説明

出力バッファ回路及び半導体装置

【課題】デエンファシス機能を有する出力バッファ回路において、デエンファシス設定を行うと、デエンファシス非設定時には発生しなかったACコモンモードノイズの発生や、デエンファシス強度の低下が起きる。
【解決手段】電流補正回路により、デエンファシス機能を実現するための2つのバッファ回路に供給する電流を補正する。この補正回路により、デエンファシス設定時のACコモンモードノイズの発生を抑制し、デエンファシス強度の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力バッファ回路及び半導体装置に関する。特に、出力データの論理が遷移したときに振幅を強調して出力し、出力データの論理が遷移しないときに振幅を減衰させて出力するデエンファシス機能を有する出力バッファ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気通信技術の急速な発展に伴い基幹通信装置やサーバー通信装置におけるデータ伝送は、ますます高速化され、そのデータ伝送路の長距離化が進んできている。
【0003】
そこで、半導体集積回路において、低速なパラレル信号を高速なシリアル信号に変換後、データの出力をする高速インターフェイスマクロが用いられる。このような、インターフェイスマクロはSerializer/De―serializerマクロと呼ばれ、高速、大容量、かつ長距離伝送を実現するため、デエンファシスと呼ばれる機能を有する。このデエンファシス機能とは、伝送路上の通信データの減衰量に応じて予め出力データの論理が遷移したときに振幅を強調して出力し、出力データの論理が遷移しないときに振幅を減衰させ、信号波形を強調して出力するものである。
【0004】
このデエンファシス機能は、図2のような構成を持つ回路により実現可能である。即ち、通信データが差動入力され、デエンファシス時には入力データとその入力データを遅延させたデータの差分を取ることにより信号の論理が変化した直後の信号のみを強調することでデエンファシスを実現する。
【0005】
ここで、特許文献1において、デエンファシス非設定時には、デエンファシス用出力バッファをメインデータ用出力バッファとして動作させることで、回路全体の最適化をはかり、回路素子数を削減すると共に、低消費電力化を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−060073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は、本発明の観点からなされたものである。
【0008】
しかし、図2の出力バッファ回路によるデエンファシス機能の実現時には、信号の論理が変化した直後に振幅を強調して大振幅な信号を出力する必要があるが、振幅を強調する際に、バッファ回路に電流を供給する電流源回路の出力電圧が圧迫されて出力電流が減少し、所望の出力振幅を得ることができない。
【0009】
また、電流源回路の出力電流が減少して所望の出力振幅が得られないと、ACコモンモードノイズの発生やデエンファシス強度の低下といった問題が表面化する。これらの問題の詳細については後述するが、ACコモンモードノイズはデエンファシス非設定時には発生しないのでデエンファシス設定時のみ出力バッファ回路のノイズ特性が悪化することになる。また、デエンファシス強度の低下は出力バッファ回路の伝送能力の低下を意味する。
【0010】
以上のとおり、従来技術には、解決すべき問題点が存在する。
【0011】
本発明の一側面において、デエンファシス設定時の振幅強調時に、所望の出力振幅を得ることが出来、ACコモンモードノイズの発生や、デエンファシス強度の低下を防止した出力バッファ回路、半導体装置が、望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の視点によれば、入力信号を受け付ける第1のバッファ回路と、前記入力信号を遅延させた信号を受け付け、前記第1のバッファ回路と共通の出力端子に接続され、前記第1のバッファ回路の出力信号に対して位相が遅延して反転された出力信号を出力する第2のバッファ回路と、前記入力信号の論理が遷移するときに、前記第1及び第2のバッファ回路に流れる電源電流を補正する電流補正回路と、を備える出力バッファ回路が提供される。
【0013】
本発明の第2の視点によれば、上記出力バッファ回路を有する半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の各視点によれば、デエンファシス設定時の信号強調時に所望の出力振幅が得られる出力バッファ回路が提供される。さらには、出力振幅の低下を防ぐことにより、ACコモンモードノイズの発生や、デエンファシス強度の低下を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の概要を説明するための図である。
【図2】デエンファシス機能を有する出力バッファ回路の一例である。
【図3】図2のメインバッファ回路の回路図である。
【図4】図2の出力バッファ回路におけるデエンファシス設定時の波形を示す図である。
【図5】図2の出力バッファ回路におけるデエンファシス設定時のタイミングチャートである。
【図6】図2の出力バッファ回路におけるデエンファシス非設定時のタイミングチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る出力バッファ回路のブロック図である。
【図8】図7のメインバッファ回路の回路図である。
【図9】図7の出力バッファ回路におけるデエンファシス設定時のタイミングチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る出力バッファ回路のブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る出力バッファ回路のブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る出力バッファ回路のブロック図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る出力バッファ回路のブロック図である。
【図14】単相信号に対する出力バッファ回路のブロック図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る出力バッファ回路のブロック図である。
【図16】単相信号に対するデエンファシス設定時に電流の補正をしない場合のタイミングチャートである。
