので、上述した目隠し効果をさらに確実に得ることができると共に、大きな採光量が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る冷暖房システムの概略構成を示した模式図である。
【0017】
〔冷暖房システムの構成〕
図1において、1は冷暖房システムであり、この冷暖房システム1は、冷暖房パネル2と、流体供給装置3とを備えて構成されている。
冷暖房パネル2は、室内空間を冷房・暖房する冷暖房装置として機能すると共に、室内空間を仕切る仕切壁としても機能する。この冷暖房パネル2の具体的な構成については後述する。
【0018】
流体供給装置3は、冷暖房パネル2の内部に高温あるいは低温の水を流通させる装置であり、図1に示すように、配管31と、ポンプ32,33と、三方弁34,35と、燃料ボイラ36と、ヒートポンプ37とを備えて構成されている。
【0019】
配管31は、多数の管部材21のそれぞれの上端に接続された上側配管311と、多数の管部材21のそれぞれの下端に接続された下側配管312とを備えている。
上側配管311の基端部は三方弁34に接続されており、この三方弁34は接続管313,314を介して燃料ボイラ36およびヒートポンプ37に接続されている。
一方、下側配管312の基端部は三方弁35に接続されており、この三方弁35は接続管315,316を介して燃料ボイラ36およびヒートポンプ37に接続されている。
このような配管31と多数の管部材21とで、燃料ボイラ36を経由する第1の閉経路317と、ヒートポンプ37を経由する第2の閉経路318とが形成されている。
【0020】
ポンプ32は、接続管313上に設けられており、燃料ボイラ36を使用する場合に駆動する。
ポンプ33は、接続管316上に設けられており、ヒートポンプ37を使用する場合に駆動する。
燃料ボイラ36は、灯油等の燃料を燃焼させることにより配管31内の水を加熱する装置である。この燃料ボイラ36は、外気温度がヒートポンプ37が十分に能力を発揮する所定温度未満、すなわち例えば0℃未満の場合に駆動する。
ヒートポンプ37は、圧縮器、膨張弁および熱交換器を備えており、圧縮器にて冷媒を圧縮した際の発熱現象、および膨張弁にて冷媒を膨張させた際の吸熱現象を利用して、熱交換器を介して配管31内の水を加熱・冷却する装置である。このようなヒートポンプ37は、外気温度がヒートポンプ37が十分に能力を発揮する所定温度以上である場合に駆動する。すなわち、例えば外気温度が0〜25℃の場合には配管31内の水を加熱し、外気温度が25℃を超える場合には配管31内の水を冷却するように駆動する。なお、ヒートポンプ37中の冷媒には代替フロンやCOガス等を使用することができる。また、ヒートポンプ37が十分に能力を発揮する所定温度は、0℃に限定されるものではなく、冷暖房パネル2の大きさや設置場所、ヒートポンプ37の能力等に応じて適宜設定されるものである。
【0021】
〔冷暖房パネルの構成〕
次に、冷暖房パネルの具体的な構成について、図面に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る冷暖房パネルを示す斜視図である。図3は、図1のIII−III線に沿った平断面図である。
冷暖房パネル2は、図2に示すように、多数の管部材21と、これら管部材21の上下端部をそれぞれ支持する支持部材22と、これら支持部材22を室内空間における床面4および天井面5にそれぞれ固定する固定部材23とを備えて構成されている。図1に示すように、管部材21の下端部を支持する支持部材22の下方には、冷房時に冷暖房パネル2の表面に結露する水を受けるとともに外部に排出するドレンパン50が支持部材22の長手方向に沿って設けられている。なお、図2では、ドレンパン50の図示を省略した。
【0022】
多数の管部材21は、それぞれ、例えばアルミニウムなどの熱伝導性材料にて形成されており、軸直交方向における断面形状が長方形状とされ、その両端部は閉塞されている。これら管部材21は、図2に示すように、床面4から天井面5までに亘って鉛直方向に略沿って延びており、所定間隔をおいて並列して設けられている。これにて、室内空間を仕切る仕切壁が形成される。
このような多数の管部材21の配置について、図3に基づいてさらに詳細に説明する。図3に示すように、多数の管部材21は、断面形状の長辺が仕切壁の厚さ方向に略沿う状態に設けられている。そして、仕切壁の幅方向に略沿って並列する第1の管部材群211と、この第1の管部材群211に隣接して当該幅方向に略沿って並列する第2の管部材群212とに大別される。さらに、第1の管部材群211における管部材21と、第2の管部材群212における管部材21とは、仕切壁の厚さ方向(図中矢印A)から見て互いに重なり合う位置関係で配置されている。これにより、当該厚さ方向(図中矢印A)からは仕切壁の反対側の光景を視認できるが、当該厚さ方向に対して斜め方向(図中矢印B)からは仕切壁の反対側の光景を視認できない、という目隠し効果が得られるようになっている。
