説明

凝集剤の注入監視装置

【課題】凝集剤の注入状態を常に監視することにより、凝集剤の注入不良が生じても迅速に対処することを可能とする。
【解決手段】ステップS1では、PAC注入前の原水の濁度を測定し、ステップS2では、PAC注入後の原水の濁度を測定する。ステップS3では上記各測定結果の差分を算出する。ステップS4では差分ΔS1が所定基準値R1より大きいか否かを判断し、その答が否定(No)の場合は、ステップS5で前回ルーチンで空気抜き弁13の操作指令を発したか否かを判断し、その答が否定(No)の場合は、ステップS6に進んで、空気抜き弁13に操作指令を発し、ステップS1に戻る。その後のルーチンでステップS4の答が否定(No)の場合は、ステップS7で警報音を発し、続くステップS8で、第1〜第3の排水弁23a〜23cを開閉制御し、水回収率を低下させて運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凝集剤の注入監視装置に関し、より詳しくは、凝集剤が注入された原水を塔式ろ過装置に供給するろ過システムにおける凝集剤の注入監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水や井戸水等の原水を水処理して高純度の水を冷却塔や熱交換器等に給水する水処理システムでは、原水中に懸濁物質等の不純物が大量に含まれていることから、通常、砂ろ過装置等の塔式ろ過装置で前記不純物を予めろ過分離し、このろ過分離されたろ過水を膜ろ過装置で処理している。
【0003】
そして、前記不純物には微細な粒子を多く含んでいるため、従来より、特許文献1に示すように、予めポリ塩化アルミニウム(以下、「PAC」という。)等の凝集剤を原水に注入し、前記不純物をフロック状にして塔式ろ過装置でろ過処理を行なっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−227461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、凝集剤は、通常、凝集剤注入装置より原水に注入されるが、凝集剤注入装置や注入管内部に空気が入り込んだり、凝集剤の補充忘れ等で凝集剤注入装置の空状態が放置されると注入不良になる。
【0006】
このような注入不良が生じた状態でシステムの運転が継続されると、微細な不純物が塔式ろ過装置で分離除去されずにろ過水中に流れ込むおそれがある。そして、このような不純物を含有したろ過水が膜ろ過装置に供給されると、膜ろ過装置のろ過膜が早期にファウリングを生じ、その結果、ろ過性能が低下したり、システム障害を招くおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、凝集剤の注入状態を常に監視することにより、凝集剤の注入不良が生じても迅速に対処することが可能な凝集剤の注入監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る凝集剤の注入監視装置は、凝集剤が注入された原水を塔式ろ過装置に供給し、前記原水中に含まれる不純物をろ過分離するろ過システムにおける凝集剤の注入監視装置であって、前記原水に前記凝集剤を注入する凝集剤注入手段と、前記凝集剤の注入前後における濁質の変動状態を検出する変動状態検出手段と、該変動状態検出手段により検出された変動状態が所定基準値以下のときは異常を検出する異常検出手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の凝集剤の注入監視装置は、前記変動状態検出手段が、前記原水の濁度の変動量を検出する濁度検出手段、前記原水中の粒子数の変動量を検出する粒子数検出手段、及び前記原水の色度の変動量を検出する色度検出手段のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の凝集剤の注入監視装置は、前記塔式ろ過装置でろ過されたろ過水が、膜ろ過装置に供給されて透過水と濃縮水とに分離されると共に、前記膜ろ過装置は、前記原水の水温及び水質のうちの少なくともいずれか一方に基づいて水回収率を制御する水回収率制御手段を有し、前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは前記水回収率を低下させる水回収率低下手段を有していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の凝集剤の注入監視装置は、前記凝集剤注入手段を含む凝集剤注入系に入り込んだ空気を除去する空気抜き弁を具備すると共に、前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは前記空気抜き弁に操作指令を発する操作指令手段を有していることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の凝集剤