【図17】図15の出力バッファ回路におけるデエンファシス設定時のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、図1を用いて本発明の概要について説明する。上述のように、ACコモンモードノイズの発生やデエンファシス強度が低下するのは、信号の論理が変化した直後は振幅を強調して大振幅な信号を出力し、バッファ回路に電流を供給する電流源回路の出力電圧が圧迫され、電流源回路の出力電流が減少するためである。そこで、信号の論理が変化した直後の期間(以下、トランジションビット期間と呼ぶ)に2つのバッファに接続された電流源を可変し、2つのバッファ回路に供給する電流を電流補正回路により補正する。この補正回路により、トランジションビット期間に発生するACコモンモードノイズの抑制及びデエンファシス強度の低下の防止を実現する。
【0017】
続いて、本発明の各実施形態の説明に入る前に、デエンファシス機能を実現する出力バッファ回路の基本的な回路構成について図2を用いて説明しておく。図2はデエンファシス機能を実現する出力バッファ回路の一例である。図2の出力バッファ回路は、メインバッファ10、メインデータ用プリバッファ20、選択回路30、遅延回路40から構成される。さらに、メインバッファ10はメインデータ用メインバッファ101と、デエンファシス用メインバッファ102から構成される。
【0018】
出力バッファ回路への入力データは、出力バッファ回路非反転入力端子INPと出力バッファ回路反転入力端子INNから差動信号として入力される(差動信号61)。メインデータ用プリバッファ20は、差動信号61を入力とし、増幅された差動信号を差動信号62として出力する。
【0019】
選択回路30は、差動信号61の非反転信号と反転信号を入れ替えた(クロスした)逆相の差動信号61aと、差動信号63を入力とし、選択信号としてデエンファシス設定端子SELECTの出力信号を接続する。デエンファシス設定端子SELECTの論理に応じて逆相の差動信号61aか差動信号63のいずれかを選択して差動信号64として出力する。
【0020】
遅延回路40は、差動信号61を入力とし、遅延させた差動信号を差動信号63として出力する。
【0021】
メインデータ用メインバッファ101は、差動信号62を入力とし、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNに増幅された差動信号を出力する。
【0022】
デエンファシス用メインバッファ102は、差動信号64を入力とし、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNに増幅された差動信号を出力する。なお、デエンファシス用メインバッファ102は、非反転出力信号が出力バッファ回路反転出力端子OUTNに、反転出力信号が非反転出力端子OUTPに、反転出力端子と非反転出力端子を入れ替えて逆に接続されている。
【0023】
図3は、図2のメインバッファ10の構成の一例を示す回路図である。メインデータ用メインバッファ101は、NチャネルトランジスタM1、M2及び定電流源CCS1から構成され、デエンファシス用メインバッファ102は、NチャネルトランジスタM3、M4及び定電流源CCS2から構成されている。
【0024】
メインデータ用メインバッファ101のNチャネルトランジスタM1及びM2のソース端子はそれぞれ共通接続され、定電流源CCS1に接続される。また、差動信号62の非反転信号とNチャネルトランジスタM1のゲート端子を接続し、差動信号62の反転信号をNチャネルトランジスタM2のゲート端子に接続する。さらに、NチャネルトランジスタM1及びM2のドレイン端子を抵抗R1及びR2を介して電源VDDに接続する。
【0025】
デエンファシス用メインバッファ102のNチャネルトランジスタM3及びM4のソース端子もそれぞれ共通接続され、定電流源CCS2に接続される。また、差動信号64の非反転信号とNチャネルトランジスタM3のゲート端子を接続し、差動信号64の反転信号をNチャネルトランジスタM4のゲート端子に接続する。さらに、NチャネルトランジスタM3及びM4のドレイン端子は、それぞれ、NチャネルトランジスタM1及びM2のドレイン端子と共通に接続し、抵抗R1及びR2を介して電源VDDに接続する。
【0026】
続いて、上記のような構成を持つ出力バッファ回路の基本的な動作を説明する。この出力バッファ回路においては、デエンファシス設定端子SELECTをHレベルに設定すればデエンファシス機能が有効になり、Lレベルに設定すればデエンファシス機能は無効になる。
【0027】
デエンファシス設定時は、メインバッファ10において、差動信号62と、遅延回路40で遅延させた差動信号63との2つの信号の減算を行い、信号の論理の変化時の振幅を強調(エンファシス)した信号を出力する。
【0028】
一方、デエンファシス非設定時は、メインバッファ10において、差動信号61と逆相の差動信号61aの2つの信号の減算を行い出力する。差動信号と、その差動信号をクロスさせた信号の減算なのでこの場合は差動信号61同士の加算に相当する。
【0029】
デエンファシス設定時には、メインバッファから出力(OUTP/OUTN)する信号の論理が変化した直後の1ビット目の信号であるトランジションビット(遷移ビット)の振幅は強調されて出力するが、トランジションビット以降の信号であり、トランジションビットにおける遷移後の論理と同じ論理のノントランジションビット(非遷移ビット)の振幅は減衰する。
【0030】
続いて、図4乃至図6を参照し、デエンファシス設定時の動作の詳細を説明する。なお、説明にあたり、HIGHレベルを論理1、LOWレベルを論理0とする。ここで、デエンファシス設定時の差動信号61及び差動信号64の非反転信号と、出力端子OUTPの関係を示したものが図4である。
【0031】
はじめに、差動信号62の非反転信号が0(反転信号が1)から非反転信号が1(反転信号が0)に変化する場合を考える。その際の選択回路30の出力である差動信号64の非反転信号は0である(図4のt1)。すると、ドレイン端子が共通接続されたNチャネルトランジスタM1及びM4がオンとなり、NチャネルトランジスタM2及びM3はオフになる。その結果、抵抗R1には、定電流源CCS1から供給される電流I1と定電流源CCS2から供給される電流I2の和に対応する電流が流れる。一方、抵抗R2には、電流は流れない。
【0032】
この時の出力端子(OUTN及びOUTP)の電圧を計算すると、
OUTN=VDD−(I1+I2)×R1
OUTP=VDD
となる。OUTPとOUTNの差電位である振幅はOUTP−OUTN=(I1+I2)×R1となる。
【0033】
次に、差動信号62の非反転信号が1(反転信号が0)で、差動信号64の非反転信号が1(反転信号が0)の場合を考える(図4のt2)。この場合は、NチャネルトランジスタM1及びM3がオンとなり、NチャネルトランジスタM2及びM4はオフになる。そのため、抵抗R1及びR2には、それぞれ定電流源CCS1から供給される電流I1及びCCS2から供給される電流I2に対応する電流が流れる。