また、図3に示すように、第1の管部材群211と第2の管部材群212との間のスペースには下側配管312が設けられており、多数の管部材21の側面部と下側配管312とが接続管312Aを介して接続されている。なお、上側配管311についても同様にして多数の管部材21に接続されている。これにより、流体供給装置3からの高温あるいは低温の水が各管部材21の内部を流通可能になっている。
【0023】
次に、このような冷暖房パネル2の設置例について図4に基づいて説明する。図4は、一般家屋の2階部分の平断面図である。冷暖房パネル2は、例えば図4に示す家屋6において、リビングルーム61と階段スペース62とを仕切る位置や、トイレ室63と洗面スペース64とを仕切る位置に設けられる。
【0024】
また、図4に示す冷暖房パネル2Aのように、冷暖房パネルを移動可能な状態で設けてもよい。すなわち、この冷暖房パネル2Aは、上述した冷暖房パネル2(図2参照)と略同様の構成であるが、支持部材22の下側に固定部材23に代えてキャスタ等の移動部材が設けられている。そして、冷暖房パネル2Aの幅方向一端側は、リビングルーム61の壁面に回動可能な状態で固定されている。このような冷暖房パネル2Aを、リビングルーム61と食堂65とを仕切る位置に設置しておけば食卓周りの温度を快適にすることができ、リビングルーム61の壁面側に回動させればリビングルーム61を広く使用することができる。なお、床面および天井面には、冷暖房パネルの回動を安定化させるために円弧状のガイドレールを設けてもよい。
【0025】
〔冷暖房システムの動作〕
まず、夏場における冷暖房システム1の動作について図5に基づいて説明する。
外気温度が例えば25℃以上となる夏場には、流体供給装置3は、図5に示すようにして、冷暖房パネル2,2A(図4参照)内部に冷水を流通させる。
すなわち、三方弁34を上側配管311と接続管314とを接続する状態に開き、三方弁35を下側配管312と接続管316とを接続する状態に開く。つまり、ヒートポンプ37を経由する第2の閉経路318を形成する。そして、ヒートポンプ37により配管31内の水を冷却させると共に、図中矢印で示す流れが形成されるようにポンプ33を駆動する。これにより、冷水は多数の管部材21内部を上から下へ向けて流通し、室内空間が冷却される。
【0026】
次に、冬場における冷暖房システム1の動作について図6および図7に基づいて説明する。
外気温度が例えば0℃以上となる比較的温暖な冬場には、流体供給装置3は、図6に示すようにして、冷暖房パネル2,2A(図4参照)内部に温水を流通させる。
すなわち、三方弁34を上側配管311と接続管314とを接続する状態に開き、三方弁35を下側配管312と接続管316とを接続する状態に開く。つまり、ヒートポンプ37を経由する第2の閉経路318を形成する。そして、ヒートポンプ37により配管31内の水を加熱させると共に、図中矢印で示す流れが形成されるようにポンプ33を駆動する。これにより、温水は多数の管部材21内部を下から上へ向けて流通し、室内空間が暖められる。
【0027】
一方、冬場のうち外気温度が例えば0℃未満となる厳寒期には、流体供給装置3は、図7に示すようにして、冷暖房パネル2,2A(図4参照)内部に熱水を流通させる。
すなわち、三方弁34を上側配管311と接続管313とを接続する状態に開き、三方弁35を下側配管312と接続管315とを接続する状態に開く。つまり、燃料ボイラ36を経由する第1の閉経路317を形成する。そして、燃料ボイラ36により配管31内の水を加熱させると共に、図中矢印で示す流れが形成されるようにポンプ32を駆動する。これにより、熱水は多数の管部材21内部を下から上へ向けて流通し、室内空間がさらに高い温度で暖められるようになる。
【0028】
上述した構成の本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
本実施形態に係る冷暖房パネル2,2Aは、流体供給装置3からの高温・低温の水を内部に流通可能とされた多数の管部材21を備えて構成されている。多数の管部材21は、それぞれ室内空間における床面4から天井面5までに亘って鉛直方向に略沿って延び、所定間隔をおいて並列して設けられて、室内空間を仕切る仕切壁を形成する。また、多数の管部材21は、仕切壁に対する所定方向からは仕切壁の反対側を視認できない状態に設置されている。
