説明

分光光度計

【課題】高次光を除去するための光学フィルタなどの光学素子を光路に着脱可能に挿入するための機構として、専用のアクチュエータやそれを制御する回路やソフトウエア類を設けることをせず、回折格子を回転させるための駆動機構に従動して光学素子を移動させるようにする。
【解決手段】分光器の回折格子10と一体化され、回折格子10とともに回転駆動される駆動アーム20を設ける。光路上に着脱可能に配置される光学素子28を支持する支持体を従動アーム22とし、従動アーム22は回折格子10の波長走査のための回転範囲外の回転角度範囲において駆動アーム20と当接する位置に配置され、駆動アーム20の当接により駆動されて光学素子28を光路上の位置と光路から外れた位置との間で移動させるように変位可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料に測定光を照射し、その透過光又は反射光の波長別強度分布を光検出器により測定して試料の定量分析又は定性分析を行う分散型分光光度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分散型分光光度計では試料に照射する測定光又は試料を透過もしくは反射した測定光を波長別に測定するために測定光の波長走査を行う。測定光の波長走査には、試料に照射する前に波長走査を行う前分光型と、試料を透過又は反射した測定光の波長走査を行う後分光型がある。
【0003】
波長走査を行うために、測定光の光路上に分光器が配置される。分光器は回折格子を内蔵し、回折格子をモータにより直接に又はプーリなどを介して間接的に回転させる。
【0004】
回折格子により波長分散された特定の波長光を、スリットを介して取り出すと、その取り出された光にはその波長の整数倍の周波数をもつ高次光が含まれる。高次光は回折格子に由来するものである。高次光が測定の妨げになる程度に含まれる場合には光学フィルタを挿入することによって高次光を除去することが行われている。通常は長波長側の測定を行うときに高次光を除去する光学フィルタが光路上に挿入される(特許文献1−4参照。)。
【0005】
そのような光学フィルタは、必要な場合にのみ所定の波長特性のものを光路上に挿入できるように光路に対して着脱可能にするために、光路への挿入と光路からの退避が可能なアクチュエータに支持されている。複数の光学フィルタを使用する場合には、アクチュエータはそれらの光学フィルタを切り替えて光路上に挿入できる構成をとっている。
【0006】
分光光度計の光路上に着脱可能に配置される光学素子としては、高次光を除去するための光学フィルタのほかに、光量を調整するためのアパーチャや調光用メッシュなどの光量調整素子、又は分光器の波長校正のための特定波長の光を発生する発光素子も用いられる。本発明は光学フィルタ以外のそのような光学素子も対象としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−133808号公報
【特許文献2】特開平6−138023号公報
【特許文献3】特開2006−91204号公報
【特許文献4】WO2003/004982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の分光光度計では、高次光を除去するための光学フィルタを測定光の光路上に挿入したり光路から退避させたりするためのアクチュエータは波長走査の動作と連動して駆動されるが、機構としては波長走査のために回折格子を回転させる機構とは独立したものである。
【0009】
高次光を除去する光学フィルタは、波長走査に対して連続的に駆動が必要なものではなく、特定の波長より長波長側で光路に挿入し、その波長より短波長側で光路から退避させるように離散的に切り換える動作で十分である。特に、測定する波長範囲が狭い場合には1つの光学素子を測定光路上に存在させるか、させないかのいずれかですむ。広い波長範囲で光学フィルタを挿入する場合も、2〜3種類の光学フィルタを所定の波長で切り換えるだけですむ。
【0010】
また、光量調整素子や波長校正用の発光素子も必要な場合にのみ光路に挿入されるだけである。
【0011】
このように、それほど複雑な駆動を必要としない光学素子の移動のために専用のアクチュエータを設けると、その制御回路及び適切に制御するためのソフトウエアも必要になる。その結果、装置コストや開発コストの上昇を招く。
【0012】
本発明は光路に対して着脱可能に配置される光学素子の移動のための機構を簡略化することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は高次光を除去するための光学フィルタなどの光学素子を光路に着脱可能に挿入するための機構として、専用のアクチュエータやそれを制御する回路やソフトウエア類を設けることをせず、回折格子を回転させるための駆動機構に従動して光学素子を移動させるようにしたものである。
【0014】