の注入監視装置は、前記異常検出手段が、前記異常を検出したときは警報音を発する警報手段を有していることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の凝集剤の注入監視装置は、前記塔式ろ過装置は、砂ろ過装置、及び除鉄・除マンガンろ過装置のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の凝集剤の注入監視装置は、前記膜ろ過装置は、逆浸透膜装置、及びナノろ過膜装置のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の凝集剤の注入監視装置によれば、凝集剤が注入された原水を塔式ろ過装置(砂ろ過装置、除鉄・除マンガンろ過装置)に供給し、前記原水中に含まれる不純物をろ過分離するろ過システムにおける凝集剤の注入状態監視装置であって、前記原水に前記凝集剤を注入する凝集剤注入手段と、前記凝集剤の注入前後における濁質の変動状態を検出する変動状態検出手段(濁度検出手段、粒子数検出手段、色度検出手段)と、該変動状態検出手段により検出された変動状態が所定基準値以下のときは異常を検出する異常検出手段とを備えているので、濁質の変動状態が所定基準値以下になると、凝集剤の注入不良が発生していると判断し、システム異常を早期に把握することができる。したがって、後段に膜ろ過装置が接続されていても、該膜ろ過装置のろ過膜が早期にファウリングを起こすのを極力抑制することができる。
【0016】
また、前記塔式ろ過装置でろ過されたろ過水が、膜ろ過装置に供給されて透過水と濃縮水とに分離されると共に、前記膜ろ過装置は、前記原水の水温及び水質のうちの少なくともいずれか一方に基づいて水回収率を制御する水回収率制御手段を有し、前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは前記水回収率を低下させる水回収率低下手段を有しているので、凝集剤の注入不良が生じた場合は水回収率を低下させることにより、システム障害が生じるのを極力回避することが可能となる。
【0017】
また、前記凝集剤注入手段を含む凝集剤注入系に入り込んだ空気を除去する空気抜き弁を具備すると共に、前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは前記空気抜き弁に操作指令を発する操作指令手段を有しているので、前記凝集剤注入系に空気が入り込んだ場合は、該凝集剤注入系に入り込んだ空気を空気抜き弁から排出することができ、凝集剤の注入不良に起因するシステム異常を迅速かつ容易に解消することが可能となる。
【0018】
また、前記異常検出手段が、前記異常を検出したときは警報音を発する警報手段を有しているので、システム異常が生じたときは、警報音でシステム異常を迅速に把握することができ、ユーザは前記システム異常に迅速に対処することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0020】
図1は本発明に係る凝集剤の注入監視装置を備えたろ過システムの一実施の形態を示すシステム構成図である。
【0021】
該ろ過システムは、原水が通過する原水ライン1と、凝集剤としてのポリ塩化アルミニウム(以下、「PAC」という。)2の原水への注入状態を監視する注入監視装置3と、PAC2の注入された原水が供給される砂ろ過装置(塔式ろ過装置)4と、砂ろ過装置4から供給されるろ過水を処理する逆浸透膜装置(以下、「RO装置」という。)(膜ろ過装置)5と、RO装置5を透過した生産水(透過水)が通過する生産水ライン6と、システム全体の制御を司る制御部7とを備えている。また、該砂ろ過装置4とRO装置5との間には分散剤注入装置8が設けられており、該分散剤注入装置8に貯留された分散剤9をろ過水に適量注入することにより、スケール析出を極力回避している。
【0022】
注入監視装置3は、PAC2が貯留されたPAC注入装置(凝集剤注入手段)10と、PAC2を原水ライン1に案内する注入管11と、該注入管11に介装された注入ポンプ12と、注入管11やPAC注入装置10に入り込んだ空気を外部に排出する空気抜き弁13と、PAC2の注入箇所をバイパスするバイパスライン14と、バイパスライン14に介装された三方切替弁15と、該三方切替弁15の1ポートに接続された濁度計16とを備えている。また、PAC注入装置10、注入管11、及び注入ポンプ12でPAC注入系32を構成している。
【0023】
濁度計16は、三方切替弁15のポートを切り替えることにより、PAC注入前の原水、又はPAC注入後の原水が供給される。そして、PAC剤注入前後の濁度を測定し、その検出信号を制御部7に送信する。尚、濁度の測定方式は、特に限定されないが、例えば、90度散乱光方式で高精度に測定することができる。
【0024】