このような冷暖房パネル2,2Aによれば、多数の管部材21の内部に高温あるいは低温の水を流通させることで、夏場は冷房として利用でき、冬場は暖房として利用できる、すなわち通年利用が可能である。そして、多数の管部材21自体を仕切壁として利用するので、室内スペースの有効利用を図ることができる。
そして、多数の管部材21を所定間隔をおいて並設することで、大きな放熱・吸熱面積が得られ、これにより高い冷暖房効率が得られる。さらに、それぞれの管部材21を床面4から天井面5までに亘って設けているので、放熱・吸熱面積が更に拡大すると共に、室内空間の上下方の空気をも好適に冷却・加熱できる。しかも、各管部材21間は空気が通過可能であるので、室内の空気の循環が良く、室内全体の温度を均一に調整できる。
さらに、多数の管部材21を、仕切壁に対する所定方向からは仕切壁の反対側を視認できない状態に設置しているので、各管部材21間に空隙を設けていても、目隠し効果という仕切壁に必要な機能を持たせることができる。
【0029】
多数の管部材21は、それぞれ軸直交方向における断面形状が長方形状とされて、当該長方形状の長辺が仕切壁の厚さ方向に略沿う状態に設置されている。
これにより、上述の目隠し効果が得られる。例えば図4に示したように、トイレ室63と洗面スペース64とを仕切る位置に設置した冷暖房パネル2については、トイレ室63内を暗くすることなく、洗面スペース64からはトイレ室63内が見られないという目隠し効果が得られる。そして、冷暖房パネル2内は通気可能であるため、例えばトイレ室63内の空気を洗面スペース64に設置された換気扇から排出することができる等の効果が得られる。また、各管部材21の断面形状を長方形とすることで、より広い放熱・吸熱面積が得られると共に、各管部材21の製造が容易となるのでコストの低減を図ることができる。
【0030】
多数の管部材21は、仕切壁の幅方向に略沿って並列する第1の管部材群211と、この第1の管部材群211に隣接して幅方向に略沿って並列する第2の管部材群212とを含んで構成されている。第1の管部材群211における管部材21と、第2の管部材群212における管部材21とは、仕切壁の厚さ方向から見て互いに重なり合う位置関係で配置されている。
これによれば、第1の管部材群211と第2の管部材群212とを隣接して設けることで、冷暖房効率をさらに向上することができる。また、第1,第2の管部材群211,212におけるそれぞれの管部材21を仕切壁の厚さ方向から見て互いに重なり合う状態に配設しているので、上述した目隠し効果をさらに確実に得ることができる共に、大きな採光量が得られる。
【0031】
冷暖房パネル2Aにおいて、多数の管部材21の下端側には移動部材が設けられている。
これにより、冷暖房パネル2Aを目的に応じて最適位置に移動することが可能となる。例えば、リビングルーム61において、冷暖房パネル2Aを食卓に近い位置に移動させておけば食卓周りを快適な温度に調整でき、冷暖房パネル2Aを部屋の隅部に移動しておけばリビングルーム61を広く使用することができる。
【0032】
冷暖房システム1は、冷暖房パネル2,2Aと、流体供給装置3とを備えて構成されている。流体供給装置3は、配管31と、ポンプ32,33と、燃料ボイラ36と、ヒートポンプ37とを備えている。そして、外気温度がヒートポンプ37が十分に能力を発揮する所定温度未満の場合は、燃料ボイラ36にて閉経路内の流体を加熱し、外気温度が所定温度以上の場合は、ヒートポンプ37にて閉経路内の流体を加熱あるいは冷却する。
この冷暖房システム1によれば、冬場のうち外気温度が例えば0℃未満となる厳寒期には、燃料ボイラ36にて水を加熱することで、室内空間を十分に暖めることができる。そして、外気温度が例えば0℃以上となる比較的温暖な冬場には、ヒートポンプ37にて水を加熱することで、エネルギー消費を抑えつつ、室内空間を十分に暖めることができる。また、夏場にはヒートポンプ37の運転を切り替えて水を冷却すれば、室内空間を十分に冷やすことができる。したがって、低い消費エネルギーおよび低いCO排出量で、室内空間を一年中快適な温度に調整できる。
【0033】
燃料ボイラ36あるいはヒートポンプ37により水を加熱した場合は、管部材21の内部を水が下から上へ向けて流通する状態にポンプ32,33を駆動させる。ヒートポンプ37にて水を冷却した場合は、管部材21の内部を水が上から下へ向けて流通する状態にポンプ33を駆動させる。
