説明

処理システム

【課題】アスベスト含有物が塊状であっても、一つの袋体により多くのアスベスト含有物を収納し得る処理システムを提供すること。
【解決手段】構造物から剥離されたアスベスト含有物が投入されるホッパと、前記アスベスト含有物を袋体に収納する収納手段と、前記ホッパに投入された前記アスベスト含有物を前記収納手段へ圧送する圧送手段と、を備えた処理システムにおいて、前記ホッパが、前記アスベスト含有物を粉砕する粉砕手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天井や壁等を含む構造物に付着したアスベスト含有物を除去・回収する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昭和49年頃までの建築物では、天井や壁に耐火材、断熱材或いは吸音材として、アスベスト含有物(例えば、アスベストと結合剤とを混合したもの。)が多用されていた。しかし、近年に至ってアスベストが人体の健康を損なう畏れがあることが指摘され、既設建築物におけるアスベスト含有物の除去が急務となっている。このようなアスベスト含有物を除去する装置として、例えば、特許文献1には圧力水をアスベスト含有物に噴射し、噴射位置を順次移動していくことでアスベスト含有物を剥離粉砕する装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−165875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築物から除去され、床上に散乱したアスベスト含有物は、一般には、収集して袋詰にして処分される。一連の処理をより能率的に行なうためには、建築物からのアスベスト含有物の剥離作業を短時間で行う必要がある。また、アスベスト含有物を袋詰する際には、一つの袋により多くのアスベスト含有物を収納することが望ましく、これによりアスベスト含有物が詰められた袋の数を減らすことができ、その後の輸送、処分に有益である。
【0005】
アスベスト含有物の剥離作業を短時間で行なうためには、アスベスト含有物を微細に粉砕して剥離するよりも塊として剥離する方が剥離効率を高められる。しかし、アスベスト含有物が塊状であると嵩張るため、袋詰の際に一つの袋に収納できる量が減少する。
【0006】
本発明の目的は、アスベスト含有物が塊状であっても、一つの袋体により多くのアスベスト含有物を収納し得る処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、構造物から剥離されたアスベスト含有物が投入されるホッパと、前記アスベスト含有物を袋体に収納する収納手段と、前記ホッパに投入された前記アスベスト含有物を前記収納手段へ圧送する圧送手段と、を備えた処理システムにおいて、前記ホッパが、前記アスベスト含有物を粉砕する粉砕手段を備えたことを特徴とする処理システムが提供される。
【0008】
本発明の処理システムでは、ホッパにアスベスト含有物が投入されると、前記粉砕手段によりこれが粉砕され、粉砕されたアスベスト含有物が前記収納手段に圧送されて袋体に収納される。したがって、アスベスト含有物が塊状であっても、一つの袋体により多くのアスベスト含有物を収納することができる。
【0009】
本発明においては、更に、前記収納手段に設けられ、前記袋体に収納された前記アスベスト含有物の量を計測する計測手段と、前記計測手段により計測された前記アスベスト含有物の量が予め定めた閾値を超えた場合に前記圧送手段による前記アスベスト含有物の圧送を停止する制御手段と、を備えた構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、前記袋体に規定量の前記アスベスト含有物が収納されると前記圧送手段による前記アスベスト含有物の圧送が自動停止されるので、前記袋体から前記アスベスト含有物がオーバーフローすることを防止できる。
【0011】
また、本発明においては、更に、前記構造物の、前記アスベスト含有物が付着した付着面に、水又は懸濁水を噴射することにより当該アスベスト含有物を剥離するロボットを備え、前記ロボットは、前記付着面の法線方向から傾斜した方向に前記水又は懸濁水を噴射する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、前記付着面に斜めに水又は懸濁水を噴射することにより、木の皮を剥ぐようにしてアスベスト含有物を剥離することができ、アスベスト含有物を塊として剥離し易い。これにより、アスベスト含有物の剥離作業の短時間化が図れる。そして、剥離されたアスベスト含有物が塊状であっても、上記の通り、一つの袋体により多くのアスベスト含有物を収納することができる。したがって、一連の処理をより能率的に行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べた通り、本発明によれば、アスベスト含有物が塊状であっても、一つの袋体により多くのアスベスト含有物を収納し得る処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る処理システムAの構成図である。処理システムAは既設建築物の天井、壁等に施工されたアスベスト含有物を除去するシステムである。
【0015】
室1はアスベスト含有物が天井、壁に施工された既設建築物の一室である。室1には、隣接して仮設の作業室2及び3が設けられている。室1内にはアスベスト含有物の除去作業を行なうロボット4が配設されている。ロボット4は、走行部4a(ここではクローラー)と、多関節アーム4bと、土工板4cと、を備える。ロボット本体の上部にはビデオカメラ4dが設けられており、多関節アーム4bの先端部周辺を撮影可能となっている。
