説明

分光分析装置

【課題】波長領域毎に異なるスペクトル形状を示す測光値データにおいて、リアルタイムに波長領域毎のピーク検知パラメータの決定し、そのピークパラメータ値によるピーク検知処理の結果を提供する。
【解決手段】試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段21と、測定を実行する測定手段23と、得られたデータを処理するデータ処理手段24と、を有する分光分析装置において、データ処理手段24は、測定手段23から得られた測定データと前記パラメータとからピークを検知し、該ピーク検知の際に波長領域毎の感度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析装置により分光した測定光を走査し、測定を実行し収集したデータを波長領域別にピーク検知する分光分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分光分析装置では、スペクトルデータに対するピーク検知を行う場合、予め測定した測定データを元にピーク検知パラメータの検証を行い、その結果を測定条件の設定画面で、データ処理条件の一つとしてピーク検知パラメータを設定して、測定後の測定結果の一つであるピーク検知結果を確認していた。しかし、波長領域毎に異なるスペクトル形状を示す場合は、領域毎1のピーク検知パラメータを設定してピーク検知結果を確認し、領域2のピーク検知パラメータを設定してピーク検知結果を確認している。
【0003】
測光値データに対するピーク検知の計算および再計算を行う手段を有する分光分析装置は提供されている(特許文献1)。しかし、波長領域毎に異なるスペクトル形状を示す測光値データに対してのピーク検知処理をする考慮がされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−003328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、波長領域毎に異なるスペクトル形状を示す測光値データに対して、ピーク検知処理をする考慮がされていなかった。そのため波長領域毎に異なるスペクトル形状を示す測光値データに対しては、測定完了後、リアルタイムに結果を得られるのは1波長領域のみで、他の波長領域については必ずピーク検知パラメータを再設定して再計算するしか結果を得ることができなかった。
【0006】
また、各波長領域毎にしか結果を得ることができないため、手動による測定結果の整理作業が発生していた。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を克服し、波長領域毎に異なるスペクトル形状を示す測光値データにおいて、リアルタイムに波長領域毎のピーク検知パラメータの決定し、そのピークパラメータ値によるピーク検知処理の結果を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段と、測定を実行する測定手段と、得られたデータを処理するデータ処理手段と、を有する分光分析装置において、
前記データ処理手段は、前記測定手段から得られた測定データと前記パラメータとからピークを検知し、該ピーク検知の際に波長領域毎の感度を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分析者の経験に依ることなく、適切なピーク検知処理が行われ、かつ、波長領域毎に何度も繰り返さず、一回のまたは少ない再計算回数で適切なピーク検知結果が測定波長全域で一度に得られる分光分析装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係るもので、分光分析装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、分光分析装置の制御方法を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、検証を行う測光値データ(スペクトル)の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、ピーク検知処理を説明する計算フローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係るもので、図4の計算フローチャートにおいて作成される計算過程のデータの一例である。
【図6】本発明の実施例に係るもので、図4の計算フローチャートにおいて作成される計算過程のデータの一例である。
【図7】本発明の実施例に係るもので、図4の計算フローチャートにおいて作成される計算過程のデータの一例である。
【図8】本発明の実施例に係るもので、図4の計算フローチャートにおいて作成される計算過程のデータの一例である。