これによれば、室内空間の下方が特に冷えやすい冬場には、高温の水を管部材21の内部にて下から上へ向けて流通させることで、室内空間の下方から空間全体を好適に暖めることができる。また、室内空間の上方が特に暑くなりやすい夏場には、低温の流体を管部材21の内部にて上から下へ向けて流通させることで、室内空間の上方から空間全体を好適に冷やすことができる。したがって、室内温度を好適に調整することができる。
【0034】
配管31と多数の管部材21とで、燃料ボイラ36を経由する第1の閉経路317と、ヒートポンプ37を経由する第2の閉経路318とを形成している。
これにより、燃料ボイラ36からヒートポンプ37へと、あるいはヒートポンプ37から燃料ボイラ36へと運転を切り替えた際、切替直後に、燃料ボイラ36からの熱水あるいはヒートポンプ37からの温水が冷暖房パネル2内を流通するようになる。このため、例えば、外気温度が急激に低下した場合でも、ヒートポンプ37から燃料ボイラ36へと運転を切り替えれば、室内温度を速やかに快適な温度に調整することができる。
【0035】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0036】
前記実施形態では、第1の閉経路317上にポンプ32および燃料ボイラ36を設け、第2の閉経路318上にポンプ33およびヒートポンプ37を備える構成を例示したが、これに限らない。すなわち、例えば、1つの閉経路上に1つのポンプと、燃料ボイラと、ヒートポンプとを設ける構成としてもよい。このような構成の場合、ポンプの設置数を削減でき、三方弁34,35も不要でかつ配管の構成も簡易化されるので、冷暖房システムの製造コストを低減できる。
【0037】
前記実施形態では、多数の管部材21の軸直交方向における断面形状が、長方形であるとしたが、これに限らず、例えば三角形や正方形、楕円形など様々な形状を採用することができる。この場合、採用した断面形状に応じて、目隠し効果が得られるように多数の管部材の配置を適宜調整する必要がある。なお、上述した実施形態のように、当該断面形状が長方形であることが、目隠し効果、冷暖房効率および製造コストの点で優れているため好ましい。
【0038】
前記実施形態では、多数の管部材21をそれぞれ独立した管部材とし、各管部材21に上側配管311および下側配管312を接続する構成としたが、これに限定されない。例えば、1本の長い管部材を蛇行形成して、多数の直線状部分と曲線状の折返部とを設け、当該管部材の両端にそれぞれ上側配管311および下側配管312を接続する構成としてもよい。このような場合でも、当該管部材における多数の直線状部分が、本発明における多数の管部材として機能させることができるので、上記した実施形態と略同様の効果を奏することができる。
【0039】
前記実施形態では、仕切壁の厚さ方向(図3中A方向)からは仕切壁の反対側を視認できるが、当該厚さ方向に対して斜め方向(図3中B方向)からは仕切壁の反対側を視認できないという目隠し効果が得られるように、多数の管部材21の断面形状および配置を設定したが、本発明はこれに限られない。すなわち、目隠し効果として、仕切壁の厚さ方向からは仕切壁の反対側を視認できず、当該厚さ方向に対して斜め方向からは仕切壁の反対側を視認できる状態に、多数の管部材21の断面形状および配置を設定してもよい。つまり、冷暖房パネルを設置する場所や目的に応じて、目隠ししたい方向が決まるので、これに合わせて多数の管部材21の断面形状および配置を設定することが好ましい。
【0040】
前記実施形態では、多数の管部材21は第1の管部材群211と第2の管部材群212とに分けられるとしたが、これに限らず、図8(A)に示す冷暖房パネル2Bのように多数の管部材21Bを1列に並べた構成でもよい。この場合、目隠し効果の観点から、図8(A)に示すように管部材21Bの断面形状の長辺は長く形成することが好ましい。
【0041】
前記実施形態では、第1の管部材群211における管部材21と、第2の管部材群212における管部材21とは、仕切壁の厚さ方向から見て互いに重なり合う位置関係で配置されているとしたが、これに限らない。すなわち、例えば、図8(B)に示す冷暖房パネル2Cのように、第1の管部材群213における管部材21と、第2の管部材群214における管部材21とを互いにオフセットする位置関係で配置する構成としてもよい。このような構成によれば、前記実施形態と同様に冷暖房効率をさらに向上することができると共に、上述した目隠し効果がより確実に得られ、また十分な採光量も得られる。
【0042】