【0034】
その時の出力端子の電圧は
OUTN=VDD−R1×I1
OUTP=VDD−R2×I2
となり、振幅はOUTP−OUTN=R1×I1−R2×I2となる。さらに、R1=R2=Rとすれば、OUTP−OUTN=R×(I1−I2)となる。以上のことから、差動信号62のデータが変化すれば、変化直後の振幅は大きくなり、それ以外のときの振幅は小さくなり、デエンファシスが行われていることが分かる。
【0035】
以上のように、図2の出力バッファ回路によってトランジションビットを強調することでデエンファシス機能を実現する。しかし、図2の出力バッファ回路には、トランジションビット期間のロウ電圧が設計値まで低下しないという問題点がある。
【0036】
次に、トランジションビット期間においてロウ電圧が設計値まで低下しない理由について図5のタイミングチャートを用いて説明する。図5は、図2の回路におけるデエンファシス設定時の動作を示すタイミングチャートであり、横軸は時間を示し縦軸は電圧と電流を示す。期間T1はトランジションビット期間であり、期間T2はノントランジションビット期間である。縦軸の信号は、SELECT信号、差動信号61、遅延回路40の出力する差動信号63、差動信号62、差動信号64、出力バッファ回路の反転出力OUTN、出力バッファ回路の非反転出力OUTP、NチャンネルトランジスタM1〜M4のソース端子における電圧、定電流源CCS1及びCCS2から供給される電流I1及びI2である。なお、図5における差動信号の非反転信号は実線で表現し、反転信号は破線で表現している。
【0037】
また、電圧レベルVOH1はトランジションビット期間のハイ電圧、電圧レベルVOL1はトランジションビット期間のロウ電圧、電圧レベルVOH2はノントランジションビット期間のハイ電圧、電圧レベルVOL2はノントランジションビット期間のロウ電圧を示す。VcmacはACコモンモード電圧を示す電圧レベルである。
【0038】
まず始めに、期間T1(トランジションビット期間)のトランジションビット状態の動作について説明する。
【0039】
期間T1は送信データが0から1、又は1から0に変化した直後のトランジションビット状態であり、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNの電圧振幅は、期間T2(ノントランジションビット期間)よりも大きく、信号の変化が強調される。つまり、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNの出力電圧レベルは、それぞれハイ論理出力レベルVOH1と、ロウ論理出力レベルVOL1になる。
【0040】
一方、図示はしていないが、NチャネルトランジスタM1〜M4には、Nチャネルトランジスタ毎にドレインソース間電圧Vdsに依存するドレインソース間抵抗Rdsが存在する。このドレインソース間抵抗Rdsを介して、NチャネルトランジスタM1及びM2のドレインの信号が共通に接続されたソースに伝播し、以下の様な影響を与える。
【0041】
特に、ドレインの信号がロウ論理出力レベルVOL1の際には、ドレインソース間抵抗Rdsの値は、ハイ論理出力レベルVOH1の時よりも小さくなり、ドレイン電圧がよりソースに伝播しやすくなり、その影響は大きくなる。
【0042】
また、定電流源CCS1及びCCS2は、通常はNチャネルトランジスタで実現される。上記NチャネルトランジスタM1及びM2のソース、又は、NチャネルトランジスタM3及びM4のソースは、即ち、定電流源CCS1又はCCS2を構成するNチャネルトランジスタのドレインであるので、定電流源CCS1及びCCS2を構成するNチャネルトランジスタのドレイン電圧は低下する。すると、定電流源となるNチャネルトランジスタのドレインソース間電圧Vdsが低下し、定電流源CCS1、CCS2に流れる定電流I1及びI2は減少し、VDD−(I1+I2)×R1で決まるロウ論理電圧レベルは、VOL1まで低下しない。つまり、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルは、VOL1まで低下することができない。その結果、デエンファシスを設定するとトランジションビット期間においてACコモンモードノイズが発生する。
【0043】
次に、デエンファシス設定時に発生するACコモンモードノイズについて説明する。ACコモンモードノイズとは、伝送信号とグランド間に発生するノイズであって、伝送路から不要な放射ノイズを発生させる原因となる。ACコモンモードノイズVcmacは、下記の式(1)で計算できる。
Vcmac=(OUTP+OUTN)/2 ・・・(1)
式(1)から、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNが相補の関係であれば、ACコモンモードノイズは発生しないことが分かる。
【0044】
例えば、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPのハイ論理出力レベルが1V、出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルが−0.8Vとすると、式(1)によりVcmac=0.1VのACコモンモードノイズが発生することになる。このように、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルが、VOL1まで低下することができないと、図2の出力バッファ回路にはACコモンモードノイズが発生することになる。
【0045】
続いて、期間T2(ノントランジションビット期間)のノントランジションビット状態の動作について説明する。
【0046】
期間T2は、通信データとして0又は1が連続するノントランジションビット状態であり、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNの電圧振幅は、期間T1(トランジションビット)よりも小さくなり、信号の強調は行われていない。つまり、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNの出力電圧レベルは、それぞれハイ論理出力レベルVOH2と、ロウ論理出力レベルVOL2になる。
【0047】
このロウ論理出力レベルVOL2は、期間T1と同様に、NチャネルトランジスタM1〜M4のソースに伝播して影響を与えることになるが、VOL2はロウ論理出力レベルVOL1と比較すると高い電圧なので、定電流源CCS1、CCS2の出力電圧を圧迫し、定電流源CCS1、CCS2に流れる電流I1及びI2が減少することはない。従って、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルは、VOL2まで低下し、式(1)にて計算されるACコモンモードノイズVcmacは発生しない(正常な中心値を示す)。
