説明

分岐血管管腔内装置

【解決手段】 管腔内人工器官(40)は、人工器官胴部を備えており、前記胴部は、それを通って伸張する胴部管腔と、壁部と、この壁部内の吻合部(46)とを備えている。管腔内人工器官は、人工器官分岐部(44)を更に備えており、前記分岐部は、それを通って伸張する分岐管腔を備えている。人工器官分岐部は、人工器官胴部に沿って長手方向に且つ円周方向にこれを取り囲んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の身体内での、傷ついた血管、管、又はその他生理学的通路を修復するための移植用の人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年1月14日出願の米国仮特許出願第60/439,923号、2003年6月11日出願の米国仮特許出願第60/478,107号、及び2003年10月10日出願の米国仮特許出願第60/510,636号の利益を請求し、上記各出願の全内容を参考文献として本願に援用する。
【0003】
本明細書全体を通して、大動脈又はその他の血管に本発明を適用することを論じる際、人工器官に関して「先端」という用語は、血流の方向に関して、下流側の位置、即ち移植した場合に下流側になる人工器官の部分を指し、「先端方向に」という用語は、血流の方向に又は下流に、ということを意味する。「基端」という用語は、血流の方向に関して、上流側の位置、即ち移植した場合に上流側になる人工器官の部分を指し、「基端方向に」という用語は、血流の方向に対して反対の方向に、又は上流に、ということを意味する。
【0004】
ヒト及び動物の身体の、血管及び管の様な機能的な脈管は、場合によっては弱くなったり、破裂することすらある。例えば、大動脈壁が弱り、その結果、動脈瘤ができることがある。更に血液動力学的な力に曝されると、そのような動脈瘤は破裂することも考えられる。西ヨーロッパ及びオーストラリアの年齢が60から75歳の間の男性では、直径が29mmよりも大きな大動脈瘤が、人口の6.9%に発見されており、直径が40mmより大きなものは人口の1.8%に見られる。
【0005】
弱くなった血管、動脈瘤の血管、又は破裂した血管の外科的介入処置の1つに、管腔内人工器官を使用して血管の障害部位に亘る或る長さの既存の血管壁を取り替えることにより、元の健全な血管の機能性の一部又は全部を提供すること及び/又は残っている血管があればその元の状態を維持することがある。
【0006】
人工器官は、血管の障害部分を密封することが望ましい。弱くなった血管又は動脈瘤の血管の場合、人工器官にわずかな漏れがあれば、処置対象の血管に圧力が掛かるか又は血流が生じて、人工器官で処置するはずだった状態が悪化する原因となる。この種の人工器官は、例えば、腹部大動脈、腸骨血管、又は腎動脈の様な分岐血管の、動脈瘤を処置することができる。
【0007】
管腔内人工器官は、単一構造体でも、複数の人工器官モジュールで構成してもよい。モジュール式人工器官を使えば、外科医は、血管形態学的に幅広い変化に対応しながら、一方でそれぞれ大きさの異なる人工器官の必要な在庫量を減らすことができる。例えば、腎動脈領域と大動脈分岐領域とでは、大動脈の長さ、直径、及び角形成に差がある。これらの変数それぞれに一致する人工器官モジュールを組み合わせて1つの人工器官を形成することができれば、これらの変数の全ての可能な組み合わせに対応する特注仕様の人工器官又は大規模な人工器官の在庫が不要になる。モジュールシステムは、1つのモジュールを隣接するモジュールの移植前に正しく配置できるようにすることにより、展開オプションに対応することもできる。
【0008】
