分子メモリデバイスおよび方法
スイッチングデバイスと、前記スイッチングデバイスに結合された少なくとも第1のビット線および第1のワード線と、それぞれがビット線およびワード線に結合された記憶位置のアレイとを具備する分子メモリ素子であって、前記素子は、レドックス活性分子を含む記憶分子を有する第1の電極を具備し、前記アレイは、第2の電極を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年1月28日に出願された米国特許出願番号第10/766304号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、スタティック、パーマネント、およびダイナミックランダムアクセスメモリなどの、メモリデバイスに関する。特に本発明は、分子メモリセルと、分子メモリアレイと、分子メモリを含む電子デバイス、特に論理デバイスとに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体加工およびデバイス設計の進歩は、従来のプログラマブルコンピュータから通信装置や娯楽用装置に至る、一見無限のさまざまなツールおよびマシンに、コンピューティングデバイスが組み込まれるという結果をもたらした。最終的な目的に関係なく、コンピューティングデバイスは、一般に、中央処理装置(CPU)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、CPUおよびRAMの間のデータ交換を可能にするアドレス指定および通信の機構との、3つの主要な構成要素により構成される。コンピューティングデバイス内では、データは、信号(例えば、電圧、電流、光など)の形態で記憶、通信、および処理される。CPUは、信号を論理的に処理するための回路を含むのに対して、メモリは、CPUによるそれらの信号の処理の前、間、および後に信号を記憶するための回路を含む。
【0004】
従来のCPU、メモリデバイス、およびデータ通信機構は、ソリッドステート電子デバイスとして大量生産される。ソリッドステート電子デバイスは、「半導体デバイス」と呼ばれることがあるにもかかわらず、金属、半導体、および絶縁体を含む、固体の電気的挙動に依存する。ソリッドステートデバイスを生産するための技術および装置は、時が経つにつれて劇的に向上し、サブミクロンスケールの特徴を有する、スイッチ、キャパシタ、抵抗などのデバイス、および配線を製造できるようになった。
【0005】
コンピューティングデバイスのメモリ構成要素の性能は、全体的なシステム性能の、ますます重要な決定要因となりつつある。メモリの量が大きければ、より多様なアプリケーションおよび機能がコンピューティングデバイスによって実装されることが可能となり、また、独立した大容量記憶装置の必要性が減少するか、またはなくなる可能性がある。メモリがより高速ならば、より高いCPU処理周波数がサポートされ、複雑な、またはリアルタイムのタスクのために、コンピューティングデバイスがより役立つようになる。より高密度のメモリデバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、多機能携帯電話などの、ますます多様化しつつあるバッテリ駆動の電子デバイスをサポートする。それと同時に、これらの用途の多くは、電力消費の減少により利益を得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの場合、半導体加工技術の進歩は、より高密度、より大容量、より高速、そしてより電力効率の良いメモリデバイスを作成するために、これらの重要な特性のそれぞれを改良する効果を有してきた。多くの場合、デバイスのソリッドステート電子挙動は、デバイスがより小さくなるにつれて改良される。残念ながら、DRAMメモリなどの従来のシリコンベースのメモリは、従来の半導体メモリセルのサイズの継続的な減少が、これらの重要なパラメータのうちの少なくともいくつかに悪影響を及ぼすことが予想される点に到達した。
【0007】
より小さな寸法において、速度が減少し、電力消費が増加する1つの理由は、メモリデバイスは通常、それぞれの記憶される情報ビットに対して、キャパシタを実装するということである。キャパシタは、絶縁体によって分離された導電性プレートにより形成される、電荷記憶デバイスである。キャパシタが小さくなるにつれて、記憶可能な電荷の量は減少する。信頼性の高いメモリデバイスとして働くためには、キャパシタは、後でデータとして確実に検出されることが可能なレベルの信号を保持するための、十分な容量を有していなければならない。その上、キャパシタ内に記憶された電荷の一部は、時間の経過とともに消散または漏洩するという点で、キャパシタは本質的に「漏れやすい」デバイスである。より小さなキャパシタに基づくメモリデバイスは、漏れの問題の影響をより受けやすく、その理由は、それらのメモリデバイスが単により少ない電荷を有し、したがってそれらの電荷が失われて、記憶されたデータが回復不能になる可能性があるということである。
【0008】
容量性記憶の一時的性質を克服するために、メモリデバイスは、記憶された信号を頻繁に読み出し、より高いレベルに増幅して、キャパシタ内に再び記憶するための、リフレッシュ回路を使用する。キャパシタが小さくなるにつれて、キャパシタがリフレッシュされる必要のあるレートは増加する。その結果として、より高いキャパシタリフレッシュレートにより、データの読み出しおよび書き込みのためにメモリセルを利用できる時間のパーセンテージは減少する。その上、メモリデバイスの総電力消費のより大きなパーセンテージが、メモリのリフレッシュのために使用されることになる。デバイスが休止または非アクティブ状態にある場合でも、従来のDRAMは継続的なリフレッシュを必要とし、したがって、継続的な電力消費を必要とする。そのため、研究者は、従来のキャパシタベースのメモリデバイスにおける、より小さなキャパシタに関連する問題を克服する、新しいデータ信号記憶方法を積極的に探し求めている。
【0009】
メモリセルの設計者は、一定量のチップ領域内に形成可能なキャパシタンスの量を増大させることによって、より小さなメモリセル内での、低いリフレッシュレートを維持しようと試みてきた。キャパシタンスの増大には、多くの場合、キャパシタの電荷保持素材の表面積を増加させることが含まれるが、キャパシタの全体的なサイズが小さくなっている場合、これを行うことは非常に困難である。設計者は、電荷保持素材を3次元トレンチおよび積層型キャパシタ設計に形成することによって、表面積の制御においていくらかの成功は収めたが、これらの技術を、より小さなデバイス内でより大きなキャパシタンスを提供するという、継続的な進歩のために、当てにすることができる見込みはない。メモリデバイス内で有用となる十分な電荷を、十分な時間にわたってキャパシタが記憶できなくなるほどに、さまざまなデバイス特徴の寸法がより小さくなるにつれて、デバイス性能が基礎を置いているソリッドステート電子挙動は破綻し始める。
【0010】
情報密度(例えば、メモリチップの一定面積内に記憶可能な情報の量)を増加することを試みているメモリ設計者は、もう1つの問題に直面している。従来のソリッドステートキャパシタの各メモリセルは、1ビットの情報のみを記憶できる。したがって、複数の個別の状態を確実に記憶できるメモリセルを有することにより達成される、改良された情報記憶密度を備えたメモリデバイスを有することが望ましい。
【0011】
上記を考慮すると、従来のソリッドステートメモリ設計によって課せられる制限を克服する、ダイナミックランダムアクセスメモリなどのメモリデバイスの必要性が存在することは明らかである。特に、分子メモリセルと、分子メモリアレイと、分子メモリを含む電子デバイスとに対する必要性が存在する。さらに、半導体デバイスと配線を、分子メモリデバイスと一体構造で製造できるようにする、既存の半導体製造実践と互換性のある技術を使用して製造可能な分子メモリデバイスに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡潔に述べると、本発明の実施形態は、スイッチングデバイスと、スイッチングデバイスに接続されたビット線およびワード線と、スイッチングデバイスを介してアクセス可能な分子記憶デバイスとを含む、分子メモリ素子を具備する。分子記憶デバイスは2つ以上の個別の状態に置かれることが可能であり、分子記憶デバイスは、ビット線およびワード線に印加される信号によって、個別の状態のいずれかに置かれる。分子記憶デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、第1および第2の電極の間の分子材料とを具備する。
【0013】
本発明は、さらに、複数の分子記憶素子を含む分子メモリアレイに関し、ここで、各分子記憶素子は2つ以上の個別の状態に置かれることが可能である。少なくとも1本のビット線と少なくとも1本のワード線とによって、各分子記憶素子が結合されるように、そしてアドレス指定されることが可能なように、複数のビット線およびワード線が複数の分子記憶素子に結合される。
【0014】
別の態様では、本発明は、分子記憶素子の、アドレス指定可能なアレイを具備する分子メモリデバイスを企図している。アドレスデコーダが、コード化されたアドレスを受信し、コード化されたアドレスに対応するワード線信号を生成する。ワード線ドライバが、アドレスデコーダに結合され、増幅されたワード線信号を生成する。増幅されたワード線信号は、分子記憶素子のアレイのメンバを、ビット線に選択的に結合するスイッチを制御する。ビット線に結合された読み出し/書き込みロジックは、分子メモリデバイスが読み出しモードまたは書き込みモードのいずれにあるかを判定する。読み出しモードでは、各ビット線に結合されたセンス増幅器が、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を検出し、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を示すデータ信号を、ビット線上に生成する。書き込みモードでは、読み出し/書き込みロジックが、ビット線および選択的に結合された分子記憶素子上に、データ信号を駆動する。
【0015】
本発明は、さらに、特定用途向け集積回路(ASIC)およびシステムオンチップ(SOC)デバイスなどのような、組み込み分子メモリデバイスと統合されたロジックを含むデバイスも企図している。そのような実装は、分子メモリデバイスと一体構造で形成され、分子メモリデバイスと相互接続された、1つまたは複数の機能構成要素を具備する。機能構成要素は、ソリッドステート電子デバイスおよび/または分子電子デバイスを具備してもよい。
【0016】
特定の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板上に、続いて形成される積層構造として実装される。他の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板内の、マイクロメートルまたはナノメートルのサイズの穴として実装される。分子記憶デバイスは、半導体基板および半導体基板内に以前に形成された能動素子と互換性のある加工技術を使用して製造される。分子記憶デバイスは、例えば、電解質(例えば、セラミックまたは固体電解質)によって分離された2つ以上の電極表面を有する電気化学セルを含む。記憶分子(例えば、情報を記憶するために使用可能な1つまたは複数の酸化状態を有する分子)は、電気化学セル内の電極表面に結合される。
【0017】
本発明の追加の態様は、以下から独立に選択された構成要素の使用を含む。電界効果トランジスタを含むトランジスタスイッチングデバイス、ワード線に結合された行デコーダ、ビット線に結合された列デコーダ、ビット線に接続された電流前置増幅器、ビット線に接続されたセンス増幅器、コード化されたアドレスを受信し、コード化されたアドレスに対応するワード線信号を生成するアドレスデコーダ、アドレスデコーダに結合された線ドライバ(線ドライバは、増幅されたワード線信号を生成する(任意選択で、増幅されたワード線信号は、分子記憶素子のアレイのメンバを、ビット線に選択的に結合するスイッチを制御する)、ビット線に結合された読み出し/書き込みロジック(読み出し/書き込みロジックは、分子メモリデバイスが読み出しモードまたは書き込みモードのいずれにあるかを判定する)、各ビット線に結合されたセンス増幅器(デバイスが読み出しモードにある場合、各ビット線に結合されたセンス増幅器は、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を検出し、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を示すデータ信号を、ビット線上に生成する(デバイスが書き込みモードにある場合に、読み出し/書き込みロジックが、ビット線および選択的に結合された分子記憶素子上に、データ信号を駆動するように))、電解質層、およびそれらの組み合わせ。
【0018】
さらなる態様は、グラウンドに結合された第2の電極と、直角をなすか、または平行な、ビット線およびワード線とを利用する。
【0019】
追加の態様は、DRAMまたはSRAMなどの揮発性メモリ、あるいはフラッシュメモリまたは強誘電体メモリなどの不揮発性メモリを含む、本発明のメモリアレイを有する。
【0020】
さらなる態様は、アレイを提供し、ここで、分子記憶デバイスは第1の電極上に形成される結合層を有し、結合層は開口部を有し、分子材料が開口部内にあって第2の電極層と電子的に結合され、電解質層が結合層の上に形成される。
【0021】
追加の態様は、以下から選択されるReAMを提供する。ポルフィリン大環状分子、メタロセン、直鎖ポリエン、環状ポリエン、ヘテロ原子置換直鎖ポリエン、ヘテロ原子置換環状ポリエン、テトラチアフルバレン、テトラセレナフルバレン、金属配位錯体、バッキーボール、トリアリールアミン、1,4−フェニレンジアミン、キサンテン、フラビン、フェナジン、フェノチアジン、アクリジン、キノリン、2,2’=ビピリジル、4,4’=ビピリジル、テトラチオテトラセン、またはペリブリッジされたナフタレンジカルコゲナイド。
【0022】
さらなる態様は、特定の機能を実行するように構成された論理デバイスと、論理デバイスに結合された、本発明の組み込み分子メモリデバイスとを含む、一体型に統合されたデバイスを提供する。デバイスは、任意選択で、特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SOC)、ソリッドステート電子デバイス、または分子電子デバイスを具備してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、従来のマイクロエレクトロニクスのために開発された技術と統合され、それらの技術から利益を得る、分子メモリ素子(本明細書および関連出願において「記憶分子」または「メモリ分子」と呼ばれる場合がある)の使用を可能にする、多くのデバイスおよびシステムアーキテクチャを企図している。1つのレベルにおいては、本発明は、記憶分子を、記憶分子の読み出しおよび書き込みを可能にするスイッチングロジックと統合する、分子メモリ素子を含む。もう一方の極限においては、本発明は、分子メモリアレイと一体構造で統合され、より少ない電力消費、優れたデータ持続性、より高い情報密度などの、分子メモリの1つまたは複数の独特の特徴を活用する、新しくかつ有用な機能を提供する、データ処理回路を含む論理デバイスを有する、高集積回路を企図している。
【0024】
レドックス活性部分またはレドックス活性分子に基づく、本発明での使用に適した多種多様な記憶分子が存在する。ここでの「レドックス活性部分」または「レドックス活性分子」または「ReAM」は、適切な電圧の印加によって酸化または還元されることが可能な部分を意味する。この文脈における、適切な電圧とは、従来のマイクロエレクトロニクスにおいて使用される電圧である。
【0025】
一部の実施形態では、レドックス活性部分は、少なくとも2つ以上の識別可能な非中性酸化状態を有し、分子あたり複数のビットを記憶する場合は特に、少なくとも3、4、5、6、7、8、またはそれよりも高い酸化状態が有用である。一部の実施形態では、特にさまざまなReAMの混合物が各記憶位置において使用される場合、個々のReAMは単一の非中性酸化状態のみを有していてもよいが、各位置におけるさまざまな部分の集まりは、記憶密度のために複数の酸化状態を提供する。さらに、ReAMポリマーの場合、より少ない酸化状態を有するさまざまなモノマーの、ヘテロポリマーを使用することによって、複数の酸化状態がもたらされてもよい。
【0026】
あるいは、一部の実施形態では、同じ電圧において複数の電荷(例えば、電子)が読み出される、高い電荷密度を有する記憶デバイスが有用である。例えば、特定の電圧における記憶分子の酸化は、1つではなく、2つまたは3つの電子の損失という結果になってもよい。したがって、ReAMは、より少ない酸化状態を有するが、各状態においてより多くの電子を放棄し、それにより表面上でより高い電荷密度がもたらされるように設計されてもよい。
【0027】
「酸化」は、元素、化合物、または化学置換基/サブユニット内での、1つまたは複数の電子の損失を意味する。酸化反応においては、反応に関与する元素(1つまたは複数)の原子によって、電子が失われる。これらの原子上の電荷は、次に、より正にならなければならない。酸化を受けている化学種から電子が失われるため、電子は酸化反応における生成物のように見える。酸化は、反応Fe3+(aq) → Fe3+(aq) + e−の中で発生しており、その理由は、酸化反応における「自由な」実体としての電子の明白な生成にもかかわらず、酸化されている化学種Fe3+(aq)から電子が失われるためである。逆に、「還元」という用語は、元素、化合物、化学置換基/サブユニットによる、1つまたは複数の電子の獲得を意味する。
【0028】
「酸化状態」は、電気的に中性の状態、あるいは、ReAMまたはレドックス活性サブユニットへの電子の獲得または損失により生成される状態を意味する。好ましい実施形態では、「酸化状態」という用語は、中性状態と、電子の獲得または損失(還元または酸化)によってもたらされる中性状態以外の任意の状態とを含む状態を意味する。
【0029】
一般に、上記のように、本発明において有用な複数のタイプのReAMがあり、すべて、大環状および非大環状部分を含む、多座プロリガンドに基づく。多くの適切なプロリガンドと錯体、および適切な置換基は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、および米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書に概要が記載されており、これらの特許文献のすべて、特に、その中に示されている構造およびその説明については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0030】
適切なプロリガンドは、次の2つのカテゴリに分けられる。(金属イオンに依存して)窒素、酸素、硫黄、炭素、または燐原子を配位原子として使用するリガンド(文献では一般にシグマ(σ)ドナーと呼ばれる)、およびメタロセンリガンドなどの有機金属リガンド(文献では一般にパイ(π)ドナーと呼ばれ、本明細書ではLmとして示される)。
【0031】
さらに、単一のReAMは、2つ以上のレドックス活性サブユニットを有していてもよい。例えば、図13Aに示すように、通常は、ただし任意選択で、リンカーLを介して結合される、ポルフィリン(図13に、金属なしで示す)およびフェロセン(以下で説明し、図13Bに示すように、これらの両方は任意選択で、任意の位置において、独立に選択された置換基に置き換えられてもよい)という2つのレドックス活性サブユニットが存在する。同様に、サンドイッチ配位化合物は、単一のReAMと見なされる。これは、これらのReAMがモノマーとして重合される場合とは区別される。例えば、図13Cは、図13Bの重合された変種であり、ここで、hは2以上の整数である。さらに、本発明の金属イオン/錯体は、本明細書に一般には示していない、対イオンに関連付けられていてもよい。
【0032】
大環状リガンド
一実施形態では、ReAMは、大環状プロリガンドおよび大環状錯体の両方を含む、大環状リガンドである。ここでの「大環状プロリガンド」は、金属イオンに結合できるように配向されたドナー原子(本明細書では「配位原子」と呼ばれる場合もある)を含み、金属原子を取り囲むのに十分な大きさである、環式化合物を意味する。一般に、ドナー原子は、窒素、酸素、および硫黄を、これらに限定されずに含むヘテロ原子であり、前者が特に好ましい。ただし、当業者によって理解されるように、異なる金属イオンは異なるヘテロ原子に優先的に結合し、したがって、使用されるヘテロ原子は、望ましい金属イオンに依存してもよい。さらに、一部の実施形態では、単一の大環状分子が、さまざまなタイプのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0033】
「大環状錯体」は、少なくとも1つの金属イオンを有する大環状プロリガンドである。一部の実施形態では、大環状錯体は単一の金属イオンを含むが、後述するように、多核大環状錯体を含む、多核錯体も企図されている。
【0034】
電子的に共役されたもの、および電子的に共役されていない可能性があるものを含む、多種多様な大環状リガンドが、本発明に用途を見出す。ただし、本発明の大環状リガンドは、好ましくは少なくとも1つの、また、好ましくは2つ以上の酸化状態を有し、4つ、6つ、および8つの酸化状態は特に意義がある。
【0035】
適切な大環状リガンドの概略を、図15に図示して説明している。ポルフィリンに大まかに基づくこの実施形態では、16員環(−X−部分が、炭素またはヘテロ原子のいずれかの、単一の原子を含む場合)、17員環(−X−部分のうちの1つが、2つの骨格原子を含む場合)、18員環(−X−部分のうちの2つが、2つの骨格原子を含む場合)、19員環(−X−部分のうちの3つが、2つの骨格原子を含む場合)、または20員環(−X−部分のうちの4つすべてが、2つの骨格原子を含む場合)がすべて企図されている。各−X−基は、独立に選択される。‥‥Q‥‥部分は、骨格 −C−ヘテロ原子−C (一重または二重結合のいずれかを使用して独立に炭素とヘテロ原子を連接)とともに、5または6員環を形成し、これは任意選択で、1つまたは2つ(5員環の場合)、あるいは1つ、2つ、または3つ(6員環の場合)の独立に選択されたR2グループに置き換えられる。一部の実施形態では、環、結合、および置換基は、電子的に共役された化合物をもたらすように、そして、少なくとも2つの酸化状態を最低でも有するように選ばれる。
【0036】
一部の実施形態では、本発明の大環状リガンドは、ポルフィリン(特に、以下で定義するポルフィリン誘導体)、およびシクレン誘導体からなる群から選択される。
【0037】
ポルフィリン
本発明において適切な大環状分子の特に好ましいサブセットは、ポルフィリン誘導体を含む、ポルフィリンである。そのような誘導体としては、ポルフィリン核にオルト融合された、またはオルト周辺融合された(ortho−perifused)追加の環を有するポルフィリン、ポルフィリン環の1つまたは複数の炭素原子の、別の元素の原子による置換(骨格置換)を有するポルフィリン、ポルフィリン環の窒素原子の、別の元素の原子による置換(窒素の骨格置換)を有する誘導体、周辺に配置された、水素以外の置換基(ポルフィリンの、メソ−、3−、または核原子)を有する誘導体、ポルフィリンの1つまたは複数の結合が飽和した誘導体(ヒドロポルフィリン、例えば、クロリン、バクテリオクロリン、イソバクテリオクロリン、デカヒドロポルフィリン、コルフィン(corphins)、ピロコルフィン(pyrrocorphins)など)、ピロールおよびピロメテニルユニットを含む、1つまたは複数の原子が、ポルフィリン環内に挿入された誘導体(拡張ポルフィリン)、1つまたは複数の基がポルフィリン環から除去された誘導体(収縮ポルフィリン、例えば、コリン、コロール)、ならびに前述の誘導体の組み合わせ(例えば、フタロシアニン、サブフタロシアニン、およびポルフィリン異性体)がある。その他の適切なポルフィリン誘導体としては、エチオフィリン(ethiophyllin)、ピロポルフィリン、ロドポルフィリン、フィロポルフィリン、フィロエリスリン、クロロフィルaおよびbを含む、クロロフィル基、ならびに、ジューテロポルフィリン、ジューテロヘミン(deuterohemin)、ヘミン、ヘマチン、プロトポルフィリン、メソヘミン(mesohemin)、ヘマトポルフィリン、メソポルフィリン、コプロポルフィリン、ウルポルフィリン(uruporphyrin)、およびトゥラシン(turacin)を含む、ヘモグロビン基と、一連のテトラアニールアザジピロメチン(tetraarylazadipyrromethines)とがある(ただし、これらに限定されない)。
【0038】
本明細書で概要を述べた化合物について当てはまるように、そして、当業者によって理解されるように、各不飽和位置は、炭素またはヘテロ原子のいずれでも、本明細書で定義した1つまたは複数の置換基を、システムの望ましい価に依存して含むことが可能である。
【0039】
好ましい一実施形態では、レドックス活性分子は、図12Aの化学式に示すように、メタロセンであってもよく、ここで、Lはリンカー、Mは金属(例えば、Fe、Ru、Os、Co、Ni、Ti、Nb、Mn、Re、V、Cr、W)、S1およびS2は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルからなる群から独立に選択される置換基である。好ましい実施形態では、置換アリール基はポルフィリンに結合され、アリール基上の置換基は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルからなる群から選択される。
【0040】
特に好ましい置換基としては、4クロロフェニル、3−アセトアミドフェニル、2,4−ジクロロ−4−トリフルオロメチルがある(ただし、これらに限定されない)。好ましい置換基は、約2ボルト未満のレドックス電位範囲を提供する。Xは、基質、基質に共有結合できる反応性部位(例えば、アルコール、チオールなど)からなる群から選択される。一部の実施形態では、L−Xは、アルコールまたはチオールであってもよいことが理解される。あるいくつかの例では、L−Xは、S1またはS2のような別の置換基(S3)に置き換えられてもよい。あるいくつかの実施形態では、L−Xは存在してもしなくてもよく、存在する場合、好ましくは、4−ヒドロキシフェニル、4−(2−(4−ヒドロキシフェニル)エチニル)フェニル、4−ヒドロキシメチル)フェニル、4−メルカプトフェニル、4−(2−(4−メルカプトフェニル)エチニル)フェニル、4−(メルカプトメチル)フェニル、4−ヒドロセレノフェニル(hydroselenophenyl)、4−(2−(4−ヒドロセレノフェニル(hydroselenophenyl))エチニル)フェニル、4−(ヒドロセレニルメチル)フェニル、4−ヒドロテルロフェニル(hydrotellurophenyl)、4−(2−(4−ヒドロテルロフェニル(hydrotellurophenyl))エチニル)フェニル、および4−(ヒドロテルロメチル(hydrotelluromethyl))フェニルである。
【0041】
図12Aの化学式の分子の酸化状態は、金属および置換基によって決定される。したがって、特定の好ましい実施形態が、図12B〜図12Gの化学式によって示されている。
【0042】
これらの図の化学式内の、上に記載したフェロセンは、異なる識別可能な酸化状態を有する、好都合な一連の1ビット分子を提供する。したがって、これらの化学式の分子は、+0.55V、+0.48V、+0.39V、+0.17V、−0.05V、および−0.18Vの酸化状態(Eli2)をそれぞれ有し、本発明の記憶媒体内への組み込みのための好都合な一連の分子を提供する。一連の分子のメンバーの酸化電位は、金属(M)または置換基を変更することによって定期的に変更されてもよいことが理解される。