砂ろ過装置4は、ろ過砂(必要に応じてアンスラサイト)が内蔵されており、原水に含有される懸濁物質等の不純物を除去する。また、砂ろ過装置4には、タイマが内蔵されており、原水の供給を定期的に遮断して再生処理を行う。すなわち、所定時間毎(例えば、1〜2日毎)に再生モードに突入し、逆洗ポンプ(不図示)を駆動して逆洗した後、所定時間経過後に水洗し、ろ過砂等のろ材を再生する。
【0025】
RO装置5は、例えばスパイラル形状に巻回されたRO膜エレメント(以下、「RO膜」という。)17aを内蔵したROモジュール17と、原水の水温を検出する水温センサ18と、加圧ポンプ19とを有している。ROモジュール17は、原水が供給される一次側とRO膜17aを透過した透過水を出力する二次側とに分離されている。
【0026】
さらに、このRO装置5には、RO膜17aを透過しなかった濃縮水の一部を原水側に還流する循環水ライン20と、前記濃縮水の残部を系外に排水する排水ライン21とが接続されている。
【0027】
循環水ライン20は、具体的には、排水ライン21の途中から分岐されて前記加圧ポンプ19の上流側に接続されると共に、該循環水ライン20には定流量制御弁22が介装され、濃縮水の一部が砂ろ過装置4からのろ過水と合流し、ROモジュール17に供給されるように構成されている。
【0028】
また、排水ライン21は、循環水ライン20の分岐点よりも下流側で第1〜第3の排水ライン21a〜21cに分岐され、第1〜第3の排水ライン21a〜21cには定流量弁機構(不図示)を備えた第1〜第3の排水弁23a〜23cが介装されている。
【0029】
第1〜第3の排水弁23a〜23cは、前記定流量弁機構により、それぞれ異なる排水流量となるように設定されている。例えば、第1の排水弁23aのみを開状態としたときは、水回収率ηが95%となるように排水流量が設定され、第2の排水弁23bのみを開状態としたときは、水回収率ηが90%となるように排水流量が設定され、第3の排水弁23bのみを開状態としたときは、水回収率ηが80%となるように排水流量が設定される。
【0030】
尚、水回収率ηは、数式(1)、(2)で表される。
【0031】
η=Qp/Qf×100 …(1)
Qf=Qp+Qc …(2)
ここで、Qpは透過水流量、Qfは供給水流量、Qcは排水流量である。
【0032】
排水ライン21の排水率は、(100−η)であるから、水回収率ηは、第1〜第3の排水弁23a〜23cを全て開状態としたときは65%、第1の排水弁23aのみを閉じたときは70%、第2の排水弁23bのみを閉じたときは75%、第3の排水弁23cのみを閉じたときは85%となる。すなわち、水回収率ηは、65%から95%の広範囲に亙って5%毎に段階的に調節することが可能となる。
【0033】
制御部7は、信号線24及び信号線25を介して砂ろ過装置4及びRO装置5に電気的に接続されると共に、信号線26及び信号線27を介して濁度計16及び空気抜き弁13に電気的に接続され、本発明の凝集剤の注入監視装置の一部を構成している。そして、該制御部7は、砂ろ過装置4、RO装置5、濁度計16及び空気抜き弁13等との間でインターフェース動作を司る入出力部と、所定の演算プログラムやテーブル等が格納されたROMと、演算結果を記憶したりワークエリアとして使用されるRAMと、システム全体を制御するCPUとを備えている。
【0034】
また、制御部7は、水温センサ18により検出された水温に基づいて水回収率を制御する水回収率制御手段を有している。
【0035】
すなわち、水温が下がるとシリカ等の溶存塩類の溶解度が低下するため、スケールが析出し易くなる。したがって、RO膜17aへのスケールの析出を抑制するためには、排水量を増加させて水回収率ηを低下させる必要がある。一方、水温が上昇すると前記溶存塩類の溶解度が上がるため、スケールが析出し難くなる。したがって、この場合は水回収率ηを上げて透過水(生産水)の生産能力を向上させるのが望ましい。
【0036】
そこで、本実施の形態では、スケールの析出を抑制しつつ、高効率で透過水(生産水)が得られるように、水温に応じた水回収率ηを算出し、この算出結果に基づいて第1〜第3の排水弁23a〜23cを開閉操作し、これにより水回収率ηが最適となるように制御している。
【0037】
さらに、上記制御部7は、PAC2の注入前後における濁度の変動状態を検出する変動状態検出手段と、該変動状態検出手段により検出された変動状態が所定基準値以下のときは異常を検出する異常検出手段とを備えている。
【0038】
図2はPAC濃度と濁度との関係を示す図である。横軸はPAC濃度(mg/L)、縦軸は濁度(NTU)を示している。
【0039】
この図2から明らかなように、PAC注入前、すなわちPAC濃度が0のときは、濁度は0.23NTUであるが、原水中にPAC2が注入されると濁度は急激に増加し、原水中のPAC濃度が1mg/Lのときは、濁度は約0.53NTUとなっている。このように濁度は、PAC注入前後で顕著に相違する。
【0040】