モジュールシステムは、通常は、一方のモジュールの端部が他方のモジュールの内部に部分的に調和するように、人工器官モジュールの管状の端部を重ねることにより現場で組み立てられ、好ましくは重なる領域で付着するのが望ましい。この取り付け工程は「トロンボーン式接続」と呼ばれる。人工器官モジュールの間の接続は、通常は重なる領域の摩擦力によって維持され、両部分が重なる箇所で内部人工器官モジュールが外部人工器官モジュールに加える半径方向の力によって強化される。嵌合は、モジュールの重なる領域に固定されるステントによって更に強化される。
【0009】
これらの人工器官によって処置される或る長さの血管は、1つ又は複数の分岐血管、即ち主血管に吻合した血管を有していることもある。例えば、腹腔動脈、上腸間膜動脈、左総頚動脈、腎動脈は、大動脈の分岐血管であり、下腹動脈は、総腸骨動脈の分岐血管である。これらの分岐血管が人工器官で塞がれると、元来の血液循環が妨げられ、患者は苦しむことになる。仮に、例えば、腹腔動脈が人工器官で塞がれてしまうと、患者は、腸間膜虚血に伴う腹痛、体重減少、吐き気、浮腫、軟便の症状を呈する。分岐血管が塞がれてしまうと、大抵は、不快な症状が現れ、生命を脅かす症状が現れることさえある。
【0010】
従って、管腔内人工器官によって血管を処置する場合には、分岐血管への血流が妨げられないように、人工器官から分岐血管まで伸張する人工器官分岐部を提供することにより、元来の血液循環を確保することが望ましい。例えば、後で説明するが、ZENITH(登録商標)の腹部大動脈人工器官(インディアナ州ブルーミントン、クック社)の動脈区間は、腎動脈の上方に伸張し且つ腎動脈の中へ伸びる人工器官分岐部を有するように設計することができる。或いは、ZENITH装置の腸骨分岐部は、対応する下腹動脈の中に伸張するように設計することができる。分岐伸張部人工器官モジュール(「分岐伸張部」)は、人工器官分岐部に対するトロンボーン式接続を形成して人工器官を完成させることができる。更に、動脈瘤の中には、分岐血管内へ伸びているものもある。人工器官分岐と分岐伸張部をこれらの血管内に展開することは、これらの動脈瘤の拡張及び/又は破裂を防止する一助となる。これらの動脈瘤には、高い罹病率と死亡率が伴う。
【0011】
一般的に、既存の人工器官分岐部は、主要な管腔内グラフトに対する直線的なY又はT形接続部を有している。例えば、そのような人工器官分岐部及び付帯する分岐伸張部は、米国特許第6,520,988号及び同第6,579,309号に示されている。これらの分岐伸長部及び付帯する人工器官分岐部の中には、変位し、捻れ、及び/又は血液動力学的に劣るものもある。これらの問題は、人工器官分岐部と分岐伸長部の相互接続部に血栓形成や内部漏出が生じる原因となりかねない。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/439,923号
【特許文献2】米国仮特許出願第60/478,107号
【特許文献3】米国仮特許出願第60/510,636号
【特許文献4】米国特許第6,520,988号
【特許文献5】米国特許第6,579,309号
【特許文献6】米国特許第4,902,508号
【特許文献7】米国特許第5,733,337号
【特許文献8】米国特許第6,206,931号
【特許文献9】米国特許第6,358,284号
【特許文献10】WIPO広報WO98/22158号、PCT/US97/14855号
【特許文献11】米国仮特許出願第60/510,617号
【特許文献12】PCT出願WO98/53761号
【特許文献13】米国特許出願第60/510,823号
【非特許文献1】17Nature Biotechnology 1083(1999年11月)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の或る態様では、人工器官胴部を備えている管腔内人工器官であって、前記人工器官胴部が、それを通って伸張する胴部管腔と、壁部と、前記壁部内の吻合部とを備えている管腔内人工器官が提供されている。管腔内人工器官は、人工器官分岐部を更に備えており、前記人工器官分岐部は、それを通って伸張する分岐管腔を備えている。分岐管腔は、吻合部を通して胴部管腔と流体連通している。人工器官分岐部は、人工器官胴部の周りに長手方向に且つ周方向にこれを取り囲んで配置されている。