【0043】
別の好ましいレドックス活性分子は、図12Hの化学式により示されるポルフィリンであり、ここで、Fはレドックス活性サブユニット(例えば、フェロセン、置換フェロセン、金属ポルフィリン、または金属クロリンなど)であり、J1はリンカーであり、Mは金属(例えば、Zn、Mg、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Mn、B、Al、Ga、Pb、およびSn)であり、S1およびS2は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルからなる群から独立に選択され、ここで、前記置換基は約2ボルト未満のレドックス電位範囲を提供し、K1、K2、K3、およびK4は、N、O、S、Se、Te、およびCHからなる群から独立に選択され、Lはリンカーであり、Xは、基質、基質に共有結合できる反応性部位、および基質にイオン結合できる反応性部位からなる群から選択される。好ましい実施形態では、XまたはL−Xは、アルコールまたはチオールであってもよい。一部の実施形態では、L−Xは、除去され、S1またはS2と同じ群から独立に選択された置換基によって置き換えられてもよい。
【0044】
本発明のメモリデバイスに使用されるレドックス活性分子のレドックス活性ユニットの、ホール蓄積およびホールホッピング特性に対する制御によって、メモリデバイスのアーキテクチャに対する微調整が可能になる。
【0045】
そのような制御は、総合的設計を介して実行される。ホール蓄積特性は、本発明のデバイスに使用される記憶媒体を組み立てるために使用される、レドックス活性ユニットまたはサブユニットの酸化電位に依存する。ホール蓄積特性およびレドックス電位は、基本分子(1つまたは複数)、関連する金属および周辺置換基の選択によって正確に調整可能であり(Yangら (1999) J.Porphyrins Phthalocyanines、3:117〜147)、この開示は参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0046】
例えば、ポルフィリンの場合、MgポルフィリンはZnポルフィリンよりも容易に酸化され、また、電子求引性または電子放出性のアリール基は、予測可能な方法で酸化特性を調整することが可能である。ホールホッピングは、ナノ構造内の等エネルギーポルフィリン間で発生し、ポルフィリンを結合している共有リンカーを経由して仲介され(Sethら (1994) J.Am.Chem.Soc.、116:10578〜10592、Sethら (1996) J.Am.Chem.Soc.、118:11194〜11207、Strachanら (1997) J.Am.Chem.Soc.、119:11191〜11201、Liら (1997) J.Mater.Chem.、7:1245〜1262、Strachanら (1998) Inorg.Chem.、37:1191〜1201、Yangら (1999) J.Am.Chem.Soc.、121:4008〜4018)、これらの開示は、それらの全体が本参照により本明細書に明確に組み入れられるものとする。
【0047】
予測されたレドックス電位を有する化合物の設計は、当業者に周知である。一般に、レドックス活性ユニットまたはサブユニットの酸化電位は、当業者に周知であり、調べることが可能である(例えば、Handbook of Electrochemistry of the Elementsを参照)。さらに、一般に、分子のレドックス電位に対する、さまざまな置換基の影響は、概して加法的である。したがって、理論的酸化電位は、任意の電位データ記憶分子について、容易に予測可能である。実際の酸化電位、特に、情報記憶分子(1つまたは複数)または情報記憶媒体の酸化電位は、標準的な方法に従って測定可能である。通常、酸化電位の予測は、基本分子の実験的に判定された酸化電位を、1つの置換基を有する基本分子の酸化電位と比較して、その特定の置換基による電位の変化を判定することにより行われる。それぞれの置換基についての、そのような置換基依存の電位変化の合計により、次に、予測酸化電位が与えられる。
【0048】
本発明の方法に使用するための、特定のレドックス活性分子の適性は、容易に判定することができる。本発明の方法により、対象となる分子(1つまたは複数)は、容易に重合され、表面(例えば、水素により不動態化された表面)に結合される。次に、(例えば、本明細書、または米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,212,093号明細書、および米国特許第6,208,553号明細書、PCT公開国際公開第01/03126号パンフレット、または(Rothら (2000) Vac.Sci.Technol.B 18:2359〜2364、Rothら (2003) J.Am.Chem.Soc. 125:505〜517)に記載されているように)正弦波ボルタンメトリーを実行して、1)分子(1つまたは複数)が表面に結合されているかどうか、2)カバレージ(結合)の程度、3)結合手順の間に分子(1つまたは複数)が分解されたかどうか、および4)複数の読み出し/書き込み動作に対する分子(1つまたは複数)の安定性、が評価されてもよい。
【0049】
さらに、「ポルフィリン」の定義には、ポルフィリンプロリガンドと少なくとも1つの金属イオンとを含む、ポルフィリン錯体も含まれる。ポルフィリン化合物のための適切な金属は、配位原子として使用されるヘテロ原子に依存するが、一般に、遷移金属イオンから選択される。本明細書で使用される「遷移金属」という用語は、通常、周期表の3〜12族内の38の元素を意味する。通常、遷移金属は、それらの価電子、すなわち他の元素と結合するためにそれらが使用する電子が、2つ以上の殻内に存在し、したがって、いくつかの共通した酸化状態をしばしば示すという事実によって特徴付けられる。あるいくつかの実施形態では、本発明の遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホジウム、および/またはそれらの酸化物、および/またはそれらの窒化物、および/またはそれらの合金、および/またはそれらの混合物のうちの、1つまたは複数を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0050】
その他の大環状分子
シクレン誘導体に基づくいくつかの大環状分子も存在する。図17は、独立に選択された炭素またはヘテロ原子の包含による骨格拡張を含むことが可能な、シクレン/シクラム誘導体に大まかに基づく、いくつかの大環状プロリガンドを示す。一部の実施形態では、少なくとも1つのR基は、好ましくは金属に電子的に共役された、レドックス活性サブユニットである。少なくとも1つのR基がレドックス活性サブユニットである場合を含む、一部の実施形態では、2つ以上の隣接するR2基がシクロまたはアリール基を形成する。
【0051】
さらに、一部の実施形態では、有機金属リガンドに依存する大環状錯体が使用される。レドックス部分として使用するための純粋な有機化合物と、複素環式または環外の置換基としての、ドナー原子を有するσ結合有機リガンドを有する、さまざまな遷移金属配位化合物とに加えて、π結合有機リガンドを有する、多種多様な遷移金属有機金属化合物が利用可能である(「Advanced Inorganic Chemistry」、第5版、CottonおよびWilkinson、John Wiley & Sons、1988、第26章、「Organometallics,A Concise Introduction」、Elschenbroichら、第2版、1992、VCH、および「Comprehensive Organometallic Chemistry II, A Review of the Literature 1982−1994」、Abelら編、Vol.7、第7、8、10、および11章、Pergamon Pressを参照。これらの文献は参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする)。そのような有機金属リガンドは、シクロペンタジエニドイオン[C5H5(−1)]などの環式芳香族化合物、ならびに、ビス(シクロペンタジエン)金属化合物(すなわち、メタロセン)のクラスを生ずる、インデニライド(indenylide)(−1)イオンなどの、さまざまな環置換および環融合の誘導体を含む。例えば、Robinsら、J.Am.Chem.Soc. 104:1882〜1893(1982)、およびGassmanら、J.Am.Chem.Soc. 108:4228〜4229(1986)を参照されたい(これらの文献は参照により組み入れられるものとする)。これらのうち、フェロセン[(C5H5)2Fe]およびその誘導体は、多種多様な化学的(Connellyら、Chem.Rev. 96:877〜910(1996)(参照により組み入れられるものとする))および電気化学的(Geigerら、Advances in Organometallic Chemistry 23:1〜93,およびGeigerら、Advances in Organometallic Chemistry 24:87(参照により組み入れられるものとする))電子移動すなわち「レドックス」反応に使用される典型例である。さまざまな第1、2、および3周期の遷移金属のメタロセン誘導体は、レドックス部分(およびレドックスサブユニット)として有用である。その他の適切な可能性がある有機金属リガンドとしては、ビス(アレーン)金属化合物を生ずる、ベンゼンなどの環式アレーン、およびそれらの環置換および環融合の誘導体(ビス(ベンゼン)クロムはその典型例)がある。アリル(−1)イオンや、ブタジエンなどの、その他の非環式π結合リガンドは、適切な可能性がある有機金属化合物を生じ、すべてのそのようなリガンドは、他のπ結合およびδ結合リガンドと組み合わせて、内部に金属−炭素結合が存在する、有機金属化合物の汎用クラスを構成する。橋かけ有機リガンド、および追加の非橋かけリガンドを有する、ならびに金属−金属結合を有する、および有さない、そのような化合物の、さまざまな二量体および低重合体の電気化学的研究は、すべて有用である。
【0052】
コリガンドのうちの1つまたは複数が有機金属リガンドである場合、そのリガンドは、一般に、有機金属リガンドの炭素原子のうちの1つを介して結合される。ただし、複素環式リガンドのためには、結合はその他の原子を介してもよい。好ましい有機金属リガンドには、置換誘導体およびメタロセネオファン(metalloceneophanes)を含む、メタロセンリガンドが含まれる(前述の、CottonおよびWilkinson、1174ページを参照)。例えば、メチルシクロペンタジエニルなどの、メタロセンリガンドの誘導体(ペンタメチルシクロペンタジエニルなどの、複数のメチル基を有するものが好ましい)が、メタロセンの安定性を増加するために使用されてもよい。一部の実施形態では、特にサブユニットまたは部分のレドックス電位を変更するために、メタロセンは、本明細書で概説したように、1つまたは複数の置換基を用いて誘導体化される。
【0053】
本明細書で説明したように、リガンドの任意の組み合わせが使用されてもよい。好ましい組み合わせには、次が含まれる。a)すべてのリガンドが窒素供与リガンド、b)すべてのリガンドが有機金属リガンド。
【0054】
サンドイッチ配位錯体
一部の実施形態では、ReAMはサンドイッチ配位錯体である。「サンドイッチ配位化合物」または「サンドイッチ配位錯体」という用語は、化学式L−Mn−Lの化合物を意味し、ここで、各Lは(以下で説明する)複素環式リガンド、各Mは金属、nは2以上、最も好ましくは2または3であり、そして各金属はリガンドのペアの間に配置され、(金属の酸化状態に依存して)各リガンド内の1つまたは複数のヘテロ原子(通常は、例えば2、3、4、5の、複数のヘテロ原子)に結合される。したがって、サンドイッチ配位化合物は、金属が炭素原子に結合される、フェロセンなどの有機金属化合物ではない。サンドイッチ配位化合物内のリガンドは、一般に、積み重ねられる向きで配置される(すなわち、一般に、相互に対面する向きで、そして軸方向で相互に揃えられており、ただしそれらは、軸のまわりで相互に回転させられても、させられなくてもよい)(例えば、NgおよびJiang (1997) Chemical Society Reviews 26:433〜442(参照により組み入れられるものとする)を参照)。サンドイッチ配位錯体には、「ダブルデッカーサンドイッチ配位化合物」および「トリプルデッカーサンドイッチ配位化合物」が含まれる(ただし、これらに限定されない)。サンドイッチ配位化合物の合成および使用は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書に詳細に記載されており、また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されており、これらの文献のすべて、特に、サンドイッチ錯体と「単一」「大環状」錯体との両方に用途を見出す個々の置換基は、本明細書に組み入れられるものとする。
【0055】
「ダブルデッカーサンドイッチ配位化合物」という用語は、上記のサンドイッチ配位化合物で、nが2、したがって化学式L1−M1−L2を有する場合を意味し、ここで、L1およびLZのぞれぞれは同じであっても異なっていてもよい。例えば、Jiangら (1999) J.Porphyrins Phthalocyanines 3:322〜328、および米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書を参照されたい。また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されている(この文献は、その全体が参照により組み入れられるものとする)。
【0056】
「トリプルデッカーサンドイッチ配位化合物」という用語は、上記のサンドイッチ配位化合物でnが3、したがって化学式L1−M1L2−M2−L3を有する場合を意味し、ここで、L1、L2、およびL3のぞれぞれは同じであっても異なっていてもよく、M1およびM2は同じであっても異なっていてもよい。例えば、Arnoldら (1999) Chemistry Letters 483〜484、および米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書を参照されたい。また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されている(これらの文献は、それらの全体が参照により組み入れられるものとする)。
【0057】
さらに、これらのサンドイッチ化合物のポリマーも有用であり、これは、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書に記載された「ダイアド(dyads)」および「トライアド(triads)」を含む。また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されている。同様に、ポリマーは、*** に記載されており、この文献は参照により組み入れられるものとする。
【0058】
非大環状プロリガンドおよび錯体
一般に、非大環状キレート化剤を含むReAMは、金属イオンに結合されて、非大環状キレート化合物を形成する。これは、金属の存在によって、複数のプロリガンドが相互に結合して複数の酸化状態を与えることが可能になるためである。
【0059】
一部の実施形態では、窒素供与プロリガンドが使用される。適切な窒素供与プロリガンドは、当技術分野において周知であり、NH2、NHR、NRR’、ピリジン、ピラジン、イソニコチンアミド、イミダゾール、ビピリジンおよびビピリジンの置換誘導体、テルピリジンおよび置換誘導体、フェナントロリン、特に、1,10−フェナントロリン(phenと略記される)、および4,7−ジメチルフェナントロリンやジピリドル(dipyridol)[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン(dppzと略記される)などの、フェナントロリンの置換誘導体、ジピリドフェナジン、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略記される)、9,10−フェナントレンキノンジイミン(phiと略記される)、1,4,5,8−テトラアザフェナントレン(tapと略記される)、1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン(cyclamと略記される)、ならびにイソシアニドを含む(ただし、これらに限定されない)。融合誘導体を含む、置換誘導体が使用されてもよい。金属イオンを協調的に飽和させず、別のプロリガンドの追加を要求する大環状リガンドは、この目的のためには、非大環状と見なされることに留意すべきである。当業者によって理解されるように、いくつかの「非大環状」リガンドを共有結合させて、協調的に飽和された化合物を形成することは可能であるが、それは環状骨格を欠いている。
【0060】
炭素、酸素、硫黄、および燐を使用する、適切なシグマ供与リガンドは、当技術分野において周知である。例えば、適切なシグマ炭素ドナーは、CottonおよびWilkinson、Advanced Inorganic Chemistry、第5版、John Wiley&Sons、1988(参照により組み入れられるものとする)に見出される(例えば、38ページを参照)。同様に、適切な酸素リガンドは、当技術分野において周知の、クラウンエーテル、水、およびその他を含む。ホスフィンおよび置換ホスフィンも適切である。CottonおよびWilkinsonの38ページを参照されたい。
【0061】
酸素、硫黄、燐、および窒素供与リガンドは、ヘテロ原子が配位原子として働くことを可能にするような方法で結合される。
【0062】
多核のプロリガンドおよび錯体
さらに、一部の実施形態では、多核のリガンドである多座リガンドを利用する。例えば、それらの多座リガンドは、2つ以上の金属イオンを結合することが可能である。それらの多座リガンドは、大環状または非大環状であってもよい。
【0063】
多くの適切なプロリガンドと錯体、および適切な置換基は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、および米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書に概要が記載されており、これらの特許文献のすべて、特に、それらの中に示されている構造およびその説明については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0064】
ポリマー
本発明のメモリ素子は、上記で概説したように、ReAMのポリマーを含んでもよく、例えば、ポルフィリンポリマー(ポルフィリン錯体のポリマーを含む)、大環状錯体ポリマー、2つのレドックス活性サブユニットを含むReAMなどが利用されてもよい。ポリマーは、ホモポリマーまたはヘテロポリマーであってもよく、モノマーReAMの、任意の数の異なる混合物(混合剤)を含んでいてもよい。ここで、「モノマー」は、2つ以上のサブユニット(例えば、サンドイッチ配位化合物、1つまたは複数のフェロセンで置換されたポルフィリン誘導体など)を有するReAMを含んでいてもよい。ReAMポリマーは、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第* 号明細書、米国特許出願第 号明細書に記載されており、この文献は、そのすべてが参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0065】
電極上のポリマーの構成は、さまざまであってもよい。一部の実施形態では、ポリマーはZ次元(図14Aに示すように、基質表面に垂直な方向)において線状であり、任意選択で架橋されていてもよい(図14B)。Z次元における枝分かれポリマーも企図されており、同様に、任意選択で架橋されていてもよい。X−Y次元での線状ポリマー(図14C)、あるいは、枝分かれ、および/または架橋ポリマーも含まれる。さらに、ポリマーの混合物が、これらの任意の構成内に使用されてもよい。
【0066】
一部の実施形態では、ポリマーまたはモノマーのいずれであっても、ReAMの向きおよび間隔を制御する、(リンカーの選択を含む)構成が好ましい。これは、一般に、ReAMのより高い密度が実現され、また、電子移動および電子移動速度が向上するためである。リンカーの長さは、電荷の速度と保持に寄与する場合がある。
【0067】
一般に、重合実施形態は置換基の使用に依存し、その結果として、電極表面への結合、および追加のReAMへの重合の両方がもたらされる。Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されているように、これらのReAMの合成には、表面への「現場」重合と、重合に続く、1つまたは複数の結合部分を使用した表面への付加との、2つの一般的な方法がある。これらについては、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に詳細に記載されており、この文献のすべて、および特に、「1ステップ」および「2ステップ」の重合/結合ステップに関する点は、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0068】
置換基
本明細書に記載されている化合物の多くは、本明細書で一般に「R」として示される、置換基を利用する。適切なR基には、水素、アルキル、アルコール、アリール、アミノ、アミド、ニトロ、エーテル、エステル、アルデヒド、スルホニル、シリコン部分、ハロゲン、シアノ、アシル、硫黄含有部分、燐含有部分、アミド、イミド、カルバモイル、リンカー、結合部分、およびその他のReAM(例えば、サブユニット)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。位置によっては、2つの置換基RおよびR’が許容されてもよいことに留意すべきである。その場合、RおよびR’基は同じであっても異なっていてもよく、一方の置換基は水素であることが一般に好ましい。
【0069】
一部の実施形態では、R基は、米国の図面および本文で定義され図示されているものである。いくつかの適切なプロリガンドと錯体、および適切な置換基は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、および米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書に概要が記載されており、これらの特許文献のすべて、特に、それらの中に示されている構造およびその説明については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとし、これにより、置換基が内部に示されている特定の大環状分子、およびさらなる置換誘導体の両方について、置換基実施形態として本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0070】
「アルキル基」または文法的同義語は、本明細書では、直鎖および分枝鎖アルキル基を意味し、好ましくは直鎖アルキル基を意味する。分枝の場合は、1つまたは複数の位置において分枝されていてもよく、そして指定しない限りは、任意の位置において分枝されていてもよい。アルキル基の範囲は、約1〜約30の炭素原子(C1 C30)であってもよく、好ましい実施形態では約1〜約20の炭素原子(C1 C20)が使用され、約C1から約C12ないしは約C15までが好ましく、C1〜C5が特に好ましい。アルキル基の定義にさらに含まれるのは、C5およびC6環などのシクロアルキル基、ならびに、窒素、酸素、硫黄、または燐を有する複素環である。アルキルはさらにヘテロアルキル(硫黄、酸素、窒素、およびシリコンのヘテロ原子が好ましい)も含む。
【0071】
「アリール基」または文法的同義語は、本明細書では、モノおよびマルチ環系を含む芳香族アリール環、ならびに、ピリジン、フラン、チオフェン、ピロール、インドール、およびプリンなどの、複素環芳香族の環および環系を意味する。
【0072】
「アルキル」および「アリール」の定義には、置換アルキルおよびアリール基が含まれる。すなわち、アルキルおよびアリール基は、本明細書で定義される1つまたは複数の「R」置換基を使用して置き換えられてもよい。例えば、フェニル基は、1つまたは複数のR基を使用して置き換えられた置換フェニル基であってもよい。好ましいアルキル基としては、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、アルキルアミノ、およびアルコキシがある。
【0073】
「アミノ基」または文法的同義語は、本明細書では、−NH2、−NHR、および−NR2基を意味し、Rは本明細書で定義されるものである。
【0074】
「ニトロ基」は、本明細書では、−NO2基を意味する。
【0075】
「硫黄含有部分」は、本明細書では、硫黄原子を含む化合物を意味し、これには、チア−、チオ−、およびスルホ−化合物、チオール(−SHおよび−SR)、ならびに、スルフィド(−RSR−)(スルホキシルおよびスルホニルを含む)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。「燐含有部分」は、本明細書では、燐を含む化合物を意味し、これには、ホスフィンおよびホスフェートが含まれる(ただし、これらに限定されない)。「シリコン含有部分」は、本明細書では、シリコンを含む化合物を意味する。
【0076】
「エーテル」は、本明細書では、−O−R基を意味する。好ましいエーテルとしては、アルコキシ基があり、−O−(CH2)2CH3および−O−(CH2)4CH3が好ましい。
【0077】
「エステル」は、本明細書では、−COOR基を意味する。
【0078】
「ハロゲン」は、本明細書では、臭素、ヨウ素、塩素、またはフッ素を意味する。好ましい置換アルキルは、CF3などの、部分的に、または完全にハロゲン化されたアルキルである。
【0079】
「アルデヒド」は、本明細書では、−RCOH基を意味する。
【0080】
「アルコール」は、本明細書では、−OH基、およびアルキルアルコール−ROHを意味する。
【0081】
「アミド」は、本明細書では、−RCONH−またはRCONR−基を意味する。
【0082】
「エチレングリコール」は、本明細書では、−(O−CH2−CH2)n−基を意味するが、エチレン基の各炭素原子は、上記で説明したRを使用して、1重または2重に置換されていてもよい(すなわち、−(O−CR2−CR2)n−)。酸素の代わりに他のヘテロ原子を使用したエチレングリコール誘導体(すなわち、−(N−CH2−CH2)n−または−(S−CH2−CH2)n−、あるいは置換基を有するもの)も好ましい。
【0083】
結合部分
本明細書に示すように、本発明のReAMを電極に結合するために、結合部分(本明細書で「Z」として示される)が使用される。「結合基を有する分子」には、結合基が分子の固有成分である分子、結合基を追加するために誘導体化された分子、結合基を含むリンカーを有するように誘導体化された分子が含まれる。
【0084】
