説明

冷蔵庫

【課題】基本的にメンテナンスフリーで、且つ簡易な構成で冷蔵庫内を低酸素状態に保ち、収納食品の鮮度を長期に亙って保持することができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷凍あるいは冷蔵貯蔵空間の密閉された空間内部に少なくともオゾン発生装置(15)とオゾン分解手段(16)からなる脱臭装置(13)を設けるとともに、この脱臭装置内に活性炭などの炭素系物質(23)を配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に係り、特に脱臭装置とともに食品を長期保存するための酸素濃度低減手段を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫は、環境への配慮や経済性に対する関心の高まりを背景に、食品の保存性や省エネルギー化が重視される傾向にある。一般に食品は、冷蔵庫内で保存していても、保存期間の経過などによって無駄に捨てられることが多く見受けられるものであり、食材の廃棄という無駄をなくすとともに常に鮮度の高い食材を得るため、食品を保存する際に素材の持ち味や栄養分、鮮度を長期間に亙って保つ機能が求められている。
【0003】
食品の劣化要因としては、第一に乾燥、酸化があげられる。乾燥に対しては、温度変動が少なく湿度が高い条件下での保存が有効であり、冷蔵庫における各温度帯専用に設けた複数の冷却器のそれぞれの蒸発温度を室内空気温度と近似させることで、冷却器への霜の付着を極力少なくし、貯蔵室内を高湿に保って食品の乾燥を防ぐ方式が広く採用されている。
【0004】
さらに、野菜に関しては、乾燥防止とともに、青果物の熟成にともなって発生する老化ホルモンであるエチレンガスを除去することにより鮮度保持が可能であるが、空気中の酸素による呼吸および蒸散作用での鮮度の劣化は栄養分含有量の低下のみでなく変色等外観面での品質が低下する問題が発生するものであり、本発明では、冷蔵庫内部の酸素濃度を調整する方法に着目する。
【0005】
空気中には約20%の酸素が存在し、この酸素は魚や肉の油脂分の酸化をはじめ食品を劣化させる要因のひとつになっていることから、食品を酸素分圧の小さい雰囲気で保存すれば、微生物、酵素の活性抑制、油脂などの酸化抑制の効果が得られ、鮮度保存性を向上することができる。また、青果物については、一般に低酸素、高二酸化炭素の雰囲気で呼吸が抑制され、鮮度の保持効果があると言われている。
【0006】
一般家庭においては、ファスナー付きの袋に真空パックしたり、密閉容器に収納して減圧するなど市販されている簡易な器具で保存性を向上する方法が採用されており、一方、業務用の保存庫では、真空ポンプで容器内部を減圧することで酸素分圧を下げる方法、あるいは、酸素分離膜、電解膜を用いた方法があり、また、本発明の出願人による出願である特許文献1に記載されているような貯蔵室内を減圧することによって減圧大気中の酸素濃度を低減させる方式がある。
【特許文献1】特開2004−20113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構成の場合、減圧機構として真空ポンプ等を必要とすることから、設備が複雑になって設置スペースが大きくなるとともに、他の方法についても、装置が大掛りになっってコストが高く、頻繁なメンテナンスが必要になる煩わしさがあった。
【0008】
本発明は上記点を考慮してなされたものであり、基本的にメンテナンスフリーで、且つ簡易な構成で冷蔵庫内を低酸素状態に保ち、収納食品の鮮度を長期に亙って保持することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による冷蔵庫は、冷凍あるいは冷蔵貯蔵空間の密閉された空間内部に少なくともオゾン発生装置とオゾン分解手段からなる脱臭装置を設けるとともに、この脱臭装置内に活性炭などの炭素系物質を配設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、収納した貯蔵品を、冷却するとともに貯蔵空間の酸素を消費して低酸素、高二酸化炭素濃度の雰囲気で保存することができ、野菜など生鮮食品の呼吸作用の抑制、油脂等の酸化抑制、酵素活性の抑制、および好気性微生物の活動抑制により、貯蔵品の鮮度を保持して長期保存することができる。