すなわち、本発明の分光光度計は、複数波長を含む光を発生する光源ユニットと、光源ユニットからの光が測定光として試料室に照射されて試料室内の試料から発生する透過光又は反射光を検出する光検出器と、光源ユニットから試料室に至る光路上又は試料室から光検出器に至る光路上に配置され、モータにより回転駆動される波長分散素子が内蔵された分光器と、分光器内の波長分散素子と一体化され、波長分散素子とともに回転駆動される駆動アームと、測定光の光路上又はそれから分岐した光路上に着脱可能に配置される光学素子と、前記光学素子を支持し、波長分散素子の波長走査のための回転範囲外の回転角度範囲において前記駆動アームと当接する位置に配置され、前記駆動アームの当接により駆動されて前記光学素子を光路上の位置と光路から外れた位置との間で移動させるように変位可能に構成されている従動支持体と、波長分散素子による測定光の波長走査のための回転駆動と前記駆動アームによる前記光学素子の移動のための回転駆動を行うために前記モータの駆動を制御する制御部を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明では高次光を除去するための光学フィルタなどの光学素子を移動させるための専用の駆動機構を設けないようにしたので、それだけコストが低下するとともに、そのためのスペースも不要となり機器構成の自由度が向上する。
【0016】
駆動機構にはモータなどの駆動源が必要であるが、そのような専用の駆動源に由来する電磁波や発熱の影響もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施例を表す概略平面図である。
【図2】同実施例における光学素子着脱動作を示す部分平面図である。
【図3】同実施例における光学素子着脱を説明するためのスペクトルを表すグラフである。
【図4】同実施例における光学素子着脱を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートにおける光学フィルタ着脱時のサブルーチンの動作を示すフローチャートである。
【図6】他の実施例における光学素子着脱に関係する部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は一実施例を表す。ここでは光源ユニット2から発生した光を分光器4で分光して所定の波長を取り出し、試料室6の試料に照射し、試料を透過又は反射した光を光検出器8で検出する前分光型の分光光度計を例にして説明する。分光器4が試料室6と光検出器8の間に配置される後分光型であっても分光器4内の構成は同じである。本発明は前分光型と後分光型の両方を対象とする。
【0019】
図1では光学系は概略的に示されており、図に示されていない集光レンズその他の光学素子の図示は省略されている。
【0020】
光源ユニット2は連続波長光又は複数の波長光を発生する1又は複数の光源を備えている。そのような光源としては測定波長域によっては単一のタングステンヨウ素ランプを挙げることができる。波長域が広い場合は例えばタングステンヨウ素ランプと重水素ランプの2種類のランプを備え、それらのランプからの光を光源切替えミラーにより切り替えていずれかのランプからの光を測定光路上に導くようにする。
【0021】
分光器4内には波長分散素子として回折格子10が内蔵されている。この例では、回折格子10として集光機能をもつ凹面回折格子を使用しているが、平面型の回折格子を使用し、光路上に集光ミラーを配置することにより集光させるようにしてもよい。光源ユニット2からの光を回折格子10に導くために分光器4には入口スリット12が設けられ、回折格子10で分散した光から所定の波長の光を選択するために分光器4には出口スリット14が設けられている。出口スリット14で選択された単一波長の光が試料室6内の試料セル又はフローセルに導かれる。
【0022】
回折格子10は回転することにより光源からの光を波長分散させる。回折格子10の回転により出口スリット14から出射する測定光の波長が走査されていく。回折格子10を回転させるために回折格子10は回転可能な支持台16に取りつけられている。支持台16を介して回折格子10を回転させるために支持台16にはモータ18が設けられている。支持台16はモータ18の回転軸に取りつけられた直接駆動型であってもよく、モータ18の回転軸と支持台16の間がプーリとベルトと連結された間接駆動型であってもよい。
【0023】
支持台16には駆動アーム20が一体として取り付けられている。駆動アーム20は光路上に光学フィルタ28を出し入れするための従動アーム22と当接して従動アーム22を駆動するためのものである。
【0024】
光学フィルタ28は測定光の長波長側の測定を行うときに光源ユニット2から発生する光から高次光となる波長成分を除去するためのものである。
【0025】