【0048】
例えば、ハイ論理出力レベルが0.5V、ロウ論理出力レベルが−0.5Vとすれば、式(1)によりVcmac=0Vと計算できる。
【0049】
このように、図2の出力バッファ回路は、デエンファシスを設定するとトランジションビット期間T1において、ACコモンモードノイズVcmacを発生させる。
【0050】
なお、図6は図2における出力バッファ回路におけるデエンファシス非設定時の動作を示すタイミングチャートである。図6からはデエンファシス非設定時にはACコモンモードノイズは発生しないことが分かる。
【0051】
さらに、トランジションビット期間のロウ電圧が設計値まで低下しないと、トランジションビット期間とノントランジションビット期間の電圧振幅比で計算されるデエンファシス強度が低下するという問題がある。
ここで、デエンファシス強度は次の式(2)で計算される。
20log(期間T1の電圧振幅/期間T2の電圧振幅)・・・(2)
即ち、トランジションビット期間のロウ電圧がVOL1まで低下しないと期間T1の電圧振幅が低下し、式(2)で計算されるデエンファシス強度が低下してしまう。
【0052】
[第1の実施形態]
続いて、本発明の第1の実施形態に係る出力バッファ回路について図面を参照して詳細に説明する。図7は、第1の実施形態に係る出力バッファ回路の構成を示したブロック図である。図7において図2と同一構成要素には、同一の符号を表し、その説明を省略する。
【0053】
本実施形態に係る出力バッファ回路は、図2の出力バッファ回路に対して電流補正回路50を有する点で相違する。この電流補正回路50により、デエンファシス設定時におけるNチャンネルトランジスタのソース端子に流れる電流の補正をおこなう。
【0054】
電流補正回路50と各信号は以下のように接続される。差動信号62の非反転信号はメインデータ非反転入力端子D1Pに、差動信号62の反転信号はメインデータ反転入力端子D1Nに、差動信号64の非反転信号はデエンファシスデータ非反転入力端子D2Pに、差動信号64の反転信号はデエンファシスデータ反転入力端子D2Nに、デエンファシス設定端子SELECTは、制御回路設定端子SELに接続される。さらに、電流補正回路50は出力端子として2端子有し、補正電流出力端子IOUT1はメインデータ用メインバッファ111と、補正電流出力端子IOUT2は、デエンファシス用メインバッファ112と接続される。これらの補正電流出力端子IOUT1及びIOUT2は補正電流65を出力する。
【0055】
上述のように、メインデータ用メインバッファ111は、差動信号62に加えてIOUT1端子とも接続され、IOUT1端子より補正電流65を入力とする。同様に、デエンファシス用メインバッファ112は、差動信号64に加えてIOUT2端子とも接続され、IOUT2端子より補正電流65を入力とする。
【0056】
次に、図8に本実施形態に係る出力バッファ回路の回路図を示す。本実施形態に係る出力バッファ回路は、メインバッファ11と電流補正回路50で構成される。
【0057】
メインデータ用メインバッファ111は、抵抗R1、R2とNチャネルトランジスタM1、M2、M5で構成される。デエンファシス用メインバッファ112は、メインデータ用メインバッファ111と共有する抵抗R1、R2とNチャネルトランジスタM3、M4、M6で構成される。
【0058】
差動信号62の非反転信号は、NチャネルトランジスタM1のゲート端子及び電流補正回路50のメインデータ非反転入力端子D1Pと接続されている。差動信号62の反転信号は、NチャネルトランジスタM2のゲート端子及び電流補正回路50のメインデータ反転入力端子D1Nと接続されている。同様に、差動信号64の非反転信号は、NチャネルトランジスタM3のゲート端子及び電流補正回路50のデエンファシスデータ非反転入力端子D2Pと接続され、差動信号64の反転信号は、NチャネルトランジスタM4のゲート端子及び電流補正回路50のデエンファシスデータ反転入力端子D2Nと接続されている。
【0059】
また、NチャネルトランジスタM1及びM2の各ソース端子は互いに共通接続され、NチャネルトランジスタM5のドレイン端子及び補正電流出力端子IOUT1に接続されている。同様に、NチャネルトランジスタM3及びM4の各ソース端子は互いに共通接続され、NチャネルトランジスタM6のドレイン端子及び補正電流出力端子IOUT2に接続されている。NチャネルトランジスタM5及びM6の各ゲート端子は共にバイアス端子VBに接続され、各ソース端子はグランドに接続されている。NチャネルトランジスタM5は、電流源として機能し、NチャネルトランジスタM1及びM2で構成されるメインデータ用メインバッファ111の差動対に電流を供給する。同様に、NチャネルトランジスタM6は、電流源として機能し、NチャネルトランジスタM3及びM4で構成されるデエンファシス用メインバッファ112の差動対に電流を供給する。以上が、メインデータ用メインバッファ111とデエンファシス用メインバッファ112の詳細である。
【0060】
次に、電流補正回路50について説明する。電流補正回路50は、スイッチ201、スイッチ202と制御回路203で構成される。
【0061】
電流補正回路50の一実施例として、スイッチ201及び202はNチャネルトランジスタM7及びM8で構成可能であり、制御回路203は論理回路G1〜G4から構成可能である。
【0062】
スイッチ201のNチャネルトランジスタM7のドレイン端子は補正電流出力端子IOUT1に、ゲート端子は論理回路G4の出力に、ソース端子はグランドにそれぞれ接続されている。スイッチ202の接続も同様である。
【0063】
制御回路203において、AND論理回路G1の入力は、メインデータ非反転入力端子D1Pに、もう一方の入力は、デエンファシスデータ反転入力端子D2Nにそれぞれ接続されている。AND論理回路G1の出力はOR論理回路G3の入力に接続されている。
【0064】
次に、AND論理回路G2の入力は、メインデータ反転入力端子D1Nに、もう一方の入力は、デエンファシスデータ非反転入力端子D2Pにそれぞれ接続されている。AND論理回路G2の出力は、OR論理回路G3のAND論理回路G1の出力とは異なる入力に接続されている。OR論理回路G3の出力はAND論理回路G4に入力され、AND論理回路G4の他の入力は制御回路設定端子SELに接続されている。
【0065】
続いて、本実施形態に係る出力バッファ回路の動作について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態に係るバッファ回路の動作を示すタイミングチャートであり、図5におけるタイミングチャートと同様に横軸は時間を示し縦軸は電圧と電流を示す。