さらに、活性炭などの炭素系物質を配設することにより、貯蔵室内にオゾンと反応する有機物が少ない場合でも、オゾンと炭素の反応により酸素を消費して高二酸化炭素の雰囲気にすることができ、関連構成が簡素化できてスペース効率を向上し、安価で、且つメンテナンスフリーにより使い勝手を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1は本発明に係る冷蔵庫の縦断面図であり、断熱箱体からなる冷蔵庫本体(1)内部の貯蔵空間の最上部には冷蔵室(2)を配置し、その下方には冷蔵室よりやや高温で高湿度に保持された野菜室(3)を仕切り板を介して設けている。野菜室(3)の下方には断熱仕切壁を介して、温度切替室(4)と図示しない製氷貯氷室とを左右に区分して併置しており、最下部には上下2段に区分した冷凍室(5)を独立して配置している。
【0012】
各貯蔵室は、その前面開口部に各々専用の開閉扉を設けて閉塞するとともに、冷蔵空間および冷凍空間のそれぞれの背面に設置した冷蔵用冷却器(6)と冷凍用冷却器(7)および各冷却器の近傍に設けたファン(8)(9)とダクトによって冷気を循環させ、各貯蔵室毎に設定した温度に冷却制御される。
【0013】
冷蔵庫本体(1)の最下部に配置した冷凍空間の背面下部には、機械室空間が形成されており、前記冷蔵用および冷凍用冷却器(6)(7)へ冷媒を供給する圧縮機(10)を設置している。
【0014】
しかして、前記冷蔵室(2)の下方に設けた低温ケース(11)の底壁外面における野菜室(3)へ連通する冷気流路(12)内には、脱臭装置(13)を配設している。この脱臭装置(13)は、概略構成を図2に示すように、光触媒モジュール(15)とオゾン分解触媒(16)とを備え、通路(12)内を流通する冷気に含まれる臭い分子や有機物質を吸着し脱臭するものである。
【0015】
光触媒モジュール(15)は、アルミナやシリカ等の多孔質セラミックからなる基体の表面に、酸化チタンに代表される光触媒粒子を固定した光触媒フィルタ(17)を2枚隣接し、この光触媒フィルタ間にはステンレス等の薄板をエッチングして網目状に形成した放電電極(18)を立設するとともに、前記2枚の光触媒フィルタ(17)(17)の風上と風下側には前記放電電極と同様に形成した対極(19)(19)をそれぞれ配置することで構成されている。
【0016】
(20)は電源回路であり、高電圧発生トランス(21)により前記放電電極(18)と各対極(19)との間に正のパルス状直流高電圧を印加するものであって、この構成により、放電電極(18)と対極(19)は紫外線発生用の放電手段として機能し、双方の電極間に放電が起きて波長が380nm以下である紫外線が発生する。また、(22)はファンであり、冷気通路(12)内の冷気流通を促進して脱臭作用を助長するものであるが、特に設けなくともよい。
【0017】
上記脱臭装置(13)は、電源回路(20)に通電して放電電極(18)と対極(19)との間に電圧を与えることで電極間に放電が起き、発生した紫外線が光触媒フィルタ(17)(17)に照射されることで光触媒を活性化させ、発生した活性酸素の水酸化ラジカル(遊離基)の強い酸化作用で光触媒フィルタ(17)(17)の表面に付着した臭気ガス成分や有機化合物の結合を分解し、無臭化若しくは低臭気化することで脱臭するものである。
【0018】
また、菌細胞膜を脆化させ抗菌をおこなうとともに、酸化分解作用によって光触媒フィルタ(17)(17)表面の微生物、特に好気性細菌の繁殖を抑制して、脱臭装置(13)や貯蔵室壁表面の汚れを分解除去する。
【0019】
臭気物質を酸化分解すると、有機物質が必ず持っている炭素が酸化されて二酸化炭素が発生する。一般に葉物野菜は、空気を呼吸することで酸素を吸収し、鮮度を低下させることが知られているが、二酸化炭素はこの葉物野菜の呼吸を抑制する作用があり、これによって鮮度が保持されるものである。特に光触媒は強い酸化力を有していることから、酸化分解によって二酸化炭素の発生に大きく寄与する。
【0020】
なお、上記光触媒による脱臭装置(13)は、臭気物質の酸化分解による脱臭作用のみでなく、果実等から発生して食品を熟成、すなわち老化させるホルモンであるエチレンを分解する作用を有しており、このエチレン分解作用による食品鮮度の保持効果をも得ることができるものである。
【0021】
そしてまた、この放電電極(18)と対極(19)が放電すると、紫外線とともにオゾンが発生するため、前記光触媒モジュール(15)は、紫外線による活性酸素の発生で有機物質を分解させる機能とともに、オゾン発生手段としても機能するものであり、臭気成分を含んだ冷気を発生したオゾンと混合し反応させることで臭気成分を酸化分解し脱臭することができる。