従動アーム22は分光器4内に設けられ、入口スリット12と回折格子10の間の光路3上に光学フィルタ28を挿入したり光路3から退避させたりするように、光学フィルタ28を光路3上に着脱可能に配置するための機構である。従動アーム22は支点24を中心として回動できるように取りつけられている。従動アーム22はL型をなし、その一方のアームの先端に光学フィルタ28が固定されている。従動アーム22の他方のアームが一方側に回動したときに当接する位置決めピン26aと、他方側に回動したときに当接する位置決めピン26bが設けられている。従動アーム22のその他方のアームには、その他方のアームが位置決めピン26aと26bのいずれに当接した状態でも安定した姿勢を保つように、従動アーム22と固定点32の間に引っ張りばね30が張られている。
【0026】
従動アーム22は駆動アーム20と当接することにより駆動アーム20に押されて変位する。従動アーム22が位置決めピン26aと当接する位置にあるときに光学フィルタ28が光路3上に配置され、従動アーム22が他方の位置決めピン26bと当接する位置にあるときに光学フィルタ28が光路3から退避する位置に移動させられる。
【0027】
光検出器8は測定する波長範囲で感度をもつようなフォトダイオード又は光電子増倍管である。
【0028】
回折格子10と駆動アーム20の回転はモータ18により駆動され、モータ18の駆動制御は制御部34によって自動的に行われる。制御部34はこの分光光度計の専用のコンピュータにより、又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現することができる。
【0029】
図2(A),(B)は駆動アーム20によって従動アーム22を移動させるときの動作を示したものである。光学フィルタ28を図1のように光路3上にある状態から光路3を外れた位置に退避させる場合は、図1の状態から図2(A)の状態まで時計回りに駆動アーム20を回折格子10とともに約270度回転させる。この回転範囲は測定波長範囲に対する回折格子10の駆動範囲を越えた範囲である。さらに、図2(A)の状態から駆動アーム20が従動アーム22を図で左側から押し、従動アーム22がばね30の引っ張り力により反時計方向に回転し始める位置よりさらにいくらか回転させると、従動アーム22は駆動アーム20の力に頼ることなく、ばね30の引っ張り力により反対側の位置決めピン26bに当接するまで回転する。その結果として図2(B)に示されるように、光学フィルタ28は光路3上から外れた位置に移動する。その後、回折格子10を反時計方向に反転駆動させて元の波長測定範囲にまで復帰させ、以降の波長走査測定を続行させる。
【0030】
光学フィルタ28を光路3上に挿入するときは、前述とは逆に測定波長範囲に対応する駆動範囲を超えて駆動アーム20を回折格子10とともに反時計方向に回転させ、図2(B)に示されるように、駆動アーム20が従動アーム22を図で右側から押して従動アーム22を時計回りに回転させ、従動アーム22がばね30の引っ張り力によって駆動アーム20の力によらなくても位置決めピン26aの方向に移動する位置よりいくらか越える位置まで押す。これにより、従動アーム22はばね30の力によって位置決めピン26aに当接する位置まで回転させられ、光学フィルタ28は光路3上の位置に挿入される。その後、同様にして回折格子は元の測定波長範囲にまで復帰させて以降の波長走査測定を続行させる。
【0031】
図1に戻ってこの分光光度計の動作について説明すると、光源ユニット2から入口スリット12を通して導入された白色光又は複数波長光は、回折格子10に入射し、波長分散される。そのうちの特定の波長範囲の光(ほぼ単色光)が出口スリット14を通過して試料室6中の試料に照射され、その透過光又は反射光が光検出器8に導かれて分光分布強度測定が行なわれる。出口スリット14から取出されるほぼ単色光の波長は回折格子10の回転により選択される。
【0032】
制御部34は測定時に支持台16を介して回折格子10を回転させて波長走査を行うとともに、光学フィルタ28を光路3上に挿入したり、光路3から外したりするための特定の波長になったときに、モータ18により支持台16を介して駆動アーム20を回転させて従動アーム22を押すことによって光学フィルタ28の光路3上への挿入又は退避を行わせる。従動アーム22は引張りばね30によって位置決めピン26aと26bのいずれかに当接した2つの状態に拘束される。結果として光学フィルタ28は光路3上に挿入されて入射光に作用を及ぼす状態と、光路3上から退避して入射光に何ら作用を及ぼさない状態の2つの状態のいずれかに位置決めされる。
【0033】
従動アーム22を駆動させうる範囲と波長走査測定を行なう範囲とを重複させないような構造とすることは容易であり、こうすることで光学フィルタ28の挿入、退避と、波長走査の動きを完全に独立させることができる。すなわち任意の波長にて光学フィルタ28の挿入と退避を実行しつつ、測定シーケンスを実行させることができる。
【0034】
次に、図3と図4を参照してさらに具体的な動作を説明する。
【0035】
図3は測定されたスペクトルを概略的に示したものである。波長走査は長波長側から短波長側に走査する。特定の波長λcは光学フィルタ28を光路3上に挿入するかしないかを切替えるための波長であり、波長λc以上の長波長側では高次光を除去するために光学フィルタ28を光路3上に挿入し、波長λcよりも短波長側では光学フィルタ28を光路3上から退避させる。