【0016】
多関節アーム4bの先端には、選択的に噴射装置5とバケット6が装着可能となっている。アスベスト含有物の剥離作業時には噴射装置5を多関節アーム4bの先端に装着する。図3(b)は噴射装置5の例を示す説明図である。
【0017】
噴射装置5は、不図示の供給装置から圧送されてくる水又は懸濁水を噴射するノズル51と、ノズル51を支持する支持ユニット53と、支持ユニット53の移動を案内する案内棒52と、を備える。また、噴射装置5は、一対のプーリ54とプーリ54間に巻き回された無端ベルト54と、一方のプーリ54を回転駆動する油圧モータ56と、を備える。
【0018】
支持ユニット53には無端ベルト54の一部が固定される。油圧モータ56の駆動によってプーリ54を回転させ、無端ベルト54を走行させると、支持ユニット53は案内棒52に案内されて矢印d2方向に移動し、油圧モータ56の回転方向の切換によって矢印d2方向に往復移動可能である。支持ユニット53に対するノズル51の取り付け角度は一定の範囲で調整可能である。
【0019】
しかして、噴射装置5は、支持ユニット53の往復移動方向をアスベスト含有物が付着した壁等の付着面と平行にセットし、アスベスト含有物が付着した壁等の付着面にノズル51から水を噴射させながらこれを移動させることによりアスベスト含有物を壁等から剥離する。アスベスト含有物が剥離されれば別の箇所に噴射装置5を移動させて同様に剥離作業を行なう。
【0020】
噴射する水は研削材(重曹等)等を混入して懸濁水としてもよく、研削材を混入した場合、アスベスト含有物の剥離能力を向上できる。水又は懸濁水の噴射方向d4は、付着面の法線方向d3から傾斜した方向であることが望ましく、法線方向d3と噴射方向d4とがなす角度θは好ましくは20度〜30度である。付着面に斜めに水又は懸濁水を噴射することにより、木の皮を剥ぐようにしてアスベスト含有物を剥離することができ、アスベスト含有物を塊として剥離し易い。これにより、アスベスト含有物の剥離作業の短時間化が図れる。
【0021】
図1に戻り、剥離されて床上に散乱したアスベスト含有物は土工板4cにより集められる。剥離したアスベスト含有物の回収時には、バケット6を多関節アーム4bの先端に装着する。床上のアスベスト含有物はバケット6によりを掬い上げられ、ホッパ7に投入される。ホッパ7に投入されたアスベスト含有物は圧送装置8により回収装置9に圧送される。回収装置9はアスベスト含有物を袋体に収納する収納手段であり、アスベスト含有物は袋体に袋詰されて回収されることになる。
【0022】
作業室2内には、ロボット4や圧送装置8を遠隔操作するための制御装置10とテレビモニタ10aが配設されている。テレビモニタ10aにはビデオカメラ4d及び室1内の各所を撮影するビデオカメラ11により撮影された映像が表示される。作業者は作業室2内にてテレビモニタ10aに表示された映像を見ながらロボット4の遠隔操作を行い、アスベスト含有物の除去作業を行なう。
【0023】
図2はホッパ7、圧送装置8及び回収装置9のシステム図である。また、図3(a)はホッパ7の平面図である。ホッパ7は上方が開放されて投入口7aが形成されていると共に、ホッパ7内に蓄積されたアスベスト含有物を外部に排出するためのダクト7bを有する。ホッパ7の上部にはアスベスト含有物を粉砕する粉砕装置20が設けられている。なお、投入口7aにはバケット6と粉砕装置20との干渉防止のための格子状の金網を設けてもよい。
【0024】
粉砕装置20はホッパ7の壁部に回転自在に設けられ、かつ、互いに平行に配設された2本の軸体21、22を備える。軸体21、22には、その半径方向に突出するように粉砕棒21a、22aが多数配設されている。粉砕棒21aと粉砕棒22aとは、軸体21、22の軸方向に互い違いとなるように千鳥状に設けられ、軸体21、22の軸方向における粉砕棒21aと粉砕棒22aとの隙間は例えば、数センチ程度にされ、互いに近接するよう配置される。また、ホッパ7の壁部にも多数の粉砕棒23が設けられ、軸体21間の隙間或いは軸体22間の隙間を埋めるようにしている。
【0025】
ホッパ7の側部にはギヤボックス24が設けられている。ギヤボックス24内には、軸体21に連結された歯車24aと、軸体22に連結された歯車24bとが互いに噛合するようにして収納されている。ギヤボックス24には油圧モータ等の回転駆動装置25が設けられ、回転駆動装置25は軸体21を回転駆動する。軸体21の回転力は歯車24a及び24bを介して軸体22に伝達され、軸体21及び22の双方が反対方向に回転する。
【0026】
係る構成からなる粉砕装置20はホッパ7に投入されたアスベスト含有物を粉砕棒21aと粉砕棒22aとの回転により粉砕でき、塊状のアスベスト含有物がホッパ7に投入されてもこれをより微細なものに粉砕できる。
【0027】
圧送装置8はコンプレッサ81と空気搬送機82とを備える。コンプレッサ81は空気搬送機82へ圧縮空気を供給する。空気搬送機82は市販の空気搬送機(例えば、商品名「ジェクター」)であり、コンプレッサ81供給された圧縮空気により、矢印d1方向の気流を発生させてホッパ7からアスベスト含有物を吸引し、回収装置9へ圧送する。コンプレッサ81と空気搬送機82との間には制御弁83が配設されている。制御弁83は制御装置10による制御により、コンプレッサ81から空気搬送機82への圧縮空気の供給、遮断を行なう。