結合部分の性質は、電極基質の組成に依存する。一般に、結合部分は、リンカー(存在する場合)とともに、電極への記憶分子の電子的結合を可能にする。「電子的結合」は、この文脈では、記憶媒体/分子から電極に、または電極から記憶媒体/分子に電子が移動するような、そしてそれにより記憶媒体/分子の酸化状態を変えるような、記憶分子と電極との間の会合を意味する。電子的結合には、記憶媒体/分子と電極との間の直接的な共有結合、(例えば、リンカーを介した)間接的な共有結合、記憶媒体/分子と電極との間の直接的または間接的なイオン結合、またはその他の結合(例えば、疎水結合)が含まれてもよい。さらに、実際の結合は必要とされなくてもよく、記憶媒体/分子が電極表面と単に接触されてもよい。また、記憶媒体/分子と電極との間の電子トンネル効果が可能になるほど、電極が記憶媒体/分子に十分近い場合は、電極と記憶媒体/分子との間の接触は必ずしも必要ではない。
【0085】
一般に、適切な結合部分には、カルボン酸、アルコール、チオール(S−アセチルチオールを含む)、セレノール、テルロール、ホスホン酸、ホスホノチオアート、アミン、ニトリル、アリールおよびアルキル基(ヨードアリールやブロモメチルなどの、置換アリールおよびアルキル基を含む)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書(この目的のために本明細書に参照により組み入れられるものとする)には、適切な結合部分およびリンカーの(両方について独立な、および「L−Z」基としての)広範囲にわたるリストが記載されている(パラグラフ107〜113を参照)。結合部分は、結果として、単一の基(例えば、「単足性(monopodal)」結合)または複数の基(例えば、「多足性(polypodal)」結合)を介して結合された、ReAM(またはReAMに結合されたリンカー)をもたらす場合があることに留意すべきである。一部の実施形態では、3足結合などの多足性結合により、結果としてReAM(ReAMポリマーを含む)の向きがより固定され、それによって、より高い密度と、よりクリーンな信号とがもたらされる。チオール、カルボン酸、アルコール、またはホスホン酸を利用する多足性(3足を含む)結合部分は、特に結合力が強い。参照された出願で概説されているように、一部の実施形態では、トリフェニルメタンまたはテトラフェニルメタンユニットに基づいた結合部分を利用し、ここで、フェニルユニットのうちの2つまたは3つは、結合のための適切な官能基(例えば、Z−アセチルチオールなどのチオール、またはジヒドロキシルホスホリル基)を使用して置換される。
【0086】
リンカー
リンカーは、本発明のReAMに結合部分を結合するため、ReAMのレドックス活性サブユニットをともに結合するため、およびReAMの重合においてなど、本発明のさまざまな構成内で使用される。リンカーは、低い電圧および小さなセルサイズにおいて、高速な書き込みおよび/または消去を実現するために使用され、本発明で使用するためのリンカーのスケーリングは最適化することが可能である。最適なリンカーのサイズは、理論的に計算可能である(米国特許出願第60/473,782号明細書(本明細書に明示的に組み入れられるものとする)を参照)。あるいは、リンカー(および実際には、さらに、ReAMの適合性)の評価は、本明細書および引用文献に記載されているように、表面にReAMを単に結合させることによって経験的に行われてもよく、また、ボルタンメトリーを実行して、結合されたポリマーの電気化学的特性を評価することによって行われてもよい。
【0087】
電極
本発明のReAM記憶分子は、電極に電気的に結合される。「電極」という用語は、記憶分子へ、および/または記憶分子から、電荷(例えば、電子)を輸送することが可能な任意の媒体を意味する。好ましい電極は、III族元素(ドーピングされた、および酸化されたIII族元素を含む)、IV族元素(ドーピングされた、および酸化されたIV族元素を含む)、V族元素(ドーピングされた、および酸化されたV族元素を含む)、ならびに遷移金属(遷移金属酸化物および遷移金属窒化物を含む)を、これらに限定されずに含む、金属および導電性有機分子である。電極は、実質的に、2次元または3次元形状(例えば、個別の線、パッド、平面、球、円柱など)に製造されてもよい。
【0088】
「固定電極」という用語は、電極が本質的に安定しており、記憶媒体を基準にして不動であるという事実を反映することを意図している。すなわち、電極と記憶媒体とは、相互に本質的に固定された幾何学的関係に配置される。もちろん、温度変化に伴う媒体の拡張および収縮によって、あるいは、電極および/または記憶媒体を構成している分子の配座の変化によって、関係はある程度変化することが理解される。それにもかかわらず、全体的な空間配置は、本質的に不変のままである。好ましい実施形態では、この用語は、電極が、移動可能な「プローブ」(例えば、書き込みまたは記録「ヘッド」、原子間力顕微鏡(AFM)チップ、走査トンネル顕微鏡(STM)チップなど)であるシステムを除外することを意図している。
【0089】
「作用電極」という用語は、記憶媒体および/または記憶分子の状態を設定するため、または読み出すために使用される、1つまたは複数の電極を指すために使用される。
【0090】
「基準電極」という用語は、作用電極から記録される測定値のための基準(例えば、特定の基準電圧)を提供する、1つまたは複数の電極を指すために使用される。好ましい実施形態では、本発明のメモリデバイス内の基準電極は同じ電位であるが、一部の実施形態では、そうである必要はない。
【0091】
電解質
本発明の一部の実施形態では、以下で詳述するように、電解質(誘電体)構成要素が使用される。一般に、電気化学的反応のための電解質を保持するために、電解質ポリマーが使用される。セラミック、金属、ゲル、流体などを含む、多種多様な適切な電解質が周知である。ナフィオンは特に有用な例であり、約1nm〜1000nmの、好ましくは約100nm〜約500nmの、より好ましくは約10nm〜約100nmの、そして最も好ましくは約100ナノメートルの厚さの、薄層内に適用されてもよい。
【0092】
記憶デバイスの製造およびキャラクタリゼーション
本発明のメモリデバイスは、当業者に周知の標準的な方法を使用して製造されてもよい。好ましい実施形態では、標準的な周知の方法により、電極層(1つまたは複数)が適切な基質(例えば、シリカ、ガラス、プラスチック、セラミックなど)に塗布される(例えば、Rai−Choudhury著(1997)「The Handbook of Microlithography, Micromachining, and Microfabrication」、SPIE Optical Engineering Press、BardおよびFaulkner著(1997)「Fundamentals of Microfabrication」を参照)。さまざまな技術が、以下に記載されており、また、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、ならびに、米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書、ならびに、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書にも記載されており、これらの文献のすべて、特に、その中に概説されている製造技術については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0093】
アーキテクチャ
本明細書で概説するように、ReAMは、通常は電気化学セルの構成要素として、記憶媒体内に結合される。「記憶媒体」という用語は、2つ以上の記憶分子を含む組成物を意味する。記憶媒体は、1つの化学種のみの記憶分子を含んでもよく、または、2つ以上の異なる化学種の記憶分子を含んでもよい。好ましい実施形態では、「記憶媒体」という用語は、記憶分子の集まりを意味する。好ましい記憶媒体は、複数(少なくとも2つ)の異なる識別可能な(好ましくは非中性の)酸化状態を有する。複数の異なる識別可能な酸化状態は、異なる化学種の記憶分子の組み合わせによって生成されてもよく、それぞれの化学種は複数の異なる酸化状態に寄与してもよく、それぞれの化学種は1つの非中性酸化状態を有してもよい。あるいは、またはさらに、記憶媒体は、複数の非中性酸化状態を有する、1つまたは複数の化学種の記憶分子を含んでもよい。記憶媒体は、主として1つの化学種の記憶分子を含んでもよく、または、いくつかの異なる記憶分子を含んでもよい。記憶媒体は、さらに、記憶分子以外の分子も含んでもよい(例えば、化学的安定性を提供するため、適切な機械的特性を提供するため、電荷の漏れを防止するため、など)。
【0094】
「電気化学セル」という用語は、通常、基準電極と、作用電極と、レドックス活性分子(例えば、記憶媒体)と、必要な場合は、電極間の、および/または、電極と媒体との間の導電性を提供するためのいくつかの手段(例えば、誘電体または導電性電解質)とを意味する。一部の実施形態では、誘電体は記憶媒体の構成要素である。
【0095】
「メモリ素子」、「メモリセル」、または「記憶セル」という用語は、情報の記憶に使用可能な電気化学セルを意味する。好ましい「記憶セル」は、少なくとも1つの電極によって、そして好ましくは2つの電極(例えば、作用電極と基準電極)によってアドレス指定される、記憶媒体の個別の領域である。記憶セルは、個々にアドレス指定されてもよく(例えば、固有の電極が各メモリ素子に関連付けられる)、または、異なるメモリ素子の酸化状態が識別可能な場合は特に、複数のメモリ素子が単一の電極によってアドレス指定されてもよい。メモリ素子は、任意選択で、誘電体(例えば、対イオンが含浸された誘電体)を含んでもよい。
【0096】
「記憶位置」という用語は、記憶媒体が配置される個別の領域(domain)または区域(area)を意味する。1つまたは複数の電極を使用してアドレス指定される場合、記憶位置は、記憶セルを形成してもよい。ただし、2つの記憶位置が同じ記憶媒体を含み、それにより、それらが本質的に同じ酸化状態を有する場合、かつ、両方の記憶位置が共通にアドレス指定される場合、それらは1つの機能的記憶セルを形成してもよい。
【0097】
特定の素子の「アドレス指定」は、そのメモリ素子の酸化状態(1つまたは複数)を電極を使用して具体的に判定することが可能になるように、そのメモリ素子を電極と関連付け(例えば、電気的に結合)することを意味する。
【0098】
「読み出し」または「問い合わせ(interrogate)」という用語は、1つまたは複数の分子(例えば、記憶媒体を構成する分子)の酸化状態(1つまたは複数)の判定を意味する。
【0099】
「リフレッシュ」という用語は、記憶分子または記憶媒体に関して使用される場合、記憶分子または記憶媒体の酸化状態を所定の状態(例えば、読み出し直前の、記憶分子または記憶媒体の酸化状態)に再設定するために、その記憶分子または記憶媒体に電圧を印加することを意味する。
【0100】
「E1/2」という用語は、E=E°+(RT/nF)ln(Dox/Dred)によって定義される、レドックスプロセスの形式的電位(E°)の実際的な定義を意味し、ここで、Rはガス定数、TはK(ケルビン)単位での温度、nはプロセスに関与する電子の数、Fはファラデー定数(96,485クーロン/モル)、Doxは酸化される化学種の拡散定数、Dredは還元される化学種の拡散定数である。
【0101】
「電圧源」は、ターゲット(例えば、電極)に電圧を印加することが可能な任意のソース(例えば、分子、デバイス、回路など)である。
【0102】
「集積回路の出力」という語句は、1つまたは複数の集積回路によって、および/または、集積回路の1つまたは複数の構成要素によって生成される電圧または信号を意味する。
【0103】
「ボルタンメトリック装置」は、電圧の印加または電圧の変化の結果として電気化学セル内に生成される電流を、測定することが可能な装置である。
【0104】
「アンペロメトリック装置」は、特定の電位(「電圧」)をある期間印加した結果として電気化学セル内に生成される電流を、測定することが可能な装置である。
【0105】
「ポテンシオメトリック装置」は、電気化学セル内のレドックス分子の平衡濃度の差によってもたらされる、インタフェース間の電位を測定することが可能な装置である。
【0106】
「クーロメトリック装置」は、電気化学セルへの電位場(「電圧」)の印加中に生成される正味荷電を測定することが可能な装置である。
【0107】
「インピーダンススペクトロメータ」は、電気化学セルの全体的なインピーダンスを判定することが可能な装置である。
【0108】
「正弦波電圧電流計(sinusoidal voltammeter)」は、電気化学セルの周波数領域特性を判定することが可能なボルタンメトリック装置である。
【0109】
分子メモリの使用により利益を得る、多種多様なデバイスおよびシステムアーキテクチャが存在する。
【0110】
**TT
図1は、分子メモリアレイ101を組み込んだメモリデバイス100を示す。分子メモリアレイ101は、2N行および2M列のアレイを含む。2N行のそれぞれはワード線107に関連付けられるのに対して、2M列のそれぞれはビット線109に関連付けられる。一般的な適用例では、ワード線107およびビット線109は相互に交わる。分子メモリデバイス300(図3に示す)が、それぞれの行と列との交点に配置される。分子メモリアレイ101は、特定の適用例の必要を満たす任意の方法で配列された、任意の数の分子メモリデバイス300を含んでもよい。
【0111】
メモリデバイス100は、行アドレスデコーダ103内にNビットの行アドレスを、そして列アドレスデコーダ105内にMビットの列アドレスを受信することによって動作する。行アドレスデコーダ103は、1本のワード線107上に信号を生成する。ワード線107は、ワード線107上への高電流信号を駆動する、ワード線ドライバ回路115を含んでもよい。ワード線107は、チップ表面のほとんどにわたって延びる、長くて細い導体となる傾向があるため、ワード線信号を駆動するには、かなりの電流および大電力のスイッチが必要とされる。その結果として、ラインドライバ回路115は、多くの場合、電源117を、他のロジックのための動作電力を提供する電源回路(図示せず)に加えて備える。ワード線ドライバ115は、したがって、大きな構成要素を含む傾向があり、そして、大電流の高速スイッチングは、ノイズを生成し、電源とパワーレギュレータの限界を圧迫し、分離構造を圧迫する傾向がある。
【0112】
従来のメモリアレイには、行(ワード線)よりも多くの列(ビット線)があり、その理由は、リフレッシュ動作の間、各ワード線が、そのワード線に結合されたすべての記憶素子をリフレッシュするためにアクティブにされるためである。したがって、行の数がより少なければ、すべての行をリフレッシュするために要する時間はより短くなる。本発明の1つの特徴は、分子メモリ素子300は、数十、数百、数千の程度の秒数、または実質的に無制限の秒数という、従来のキャパシタよりも大幅に長いデータ保持を示すように構成可能であるということである。したがって、リフレッシュサイクルを、甚だしく少ない頻度で実行すること、または、完全に省略することも可能である。したがって、メモリアレイ101の物理的レイアウトに実際に影響する、リフレッシュ要件を緩和することができ、さまざまな幾何学的配置のアレイを実装することができる。例えば、メモリアレイ101は、より多くのワード線を使用して容易に製造することができ、それにより各ワード線はより短くなる。その結果として、各ワード線を高速で駆動するために必要な電流はより少なくなるため、ワード線ドライバ回路115は、より小さくするか、またはなくすことができる。あるいは、またはさらに、より短いワード線はより高速で駆動されることが可能なため、読み出し/書き込みアクセス時間が向上する。さらに別の代替として、各メモリ位置内に複数の状態情報を記憶する機構を提供するために、メモリ位置の各行が複数のワード線を備えてもよい。
【0113】
センス増幅器111が、各ビット線109に結合され、ビット線109上の信号(そのビット線に結合されたメモリ素子300の状態を示す)を検出し、その状態を適切なロジックレベル信号に増幅するために動作する。一実施形態では、センス増幅器111は、おおむね従来の設計を使用して実装されてもよく、その理由は、そのような従来の設計は、分子メモリ素子300からの信号を検出して増幅するために動作するためである。あるいは、従来のキャパシタとは異なり、一部の分子記憶素子は、それらの状態を示す非常に明確な信号を提供する。それらの明確な信号により、従来のセンス増幅器ロジックの必要は減少する可能性があり、その理由は、分子記憶デバイスからの状態信号は、従来のキャパシタ内に記憶された信号で可能なよりも、より容易かつ確実に、読み出し/書き込みロジック113のバッファ内にラッチされることが可能なためである。すなわち、本発明は、センス増幅器の必要をなくすほど十分に大きな信号を生成するデバイスを提供することが可能である。
【0114】
読み出し/書き込みロジック113は、メモリデバイス100を読み出しまたは書き込み状態にするための回路を含む。読み出し状態では、分子アレイ101からのデータがビット線109上に置かれ(センス増幅器111の動作あり、またはなし)、読み出し/書き込みロジック113内のバッファ/ラッチによって取り込まれる。列アドレスデコーダ105は、特定の読み出し動作において、いずれのビット線109がアクティブであるかを選択する。書き込み動作では、読み出し/書き込みロジック113は、選択されたビット線109上にデータ信号を駆動し、それにより、ワード線がアクティブにされた場合に、そのデータが、アドレス指定されたメモリ素子(1つまたは複数)300内にすでに記憶されている任意のデータを上書きするようになる。
【0115】
リフレッシュ動作は、読み出し動作におおむね類似しているが、ただし、ワード線107は、外部から適用されたアドレスによってではなく、リフレッシュ回路(図示せず)によって駆動される。リフレッシュ動作では、センス増幅器111(使用される場合)が、メモリ素子300の現在の状態を示す信号レベルにビット線109を駆動し、その値が自動的にメモリ素子300に書き戻される。読み出し動作とは異なり、ビット線109の状態は、リフレッシュの間、読み出し/書き込みロジック113には結合されない。この動作が必要とされるのは、使用される分子の電荷保持時間が、使用されるデバイスの動作寿命(例えば、フラッシュメモリの場合はおよそ10年)よりも少ない場合のみである。
【0116】
図2は、中央処理装置201および分子メモリ203を含む例示的組み込みシステム200を示す。メモリバス205は、アドレス、データ、および制御信号を交換するために、CPU201と分子メモリデバイス203とを結合する。任意選択で、組み込みシステム200は、さらに、メモリバス205に結合された従来のメモリ207も含んでもよい。従来のメモリ207は、ランダムアクセスメモリ(例えば、DRAM、SRAM、SDRAMなど)、または読み出し専用メモリ(例えば、ROM、EPROM、EEPROMなど)を含んでもよい。これらのその他のタイプのメモリは、分子メモリデバイス203のデータのキャッシング、オペレーティングシステムまたはBIOSファイルの記憶などのために有用な可能性がある。組み込みシステム200は、CPU201が外部の装置およびシステムと通信することを可能にする、1つまたは複数の入力/出力(I/O)インタフェース209を含んでもよい。I/Oインタフェース209は、シリアルポート、パラレルポート、高周波ポート、光ポート、赤外線ポートなどによって実装されてもよい。さらに、インタフェース209は、パケットをベースとするプロトコルを含む、任意の利用可能なプロトコルを使用して通信を行うように構成されてもよい。
【0117】
図3は、本発明の実施形態によるメモリ素子300を示す。メモリ素子300は、広く使用されている1トランジスタ1キャパシタ(1T1C)メモリ素子設計に類似しているが、ただし、分子記憶デバイス301が使用される点が異なる。特定の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板上に、続いて形成される積層構造として実装される。他の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板内の、マイクロメートルまたはナノメートルのサイズの穴として実装される。分子記憶デバイスは、半導体基板および半導体基板内に以前に形成された能動素子と互換性のある加工技術を使用して製造される。分子記憶デバイスは、例えば、電解質(例えば、セラミックまたは固体電解質)によって、あるいは、金属または半導体構造との直接接触によって分離された2つ以上の電極表面を有する電気化学セルを含む。記憶分子(例えば、情報を記憶するために使用可能な1つまたは複数の酸化状態を有する分子)は、電気化学セル内の電極表面に結合される。記憶分子の例としては、モノマーポルフィリン、フェロセン誘導体化ポルフィリン、三量体ポルフィリン、ポルフィリンポリマー、またはトリプルデッカーサンドイッチポルフィリンが、他の化合物の中でも特に挙げられる。適切な記憶分子の例は、以下でさらに詳しく説明する。
【0118】
ワード線がアクティブにされると、アクセストランジスタ303が導電状態にされ、それにより、分子記憶デバイス301が、それに関連付けられたビット線に結合される。多くの場合、分子記憶301によって生成される信号は、従来の論理デバイスを駆動するには不十分である。センス増幅器305は、分子記憶301によって生成された信号を検出し、その信号を適切なロジックレベル(すなわち、他のシステムロジックと互換性のある信号)に増幅する。例えば、ポルフィリン記憶分子を使用して、+0.55V、+0.48V、+0.39V、+0.17V、−0.05V、および−0.18Vにおける安定した酸化状態を有する記憶デバイス301を構築することが可能である。特定の実施形態では、より多くの、またはより少ない、安定した酸化状態が提供されてもよい。ビット線109に適切な電圧を印加することにより、そして、適切なワード線107をアクティブにしている間に、記憶分子は、これらの酸化状態のうちの選択された1つに置かれてもよい。記憶デバイス301は、望ましい酸化状態に置かれたら、特定の適用例において、数十、数百、数千、または無制限の秒数にわたってその酸化状態に留まる。
【0119】
読み出しの間は、ワード線107がアクティブにされ、記憶デバイス301は、その酸化状態を示す電圧にビット線を駆動する。これは、キャパシタが同じ動作を実行する方法と非常に類似した方法で行われる。ゲートトランジスタが開かれている場合、分子記憶デバイス(MSD)はビット線に接続される。例えば、分子が酸化状態に書き込まれており、(MSDの最上部金属、または対向電極を基準にした)分子の酸化電位よりも負の値にビット線がプリチャージされていて、その分子が酸化状態にある場合は、分子からビット線に電流が流れ(そして、ビット線から分子に電子が流れ)、トランジスタが閉じられると分子は還元される。この結果として、ビット線上に電荷が蓄積され、チャージの大きさは、MSD上の分子の数および各分子の酸化状態によって決定される(Q=nFN、ファラデーの法則)。そのチャージの出現は、ビット線上の電圧を変化させ(V=Q/C)、その電圧変化は、当技術分野において好都合に使用されている、電圧センス増幅器によって識別されてもよい。
【0120】
読み出し動作中のビット線電圧は、寄生効果および読み出し回路の挿入によって、酸化状態電圧から変化する場合があるが、回路は、安定した酸化状態が明確に読み出されることを可能にするように準備される。ビット線電圧は、外部ロジックによって直接読み出されてもよく、または、センス増幅器305によって、従来のより一般的なロジックレベルに増幅されてもよい。特定の実装においては、センス増幅器305は、複数の基準点を含んでもよく(例えば、マルチステートセンス増幅器)、それにより、安定した多値信号をビット線上に生成してもよい。あるいは、センス増幅器305は、特定のメモリ素子300から読み出された多値電圧信号に応答して、複数のロジックレベルバイナリ出力を生成する、アナログ−デジタル機能を含んでもよい。
【0121】
図4は、本発明によるメモリの動作中の、読み出し動作の例示的タイミング図を示す。図4のタイミング図は、従来のDRAMの動作に類似した、実装の動作を示すための例として提供されている。他の信号フォーマットおよび制御プロトコルが周知であり、本発明は、それらの他のフォーマットに容易に適合される。図4に示すように、行および列アドレスは2つのフェーズ内で通信される。行アドレスがアドレスバス上に置かれ、行アドレスストローブ(RAS)が、例えば読み出し/書き込みロジック113によって生成される。時間t1とt2との間でRAS信号が遷移すると、(図1に示す)行アドレスデコーダ103内に行アドレスがラッチされ、ワード線107が選択される。RASは、t7〜t8における遷移まで、アクティブ状態に保たれる。ワード線のアクティブ化に応答して、センス増幅器111が動作して、ビット線を適切なロジックレベル信号に駆動する。
【0122】
時間t3において、書き込み許可(WE)ストローブが非アクティブ状態に遷移し、t10における書き込みサイクルの終わりまでその状態に留まる。WEの遷移により、分子アレイへの書き込みが防止される。次に、列アドレスがアドレスバス上に提示される。列アドレスが安定すると、時間t4〜t5において列アドレスストローブ(CAS)が遷移し、(図1に示す)列アドレスデコーダ105による列アドレスの取り込みおよびデコードが開始される。時間t5の後は、ビット線109、またはビット線109の組が選択され、時間t8〜t9におけるCASの遷移によってCAS信号が除去されるまで、選択されたままになる。出力可(OE)信号が遷移して、選択されたビット線109がデータI/Oポートに結合される。時間t6において、有効なデータがデータ線上に現れる。有効なデータは、RASおよびCASおよびWE信号の非アクティブ状態への遷移の間中、存続する。
【0123】
特定の例では、分子記憶デバイス301は、電解質を通して結合された基準電極と作用電極とを有する、電気化学セルとして構成される。図5は、分子記憶デバイスを構築するための積層構成を示すのに対して、図6は、トレンチまたは「モルホール(molehole)」実装を示す。図5の積層実装では、構造全体が、基礎をなす半導体デバイスの電極の上に、電気的に結合されて構築されてもよい。例えば、アクセストランジスタ303のソース/ドレイン領域との電気的接点を作成するために、導電性バイアまたはプラグ501が、半導体デバイスのパッシベーションおよび平坦化層を通して下に到達してもよい。導電性プラグ501は、金属ボンドパッドに、または半導体デバイスのアクティブ領域に結合されてもよい。特定の例では、プラグ501は、タングステンを含むが、電気的接続性を実装するために利用可能な任意の金属、合金、ケイ化物、またはその他の材料を使用して製造されてもよい。
【0124】
作用電極502は、例えば、シリコン、銅、アルミニウム、金、銀、またはその他の利用可能な導体を含む。作用電極は金属であってもよいが、金属酸化物、半導体、またはドーピングされた半導体であってもよい。その他の適切な材料としては、Ti、Ta、TiO2、TaO2、SiO2、W、WOXなどがある。作用電極502は、好ましくは、集積回路のためのボンドパッドおよび相互接続などの、その他の構造と同時に形成される。プラグ501と電極503とを形成するためのプロセスおよび材料は、半導体加工業界において広く入手可能である。多くの集積回路プロセスにおいて、金属パッドには、作用電極502を保護および/または不動態化するために役立つ、絶縁層505がコーティングされる。絶縁層505は、蒸着酸化物、窒化ケイ素などとして実装されてもよい。層505は、好ましくは集積回路のボンディングパッドの部分を露出するために使用されるのと同じ操作で、作用電極502の部分を露出するためにパターン形成される。作用電極502の露出部分は、分子記憶デバイス301のアクティブ領域を定義する。本発明は、業界標準のプロセスフローを使用した、酸化物505の形成およびパターン形成を通して製造されてもよいことが企図されている。
【0125】