【0036】
図4はそのときの動作を示したものである。動作は制御部34により制御される。制御部34では光学フィルタ28が光路3上に挿入された状態と光路3上から外された状態でそれぞれフラグが立てられ、現在どの状態であるかを判断することができるようになっている。
【0037】
測定を開始すると、まず光学フィルタ28が光路3上にあるかどうかがフラグにより判断される(ステップS1)。光学フィルタ28が光路3上にあると判断された場合、測定しようとする波長λが光学フィルタ28の挿入と退避を切り替える特定波長λcと比較され(ステップS2)、λcよりも大きければそのまま測定波長λを選択するように回折格子10の回転を駆動する(ステップS3)。もし測定波長λがλc以下であれば、光学フィルタ28を光路3から外すためのサブルーチンを実行し(ステップS4)、光学フィルタ28が光路3上にないことを示すフラグを立てる。その後測定波長λを選択するように回折格子10の回転を駆動する(ステップS3)。
【0038】
一方、ステップS1においてフラグにより光学フィルタ28が光路3上に挿入されていないと判断された場合、測定しようとする波長λが特定波長λcと比較され(ステップS5)、測定波長λが特定波長λc以下であればそのまま測定波長λを選択するように回折格子10の回転を駆動する(ステップS3)。ステップS5において測定波長λが特定波長λcよりも大きければ本来なら光学フィルタ28が光路3上に配置されていることが必要な波長であるので、光学フィルタ28を光路3上に挿入するためのサブルーチンを実行して(ステップS6)、光学フィルタ28が光路3上にあることを示すフラグを立てた後、測定波長λを選択するように回折格子10の回転を駆動する(ステップS3)。
【0039】
ここで、光学フィルタ28を光路3上に挿入したり、光路3から退避させたりするためのサブルーチンは図5に示されるように実行され、駆動アーム20によって従動アーム22を回転させる。
【0040】
再び図4に戻って説明を続けると、波長位置λで測定を行った後(ステップS7)、次の測定波長λとなるように回折格子10を回転させる(ステップS8)。波長走査はΔλの単位で短波長側に移動するように行っていく。次の測定波長λがλcより大きい間は順次測定波長を短波長側に切り替えながら測定を続けていく(ステップS9→S10→S7→S8)。測定を続けて行って次の測定波長λが特定波長λc以下になったとき、光学フィルタ28を光路3上から外すサブルーチンを実行し(ステップS11→S12)、光学フィルタ28が光路3上にないことを示すフラグを立てる。その後、さらに短波長側に測定波長を切り替えていっても、光学フィルタ28が光路3上から外れていることを示すフラグが立てられているので、以後は光学フィルタ28を光路3上から外すためのサブルーチンを実行することなく、測定波長を短波長側に切り替えながら測定終了の波長λendまで測定が続けられる(ステップS7→S8→S9→S10→S11→S7→S8→S9)。
【0041】
光路3上に着脱可能に配置する光学素子として、上記の光学フィルタ28を示したか、光学素子がアパーチャや調光のためのメッシュフィルタ、又は波長校正のための発光素子など他の光学素子であっても全く同じように扱うことができる。
【0042】
光学素子を光路上に配置する状態と光路上から退避させた状態で保持する機構も上記の実施例のように従道アームを位置決めピンに当接させる機構に限らず、プランジャを用いた機構など、他の機構を用いることもできる。
【0043】
また、光学素子が挿入される位置は必ずしも測定光路上そのものである必要はなく、ミラーやハーフミラーなどによって分岐された別の光学的に等価な光路上であってもよい。
【0044】
第1の実施例では駆動アーム20は1本である。そのため、光学素子の切替えを行うにあたり比較的大きな回転角度を必要とする。それに対し、第2の実施例は支持台16に互いに角度の異なる2本の駆動アームを設けるものである。
【0045】
具体的には、図1に示されるように、1本の駆動アーム20に対し、角度の異なる位置に第2の駆動アーム20aを支持台16に設ける。駆動アーム20と20aは、ともに回折格子10による波長走査のための回転範囲外の回転角度範囲において従動アーム22と当接する位置に配置されている。図2(A)に示されるように光学素子28を光路3上から退避させるように従動アーム22を押すときは駆動アーム20aを使用し、図2(B)に示されるように光学素子28を光路3上に挿入するように従動アーム22を押すときは駆動アーム20を使用するように、駆動アーム20と20aの機能を異ならせる。
【0046】
この実施例によれば、光学素子の切替えに必要な回転角度が第1の実施例のものより小さくなり、ひいては光学素子の切替えに必要な時間を短縮することができる利点がある。
【0047】
第1の実施例では、その従動支持体である従動アーム22は1個の光学素子28を光路3上に配置するか光路3上から退避させるかの機能を行うものである。それに対し、図6に示されるこの実施例は光学素子を複数個支持し、それらの光学素子のいずれかを選択的に光路3上に配置する従動支持体を備えたものである。