前記実施形態では、多数の管部材21は、2つの管部材群211,212に分けられるとしたが、これに限らず、図8(C)に示す冷暖房パネル2Dのように、3つの管部材群215〜217に分けられる構成としてもよい。この場合、さらに放熱・冷却面積が増えるので、冷却・放熱効率を向上できる。また、図8(C)のように、第2の管部材群216における管部材21Dと、第1,3の管部材群215,217における管部材21Dとを互いにオフセットする位置関係で配置すれば、上述した目隠し効果がより確実に得られ、また十分な採光量も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷暖房システムの概略構成を示した模式図である。
【図2】前記実施形態における冷暖房パネルを示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った平断面図である。
【図4】前記実施形態における冷暖房パネルを一般家屋内に設置した例を示す平面図である。
【図5】前記実施形態に係る冷暖房システムを夏場に使用した場合における動作を説明するための模式図である。
【図6】前記実施形態に係る冷暖房システムを比較的温暖な冬場に使用した場合における動作を説明するための模式図である。
【図7】前記実施形態に係る冷暖房システムを厳寒期に使用した場合における動作を説明するための模式図である。
【図8】前記実施形態における冷暖房パネルの3つの変形例を示した平断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…冷暖房システム
2,2A〜2D…冷暖房パネル
21,21B,21D…管部材
211,213,215…第1の管部材群
212,214,216…第2の管部材群
217…第1あるいは第2の管部材群としての第3の管部材群
3…流体供給装置
31…配管
317…第1の閉経路
318…第2の閉経路
32,33…ポンプ
36…燃料ボイラ
37…ヒートポンプ
4…床面
5…天井面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の管部材を備えて構成された冷暖房パネルと、この冷暖房パネルの内部に高温あるいは低温の流体を流通させる流体供給装置とを備えた冷暖房システムであって、
前記多数の管部材は、それぞれ室内空間における床面から天井面までに亘って鉛直方向に略沿って延び、所定間隔をおいて並列して設けられて、前記室内空間を仕切る仕切壁を形成し、かつ、前記仕切壁に対する所定方向からは前記仕切壁の反対側を視認できない状態に設けられており、
前記流体供給装置は、
一端側が前記多数の管部材のそれぞれの上端に接続され、他端側が前記多数の管部材のそれぞれの下端に接続されて、前記多数の管部材とで閉経路を形成する配管と、
前記閉経路内の流体を循環させるポンプと、
前記閉経路内の流体を加熱する燃料ボイラと、
前記閉経路内の流体を加熱あるいは冷却するヒートポンプと、を備えており、
外気温度が前記ヒートポンプが十分に能力を発揮する所定温度未満の場合は、前記燃料ボイラにて前記閉経路内の流体を加熱し、外気温度が前記所定温度以上の場合は、前記ヒートポンプにて前記閉経路内の流体を加熱あるいは冷却する
ことを特徴とする冷暖房システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷暖房システムにおいて、
前記多数の管部材は、それぞれ軸直交方向における断面形状が長方形状とされて、当該長方形状の長辺が前記仕切壁の厚さ方向に略沿う状態に設置されている
ことを特徴とする冷暖房システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷暖房システムにおいて、
前記多数の管部材は、前記仕切壁の幅方向に略沿って並列する第1の管部材群と、この第1の管部材群に隣接して前記幅方向に略沿って並列する第2の管部材群とを含んで構成されており、
前記第1の管部材群における管部材と、前記第2の管部材群における管部材とは、前記仕切壁の厚さ方向から見て互いに重なり合う位置関係で配置されている
ことを特徴とする冷暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−121907(P2008−121907A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302679(P2006−302679)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【出願人】(505136402)株式会社三葉製作所 (9)
【Fターム(参考)】