【0066】
縦軸の信号は、SELECT信号、差動信号61、遅延回路40の出力する差動信号63、差動信号62、差動信号64、論理回路G1の出力(ノードS21)、論理回路G2の出力(ノードS22)、論理回路G3の出力(ノードS23)、論理回路G4の出力(ノードS24)、補正電流信号IOUT1、補正電流信号IOUT2、出力バッファ回路の反転出力OUTN、出力バッファ回路の非反転出力OUTP、ノードS1の電位、ノードS2の電位、NチャネルトランジスタM5のドレインソース間電流(M5_Ids)、NチャネルトランジスタM6のドレインソース間電流(M6_Ids)である。なお、図5と同様に差動信号の非反転信号は実線で表現し、反転信号は破線で表現している。
【0067】
出力バッファ回路のデエンファシス動作は論理回路G4により定まる。論理回路G4の制御回路設定端子SELがHレベルのときデエンファシス動作が有効となり、他方の入力(ノードS23)をそのままノードS24に出力する。一方、Lレベルのときは、デエンファシス動作が無効となり、Lレベルを出力しスイッチ201、スイッチ202を常時遮断する。ノードS24は、制御回路203の演算結果を示し期間T1のみHレベルを出力し、期間T2ではLレベルを出力することになる。
【0068】
始めに、図9における期間T1のトランジションビット状態の動作について説明する。
【0069】
上述のように、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理レベルは、VOL1まで低下することができず、式(1)にて計算されるACコモンモードノイズVcmacは上昇を始める。
【0070】
次に、制御回路203の出力であるノードS24はHレベルであるから、スイッチ201及びスイッチ202のNチャネルトランジスタM7及びM8が導通する。すると、補正電流出力端子IOUT1及びIOUT2から補正電流IB1及びIB2が流れる。ここで、補正電流IB1及びIB2は、NチャネルトランジスタM5及びM6のドレインソース間電流の減少分を補う電流値に設定する。
【0071】
その結果、メインデータ用メインバッファ111及びデエンファシス用メインバッファ112は、ロウ論理出力レベルを出力する時に補正電流IB1及びIB2により補正されるので、ロウ論理レベルとしてVOL1が出力可能となる。
【0072】
続いて、期間T2(ノントランジションビット期間)のノントランジションビット状態の動作について説明する。上述のように、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルは、VOL1より高いVOL2までの低下なので、NチャネルトランジスタM5のドレインソース間電流(M5_Ids)及びNチャネルトランジスタM6のドレインソース間電流(M6_Ids)は減少しない。従って、式(1)にて計算されるACコモンモードノイズVcmacは0となる。
【0073】
以上のように、デエンファシス機能を持つ出力バッファ回路において、電流補正回路50を備えることで、トランジションビット期間に振幅の大きな低電圧レベルの信号を出力端子OUTN又はOUTPから出力することにより定電流源トランジスタM5、M6に流れる電流が減少した分を電流補正回路50により加算・補正することで、ACコモンモードノイズVcmacを一定に維持できる。
【0074】
即ち、ACコモンモードノイズVcmacが発生するトランジションビット期間においてのみ、メインバッファ11の定電流と並列に接続するスイッチを介して補正電流を流し、出力バッファ回路出力端子OUTP及びOUTNのロウ論理出力レベルをVOL1まで低下させ、当該期間のACコモンモードノイズVcmacの発生を抑制する様に作用するからである。その結果、ACコモンモードノイズを抑制することができる。
【0075】
例えば、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPのハイ論理出力レベルが1V、出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルが−0.8Vとし、電流補正回路50が出力する補正電流で決まる電圧を−0.2Vとすると、出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルに加算されるので、式(1)によれば、Vcmac=(1V+(−0.8V−0.2V))/2=0Vと計算され、ACコモンノイズは発生しないことになる。
【0076】
このように、第1の実施形態に係る出力バッファ回路は、ACコモンモードノイズVcmacを発生させることなく、デエンファシス機能を実現することができる。
【0077】
また、電流補正回路50が出力する補正電流により、トランジションビット期間の電圧振幅が回復するため、デエンファシス強度の低下を防止できる。
【0078】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図10は、第2の実施形態に係るメインバッファ回路の回路図である。図10において図8と同一構成要素には、同一の符号を表し、その説明を省略する。
【0079】
第1の実施形態との違いは、スイッチ211、スイッチ212においてNチャネルトランジスタM9及びM10をそれぞれ追加し、制御回路213において論理回路G3を削除し、論理回路G5を追加したことである。
【0080】
スイッチ211において、NチャネルトランジスタM9のドレイン端子とソース端子は、NチャネルトランジスタM7のドレイン端子とソース端子にそれぞれ接続され、ゲート端子は論理回路G5の出力に接続されている。スイッチ212の接続も同様である。
【0081】
さらに、制御回路213において、制御回路設定端子SELは論理回路G4に入力され、他方の入力は論理回路G1の出力に接続される。論理回路G4の出力はノードS24に接続される。また、制御回路設定端子SELは論理回路G5にも入力され、他方の入力は論理回路G2の出力に接続される。論理回路G5の出力はノードS25に接続される。
【0082】
第2の実施形態では、低速な動作のOR論理回路を削除して入力から出力までの遅延時間を削減し、より高速動作するAND論理回路のみで制御回路213を構成している。さらに、制御回路213の演算結果を2系統出力し、スイッチ211、スイッチ212の構成を並列とした。その結果、より高速な入力信号に対応可能な構成となっている。
【0083】
