説明

分光特性測定方法および分光特性測定装置

【課題】被測定光の分光特性をより短時間かつ高精度に測定可能な分光特性測定方法および分光特性測定装置を提供する。
【解決手段】分光特性測定方法は、第1の波長範囲に検出感度を有する分光測定器に対して、その波長範囲が第1の波長範囲の一部である第2の波長範囲となっている光を入射させるステップと、分光測定器で検出された第1のスペクトルのうち第2の波長範囲以外の範囲に対応する部分から迷光成分を示す特性情報を取得するステップと、特性情報を第1の波長範囲のうち第2の波長範囲まで外挿処理することで、分光測定器に生じる迷光成分を示すパターンを取得するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光特性測定方法および分光特性測定装置に関し、特に被測定光の分光特性を高精度に測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光体などの評価を行なうための技術として、分光計測が広く用いられている。このような分光計測に用いられる分光特性測定装置では、一般的に、測定対象の発光体などからの被測定光を分光器(典型的には、回折格子)を用いてそれぞれの成分に分光し、分光された各成分を光検出器で検出する。被測定光以外の影響を極力低減するために、これらの分光器や光検出器は、筐体内に収納される。
【0003】
しかしながら、現実的には、光検出器による検出結果は、筐体内部の乱反射した光、分光器表面で拡散反射した光、および測定次数以外の次数をもつ光などの影響を受け得る。一般的に、これらの光は「迷光」と称される。このような意図しない迷光による影響を抑制するために、各種の方法が提案されている。
【0004】
たとえば、特開平11−030552号公報(特許文献1)には、分光光度計の分散光学系から導かれた光を多数の受光素子を有する受光器によって測定する場合に生じる迷光の影響を、当該分光光度計の測定定数として正確に見積り、その影響を除去する迷光補正方法が開示されている。
【0005】
また、特開2002−005741号公報(特許文献2)には、スペクトル測定装置内部に発生する迷光や、検出素子の表面の反射や回折により生ずる不要な光の影響を、検出信号の処理により取り除き、精度のよいスペクトル強度信号を得ることのできる、スペクトル測定装置が開示されている。
【0006】
また、特開2010−117343号公報(特許文献3)には、補正領域(分光器で分光された光が入射しない領域)で検出された信号強度に基づいて補正値を算出し、検出領域(分光器からの光の入射面に対応する領域)で検出された測定スペクトルに含まれる各成分値から、当該算出した補正値を減じることで補正測定スペクトルを算出することで、スペクトルをより短時間かつ高精度に測定できる光学特性測定装置が開示されている。
【0007】
また、特開2009−222690号公報(特許文献4)には、測定データから迷光を取り除くことが可能な安価な分光測定器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−030552号公報
【特許文献2】特開2002−005741号公報
【特許文献3】特開2010−117343号公報
【特許文献4】特開2009−222690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特開平11−030552号公報(特許文献1)に開示された迷光補正方法では、各受光素子で測定した受光信号強度と、当該波長に対応する受光素子によって測定した受光信号強度との比を、検出器を構成する受光素子の数だけ算出する必要がある。そのため、相対的に多くの時間を要するといった課題がある。
【0010】
また、特開2002−005741号公報(特許文献2)に記載のスペクトル測定装置は、その補正処理の具体的な内容を開示するものではない。
【0011】
また、特開2010−117343号公報(特許文献3)に開示された光学特性測定装置では、検出感度のある波長範囲の全体に亘って迷光成分が一様であることを前提としており、装置構成によっては、必ずしも迷光成分が波長範囲の全体に亘って一様とはならない。
【0012】
また、特開2009−222690号公報(特許文献4)に開示された分光測定器では、Δλについての分光放射照度を用いて迷光成分を補正する意味においては好ましいが、2つのフィルタまたはフィルタ群を用いる必要があり、測定を迅速化できないとともに、装置構成が複雑化するという課題がある。また、2つのフィルタの特性を完全に一致させることは難しく、分光スペクトルの測定精度を高めることが難しいという課題がある。さらに、フィルタの遮断特性の範囲でしか迷光を補正できないため、検出器が検出可能な波長範囲の一部のみしか、実際の検出に使用できないという課題がある。
【0013】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被測定光の分光特性をより短時間かつ高精度に測定可能な分光特性測定方法および分光特性測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある局面に従う分光特性測定方法は、第1の波長範囲に検出感度を有する分光測定器に対して、その波長範囲が第1の波長範囲の一部である第2の波長範囲となっている光を入射させるステップと、分光測定器で検出された第1のスペクトルのうち第2の波長範囲以外の範囲に対応する部分から迷光成分を示す特性情報を取得するステップと、特性情報を第1の波長範囲のうち第2の波長範囲まで外挿処理することで、分光測定器に生じる迷光成分を示すパターンを取得するステップとを含む。
【0015】
好ましくは、分光特性測定方法は、パターンを用いて、被測定光を分光測定器に入射させた場合に検出される第2のスペクトルを補正することで、被測定光の分光特性を示す第3のスペクトルを決定するステップをさらに含む。
【0016】
さらに好ましくは、分光測定器は、入射された光を受光する光検出器を含んでおり、光検出器は、第1の波長範囲の光が入射するように設計された第1の検出領域と、第1の検出領域以外の第2の検出領域とからなる検出面を有している。分光特性測定方法は、さらに、第2のスペクトルを検出する際に第2の検出領域において検出された信号強度を取得するステップを含む。第3のスペクトルを決定するステップは、信号強度に基づいてパターンを補正し、第2のスペクトルから当該補正後のパターンを減じることで第3のスペクトルを決定するステップを含む。
【0017】
さらに好ましくは、第2の検出領域は、第1の検出領域に引き続く短波長側に設けられる。
【0018】
あるいはさらに好ましくは、第2の検出領域は、複数の検出素子を含み、信号強度は、複数の検出素子のそれぞれで検出された信号強度の平均値である。
【0019】
好ましくは、パターンを取得するステップは、取得された特性情報を近似する指数関数を決定するステップを含む。
【0020】
この発明の別の局面に従う分光特性測定装置は、第1の波長範囲に検出感度を有する分光測定手段と、分光測定手段に生じる迷光成分を示すパターンを記憶する記憶手段と、被測定光を分光測定手段に入射させることで検出されるスペクトルを、パターンを用いて補正することで、被測定光の分光特性を示すスペクトルを決定する補正手段とを含む。パターンは、第1の波長範囲の一部である第2の波長範囲以外の範囲について得られた迷光成分を示す特性情報から決定された近似関数、および、当該近似関数を示すデータセットのいずれかである。
【0021】
好ましくは、近似関数は、指数関数である。
好ましくは、分光測定手段は、入射された光を受光する光検出器を含んでおり、光検出器は、第1の波長範囲の光が入射するように設計された第1の検出領域と、第1の検出領域以外の第2の検出領域とからなる検出面を有している。補正手段は、被測定光が入射されてスペクトルを検出する際に第2の検出領域において検出された信号強度を取得する手段と、取得された信号強度に基づいてパターンを補正する手段と、検出されたスペクトルから補正後のパターンを減じることで、被測定光の分光特性を示すスペクトルを決定する手段とを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被測定光の分光特性をより短時間かつ高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置の外観図を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う測定器本体の概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置の光検出器から出力される検出結果の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の実施の形態に従う測定器本体に内蔵されている光検出器の検出面を示す模式図である。