【図9】本発明の実施例に係るもので、図4の計算フローチャートから決定した波長領域別のピーク検知パラメータの一例である。
【図10】本発明の実施例に係るもので、図4の計算フローチャートから決定した波長領域別のピーク検知結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例えば、波長領域毎に適切なピーク検知処理が行われ、測定波長全域で一度にピーク検知結果を得ることを実現する実施の形態について、説明する。
【0012】
本発明の実施例について、図1〜図10を用いて説明する。
【0013】
まず、図1を用いて、分光分析装置の概要について説明する。分光分析装置1は、光源2,分光器3,試料室4,検知器5で構成される。光源2から出た測定光6は、分光器3へ導かれる。分光器3によって、光はスペクトル分光され任意の波長が選択可能となり、波長走査が行われる。分光器3でスペクトル分光された測定光6は、試料室4を通り、検知器5へ導かれる。
【0014】
図2を用いて、分光分析装置の制御方法について、説明する。分光分析装置20は、分光分析装置を制御する制御手段22,測定手段23,データ処理手段24,判定条件記憶手段25,判定手段26で構成される。また、分光分析装置20は外部機器として入力手段21,表示手段27を有する。入力手段21はキーボードやマウス、表示手段27は液晶等のディスプレイを含む。
【0015】
測定条件は、測定手段23が測定した測定データをデータ処理するためのデータ処理パラメータおよびデータ処理手段24がデータ処理した測定データを判定処理するための判定パラメータ、測定手段23を制御する制御パラメータ(波長範囲,スキャン速度など)が含まれる。この測定条件が入力手段21の測定設定機能により設定され、制御手段22を介して、記憶手段25へ記憶される。
【0016】
試料を分光分析装置10の試料室にセットし、入力手段21にて基本測定条件と指定波長域測定の測定条件(測定パラメータ)を入力する。記憶手段25は、それらの測定条件(測定パラメータ)を保存する。
【0017】
入力手段21で、記憶手段25に測定条件(測定パラメータ)を保存した後、入力手段21上の測定開始ボタン(図示せず)をクリックする。
【0018】
このクリックに伴い、測定条件(例えば、データモード=%T(透過率),測定開始波長=1800nm,測定終了波長=400nm,スキャン速度:300nm/min)を記憶手段25から読み出し、制御手段22に設定する。
【0019】
制御手段22は、測定条件に則って測定手段23を制御し、測定手段23は光波長走査に対する吸光度の測定を実行する。測定手順23で取得された測光データはデータ処理手段で1次データ処理され、記憶手段25に保存される。
【0020】
判定手段26は、記憶手段25に保存されているピーク検知パラメータと測定波長全域の測光値データで2次データ処理を行い、判定結果は表示手段27によって表示される。
【0021】
分光分析装置の測定フローについて説明する。
【0022】
測定が始まると制御手段22が、現在の光波長走査の測定波長に合わせたスキャン速度などの制御パラメータ(例えば、開始波長=1800nm,測定終了波長=400nm,スキャンスピード=300nm/min)を、記憶手段25から読み出し、測定手段23に測定条件を設定する。
【0023】
これにより、測定手段23は、光波長走査の測定波長に合ったスキャン速度(走査速度)で測定を実行する。測定手順23で取得された測光データは、データ処理手段24で1次データ処理され、記憶手段25に保存される。
【0024】
判定手段26は、記憶手段25に保存されているピーク検知パラメータと測定波長全域の測光値データで判定手段26の2次データ処理を図4のピーク検知処理を行い、図3の波長スキャングラフと図10のピーク検知結果が表示手段27によって表示される。
【0025】
図3の波長スキャングラフには、透過率の縦軸と波長の横軸でスペクトルデータのグラフが表示される。図10のピーク検知結果には、ピークの長波長側のバレーの波長を開始波長(nm)、ピークの波長をピーク波長(nm)、ピークの短波長側のバレーの波長を終了波長(nm)、ピーク波長(nm)での測光値データを高さ(%T)、ピークの短波長側のバレーの波長をバレー、バレー波長での測光値データをバレーが表示される。また、図9のピーク検知パラメータで、図4のピーク検知処理を決定した波長領域別の開始波長,終了波長,しきい値,感度の情報を表示する波長領域別テーブルを表示する。
【0026】
以下、測光値データの一例を示す図3の波長スキャングラフの測光データで、判定手段26でのピーク検知処理フローの各ステップを説明する。
【0027】