そこで、本第1の実施の形態では、PACの注入前後における濁度の変動状態を検出し、PACが正常に原水に注入されているか否かを常時監視し、PAC2の注入不良によるシステム異常を検出している。
【0041】
図3は、第1の実施の形態の制御手順を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS1では、PAC注入箇所より上流側の濁度を濁度計16で測定する。すなわち、PAC注入前の原水の濁度を測定し、測定結果を制御部7に送信する。次いで、ステップS2では、三方切替弁15のポートを切り換え、PAC注入箇所の下流側の濁度を濁度計16で測定する。すなわち、PAC注入後の原水の濁度を測定し、測定結果を制御部7に送信する。
【0043】
続くステップS3ではステップS1とステップS2の各測定結果の差分ΔS1(変動状態)を算出する。そして、ステップS4では差分ΔS1が所定基準値R1(例えば、0.2NTU)より大きいか否かを判断する。そしてその答が肯定(Yes)の場合は、PACが正常に注入されていると判断し、ステップS1に戻る。
【0044】
一方、ステップS4の答が否定(No)、すなわち差分ΔS1が前記所定基準値R1以下の場合は、PAC2の注入不良が発生していると判断してステップS5に進む。そして、ステップS5では、前回ルーチンで空気抜き弁13の操作指令を発したか否かを判断する。その答が否定(No)の場合は、PAC注入系32に空気が入り込んでいるために、PAC2の注入不良が生じているおそれがあると判断し、ステップS6に進んで、空気抜き弁13に操作指令を発し、ステップS1に戻る。
【0045】
そして、ステップS1〜ステップS3を実行し、再びステップS4で差分ΔS1が所定基準値R1より大きいか否かを判断する。その答が肯定(Yes)の場合は、前回ルーチンで空気抜き弁13から空気が排出された結果、異常状態が解消されたと判断し、ステップS1に戻る。
【0046】
一方、ステップS4の答が否定(No)の場合は、前回ルーチンで空気抜き弁13を操作しているため、ステップS5の答が肯定(Yes)となり、ステップS7に進む。ステップS7では警報音を発して使用者に異常を把握させ、続くステップS8で、第1〜第3の排水弁23a〜23cを開閉制御し、水回収率ηを低下させて運転する。すなわち、この場合は、PAC2が正常に注入されていないため、本来、砂ろ過装置4で除去されるべき不純物がRO装置5にも流れ込み、その結果RO膜17aにファウリングが生じるおそれがある。そこで、水回収率ηを強制的に低下させて運転を継続しつつ、システム障害に迅速に対処するようにしている。また、注入不良を把握したユーザはPAC注入装置10を点検し、PAC注入装置10が空状態にある場合は、PAC2をPAC注入装置10に補充することにより、システム異常を迅速に解消することが可能となる。
【0047】
このように本第1の実施の形態によれば、差分ΔS1が所定基準値R1以下になると、PACの注入不良が発生していると判断し、まず、空気抜き弁13を操作してPAC注入系32に入り込んでいる空気を空気抜き弁13から排出する。それでもPAC2の注入不良が解消されない場合は、警報音を発し、かつ水回収率ηを下げて運転することにより、システム異常を早期に把握し、RO膜17aにファウリングを生じるのを極力回避しつつ、システム異常に対して迅速に対処することが可能となる。
【0048】
図4は本発明の第2の実施の形態を示すシステム構成図であって、本第2の実施の形態では、濁度計16(図1)に代えて、粒子数計数器28が設けられている。
【0049】
この粒子数計数器28は、例えば、レーザー散乱光方式により原水中の特定粒径範囲の粒子数を計数する。すなわち、粒子数計数器28には、上述した濁度計と略同様、三方切替弁15のポートを切り替えることにより、PAC注入前の原水、及びPAC注入後の原水が供給される。そして、PAC注入前後の粒子数を測定し、その検出信号を制御部33に送信する。
【0050】
図5はPAC濃度と粒子数との関係を示す図である。横軸はPAC濃度(mg/L)、縦軸は0.5〜1.0μmの粒子数の計数値(個/mL)を示している。
【0051】
この図5から明らかなように、PAC注入前、すなわちPAC濃度が0のときは、0.5〜1.0μmの粒子数は1000〜4000個/mL程度であるが、原水中にPAC2が注入されると粒子数は直線的に増加し、原水中のPAC濃度が5mg/Lのときは、0.5〜1.0μmの粒子数は20000個/mLを超えている。このように原水中の粒子数は、PAC注入前後で顕著に相違する。
【0052】
そこで、本第2の実施の形態では、PACの注入前後における粒子数の変動状態を検出し、PACが正常に原水に供給されているか否かを常時監視し、PAC2の注入不良によるシステム異常を検出している。
【0053】