【図5】図4に示す光検出器で検出されるスペクトルを説明する模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に従う処理装置のハードウェア構成を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施の形態に従う迷光パターン取得に係る処理内容を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に従う迷光パターン取得に係る手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に従う通常測定時におけるダーク補正および迷光補正を含む補正処理に係る処理内容を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に従う通常測定時におけるダーク補正および迷光補正を含む補正処理に係る手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置の処理装置における制御構造を示す概略図である。
【図12】本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置において記憶される迷光パターンのデータ構造の一例を示す模式図である。
【図13】カットフィルタおよび迷光特性についての測定例である。
【図14】迷光の温度依存性についての測定例である。
【図15】迷光の温度依存性についての測定例である。
【図16】迷光の温度依存性についての測定例である。
【図17】迷光の温度依存性についての測定例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0025】
<A.装置全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置1の外観図を示す図である。
【0026】
図1を参照して、本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置1は、各種の発光体(以下、「対象物」とも称す。)の分光特性(スペクトル)を測定する。さらに、分光特性測定装置1は、この測定したスペクトルに基づいて、対象物の明るさや色合いといった光学特性を算出するようにしてもよい。なお、明るさとは、対象物の輝度や光度などを意味し、色合いとは、対象物の色度座標、主波長、刺激純度、および相関色温度などを意味する。本実施の形態に従う分光特性測定装置1は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)などの測定に適用できる。
【0027】
分光特性測定装置1は、分光測定器本体(以下、「測定器本体」と称する。)2と処理装置100とを含む。測定器本体2には、光ファイバ4を介して、光取出部6が接続されている。光取出部6によって取り入れられた対象物から放射された光(以下、「被測定光」とも称す。)は、光ファイバ4を介して測定器本体2へ導かれる。
【0028】
測定器本体2は、後述するように、対象物から測定器本体2に入射する被測定光を分光し、それに含まれる各成分の強度に応じた検出結果(信号強度)を処理装置100へ出力する。後述するように、測定器本体2は、その内部に、被測定光を分光する分光器と、分光器によって分光された光を受光する光検出器とを含んでいる。
【0029】
特に、本実施の形態に従う分光特性測定装置1は、予め取得された迷光に起因する誤差成分を示すパターン(以下、「迷光パターン」とも称す。)を有しており、この迷光パターンを各測定時の状況に応じて補正することで、各状況における迷光を示すスペクトル(以下、「迷光スペクトル」とも称す。)を決定(予測)する。この迷光スペクトルが迷光に起因する誤差成分を示す。そして、測定されたスペクトル(以下、「測定スペクトル」とも称す。)をこの予測された迷光スペクトルで補正することで、迷光に起因する誤差を除いた測定結果を得る。本実施の形態に従う分光特性測定装置1は、このような迷光による誤差の影響の排除に加えて、光検出器に流れる暗電流による誤差の影響も排除する。
【0030】
<B.測定器本体の構成>
図2は、本発明の実施の形態に従う測定器本体2の概略断面図である。図2を参照して、測定器本体2は、シャッター21と、スリット22と、カットフィルタ23と、分光器24と、光検出器25とを含む。これらの構成要素は、筐体26内に収納される。筐体26の一部には、光取入口20が形成されている。光取入口20は、光ファイバ4と接続される。光ファイバ4によって導かれた被測定光は、筐体26内に入射し、所定の光軸Axに沿って伝搬する。光取入口20の側から順に、この光軸Axに沿って、シャッター21、スリット22、カットフィルタ23、および分光器24が配置される。すなわち、被測定光は、スリット22およびカットフィルタ23を通過した後に分光器24に入射する。
【0031】
シャッター21は、筐体26の外部から筐体26内に入射する光を遮断する。シャッター21は、光検出器25における校正基準となるスペクトル(以下、「ダークスペクトル」とも称す。)を取得するために、筐体26内に光が入射しない状態をつくる。一例として、シャッター21は、光軸Axに対して垂直方向に変位できるように構成されている。これにより、シャッター21が光軸Ax上に存在する場合(以下、「クローズ位置」とも称す。)には、筐体26内へ入射する光は遮断される。なお、筐体26内へ入射する光を遮断した状態で、光検出器25で検出されるダークスペクトルを測定する操作を、「ダーク測定」とも称す。一方、この「ダーク測定」と区別するために、通常の対象物についてのスペクトルを測定する操作を「通常測定」とも称す。
【0032】
一方、シャッター21が光軸Axから離れた位置に位置する場合(以下、「オープン位置」とも称す。)、被測定光は筐体26内に取込まれる。なお、図2には、シャッター21を筐体26内に設ける構成について例示したが、筐体26の外部に設けてもよい。また、被測定光を遮断する機構については、いずれの種類の構成を採用してもよい。
【0033】
分光器24は、光軸Ax上に配置され、光軸Ax上に沿って入射する被測定光を所定間隔で複数の成分に分光する。分光器24が分光することで生じる光は、光検出器25へ導かれる。分光器24は、一例として、ブレーズドホログラフィック型と呼ばれる凹面回折格子(グレーティング)からなる。この凹面回折格子は、入射する被測定光を所定の波長間隔の回折光として、対応する方向に反射する。そのため、分光器24で分光された光(回折光)は、空間的な広がりをもって、光検出器25へ向けて放射される。
【0034】
分光器24としては、上述したブレーズドホログラフィック型の凹面回折格子に代えて、フラットフォーカス型の凹面回折格子といった任意の回折格子を採用することができる。
【0035】
光検出器25は、分光器24によって分光された被測定光(回折光)を受光する。そして、光検出器25は、受光した被測定光に含まれる各成分の強度を検出する。この光検出器25によって検出された強度は、各成分に対応付けられている。そのため、光検出器25からの検出信号は、被測定光のスペクトルに相当する。光検出器25は、代表的にフォトダイオードなどの複数の検出素子を、アレイ状に配置したフォトダイオードアレイ(PDA:Photo Diode Array)からなる。あるいは、フォトダイオードなどの複数の検出素子を、マトリックス状に配置されたCCD(Charged Coupled Device)であってもよい。一例として、光検出器25は、200nm〜800nmの範囲で512個(チャンネル)の成分の強度を示す信号を出力可能に構成される。また、光検出器25は、検出された光強度の信号をデジタル信号として出力するためのA/D(Analog to Digital)変換器や周辺回路を含む。