図4のピーク検知処理のフローチャートにおいて、処理を開始(200)し、各感度でのピーク検知処理(210)を行い、図5の(1)ピーク検知結果(感度1),図6の(2)ピーク検知結果(感度2),図7の(3)ピーク検知結果(感度4),図8の(4)ピーク検知結果(感度8)を算出する。
【0028】
次に、各感度でのピークに対するPV値算出処理(220)を行い、前記の図5の(1)ピーク検知結果(感度1)から全てのピークに対するPV値を算出する。同様に図6の(2)ピーク検知結果(感度2)から全てのピークに対するPV値を算出、図7の(3)ピーク検知結果(感度4)から全てのピークに対するPV値を算出、図8の(4)ピーク検知結果(感度8)から全てのピークに対するPV値を算出する。PV値は、ピーク波長に対する開始/終了波長を結んだ線と、ピーク波長からの垂線の交点における値をピーク値から引いた値である。
【0029】
感度8のピーク波長全てが波長領域が決定した領域内にあるかチェックする(230)。
【0030】
Noの場合(240)、図8の(4)ピーク検知結果(感度8)から未決定波長領域で感度8のPV値の最大値を示すピーク波長PWを求める(250)。
【0031】
次に、図5の(1)ピーク検知結果(感度1)のピーク波長PWでのPV値と、図6の(2)ピーク検知結果(感度2)のピーク波長PWでのPV値527、図7の(3)ピーク検知結果(感度4)のピーク波長PWでのPV値537、図8の(4)ピーク検知結果(感度8)のピーク波長PWでのPV値から最小値PVminを求める(250)。前記の各感度のPWでのPV値の最小値PVminを求める(250)際に供出した感度をこの波長領域の感度Sとする。また、前記の各感度のPWでのPV値の最小値PVminを求める(250)で決定した最小PVminと、図2の記憶手段25に保存した図9の判定高さの積を算出する。図5の(1)ピーク検知結果(感度1)の算出結果例の最小PVの30%相当の値を算出する。さらに、図5の(1)ピーク検知結果(感度1)からピーク波長PW前後のPV値が、最小PVminのn%以上のピーク波長の波長範囲をPWに対する波長領域とする(270)。図5の(1)ピーク検知結果(感度1)の算出結果例の波長領域を決定する。
【0032】
感度8のピーク波長全てが波長領域が決定するまで繰り返す。
【0033】
Yesの場合(240)、感度8で測定波長領域すべてで、波長領域毎に感度としきい値が決定したか確認する(280)。
【0034】
Noの場合(280)、感度を下げる(290)。感度8,4,2,1の順に(230)から(280)を繰り返し、測定波長領域すべてで、波長領域毎に感度としきい値が決定したか確認する(280)。
【0035】
Yesの場合(280)、決定した各波長領域毎のしきい値と感度でピーク検知を行い(300)、結果を図2の記憶手段25に記憶し、図9のピーク検知パラメータと、図10のピーク検知結果を図2の表示手段27に表示する。
【0036】
以上で図4を終了する(310)。
【0037】
なお、本発明は、次のように表現してもよい。試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、当該分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段と、測定を実行する測定手段と、得られたデータをデータ処理手段と、前記各手段の制御を行う制御手段とを有し、前記データ処理手段を処理するためのパラメータを入力する入力手段と、前記データ処理手段による処理データを表示する表示手段を備える分光分析装置において、前記データ処理手段は、前記測定手段から得られたデータを逐次記憶する生データ記憶手段と、前記データ処理条件記憶装置に設定されているピーク検知パラメータで前記生データ記憶手段に記憶されている測定データからピーク検知を演算する演算手段と、前記データ処理手段による処理データを表示する表示手段を用いて測定結果を表示処理する測定結果表示制御手段を設け、当該プロファイルについてピーク検知処理を行うピーク検知方法において、波長領域毎のしきい値,感度を算出,記憶し、波長領域毎のピーク検知処理を実行してピーク検知結果を記憶,表示する分光分析装置。分光分析装置において、試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、当該分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段と、測定を実行する測定手段と、得られたデータをデータ処理手段と、前記各手段の制御を行う制御手段とを備え、前記データ処理手段を処理するためのパラメータを入力する入力手段と、前記データ処理手段による処理データを表示する表示手段を備える分光分析装置において、前記データ処理手段は、前記測定手段から得られたデータを逐次記憶する生データ記憶手段と、前記データ処理条件記憶装置に設定されているピーク検知パラメータで前記生データ記憶手段に記憶されている測定データからピーク検知を演算する演算手段と、前記データ処理手段による処理データを表示する表示手段を用いて測定結果を表示処理する測定結果表示制御手段を設けることを特徴とする。