【0022】
この光触媒モジュール(15)から風下側には、所定距離を空けて、2酸化マンガンを主体にしたハニカム形状の焼結体からなるオゾン分解触媒(16)を設置しており、臭気物質と反応しないでそのまま流下する所定値以上の余剰オゾンを分解するようにしている。なお、オゾン発生手段は、上記の光触媒モジュール(15)によるものだけでなく、沿面放電電極と高電圧トランスを組み合わせたものや電解方式によるものでもよい。
【0023】
以上説明したように、脱臭装置(13)における放電電極(18)や対極(19)の電極間の放電などによるオゾン発生により、貯蔵室内の空気中の酸素は一旦オゾンとなり、臭気物質(有機物)と反応することで、一部酸化した中間生成体となる場合もあるが、さらに二酸化炭素と水に分離するものであり、結果的に密閉貯蔵室内における酸素を消費しその濃度を減少させることができる。
【0024】
しかしながら、現実の冷蔵庫にはオゾンと反応するための揮発性物質、例えば、エチレン、エタノール、アルデヒトなどの量は少なく、酸素濃度を減少させるレベルの効果が得られない場合が多い。
【0025】
そこで、オゾン発生器である光触媒モジュール(15)とオゾン分解手段(16)との間に炭素系物質を含むフィルタ(23)を設けることにより、発生したオゾンと炭素が反応して二酸化炭素になることで、基本的にメンテナンスフリーで、簡易的に貯蔵室を低酸素、高二酸化炭素の雰囲気にすることができる。
【0026】
活性炭などの炭素系物質の形態は、粒状や破砕品などが考えられるが、小形化、且つ圧力損失を考慮すると、セラミック製ハニカム、あるいは金属ハニカムをコア材としてそれに活性炭などを固定するようにしたものが望ましい。
【0027】
形態を粒状や破砕品などで使用する場合には、脱臭装置(15)内にホルダーを設けることにより保持すればよく、また、活性炭などの吸着性に優れた炭素系物質を用いることにより、冷蔵庫内の脱臭性能をより以上に向上することができる。さらに、余剰オゾンの分解手段としてオゾン分解触媒(16)を用いている場合は、活性炭を設けることによって、オゾン分解触媒に至る余剰のオゾンと反応させ、これを減少させることでオゾン分解触媒(16)の必要以上のオゾンとの接触を防止でき、寿命をより延長することができる。
【0028】
なお、前記活性炭などの炭素系物質を、光触媒モジュール(15)に担持するなど一体化するようにすれば、オゾンと活性炭の酸化作用により、低酸素、高二酸化炭素の雰囲気を簡単に設けることができる。また、光触媒は吸着能力が低いものであるが、光触媒に吸着能力の高い活性炭を担持することで、活性炭に担持された臭気物質が、例えば、酸化チタンに輸送され分解されるので、光触媒モジュールの脱臭性能が向上する。
【0029】
上記とは逆に、活性炭などの炭素系物質に光触媒を含有させるようにしてもよい。すなわち、活性炭は種々の臭気物質に対して高い吸着能力を有しており、現在も脱臭剤における吸着剤として幅広く使用されている。そのため、オゾン発生装置とオゾン分解手段とを有する脱臭装置にさらに活性炭を設けると、さらに脱臭性能を向上できるが、前記活性炭は、吸着した臭気物質に対して分解能力がなく、その表面が臭気物質で覆われると臭い分子の吸着力がなくなり脱臭能力も失われてしまう。
【0030】
そこで、活性炭に酸化チタンを混合し、酸化チタン表面に紫外線を照射することで臭気物質が酸化チタンに輸送され分解されるので、吸着剤の能力を持続させることができる。この場合の光源は、前記空間放電機構から放射される無指向性の紫外線光、または、紫外線ランプなどによってもよいものであり、活性炭の光触媒による酸化反応により、青果物の鮮度保持に有利な二酸化炭素が発生し、貯蔵空間内の二酸化炭素濃度の向上に寄与するものである。
【0031】
また、前記光触媒に代わって、活性炭などの炭素系物質を含むフィルタ(23)に貴金属を添加するようにしてもよい。前述のように、活性炭は臭気物質の分解能力がなく、その表面が臭気物質で覆われると、吸着力がなくなり脱臭能力も失われてしまい、同時に、オゾンを吸着する能力も減少するため、その結果、炭素とオゾンとの結合による酸化反応で発生する二酸化炭素の生成量が減少することになる。
【0032】