【0013】
人工器官の或る実施形態では、人工器官分岐部は、人工器官胴部の周囲の少なくとも約4分の1、少なくとも約2分の1、又は少なくとも約3分の2に亘って胴部を取り囲むように伸張してもよく、また、人工器官分岐部は、人工器官胴部に沿って約10mm以上、約30mm以上、又は約50mm以上に亘って伸張してもよい。人工器官分岐部は、吻合部に対して先端方向又は基端方向に1箇所又はそれ以上の箇所で接続されていてもよい。分岐管腔は、人工器官胴部の内側又は外側でもよい。人工器官分岐部の基端口は、漏斗状であり、及び/又は人工器官分岐部の先端口よりも大きくなっている。先端口には斜角を付けてもよい。
【0014】
本発明の或る実施形態は、第2人工器官分岐部を更に備えており、前記第2人工器官分岐部は、伸張する第2分岐管腔を有している。第2分岐管腔は、吻合部を通して胴部管腔と流体連通しており、第2人工器官分岐部は、人工器官胴部の周りに長手方向に且つ周方向に配置されている。人工器官の或る実施形態は、人工器官分岐部に接続され、これと流体連通している分岐伸長部を更に備えている。
【0015】
人工器官の或る実施形態では、人工器官分岐部は、アクセス角度が20度又は60度よりも大きくてもよいし、約40度から約60度の間で又は約0度から約40度の間で傾斜していてもよいし、入射角度が約20度から約60度又は約35度から約50度の間であってもよい。
【0016】
人工器官の或る実施形態は、人工器官胴部が、少なくとも部分的には腹部大動脈内に配置されるように展開されている。このような人工器官の人工器官分岐部は、腹腔動脈、上腸間膜動脈、左鎖骨下動脈、総頚動脈、腕頭動脈、第1腎動脈、第1及び第2腎動脈、又は上に掲げた分岐血管の何れか適した組み合わせへの血流の短絡路を作ることができる。
【0017】
人工器官の或る実施形態は、人工器官胴部が、少なくとも部分的には総腸骨動脈内に配置されるように展開されている。このような人工器官の人工器官分岐部は、下腹動脈にへの血流の短絡路を作ることができる。
【0018】
人工器官の或る実施形態は、人工器官胴部が、少なくとも部分的には胸部大動脈内に配置されるように展開されている。このような人工器官の人工器官分岐部は、腕頭動脈、左総頚動脈又は左総鎖骨下動脈への血流の短絡路を作ることができる。
【0019】
本発明の別の態様では、管腔内人工器官のモジュールを接続する方法において、人工器官胴部を提供する段階と、基端端と先端端とを有する人工器官分岐部を提供する段階と、人工器官分岐部の基端端を人工器官胴部に吻合する段階と、人工器官分岐部を位置決めする段階と、人工器官分岐部を人工器官胴部に取り付けて螺旋状の流体通路を提供する段階と、から成る方法が提供されている。この方法は、人工器官分岐部を人工器官胴部の一箇所に又は人工器官胴部の複数の箇所に取り付ける段階を更に含むことができる。また、この方法は、人工器官分岐部の先端に斜角を付ける段階を更に含むこともできる。人工器官分岐部の基端を人工器官胴部に吻合する段階は、人工器官分岐部の基端に実質的に長手方向の切れ目を入れる段階と、基端を外に広げる段階と、基端の周囲を人工器官胴部に吻合する段階を含むこともできる。
【0020】
本発明のまた別の態様では、胴部管腔と分岐部管腔を備えた管腔内人工器官が提供されている。分岐部管腔は、胴部管腔の長手方向軸に関して実質的に螺旋状に配置されている。人工器官は、胴部管腔と分岐部管腔が流体連通する吻合部を更に備えている。分岐部管腔と胴部管腔は、周辺吻合又は対側吻合により流体連通している。分岐部管腔は、胴部管腔内を起点としてもよい。
【0021】