図6は第2の実施の形態の制御手順を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS11では、PAC2の注入箇所の上流側の粒子数を粒子数計数器28で測定し、その測定結果を制御部33に送信する。次いで、ステップS12では、PAC2の注入箇所の下流側の粒子数を粒子数計数器28で測定し、その測定結果を制御部33に送信する。
【0055】
続くステップS13ではステップS11とステップS12の各測定結果の差分ΔS2(変動状態)を算出する。そして、ステップS14では差分ΔS2が所定基準値R2(例えば、5000個/mL)より大きいか否かを判断する。そしてその答が肯定(Yes)の場合は、PACが正常に注入されていると判断し、ステップS11に戻る。
【0056】
一方、ステップS14の答が否定(No)、すなわち差分ΔS1が前記所定基準値R1以下の場合は、ステップS15に進み、前回ルーチンで空気抜き弁13の操作指令を発したか否かを判断する。そしてその答が否定(No)、すなわち今回ルーチンで、差分ΔS2が所定基準値R2以下になった場合は、PAC注入系32に空気が入り込んでいるために、PAC2の注入不良が生じているおそれがあると判断し、ステップS16に進んで、空気抜き弁13に操作指令を発し、ステップS11に戻る。
【0057】
そして、ステップS11〜ステップS13を実行し、再びステップS14で差分ΔS2が所定基準値R2より大きいか否かを判断する。その答が肯定(Yes)の場合は、前回ルーチンで空気抜き弁13から空気が排出された結果、異常状態が解消されたと判断し、ステップS11に戻る。
【0058】
一方、ステップS14の答が否定(No)の場合は、前回ルーチンで空気抜き弁13を操作しているためステップS15の答は肯定(Yes)となり、ステップS17に進む。ステップS17では、第1の実施の形態と同様、警報音を発して使用者に異常を把握させ、続くステップS18で、第1〜第3の排水弁23a〜23cを開閉制御し、水回収率ηを低下させて運転する。
【0059】
このように本第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と略同様、差分ΔS2が所定基準値R2以下になると、PAC2の注入不良が発生していると判断し、まず、空気抜き弁13を操作してPAC注入系32に入り込んでいる空気を空気抜き弁13から排出する。それでもPAC2の注入不良が解消されない場合は、警報音を発し、かつ水回収率ηを下げて運転することにより、システム異常を早期に把握し、RO膜17aにファウリングを生じるのを極力回避しつつ、PAC2のPAC注入装置10への補充等、注入不良に起因したシステム異常に対して迅速に対処することを可能としている。
【0060】
図7は、本発明の第3の実施の形態を示すシステム構成図である。すなわち、この第3の実施の形態では、塔式ろ過装置として、図1の砂ろ過装置4に代えて除鉄・除マンガンろ過装置29が設けられると共に、該除鉄・除マンガンろ過装置29は制御部34に電気的に接続されている。また、RO装置5は水回収率ηの切替機構を有さず、排水ライン30には1個の排水弁31のみが設けられている。
【0061】
除鉄・除マンガンろ過装置29は、無煙炭を粉砕して粒状とされたアンスラサイトがマンガン酸化触媒上に重層されている。そして、次亜注入装置(不図示)によって注入された次亜塩素酸ナトリウムによって原水中の鉄分が酸化されて析出し、これにより原水から鉄分が除去される。さらに、原水中のマンガン成分はマンガン酸化触媒によって酸化除去される。
【0062】
また、除鉄・除マンガンろ過装置29にはタイマが内蔵されており、原水の供給を定期的に遮断して再生処理を行う。すなわち、除鉄・除マンガンろ過装置29は、所定時間毎(例えば、1〜2日毎)に再生モードに突入し、逆洗ポンプ(不図示)が駆動して逆洗した後、所定時間経過後に水洗し、これによりろ材(アンスラサイト及びマンガン酸化触媒)が再生される。
【0063】
そして、本第3の実施の形態では、ステップS8(図3)の処理ステップを有さない点を除き、第1の実施の形態と略同様に処理される。
【0064】
すなわち、差分ΔS1が所定基準値R1以下になると、PAC2の注入不良が発生していると判断する。そして、まず、空気抜き弁13を操作してPAC注入系32に入り込んでいる空気を空気抜き弁13から排出する。それでもPAC2の注入不良が解消されない場合は、警報音を発する。そしてこれによりシステム異常を早期に把握することができ、システム異常に対して迅速に対処することが可能となる。
【0065】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、濁度計16又は粒子数係数器28でPAC注入前後における濁質の変動状態を検出しているが、色度計でPAC注入前後における濁質の変動状態を検出するようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、凝集剤としてPACを使用しているが、PAC以外の凝集剤、例えば、硫酸アルミニウムや硫酸第2鉄や塩酸第2鉄等の鉄系の無機金属塩凝集剤を使用した場合も同様に適用できるのはいうまでもない。