記憶分子の薄層507は、作用電極502のアクティブ領域上に形成される。この層の厚さは、特定の例では、0.1〜100ナノメートルの範囲であってもよい。層507は、自己組織化単分子膜(SAM)として実装するのが望ましい。分子のアクティブ領域は、導電性材料の上に層505をパターン形成することにより、リソグラフィで定義される。誘導体化されたポルフィリンの広範なライブラリ(約250の化合物)が、層507での使用に適切な、金属電極への結合のための記憶分子として利用可能である。これらの化合物は、次の5つの異なるアーキテクチャのうちのいずれを含んでいてもよい。(1)さまざまなタイプのテザー(tether)を有するモノマーポルフィリン、(2)フェロセン誘導体化ポルフィリン、(3)翼の形をした三量体ポルフィリン、(4)ポルフィリンポリマー、(5)トリプルデッカーサンドイッチポルフィリンおよびそのポリマー。これらのポルフィリンアーキテクチャのすべては、優れた品質の自己組織化単分子膜(SAM)を形成することが見出された。分子が結合されたら、金属、金属酸化物、または導電性電解質の薄い(例えば、50〜200ナノメートル)層が塗布されて、電解質509が形成される。電解質509は、酸化−還元セルのための電解質である。金属層511が、気化、スパッタリング、またはその他の蒸着技術によって、電解質層509の上に蒸着される。金属層511は、酸化−還元セルの基準電極または対向電極を形成し、銅、銀、白金などのような、任意の正常に動作する電気化学的対向電極材料を含む。特定の適用例における金属の選択は、経済的側面と、すでに開発されている半導体プロセスとによって決定される。
【0126】
動作においては、記憶分子507が、作用電極502に取り付けられ、電気的に結合される。電解質509は、デバイス内で使用される記憶分子およびその他の導体および絶縁体と化学的に共存できる、液体、ジェル、または固体であってもよい。電解質509は、作用電極と基準電極との間の電荷の輸送を可能にする。任意の所与の酸化状態と、記憶分子の選択とに対して、電気化学セルは、半波電位(E1/2)または平衡電位と呼ばれる特有の電気化学的電位を示す。所与の分子記憶デバイス301は、選択される特定の記憶分子に依存して、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の別個のE1/2を有する。これにより、後の製造状態において、デバイスのための特定の記憶分子を選択することによってカスタマイズすることが可能な、読み出し/書き込みロジック、アドレスデコーダ、相互接続回路などを含む単一のインフラストラクチャを製造する可能性が提供される。選択された記憶分子の特定の特性を補償するために、電子回路のいくらかの調整が必要とされるが、製造上の利点は明白である。
【0127】
図5に示す積層アーキテクチャの1つの利点は、キャパシタの底面が電極表面を形成し、記憶分子はこの表面上に単分子層を形成できるということである。また、電解質層509は記憶分子をコーティングして、本質的にそれらを封じ込め、後続のステップからそれらを保護する。その上、分子層上に金属が直接蒸着されることは決してなく、それにより、加工中または加工後に記憶分子を金属汚染にさらすアーキテクチャに関連する、損傷およびその他の問題が防止される。さらに、図5の構造は、基礎をなす半導体ベースのマイクロエレクトロニクスデバイスの製造後に、金属、絶縁体などの後続の層が追加され、その上、短絡も防止するという点で、3次元アーキテクチャを実装するための容易な方法を提供する。
【0128】
図6は、「モルホール」構造とも呼ばれる、トレンチ構造内に電気化学セルが形成された記憶デバイス301の実装を示す。トレンチは、上に重なる誘電体層605(例えば、酸化物)および対向電極611を通過して、基板601内にまで達する。トレンチの壁は、露出されており、記憶分子607が結合されることが可能な表面接点を提供する。記憶分子607および電解質609が追加され、構造は次に、アレイを封止するためのポリマー613によって覆われる。
【0129】
各ワード線107は、行内のメモリセルの対向電極611に接続されるのに対して、各ビット線は、列内のメモリセルのドレインに接続される。グラウンド電圧は、選択された行内のメモリセルのソース領域に接続される。(図1に示す)行アドレスデコーダ103は、選択された行内のすべてのアクセストランジスタ303をアクティブにし、それによって、その行内の各記憶デバイス301を、それらの各ビット線に結合する。記憶分子607の完全性が維持されるように、ワード線107およびビット線109は、低温酸化物蒸着および物質化を使用して製造される。これらの構造を形成するために、二酸化ケイ素および金属の室温蒸着を使用することが好ましい場合がある。既存の分子は摂氏400°を超える温度に耐えることができるため、後続のプロセスでは広範な温度が許容される。
【0130】
図6に示すトレンチアーキテクチャによって、分子層上に金属が蒸着される可能性が回避され、それにより、他の提示されたアーキテクチャに関連する損傷およびその他の問題が防止される。トレンチの内面は電極表面を形成し、円柱の内面上に分子がSAMを形成し、したがって、トレンチの深さを増加することによって、分子の数を増加することが可能である。金属の各層の高さはトレンチの高さを決定し、それにより、2つの端子の有効面積の容易な調整が可能となる。垂直次元が使用されるため、より多くの分子(厚さ200nmの電極による単純なクロスバーの場合の30倍)が、書き込み/読み出しのために利用可能である。これにより、所与の横断面積について、感度を大幅に向上することが可能となる。さらに、図6の設計では、各電極の相対サイズの、任意の変更が容易に達成される。各接合の実効キャパシタンスは、各交点において2つの金属プレートの間の誘電体の大きな領域を除去することにより減らされる。これは、全体的なワイヤのキャパシタンスに影響する場合がある。ただし、線が十分に太い場合は、ワイヤ抵抗が大きな影響を受けることはない。
【0131】
分子記憶デバイス301の1つの利点は、分子記憶は、記憶分子の選択によって、各位置において複数ビットのデータを記憶するように、容易に適合されることが可能ということである。図7は、2状態モノマーポルフィリン記憶分子の電流−電圧特性を示す、サイクリックボルタンモグラムである。山と谷は、情報の記憶に使用可能な別個の酸化状態に対応する。図7の例で、2つのピークは、2つの別個の酸化状態に対応し、したがって、2つの状態情報を記憶することが可能な記憶デバイス301に対応する。各酸化状態は、他方とは独立に設定または書き込み可能である。サイクリック曲線の下部は、分子記憶デバイス301へのデータの書き込みに対応し、サイクリック曲線の上部は、分子記憶デバイス301からのデータの読み出しに対応する。
【0132】
記憶デバイス301内に状態を書き込むためには、ビット線に電圧を印加して、記憶分子の望ましい酸化状態を作成する。通常、ビット線に印加される電圧は、書き込み回路内の抵抗性および容量性の損失を補償するために、MSD内で使用される分子のE1/2よりもいくらか正になる。書き込み回路に関連する損失は、測定可能であり、一定しているため、容易に補償することが可能である。特定の実施形態では、作用電極502/602はグラウンド電位に保たれ、基準電極511/611は、図7に示すIV曲線のピークよりもわずかに下のバイアス電位に置かれる。ビット線109は、バイアス電位に加算された場合に記憶分子の酸化を引き起こすには不十分である電圧を有する、第1のロジック状態を示す書き込み信号に結合される。書き込み信号は、バイアス電位に加算された場合に記憶分子の酸化を引き起こすのに十分である電圧を有する、第2のロジック状態を示す。
【0133】
図7の特定の例では、基準電極511/611上のバイアス電位は500mVに設定され、ビット線に印加されるデータ信号は、0または300mVのいずれかである。500mVの信号は酸化を引き起こすには不十分であるのに対して、800mVの信号は、第1の個別の酸化状態の酸化を引き起こすのに十分である。同じ記憶デバイス301に第2の状態を書き込むには、基準電極511/611上のバイアス電位が800mVよりも上に設定される。再び、ビット線に印加されるデータ信号は、0または300mVのいずれかである。800mVの信号は酸化を引き起こすには不十分であるのに対して、1100mVの信号は、第2の個別の酸化状態の酸化を引き起こすのに十分である。したがって、第1および第2のビットを続けて書き込むことが可能である。
【0134】
書き込み動作の後、記憶分子はそれらの酸化状態に留まる傾向がある。本質的に、書き込み処理によって追加された、または除去された電子は、記憶分子に緊密に結合される。対照的に、従来のソリッドステートキャパシタでは、電子はエネルギー帯の中にゆるく捕捉され、電子が離脱する可能性はより高い。結果として、記憶分子内に記憶される電荷は、従来のキャパシタ内に記憶される電荷と比較して、はるかにゆっくりと漏れ出ることになる。記憶分子は、所与の酸化状態に書き込まれた後は、電圧モードセンス増幅器または電流モードセンス増幅器のいずれによって読み出されることも可能である。
【0135】
図7に示すように、記憶分子の1つの特性は、分子記憶デバイス301に電圧が印加された場合、記憶分子の酸化状態に依存して、電流の大きさが明確に異なるということである。図7に示すCV曲線のピークは、特定の酸化状態に対応している。記憶分子が、特定の酸化状態にすでに設定されている場合、電流は通過しない。例えば、基準電極と作用電極との間に、図7に示すCV曲線の特性ピークよりも正の電圧を印加し、電流を基準電流源と比較することによって、記憶デバイス301を読み出すことができる。相対的に大きな電流は、第1のロジック状態を示すのに対して、相対的に低い電流は、第2のロジック状態を示す。このようにして、書き込み後の記憶分子の酸化状態は、ビット線に結合された書き込み信号の状態によって決定される。例示的実装では各ビットを直列に書き込むが、分子は並列に書き込みおよび/または読み出しされてもよいことが企図されている。
【0136】
この読み出し方法は、読み出し中の電位の印加が、記憶デバイス301の少なくとも一部の記憶分子の酸化状態を変化させるという点で、部分的または完全に破壊的である。したがって、読み出し動作に続いて、記憶分子の酸化状態を元に戻すために、分子記憶デバイス301への書き戻しを行うことが望ましい。
【0137】
図8は、5つの識別可能な参加状態を有する記憶分子を示し、それぞれの酸化状態は、図8に示すCV曲線のピークによって示されている。記憶分子は、ほとんどどのような数の別個の酸化状態でも有するように設計可能なので、分子記憶によって情報密度が大幅に拡大することが見込まれる。各酸化状態は1ビットの情報を記憶することができるため、メモリアレイの情報密度は劇的に増加する。分子記憶をサポートする、読み出し/書き込みロジック、センス増幅機構などを実装することにより、本発明は、実際のメモリデバイス内でこれらの特性を使用することを可能にする。
【0138】
図9は、複数の別個の酸化状態を有する記憶デバイス301の、CV関係の代替図を示す。任意の特定の電圧において、電流は、さまざまな酸化状態によって決定される。したがって、記憶デバイス301の読み出しは、特定の電圧を記憶デバイス301に印加し、電流を測定し、測定された電流を、記憶デバイス301に記憶されるビット数についての適切なロジック状態にマッピングすることによって達成することができる。
【0139】
図10は、マルチステート分子メモリに適用可能な、例示的電流センス増幅器の配置を示すが、代替として、電圧センス技術が同様に使用されてもよい。図10に示す配置では、並列の電流センスが実装されている。セル電流(ICELL)は、電流モードセンス増幅器1001に結合される。セル電流は、ビット線109から直接来るものであってもよく、またはその代わりに、前置増幅されたものであってもよい。前記増幅器は、各電流モードセンス増幅器1001内に含まれていてもよく、または別個に提供されてもよい。各センス増幅器1001は、特定のロジック状態についてのしきい値電流値を示す、固有の基準電流1003を有する。各センス増幅器1001は、セル電流が基準電流を超えているかどうかを示す2値信号を生成する。ロジックエンコーダ1005は、2値信号を受信して、それらをロジック信号にマッピングする。このマッピングは、レベルシフティング、反転、または、特定の適用例の必要を満たすための、その他の組み合わせ論理を使用した処理を含んでもよい。
【0140】
図11は、上記で説明した分子記憶装置の特徴の多くを、実際的な大容量メモリに統合する、1Mビット実装を示す。図11に示すレイアウトは、実施可能な限り、業界標準のピン配列に従う。ただし、各セル内に複数の状態が記憶される場合は、複数のピン配列を提供して、データが並列に読み出されることを可能にし、読み出しでより少ないクロックサイクルが消費されるようにすることが望ましい場合がある。図11の特定の実装では、メモリセルアレイ1101の4つのバンクが使用され、ここで、各バンクは、512行および512列として配置された256Kのメモリ位置を実装する。図11に示すデバイス全体は、512行×2048列つまり1048576の位置(すなわち、1Mビットメモリ)を有する。図11に示す特定の配置は、任意のサイズの他の配置に、容易に置き換えられることが可能である。図を簡単にするために、電源電圧およびグラウンドなどの、共通のチップ入力は省略されている。
【0141】
8ビットの行アドレスが、外部装置によって、行プリデコーダ1103’へのRA<0:8>入力上に提供される。行プリデコーダは、行アドレスを部分的にデコードして、部分的にデコードされた出力を、それぞれの行デコーダ1103に提供する。行デコーダ1103は各バンクについて提供されるのに対して、行プリデコーダ1103’は、通常、すべてのバンクの間で共有される。行プリデコーダ1103‘を使用すれば、行デコーダ1103は部分的にデコードされたアドレスを処理することになるため、行デコーダ1103をより小さく、そして一般には、より高速にすることが可能になる。図11の特定の実施形態では、行デコーダ1103は、各ワード線のためのワード線ドライバ回路を含む。列アドレスが、列アドレスプリデコーダ1105’へのCA<0:8>入力ピンに提供される。列アドレスプリデコーダ1105’は、プリデコードされたアドレスを列デコーダ1105に提供し、列デコーダ1105は、完全にデコードされたアドレスを生成する。
【0142】
各メモリアレイ1101は、512本のワード線1107を含む。図11の上部に示されたDBLA線のうちのいずれかに置かれる適切な信号によって、特定のバンクが、読み出しおよび/または書き込みのために選択され、それにより、列デコーダ1105によってアドレス指定されたビット線がアクティブになる。ビット線基準電圧VBLREFが、それぞれのセンス増幅器モジュール1111に提供される。ビット線基準電圧は、電圧モードセンス増幅のために使用されるか、あるいは、直列または並列の電流モードセンス増幅を駆動するために使用される。
【0143】
各メモリアレイ1101は、メモリアレイ1101の512本のビット線に結合されたセンス増幅回路を含む、センス増幅モジュール1111を備える。センス増幅モジュール1111は、さらに、メモリアレイ1101に書き込まれるデータがセンス増幅器をバイパスすることを可能にする書き込みパスゲート、およびビット線プリチャージ信号(使用される場合)がセンス増幅器をバイパスすることを可能にするプリチャージパスゲートも含んでもよい。ビット線プリチャージは、読み出し直前にビット線をハイとローのロジック信号の中間の電位に置くことによって、ビット線の応答時間を短縮するための、有用な技術である。この技術により、電圧振幅が減少するため、ビット線はより迅速に応答することが可能となる。
【0144】
データバッファ1113は、書き込み動作中にビット線上にデータ信号を駆動するため、および読み出し動作中にビット線からデータ信号を読み出すために役立つ。複数ビットのデータをエンコードするためのロジック1005が、データバッファモジュール1113に含まれていてもよい。書き込みデータはD<>入力上で受信され、読み出しデータ出力はQ<1>〜Q<3>出力上に置かれる。図11の実装は一般化されているが、本発明は、分子メモリを動作させるために、DRAM回路技術および機能構成要素を適合させることを可能にすることは明らかである。したがって、さらに、分子記憶デバイスによって提供されるはるかに高い密度に、既存の回路技術を活用することも可能である。
【0145】
複数電極モルホールアレイは、分子をベースとする電子デバイスにおいてメモリ素子として使用するのに非常に適しており、本発明の分子メモリアレイおよびデバイスの実装に利用されてもよい。「分子メモリ」素子では、モルホール内で電極(例えば、作用電極)に結合されたレドックス活性分子(1つまたは複数の非ゼロのレドックス状態を有する分子)が、ビットを記憶するために使用される(例えば、特定の実施形態では、各レドックス状態が、ビットまたはビットの組み合わせを表してもよい)。電極(例えば、シリコンまたはゲルマニウム)に結合されたレドックス活性分子は、さまざまな酸化状態内に1つまたは複数のビットを記憶することが可能な、記憶セルを形成する。特定の実施形態では、記憶セルは、1つまたは複数のレドックス活性分子を含み、複数の異なる識別可能な酸化状態を有する、「記憶媒体」に電気的に結合された、固定作用電極によって特徴付けられる。電気的に結合された電極を介して、1つまたは複数の電子を前記記憶媒体に追加すること、または前記記憶媒体から取り出すことによって、(好ましくは非中性の)酸化状態内にデータが記憶される。レドックス活性分子(1つまたは複数)の酸化状態は、例えば、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、およびPCT公開WO 01/03126(これらの開示は、それらの全体が、この参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている電気化学的方法(例えば、サイクリックボルタンメトリー)を使用して、設定および/または読み出しされることが可能である。複数のモルホール(電気化学セル)を含むモルホールアレイは、大容量、高密度メモリデバイスを提供することが可能である。
【0146】
N族の元素(group N elements)、特にシリコンおよびゲルマニウムは、電子チップの製造に一般に使用されているため、既存の加工/製造技術と互換性のある分子メモリチップの製造のために直ちに役立つ。さらに、レドックス活性分子を含む記憶セルの構築および使用の詳細は、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、およびPCT公開WO 01/03126に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の実施形態による例示的メモリデバイスおよびメモリアレイをブロック図形式で示す。
【図2】本発明による組み込み分子メモリを有する例示的システムオンチップ(SOC)を示す。
【図3】本発明の実施形態による例示的分子メモリセルを示す。
【図4】本発明によるメモリアレイの操作に役立つタイミング図を示す。
【図5】積層キャパシタ実施形態の分子記憶デバイスの単純化された断面を示す。
【図6】「モルホール」実施形態の分子記憶デバイスの単純化された断面を示す。
【図7】
【図8】例示的記憶分子実装の電流−電圧特性を示すサイクリックボルタンモグラムである。
【図9】本発明による例示的分子記憶デバイスの電流−電圧特性を示す
【図10】本発明において有用な読み出し/書き込み回路を概略的に示す。
【図11】特定の実装による、メモリデバイスと、サポートするインタフェースおよび制御ロジックとを示す。
【図12A】〜
【図12H】メタロセンとしてのレドックス活性分子の化学式を図12Aに、フェロセンの形態でのその特定の実施形態を図12B〜図12Gに、ポルフィリンを図12Hに、それぞれ示す。
【図13A】
【図13B】
【図13C】本発明のさまざまな実施形態を示す。図13Aは、ポルフィリンとフェロセンという、2つのレドックス活性サブユニットを含むReAMを示す。図13Bは、類似しているが、ただし、可能な置換基を示す。図13Cは、図13Bの構造のポリマーを示し、ここで、hは2以上の整数である。
【図14A】
【図14B】
【図14C】さまざまなポリマー構成を概略的に示す。図14Aは、電極505上の、独立に選択されたリンカー510を有する、独立に選択されたReAM500のZ次元線状ポリマーを示す。nは0以上の整数であり、1〜8が好ましく、そして、結合部分は示されていない。図14Bは、架橋515を有する、図14AのZ次元線状ポリマーを示す。以下に説明するように、1つまたは複数の分岐点を有する、枝分かれZ次元ポリマーも企図されている。図14Cは、複数の結合部分520を有する、X−Y次元線状ReAMポリマーを示す。ReAMのさまざまな線状ポリマーを具備する表面も企図されており、やはり、ホモポリマーまたはヘテロポリマーのいずれかの使用が有用である。任意選択で架橋を有する、枝分かれReAMポリマーも企図されている。
【図15】広範な大環状リガンド(例えば、プロリガンド(qが0の場合)または錯体(qが1の場合))を示す。
【図16A】
【図16B】
【図16C】本発明の適切なReAMのいくつかの実施形態を示す。これらの構造は、ヘテロ原子配位原子として窒素を利用するが、代替のヘテロ原子(特に、酸素および硫黄)が使用されてもよい(ただし、当業者によって理解されるように、大環状分子の価は変化する場合がある)。図16Aはフタロシアニン誘導体、図16Bはポルフィリン誘導体、および図16Cは拡張ポルフィリンである。
【図17A】〜
【図17I】シクレン誘導体に基づく大環状プロリガンドを示す。金属イオンは図示されていない。また、図示されていない追加の水素原子が結果として存在する可能性があることが理解される。誘導体は、−Y−構造内の骨格原子の数に依存して、12、13、14、15、または16員環であってもよく、追加の骨格原子は、炭素またはヘテロ原子であってもよい。図17Bは、12員環であり、A、B、C、およびDは、一重および二重結合から独立に選択されてもよい。図17Cでは、シクレンは、ヘテロ原子のうちの2つの間の「ブリッジ」を有し、各A−Bは、CR2 CR2、CR=CR、CR2 CR2 CR2、CR=CR CR2、CR2 CR=CR、CR2−NR−CR2−、−CR=N−CR2−、および−CR2−N=CR−からなる群から独立に選択される。図17D〜図17Gは、利用可能な置換基位置を有する、さまざまな特定の構造を示す。図17Hは、シクレン誘導体の「腕」のうちの1つの「損失」を示し、本明細書での教示により理解されるように、さまざまな追加のシクレンベースの誘導体は、さらに、結合の価を変更し、R基を除去してもよい。図17Iは、5つのドナーヘテロ原子を有する大環状プロリガンドである。場合によっては、より大きな環が使用され、結果として多核錯体となる。やはり、本明細書に記載されているように、これらの大環状プロリガンドおよび錯体のいずれかまたはすべて、あるいはそれらの混合物、ならびに他のタイプのReAMとの混合物が、重合反応の中でモノマーとして使用されてもよい。
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年1月28日に出願された米国特許出願番号第10/766304号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、スタティック、パーマネント、およびダイナミックランダムアクセスメモリなどの、メモリデバイスに関する。特に本発明は、分子メモリセルと、分子メモリアレイと、分子メモリを含む電子デバイス、特に論理デバイスとに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体加工およびデバイス設計の進歩は、従来のプログラマブルコンピュータから通信装置や娯楽用装置に至る、一見無限のさまざまなツールおよびマシンに、コンピューティングデバイスが組み込まれるという結果をもたらした。最終的な目的に関係なく、コンピューティングデバイスは、一般に、中央処理装置(CPU)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、CPUおよびRAMの間のデータ交換を可能にするアドレス指定および通信の機構との、3つの主要な構成要素により構成される。コンピューティングデバイス内では、データは、信号(例えば、電圧、電流、光など)の形態で記憶、通信、および処理される。CPUは、信号を論理的に処理するための回路を含むのに対して、メモリは、CPUによるそれらの信号の処理の前、間、および後に信号を記憶するための回路を含む。
【0004】
従来のCPU、メモリデバイス、およびデータ通信機構は、ソリッドステート電子デバイスとして大量生産される。ソリッドステート電子デバイスは、「半導体デバイス」と呼ばれることがあるにもかかわらず、金属、半導体、および絶縁体を含む、固体の電気的挙動に依存する。ソリッドステートデバイスを生産するための技術および装置は、時が経つにつれて劇的に向上し、サブミクロンスケールの特徴を有する、スイッチ、キャパシタ、抵抗などのデバイス、および配線を製造できるようになった。
【0005】
コンピューティングデバイスのメモリ構成要素の性能は、全体的なシステム性能の、ますます重要な決定要因となりつつある。メモリの量が大きければ、より多様なアプリケーションおよび機能がコンピューティングデバイスによって実装されることが可能となり、また、独立した大容量記憶装置の必要性が減少するか、またはなくなる可能性がある。メモリがより高速ならば、より高いCPU処理周波数がサポートされ、複雑な、またはリアルタイムのタスクのために、コンピューティングデバイスがより役立つようになる。より高密度のメモリデバイスは、ラップトップコンピュータ、PDA、多機能携帯電話などの、ますます多様化しつつあるバッテリ駆動の電子デバイスをサポートする。それと同時に、これらの用途の多くは、電力消費の減少により利益を得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの場合、半導体加工技術の進歩は、より高密度、より大容量、より高速、そしてより電力効率の良いメモリデバイスを作成するために、これらの重要な特性のそれぞれを改良する効果を有してきた。多くの場合、デバイスのソリッドステート電子挙動は、デバイスがより小さくなるにつれて改良される。残念ながら、DRAMメモリなどの従来のシリコンベースのメモリは、従来の半導体メモリセルのサイズの継続的な減少が、これらの重要なパラメータのうちの少なくともいくつかに悪影響を及ぼすことが予想される点に到達した。
【0007】
より小さな寸法において、速度が減少し、電力消費が増加する1つの理由は、メモリデバイスは通常、それぞれの記憶される情報ビットに対して、キャパシタを実装するということである。キャパシタは、絶縁体によって分離された導電性プレートにより形成される、電荷記憶デバイスである。キャパシタが小さくなるにつれて、記憶可能な電荷の量は減少する。信頼性の高いメモリデバイスとして働くためには、キャパシタは、後でデータとして確実に検出されることが可能なレベルの信号を保持するための、十分な容量を有していなければならない。その上、キャパシタ内に記憶された電荷の一部は、時間の経過とともに消散または漏洩するという点で、キャパシタは本質的に「漏れやすい」デバイスである。より小さなキャパシタに基づくメモリデバイスは、漏れの問題の影響をより受けやすく、その理由は、それらのメモリデバイスが単により少ない電荷を有し、したがってそれらの電荷が失われて、記憶されたデータが回復不能になる可能性があるということである。
【0008】