即ち、制御回路213の出力であるノードS24及びノードS25の演算結果により、スイッチ211及びスイッチ212のNチャネルトランジスタM7〜M10が導通し、補正電流出力端子IOUT1及びIOUT2から補正電流IB1及びIB2が流れる。そして、制御回路203の遅延時間を削減しスイッチ201、スイッチ202を並列化する。さらに、論理回路G1をメインデータ非反転入力端子D1Pと、デエンファシスデータ反転入力端子D2Nとから、入力信号の論理の遷移を検出する第1の論理ゲートとして動作させ、論理回路G2をメインデータ反転入力端子D1Nと、デエンファシスデータ非反転入力端子D2Pとから、入力信号の論理の遷移を検出する第2の論理ゲートとし動作させる。その結果、第1の論理ゲート又は第2の論理ゲートのいずれかが信号の論理の遷移を検出した場合にはスイッチ211及びスイッチ212において並列化されたNチャネルトランジスタを導通させることになり、入力信号の論理の遷移に対してより高速に動作可能となる。
【0084】
その他の動作については第1の実施形態に係る出力バッファ回路と同様である。
【0085】
[第3の実施形態]
続いて、第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図11は、第3の実施形態に係るメインバッファ回路の回路図である。図11において図8と同一構成要素には、同一の符号を表し、その説明を省略する。
【0086】
第1の実施形態との違いは、スイッチ221、スイッチ222においてNチャネルトランジスタM7及びM8を削除し、NチャネルトランジスタM11〜M16と抵抗R3、R4を追加したことである。
【0087】
スイッチ221において、抵抗R3の一端は電源VDDに接続され、もう一端はNチャネルトランジスタM13のドレイン端子とゲート端子及び、NチャネルトランジスタM12のドレイン端子に接続される。NチャネルトランジスタM13のソース端子はグランドに接続される。NチャネルトランジスタM12のゲート端子は論理回路G4の出力に接続され、ソース端子はNチャネルトランジスタM11のゲート端子に接続される。NチャネルトランジスタM11のドレイン端子は補正電流出力端子IOUT1に、ソース端子はグランドにそれぞれ接続される。スイッチ222の接続も同様である。
【0088】
第3の実施形態では、スイッチ221、スイッチ222を定電流源となるように構成し、補正電流65の高精度化が実現可能な構成である。制御回路203の出力であるノードS24の演算結果により、スイッチ221のNチャネルトランジスタM12が導通する。すると、抵抗R3とNチャネルトランジスタM13でカレントミラー回路を構成し、高精度な電流がNチャネルトランジスタM11にコピーされ、補正電流出力端子IOUT1から補正電流IB1が流れる。スイッチ222における動作も同様である。
【0089】
以上のように、スイッチ221、スイッチ222にカレントミラー回路を適用することでより高精度な電流補正が可能になる。
【0090】
その他の動作については第1の実施形態に係る出力バッファ回路と同様である。
【0091】
[第4の実施形態]
続いて、第4の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図12は、第4の実施形態に係るメインバッファ回路の回路図である。図12において図8と同一構成要素には、同一の符号を表し、その説明を省略する。
【0092】
第1の実施形態との違いは、スイッチ231、スイッチ232においてNチャネルトランジスタM7及びM8を削除し、NチャネルトランジスタM17〜M20と抵抗R5〜8を新たに追加したことである。
【0093】
スイッチ231において、NチャネルトランジスタM18のドレイン端子は、電源VDDに、ゲート端子は論理回路G4の出力に、ソース端子は抵抗R5の一端にそれぞれ接続される。抵抗R5及びR6は直列に接続され、中点をNチャネルトランジスタM17のゲート端子に接続し、抵抗R6のもう一端をグランドに接続する。NチャネルトランジスタM17のドレイン端子は補正電流出力端子IOUT1に、ソース端子はグランドにそれぞれ接続される。スイッチ232の接続も同様である。
【0094】
第4の実施形態では、スイッチ231をNチャネルトランジスタM17とソースフォロアアンプにて構成し、制御回路203の演算結果のレベルシフトと抵抗分圧比によって電圧振幅を調整可能とし、補正電流65の微調整が可能な構成となっている。
【0095】
制御回路203の出力であるノードS24の演算結果により、スイッチ231のNチャネルトランジスタM18が導通し、ソース端子は、ゲートソース間電圧Vgs分だけレベルシフトした電圧信号が出力され、更に抵抗R5及びR6の抵抗分圧比によって電圧振幅が調整可能となっている。
【0096】
次に、ノードS24の演算結果をレベルシフトと電圧振幅が調整されたNチャネルトランジスタM17のゲート信号により、NチャネルトランジスタM17が導通し、補正電流出力端子IOUT1から補正電流IB1が流れる。つまり、NチャネルトランジスタM17のゲート電圧は抵抗分圧比によって任意に調整可能となり、補正電流IB1を微調整することができる。スイッチ232における動作も同様である。
【0097】
以上により、スイッチ231にNチャネルトランジスタM17とソースフォロアアンプを適用したことで補正電流65の微調整が可能となる。
【0098】
その他の動作については第1の実施形態に係る出力バッファ回路と同様である。
【0099】
[第5の実施形態]
第1乃至第4の実施形態においては、負荷抵抗R1及びR2とNチャンネルトランジスタを用いたメインバッファ回路を有する出力バッファ回路について説明を行ってきた。本実施形態においては、このようなメインバッファ回路に代えて、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)によりメインバッファを構成した場合の実施形態について説明する。図13がCMOSによりメインバッファを構成した場合の回路図である。
【0100】
第1の実施形態に係る出力バッファ回路との違いはメインデータ用メインバッファ111及びデエンファシス用メインバッファ112に代えて、メインデータ用メインバッファ121及びデエンファシス用メインバッファ122を備える点である。
【0101】
メインデータ用メインバッファ121は、PチャンネルトランジスタP1及びP2、NチャンネルトランジスタM21及びM22、定電流源の役割をするNチャンネルトランジスタM5から構成されている。PチャンネルトランジスタP1のドレイン端子及びNチャンネルトランジスタM21のドレイン端子を共通接続し、出力バッファ回路反転出力端子OUTNとする。さらに、PチャンネルトランジスタP2及びNチャンネルトランジスタM22のドレイン端子を共通接続し、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPとする。また、NチャンネルトランジスタM21及びM22のソース端子をNチャンネルトランジスタM5のドレイン端子と接続する。差動信号62の非反転信号は、PチャンネルトランジスタP1及びNチャネルトランジスタM21のゲート端子と接続し、差動信号62の反転信号は、PチャンネルトランジスタP2及びNチャネルトランジスタM22のゲート端子に接続する。デエンファシス用メインバッファ122の接続も同様である。
