説明

分光光度計

【課題】可撓性チューブをしごくことで小流量の試料をフローセルに流すポンプ機能と、複数個の試料の測定が可能な機能を両立することができる小型の分光光度計を提供する。
【解決手段】試料を収納するセルに特定の波長の光を透過させ、該波長を一定または変化させながら試料で吸収あるいは透過した波長の光量を検知することで、試料の成分や、試料に含まれる成分量を測定する分光光度計であって、モータと、該モータの回転を制御するモータ制御部とを備え、モータの回転軸の端部に他の軸を脱着可能とする受け部を設け、セルを備えたユニットが受け部で脱着可能である構成を有する。そして、ユニットは、可撓性チューブをしごくことで小流量の試料をフローセルに流すポンプ機能を備えたユニットと、複数個の試料を回転するターレットに備えたユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローセル内の試料に特定の波長の光を透過させ、一定の波長または波長を変化させながら試料に吸収または透過される波長の光量を検知して、試料の成分の特定や、試料に含まれる成分量を測定する分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
分光光度計のフローセルに液体試料を流す手法として、フローセルに液体試料の入口と出口を設け、それぞれに可撓性チューブを接続し、一方の可撓性チューブを回転するロータでしごいて液体試料を流すポンプの構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。一方、試料の品質管理の目的で分光光度計を使用する場合は、試料の目的物質のみを迅速に検知することと、複数個の試料の一度の準備だけで測定動作が終わるような使い方が求められており、試料を収納したセルを複数個設置できる構成の分光光度計が考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
分光光度計のうち、品質管理に用いられるような小型で持ち運びが容易な大きさの分光光度計では、フローセルに流す液体試料は小流量でよいので、上記のような可撓性チューブを用いた簡単なポンプを用いた構成が適しているが、一方で、複数個の試料を一度に測定する機能も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−91039号公報
【特許文献2】特開平5−172830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、可撓性チューブをしごくことで小流量の試料をフローセルに流すポンプ機能と、複数個の試料の測定が可能な機能を両立することができる小型の分光光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の実施例は、試料を収納するセルに特定の波長の光を透過させ、該波長を一定または変化させながら試料で吸収あるいは透過した波長の光量を検知することで、試料の成分や、試料に含まれる成分量を測定する分光光度計であって、モータと、該モータの回転を制御するモータ制御部とを備え、モータの回転軸の端部に他の軸を脱着可能とする受け部を設け、セルを備えたユニットが受け部で脱着可能である構成を有する。そして、ユニットは、可撓性チューブをしごくことで小流量の試料をフローセルに流すポンプ機能を備えたユニットと、複数個の試料を回転するターレットに備えたユニットである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可撓性チューブをしごくことで小流量の試料をフローセルに流すポンプ機能と、複数個の試料の測定が可能な機能を両立する小型の分光光度計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】分光光度計の基本的な構成の概要を示す構成図である。
【図2】分光光度計の一部の構成を示す平面図である。
【図3】分光光度計の一部の構成を示す側面図である。
【図4】分光光度計の一部の構成を示す平面図である。
【図5】分光光度計の一部の構成を示す側面図である。
【図6】モータ軸とターレット軸との接続部の一例を示す斜視図である。
【図7】ローラユニットをモータ軸へ取り付けたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、分光光度計の基本的な構成の概要を示す構成図である。光源1から放射された矢印で示す光は、分光器2で分光されて特定の波長が取り出され、試料室3に設置されたセル6を透過する。セル6内には試料4が収納されている。試料4は液体試料、あるいは液体に混入された試料である。試料4を透過した光は光検知手段である検出器5で検出される。このとき、分光器2で、セル6へ入射する光の波長を変化させることで、試料4に吸収あるいは反射する光の波長を知ることができる。そして、例えば吸収の場合は、横軸を波長、縦軸を光強度とした吸収スペクトルを図示しない演算装置で作成して表示することで、ユーザーは試料の成分を知ることができる。
【0011】
図2は、分光光度計の一部の構成の平面図である。複数の試料を一度の準備で測定するときに用いられるターレットが設置されている。円盤状のターレット8には複数個の保持部7が設けられ、試料4を収納した複数個のセル6が保持部7で固定される。セル6のひとつは、分光器2からの光が透過して検出器5で検出される位置に置かれている。図では、6個のセル6がターレット8に設置されているので、ターレット軸13を中心として、ターレットが6分の1回転毎に回転と停止を繰り返しながら、試料4の成分の測定が行われる。このような構造によれば、複数個の試料を準備し、一つの測定動作で複数個の試料の成分を知ることができるので、効率のよい分光分析が可能である。
【0012】
図3は、図2に示した分光光度計の一部の構成の側面図である。分光光度計の下方にモータ9が設置され、モータ制御部10で回転が制御される。モータ9のモータ軸12の端部に受け部が形成され、ターレットの中心に設けられたターレット軸13の端部と接続される。受け部の構造は、例えば図に示すような凹凸形状の勘合により、モータ軸12の回転がターレット軸13に伝達できる。万一、セル6が保持部7からはずれて落下しても、分光光度計の内部に落下しないように、モータ9とターレット8との間にプレート11が設けられている。
【0013】
図4は、分光光度計の一部の構成を示す平面図であり、試料が液体の場合にフローセルに液体試料を流しながら成分を測定するポンプ機構の構成を示す。光が透過するフローセル14に液体試料を流すため、入口側パイプ15,出口側パイプ16がフローセル14に接続される。出口側パイプ16は可撓性チューブとし、複数のローラ17を有するローラユニット18の外周をまわしてローラ17に接するように張力を加える。そして、ローラユニット18を図で反時計回り方向へ回転させると、出口側パイプ16のローラ17に接するつぶれた部分が反時計回り方向へ移動するので、出口側パイプ16の内部の液体試料を反時計回り方向へ流すポンプ機能を与えることができる。