容量性記憶の一時的性質を克服するために、メモリデバイスは、記憶された信号を頻繁に読み出し、より高いレベルに増幅して、キャパシタ内に再び記憶するための、リフレッシュ回路を使用する。キャパシタが小さくなるにつれて、キャパシタがリフレッシュされる必要のあるレートは増加する。その結果として、より高いキャパシタリフレッシュレートにより、データの読み出しおよび書き込みのためにメモリセルを利用できる時間のパーセンテージは減少する。その上、メモリデバイスの総電力消費のより大きなパーセンテージが、メモリのリフレッシュのために使用されることになる。デバイスが休止または非アクティブ状態にある場合でも、従来のDRAMは継続的なリフレッシュを必要とし、したがって、継続的な電力消費を必要とする。そのため、研究者は、従来のキャパシタベースのメモリデバイスにおける、より小さなキャパシタに関連する問題を克服する、新しいデータ信号記憶方法を積極的に探し求めている。
【0009】
メモリセルの設計者は、一定量のチップ領域内に形成可能なキャパシタンスの量を増大させることによって、より小さなメモリセル内での、低いリフレッシュレートを維持しようと試みてきた。キャパシタンスの増大には、多くの場合、キャパシタの電荷保持素材の表面積を増加させることが含まれるが、キャパシタの全体的なサイズが小さくなっている場合、これを行うことは非常に困難である。設計者は、電荷保持素材を3次元トレンチおよび積層型キャパシタ設計に形成することによって、表面積の制御においていくらかの成功は収めたが、これらの技術を、より小さなデバイス内でより大きなキャパシタンスを提供するという、継続的な進歩のために、当てにすることができる見込みはない。メモリデバイス内で有用となる十分な電荷を、十分な時間にわたってキャパシタが記憶できなくなるほどに、さまざまなデバイス特徴の寸法がより小さくなるにつれて、デバイス性能が基礎を置いているソリッドステート電子挙動は破綻し始める。
【0010】
情報密度(例えば、メモリチップの一定面積内に記憶可能な情報の量)を増加することを試みているメモリ設計者は、もう1つの問題に直面している。従来のソリッドステートキャパシタの各メモリセルは、1ビットの情報のみを記憶できる。したがって、複数の個別の状態を確実に記憶できるメモリセルを有することにより達成される、改良された情報記憶密度を備えたメモリデバイスを有することが望ましい。
【0011】
上記を考慮すると、従来のソリッドステートメモリ設計によって課せられる制限を克服する、ダイナミックランダムアクセスメモリなどのメモリデバイスの必要性が存在することは明らかである。特に、分子メモリセルと、分子メモリアレイと、分子メモリを含む電子デバイスとに対する必要性が存在する。さらに、半導体デバイスと配線を、分子メモリデバイスと一体構造で製造できるようにする、既存の半導体製造実践と互換性のある技術を使用して製造可能な分子メモリデバイスに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡潔に述べると、本発明の実施形態は、スイッチングデバイスと、スイッチングデバイスに接続されたビット線およびワード線と、スイッチングデバイスを介してアクセス可能な分子記憶デバイスとを含む、分子メモリ素子を具備する。分子記憶デバイスは2つ以上の個別の状態に置かれることが可能であり、分子記憶デバイスは、ビット線およびワード線に印加される信号によって、個別の状態のいずれかに置かれる。分子記憶デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、第1および第2の電極の間の分子材料とを具備する。
【0013】
本発明は、さらに、複数の分子記憶素子を含む分子メモリアレイに関し、ここで、各分子記憶素子は2つ以上の個別の状態に置かれることが可能である。少なくとも1本のビット線と少なくとも1本のワード線とによって、各分子記憶素子が結合されるように、そしてアドレス指定されることが可能なように、複数のビット線およびワード線が複数の分子記憶素子に結合される。
【0014】
別の態様では、本発明は、分子記憶素子の、アドレス指定可能なアレイを具備する分子メモリデバイスを企図している。アドレスデコーダが、コード化されたアドレスを受信し、コード化されたアドレスに対応するワード線信号を生成する。ワード線ドライバが、アドレスデコーダに結合され、増幅されたワード線信号を生成する。増幅されたワード線信号は、分子記憶素子のアレイのメンバを、ビット線に選択的に結合するスイッチを制御する。ビット線に結合された読み出し/書き込みロジックは、分子メモリデバイスが読み出しモードまたは書き込みモードのいずれにあるかを判定する。読み出しモードでは、各ビット線に結合されたセンス増幅器が、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を検出し、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を示すデータ信号を、ビット線上に生成する。書き込みモードでは、読み出し/書き込みロジックが、ビット線および選択的に結合された分子記憶素子上に、データ信号を駆動する。
【0015】
本発明は、さらに、特定用途向け集積回路(ASIC)およびシステムオンチップ(SOC)デバイスなどのような、組み込み分子メモリデバイスと統合されたロジックを含むデバイスも企図している。そのような実装は、分子メモリデバイスと一体構造で形成され、分子メモリデバイスと相互接続された、1つまたは複数の機能構成要素を具備する。機能構成要素は、ソリッドステート電子デバイスおよび/または分子電子デバイスを具備してもよい。
【0016】
特定の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板上に、続いて形成される積層構造として実装される。他の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板内の、マイクロメートルまたはナノメートルのサイズの穴として実装される。分子記憶デバイスは、半導体基板および半導体基板内に以前に形成された能動素子と互換性のある加工技術を使用して製造される。分子記憶デバイスは、例えば、電解質(例えば、セラミックまたは固体電解質)によって分離された2つ以上の電極表面を有する電気化学セルを含む。記憶分子(例えば、情報を記憶するために使用可能な1つまたは複数の酸化状態を有する分子)は、電気化学セル内の電極表面に結合される。
【0017】
本発明の追加の態様は、以下から独立に選択された構成要素の使用を含む。電界効果トランジスタを含むトランジスタスイッチングデバイス、ワード線に結合された行デコーダ、ビット線に結合された列デコーダ、ビット線に接続された電流前置増幅器、ビット線に接続されたセンス増幅器、コード化されたアドレスを受信し、コード化されたアドレスに対応するワード線信号を生成するアドレスデコーダ、アドレスデコーダに結合された線ドライバ(線ドライバは、増幅されたワード線信号を生成する(任意選択で、増幅されたワード線信号は、分子記憶素子のアレイのメンバを、ビット線に選択的に結合するスイッチを制御する)、ビット線に結合された読み出し/書き込みロジック(読み出し/書き込みロジックは、分子メモリデバイスが読み出しモードまたは書き込みモードのいずれにあるかを判定する)、各ビット線に結合されたセンス増幅器(デバイスが読み出しモードにある場合、各ビット線に結合されたセンス増幅器は、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を検出し、選択的に結合された分子記憶素子の電子的状態を示すデータ信号を、ビット線上に生成する(デバイスが書き込みモードにある場合に、読み出し/書き込みロジックが、ビット線および選択的に結合された分子記憶素子上に、データ信号を駆動するように))、電解質層、およびそれらの組み合わせ。
【0018】
さらなる態様は、グラウンドに結合された第2の電極と、直角をなすか、または平行な、ビット線およびワード線とを利用する。
【0019】
追加の態様は、DRAMまたはSRAMなどの揮発性メモリ、あるいはフラッシュメモリまたは強誘電体メモリなどの不揮発性メモリを含む、本発明のメモリアレイを有する。
【0020】
さらなる態様は、アレイを提供し、ここで、分子記憶デバイスは第1の電極上に形成される結合層を有し、結合層は開口部を有し、分子材料が開口部内にあって第2の電極層と電子的に結合され、電解質層が結合層の上に形成される。
【0021】
追加の態様は、以下から選択されるReAMを提供する。ポルフィリン大環状分子、メタロセン、直鎖ポリエン、環状ポリエン、ヘテロ原子置換直鎖ポリエン、ヘテロ原子置換環状ポリエン、テトラチアフルバレン、テトラセレナフルバレン、金属配位錯体、バッキーボール、トリアリールアミン、1,4−フェニレンジアミン、キサンテン、フラビン、フェナジン、フェノチアジン、アクリジン、キノリン、2,2’=ビピリジル、4,4’=ビピリジル、テトラチオテトラセン、またはペリブリッジされたナフタレンジカルコゲナイド。
【0022】
さらなる態様は、特定の機能を実行するように構成された論理デバイスと、論理デバイスに結合された、本発明の組み込み分子メモリデバイスとを含む、一体型に統合されたデバイスを提供する。デバイスは、任意選択で、特定用途向け集積回路(ASIC)、システムオンチップ(SOC)、ソリッドステート電子デバイス、または分子電子デバイスを具備してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、従来のマイクロエレクトロニクスのために開発された技術と統合され、それらの技術から利益を得る、分子メモリ素子(本明細書および関連出願において「記憶分子」または「メモリ分子」と呼ばれる場合がある)の使用を可能にする、多くのデバイスおよびシステムアーキテクチャを企図している。1つのレベルにおいては、本発明は、記憶分子を、記憶分子の読み出しおよび書き込みを可能にするスイッチングロジックと統合する、分子メモリ素子を含む。もう一方の極限においては、本発明は、分子メモリアレイと一体構造で統合され、より少ない電力消費、優れたデータ持続性、より高い情報密度などの、分子メモリの1つまたは複数の独特の特徴を活用する、新しくかつ有用な機能を提供する、データ処理回路を含む論理デバイスを有する、高集積回路を企図している。
【0024】
レドックス活性部分またはレドックス活性分子に基づく、本発明での使用に適した多種多様な記憶分子が存在する。ここでの「レドックス活性部分」または「レドックス活性分子」または「ReAM」は、適切な電圧の印加によって酸化または還元されることが可能な部分を意味する。この文脈における、適切な電圧とは、従来のマイクロエレクトロニクスにおいて使用される電圧である。
【0025】
一部の実施形態では、レドックス活性部分は、少なくとも2つ以上の識別可能な非中性酸化状態を有し、分子あたり複数のビットを記憶する場合は特に、少なくとも3、4、5、6、7、8、またはそれよりも高い酸化状態が有用である。一部の実施形態では、特にさまざまなReAMの混合物が各記憶位置において使用される場合、個々のReAMは単一の非中性酸化状態のみを有していてもよいが、各位置におけるさまざまな部分の集まりは、記憶密度のために複数の酸化状態を提供する。さらに、ReAMポリマーの場合、より少ない酸化状態を有するさまざまなモノマーの、ヘテロポリマーを使用することによって、複数の酸化状態がもたらされてもよい。
【0026】
あるいは、一部の実施形態では、同じ電圧において複数の電荷(例えば、電子)が読み出される、高い電荷密度を有する記憶デバイスが有用である。例えば、特定の電圧における記憶分子の酸化は、1つではなく、2つまたは3つの電子の損失という結果になってもよい。したがって、ReAMは、より少ない酸化状態を有するが、各状態においてより多くの電子を放棄し、それにより表面上でより高い電荷密度がもたらされるように設計されてもよい。
【0027】
「酸化」は、元素、化合物、または化学置換基/サブユニット内での、1つまたは複数の電子の損失を意味する。酸化反応においては、反応に関与する元素(1つまたは複数)の原子によって、電子が失われる。これらの原子上の電荷は、次に、より正にならなければならない。酸化を受けている化学種から電子が失われるため、電子は酸化反応における生成物のように見える。酸化は、反応Fe3+(aq) → Fe3+(aq) + e−の中で発生しており、その理由は、酸化反応における「自由な」実体としての電子の明白な生成にもかかわらず、酸化されている化学種Fe3+(aq)から電子が失われるためである。逆に、「還元」という用語は、元素、化合物、化学置換基/サブユニットによる、1つまたは複数の電子の獲得を意味する。
【0028】
「酸化状態」は、電気的に中性の状態、あるいは、ReAMまたはレドックス活性サブユニットへの電子の獲得または損失により生成される状態を意味する。好ましい実施形態では、「酸化状態」という用語は、中性状態と、電子の獲得または損失(還元または酸化)によってもたらされる中性状態以外の任意の状態とを含む状態を意味する。
【0029】
一般に、上記のように、本発明において有用な複数のタイプのReAMがあり、すべて、大環状および非大環状部分を含む、多座プロリガンドに基づく。多くの適切なプロリガンドと錯体、および適切な置換基は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、および米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書に概要が記載されており、これらの特許文献のすべて、特に、その中に示されている構造およびその説明については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0030】
適切なプロリガンドは、次の2つのカテゴリに分けられる。(金属イオンに依存して)窒素、酸素、硫黄、炭素、または燐原子を配位原子として使用するリガンド(文献では一般にシグマ(σ)ドナーと呼ばれる)、およびメタロセンリガンドなどの有機金属リガンド(文献では一般にパイ(π)ドナーと呼ばれ、本明細書ではLmとして示される)。
【0031】
さらに、単一のReAMは、2つ以上のレドックス活性サブユニットを有していてもよい。例えば、図13Aに示すように、通常は、ただし任意選択で、リンカーLを介して結合される、ポルフィリン(図13に、金属なしで示す)およびフェロセン(以下で説明し、図13Bに示すように、これらの両方は任意選択で、任意の位置において、独立に選択された置換基に置き換えられてもよい)という2つのレドックス活性サブユニットが存在する。同様に、サンドイッチ配位化合物は、単一のReAMと見なされる。これは、これらのReAMがモノマーとして重合される場合とは区別される。例えば、図13Cは、図13Bの重合された変種であり、ここで、hは2以上の整数である。さらに、本発明の金属イオン/錯体は、本明細書に一般には示していない、対イオンに関連付けられていてもよい。
【0032】
大環状リガンド
一実施形態では、ReAMは、大環状プロリガンドおよび大環状錯体の両方を含む、大環状リガンドである。ここでの「大環状プロリガンド」は、金属イオンに結合できるように配向されたドナー原子(本明細書では「配位原子」と呼ばれる場合もある)を含み、金属原子を取り囲むのに十分な大きさである、環式化合物を意味する。一般に、ドナー原子は、窒素、酸素、および硫黄を、これらに限定されずに含むヘテロ原子であり、前者が特に好ましい。ただし、当業者によって理解されるように、異なる金属イオンは異なるヘテロ原子に優先的に結合し、したがって、使用されるヘテロ原子は、望ましい金属イオンに依存してもよい。さらに、一部の実施形態では、単一の大環状分子が、さまざまなタイプのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0033】
「大環状錯体」は、少なくとも1つの金属イオンを有する大環状プロリガンドである。一部の実施形態では、大環状錯体は単一の金属イオンを含むが、後述するように、多核大環状錯体を含む、多核錯体も企図されている。
【0034】
電子的に共役されたもの、および電子的に共役されていない可能性があるものを含む、多種多様な大環状リガンドが、本発明に用途を見出す。ただし、本発明の大環状リガンドは、好ましくは少なくとも1つの、また、好ましくは2つ以上の酸化状態を有し、4つ、6つ、および8つの酸化状態は特に意義がある。
【0035】
適切な大環状リガンドの概略を、図15に図示して説明している。ポルフィリンに大まかに基づくこの実施形態では、16員環(−X−部分が、炭素またはヘテロ原子のいずれかの、単一の原子を含む場合)、17員環(−X−部分のうちの1つが、2つの骨格原子を含む場合)、18員環(−X−部分のうちの2つが、2つの骨格原子を含む場合)、19員環(−X−部分のうちの3つが、2つの骨格原子を含む場合)、または20員環(−X−部分のうちの4つすべてが、2つの骨格原子を含む場合)がすべて企図されている。各−X−基は、独立に選択される。‥‥Q‥‥部分は、骨格 −C−ヘテロ原子−C (一重または二重結合のいずれかを使用して独立に炭素とヘテロ原子を連接)とともに、5または6員環を形成し、これは任意選択で、1つまたは2つ(5員環の場合)、あるいは1つ、2つ、または3つ(6員環の場合)の独立に選択されたR2グループに置き換えられる。一部の実施形態では、環、結合、および置換基は、電子的に共役された化合物をもたらすように、そして、少なくとも2つの酸化状態を最低でも有するように選ばれる。
【0036】
一部の実施形態では、本発明の大環状リガンドは、ポルフィリン(特に、以下で定義するポルフィリン誘導体)、およびシクレン誘導体からなる群から選択される。
【0037】
ポルフィリン
本発明において適切な大環状分子の特に好ましいサブセットは、ポルフィリン誘導体を含む、ポルフィリンである。そのような誘導体としては、ポルフィリン核にオルト融合された、またはオルト周辺融合された(ortho−perifused)追加の環を有するポルフィリン、ポルフィリン環の1つまたは複数の炭素原子の、別の元素の原子による置換(骨格置換)を有するポルフィリン、ポルフィリン環の窒素原子の、別の元素の原子による置換(窒素の骨格置換)を有する誘導体、周辺に配置された、水素以外の置換基(ポルフィリンの、メソ−、3−、または核原子)を有する誘導体、ポルフィリンの1つまたは複数の結合が飽和した誘導体(ヒドロポルフィリン、例えば、クロリン、バクテリオクロリン、イソバクテリオクロリン、デカヒドロポルフィリン、コルフィン(corphins)、ピロコルフィン(pyrrocorphins)など)、ピロールおよびピロメテニルユニットを含む、1つまたは複数の原子が、ポルフィリン環内に挿入された誘導体(拡張ポルフィリン)、1つまたは複数の基がポルフィリン環から除去された誘導体(収縮ポルフィリン、例えば、コリン、コロール)、ならびに前述の誘導体の組み合わせ(例えば、フタロシアニン、サブフタロシアニン、およびポルフィリン異性体)がある。その他の適切なポルフィリン誘導体としては、エチオフィリン(ethiophyllin)、ピロポルフィリン、ロドポルフィリン、フィロポルフィリン、フィロエリスリン、クロロフィルaおよびbを含む、クロロフィル基、ならびに、ジューテロポルフィリン、ジューテロヘミン(deuterohemin)、ヘミン、ヘマチン、プロトポルフィリン、メソヘミン(mesohemin)、ヘマトポルフィリン、メソポルフィリン、コプロポルフィリン、ウルポルフィリン(uruporphyrin)、およびトゥラシン(turacin)を含む、ヘモグロビン基と、一連のテトラアニールアザジピロメチン(tetraarylazadipyrromethines)とがある(ただし、これらに限定されない)。
【0038】
本明細書で概要を述べた化合物について当てはまるように、そして、当業者によって理解されるように、各不飽和位置は、炭素またはヘテロ原子のいずれでも、本明細書で定義した1つまたは複数の置換基を、システムの望ましい価に依存して含むことが可能である。
【0039】
好ましい一実施形態では、レドックス活性分子は、図12Aの化学式に示すように、メタロセンであってもよく、ここで、Lはリンカー、Mは金属(例えば、Fe、Ru、Os、Co、Ni、Ti、Nb、Mn、Re、V、Cr、W)、S1およびS2は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルからなる群から独立に選択される置換基である。好ましい実施形態では、置換アリール基はポルフィリンに結合され、アリール基上の置換基は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルからなる群から選択される。
【0040】
特に好ましい置換基としては、4クロロフェニル、3−アセトアミドフェニル、2,4−ジクロロ−4−トリフルオロメチルがある(ただし、これらに限定されない)。好ましい置換基は、約2ボルト未満のレドックス電位範囲を提供する。Xは、基質、基質に共有結合できる反応性部位(例えば、アルコール、チオールなど)からなる群から選択される。一部の実施形態では、L−Xは、アルコールまたはチオールであってもよいことが理解される。あるいくつかの例では、L−Xは、S1またはS2のような別の置換基(S3)に置き換えられてもよい。あるいくつかの実施形態では、L−Xは存在してもしなくてもよく、存在する場合、好ましくは、4−ヒドロキシフェニル、4−(2−(4−ヒドロキシフェニル)エチニル)フェニル、4−ヒドロキシメチル)フェニル、4−メルカプトフェニル、4−(2−(4−メルカプトフェニル)エチニル)フェニル、4−(メルカプトメチル)フェニル、4−ヒドロセレノフェニル(hydroselenophenyl)、4−(2−(4−ヒドロセレノフェニル(hydroselenophenyl))エチニル)フェニル、4−(ヒドロセレニルメチル)フェニル、4−ヒドロテルロフェニル(hydrotellurophenyl)、4−(2−(4−ヒドロテルロフェニル(hydrotellurophenyl))エチニル)フェニル、および4−(ヒドロテルロメチル(hydrotelluromethyl))フェニルである。
【0041】
図12Aの化学式の分子の酸化状態は、金属および置換基によって決定される。したがって、特定の好ましい実施形態が、図12B〜図12Gの化学式によって示されている。
【0042】
これらの図の化学式内の、上に記載したフェロセンは、異なる識別可能な酸化状態を有する、好都合な一連の1ビット分子を提供する。したがって、これらの化学式の分子は、+0.55V、+0.48V、+0.39V、+0.17V、−0.05V、および−0.18Vの酸化状態(Eli2)をそれぞれ有し、本発明の記憶媒体内への組み込みのための好都合な一連の分子を提供する。一連の分子のメンバーの酸化電位は、金属(M)または置換基を変更することによって定期的に変更されてもよいことが理解される。
【0043】
別の好ましいレドックス活性分子は、図12Hの化学式により示されるポルフィリンであり、ここで、Fはレドックス活性サブユニット(例えば、フェロセン、置換フェロセン、金属ポルフィリン、または金属クロリンなど)であり、J1はリンカーであり、Mは金属(例えば、Zn、Mg、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Mn、B、Al、Ga、Pb、およびSn)であり、S1およびS2は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルからなる群から独立に選択され、ここで、前記置換基は約2ボルト未満のレドックス電位範囲を提供し、K1、K2、K3、およびK4は、N、O、S、Se、Te、およびCHからなる群から独立に選択され、Lはリンカーであり、Xは、基質、基質に共有結合できる反応性部位、および基質にイオン結合できる反応性部位からなる群から選択される。好ましい実施形態では、XまたはL−Xは、アルコールまたはチオールであってもよい。一部の実施形態では、L−Xは、除去され、S1またはS2と同じ群から独立に選択された置換基によって置き換えられてもよい。
【0044】
本発明のメモリデバイスに使用されるレドックス活性分子のレドックス活性ユニットの、ホール蓄積およびホールホッピング特性に対する制御によって、メモリデバイスのアーキテクチャに対する微調整が可能になる。
【0045】
そのような制御は、総合的設計を介して実行される。ホール蓄積特性は、本発明のデバイスに使用される記憶媒体を組み立てるために使用される、レドックス活性ユニットまたはサブユニットの酸化電位に依存する。ホール蓄積特性およびレドックス電位は、基本分子(1つまたは複数)、関連する金属および周辺置換基の選択によって正確に調整可能であり(Yangら (1999) J.Porphyrins Phthalocyanines、3:117〜147)、この開示は参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0046】
例えば、ポルフィリンの場合、MgポルフィリンはZnポルフィリンよりも容易に酸化され、また、電子求引性または電子放出性のアリール基は、予測可能な方法で酸化特性を調整することが可能である。ホールホッピングは、ナノ構造内の等エネルギーポルフィリン間で発生し、ポルフィリンを結合している共有リンカーを経由して仲介され(Sethら (1994) J.Am.Chem.Soc.、116:10578〜10592、Sethら (1996) J.Am.Chem.Soc.、118:11194〜11207、Strachanら (1997) J.Am.Chem.Soc.、119:11191〜11201、Liら (1997) J.Mater.Chem.、7:1245〜1262、Strachanら (1998) Inorg.Chem.、37:1191〜1201、Yangら (1999) J.Am.Chem.Soc.、121:4008〜4018)、これらの開示は、それらの全体が本参照により本明細書に明確に組み入れられるものとする。
【0047】
予測されたレドックス電位を有する化合物の設計は、当業者に周知である。一般に、レドックス活性ユニットまたはサブユニットの酸化電位は、当業者に周知であり、調べることが可能である(例えば、Handbook of Electrochemistry of the Elementsを参照)。さらに、一般に、分子のレドックス電位に対する、さまざまな置換基の影響は、概して加法的である。したがって、理論的酸化電位は、任意の電位データ記憶分子について、容易に予測可能である。実際の酸化電位、特に、情報記憶分子(1つまたは複数)または情報記憶媒体の酸化電位は、標準的な方法に従って測定可能である。通常、酸化電位の予測は、基本分子の実験的に判定された酸化電位を、1つの置換基を有する基本分子の酸化電位と比較して、その特定の置換基による電位の変化を判定することにより行われる。それぞれの置換基についての、そのような置換基依存の電位変化の合計により、次に、予測酸化電位が与えられる。
【0048】
本発明の方法に使用するための、特定のレドックス活性分子の適性は、容易に判定することができる。本発明の方法により、対象となる分子(1つまたは複数)は、容易に重合され、表面(例えば、水素により不動態化された表面)に結合される。次に、(例えば、本明細書、または米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,212,093号明細書、および米国特許第6,208,553号明細書、PCT公開国際公開第01/03126号パンフレット、または(Rothら (2000) Vac.Sci.Technol.B 18:2359〜2364、Rothら (2003) J.Am.Chem.Soc. 125:505〜517)に記載されているように)正弦波ボルタンメトリーを実行して、1)分子(1つまたは複数)が表面に結合されているかどうか、2)カバレージ(結合)の程度、3)結合手順の間に分子(1つまたは複数)が分解されたかどうか、および4)複数の読み出し/書き込み動作に対する分子(1つまたは複数)の安定性、が評価されてもよい。