そこで、空気中で酸化されることが少なく触媒作用のある貴金属、例えば、Mn、Fe、Co、Ni、Ag、Pt、Pd、Rhなどを活性炭などの炭素系物質を含むフィルタに添加することで、臭気物質が前記貴金属に輸送され分解されることになり、吸着剤の能力を持続することができるものである。なお、前記貴金属は炭素とオゾンの酸化反応触媒としても機能するものである。
【0033】
そしてまた、上記実施例に関連して、活性炭などの炭素系物質を含むフィルタに触媒作用のあるセラミックスを添加してもよい。触媒作用のあるセラミックスには、TiO、ZrO、SiOなどの酸化物、またはそれらの複合酸化物を添加することで臭気物質がセラミックスに輸送され分解されることで、吸着剤の能力を持続させることができ、前記同様炭素とオゾンの酸化反応触媒として機能させることができる。
【0034】
さらに、前記活性炭などの炭素系物質がオゾンまたは光触媒などにより酸化され、活性炭がすべて消費された場合には、さらに二酸化炭素を発生させるために活性炭などの炭素系物質を補充する必要が生じるが、この活性炭などを脱臭装置から脱着可能にして、市販の活性炭脱臭剤などをカートリッジタイプにして交換したり、活性炭などが粒状や破砕形状で用いられていれば、消費分を専用ホルダーへ補充するなどで容易に対応することができる。
【0035】
次に、オゾン分解手段、あるいは炭素系物質を含むフィルタへの冷気の流れを切替え可能とした本発明の他の実施例について説明する。
【0036】
図2のようなフィルタ配置の場合は、オゾン発生装置(15)で発生したオゾンは、常に活性炭などの炭素系物質を含むフィルタ(23)と接触することになり、炭素とオゾンの酸化反応が進行し続けて炭素系物質の消耗を促進させてしまうため、炭素系物質を含むフィルタ(23)の交換が必要となり、メンテナンスフリーとはならない可能性がある。
【0037】
また、一般的に低酸素、高二酸化炭素の雰囲気下においては野菜の呼吸が抑制されるが、高二酸化炭素の雰囲気になり過ぎると、野菜によっては逆に劣化が進んでしまう場合がある。そのため、フィルタ(23)における炭素系物質を必要以上に酸化させ、必要以上に二酸化炭素を生成させることは望ましくない。
【0038】
さらに、オゾン分解触媒(16)にとっても、必要以上にオゾンと接触させることは触媒機能を劣化させるために望ましいものではない。
【0039】
そこで、図2と同一部材に同一符号を附した図3に示すように、第2の実施例は、炭素系物質を含むフィルタ(23)とオゾン分解触媒(16)とを風路(12)内に直列に配置した場合は、炭素系物質側のフィルタ(23)を通過する流路と、このフィルタ(23)側を遮断して通過させず直接オゾン分解触媒(16)側へ導かれる流路(24)とを設け、流路切替え手段であるダンパー(25)などで切替え可能に設けるようにする。
【0040】
また、同様に、第3の実施例として図4に示すように、炭素系物質を含むフィルタ(23)とオゾン分解触媒(16)とを風路(12)内に並列に設置し、前記同様のダンパー(25)により、炭素系物質を含むフィルタ(23)とオゾン分解触媒(16)への冷気の流れを切り替えるようにしてもよい。なお、この場合は、炭素系物質側のフィルタ(23)の下流にさらにオゾン分解手段(16′)を配置するとよい。
【0041】
前記図3や図4のように、風路(12)内に、オゾン発生装置(15)やオゾン分解触媒(16)、炭素系物質を含むフィルター(23)を配置することにより、発生させたオゾンとオゾン分解触媒(16)による脱臭性能に加え、炭素系物質の吸着性能によって脱臭性能が格段に向上するとともに、炭素系物質を含むフィルタ(23)を通過するオゾンの量をダンパー(25)で調整することができ、これによって炭素系物質のオゾン酸化による消耗を防ぎ、オゾン分解触媒(16)のオゾンに対する寿命を延長させることができる。
【0042】
上記構成におけるオゾン分解手段(16)や炭素系物質を含むフィルタ(23)へのダンパー(25)の切替えは、貯蔵室内の種々のガス濃度や温度、湿度を検出するセンサーなどの検出値によっておこない、オゾン分解手段(16)や炭素系物質を含むフィルタ(23)への冷気の通過量を制御する。例えば、貯蔵室内の二酸化炭素の量を検出し、検出値によって炭素系物質側のフィルタ(23)への風量をダンパー(25)による切替え、あるいはファン(22)の回転数を変更することで制御し、分解触媒(16)へのオゾン量を調整するものである。
【0043】