本発明の更に別の態様では、管腔内人工器官へのアクセス角度を大きくする方法において、人工器官胴部を通って伸張する胴部管腔と、壁部と、壁部内の吻合部とを備えている人工器官胴部を提供する段階と、人工器官分岐部を通って伸張する分岐部管腔を有する人工器官分岐部を提供する段階と、から成る方法が提供されている。分岐部管腔は、吻合部を介して胴部管腔と流体連通しており、胴部管腔の周りに長手方向に且つ周方向に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Y字型人工器官分岐部を備えた管腔内人工器官の概略前面図を示している。
【図2】螺旋状人工器官分岐部を備えた管腔内人工器官の概略前面図を示している。
【図3a】図3aは、螺旋状人工器官分岐部を備えた管腔内人工器官の第2の実施形態の側面図を示している。
【図3b】図3bは、図3aの実施形態のもう1つの側面図を示している。
【図3c】図3cは、伸張部モジュールの実施形態を示している。
【図4a】図4aは、管腔内人工器官の第3の実施形態の概略正面図を示している。
【図4b】図4bは、図4aの実施形態の概略正面図を示している。
【図4c】図4cは、図4a実施形態の骨格概略正面図を示している。
【図5】図5aから図5dは、拡張した吻合部を作るための好適な段階を示している。
【図6a】図6aは、管腔内人工器官の第4の実施形態の概略前面図を示している。
【図6b】図6bは、図6aの実施形態の骨格図を示している。
【図7a】図7aは、管腔内人工器官の第5の実施形態の概略前面図を示している。
【図7b】図7bは、図7aの実施形態の平面図を示している。
【図8a】図8aは、管腔内人工器官の第6の実施形態の前面図を示している。
【図8b】図8bは、図8aの実施形態の側面図を示している。
【図8c】図8cは、図8aの実施形態のもう1つの側面図を示している。
【図8d】図8dは、図8aの実施形態の後面図を示している。
【図9a】図9aは、管腔内人工器官の第7の実施形態の骨格前面図を示している。
【図9b】図9bは、図9aの実施形態の概略前面図を示している。
【図10a】図10aは、管腔内人工器官の第8の実施形態の概略前面図を示している。
【図10b】図10bは、図10aの実施形態の概略平面図を示している。
【図11】図11aから図11cは、管腔内人工器官の第9の実施形態をそれぞれ示している。
【図12a】図12aは、管腔内人工器官の第10の実施形態の骨格前面図である。
【図12b】図12bは、図12aの実施形態の概略前面図を示している。
【図12c】図12cは、図12aの実施形態の概略平面図を示している。
【図13a】図13aは、管腔内人工器官の第11の実施形態の概略前面図を示している。
【図13b】図13bは、図13aの実施形態の骨格図を示している。
【図13c】図13cは、図13aの実施形態の概略平面図を示している。
【図14】図14a及び図14bは、管腔内人工器官の第12の実施形態をそれぞれ示している。
【図15】左腸骨動脈内の人工器官胴部が内腸骨動脈内の人工器官分岐部に接続されている状態のモジュール式人工器官を示している。
【図16】分岐した人工器官を展開するための装置を示している。
【図17】分岐した血管人工器官を展開するために使用される装置の一部を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
分岐血管人工器官を、人工器官分岐部を人工器官胴部に対して長手方向且つ周方向に配置して形成することができる。このような人工器官分岐部は、「螺旋状」人工器官分岐部と称される。螺旋状の人工器官分岐部の先端にはトロンボーン式接続によって分岐伸長部を接続することができる。
【0024】
人工器官分岐部の螺旋状に巻いた部分は、血液動力学的な力を人工器官分岐部及び分岐伸長部の間の相互接続部から人工器官胴部に移すことにより、分岐伸長部に作用する力を下げることができる。これは、分岐伸長部がこれらの力によって引き抜かれるのを防止する一助となることができる。また、この螺旋巻は、人工器官胴部の半径方向の向き(「アクセス角度」)を広範に変えられるようにし、人工器官分岐部又は分岐伸長部の捻れも防止することもできる。この設計により、例えば層流を促進することによって血液動力学が改善される。