【0067】
さらに、第1及び第2の実施の形態では水温に応じて水回収率を制御しているが、水温に代え、電気伝導率等で水質を検出し、水質に応じて水回収率を制御するように構成してもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、膜ろ過装置として、RO装置5を使用したが、NF膜を搭載したNF装置を使用した場合も同様である。
【0069】
さらに、上記第1〜第3に示した制御フローは例示であって、これらのフローに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る凝集剤の注入状態監視装置を備えたろ過システムの一実施の形態(第1の実施の形態)を示すシステム構成図である。
【図2】PAC濃度と濁度との関係の一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る凝集剤の注入状態監視装置を備えたろ過システムの第2の実施の形態を示すシステム構成図である。
【図5】PAC濃度と粒子数との関係の一例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る凝集剤の注入状態監視装置を備えたろ過システムの第3の実施の形態を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0071】
2 PAC(凝集剤)
4 砂ろ過装置(塔式ろ過装置)
5 RO装置(膜ろ過装置)
7 制御部(異常検出手段)
10 PAC注入装置(凝集剤注入手段)
29 除鉄・除マンガンろ過装置(塔式ろ過装置)
32 PAC注入系(凝集剤注入系)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤が注入された原水を塔式ろ過装置に供給し、前記原水中に含まれる不純物をろ過分離するろ過システムにおける凝集剤の注入状態監視装置であって、
前記原水に前記凝集剤を注入する凝集剤注入手段と、前記凝集剤の注入前後における濁質の変動状態を検出する変動状態検出手段と、該変動状態検出手段により検出された変動状態が所定基準値以下のときは異常を検出する異常検出手段とを備えていることを特徴とする凝集剤の注入監視装置。
【請求項2】
前記変動状態検出手段は、前記原水の濁度の変動量を検出する濁度検出手段、前記原水中の粒子数の変動量を検出する粒子数検出手段、及び前記原水の色度の変動量を検出する色度検出手段のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の凝集剤の注入監視装置。
【請求項3】
前記塔式ろ過装置でろ過されたろ過水が、膜ろ過装置に供給されて透過水と濃縮水とに分離されると共に、
前記膜ろ過装置は、前記原水の水温及び水質のうちの少なくともいずれか一方に基づいて水回収率を制御する水回収率制御手段を有し、
前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは前記水回収率を低下させる水回収率低下手段を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の凝集剤の注入監視装置。
【請求項4】
前記凝集剤注入手段を含む凝集剤注入系に入り込んだ空気を除去する空気抜き弁を具備すると共に、
前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは前記空気抜き弁に操作指令を発する操作指令手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の凝集剤の注入監視装置。
【請求項5】
前記異常検出手段は、前記異常を検出したときは警報音を発する警報手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の凝集剤の注入監視装置。
【請求項6】
前記塔式ろ過装置は、砂ろ過装置、及び除鉄・除マンガンろ過装置のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の凝集剤の注入監視装置。
【請求項7】
前記膜ろ過装置は、逆浸透膜装置、及びナノろ過膜装置のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項3記載の凝集剤の注入監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−23005(P2010−23005A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191129(P2008−191129)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】