【0049】
さらに、「ポルフィリン」の定義には、ポルフィリンプロリガンドと少なくとも1つの金属イオンとを含む、ポルフィリン錯体も含まれる。ポルフィリン化合物のための適切な金属は、配位原子として使用されるヘテロ原子に依存するが、一般に、遷移金属イオンから選択される。本明細書で使用される「遷移金属」という用語は、通常、周期表の3〜12族内の38の元素を意味する。通常、遷移金属は、それらの価電子、すなわち他の元素と結合するためにそれらが使用する電子が、2つ以上の殻内に存在し、したがって、いくつかの共通した酸化状態をしばしば示すという事実によって特徴付けられる。あるいくつかの実施形態では、本発明の遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホジウム、および/またはそれらの酸化物、および/またはそれらの窒化物、および/またはそれらの合金、および/またはそれらの混合物のうちの、1つまたは複数を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0050】
その他の大環状分子
シクレン誘導体に基づくいくつかの大環状分子も存在する。図17は、独立に選択された炭素またはヘテロ原子の包含による骨格拡張を含むことが可能な、シクレン/シクラム誘導体に大まかに基づく、いくつかの大環状プロリガンドを示す。一部の実施形態では、少なくとも1つのR基は、好ましくは金属に電子的に共役された、レドックス活性サブユニットである。少なくとも1つのR基がレドックス活性サブユニットである場合を含む、一部の実施形態では、2つ以上の隣接するR2基がシクロまたはアリール基を形成する。
【0051】
さらに、一部の実施形態では、有機金属リガンドに依存する大環状錯体が使用される。レドックス部分として使用するための純粋な有機化合物と、複素環式または環外の置換基としての、ドナー原子を有するσ結合有機リガンドを有する、さまざまな遷移金属配位化合物とに加えて、π結合有機リガンドを有する、多種多様な遷移金属有機金属化合物が利用可能である(「Advanced Inorganic Chemistry」、第5版、CottonおよびWilkinson、John Wiley & Sons、1988、第26章、「Organometallics,A Concise Introduction」、Elschenbroichら、第2版、1992、VCH、および「Comprehensive Organometallic Chemistry II, A Review of the Literature 1982−1994」、Abelら編、Vol.7、第7、8、10、および11章、Pergamon Pressを参照。これらの文献は参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする)。そのような有機金属リガンドは、シクロペンタジエニドイオン[C5H5(−1)]などの環式芳香族化合物、ならびに、ビス(シクロペンタジエン)金属化合物(すなわち、メタロセン)のクラスを生ずる、インデニライド(indenylide)(−1)イオンなどの、さまざまな環置換および環融合の誘導体を含む。例えば、Robinsら、J.Am.Chem.Soc. 104:1882〜1893(1982)、およびGassmanら、J.Am.Chem.Soc. 108:4228〜4229(1986)を参照されたい(これらの文献は参照により組み入れられるものとする)。これらのうち、フェロセン[(C5H5)2Fe]およびその誘導体は、多種多様な化学的(Connellyら、Chem.Rev. 96:877〜910(1996)(参照により組み入れられるものとする))および電気化学的(Geigerら、Advances in Organometallic Chemistry 23:1〜93,およびGeigerら、Advances in Organometallic Chemistry 24:87(参照により組み入れられるものとする))電子移動すなわち「レドックス」反応に使用される典型例である。さまざまな第1、2、および3周期の遷移金属のメタロセン誘導体は、レドックス部分(およびレドックスサブユニット)として有用である。その他の適切な可能性がある有機金属リガンドとしては、ビス(アレーン)金属化合物を生ずる、ベンゼンなどの環式アレーン、およびそれらの環置換および環融合の誘導体(ビス(ベンゼン)クロムはその典型例)がある。アリル(−1)イオンや、ブタジエンなどの、その他の非環式π結合リガンドは、適切な可能性がある有機金属化合物を生じ、すべてのそのようなリガンドは、他のπ結合およびδ結合リガンドと組み合わせて、内部に金属−炭素結合が存在する、有機金属化合物の汎用クラスを構成する。橋かけ有機リガンド、および追加の非橋かけリガンドを有する、ならびに金属−金属結合を有する、および有さない、そのような化合物の、さまざまな二量体および低重合体の電気化学的研究は、すべて有用である。
【0052】
コリガンドのうちの1つまたは複数が有機金属リガンドである場合、そのリガンドは、一般に、有機金属リガンドの炭素原子のうちの1つを介して結合される。ただし、複素環式リガンドのためには、結合はその他の原子を介してもよい。好ましい有機金属リガンドには、置換誘導体およびメタロセネオファン(metalloceneophanes)を含む、メタロセンリガンドが含まれる(前述の、CottonおよびWilkinson、1174ページを参照)。例えば、メチルシクロペンタジエニルなどの、メタロセンリガンドの誘導体(ペンタメチルシクロペンタジエニルなどの、複数のメチル基を有するものが好ましい)が、メタロセンの安定性を増加するために使用されてもよい。一部の実施形態では、特にサブユニットまたは部分のレドックス電位を変更するために、メタロセンは、本明細書で概説したように、1つまたは複数の置換基を用いて誘導体化される。
【0053】
本明細書で説明したように、リガンドの任意の組み合わせが使用されてもよい。好ましい組み合わせには、次が含まれる。a)すべてのリガンドが窒素供与リガンド、b)すべてのリガンドが有機金属リガンド。
【0054】
サンドイッチ配位錯体
一部の実施形態では、ReAMはサンドイッチ配位錯体である。「サンドイッチ配位化合物」または「サンドイッチ配位錯体」という用語は、化学式L−Mn−Lの化合物を意味し、ここで、各Lは(以下で説明する)複素環式リガンド、各Mは金属、nは2以上、最も好ましくは2または3であり、そして各金属はリガンドのペアの間に配置され、(金属の酸化状態に依存して)各リガンド内の1つまたは複数のヘテロ原子(通常は、例えば2、3、4、5の、複数のヘテロ原子)に結合される。したがって、サンドイッチ配位化合物は、金属が炭素原子に結合される、フェロセンなどの有機金属化合物ではない。サンドイッチ配位化合物内のリガンドは、一般に、積み重ねられる向きで配置される(すなわち、一般に、相互に対面する向きで、そして軸方向で相互に揃えられており、ただしそれらは、軸のまわりで相互に回転させられても、させられなくてもよい)(例えば、NgおよびJiang (1997) Chemical Society Reviews 26:433〜442(参照により組み入れられるものとする)を参照)。サンドイッチ配位錯体には、「ダブルデッカーサンドイッチ配位化合物」および「トリプルデッカーサンドイッチ配位化合物」が含まれる(ただし、これらに限定されない)。サンドイッチ配位化合物の合成および使用は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書に詳細に記載されており、また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されており、これらの文献のすべて、特に、サンドイッチ錯体と「単一」「大環状」錯体との両方に用途を見出す個々の置換基は、本明細書に組み入れられるものとする。
【0055】
「ダブルデッカーサンドイッチ配位化合物」という用語は、上記のサンドイッチ配位化合物で、nが2、したがって化学式L1−M1−L2を有する場合を意味し、ここで、L1およびLZのぞれぞれは同じであっても異なっていてもよい。例えば、Jiangら (1999) J.Porphyrins Phthalocyanines 3:322〜328、および米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書を参照されたい。また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されている(この文献は、その全体が参照により組み入れられるものとする)。
【0056】
「トリプルデッカーサンドイッチ配位化合物」という用語は、上記のサンドイッチ配位化合物でnが3、したがって化学式L1−M1L2−M2−L3を有する場合を意味し、ここで、L1、L2、およびL3のぞれぞれは同じであっても異なっていてもよく、M1およびM2は同じであっても異なっていてもよい。例えば、Arnoldら (1999) Chemistry Letters 483〜484、および米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書を参照されたい。また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されている(これらの文献は、それらの全体が参照により組み入れられるものとする)。
【0057】
さらに、これらのサンドイッチ化合物のポリマーも有用であり、これは、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書に記載された「ダイアド(dyads)」および「トライアド(triads)」を含む。また、これらの分子の重合は、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されている。同様に、ポリマーは、*** に記載されており、この文献は参照により組み入れられるものとする。
【0058】
非大環状プロリガンドおよび錯体
一般に、非大環状キレート化剤を含むReAMは、金属イオンに結合されて、非大環状キレート化合物を形成する。これは、金属の存在によって、複数のプロリガンドが相互に結合して複数の酸化状態を与えることが可能になるためである。
【0059】
一部の実施形態では、窒素供与プロリガンドが使用される。適切な窒素供与プロリガンドは、当技術分野において周知であり、NH2、NHR、NRR’、ピリジン、ピラジン、イソニコチンアミド、イミダゾール、ビピリジンおよびビピリジンの置換誘導体、テルピリジンおよび置換誘導体、フェナントロリン、特に、1,10−フェナントロリン(phenと略記される)、および4,7−ジメチルフェナントロリンやジピリドル(dipyridol)[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン(dppzと略記される)などの、フェナントロリンの置換誘導体、ジピリドフェナジン、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略記される)、9,10−フェナントレンキノンジイミン(phiと略記される)、1,4,5,8−テトラアザフェナントレン(tapと略記される)、1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン(cyclamと略記される)、ならびにイソシアニドを含む(ただし、これらに限定されない)。融合誘導体を含む、置換誘導体が使用されてもよい。金属イオンを協調的に飽和させず、別のプロリガンドの追加を要求する大環状リガンドは、この目的のためには、非大環状と見なされることに留意すべきである。当業者によって理解されるように、いくつかの「非大環状」リガンドを共有結合させて、協調的に飽和された化合物を形成することは可能であるが、それは環状骨格を欠いている。
【0060】
炭素、酸素、硫黄、および燐を使用する、適切なシグマ供与リガンドは、当技術分野において周知である。例えば、適切なシグマ炭素ドナーは、CottonおよびWilkinson、Advanced Inorganic Chemistry、第5版、John Wiley&Sons、1988(参照により組み入れられるものとする)に見出される(例えば、38ページを参照)。同様に、適切な酸素リガンドは、当技術分野において周知の、クラウンエーテル、水、およびその他を含む。ホスフィンおよび置換ホスフィンも適切である。CottonおよびWilkinsonの38ページを参照されたい。
【0061】
酸素、硫黄、燐、および窒素供与リガンドは、ヘテロ原子が配位原子として働くことを可能にするような方法で結合される。
【0062】
多核のプロリガンドおよび錯体
さらに、一部の実施形態では、多核のリガンドである多座リガンドを利用する。例えば、それらの多座リガンドは、2つ以上の金属イオンを結合することが可能である。それらの多座リガンドは、大環状または非大環状であってもよい。
【0063】
多くの適切なプロリガンドと錯体、および適切な置換基は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、および米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書に概要が記載されており、これらの特許文献のすべて、特に、それらの中に示されている構造およびその説明については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0064】
ポリマー
本発明のメモリ素子は、上記で概説したように、ReAMのポリマーを含んでもよく、例えば、ポルフィリンポリマー(ポルフィリン錯体のポリマーを含む)、大環状錯体ポリマー、2つのレドックス活性サブユニットを含むReAMなどが利用されてもよい。ポリマーは、ホモポリマーまたはヘテロポリマーであってもよく、モノマーReAMの、任意の数の異なる混合物(混合剤)を含んでいてもよい。ここで、「モノマー」は、2つ以上のサブユニット(例えば、サンドイッチ配位化合物、1つまたは複数のフェロセンで置換されたポルフィリン誘導体など)を有するReAMを含んでいてもよい。ReAMポリマーは、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第* 号明細書、米国特許出願第 号明細書に記載されており、この文献は、そのすべてが参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0065】
電極上のポリマーの構成は、さまざまであってもよい。一部の実施形態では、ポリマーはZ次元(図14Aに示すように、基質表面に垂直な方向)において線状であり、任意選択で架橋されていてもよい(図14B)。Z次元における枝分かれポリマーも企図されており、同様に、任意選択で架橋されていてもよい。X−Y次元での線状ポリマー(図14C)、あるいは、枝分かれ、および/または架橋ポリマーも含まれる。さらに、ポリマーの混合物が、これらの任意の構成内に使用されてもよい。
【0066】
一部の実施形態では、ポリマーまたはモノマーのいずれであっても、ReAMの向きおよび間隔を制御する、(リンカーの選択を含む)構成が好ましい。これは、一般に、ReAMのより高い密度が実現され、また、電子移動および電子移動速度が向上するためである。リンカーの長さは、電荷の速度と保持に寄与する場合がある。
【0067】
一般に、重合実施形態は置換基の使用に依存し、その結果として、電極表面への結合、および追加のReAMへの重合の両方がもたらされる。Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に記載されているように、これらのReAMの合成には、表面への「現場」重合と、重合に続く、1つまたは複数の結合部分を使用した表面への付加との、2つの一般的な方法がある。これらについては、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書に詳細に記載されており、この文献のすべて、および特に、「1ステップ」および「2ステップ」の重合/結合ステップに関する点は、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0068】
置換基
本明細書に記載されている化合物の多くは、本明細書で一般に「R」として示される、置換基を利用する。適切なR基には、水素、アルキル、アルコール、アリール、アミノ、アミド、ニトロ、エーテル、エステル、アルデヒド、スルホニル、シリコン部分、ハロゲン、シアノ、アシル、硫黄含有部分、燐含有部分、アミド、イミド、カルバモイル、リンカー、結合部分、およびその他のReAM(例えば、サブユニット)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。位置によっては、2つの置換基RおよびR’が許容されてもよいことに留意すべきである。その場合、RおよびR’基は同じであっても異なっていてもよく、一方の置換基は水素であることが一般に好ましい。
【0069】
一部の実施形態では、R基は、米国の図面および本文で定義され図示されているものである。いくつかの適切なプロリガンドと錯体、および適切な置換基は、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、および米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書に概要が記載されており、これらの特許文献のすべて、特に、それらの中に示されている構造およびその説明については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとし、これにより、置換基が内部に示されている特定の大環状分子、およびさらなる置換誘導体の両方について、置換基実施形態として本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0070】
「アルキル基」または文法的同義語は、本明細書では、直鎖および分枝鎖アルキル基を意味し、好ましくは直鎖アルキル基を意味する。分枝の場合は、1つまたは複数の位置において分枝されていてもよく、そして指定しない限りは、任意の位置において分枝されていてもよい。アルキル基の範囲は、約1〜約30の炭素原子(C1 C30)であってもよく、好ましい実施形態では約1〜約20の炭素原子(C1 C20)が使用され、約C1から約C12ないしは約C15までが好ましく、C1〜C5が特に好ましい。アルキル基の定義にさらに含まれるのは、C5およびC6環などのシクロアルキル基、ならびに、窒素、酸素、硫黄、または燐を有する複素環である。アルキルはさらにヘテロアルキル(硫黄、酸素、窒素、およびシリコンのヘテロ原子が好ましい)も含む。
【0071】
「アリール基」または文法的同義語は、本明細書では、モノおよびマルチ環系を含む芳香族アリール環、ならびに、ピリジン、フラン、チオフェン、ピロール、インドール、およびプリンなどの、複素環芳香族の環および環系を意味する。
【0072】
「アルキル」および「アリール」の定義には、置換アルキルおよびアリール基が含まれる。すなわち、アルキルおよびアリール基は、本明細書で定義される1つまたは複数の「R」置換基を使用して置き換えられてもよい。例えば、フェニル基は、1つまたは複数のR基を使用して置き換えられた置換フェニル基であってもよい。好ましいアルキル基としては、アルキルチオ、ペルフルオロアルキル、アルキルアミノ、およびアルコキシがある。
【0073】
「アミノ基」または文法的同義語は、本明細書では、−NH2、−NHR、および−NR2基を意味し、Rは本明細書で定義されるものである。
【0074】
「ニトロ基」は、本明細書では、−NO2基を意味する。
【0075】
「硫黄含有部分」は、本明細書では、硫黄原子を含む化合物を意味し、これには、チア−、チオ−、およびスルホ−化合物、チオール(−SHおよび−SR)、ならびに、スルフィド(−RSR−)(スルホキシルおよびスルホニルを含む)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。「燐含有部分」は、本明細書では、燐を含む化合物を意味し、これには、ホスフィンおよびホスフェートが含まれる(ただし、これらに限定されない)。「シリコン含有部分」は、本明細書では、シリコンを含む化合物を意味する。
【0076】
「エーテル」は、本明細書では、−O−R基を意味する。好ましいエーテルとしては、アルコキシ基があり、−O−(CH2)2CH3および−O−(CH2)4CH3が好ましい。
【0077】
「エステル」は、本明細書では、−COOR基を意味する。
【0078】
「ハロゲン」は、本明細書では、臭素、ヨウ素、塩素、またはフッ素を意味する。好ましい置換アルキルは、CF3などの、部分的に、または完全にハロゲン化されたアルキルである。
【0079】
「アルデヒド」は、本明細書では、−RCOH基を意味する。
【0080】
「アルコール」は、本明細書では、−OH基、およびアルキルアルコール−ROHを意味する。
【0081】
「アミド」は、本明細書では、−RCONH−またはRCONR−基を意味する。
【0082】
「エチレングリコール」は、本明細書では、−(O−CH2−CH2)n−基を意味するが、エチレン基の各炭素原子は、上記で説明したRを使用して、1重または2重に置換されていてもよい(すなわち、−(O−CR2−CR2)n−)。酸素の代わりに他のヘテロ原子を使用したエチレングリコール誘導体(すなわち、−(N−CH2−CH2)n−または−(S−CH2−CH2)n−、あるいは置換基を有するもの)も好ましい。
【0083】
結合部分
本明細書に示すように、本発明のReAMを電極に結合するために、結合部分(本明細書で「Z」として示される)が使用される。「結合基を有する分子」には、結合基が分子の固有成分である分子、結合基を追加するために誘導体化された分子、結合基を含むリンカーを有するように誘導体化された分子が含まれる。
【0084】
結合部分の性質は、電極基質の組成に依存する。一般に、結合部分は、リンカー(存在する場合)とともに、電極への記憶分子の電子的結合を可能にする。「電子的結合」は、この文脈では、記憶媒体/分子から電極に、または電極から記憶媒体/分子に電子が移動するような、そしてそれにより記憶媒体/分子の酸化状態を変えるような、記憶分子と電極との間の会合を意味する。電子的結合には、記憶媒体/分子と電極との間の直接的な共有結合、(例えば、リンカーを介した)間接的な共有結合、記憶媒体/分子と電極との間の直接的または間接的なイオン結合、またはその他の結合(例えば、疎水結合)が含まれてもよい。さらに、実際の結合は必要とされなくてもよく、記憶媒体/分子が電極表面と単に接触されてもよい。また、記憶媒体/分子と電極との間の電子トンネル効果が可能になるほど、電極が記憶媒体/分子に十分近い場合は、電極と記憶媒体/分子との間の接触は必ずしも必要ではない。
【0085】
一般に、適切な結合部分には、カルボン酸、アルコール、チオール(S−アセチルチオールを含む)、セレノール、テルロール、ホスホン酸、ホスホノチオアート、アミン、ニトリル、アリールおよびアルキル基(ヨードアリールやブロモメチルなどの、置換アリールおよびアルキル基を含む)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書(この目的のために本明細書に参照により組み入れられるものとする)には、適切な結合部分およびリンカーの(両方について独立な、および「L−Z」基としての)広範囲にわたるリストが記載されている(パラグラフ107〜113を参照)。結合部分は、結果として、単一の基(例えば、「単足性(monopodal)」結合)または複数の基(例えば、「多足性(polypodal)」結合)を介して結合された、ReAM(またはReAMに結合されたリンカー)をもたらす場合があることに留意すべきである。一部の実施形態では、3足結合などの多足性結合により、結果としてReAM(ReAMポリマーを含む)の向きがより固定され、それによって、より高い密度と、よりクリーンな信号とがもたらされる。チオール、カルボン酸、アルコール、またはホスホン酸を利用する多足性(3足を含む)結合部分は、特に結合力が強い。参照された出願で概説されているように、一部の実施形態では、トリフェニルメタンまたはテトラフェニルメタンユニットに基づいた結合部分を利用し、ここで、フェニルユニットのうちの2つまたは3つは、結合のための適切な官能基(例えば、Z−アセチルチオールなどのチオール、またはジヒドロキシルホスホリル基)を使用して置換される。
【0086】
リンカー
リンカーは、本発明のReAMに結合部分を結合するため、ReAMのレドックス活性サブユニットをともに結合するため、およびReAMの重合においてなど、本発明のさまざまな構成内で使用される。リンカーは、低い電圧および小さなセルサイズにおいて、高速な書き込みおよび/または消去を実現するために使用され、本発明で使用するためのリンカーのスケーリングは最適化することが可能である。最適なリンカーのサイズは、理論的に計算可能である(米国特許出願第60/473,782号明細書(本明細書に明示的に組み入れられるものとする)を参照)。あるいは、リンカー(および実際には、さらに、ReAMの適合性)の評価は、本明細書および引用文献に記載されているように、表面にReAMを単に結合させることによって経験的に行われてもよく、また、ボルタンメトリーを実行して、結合されたポリマーの電気化学的特性を評価することによって行われてもよい。
【0087】
電極
本発明のReAM記憶分子は、電極に電気的に結合される。「電極」という用語は、記憶分子へ、および/または記憶分子から、電荷(例えば、電子)を輸送することが可能な任意の媒体を意味する。好ましい電極は、III族元素(ドーピングされた、および酸化されたIII族元素を含む)、IV族元素(ドーピングされた、および酸化されたIV族元素を含む)、V族元素(ドーピングされた、および酸化されたV族元素を含む)、ならびに遷移金属(遷移金属酸化物および遷移金属窒化物を含む)を、これらに限定されずに含む、金属および導電性有機分子である。電極は、実質的に、2次元または3次元形状(例えば、個別の線、パッド、平面、球、円柱など)に製造されてもよい。
【0088】
「固定電極」という用語は、電極が本質的に安定しており、記憶媒体を基準にして不動であるという事実を反映することを意図している。すなわち、電極と記憶媒体とは、相互に本質的に固定された幾何学的関係に配置される。もちろん、温度変化に伴う媒体の拡張および収縮によって、あるいは、電極および/または記憶媒体を構成している分子の配座の変化によって、関係はある程度変化することが理解される。それにもかかわらず、全体的な空間配置は、本質的に不変のままである。好ましい実施形態では、この用語は、電極が、移動可能な「プローブ」(例えば、書き込みまたは記録「ヘッド」、原子間力顕微鏡(AFM)チップ、走査トンネル顕微鏡(STM)チップなど)であるシステムを除外することを意図している。
【0089】
「作用電極」という用語は、記憶媒体および/または記憶分子の状態を設定するため、または読み出すために使用される、1つまたは複数の電極を指すために使用される。
【0090】
「基準電極」という用語は、作用電極から記録される測定値のための基準(例えば、特定の基準電圧)を提供する、1つまたは複数の電極を指すために使用される。好ましい実施形態では、本発明のメモリデバイス内の基準電極は同じ電位であるが、一部の実施形態では、そうである必要はない。
【0091】
電解質