【0102】
このように、CMOSによりメインデータ用メインバッファ121及びデエンファシス用メインバッファ122を構成した場合であっても、デエンファシス設定時には振幅を強調して大振幅な信号を出力する必要があるため、定電流源を構成するNチャンネルトランジスタM5及びM6のドレインソース間電圧Vdsは減少し、定電流I1及びI2が減少する。その結果、本実施形態においても、出力バッファ回路非反転出力端子OUTPと出力バッファ回路反転出力端子OUTNのロウ論理出力レベルは、VOL1まで低下することができず、式(1)にて計算されるACコモンモードノイズVcmacは上昇してノイズが発生する。また、デエンファシス強度も低下する。
【0103】
そこで、第1乃至第4の実施形態において説明した電流補正回路50〜53を用いて、定電流源トランジスタM5及びM6に流れる電流が減少した分を加算・補正することにより、ACコモンモードノイズVcmacを一定に維持可能とし、デエンファシス強度の低下を防止する。
【0104】
なお、図13では電流補正回路の一例として電流補正回路50を図示している。さらに、メインデータ用メインバッファ121及びデエンファシス用メインバッファ122、電流補正回路50〜53の動作については第1乃至第4の実施形態で説明した動作と同様であるので、その説明を省略する。
【0105】
[第6の実施形態]
第1乃至第5の実施形態では、差動信号により動作する出力バッファ回路について説明を行ってきたが、単相信号についてもデエンファシス機能を有する出力バッファ回路は存在する。そのような、単相信号に対する出力バッファ回路においてもデエンファシス設定時には振幅を強調して大振幅な信号を出力する必要があるため、定電流源を構成するNチャンネルトランジスタのドレインソース間電圧Vdsは減少し、デエンファシス強度の低下という問題が生じる。そこで、本実施形態においては単相信号で動作する出力バッファ回路について説明する。
【0106】
図14が単相信号でデエンファシス機能を実現する出力バッファ回路のブロック図である。図14の出力バッファ回路は、メインバッファ12、インバータ21、選択回路31、遅延回路41、電流補正回路54から構成される。さらに、メインバッファ12は、メインデータ用メインバッファ131と、デエンファシス用メインバッファ132から構成される。
【0107】
出力バッファ回路への入力データは、単相信号71として、入力端子INから入力される。インバータ21は、単相信号71を入力とし、単相信号を反転した信号を単相信号72として出力する。
【0108】
遅延回路41は、単相信号71を入力とし、遅延させた信号を単相信号73として出力する。
【0109】
選択回路31は、単相信号72と単相信号73のいずれかを選択して単相信号74として出力する。
【0110】
メインデータ用メインバッファ131は、単相信号72を入力とし、デエンファシス用メインバッファ132は、単相信号74を入力とする。メインデータ用メインバッファ131とデエンファシス用メインバッファ132の出力は共通して接続され、それぞれの入力信号を反転した信号を出力端子OUTから出力する。
【0111】
また、単相信号72は電流補正回路54のD1端子に、単相信号74はD2端子に、デエンファシス設定端子SELECTは制御回路設定端子SELにそれぞれ接続されている。さらに、電流補正回路54のIOUT1はメインデータ用メインバッファ131と、IOUT2端子はデエンファシス用メインバッファ132とそれぞれ接続されている。
【0112】
図15は、メインバッファ12と電流補正回路54の回路図である。メインデータ用メインバッファ131は、PチャンネルトランジスタP5、NチャンネルトランジスタM25、定電流源の役割をするNチャンネルトランジスタM5から構成されている。PチャンネルトランジスタP5のドレイン端子及びNチャンネルトランジスタM25のドレイン端子を共通接続し、出力端子OUTとする。さらに、PチャンネルトランジスタP5のソース端子を電源VDDに接続、NチャンネルトランジスタM25のソース端子をNチャンネルトランジスタM5のドレイン端子に接続する。また、NチャンネルトランジスタM25のソース端子と電流補正回路54のIOUT1と接続する。さらに、単相信号72をPチャンネルトランジスタP5のゲート端子及びNチャンネルトランジスタM25のゲート端子と共通接続する。デエンファシス用メインバッファ132の構成もメインデータ用メインバッファ131と同様である。
【0113】
続いて、単相信号に対応した出力バッファ回路のデエンファシス設定時の動作について説明する。単相信号に対するデエンファシス動作も差動信号に対する動作と同様であり、デエンファシス設定時には出力する信号の論理が変化した直後の1ビット目の振幅を強調して出力する。即ち、デエンファシス設定時は、メインバッファ12において、単相信号72と、遅延回路41で遅延させた単相信号73との2つの信号の減算を行い、信号の論理の変化時の振幅を強調(エンファシス)した信号を出力する。
【0114】
以上のように、単相信号に対応した出力バッファ回路によって信号の論理が変化した直後の信号を強調することでデエンファシス機能を実現する。しかし、単相信号の場合も、デエンファシス設定時に振幅を強調して大振幅な信号を出力する必要があるため、定電流源を構成するNチャンネルトランジスタのドレインソース間電圧Vdsは減少し、出力バッファ回路の出力端子OUTのロウ論理出力レベルが、VOL1まで低下することができないという問題が生じる(図16参照)。
【0115】
そこで、電流補正回路を用いてデエンファシス設定時に定電流源に流れる電流の補正を行う。本実施形態で示した電流補正回路54は第1の実施形態で説明した電流補正回路50とは制御回路203の構成が異なるが基本的な動作については同様である。即ち、デエンファシス設定時は制御回路設定端子SELがHレベルであって、入力信号が0から1に変化した直後(トランジションビット期間)では、AND論理回路G6の出力がHレベルとなりAND論理回路G7がそのままノードS25に出力し、スイッチ201及び202をオンする。その結果、定電流源トランジスタM5、M6に流れる電流が減少した分を電流補正回路54により加算・補正され、出力バッファ回路の出力端子OUTのロウ論理出力レベルを、VOL1まで低下させることができる。なお、電流補正回路54のスイッチ201及び202を、それぞれスイッチ221及び222、又はスイッチ231及びスイッチ232に置換え可能であることは当然である。ただし、スイッチ211及び212は差動信号時に用いることが前提であるので、スイッチ201及び202をこれらに置き換えることはできない。