【0036】
測定器本体2においては、分光器24および光検出器25は、入射する被測定光のうち、波長fminから波長fmaxの範囲の成分を分光器24に導くように光学設計されているものとする。すなわち、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲(測定波長)は、波長fminから波長fmaxの範囲となる。
【0037】
スリット22は、所定の検出分解能を実現するために、被測定光の光束径(大きさ)を調整する。一例として、スリット22の各スリット幅は0.2mm〜0.05mm程度に設定される。そして、スリット22を通過後の被測定光は、カットフィルタ23へ入射する。なお、カットフィルタ23は、スリット22を通過後の被測定光のフォーカス位置とほぼ一致する位置に配置される。
【0038】
カットフィルタ23は、筐体26に取込まれた被測定光が分光器24に入射する光路である光軸Ax上に配置される。カットフィルタ23は、この被測定光に含まれる成分のうち、所定の遮断波長αより短い波長の光を遮断する。すなわち、カットフィルタ23は、所定の遮断波長αより長い波長をもつ光のみを透過させる。後述するように、この遮断波長αは、測定器本体2の測定波長の下限値(波長fmin)と一致させることが好ましい。
【0039】
図2には、迷光パターンを取得するために用いるカットフィルタ31が光ファイバ4の光路上に設けられている構成を示す。このカットフィルタ31は、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲(波長範囲fmin〜fmax)の一部のみに成分を有する光を測定器本体2に入射させるための典型的な構成例である。すなわち、カットフィルタ31は、遮断波長fcut(但し、fmin<fcut<fmax)とするハイパスフィルタであり、波長が遮断波長fcutより短い成分の透過を阻止する。そのため、カットフィルタ31の存在によって、測定器本体2に入射される光には、遮断波長fcutより長い成分のみが含まれることになる。なお、このカットフィルタ31は、迷光パターンを取得するために必要であり、通常測定時には、装着する必要はない。
【0040】
<C.補正処理の概要>
以下、本実施の形態に従う分光特性測定装置1における誤差の補正処理について説明する。図2に示すように、測定器本体2の筐体26の内部に光が入射すると、迷光が生じ得る。この迷光は、筐体26内部で乱反射した光、分光器24表面で拡散反射した光、および分光器24で生じた測定次数以外の次数をもつ光、などを含む。このような迷光が光検出器25に入射することによって、光検出器25の検出結果には誤差成分が生じ得る。
【0041】
また、光検出器25は、CCDなどの半導体デバイスからなり、このような半導体デバイスを駆動する際には暗電流が流れる。この暗電流によっても、光検出器25の検出結果には誤差成分(以下、「暗電流スペクトル」とも称す。)が生じ得る。この暗電流の大きさは、周囲温度の影響を受けやすく、測定環境に起因して時間的に変動し得る。
【0042】
以上をまとめると、光検出器25からの検出結果(測定スペクトル)は、(1)被測定光の本来のスペクトル、(2)筐体内部で発生する迷光に起因する誤差成分(迷光スペクトル)、(3)光検出器25に流れる暗電流によるオフセット成分、および、(4)その他の誤差成分、を含む。
【0043】
本願発明者らは、特に(2)筐体内部で発生する迷光に起因する誤差成分についての研究の結果、迷光に起因する誤差成分の波長領域における波形(規格化された迷光スペクトル/迷光パターン)は、迷光の強度(絶対値)には依存せず、ほぼ一定の特性が維持されることを見出した。
【0044】
そこで、本実施の形態に従う分光特性測定装置1では、測定器本体2に生じるであろう迷光成分を示す迷光パターンを予め取得しておき、このパターンを用いて各測定時における迷光成分を示す迷光スペクトルを動的に生成(予測)する。そして、この動的に生成した迷光スペクトルを用いて、光検出器25からの測定スペクトルを補正することで、被測定光の本来のスペクトルをより高精度に決定する。
【0045】
(c1:迷光パターン)
本実施の形態においては、このような迷光パターンを予め取得する方法として、測定器本体2の検出感度を有する波長範囲の一部の成分のみを有する光を測定器本体2に入射させ、そのときに検出される測定スペクトルのうち、入射された光の強度がゼロであるべき波長範囲に対応する部分から、迷光成分を示す特性情報が取得される。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置1の光検出器25から出力される検出結果の一例を示す概念図である。より具体的には、図3(A)は、測定器本体2の測定波長(波長範囲fmin〜fmax)の成分を有する光を測定器本体2に入射した場合の例を示し、図3(B)は、測定器本体2の測定波長の一部(波長範囲fcut〜fmax)の成分のみを有する光を測定器本体2に入射した場合の例を示す。
【0047】
図3(A)を参照して、光検出器25からの検出結果(測定スペクトル)は、入射した光の本来のスペクトル30に加えて、迷光に起因する迷光スペクトル40、光検出器25を流れる暗電流に起因する暗電流スペクトル50、および図示しない他の誤差成分を含む。
【0048】
これに対して、図3(B)に示すように、波長範囲fcut〜fmaxの成分のみを有する光を測定器本体2に入射した場合には、測定スペクトルのうち、入射した光の成分が存在しない(すなわち、強度がゼロである)波長範囲fmin〜fcutの部分については、基本的には、迷光スペクトル40および暗電流スペクトル50のみを反映したものとなる。そのため、測定スペクトルのうち、入射した光の成分が存在しない波長範囲に対応する部分の特性値から、迷光成分を示す特性情報を取得できる。
【0049】
なお、暗電流スペクトル50(および、その他の誤差成分)については、シャッター21(図2)をクローズ位置に駆動して、筐体26内に入射する光を遮断することで測定することができる。すなわち、ダーク測定の状態では、基本的に、筐体26内には迷光成分が存在しないので、このときに測定されるスペクトル(ダークスペクトル)は、暗電流スペクトル50およびその他の誤差成分を反映するものとなる。
【0050】
したがって、波長範囲fcut〜fmaxの成分のみを有する光を測定器本体2に入射させた場合に測定される測定スペクトルからダークスペクトルを差し引いて得られたスペクトルのうち、入射した光の強度がゼロである波長範囲fmin〜fcutの部分は、迷光成分のみの特性情報(迷光スペクトル40)を示すことになる。
【0051】
測定器本体2が検出感度を有する波長範囲の一部の波長範囲に強度を有する光を生成する方法としては、各種の方法が考えられる。典型的には、図2において説明したような、所定の発光スペクトルを有する光源からの光と波長フィルタ(カットフィルタ31)とを組み合わせる方法を採用できる。以下の説明では、このカットフィルタ31を用いて迷光パターンを取得する方法について説明する。但し、本発明はこの方法には限定されない。
【0052】
代替の方法として、レーザやLEDなどの半導体発光デバイスを用いてもよい。このような半導体デバイスは、特定の波長または所定の波長範囲の光を発光するため、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲のうち、一部の波長範囲について、その強度をゼロとした光を入射させることができる。
【0053】
(c2:外挿処理)
図3に示すように、上述のようなカットフィルタ31を用いて、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲のうち、一部の波長範囲について迷光パターンを取得した場合には、それ以外の波長範囲における迷光パターンが欠落することになる。
【0054】
そこで、本実施の形態においては、入射する光の強度をゼロとした波長範囲について取得された迷光パターンに対して外挿処理をすることで、測定器本体2が検出感度を有する全波長範囲まで迷光パターンを拡張する。このような外挿処理としては、公知の技術を採用することができる。