【0014】
図5は、分光光度計の一部の構成を示す側面図であり、図4に示した構成を側面から見たものである。ローラユニット18の中心にローラユニット軸19が設けられ、モータ9のモータ軸12の端部に形成された受け部に、ローラユニット軸19の端部が接続され、モータ軸12の回転がローラユニット軸19に伝達される。
【0015】
図6は、モータ軸12とターレット軸13との接続部の一例を示す斜視図である。ターレット軸13のかわりに、ローラユニット軸19でも同様である。図6(a)に示すように、モータ軸12には、溝部12aが設けられ、対応するターレット軸13の端部が勘合するようになっている。これだけでは回転中に軸ずれの可能性があるので、モータ軸12にめねじ12bを設け、ターレット軸13の中心に開けられた穴におねじ20を通し、図6(b)に示すように、おねじ20を締め付けることで、軸同士を固定する。この構造により、ユーザーは、おねじ20を回すだけでターレット8とローラユニット18を容易に交換できるので、一台の分光光度計で、複数個のセルの分析と、フローセルを用いた分析の両方を実施することができる。
【0016】
図7は、図5に示したローラユニット18をモータ軸12へ取り付けたときの側面図である。フローセル14は、実際には光を透過させるために固定をしておかなければならない。そこでモータ9の上部に設けられたプレート11にフローセル14を固定するための支持枠21をねじ22等で固定する。支持枠21の上面部22aがローラユニット軸19と干渉する場合は、支持枠21の上面部22aに、ローラユニット軸19が通る穴を開口して、ローラユニット軸19とモータ軸12とが接続できるようにする。
【0017】
上述したように、本発明の実施例は、光源から放射された光を特定の波長に分光する分光器と、該分光器により分光された後に試料を収納したセルを透過した光を検知する光検知手段とを備え、該光検知手段で得られた光の強度に基づいて試料の分光スペクトルを生成する分光光度計において、回転軸を回転させるモータと、該モータの回転を制御するモータ制御部とを備え、回転軸の一端に他の回転軸と接続するための受け部を有し、受け部は、セルを同心円状に複数個備えたターレットの回転軸、または、セルに試料を流すために接続されたパイプをローラでしごくポンプ機構のローラユニットの回転軸のいずれかが接続可能である構成を備えた分光光度計を提供するものである。
【0018】
本発明の実施例によれば、複数セルの測定を行うためのターレットを回転させるモータと、フローセルに試料を流すためのポンプ機構を駆動するモータとを共用した構成としたことにより、一台で両方の分析が可能になるので、装置の部品の削減,小型化をはかることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 光源
2 分光器
3 試料室
4 試料
5 検出器
6 セル
7 保持部
8 ターレット
9 モータ
10 モータ制御部
11 プレート
12 モータ軸
13 ターレット軸
14 フローセル
15 入口側パイプ
16 出口側パイプ
17 ローラ
18 ローラユニット
19 ローラユニット軸
20 おねじ
21 支持枠
22 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収納するセルに特定の波長の光を透過させ、該波長を一定または変化させながら前記試料で吸収あるいは透過した波長の光量を検知することで、前記試料の成分や、前記試料に含まれる成分量を測定する分光光度計において、
モータと、該モータの回転を制御するモータ制御部とを備え、
前記モータの回転軸の端部に他の軸を脱着可能とする受け部を設け、前記セルを備えたユニットが該受け部で脱着可能であることを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ユニットは、前記試料を流すフローセルと、該フローセルに設けられた前記試料の入口に接続されたパイプと、該フローセルに設けられた前記試料の出口に接続された可撓性チューブと、該可撓性チューブをしごくことで前記試料を前記フローセル内に流すためのローラと、該ローラを可撓性チューブに対して回転させるとともにモータの回転軸の受け部に勘合するローラ側回転軸を有することを特徴とする分光光度計。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記モータ制御部は、前記モータを連続回転させて、前記フローセルに前記試料を連続的に流すように制御することを特徴とする分光光度計。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記ユニットは、前記試料を収納する前記セルを同心円状に複数個配置したターレットと、該ターレットの中心に取り付けられたターレット回転軸とを備えたことを特徴とする分光光度計。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記モータ制御部は、前記セルに前記分光された光が透過するように、前記ターレットの回転と停止を繰り返すように前記モータの回転を制御することを特徴とする分光光度計。
【請求項6】
光源から放射された光を特定の波長に分光する分光器と、該分光器により分光された後に試料を収納したセルを透過した光を検知する光検知手段とを備え、該光検知手段で得られた光の強度に基づいて前記試料の分光スペクトルを生成する分光光度計において、
回転軸を回転させるモータと、
該モータの回転を制御するモータ制御部とを備え、
前記回転軸の一端に他の回転軸と接続するための受け部を有し、
該受け部は、前記セルを同心円状に複数個備えたターレットの回転軸、または、前記セルに前記試料を流すために接続されたパイプをローラでしごくポンプ機構のローラユニットの回転軸のいずれかが接続可能であることを特徴とする分光光度計。
【請求項7】
請求項6の記載において、前記モータ制御部は、前記ターレットの回転軸が接続されたとき、前記複数のセルを前記分光された光が透過するように回転と停止を繰り返すように前記モータの回転を制御することを特徴とする分光光度計。
【請求項8】
請求項6の記載において、前記モータ制御部は、前記ポンプ機構のローラユニットの回転軸が接続されたとき、連続回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする分光光度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−137778(P2011−137778A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35(P2010−35)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】