【0048】
図6において、光学素子として吸収波長域の異なる複数の光学フィルタが一列に配列されてなる光学素子アレイ28aが従動支持体であるホルダー22aに保持されている。ホルダー22aはリニアガイド40により光路3を横切る方向に移動可能に支持されており、光学素子アレイ28aはホルダー22aの移動に伴なって光路3を順次横切るように移動する。光学素子アレイ28aのいずれかの端が光路3から外れた位置までホルダー22aが移動すると、光路3上にはいずれの光学フィルタも存在しない状態となる。
【0049】
回折格子10を支持している支持台16には図1の実施例と同様に駆動アーム20が設けられており、ホルダー22aには駆動アーム20と当接する位置に従動ピン42が設けられている。ホルダー22aは従動ピン42に駆動アーム20が当接して駆動アーム20で押されることによりリニアガイド40に案内されて移動することができる。
【0050】
ホルダー22aとリニアガイド40の間には、各光学フィルタが光路3上にある位置と、光学素子アレイ28aの一端が光路3上から外れた位置のそれぞれにおいて、駆動アーム20による付勢力が働いていない状態ではそれぞれの位置を安定に保持する位置決め機構が設けられている。
【0051】
そのような位置決め機構としては種々のものを使用することができるが、一例はプランジャとガイド様の機構である。そのような位置決め機構の他の例は、ホルダー22aとリニアガイド40の互いの当接面の一方に設けられた1つのピンと、その当接面の他方に設けられてそのピンが嵌り込むことによってリニアガイド40に対してホルダー22aを位置決めする切欠きとからなるものであり、その切欠きの位置は各光学フィルタが光路3上にある位置と光学素子アレイ28aの一端が光路3上から外れた位置のそれぞれで切欠きにピンが嵌り込むように設定されたものである。
【0052】
この実施例では、駆動アーム20が従動ピン42と当接してホルダー22aを押すことにより光学素子アレイ28aに含まれる光学フィルタを順次切り替えて光路3上に配置することができる。さらに、光路3上にいずれの光学フィルタも存在しないようにすることもできる。
【0053】
駆動アーム20は従動ピン42と当接してホルダー22aを押す方向を変えることにより、光学素子アレイ28aを図中の太い矢印で示されるように両方向に移動させることができる。
【0054】
図6では駆動アーム20は1本のみであるが、図1中に鎖線で示された駆動アーム20aをくわえて2本の駆動アームを備え、ホルダー22aを押す方向によって使用する駆動アームを異ならせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
2 光源ユニット
3 光路
4 分光器
6 試料室
8 光検出器
10 回折格子
12 入口スリット
14 出口スリット
16 支持台
18 モータ
20,20a 駆動アーム
22 従動アーム
22a ホルダー
26a,26b 位置決めピン
28 光学フィルタ
28a 光学素子アレイ
30 引っ張りばね
40 リニアガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数波長を含む光を発生する光源ユニットと、
前記光源ユニットからの光が測定光として試料室に照射されて試料室内の試料から発生する透過光又は反射光を検出する光検出器と、
前記光源ユニットから試料室に至る光路上又は試料室から前記光検出器に至る光路上に配置され、モータにより回転駆動される波長分散素子が内蔵された分光器と、
前記波長分散素子と一体化され、波長分散素子とともに回転駆動される駆動アームと、
測定光の光路上又はそれから分岐した光路上に着脱可能に配置される光学素子と、
前記光学素子を支持し、前記波長分散素子の波長走査のための回転範囲外の回転角度範囲において前記駆動アームと当接する位置に配置され、前記駆動アームの当接により駆動されて前記光学素子を光路上の位置と光路から外れた位置との間で移動させるように変位可能に構成されている従動支持体と、
前記波長分散素子による測定光の波長走査のための回転駆動と前記駆動アームによる前記光学素子の移動のための回転駆動を行うために前記モータの駆動を制御する制御部と、
を備えた分光光度計。
【請求項2】
前記光学素子は光学フィルタ、光量調整素子又は発光素子からなる請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記従動支持体は前記光学素子を複数個支持し、それらの光学素子のいずれかを選択的に光路上に配置する機構を備えている請求項1又は2に記載の分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−160025(P2010−160025A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1726(P2009−1726)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】