【0055】
より具体的には、まず、入射する光の強度がゼロである波長範囲(図3(B)に示す波長範囲fmin〜fcut)で得られる迷光パターンに対して内挿処理を行なうことで、特性情報(波長−信号強度特性)を取得する。このとき、特性情報としては、指数関数を採用することが好ましい。このような指数関数としては、たとえば、S(λ)=A・exp(B・λ)+C(但し、A,B,C:定数)といった関数を採用できる。
【0056】
そして、この取得された特性情報(指数関数)を波長範囲fcut〜fmaxについて外挿処理することで、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲fmin〜fmaxについての迷光パターンを取得することができる。上述したように、迷光パターンを指数関数によってフィッティングした場合には、波長範囲fmin〜fmaxの間も指数関数の形で迷光パターンが定義されることになる。
【0057】
但し、この迷光パターンに対する内挿処理(具体的には、フィッティング処理)に用いられる関数は任意の関数を用いることができる。例えば、多次式や両対数式などを採用することもできる。また、後述の図13に示す測定例によれば、長波長側にいくほど、その振幅が低下するような関数を用いることが好ましいとも言える。
【0058】
また、カットフィルタが理想的な遮断特性を有している場合には問題がないが、現実には、遮断波長の近傍は、光の遮断が十分ではない(減衰量が小さい)場合があるので、内挿処理には、遮断波長からある程度離れた波長のデータを用いることが好ましい。
【0059】
(c3:振幅補正)
測定結果に含まれる迷光スペクトル40は、測定器本体2に入射される光の光量などに依存してその振幅は変化し得る。そこで、本実施の形態に従う分光特性測定装置1では、光検出器25の検出面に、分光器24からの回折光が入射する領域と、当該回折光が入射しない領域とを設ける。そして、回折光が入射しない領域で検出される信号強度に基づいて、迷光スペクトルの振幅を補正する。
【0060】
図4は、本発明の実施の形態に従う測定器本体2に内蔵されている光検出器25の検出面を示す模式図である。図5は、図4に示す光検出器25で検出されるスペクトルを説明する模式図である。
【0061】
図4を参照して、光検出器25は、その検出面として、分光器24からの回折光が入射する検出領域25aと、当該回折光が入射しない補正領域25bとを含む。より具体的には、検出領域25aは、測定波長(波長範囲fmin〜fmax)の成分が入射するように設計される。これに対して、補正領域25bは、検出領域25aに引き続く短波長側の所定範囲(以下、「補正波長」とも称す。)の成分が入射するように設計される。
【0062】
上述したカットフィルタ23(図2)は、補正領域25bで検出される信号強度に誤差を生じないようにするためにも機能する。すなわち、カットフィルタ23の遮断波長αが波長fminと一致するように設定されることで、波長fmin(遮断波長α)より短い成分波長が補正領域25bに入射することを防止できる。
【0063】
なお、波長fminより短波長側の全成分が補正領域25bに入射するように設計してもよいが、検出領域25aと補正領域25bとの間を所定の波長幅(距離)だけ離すことが、被測定光の影響を避ける観点からは好ましい。
【0064】
筐体26の内部で発生する迷光は、測定器本体2に入射される光の光量などに依存して変動し得るが、筐体26の内部では十分に拡散しているとみなすことができる。図5を参照して、検出領域25aで検出される信号強度と、補正領域25bで検出される信号強度とは比例関係にあるとみなすことができる。
【0065】
したがって、迷光パターンを取得した際に、補正領域25bで検出されていた信号強度を迷光パターンと関連付けて記憶しておき、各測定時において補正領域25bで検出される信号強度を用いて、迷光パターンの振幅を補正することで、測定時の状況に応じた迷光スペクトルを推定することができる。
【0066】
複数の検出素子を含むように補正領域25bを設定することが好ましく、この場合には、複数の信号強度を検出できる。この場合、信号強度としては、それぞれの検出素子で検出された複数の信号強度の間の代表値(典型的には、平均値あるいは中間値)を用いることが好ましい。
【0067】
このように、予め取得した迷光パターンを補正領域25bで検出される信号強度に基づいて補正することで、迷光スペクトルを動的に生成することができる。これにより、測定毎に迷光の状態を実測する必要がないので、測定に要する時間を短縮できる一方で、測定毎にその状況に応じた迷光スペクトルを考慮した測定結果が得られるので、測定を高精度かできる。
【0068】
<D.処理装置の構成>
再度図1を参照して、処理装置100は、代表的にコンピュータによって構成される。より具体的には、処理装置100は、FD(Flexible Disk)駆動装置111およびCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)駆動装置113を搭載するコンピュータ本体101と、モニタ102と、キーボード103と、マウス104とからなる。そして、コンピュータ本体101が予め格納されたプログラムを実行することで、上述した補正処理を提供する。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態に従う処理装置100のハードウェア構成を示す概略構成図である。図6を参照して、コンピュータ本体101は、図1に示すFD駆動装置111およびCD−ROM駆動装置113に加えて、相互にバスで接続された、CPU(Central Processing Unit)105と、メモリ106と、固定ディスク107と、通信インターフェイス部(I/F)109とを含む。
【0070】
FD駆動装置111にはFD112が装着可能であり、CD−ROM駆動装置113にはCD−ROM114が装着可能である。本実施の形態に従う処理装置100は、典型的には、CPU105がメモリ106などのコンピュータハードウェアを用いて、プログラムを実行することで実現される。一般的に、このようなプログラムは、FD112やCD−ROM114などの記録媒体に格納されて、あるいはネットワークなどを介して流通する。そして、このようなプログラムは、FD駆動装置111やCD−ROM駆動装置113などにより記録媒体から読取られて、記憶装置である固定ディスク107に一旦格納される。さらに、固定ディスク107からメモリ106に読出されて、CPU105により実行される。
【0071】
固定ディスク107には、特に、本実施の形態に従う補正処理を実現するための補正ロジック107aと、当該補正に用いられる予め取得された迷光パターン107bとが格納される。補正ロジック107aは、典型的には、CPU105によって実行可能なプログラム(コード)として具現化される。また、迷光パターン107bについては、任意のデータ構造を採用することができる(詳細については後述する)。
【0072】
CPU105は、補正ロジック107aを含む、各種のプログラムを順次実行することで、所定の演算を実施する演算処理部である。メモリ106は、CPU105でのプログラム実行に応じて、各種の情報を一時的に記憶する。
【0073】
通信インターフェイス部109は、コンピュータ本体101と測定器本体2(図1)との間のデータ通信を仲介するための装置であり、測定器本体2から送信された測定データを示す電気信号を受信してCPU105が処理可能なデータ形式に変換するとともに、CPU105が出力した指令などを電気信号に変換して測定器本体2へ送出する。
【0074】
コンピュータ本体101に接続されるモニタ102は、CPU105によって算出される対象物の明るさや色合いなどの算出結果を表示するための表示装置であって、一例としてLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などから構成される。
【0075】
マウス104は、クリックやスライドなどの動作に応じたユーザからの指令を受付ける。キーボード103は、入力されるキーに応じたユーザからの指令を受付ける。
【0076】
また、コンピュータ本体101には、必要に応じて、プリンタなどの他の出力装置が接続されてもよい。