【0116】
続いて、単相信号にデエンファシス設定を行った場合の動作波形を図17に示す。図16では、VOL1までロウ論理出力レベルを低下させることが出来なかったが、電流補正回路54によりNチャンネルトランジスタM5、M6に流れる電流を補正し、VOL1まで低下させることが可能であることが分かる。
【0117】
その結果、電流補正回路54によりトランジションビット期間とノントランジションビット期間の電圧振幅比で計算されるデエンファシス強度の低下が防止できる。
【0118】
なお、上記の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。例えば、NチャンネルトランジスタとPチャンネルトランジスタを入れ替えても、電源等の接続を適宜変更すれば対応可能である。即ち、Nチャンネルトランジスタを第1導電型トランジスタ、Pチャンネルトランジスタを第2導電型トランジスタと捉える事ができる。
【符号の説明】
【0119】
10、11、12 メインバッファ
20 メインデータ用プリバッファ
21 インバータ
30、31 選択回路
40、41 遅延回路
50、51、52、53、54 電流補正回路
101、111、121、131 メインデータ用メインバッファ
102、112、122、132 デエンファシス用メインバッファ
201、202、211、212、221、222、231、232 スイッチ
203、213、223 制御回路
CCS1、CCS2 定電流源
G1、G2、G4、G5、G6、G7 AND論理回路
G3 OR論理回路
M1〜M26 Nチャンネルトランジスタ
P1〜P6 Pチャンネルトランジスタ
R1〜R8 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受け付ける第1のバッファ回路と、
前記入力信号を遅延させた信号を受け付け、前記第1のバッファ回路と共通の出力端子に接続され、前記第1のバッファ回路の出力信号に対して位相が遅延して反転された出力信号を出力する第2のバッファ回路と、
前記入力信号の論理が遷移するときに、前記第1及び第2のバッファ回路に流れる電源電流を補正する電流補正回路と、
を備えることを特徴とする出力バッファ回路。
【請求項2】
前記第1及び第2のバッファ回路はそれぞれ電流源回路を備え、前記電流補正回路は、前記入力信号の論理が遷移するときに、前記電流源回路に流れる電流が減少することを補うように電源電流を流す、請求項1の出力バッファ回路。
【請求項3】
前記電流補正回路は、
前記電流源回路と並列に接続され、前記電流源回路と並列に電流の供給が可能な複数のスイッチと、
前記入力信号の論理の遷移を検出して前記スイッチの導通非導通を制御する制御部と、
を備える請求項2の出力バッファ回路。
【請求項4】
前記複数のスイッチは、それぞれ、ソースとドレインが前記電流源回路と並列に接続され、ゲートが前記制御部の出力信号に接続されたMOSトランジスタを備える請求項3の出力バッファ回路。
【請求項5】
前記複数のスイッチは、それぞれ、カレントミラー回路を備え、前記カレントミラー回路に接続されたMOSトランジスタにより電流の供給及び遮断が可能な請求項3の出力バッファ回路。
【請求項6】
前記複数のスイッチは、それぞれ、動作が前記制御部により制御されたソースフォロアアンプを備え、前記ソースフォロアアンプに接続された抵抗列の中点にゲートが接続され、ソースとドレインが前記電流源回路と並列に接続されたMOSトランジスタにより電流の供給及び遮断が可能な請求項3の出力バッファ回路。
【請求項7】
前記制御部は、
前記入力信号の非反転信号と前記入力信号を遅延させた信号の反転信号の論理積を出力する第1のアンド回路と、
前記入力信号の反転信号と前記入力信号を遅延させた信号の非反転信号の論理積を出力する第2のアンド回路と、
前記第1のアンド回路と前記第2のアンド回路の論理和を出力するオア回路と、
前記オア回路の出力と所定の選択信号の論理積により前記スイッチの導通非導通を制御する請求項4乃至6いずれか一に記載の出力バッファ回路。
【請求項8】
前記出力端子は、一対の差動信号出力端子であり、
前記第1及び第2のバッファ回路は、
それぞれ一対の差動信号を入力し、一対の差動信号を前記一対の差動信号出力端子に出力する差動対を含む差動回路であり、
前記第1のバッファ回路の非反転信号出力端子は、前記第2のバッファ回路の反転信号出力端子と接続され、かつ、前記第1のバッファ回路の反転信号出力端子は、前記第2のバッファ回路の非反転信号出力端子と接続され、
前記電流補正回路は、前記一対の差動信号出力端子のコモンモード電圧が一定の電圧を維持するように前記差動対に流す電流を補正する、請求項1乃至7いずれか一に記載の出力バッファ回路。
【請求項9】
前記差動対は第1導電型の第1のトランジスタと第2のトランジスタにより構成され、
前記第1のトランジスタと入力信号が共通に接続され前記第1のトランジスタと電源との間に接続された第2導電型の第3のトランジスタと、
前記第2のトランジスタと入力信号が共通に接続され前記第2のトランジスタと電源との間に接続された第2導電型の第4のトランジスタと、
を含む請求項8の出力バッファ回路。
【請求項10】
前記制御部は、前記入力信号の論理の第1の遷移を検出する第1の論理ゲートと、前記入力信号の論理の第2の遷移を検出する第2の論理ゲートと、を備え、
前記複数のスイッチは、それぞれ、前記第1の論理ゲートによって導通非導通が制御され、前記電流源回路と並列に接続された第1のスイッチと、前記第2の論理ゲートによって導通非導通が制御され、前記電流源回路及び第1のスイッチと並列に接続された第2のスイッチと、を備える請求項8又は9の出力バッファ回路。
【請求項11】
前記第1のバッファ回路及び前記第2のバッファ回路は単相信号を入力とする請求項1乃至7いずれか一に記載の出力バッファ回路。
【請求項12】
前記出力端子に接続された負荷回路をさらに備え、前記負荷回路に流れる電流によって前記出力端子の電圧が決定される請求項1乃至8いずれか一に記載の出力バッファ回路
【請求項13】
請求項1乃至12いずれか一に記載の出力バッファ回路を備えた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−49784(P2012−49784A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189439(P2010−189439)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】