【0028】
回収装置9は、空気搬送機82からのアスベスト含有物の取り入れ口となる吸気部91と、吸気部91から導入されたアスベスト含有物をその自重により空気と分離して落下させる分離部92と、吸気部91から導入された空気を排気する排気部93と、を備える。
【0029】
分離部92の下方には円錐筒体94が設けられており、円錐筒体94の先端には袋体95が交換可能に取付けえられている。吸気部91から導入されたアスベスト含有物は円錐筒体94に沿って落下し、袋体95に収納されることになる。また、排気部93にはターボファン101が接続されており、ターボファン101によって回収装置9から排出される。
【0030】
排気部93から排出される空気にも極微細なアスベスト含有物が含まれている可能性があることから、排気部93とターボファン101との間にはフィルタ100が設けられており、フィルタ100によりアスベスト含有物が完全に除去された後、排気部93から排出される空気は大気開放される。
【0031】
円錐筒体94の下方には計測器96が配設されている。計測器96は袋体95に収納されたアスベスト含有物の量を計測するたもの装置であり、本実施形態では袋体95に収納されたアスベスト含有物の重量を計測する。計測器96の計測結果は制御装置10に送信される。
【0032】
制御装置10は計測器96の計測結果に基づき、制御弁83する。詳細には、制御装置10は計測器96が計測したアスベスト含有物の重量が、予め定めた閾値、ここでは袋体95に対するアスベスト含有物の収納量が規定量(例えば、略満杯の量)になった場合に相当する重量値を超えた場合に制御弁83を遮断し、圧送装置8によるホッパ7から回収装置9へのアスベスト含有物の圧送を停止する。圧送を自動停止することで、袋体95からアスベスト含有物がオーバーフローすることを防止できる。
【0033】
次に、係る構成からなる処理システムAにおける一連の処理例について説明する。まず、ロボット4の多関節アーム4bの先端に噴射装置5を装着してアスベスト含有物の剥離作業を行なう。このとき、噴射装置5が水又は懸濁水をアスベスト含有物の付着面に斜めに噴射することにより、アスベスト含有物を塊として剥離することができ、剥離作業の短時間化が図れる。
【0034】
続いて、剥離したアスベスト含有物を土工板4cにより掻き集める。ロボット4の多関節アーム4bの先端に、噴射装置5に代えてバケット6を装着し、床上に掻き集められたアスベスト含有物をバケット6により掬い上げてホッパ7に投入する。ホッパ7に投入されたアスベスト含有物は回収装置9へ圧送され、袋体95に袋詰されて回収される。ホッパ7に投入されるアスベスト含有物には塊状のものが存在するが、粉砕装置20により粉砕されるので、一つの袋体95により多くのアスベスト含有物を収納できる。
【0035】
こうして本実施形態では、アスベスト含有物の剥離作業をより短時間で行なえ、かつ、一つの袋体95により多くのアスベスト含有物を収納できることから、一連の処理をより能率的に行なうことができ、かつアスベスト含有物が詰められた袋の数を減らすことができ、その後の輸送、処分に有益となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る処理システムAの構成図である。
【図2】ホッパ7、圧送装置8及び回収装置9のシステム図である。
【図3】(a)はホッパ7の平面図、(b)は噴射装置5の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
A 処理システム
4 ロボット
7 ホッパ
8 圧送装置
9 回収装置
10 制御装置
20 粉砕装置
96 計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物から剥離されたアスベスト含有物が投入されるホッパと、
前記アスベスト含有物を袋体に収納する収納手段と、
前記ホッパに投入された前記アスベスト含有物を前記収納手段へ圧送する圧送手段と、
を備えた処理システムにおいて、
前記ホッパが、
前記アスベスト含有物を粉砕する粉砕手段を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項2】
更に、
前記収納手段に設けられ、前記袋体に収納された前記アスベスト含有物の量を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された前記アスベスト含有物の量が予め定めた閾値を超えた場合に前記圧送手段による前記アスベスト含有物の圧送を停止する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
更に、
前記構造物の、前記アスベスト含有物が付着した付着面に、水又は懸濁水を噴射することにより当該アスベスト含有物を剥離するロボットを備え、
前記ロボットは、
前記付着面の法線方向から傾斜した方向に前記水又は懸濁水を噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−194565(P2008−194565A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29693(P2007−29693)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「緊急アスベスト削減実用化基盤技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】