【0077】
なお、本実施の形態に従う補正処理については、上述したようなCPU105がプログラムを実行することで提供される形態に代えて、その全部または一部を専用のプロセッサまたはIC(集積回路)などを用いて実現するようにしてもよい。あるいは、専用のLSI(Large Scale Integration)を用いて実現してもよい。
【0078】
<E.測定手順>
(e1:概要)
本実施の形態に従う測定手順は、(1)迷光パターン取得に係る処理(事前処理)と、(2)通常測定時におけるダーク補正および迷光補正を含む補正処理とに大別される。以下、それぞれの処理の詳細について説明する。
【0079】
なお、現実の実施態様としては、メーカが分光特性測定装置を出荷する前段階で、迷光パターン取得に係る処理が実行されて、取得された迷光パターン(および、関連するパラメータ)が当該分光特性装置に組込まれる(図6の迷光パターン107b)。そして、通常の測定時には、このような迷光パターンを用いた補正をユーザが気にすることなく、分光特性測定装置の内部で迷光補正が実行されるという態様が最も一般的であると想定される。
【0080】
(e2:迷光パターン取得(事前処理))
図7は、本発明の実施の形態に従う迷光パターン取得に係る処理内容を模式的に示す図である。図7を参照して、本実施の形態に従う迷光パターンの取得処理においては、カットフィルタ31を用いて遮断波長fcut以下の成分を遮断した光を生成し、この光を測定器本体2に入射させた状態で検出される測定スペクトル301と、シャッター21をクローズ位置に駆動して測定器本体2に光が入射しない状態で検出される測定スペクトル(ダークスペクトル)302とを取得する。そして、測定スペクトル301から測定スペクトル302を減じる(ダーク補正する)ことで、迷光成分を示すスペクトル303を取得する。
【0081】
このスペクトル303の遮断波長fcut以下の成分に対して内挿処理を行なうことで、迷光成分を示す特性情報を取得する。さらに、この取得した特性情報に対して外挿処理を行なうことで、遮断波長fcutより長い波長範囲までの迷光スペクトル(迷光パターン)305が取得される。このとき、測定スペクトル301が測定された際に、同時に測定された信号強度Dを用いて規格化が行なわれてもよい。このように迷光スペクトル(迷光パターンの各成分の振幅を規格化振幅(0〜1の範囲内の値をとる)とすることで、通常測定における補正処理をより簡素化できる。
【0082】
図8は、本発明の実施の形態に従う迷光パターン取得に係る手順を示すフローチャートである。図8を参照して、まず、ステップS100〜S104に示す迷光パターンに対応する測定スペクトルの取得処理が実行される。すなわち、ユーザは、迷光スペクトルの取得に必要な入射光を用意する(ステップS100)。
【0083】
より具体的には、カットフィルタ31(図2)を光ファイバ4の光路上に配置して、測定器本体2に入射する光の成分のうち、その波長が遮断波長fcutより短い成分を遮断する。あるいは、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲の一部の領域においてのみ強度が非ゼロとなり、かつ、当該検出感度を有する波長範囲の他の領域においては強度がゼロである光を発生させることのできる、レーザやLEDなどの半導体発光デバイスを光取出部6(図1)に接続する。このような状態で、測定器本体2で検出された測定スペクトルが取得される(ステップS102)。すなわち、本実施の形態に係る分光特性測定方法は、第1の波長範囲(fmin〜fmax)に検出感度を有する分光測定器(測定器本体2)に対して、その波長範囲が第1の波長範囲の一部である第2の波長範囲(fcut〜fmax)となっている光を入射させる工程を含む。この状態で、測定スペクトルが取得される。
【0084】
あわせて、ステップS102において測定スペクトルを取得した際の、光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度が取得される(ステップS104)。このステップS104において取得される信号強度は、後述する規格化処理において使用される。ステップS104において取得される信号強度は、補正領域25bで検出された複数の信号強度の平均値とすることが好ましい。
【0085】
続いて、ステップS110およびS112のダークスペクトルの取得処理が実行される。すなわち、シャッター21をクローズ位置に駆動され、測定器本体2への光の入射が遮断された状態が形成される(ステップS110)。この状態で、測定器本体2で検出されたダークスペクトルが取得される(ステップS112)。
【0086】
なお、上述のステップS100〜S104に示す測定スペクトルの取得処理と、ステップS110〜S112に示すダークスペクトルの取得処理とについての実行順序は、いずれであってもよい。最終的に、迷光成分を反映した測定スペクトルとダークスペクトルとの2つが取得されればよく、その実行順序については何ら制限されない。
【0087】
続いて、ステップS120〜S128に示す迷光パターンの算出処理が実行される。すなわち、ステップS102において取得された測定スペクトルからステップS112において取得された測定スペクトル(ダークスペクトル)を減算する(ステップS120)。なお、この減算処理は、対応する各波長について2つの成分の間で引き算がそれぞれ実行される。
【0088】
この減算によって得られたダーク補正後の測定スペクトルのうち、カットフィルタ31の遮断波長fcutより短波長側の値を用いて内挿処理が実行される(ステップS122)。より具体的には、指数関数などを用いて、カットフィルタ31の遮断波長fcutより短波長側の値に対して関数近似(フィッティング処理)が実行される。そして、実測された情報に基づいて、迷光スペクトルを示す近似関数が取得される。すなわち、本実施の形態に係る分光特性測定方法は、分光測定器(測定器本体2)で検出された第1のスペクトル(ダーク補正後の測定スペクトル)のうち第2の波長範囲以外の範囲に対応する部分から迷光成分を示す特性情報を取得する工程を含む。
【0089】
続いて、ステップS122において取得された近似関数を用いて外挿処理を実行する(ステップS124)。すなわち、ステップS122において取得された近似関数を、カットフィルタ31の遮断波長fcutより短波長側の波長範囲まで拡張することで、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲(波長範囲fmin〜fmax)の全域に亘る迷光スペクトルを算出する。すなわち、本実施の形態に係る分光特性測定方法は、迷光成分を示す特性情報を第1の波長範囲(fmin〜fmax)のうち第2の波長範囲(fcut〜fmax)まで外挿処理することで、分光測定器(測定器本体2)に生じる迷光成分を示すパターン(迷光パターン)を取得する工程を含む。ここで、パターンを取得する工程は、取得された迷光成分を示す特性情報を近似する指数関数を決定する工程を含む。
【0090】
さらに、ステップS124において取得された迷光スペクトルを、ステップS104において取得した、光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度を用いて規格化することで、迷光パターンを算出する(ステップS126)。この規格化処理は、後述する通常測定によって得られた測定スペクトルに対して迷光補正を行なうための迷光スペクトルを動的に生成するために、迷光パターンに含まれる各成分の振幅を所定範囲内(典型的には、0〜1の範囲)の値に割当てるものである。より具体的には、ステップS124において取得された迷光スペクトルの各成分を、ステップS104において取得した補正領域25bで検出された信号強度で除算することで、補正領域25bで検出された単位信号強度毎の振幅が算出される。
【0091】
以上のように取得された迷光パターンは、典型的には、分光特性測定装置1の処理装置100に格納される。
【0092】
(e3:ダーク補正/迷光補正(通常測定))