本発明の一部の実施形態では、以下で詳述するように、電解質(誘電体)構成要素が使用される。一般に、電気化学的反応のための電解質を保持するために、電解質ポリマーが使用される。セラミック、金属、ゲル、流体などを含む、多種多様な適切な電解質が周知である。ナフィオンは特に有用な例であり、約1nm〜1000nmの、好ましくは約100nm〜約500nmの、より好ましくは約10nm〜約100nmの、そして最も好ましくは約100ナノメートルの厚さの、薄層内に適用されてもよい。
【0092】
記憶デバイスの製造およびキャラクタリゼーション
本発明のメモリデバイスは、当業者に周知の標準的な方法を使用して製造されてもよい。好ましい実施形態では、標準的な周知の方法により、電極層(1つまたは複数)が適切な基質(例えば、シリカ、ガラス、プラスチック、セラミックなど)に塗布される(例えば、Rai−Choudhury著(1997)「The Handbook of Microlithography, Micromachining, and Microfabrication」、SPIE Optical Engineering Press、BardおよびFaulkner著(1997)「Fundamentals of Microfabrication」を参照)。さまざまな技術が、以下に記載されており、また、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,728,129号明細書、米国特許第6,451,942号明細書、米国特許第6,777,516号明細書、米国特許第6,381,169号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、米国特許第6,657,884号明細書、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,484,394号明細書、ならびに、米国特許出願第10/040,059号明細書、米国特許出願第10/682,868号明細書、米国特許出願第10/445,977号明細書、米国特許出願第10/834,630号明細書、米国特許出願第10/135,220号明細書、米国特許出願第10/723,315号明細書、米国特許出願第10/456,321号明細書、米国特許出願第10/376,865号明細書、ならびに、Regents of the University of Californiaに譲渡された、Bocian、Liu、およびLindsayによる、Procedure for Preparing Redox−Active Polymers on Surfacesと題した米国特許出願第 号明細書にも記載されており、これらの文献のすべて、特に、その中に概説されている製造技術については、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。
【0093】
アーキテクチャ
本明細書で概説するように、ReAMは、通常は電気化学セルの構成要素として、記憶媒体内に結合される。「記憶媒体」という用語は、2つ以上の記憶分子を含む組成物を意味する。記憶媒体は、1つの化学種のみの記憶分子を含んでもよく、または、2つ以上の異なる化学種の記憶分子を含んでもよい。好ましい実施形態では、「記憶媒体」という用語は、記憶分子の集まりを意味する。好ましい記憶媒体は、複数(少なくとも2つ)の異なる識別可能な(好ましくは非中性の)酸化状態を有する。複数の異なる識別可能な酸化状態は、異なる化学種の記憶分子の組み合わせによって生成されてもよく、それぞれの化学種は複数の異なる酸化状態に寄与してもよく、それぞれの化学種は1つの非中性酸化状態を有してもよい。あるいは、またはさらに、記憶媒体は、複数の非中性酸化状態を有する、1つまたは複数の化学種の記憶分子を含んでもよい。記憶媒体は、主として1つの化学種の記憶分子を含んでもよく、または、いくつかの異なる記憶分子を含んでもよい。記憶媒体は、さらに、記憶分子以外の分子も含んでもよい(例えば、化学的安定性を提供するため、適切な機械的特性を提供するため、電荷の漏れを防止するため、など)。
【0094】
「電気化学セル」という用語は、通常、基準電極と、作用電極と、レドックス活性分子(例えば、記憶媒体)と、必要な場合は、電極間の、および/または、電極と媒体との間の導電性を提供するためのいくつかの手段(例えば、誘電体または導電性電解質)とを意味する。一部の実施形態では、誘電体は記憶媒体の構成要素である。
【0095】
「メモリ素子」、「メモリセル」、または「記憶セル」という用語は、情報の記憶に使用可能な電気化学セルを意味する。好ましい「記憶セル」は、少なくとも1つの電極によって、そして好ましくは2つの電極(例えば、作用電極と基準電極)によってアドレス指定される、記憶媒体の個別の領域である。記憶セルは、個々にアドレス指定されてもよく(例えば、固有の電極が各メモリ素子に関連付けられる)、または、異なるメモリ素子の酸化状態が識別可能な場合は特に、複数のメモリ素子が単一の電極によってアドレス指定されてもよい。メモリ素子は、任意選択で、誘電体(例えば、対イオンが含浸された誘電体)を含んでもよい。
【0096】
「記憶位置」という用語は、記憶媒体が配置される個別の領域(domain)または区域(area)を意味する。1つまたは複数の電極を使用してアドレス指定される場合、記憶位置は、記憶セルを形成してもよい。ただし、2つの記憶位置が同じ記憶媒体を含み、それにより、それらが本質的に同じ酸化状態を有する場合、かつ、両方の記憶位置が共通にアドレス指定される場合、それらは1つの機能的記憶セルを形成してもよい。
【0097】
特定の素子の「アドレス指定」は、そのメモリ素子の酸化状態(1つまたは複数)を電極を使用して具体的に判定することが可能になるように、そのメモリ素子を電極と関連付け(例えば、電気的に結合)することを意味する。
【0098】
「読み出し」または「問い合わせ(interrogate)」という用語は、1つまたは複数の分子(例えば、記憶媒体を構成する分子)の酸化状態(1つまたは複数)の判定を意味する。
【0099】
「リフレッシュ」という用語は、記憶分子または記憶媒体に関して使用される場合、記憶分子または記憶媒体の酸化状態を所定の状態(例えば、読み出し直前の、記憶分子または記憶媒体の酸化状態)に再設定するために、その記憶分子または記憶媒体に電圧を印加することを意味する。
【0100】
「E1/2」という用語は、E=E°+(RT/nF)ln(Dox/Dred)によって定義される、レドックスプロセスの形式的電位(E°)の実際的な定義を意味し、ここで、Rはガス定数、TはK(ケルビン)単位での温度、nはプロセスに関与する電子の数、Fはファラデー定数(96,485クーロン/モル)、Doxは酸化される化学種の拡散定数、Dredは還元される化学種の拡散定数である。
【0101】
「電圧源」は、ターゲット(例えば、電極)に電圧を印加することが可能な任意のソース(例えば、分子、デバイス、回路など)である。
【0102】
「集積回路の出力」という語句は、1つまたは複数の集積回路によって、および/または、集積回路の1つまたは複数の構成要素によって生成される電圧または信号を意味する。
【0103】
「ボルタンメトリック装置」は、電圧の印加または電圧の変化の結果として電気化学セル内に生成される電流を、測定することが可能な装置である。
【0104】
「アンペロメトリック装置」は、特定の電位(「電圧」)をある期間印加した結果として電気化学セル内に生成される電流を、測定することが可能な装置である。
【0105】
「ポテンシオメトリック装置」は、電気化学セル内のレドックス分子の平衡濃度の差によってもたらされる、インタフェース間の電位を測定することが可能な装置である。
【0106】
「クーロメトリック装置」は、電気化学セルへの電位場(「電圧」)の印加中に生成される正味荷電を測定することが可能な装置である。
【0107】
「インピーダンススペクトロメータ」は、電気化学セルの全体的なインピーダンスを判定することが可能な装置である。
【0108】
「正弦波電圧電流計(sinusoidal voltammeter)」は、電気化学セルの周波数領域特性を判定することが可能なボルタンメトリック装置である。
【0109】
分子メモリの使用により利益を得る、多種多様なデバイスおよびシステムアーキテクチャが存在する。
【0110】
**TT
図1は、分子メモリアレイ101を組み込んだメモリデバイス100を示す。分子メモリアレイ101は、2N行および2M列のアレイを含む。2N行のそれぞれはワード線107に関連付けられるのに対して、2M列のそれぞれはビット線109に関連付けられる。一般的な適用例では、ワード線107およびビット線109は相互に交わる。分子メモリデバイス300(図3に示す)が、それぞれの行と列との交点に配置される。分子メモリアレイ101は、特定の適用例の必要を満たす任意の方法で配列された、任意の数の分子メモリデバイス300を含んでもよい。
【0111】
メモリデバイス100は、行アドレスデコーダ103内にNビットの行アドレスを、そして列アドレスデコーダ105内にMビットの列アドレスを受信することによって動作する。行アドレスデコーダ103は、1本のワード線107上に信号を生成する。ワード線107は、ワード線107上への高電流信号を駆動する、ワード線ドライバ回路115を含んでもよい。ワード線107は、チップ表面のほとんどにわたって延びる、長くて細い導体となる傾向があるため、ワード線信号を駆動するには、かなりの電流および大電力のスイッチが必要とされる。その結果として、ラインドライバ回路115は、多くの場合、電源117を、他のロジックのための動作電力を提供する電源回路(図示せず)に加えて備える。ワード線ドライバ115は、したがって、大きな構成要素を含む傾向があり、そして、大電流の高速スイッチングは、ノイズを生成し、電源とパワーレギュレータの限界を圧迫し、分離構造を圧迫する傾向がある。
【0112】
従来のメモリアレイには、行(ワード線)よりも多くの列(ビット線)があり、その理由は、リフレッシュ動作の間、各ワード線が、そのワード線に結合されたすべての記憶素子をリフレッシュするためにアクティブにされるためである。したがって、行の数がより少なければ、すべての行をリフレッシュするために要する時間はより短くなる。本発明の1つの特徴は、分子メモリ素子300は、数十、数百、数千の程度の秒数、または実質的に無制限の秒数という、従来のキャパシタよりも大幅に長いデータ保持を示すように構成可能であるということである。したがって、リフレッシュサイクルを、甚だしく少ない頻度で実行すること、または、完全に省略することも可能である。したがって、メモリアレイ101の物理的レイアウトに実際に影響する、リフレッシュ要件を緩和することができ、さまざまな幾何学的配置のアレイを実装することができる。例えば、メモリアレイ101は、より多くのワード線を使用して容易に製造することができ、それにより各ワード線はより短くなる。その結果として、各ワード線を高速で駆動するために必要な電流はより少なくなるため、ワード線ドライバ回路115は、より小さくするか、またはなくすことができる。あるいは、またはさらに、より短いワード線はより高速で駆動されることが可能なため、読み出し/書き込みアクセス時間が向上する。さらに別の代替として、各メモリ位置内に複数の状態情報を記憶する機構を提供するために、メモリ位置の各行が複数のワード線を備えてもよい。
【0113】
センス増幅器111が、各ビット線109に結合され、ビット線109上の信号(そのビット線に結合されたメモリ素子300の状態を示す)を検出し、その状態を適切なロジックレベル信号に増幅するために動作する。一実施形態では、センス増幅器111は、おおむね従来の設計を使用して実装されてもよく、その理由は、そのような従来の設計は、分子メモリ素子300からの信号を検出して増幅するために動作するためである。あるいは、従来のキャパシタとは異なり、一部の分子記憶素子は、それらの状態を示す非常に明確な信号を提供する。それらの明確な信号により、従来のセンス増幅器ロジックの必要は減少する可能性があり、その理由は、分子記憶デバイスからの状態信号は、従来のキャパシタ内に記憶された信号で可能なよりも、より容易かつ確実に、読み出し/書き込みロジック113のバッファ内にラッチされることが可能なためである。すなわち、本発明は、センス増幅器の必要をなくすほど十分に大きな信号を生成するデバイスを提供することが可能である。
【0114】
読み出し/書き込みロジック113は、メモリデバイス100を読み出しまたは書き込み状態にするための回路を含む。読み出し状態では、分子アレイ101からのデータがビット線109上に置かれ(センス増幅器111の動作あり、またはなし)、読み出し/書き込みロジック113内のバッファ/ラッチによって取り込まれる。列アドレスデコーダ105は、特定の読み出し動作において、いずれのビット線109がアクティブであるかを選択する。書き込み動作では、読み出し/書き込みロジック113は、選択されたビット線109上にデータ信号を駆動し、それにより、ワード線がアクティブにされた場合に、そのデータが、アドレス指定されたメモリ素子(1つまたは複数)300内にすでに記憶されている任意のデータを上書きするようになる。
【0115】
リフレッシュ動作は、読み出し動作におおむね類似しているが、ただし、ワード線107は、外部から適用されたアドレスによってではなく、リフレッシュ回路(図示せず)によって駆動される。リフレッシュ動作では、センス増幅器111(使用される場合)が、メモリ素子300の現在の状態を示す信号レベルにビット線109を駆動し、その値が自動的にメモリ素子300に書き戻される。読み出し動作とは異なり、ビット線109の状態は、リフレッシュの間、読み出し/書き込みロジック113には結合されない。この動作が必要とされるのは、使用される分子の電荷保持時間が、使用されるデバイスの動作寿命(例えば、フラッシュメモリの場合はおよそ10年)よりも少ない場合のみである。
【0116】
図2は、中央処理装置201および分子メモリ203を含む例示的組み込みシステム200を示す。メモリバス205は、アドレス、データ、および制御信号を交換するために、CPU201と分子メモリデバイス203とを結合する。任意選択で、組み込みシステム200は、さらに、メモリバス205に結合された従来のメモリ207も含んでもよい。従来のメモリ207は、ランダムアクセスメモリ(例えば、DRAM、SRAM、SDRAMなど)、または読み出し専用メモリ(例えば、ROM、EPROM、EEPROMなど)を含んでもよい。これらのその他のタイプのメモリは、分子メモリデバイス203のデータのキャッシング、オペレーティングシステムまたはBIOSファイルの記憶などのために有用な可能性がある。組み込みシステム200は、CPU201が外部の装置およびシステムと通信することを可能にする、1つまたは複数の入力/出力(I/O)インタフェース209を含んでもよい。I/Oインタフェース209は、シリアルポート、パラレルポート、高周波ポート、光ポート、赤外線ポートなどによって実装されてもよい。さらに、インタフェース209は、パケットをベースとするプロトコルを含む、任意の利用可能なプロトコルを使用して通信を行うように構成されてもよい。
【0117】
図3は、本発明の実施形態によるメモリ素子300を示す。メモリ素子300は、広く使用されている1トランジスタ1キャパシタ(1T1C)メモリ素子設計に類似しているが、ただし、分子記憶デバイス301が使用される点が異なる。特定の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板上に、続いて形成される積層構造として実装される。他の実施形態では、分子記憶デバイスは、能動素子が内部に形成された半導体基板内の、マイクロメートルまたはナノメートルのサイズの穴として実装される。分子記憶デバイスは、半導体基板および半導体基板内に以前に形成された能動素子と互換性のある加工技術を使用して製造される。分子記憶デバイスは、例えば、電解質(例えば、セラミックまたは固体電解質)によって、あるいは、金属または半導体構造との直接接触によって分離された2つ以上の電極表面を有する電気化学セルを含む。記憶分子(例えば、情報を記憶するために使用可能な1つまたは複数の酸化状態を有する分子)は、電気化学セル内の電極表面に結合される。記憶分子の例としては、モノマーポルフィリン、フェロセン誘導体化ポルフィリン、三量体ポルフィリン、ポルフィリンポリマー、またはトリプルデッカーサンドイッチポルフィリンが、他の化合物の中でも特に挙げられる。適切な記憶分子の例は、以下でさらに詳しく説明する。
【0118】
ワード線がアクティブにされると、アクセストランジスタ303が導電状態にされ、それにより、分子記憶デバイス301が、それに関連付けられたビット線に結合される。多くの場合、分子記憶301によって生成される信号は、従来の論理デバイスを駆動するには不十分である。センス増幅器305は、分子記憶301によって生成された信号を検出し、その信号を適切なロジックレベル(すなわち、他のシステムロジックと互換性のある信号)に増幅する。例えば、ポルフィリン記憶分子を使用して、+0.55V、+0.48V、+0.39V、+0.17V、−0.05V、および−0.18Vにおける安定した酸化状態を有する記憶デバイス301を構築することが可能である。特定の実施形態では、より多くの、またはより少ない、安定した酸化状態が提供されてもよい。ビット線109に適切な電圧を印加することにより、そして、適切なワード線107をアクティブにしている間に、記憶分子は、これらの酸化状態のうちの選択された1つに置かれてもよい。記憶デバイス301は、望ましい酸化状態に置かれたら、特定の適用例において、数十、数百、数千、または無制限の秒数にわたってその酸化状態に留まる。
【0119】
読み出しの間は、ワード線107がアクティブにされ、記憶デバイス301は、その酸化状態を示す電圧にビット線を駆動する。これは、キャパシタが同じ動作を実行する方法と非常に類似した方法で行われる。ゲートトランジスタが開かれている場合、分子記憶デバイス(MSD)はビット線に接続される。例えば、分子が酸化状態に書き込まれており、(MSDの最上部金属、または対向電極を基準にした)分子の酸化電位よりも負の値にビット線がプリチャージされていて、その分子が酸化状態にある場合は、分子からビット線に電流が流れ(そして、ビット線から分子に電子が流れ)、トランジスタが閉じられると分子は還元される。この結果として、ビット線上に電荷が蓄積され、チャージの大きさは、MSD上の分子の数および各分子の酸化状態によって決定される(Q=nFN、ファラデーの法則)。そのチャージの出現は、ビット線上の電圧を変化させ(V=Q/C)、その電圧変化は、当技術分野において好都合に使用されている、電圧センス増幅器によって識別されてもよい。
【0120】
読み出し動作中のビット線電圧は、寄生効果および読み出し回路の挿入によって、酸化状態電圧から変化する場合があるが、回路は、安定した酸化状態が明確に読み出されることを可能にするように準備される。ビット線電圧は、外部ロジックによって直接読み出されてもよく、または、センス増幅器305によって、従来のより一般的なロジックレベルに増幅されてもよい。特定の実装においては、センス増幅器305は、複数の基準点を含んでもよく(例えば、マルチステートセンス増幅器)、それにより、安定した多値信号をビット線上に生成してもよい。あるいは、センス増幅器305は、特定のメモリ素子300から読み出された多値電圧信号に応答して、複数のロジックレベルバイナリ出力を生成する、アナログ−デジタル機能を含んでもよい。
【0121】
図4は、本発明によるメモリの動作中の、読み出し動作の例示的タイミング図を示す。図4のタイミング図は、従来のDRAMの動作に類似した、実装の動作を示すための例として提供されている。他の信号フォーマットおよび制御プロトコルが周知であり、本発明は、それらの他のフォーマットに容易に適合される。図4に示すように、行および列アドレスは2つのフェーズ内で通信される。行アドレスがアドレスバス上に置かれ、行アドレスストローブ(RAS)が、例えば読み出し/書き込みロジック113によって生成される。時間t1とt2との間でRAS信号が遷移すると、(図1に示す)行アドレスデコーダ103内に行アドレスがラッチされ、ワード線107が選択される。RASは、t7〜t8における遷移まで、アクティブ状態に保たれる。ワード線のアクティブ化に応答して、センス増幅器111が動作して、ビット線を適切なロジックレベル信号に駆動する。
【0122】
時間t3において、書き込み許可(WE)ストローブが非アクティブ状態に遷移し、t10における書き込みサイクルの終わりまでその状態に留まる。WEの遷移により、分子アレイへの書き込みが防止される。次に、列アドレスがアドレスバス上に提示される。列アドレスが安定すると、時間t4〜t5において列アドレスストローブ(CAS)が遷移し、(図1に示す)列アドレスデコーダ105による列アドレスの取り込みおよびデコードが開始される。時間t5の後は、ビット線109、またはビット線109の組が選択され、時間t8〜t9におけるCASの遷移によってCAS信号が除去されるまで、選択されたままになる。出力可(OE)信号が遷移して、選択されたビット線109がデータI/Oポートに結合される。時間t6において、有効なデータがデータ線上に現れる。有効なデータは、RASおよびCASおよびWE信号の非アクティブ状態への遷移の間中、存続する。
【0123】
特定の例では、分子記憶デバイス301は、電解質を通して結合された基準電極と作用電極とを有する、電気化学セルとして構成される。図5は、分子記憶デバイスを構築するための積層構成を示すのに対して、図6は、トレンチまたは「モルホール(molehole)」実装を示す。図5の積層実装では、構造全体が、基礎をなす半導体デバイスの電極の上に、電気的に結合されて構築されてもよい。例えば、アクセストランジスタ303のソース/ドレイン領域との電気的接点を作成するために、導電性バイアまたはプラグ501が、半導体デバイスのパッシベーションおよび平坦化層を通して下に到達してもよい。導電性プラグ501は、金属ボンドパッドに、または半導体デバイスのアクティブ領域に結合されてもよい。特定の例では、プラグ501は、タングステンを含むが、電気的接続性を実装するために利用可能な任意の金属、合金、ケイ化物、またはその他の材料を使用して製造されてもよい。
【0124】
作用電極502は、例えば、シリコン、銅、アルミニウム、金、銀、またはその他の利用可能な導体を含む。作用電極は金属であってもよいが、金属酸化物、半導体、またはドーピングされた半導体であってもよい。その他の適切な材料としては、Ti、Ta、TiO2、TaO2、SiO2、W、WOXなどがある。作用電極502は、好ましくは、集積回路のためのボンドパッドおよび相互接続などの、その他の構造と同時に形成される。プラグ501と電極503とを形成するためのプロセスおよび材料は、半導体加工業界において広く入手可能である。多くの集積回路プロセスにおいて、金属パッドには、作用電極502を保護および/または不動態化するために役立つ、絶縁層505がコーティングされる。絶縁層505は、蒸着酸化物、窒化ケイ素などとして実装されてもよい。層505は、好ましくは集積回路のボンディングパッドの部分を露出するために使用されるのと同じ操作で、作用電極502の部分を露出するためにパターン形成される。作用電極502の露出部分は、分子記憶デバイス301のアクティブ領域を定義する。本発明は、業界標準のプロセスフローを使用した、酸化物505の形成およびパターン形成を通して製造されてもよいことが企図されている。
【0125】
記憶分子の薄層507は、作用電極502のアクティブ領域上に形成される。この層の厚さは、特定の例では、0.1〜100ナノメートルの範囲であってもよい。層507は、自己組織化単分子膜(SAM)として実装するのが望ましい。分子のアクティブ領域は、導電性材料の上に層505をパターン形成することにより、リソグラフィで定義される。誘導体化されたポルフィリンの広範なライブラリ(約250の化合物)が、層507での使用に適切な、金属電極への結合のための記憶分子として利用可能である。これらの化合物は、次の5つの異なるアーキテクチャのうちのいずれを含んでいてもよい。(1)さまざまなタイプのテザー(tether)を有するモノマーポルフィリン、(2)フェロセン誘導体化ポルフィリン、(3)翼の形をした三量体ポルフィリン、(4)ポルフィリンポリマー、(5)トリプルデッカーサンドイッチポルフィリンおよびそのポリマー。これらのポルフィリンアーキテクチャのすべては、優れた品質の自己組織化単分子膜(SAM)を形成することが見出された。分子が結合されたら、金属、金属酸化物、または導電性電解質の薄い(例えば、50〜200ナノメートル)層が塗布されて、電解質509が形成される。電解質509は、酸化−還元セルのための電解質である。金属層511が、気化、スパッタリング、またはその他の蒸着技術によって、電解質層509の上に蒸着される。金属層511は、酸化−還元セルの基準電極または対向電極を形成し、銅、銀、白金などのような、任意の正常に動作する電気化学的対向電極材料を含む。特定の適用例における金属の選択は、経済的側面と、すでに開発されている半導体プロセスとによって決定される。
【0126】
動作においては、記憶分子507が、作用電極502に取り付けられ、電気的に結合される。電解質509は、デバイス内で使用される記憶分子およびその他の導体および絶縁体と化学的に共存できる、液体、ジェル、または固体であってもよい。電解質509は、作用電極と基準電極との間の電荷の輸送を可能にする。任意の所与の酸化状態と、記憶分子の選択とに対して、電気化学セルは、半波電位(E1/2)または平衡電位と呼ばれる特有の電気化学的電位を示す。所与の分子記憶デバイス301は、選択される特定の記憶分子に依存して、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の別個のE1/2を有する。これにより、後の製造状態において、デバイスのための特定の記憶分子を選択することによってカスタマイズすることが可能な、読み出し/書き込みロジック、アドレスデコーダ、相互接続回路などを含む単一のインフラストラクチャを製造する可能性が提供される。選択された記憶分子の特定の特性を補償するために、電子回路のいくらかの調整が必要とされるが、製造上の利点は明白である。
【0127】
図5に示す積層アーキテクチャの1つの利点は、キャパシタの底面が電極表面を形成し、記憶分子はこの表面上に単分子層を形成できるということである。また、電解質層509は記憶分子をコーティングして、本質的にそれらを封じ込め、後続のステップからそれらを保護する。その上、分子層上に金属が直接蒸着されることは決してなく、それにより、加工中または加工後に記憶分子を金属汚染にさらすアーキテクチャに関連する、損傷およびその他の問題が防止される。さらに、図5の構造は、基礎をなす半導体ベースのマイクロエレクトロニクスデバイスの製造後に、金属、絶縁体などの後続の層が追加され、その上、短絡も防止するという点で、3次元アーキテクチャを実装するための容易な方法を提供する。
【0128】
図6は、「モルホール」構造とも呼ばれる、トレンチ構造内に電気化学セルが形成された記憶デバイス301の実装を示す。トレンチは、上に重なる誘電体層605(例えば、酸化物)および対向電極611を通過して、基板601内にまで達する。トレンチの壁は、露出されており、記憶分子607が結合されることが可能な表面接点を提供する。記憶分子607および電解質609が追加され、構造は次に、アレイを封止するためのポリマー613によって覆われる。
【0129】
各ワード線107は、行内のメモリセルの対向電極611に接続されるのに対して、各ビット線は、列内のメモリセルのドレインに接続される。グラウンド電圧は、選択された行内のメモリセルのソース領域に接続される。(図1に示す)行アドレスデコーダ103は、選択された行内のすべてのアクセストランジスタ303をアクティブにし、それによって、その行内の各記憶デバイス301を、それらの各ビット線に結合する。記憶分子607の完全性が維持されるように、ワード線107およびビット線109は、低温酸化物蒸着および物質化を使用して製造される。これらの構造を形成するために、二酸化ケイ素および金属の室温蒸着を使用することが好ましい場合がある。既存の分子は摂氏400°を超える温度に耐えることができるため、後続のプロセスでは広範な温度が許容される。