【0025】
説明を理解し易くするために、以下のように用語を定義する。
【0026】
「人工器官」という用語は、身体部分又は身体部分の機能に取って代わるもの全てを意味する。また、生理学的系統の機能を強化又は付加する装置も意味することもできる。
【0027】
「管腔内」という用語は、対象物がヒト又は動物の体内の管腔の内側に在るか又は配置できることをいう。管腔は、既存の管腔でも、外科的介入処置により作り出された管腔でもよい。これには、血管、消化管、胆管のような管、呼吸器系の諸部分などの管腔が含まれる。「管腔内人工器官」は、従って、これら管腔の1つの内側に配置できる人工器官である。
【0028】
「ステント」という用語は、人工器官に剛性、拡張力、又は支持を付加する装置又は構造を意味する。Z型ステントは、支柱と頂点(即ち屈曲部)を交互に配したステントであり、全体として筒状の管腔を画定している。Z型ステントの「振幅」とは、1つの支柱でつながれた2つの屈曲部の間の距離である。Z型ステントの「周期」とは、Z型ステントの総屈曲部数を2で割ったもの、又は総支柱数を2で割ったものである。
【0029】
「引き抜き力」という用語は、モジュール式人工器官によって提供される部分的又は全体的な変位に対する最大の抵抗力を意味する。相互に接続された2つのモジュールを有する人工器官の引き抜き力は、MTS ALLIANCE RT/5(登録商標)引張試験用機械(ミネソタ州エデンプレーリーのMTS社)で測定することができる。MTS機は、機械の制御、データの収集及び処理に使用されるコンピュータ端末に接続されている。MTS機の引張アーム上に位置するロードセルに加圧ポンプシステムが取り付けられている。人工器官の一方の端部が加圧ポンプに接続され、装置が生体内に展開されたときに血流によって加えられる半径方向の圧力をシミュレートするため、加圧ポンプが内部圧力60mmHgを加える。人工器官の他方の端部は密封されている。人工器官は、試験中は平均的なヒトの体温をシミュレートするために、37℃の水槽に完全に浸されている。MTS機は、装置を、0.1mm刻みで装置が完全に分離するまで引張る。コンピュータは、とりわけ、モジュールが分離に抵抗する最大の力、即ち引抜力を記録することになる。
【0030】
「内漏出」という用語は、管腔内人工器官の周囲又はそれを貫通して生じる漏れを指す。内漏出は、とりわけ、人工器官の組織を貫通して、モジュール式人工器官の相互接続部を貫通して、又は人工器官の端部の周りに、発生することがある。内漏出は、動脈瘤が再加圧される原因となることがある。
【0031】
「分岐血管」という用語は、主血管から分岐している血管を指す。例を挙げると、大動脈に対する分岐血管である腹腔動脈及び腎動脈があるが、この大動脈はここで使用している意味では主血管である。別の例として、内腸骨動脈は総腸骨動脈に対する分岐血管であり、総腸骨動脈はここで言う主血管である。この様に、「分岐血管」と「主血管」は相対的な用語である。
【0032】
「人工器官胴部」は、人工器官の、主血管を通って血液の短絡路を作る部分を指す。「胴部管腔」は、人工器官胴部内を通っている。
【0033】
「人工器官分岐部」という用語は、人工器官の、人工器官胴部に吻合され、分岐血管内に及び/又は分岐血管を通って血液の短絡路を作る部分を指す。
【0034】
「周辺人工器官分岐部」は、人工器官胴部の側部に吻合されている人工器官分岐部である。これは、「ズボンの片脚」型分枝により形成される人工器官分岐部である「対側人工器官分岐部」とは明確に区別される。この分枝は非対称であり、つまり二本の「脚」は異なる直径を有している。
【0035】