図9は、本発明の実施の形態に従う通常測定時におけるダーク補正および迷光補正を含む補正処理に係る処理内容を模式的に示す図である。図9を参照して、対象物からの被測定光を測定器本体2に入射させた状態で検出される測定スペクトル311と、シャッター21をクローズ位置に駆動して測定器本体2に光が入射しない状態で検出される測定スペクトル(ダークスペクトル)312とを取得する。そして、測定スペクトル311から測定スペクトル312を減じることで、まず、ダーク補正後のスペクトル313を取得する。
【0093】
一方、測定スペクトル311が測定された際に、同時に測定された信号強度Dを用いて、予め取得された迷光パターン305を補正することで、迷光スペクトル314を決定(推定)する。上述したように、規格化された迷光パターン305が予め取得されている場合には、信号強度Dの絶対値を迷光パターン305の各成分に乗じることで、迷光スペクトル314を決定できる。そして、ダーク補正後のスペクトル313から決定された迷光スペクトル314を減じることで、対象物の本来の分光特性を示すスペクトル315を取得する。このスペクトル315が測定結果として出力されることになる。
【0094】
図10は、本発明の実施の形態に従う通常測定時におけるダーク補正および迷光補正を含む補正処理に係る手順を示すフローチャートである。図10を参照して、まず、ステップS200〜S204に示す対象物からの被測定光を示す測定スペクトルの取得処理が実行される。すなわち、ユーザは、光取出部6を対象物に接続し、対象物から放射された被測定光を、光ファイバ4を介して測定器本体2へ入射させる(ステップS200)。そして、処理装置100が、測定器本体2で検出された測定スペクトルを取得する(ステップS202)。また、処理装置100は、ステップS202において測定スペクトルを取得した際の、光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度を取得する(ステップS204)。このステップS204において取得される信号強度は、迷光スペクトルの生成処理において使用される。ステップS204において取得される信号強度は、補正領域25bで検出された複数の信号強度の平均値とすることが好ましい。
【0095】
続いて、ステップS210およびS212のダークスペクトルの取得処理が実行される。すなわち、シャッター21をクローズ位置に駆動され、測定器本体2への光の入射が遮断された状態が形成される(ステップS210)。この状態で、処理装置100が、測定器本体2で検出されたダークスペクトルを取得する(ステップS212)。
【0096】
なお、上述のステップS200〜S204に示す測定スペクトルの取得処理と、ステップS210〜S212に示すダークスペクトルの取得処理とについての実行順序は、いずれであってもよい。特に、温度などが安定した状態で複数の測定対象を連続的に測定するような場合には、第1回目の測定時に取得したダークスペクトルをそれ以降の測定に利用するような方法を採用することもできる。この場合には、ステップS210〜S212に示すダークスペクトルの取得処理を最初に行なうことが好ましい。
【0097】
続いて、ステップS220〜S226に示す補正処理が実行される。すなわち、処理装置100は、ステップS202において取得された測定スペクトルからステップS212において取得されたダークスペクトルを減算する(ステップS220)。なお、この減算処理は、対応する各波長について2つの成分の間で引き算がそれぞれ実行される。この処理によって、ダーク補正後の測定スペクトルが取得される。
【0098】
また、処理装置100は、予め登録されている迷光パターンに対して、ステップS204において取得した、光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度を乗じることで、迷光スペクトルを決定する(ステップS222)。
【0099】
なお、ステップS220に示すダーク補正後の測定スペクトルの取得処理と、ステップS222に示す迷光スペクトルの決定処理とについての実行順序は、いずれであってもよい。また、これらの処理を並列的に実行してもよい。
【0100】
続いて、処理装置100は、ステップS220において取得されたダーク補正後の測定スペクトルからステップS222において取得された迷光スペクトルを減算する(ステップS224)。なお、この減算処理は、対応する各波長について2つの成分の間で引き算がそれぞれ実行される。この減算によって得られたスペクトルが測定結果として出力されることになる。すなわち、処理装置100は、ステップS224の減算処理の結果得られたスペクトルを対象物の分光特性の測定結果として出力する(ステップS226)。
【0101】
このように、本実施の形態に係る分光特性測定方法は、予め登録されたパターン(迷光パターン)を用いて、被測定光を分光測定器(測定器本体2)に入射させた場合に検出されるスペクトル(測定スペクトル)を補正することで、被測定光の分光特性を示すスペクトルを決定する工程を含む。この被測定光の分光特性を示すスペクトルを決定する工程は、光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度に基づいてパターン(迷光パターン)を補正し、測定スペクトルから補正後のパターン(迷光スペクトル)を減じることで、対象物の分光特性の測定結果を示すスペクトルを決定する工程を含む。
【0102】
<F.制御構造>
図11は、本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置1の処理装置100における制御構造を示す概略図である。図11を参照して、処理装置100は、迷光パターンを取得するための制御構造と、測定結果を算出するための制御構造とを有している。但し、迷光パターンを取得するための制御構造については、必ずしも処理装置100に実装する必要はなく、別の校正装置などに実装してもよい。迷光パターンは頻繁に更新する必要がないからである。
【0103】
より具体的には、処理装置100は、迷光パターンを取得するための制御構造として、バッファ202,212,216,222と、平均化部204と、減算部214と、内挿処理部218と、外挿処理部220と、規格化部240と、記憶部230とを含む。一方、測定結果を算出するための構成として、処理装置100は、記憶部230と、バッファ252,258,272,266,272と、平均化部254と、乗算部256と、減算部268とを含む。
【0104】
図11には、一例として、測定波長域に対応する検出領域25a(図4)がN個の検出素子を有し、測定波長域に対応する補正領域25bが4個の検出素子を有する場合に対応する制御構造を示す。
【0105】
光検出器25の検出領域25aで検出された値(各波長の信号強度)は、バッファ212,222,262,272に一時的に格納される。また、光検出器25の補正領域25bで検出された値(信号強度)は、バッファ202,252に一時的に格納される。なお、上述したようなそれぞれの状況に応じて、格納先のバッファが適宜選択された上で、測定データが格納される。
【0106】
バッファ212,222,262,272の各々は、検出領域25aに含まれる検出素子の数に対応して、少なくとも区画されたN個の領域(1ch,2ch,…,Nch)をもつ。また、バッファ202,252の各々は、補正領域25bに含まれる検出素子の数に対応して、少なくとも区画された4個の領域(Ach,Bch,Cch,Dch)をもつ。これらのバッファに格納されるデータは、光検出器25の検出周期(たとえば、数msec〜数10msec)で順次更新される。また、チャンネル(ch)は、光検出器25で検出される波長に対応付けられている。
【0107】
バッファ202は、迷光パターンを取得する際の補正領域25bを構成する各検出素子で検出された信号強度を格納し、平均化部204がこれらの信号強度を平均化することで、信号強度(図7に示す信号強度D)が算出される。
【0108】
バッファ212は、迷光パターンを取得する際の測定スペクトル(図7に示す測定スペクトル301)を格納し、バッファ222は、迷光パターンを取得する際のダークスペクトル(図7に示す測定スペクトル(ダークスペクトル)302)を格納する。
【0109】
減算部214は、バッファ212に格納される測定スペクトルとバッファ222に格納される測定スペクトルとの間の差分を算出する。すなわち、減算部214は、迷光パターンの取得時にダーク補正を行なう。この減算部214によって算出された差分の測定スペクトル(図7に示すダーク補正後のスペクトル303)は、バッファ216に格納される。