上記によれば、オゾンによる炭素の酸化反応を制御することができ、炭素系物質を含むフィルタ(23)における必要以上の炭素の消耗を防止することができるとともに、二酸化炭素量を制御して貯蔵室内の野菜に適した濃度に調整することができる。また、湿度や温度の検出によって、これらの値に大きく依存するオゾン分解触媒(16)の吸着、分解反応を効率的に制御することができることから効果的な脱臭作用が可能となり、且つ、触媒寿命を延ばすことができる。
【0044】
前記同様に符号を附した図5は第4の実施例を示し、オゾン発生装置(15)に対し、下流側の風路(12)中における下面にオゾン分解触媒(16)および炭素系物質を含むフィルタ(23)を併置し、オゾン分解触媒(16)側と炭素系物質側のフィルタ(23)側を通過する流路とを流路切替え手段であるダンパー(25)で切替え可能にしている。
【0045】
オゾンの分子量は48であり、空気の平均分子量27より大きいことから、オゾンは空気中では比重差によって下に沈む性質があり、図のように、風路(12)の下面にオゾン分解触媒(16)および炭素系物質を含むフィルタ(23)を配置することによって、特にファン(22)を設けずとも自然流下でオゾンを触媒(16)およびフィルタ(23)のそれぞれに接触させて流下させることができるため、風路(12)のコンパクト化が可能となり、コストを低減することができる。
【0046】
第5の実施例として前記同様の図6に示すように、オゾン発生装置(15)に対し、風路(12)の下流側に並列に配置したオゾン分解触媒(16)および炭素系物質を含むフィルタ(23)にそれぞれファン(22a)(22b)を設け、オゾン分解触媒(16)側と炭素系物質側のフィルタ(23)側を通過する冷気流路とを流路切替え手段であるダンパー(25)で切替え可能にして制御してもよい。
【0047】
上記によれば、オゾン分解触媒(16)用のファン(22a)は、例えば、冷蔵室(2)内の臭気物質の濃度が上昇した場合に、室内に設けた図示しないガスセンサーがこれを検知して出力し、ダンパー(25)で流路を開くとともに前記ファン(22a)の回転数を上げ、室内の臭気物質を強制的に分解触媒(16)に通過させ吸着させることによりオゾンとの反応を促進させ、室内の脱臭速度を短縮できるものである。
【0048】
また、活性炭などの炭素系物質を含むフィルタ(23)用のファン(22b)は、例えば、室内の二酸化炭素濃度が野菜の鮮度保全に必要な所定濃度を超えたような場合に、それ以降も活性炭とオゾンとが接触して酸化分解させることは、活性炭などの炭素系物質を含むフィルタ(23)の使用寿命を短縮させるため望ましくない。
【0049】
これは、適切な二酸化炭素濃度をそれぞれ有する野菜においても、必要以上に二酸化炭素の濃度が高くなることは野菜自体の鮮度保持の観点からも良好なことではなく、これに対応するために、ガスセンサーなどによる室内の二酸化炭素濃度の検出により、前記ファン(22b)の回転数を制御するとともに冷気流路をダンパー(25)で切り替えることによって、活性炭とオゾンとの接触率を調整するものであり、より的確に脱臭作用をおこなうことができ、触媒寿命を延ばすことができる。
【0050】
センサーについては、前記ガスセンサーのほか、温度センサー、湿度センサー、圧力センサーなどを用いるようにしてもよい。また、センサー出力ではなく、タイマーによる時間制御で制御するようにしてもよく、前記ファンは風上側に設けてもよい。
【0051】
さらに他の実施形態としては、オゾン発生装置(15)の運転率を制御するようにしてもよい。前記実施例同様、オゾン分解触媒と活性炭などの炭素系物質とは、ともにオゾンとの接触率を制御する必要があることから、オゾン分解触媒(16)、あるいは炭素系物質を含むフィルタ(23)のいずれか一方にオゾンを通過させる際は、それぞれの反応に必要なオゾン量を送風できるようにオゾン発生装置(15)の運転率を制御するものであり、双方ともに送風する場合にもそれぞれのフィルタ(16)(23)に必要な合計のオゾン量を送風すべく運転率を上げるものである。
【0052】
これにより、オゾン分解触媒(16)および炭素系物質を含むフィルタ(23)の寿命を延ばすことができるものであり、それぞれの酸化、分解反応に沿って制御し、また流路切替え手段(25)を制御するとともにオゾン発生装置(15)の運転率を変化させることによって、高効率で的確な脱臭性能を得ることができる。
【0053】