前記データ処理条件記憶装置に設定されているピーク検知パラメータは、検知方法としきい値,感度,波長領域別算出指定,判定高さである。本発明の分光分析装置のピーク検知方法は、当該プロファイルについてピーク検知処理を行う分光分析方法において、波長領域毎のしきい値,感度を算出,記憶し、波長領域毎のピーク検知処理を実行してピーク検知結果を記憶,表示する。また、波長領域毎の境界,しきい値,感度を編集することにより、波長領域毎のピーク検知処理を実行してピーク検知結果を記憶,表示する。
【符号の説明】
【0038】
1,20 分光分析装置
2 光源
3 分光器
4 試料室
5 検知器
6 測定光
21 入力手段
22 制御手段
23 測定手段
24 データ処理手段
25 記憶手段
26 判定手段
27 表示手段
200 開始
210 各感度でのピーク検知
220 各感度での(ピーク−バレー)高さ算出
230 感度Nのピーク検知結果とPV値取得
240 感度Nのピーク波長の波長領域決定確認
250 未決定波長領域で感度Nの最大PV値のピーク波長PW算出
260 各感度のピーク波長PWでの最小PV値算出PVminと感度S決定
270 PVmin×判定高さによる波長領域決定
280 測定波長領域の未決定の確認
290 感度Nを下げる
300 波長領域毎のしきい値と感度を使用してのピーク検知
310 終了

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段と、測定を実行する測定手段と、得られたデータを処理するデータ処理手段と、を有する分光分析装置において、
前記データ処理手段は、前記測定手段から得られた測定データと前記パラメータとからピークを検知し、該ピーク検知の際に波長領域毎の感度を決定することを特徴とする、分光分析装置。
【請求項2】
試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段と、測定を実行する測定手段と、得られたデータを処理するデータ処理手段と、を有する分光分析装置において、
前記データ処理手段は、前記測定手段から得られた測定データと前記パラメータとからピークを検知し、該ピーク検知の際に波長領域毎のしきい値を決定することを特徴とする、分光分析装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
各感度でのピーク検出処理を行うことを特徴とする、分光分析装置。
【請求項4】
請求項3において、
各感度でのピーク波長に対する開始/終了波長を結んだ線とピーク波長からの垂線の交点における値をピーク値から引いた値を求めることを特徴とする、分光分析装置。
【請求項5】
試料に対して測定光を照射する発光手段と、測定光を任意の波長に分光する分光手段と、分光手段により分光された波長について光度検出を行う検出手段と、測定すべき波長走査範囲と波長走査速度を入力する入力手段と、測定を実行する測定手段と、得られたデータを処理するデータ処理手段と、を有する分光分析装置において、
前記データ処理手段は、測定手段から得られた測定データと、予め記憶した波長領域毎のピーク検知パラメータから、波長領域毎のピークを検知することを特徴とする、分光分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記ピーク検知パラメータは、波長領域毎のしきい値であることを特徴とする、分光分析装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記ピーク検知パラメータは、波長領域毎の感度であることを特徴とする、分光分析装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記予め記憶した波長領域毎のしきい値は編集可能であることを特徴とする、分光分析装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記予め記憶した波長領域毎の感度は編集可能であることを特徴とする、分光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−27659(P2011−27659A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175997(P2009−175997)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】