【0110】
内挿処理部218は、バッファ216に格納されるスペクトルに対して内挿処理を行なうことで、特性情報(波長−信号強度特性)を取得する。より具体的には、内挿処理部218は、バッファ216に格納される各成分の値を用いてフィッティング処理を行ない、近似関数を決定する。外挿処理部220は、内挿処理部218において決定された特性情報(近似関数)に対して外挿処理を行なうことで、測定器本体2が検出感度を有する波長範囲fmin〜fmaxについての迷光スペクトルを決定する。
【0111】
さらに規格化部240は、平均化部204において算出される信号強度Dを用いて、外挿処理部220において決定された迷光スペクトルを規格化する。この規格化処理によって、迷光パターンが算出される。この算出された迷光パターンは、記憶部230に格納される。すなわち、記憶部230は、分光測定手段(測定器本体2)に生じる迷光成分を示すパターン(迷光パターン)を記憶する記憶手段として機能する。ここで、パターンは、第1の波長範囲(波長範囲fmin〜fmax)の一部である第2の波長範囲(fcut〜fmax)以外の範囲について得られた迷光成分を示す特性情報から決定された近似関数、および、当該近似関数を示すデータセットのいずれかである。このようなデータ構造については、図12を参照して後述する。
【0112】
次に、測定結果を算出するための構成について説明する。
バッファ252は、通常測定の際に補正領域25bを構成する各検出素子で検出された信号強度を格納し、平均化部254がこれらの信号強度を平均化することで、信号強度(図9に示す信号強度D)が算出される。
【0113】
バッファ262は、通常測定の際の測定スペクトル(図9に示す測定スペクトル311)を格納し、バッファ272は、通常測定の際のダークスペクトル(図9に示す測定スペクトル(ダークスペクトル)312)を格納する。
【0114】
減算部264は、バッファ262に格納される測定スペクトルとバッファ272に格納される測定スペクトルとの間の差分を算出する。すなわち、減算部264は、通常測定の際にダーク補正を行なう。この減算部264によって算出された差分の測定スペクトル(図9に示すダーク補正後のスペクトル313)は、バッファ266に格納される。
【0115】
一方、乗算部256は、記憶部230に記憶されている迷光パターンを読み出し、平均化部254において算出される信号強度Dを乗じることで、当該通常測定における迷光スペクトル(図9に示す迷光スペクトル314)を算出する。この算出された迷光スペクトルは、バッファ258に格納される。
【0116】
減算部268は、バッファ266に格納されるダーク補正後の測定スペクトルとバッファ258に格納される迷光スペクトルとの間の差分を算出する。すなわち、減算部268は、通常測定の際に迷光補正を行なう。この減算部268によって算出された差分の測定スペクトル(図9に示すダーク補正後のスペクトル315)は、測定結果として出力される。
【0117】
<G.データ構造>
上述したように、振幅を規格化した迷光パターンを用いて迷光補正を行なうのは、迷光パターンの取得時の状況と、通常測定時の状況との相違を、光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度を用いて補正するためである。但し、このような状況の変化を反映するための補正については、他の方法を採用することもできる。それに伴って、迷光パターン107b(図6)として記憶されるデータの構造についても、以下に示すような各種の方式を採用することができる。
【0118】
図12は、本発明の実施の形態に従う分光特性測定装置1において記憶される迷光パターンのデータ構造の一例を示す模式図である。以下、図12(A)〜図12(D)にそれぞれ示すデータ構造について説明する。
【0119】
図12(A)には、上述した迷光パターンを規格化された値として記憶する場合のデータ構造の例を示す。この例では、光検出器25の検出領域25aに含まれる検出素子の数に対応して、各成分の規格化された値が格納される。この例では、上述した方法によって、迷光スペクトルを決定(推定)することができる。
【0120】
図12(B)には、上述した迷光パターンの取得時に測定された迷光スペクトル(ダーク補正後)を、その際に光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度と関連付けて格納する形態を示す。この例では、迷光パターンの成分の振幅は、規格化されておらず、測定値のままとなっている。このデータ構造を用いて迷光補正を行なう場合には、通常測定の際に光検出器25の補正領域25bで検出された信号強度を用いて、迷光スペクトルの振幅が補正される。より具体的には、迷光パターンの取得の際に測定された信号強度の絶対値に対する、通常測定の際に測定された信号強度の絶対値の比率を、迷光スペクトルのそれぞれの成分値に乗じることで、当該通常測定の状況に応じた迷光パターンを決定(推定)することができる。
【0121】
図12(C)および図12(D)には、迷光パターンの各成分の値ではなく、上述した内挿処理によって得られた近似関数をそのまま格納する形態を示す。図12(C)には、近似関数を規格化した状態で格納する例を示し、図12(D)には、図12(B)と同様に、実際に測定されたスペクトルの振幅を反映した近似関数を対応する信号強度と関連付けて格納する例を示す。
【0122】
このような迷光成分を示す近似関数を処理装置100に実装することで、データ量を削減できる。迷光補正の際には、近似関数を用いて各波長に対応する振幅を随時算出しておくことで、上述した処理と同様の処理を用いて迷光を補正できる。
【0123】
<H.測定例>
次に、本実施の形態に従う処理を実際に行なって得られた測定結果を以下に示す。
【0124】
図13は、カットフィルタおよび迷光特性についての測定例である。なお、図13に示す測定例では、光源としてハロゲンランプを採用するとともに、カットフィルタ31(図2)としては、以下の4種類について試した。なお、比較のため、カットフィルタ31を設けない場合(光源からの光そのもの)についても示す。
【0125】
(1)遮断波長:370nm(形式:L37)
(2)遮断波長:500nm(形式:Y50)
(3)遮断波長:560nm(形式:O56)
(4)遮断波長:640nm(形式:R64)
なお、露光時間は、5msecとし、図13には、ダーク補正後のスペクトルを示す。
【0126】
さらに、遮断波長が約640nmであるフィルタ(形式:R64)を用いた場合に得られたスペクトルに対して、内挿処理および外挿処理を行なった結果を合わせて示す。
【0127】
まず、図13に示すように、いずれのカットフィルタを用いた場合であっても、迷光が同様の波長特性を有することがわかる。すなわち、波長が高くなるほど、その迷光成分が小さくなっていることがわかる。したがって、基本的には、いずれのカットフィルタを用いたとしても、迷光パターンを取得できることを意味する。
【0128】
なお、カットフィルタの種類によって迷光の振幅が異なっているのは、測定器本体2の内部に入射する光の光量が同一ではないためである。すなわち、光の入射が遮断される波長幅が大きいほど光量が減少するので、振幅はより小さくなっている。なお、本実施の形態に従う分光特性測定装置1では、上述したように、光検出器25の補正領域25bで検出される信号強度を用いて迷光スペクトルの振幅が決定されるので、このような振幅の変動を反映した上で迷光補正を行なうことになる。
【0129】
また、図13に示すように、実測された迷光の波長特性に対して非常に相関の高い近似関数(指数関数)が得られていることがわかる。すなわち、本実施の形態によれば、カットフィルタによって強度がゼロにされた波長範囲の迷光特性だけでなく、それ以外の波長範囲における迷光特性についても高い精度で補正できることを意味している。
【0130】
次に、本願発明者らが迷光の温度依存性について測定した例を示す。
図14〜図17は、迷光の温度依存性についての測定例である。より具体的には、図14〜図16は、それぞれ10℃,20℃,30℃に設定された恒温層に測定器本体2を入れた状態で迷光を測定したものである。なお、以下のカットフィルタとしては、以下の2つを用いた。