【0130】
図6に示すトレンチアーキテクチャによって、分子層上に金属が蒸着される可能性が回避され、それにより、他の提示されたアーキテクチャに関連する損傷およびその他の問題が防止される。トレンチの内面は電極表面を形成し、円柱の内面上に分子がSAMを形成し、したがって、トレンチの深さを増加することによって、分子の数を増加することが可能である。金属の各層の高さはトレンチの高さを決定し、それにより、2つの端子の有効面積の容易な調整が可能となる。垂直次元が使用されるため、より多くの分子(厚さ200nmの電極による単純なクロスバーの場合の30倍)が、書き込み/読み出しのために利用可能である。これにより、所与の横断面積について、感度を大幅に向上することが可能となる。さらに、図6の設計では、各電極の相対サイズの、任意の変更が容易に達成される。各接合の実効キャパシタンスは、各交点において2つの金属プレートの間の誘電体の大きな領域を除去することにより減らされる。これは、全体的なワイヤのキャパシタンスに影響する場合がある。ただし、線が十分に太い場合は、ワイヤ抵抗が大きな影響を受けることはない。
【0131】
分子記憶デバイス301の1つの利点は、分子記憶は、記憶分子の選択によって、各位置において複数ビットのデータを記憶するように、容易に適合されることが可能ということである。図7は、2状態モノマーポルフィリン記憶分子の電流−電圧特性を示す、サイクリックボルタンモグラムである。山と谷は、情報の記憶に使用可能な別個の酸化状態に対応する。図7の例で、2つのピークは、2つの別個の酸化状態に対応し、したがって、2つの状態情報を記憶することが可能な記憶デバイス301に対応する。各酸化状態は、他方とは独立に設定または書き込み可能である。サイクリック曲線の下部は、分子記憶デバイス301へのデータの書き込みに対応し、サイクリック曲線の上部は、分子記憶デバイス301からのデータの読み出しに対応する。
【0132】
記憶デバイス301内に状態を書き込むためには、ビット線に電圧を印加して、記憶分子の望ましい酸化状態を作成する。通常、ビット線に印加される電圧は、書き込み回路内の抵抗性および容量性の損失を補償するために、MSD内で使用される分子のE1/2よりもいくらか正になる。書き込み回路に関連する損失は、測定可能であり、一定しているため、容易に補償することが可能である。特定の実施形態では、作用電極502/602はグラウンド電位に保たれ、基準電極511/611は、図7に示すIV曲線のピークよりもわずかに下のバイアス電位に置かれる。ビット線109は、バイアス電位に加算された場合に記憶分子の酸化を引き起こすには不十分である電圧を有する、第1のロジック状態を示す書き込み信号に結合される。書き込み信号は、バイアス電位に加算された場合に記憶分子の酸化を引き起こすのに十分である電圧を有する、第2のロジック状態を示す。
【0133】
図7の特定の例では、基準電極511/611上のバイアス電位は500mVに設定され、ビット線に印加されるデータ信号は、0または300mVのいずれかである。500mVの信号は酸化を引き起こすには不十分であるのに対して、800mVの信号は、第1の個別の酸化状態の酸化を引き起こすのに十分である。同じ記憶デバイス301に第2の状態を書き込むには、基準電極511/611上のバイアス電位が800mVよりも上に設定される。再び、ビット線に印加されるデータ信号は、0または300mVのいずれかである。800mVの信号は酸化を引き起こすには不十分であるのに対して、1100mVの信号は、第2の個別の酸化状態の酸化を引き起こすのに十分である。したがって、第1および第2のビットを続けて書き込むことが可能である。
【0134】
書き込み動作の後、記憶分子はそれらの酸化状態に留まる傾向がある。本質的に、書き込み処理によって追加された、または除去された電子は、記憶分子に緊密に結合される。対照的に、従来のソリッドステートキャパシタでは、電子はエネルギー帯の中にゆるく捕捉され、電子が離脱する可能性はより高い。結果として、記憶分子内に記憶される電荷は、従来のキャパシタ内に記憶される電荷と比較して、はるかにゆっくりと漏れ出ることになる。記憶分子は、所与の酸化状態に書き込まれた後は、電圧モードセンス増幅器または電流モードセンス増幅器のいずれによって読み出されることも可能である。
【0135】
図7に示すように、記憶分子の1つの特性は、分子記憶デバイス301に電圧が印加された場合、記憶分子の酸化状態に依存して、電流の大きさが明確に異なるということである。図7に示すCV曲線のピークは、特定の酸化状態に対応している。記憶分子が、特定の酸化状態にすでに設定されている場合、電流は通過しない。例えば、基準電極と作用電極との間に、図7に示すCV曲線の特性ピークよりも正の電圧を印加し、電流を基準電流源と比較することによって、記憶デバイス301を読み出すことができる。相対的に大きな電流は、第1のロジック状態を示すのに対して、相対的に低い電流は、第2のロジック状態を示す。このようにして、書き込み後の記憶分子の酸化状態は、ビット線に結合された書き込み信号の状態によって決定される。例示的実装では各ビットを直列に書き込むが、分子は並列に書き込みおよび/または読み出しされてもよいことが企図されている。
【0136】
この読み出し方法は、読み出し中の電位の印加が、記憶デバイス301の少なくとも一部の記憶分子の酸化状態を変化させるという点で、部分的または完全に破壊的である。したがって、読み出し動作に続いて、記憶分子の酸化状態を元に戻すために、分子記憶デバイス301への書き戻しを行うことが望ましい。
【0137】
図8は、5つの識別可能な参加状態を有する記憶分子を示し、それぞれの酸化状態は、図8に示すCV曲線のピークによって示されている。記憶分子は、ほとんどどのような数の別個の酸化状態でも有するように設計可能なので、分子記憶によって情報密度が大幅に拡大することが見込まれる。各酸化状態は1ビットの情報を記憶することができるため、メモリアレイの情報密度は劇的に増加する。分子記憶をサポートする、読み出し/書き込みロジック、センス増幅機構などを実装することにより、本発明は、実際のメモリデバイス内でこれらの特性を使用することを可能にする。
【0138】
図9は、複数の別個の酸化状態を有する記憶デバイス301の、CV関係の代替図を示す。任意の特定の電圧において、電流は、さまざまな酸化状態によって決定される。したがって、記憶デバイス301の読み出しは、特定の電圧を記憶デバイス301に印加し、電流を測定し、測定された電流を、記憶デバイス301に記憶されるビット数についての適切なロジック状態にマッピングすることによって達成することができる。
【0139】
図10は、マルチステート分子メモリに適用可能な、例示的電流センス増幅器の配置を示すが、代替として、電圧センス技術が同様に使用されてもよい。図10に示す配置では、並列の電流センスが実装されている。セル電流(ICELL)は、電流モードセンス増幅器1001に結合される。セル電流は、ビット線109から直接来るものであってもよく、またはその代わりに、前置増幅されたものであってもよい。前記増幅器は、各電流モードセンス増幅器1001内に含まれていてもよく、または別個に提供されてもよい。各センス増幅器1001は、特定のロジック状態についてのしきい値電流値を示す、固有の基準電流1003を有する。各センス増幅器1001は、セル電流が基準電流を超えているかどうかを示す2値信号を生成する。ロジックエンコーダ1005は、2値信号を受信して、それらをロジック信号にマッピングする。このマッピングは、レベルシフティング、反転、または、特定の適用例の必要を満たすための、その他の組み合わせ論理を使用した処理を含んでもよい。
【0140】
図11は、上記で説明した分子記憶装置の特徴の多くを、実際的な大容量メモリに統合する、1Mビット実装を示す。図11に示すレイアウトは、実施可能な限り、業界標準のピン配列に従う。ただし、各セル内に複数の状態が記憶される場合は、複数のピン配列を提供して、データが並列に読み出されることを可能にし、読み出しでより少ないクロックサイクルが消費されるようにすることが望ましい場合がある。図11の特定の実装では、メモリセルアレイ1101の4つのバンクが使用され、ここで、各バンクは、512行および512列として配置された256Kのメモリ位置を実装する。図11に示すデバイス全体は、512行×2048列つまり1048576の位置(すなわち、1Mビットメモリ)を有する。図11に示す特定の配置は、任意のサイズの他の配置に、容易に置き換えられることが可能である。図を簡単にするために、電源電圧およびグラウンドなどの、共通のチップ入力は省略されている。
【0141】
8ビットの行アドレスが、外部装置によって、行プリデコーダ1103’へのRA<0:8>入力上に提供される。行プリデコーダは、行アドレスを部分的にデコードして、部分的にデコードされた出力を、それぞれの行デコーダ1103に提供する。行デコーダ1103は各バンクについて提供されるのに対して、行プリデコーダ1103’は、通常、すべてのバンクの間で共有される。行プリデコーダ1103‘を使用すれば、行デコーダ1103は部分的にデコードされたアドレスを処理することになるため、行デコーダ1103をより小さく、そして一般には、より高速にすることが可能になる。図11の特定の実施形態では、行デコーダ1103は、各ワード線のためのワード線ドライバ回路を含む。列アドレスが、列アドレスプリデコーダ1105’へのCA<0:8>入力ピンに提供される。列アドレスプリデコーダ1105’は、プリデコードされたアドレスを列デコーダ1105に提供し、列デコーダ1105は、完全にデコードされたアドレスを生成する。
【0142】
各メモリアレイ1101は、512本のワード線1107を含む。図11の上部に示されたDBLA線のうちのいずれかに置かれる適切な信号によって、特定のバンクが、読み出しおよび/または書き込みのために選択され、それにより、列デコーダ1105によってアドレス指定されたビット線がアクティブになる。ビット線基準電圧VBLREFが、それぞれのセンス増幅器モジュール1111に提供される。ビット線基準電圧は、電圧モードセンス増幅のために使用されるか、あるいは、直列または並列の電流モードセンス増幅を駆動するために使用される。
【0143】
各メモリアレイ1101は、メモリアレイ1101の512本のビット線に結合されたセンス増幅回路を含む、センス増幅モジュール1111を備える。センス増幅モジュール1111は、さらに、メモリアレイ1101に書き込まれるデータがセンス増幅器をバイパスすることを可能にする書き込みパスゲート、およびビット線プリチャージ信号(使用される場合)がセンス増幅器をバイパスすることを可能にするプリチャージパスゲートも含んでもよい。ビット線プリチャージは、読み出し直前にビット線をハイとローのロジック信号の中間の電位に置くことによって、ビット線の応答時間を短縮するための、有用な技術である。この技術により、電圧振幅が減少するため、ビット線はより迅速に応答することが可能となる。
【0144】
データバッファ1113は、書き込み動作中にビット線上にデータ信号を駆動するため、および読み出し動作中にビット線からデータ信号を読み出すために役立つ。複数ビットのデータをエンコードするためのロジック1005が、データバッファモジュール1113に含まれていてもよい。書き込みデータはD<>入力上で受信され、読み出しデータ出力はQ<1>〜Q<3>出力上に置かれる。図11の実装は一般化されているが、本発明は、分子メモリを動作させるために、DRAM回路技術および機能構成要素を適合させることを可能にすることは明らかである。したがって、さらに、分子記憶デバイスによって提供されるはるかに高い密度に、既存の回路技術を活用することも可能である。
【0145】
複数電極モルホールアレイは、分子をベースとする電子デバイスにおいてメモリ素子として使用するのに非常に適しており、本発明の分子メモリアレイおよびデバイスの実装に利用されてもよい。「分子メモリ」素子では、モルホール内で電極(例えば、作用電極)に結合されたレドックス活性分子(1つまたは複数の非ゼロのレドックス状態を有する分子)が、ビットを記憶するために使用される(例えば、特定の実施形態では、各レドックス状態が、ビットまたはビットの組み合わせを表してもよい)。電極(例えば、シリコンまたはゲルマニウム)に結合されたレドックス活性分子は、さまざまな酸化状態内に1つまたは複数のビットを記憶することが可能な、記憶セルを形成する。特定の実施形態では、記憶セルは、1つまたは複数のレドックス活性分子を含み、複数の異なる識別可能な酸化状態を有する、「記憶媒体」に電気的に結合された、固定作用電極によって特徴付けられる。電気的に結合された電極を介して、1つまたは複数の電子を前記記憶媒体に追加すること、または前記記憶媒体から取り出すことによって、(好ましくは非中性の)酸化状態内にデータが記憶される。レドックス活性分子(1つまたは複数)の酸化状態は、例えば、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、およびPCT公開WO 01/03126(これらの開示は、それらの全体が、この参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている電気化学的方法(例えば、サイクリックボルタンメトリー)を使用して、設定および/または読み出しされることが可能である。複数のモルホール(電気化学セル)を含むモルホールアレイは、大容量、高密度メモリデバイスを提供することが可能である。
【0146】
N族の元素(group N elements)、特にシリコンおよびゲルマニウムは、電子チップの製造に一般に使用されているため、既存の加工/製造技術と互換性のある分子メモリチップの製造のために直ちに役立つ。さらに、レドックス活性分子を含む記憶セルの構築および使用の詳細は、米国特許第6,272,038号明細書、米国特許第6,212,093号明細書、米国特許第6,208,553号明細書、およびPCT公開WO 01/03126に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の実施形態による例示的メモリデバイスおよびメモリアレイをブロック図形式で示す。
【図2】本発明による組み込み分子メモリを有する例示的システムオンチップ(SOC)を示す。
【図3】本発明の実施形態による例示的分子メモリセルを示す。
【図4】本発明によるメモリアレイの操作に役立つタイミング図を示す。
【図5】積層キャパシタ実施形態の分子記憶デバイスの単純化された断面を示す。
【図6】「モルホール」実施形態の分子記憶デバイスの単純化された断面を示す。
【図7】
【図8】例示的記憶分子実装の電流−電圧特性を示すサイクリックボルタンモグラムである。
【図9】本発明による例示的分子記憶デバイスの電流−電圧特性を示す
【図10】本発明において有用な読み出し/書き込み回路を概略的に示す。
【図11】特定の実装による、メモリデバイスと、サポートするインタフェースおよび制御ロジックとを示す。
【図12A】〜
【図12H】メタロセンとしてのレドックス活性分子の化学式を図12Aに、フェロセンの形態でのその特定の実施形態を図12B〜図12Gに、ポルフィリンを図12Hに、それぞれ示す。
【図13A】
【図13B】
【図13C】本発明のさまざまな実施形態を示す。図13Aは、ポルフィリンとフェロセンという、2つのレドックス活性サブユニットを含むReAMを示す。図13Bは、類似しているが、ただし、可能な置換基を示す。図13Cは、図13Bの構造のポリマーを示し、ここで、hは2以上の整数である。
【図14A】
【図14B】
【図14C】さまざまなポリマー構成を概略的に示す。図14Aは、電極505上の、独立に選択されたリンカー510を有する、独立に選択されたReAM500のZ次元線状ポリマーを示す。nは0以上の整数であり、1〜8が好ましく、そして、結合部分は示されていない。図14Bは、架橋515を有する、図14AのZ次元線状ポリマーを示す。以下に説明するように、1つまたは複数の分岐点を有する、枝分かれZ次元ポリマーも企図されている。図14Cは、複数の結合部分520を有する、X−Y次元線状ReAMポリマーを示す。ReAMのさまざまな線状ポリマーを具備する表面も企図されており、やはり、ホモポリマーまたはヘテロポリマーのいずれかの使用が有用である。任意選択で架橋を有する、枝分かれReAMポリマーも企図されている。
【図15】広範な大環状リガンド(例えば、プロリガンド(qが0の場合)または錯体(qが1の場合))を示す。
【図16A】
【図16B】
【図16C】本発明の適切なReAMのいくつかの実施形態を示す。これらの構造は、ヘテロ原子配位原子として窒素を利用するが、代替のヘテロ原子(特に、酸素および硫黄)が使用されてもよい(ただし、当業者によって理解されるように、大環状分子の価は変化する場合がある)。図16Aはフタロシアニン誘導体、図16Bはポルフィリン誘導体、および図16Cは拡張ポルフィリンである。
【図17A】〜
【図17I】シクレン誘導体に基づく大環状プロリガンドを示す。金属イオンは図示されていない。また、図示されていない追加の水素原子が結果として存在する可能性があることが理解される。誘導体は、−Y−構造内の骨格原子の数に依存して、12、13、14、15、または16員環であってもよく、追加の骨格原子は、炭素またはヘテロ原子であってもよい。図17Bは、12員環であり、A、B、C、およびDは、一重および二重結合から独立に選択されてもよい。図17Cでは、シクレンは、ヘテロ原子のうちの2つの間の「ブリッジ」を有し、各A−Bは、CR2 CR2、CR=CR、CR2 CR2 CR2、CR=CR CR2、CR2 CR=CR、CR2−NR−CR2−、−CR=N−CR2−、および−CR2−N=CR−からなる群から独立に選択される。図17D〜図17Gは、利用可能な置換基位置を有する、さまざまな特定の構造を示す。図17Hは、シクレン誘導体の「腕」のうちの1つの「損失」を示し、本明細書での教示により理解されるように、さまざまな追加のシクレンベースの誘導体は、さらに、結合の価を変更し、R基を除去してもよい。図17Iは、5つのドナーヘテロ原子を有する大環状プロリガンドである。場合によっては、より大きな環が使用され、結果として多核錯体となる。やはり、本明細書に記載されているように、これらの大環状プロリガンドおよび錯体のいずれかまたはすべて、あるいはそれらの混合物、ならびに他のタイプのReAMとの混合物が、重合反応の中でモノマーとして使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングデバイスと、前記スイッチングデバイスに結合された少なくとも第1のビット線および第1のワード線と、それぞれがビット線およびワード線に結合された記憶位置のアレイと、を具備する分子メモリ素子であって、
前記素子は、レドックス活性分子を含む記憶分子を有する第1の電極を具備し、前記アレイは、第2の電極を具備する、分子メモリ素子。
【請求項2】
前記レドックス活性分子は、大環状プロリガンドおよび大環状錯体からなる群から選択される、大環状リガンドである、請求項1に記載の分子メモリ素子。
【請求項3】
前記大環状リガンドは、ポルフィリンである、請求項2に記載の分子メモリ素子。
【請求項4】
前記ポルフィリンは、ポルフィリン誘導体である、請求項3に記載の分子メモリ素子。
【請求項5】
前記ポルフィリンは、ポルフィリン錯体である、請求項3または4のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項6】
前記ポルフィリンは、ポルフィリンポリマーである、請求項3〜5のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項7】
前記レドックス活性分子は、1つまたは複数の非大環状レドックス活性錯体を含む、請求項1に記載の分子メモリ素子。
【請求項8】
前記レドックス活性分子は、前記非大環状錯体のポリマーを含む、請求項7に記載の分子メモリ素子。
【請求項9】
前記スイッチングデバイスはトランジスタを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項10】
前記トランジスタは、電界効果トランジスタを含む、請求項9に記載の分子メモリ素子。
【請求項11】
前記ワード線に結合された行デコーダをさらに具備する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項12】
前記ビット線に結合された列デコーダをさらに具備する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項13】
前記ビット線に結合された電流前置増幅器をさらに具備する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項14】
前記ビット線に結合されたセンス増幅器をさらに具備する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項15】
分子記憶デバイスの前記第2の電極は、グランドに結合される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項16】
前記電極のうちの少なくとも1つは、金属または半導体からなる群から選択される材料により作成される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項17】
前記金属は、Al、Au、Ag、Ti、W、Cu、その酸化物、およびその窒化物からなる群から選択される、請求項16に記載の分子メモリ素子。
【請求項18】
前記半導体は、Si、Ge、SiGe、GaAs、またはITOを含む、請求項16に記載の分子メモリ素子。
【請求項19】
分子記憶デバイスは、64ミリ秒を超える電荷保持時間を有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項20】
前記ビット線と前記ワード線とは直角をなす、請求項1〜19のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項21】
前記ビット線と前記ワード線とは平行である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項1】
スイッチングデバイスと、前記スイッチングデバイスに結合された少なくとも第1のビット線および第1のワード線と、それぞれがビット線およびワード線に結合された記憶位置のアレイと、を具備する分子メモリ素子であって、
前記素子は、レドックス活性分子を含む記憶分子を有する第1の電極を具備し、前記アレイは、第2の電極を具備する、分子メモリ素子。
【請求項2】
前記レドックス活性分子は、大環状プロリガンドおよび大環状錯体からなる群から選択される、大環状リガンドである、請求項1に記載の分子メモリ素子。
【請求項3】
前記大環状リガンドは、ポルフィリンである、請求項2に記載の分子メモリ素子。
【請求項4】
前記ポルフィリンは、ポルフィリン誘導体である、請求項3に記載の分子メモリ素子。
【請求項5】
前記ポルフィリンは、ポルフィリン錯体である、請求項3または4のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項6】
前記ポルフィリンは、ポルフィリンポリマーである、請求項3〜5のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項7】
前記レドックス活性分子は、1つまたは複数の非大環状レドックス活性錯体を含む、請求項1に記載の分子メモリ素子。
【請求項8】
前記レドックス活性分子は、前記非大環状錯体のポリマーを含む、請求項7に記載の分子メモリ素子。
【請求項9】
前記スイッチングデバイスはトランジスタを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項10】
前記トランジスタは、電界効果トランジスタを含む、請求項9に記載の分子メモリ素子。
【請求項11】
前記ワード線に結合された行デコーダをさらに具備する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項12】
前記ビット線に結合された列デコーダをさらに具備する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項13】
前記ビット線に結合された電流前置増幅器をさらに具備する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項14】
前記ビット線に結合されたセンス増幅器をさらに具備する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項15】
分子記憶デバイスの前記第2の電極は、グランドに結合される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項16】
前記電極のうちの少なくとも1つは、金属または半導体からなる群から選択される材料により作成される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項17】
前記金属は、Al、Au、Ag、Ti、W、Cu、その酸化物、およびその窒化物からなる群から選択される、請求項16に記載の分子メモリ素子。
【請求項18】
前記半導体は、Si、Ge、SiGe、GaAs、またはITOを含む、請求項16に記載の分子メモリ素子。
【請求項19】
分子記憶デバイスは、64ミリ秒を超える電荷保持時間を有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項20】
前記ビット線と前記ワード線とは直角をなす、請求項1〜19のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【請求項21】
前記ビット線と前記ワード線とは平行である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の分子メモリ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図12H】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図12H】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【公表番号】特表2007−520090(P2007−520090A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551577(P2006−551577)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003133
【国際公開番号】WO2005/073976
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506259335)ゼッタコア,インコーポレーテッド. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003133
【国際公開番号】WO2005/073976
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506259335)ゼッタコア,インコーポレーテッド. (3)
【Fターム(参考)】
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