なお、上記実施例においては、脱臭装置(13)を冷蔵室(2)と野菜室(3)との仕切部分の冷気通路に配置した構成で説明したが、これに限らず、冷凍室、あるいは他の貯蔵空間に配置しても同様の効果を得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、脱臭装置とともに酸素濃度低減手段を備えて食品の長期保存をはかるようにした冷蔵庫に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の1実施形態を示す冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】図1における脱臭装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図2の脱臭装置の第2の実施例を示す縦断面図である。
【図4】図2の脱臭装置の第3の実施例を示す縦断面図である。
【図5】図2の脱臭装置の第4の実施例を示す縦断面図である。
【図6】図2の脱臭装置の第5の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 冷蔵庫本体 2 冷蔵室 12 冷気通路
13 脱臭装置 15 光触媒モジュール 16、16′ オゾン分解触媒
17 光触媒フィルタ 18 放電電極 19 対極
20 電源回路 21 高電圧トランス 22 ファン
23 炭素系物質を含むフィルタ 24 流路 25 ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍あるいは冷蔵貯蔵空間の密閉された空間内部に少なくともオゾン発生装置とオゾン分解手段からなる脱臭装置を設けるとともに、この脱臭装置内に活性炭などの炭素系物質を配設したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
脱臭装置として、空間放電機構と光触媒モジュールおよびオゾン分解触媒からなる脱臭ユニットを使用したことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
光触媒モジュールに活性炭などの炭素系物質を担持させたことを特徴とする請求項2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
活性炭などの炭素系物質に光触媒を含有、あるいは貴金属や触媒作用を有するセラミックスを添加させたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項5】
活性炭などの炭素系物質を脱臭装置から脱着自在としたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項6】
脱臭装置の風下側にオゾン分解手段と炭素系物質を含むフィルタを配置し、前記オゾン分解手段または炭素系物質を含むフィルタへの風路を切替え可能にしたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項7】
貯蔵室内の温度や湿度、種々のガス濃度を検出し、その検出値によりオゾン分解手段または炭素系物質を含むフィルタへの通過風量を制御するようにしたことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。
【請求項8】
オゾン発生装置に対し、下流側の風路中における下面にオゾン分解触媒と炭素系物質を含むフィルタとを併置し、オゾン分解触媒側と炭素系物質側のフィルタ側を通過する流路とを流路切替え手段であるダンパーで切替え可能に制御したことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。
【請求項9】
オゾン発生装置の運転率を制御して、オゾン分解触媒あるいは炭素系物質におけるオゾンとの接触率を調整したことを特徴とする請求項6記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−120877(P2007−120877A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314382(P2005−314382)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝家電製造株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】