【0131】
(1)遮断波長:380nm(形式:L38)
(2)遮断波長:520nm(形式:Y52)
図14(A)〜図16(A)には、それぞれの温度における測定結果(ダーク補正後のスペクトル)を示し、図14(B)〜図16(B)には、それぞれ図14(A)〜図16(A)に示すスペクトルを拡大した図を示す。さらに、図17には、図14〜図17に示す各温度における共通のカットフィルタ(遮断波長:520nm/形式:Y52)を用いた場合のスペクトルを共通の波長−振幅の座標にプロットしたものである。
【0132】
図14〜図17に示す測定例によれば、迷光の波長特性については、温度依存性が低く、基本的には、温度補正を行なう必要がないと考えられる。もちろん、装置の構成などによっては、環境温度によって検出感度が変化するので、そのような場合には、迷光パターンから迷光スペクトルを決定する過程で、温度のファクタを用いて補正することが好ましい。
【0133】
<I.変形例>
(i1:変形例1)
上述の実施の形態においては、測定器本体2および処理装置100をそれぞれ独立の装置として構成する場合について例示したが、両装置を一体化して構成してもよい。
【0134】
(i2:変形例2)
本発明に係るプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明に係るプログラムに含まれ得る。
【0135】
さらに、本発明に係るプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明に係るプログラムに含まれ得る。
【0136】
さらに、本発明に係るプログラムによって実現される機能の一部または全部を専用のハードウェアによって構成してもよい。
【0137】
<J.利点>
本実施の形態によれば、分光特性測定装置1に測定器本体2に固有で生じ得る迷光成分を示す迷光パターンを予め取得しておき、各測定時において、当該予め取得された迷光パターンをその状況に応じたもの補正(すなわち、迷光スペクトルを推定)した上で、測定スペクトルからその迷光スペクトルを減じることで、迷光成分の影響を排除した被測定物の分光特性(スペクトル)を算出する。また、この迷光補正とともに、光検出器に流れる暗電流などの影響もダーク補正によって排除する。これらの補正によって、より高精度に被測定物の分光測定を取得することができる。
【0138】
また、本実施の形態によれば、光検出器25の検出面に、被測定光が入射する領域(検出領域25a)と、被測定光が入射しない領域(補正領域25b)とが設けられており、検出領域25aで測定スペクトルが検出される際に、補正領域25bで信号強度が検出される。そして、この検出された信号強度を用いて迷光スペクトルが算出される。そのため、フィルタを交換するなどの機械的な動作が不要であり、かつ、測定スペクトルの検出に併せて検出される信号強度を用いて迷光スペクトルが算出されるので、処理時間を短縮できる。言い換えれば、処理時間の増大を回避しつつ、迷光補正を行ない、より高精度の測定を行なうことができる。
【0139】
また、本実施の形態によれば、測定毎にその状況に応じた迷光スペクトルが推定されるので、短時間の間に、環境(例えば、温度)が大きく変化するような状況であっても、安定して高精度の測定を行なうことができる。
【0140】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0141】
1 分光特性測定装置、2 測定器本体、4 光ファイバ、6 光取出部、20 光取入口、21 シャッター、22 スリット、23,31 カットフィルタ、24 分光器、25 光検出器、25a 検出領域、25b 補正領域、26 筐体、100 処理装置、101 コンピュータ本体、102 モニタ、103 キーボード、104 マウス、105 CPU、106 メモリ、107 固定ディスク、107a 補正ロジック、107b,305 迷光パターン、109 通信インターフェイス部、111,113 FD駆動装置、114 CD−ROM、202,212,216,222,252,258,262,266,272 バッファ、204,254 平均化部、214,264,268 減算部、218 内挿処理部、220 外挿処理部、230 記憶部、240 規格化部、256 乗算部、Ax 光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長範囲に検出感度を有する分光測定器に対して、その波長範囲が前記第1の波長範囲の一部である第2の波長範囲となっている光を入射させるステップと、
前記分光測定器で検出された第1のスペクトルのうち前記第2の波長範囲以外の範囲に対応する部分から迷光成分を示す特性情報を取得するステップと、
前記特性情報を前記第1の波長範囲のうち前記第2の波長範囲まで外挿処理することで、前記分光測定器に生じる迷光成分を示すパターンを取得するステップとを備える、分光特性測定方法。
【請求項2】
前記パターンを用いて、被測定光を前記分光測定器に入射させた場合に検出される第2のスペクトルを補正することで、前記被測定光の分光特性を示す第3のスペクトルを決定するステップをさらに備える、請求項1に記載の分光特性測定方法。
【請求項3】
前記分光測定器は、入射された光を受光する光検出器を含んでおり、前記光検出器は、前記第1の波長範囲の光が入射するように設計された第1の検出領域と、前記第1の検出領域以外の第2の検出領域とからなる検出面を有しており、前記方法は、さらに、
前記第2のスペクトルを検出する際に前記第2の検出領域において検出された信号強度を取得するステップを備え、
前記第3のスペクトルを決定するステップは、前記信号強度に基づいて前記パターンを補正し、前記第2のスペクトルから当該補正後のパターンを減じることで前記第3のスペクトルを決定するステップを含む、請求項2に記載の分光特性測定方法。
【請求項4】
前記第2の検出領域は、前記第1の検出領域に引き続く短波長側に設けられる、請求項3に記載の分光特性測定方法。
【請求項5】
前記第2の検出領域は、複数の検出素子を含み、
前記信号強度は、前記複数の検出素子のそれぞれで検出された信号強度の平均値である、請求項3または4に記載の分光特性測定方法。
【請求項6】
前記パターンを取得するステップは、前記取得された特性情報を近似する指数関数を決定するステップを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分光特性測定方法。
【請求項7】
第1の波長範囲に検出感度を有する分光測定手段と、
前記分光測定手段に生じる迷光成分を示すパターンを記憶する記憶手段と、
被測定光を前記分光測定手段に入射させることで検出されるスペクトルを、前記パターンを用いて補正することで、前記被測定光の分光特性を示すスペクトルを決定する補正手段とを備え、
前記パターンは、前記第1の波長範囲の一部である第2の波長範囲以外の範囲について得られた迷光成分を示す特性情報から決定された近似関数、および、当該近似関数を示すデータセットのいずれかである、分光特性測定装置。
【請求項8】
前記近似関数は、指数関数である、請求項7に記載の分光特性測定装置。
【請求項9】
前記分光測定手段は、入射された光を受光する光検出器を含んでおり、前記光検出器は、前記第1の波長範囲の光が入射するように設計された第1の検出領域と、前記第1の検出領域以外の第2の検出領域とからなる検出面を有しており、
前記補正手段は、
前記被測定光が入射されてスペクトルを検出する際に前記第2の検出領域において検出された信号強度を取得する手段と、
前記取得された信号強度に基づいて前記パターンを補正する手段と、
前記検出されたスペクトルから前記補正後のパターンを減じることで、前記被測定光の分光特性を示すスペクトルを決定する手段とを含む、請求項7または8に記載の分光特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−189440(P2012−189440A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53019(P2011−53019)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【Fターム(参考)】