「分岐伸長部」という用語は、分岐血管内に展開され、人工器官分岐部に接続される人工器官モジュールを指す。
【0036】
「螺旋状の」又は「螺旋状に」という用語は、人工器官分岐部が人工器官胴部を周方向で取り囲み且つ胴部に沿って長手方向に配置されている態様をいう。「螺旋状の」は、通常の螺旋、即ち全360度の周方向の巻きに限定されるものではない。
【0037】
「長手方向に」は、基準の長手方向軸に対して実質的に平行な方向、位置、又は長さを指し、螺旋の向きの長さ方向成分である。
【0038】
「周方向に(取り囲むように)」は、基準の長手方向軸を取り巻く方向、位置、又は長さを指し、螺旋の向きの円周方向成分である。「周方向に」は、360度の周方向での巻きということにも、半径方向が一定ということにも限定されるものではない。
【0039】
「吻合部」とは、人工器官胴部と人工器官分岐部の様な2つの管腔の間で、両者を流体連通状態にしている接続部を指す。「吻合する」とは、吻合部を形成する過程を指す。
【0040】
「入射角度」という用語は、人工器官分岐部の長手方向軸と人工器官胴部の長手方向に吻合部を通る線との交差角度を指す。
【0041】
「斜め」という用語は、吻合部の箇所又はその付近で測定した、人工器官胴部の長手方向軸に対する、人工器官分岐部の平面からの回転角度を指す。
【0042】
「アクセス角度」という用語は、人工器官胴部の長手方向軸を中心とした、分岐人工器官の半径方向の向きの受容可能範囲を指す。この範囲内では、分岐伸長部が分岐血管内に適切に展開され人工器官分岐部との接続を形成することができるように、人工器官分岐部の先端口が分岐血管に十分接近している。
【0043】
図1は、人工器官胴部10にY字形状に吻合されている人工器官分岐部12の概略図である。分岐伸長部14は、人工器官分岐部12とトロンボーン式接続を形成している。分岐伸長部14は、人工器官全体が調和するように設計された解剖学的構造に対応するため、人工器官胴部10に対して45度の角度16に配置されている。分岐伸長部14の角度16によって、人工器官分岐部12と分岐伸長部14を通る血流の血圧とモーメントの結果であるY方向15の力が、分岐伸長部14に掛かることになる。
【0044】
分岐伸長部14と人工器官分岐部12の間の接続は摩擦力で維持される。従って、分岐伸長部14に掛かるY方向15の力が接続を維持する摩擦力を超えると、分岐伸長部14は、分岐部12から外れてしまうことがある。接続が外れると、人工器官分岐部12及び人工器官胴部10の周囲の領域が再加圧されるので、これは、患者にとって危険な結果となる。
【0045】
図2は、本発明の或る実施形態の概略図である。この実施形態では、人工器官分岐部22が人工器官胴部20に吻合されている。分岐伸長部25は、人工器官分岐部22とトロンボーン式接続を形成している。分岐伸長部25は、人工器官全体が調和するように設計されている解剖学的構造に対応するために、人工器官胴部20に対して約60から70度の角度24で配置されているが、適していれば何れの角度で配置してもよい。人工器官分岐部22は、人工器官胴部20の周りに巻きついて部分的な螺旋を形成している。
【0046】
人工器官分岐部25の角度24は、図1の人工器官の場合と同様に、分岐部25を通る血流のモーメントと分岐部25内の生理学的血圧の結果として、Y方向23に流れる力を作り出す。しかしながら、図1とは異なり、人工器官分岐部22は、これらY方向の力の多くを担い、その人工器官胴部20に対する取り付け部27で支えられている。こうして、相互接続部21に荷重が掛かるのではなく、取り付け部27がY方向の力の少なくとも幾分かを支えることになる。これにより、分岐型人工器官では既知の一般的な故障モードの防止が図られている。
【0047】
図3aは、本発明の別の実施形態を示している。他の血管にも適合させることができるが、この実施形態では、左腸骨動脈内に展開し左内腸骨動脈に分岐するのに適している。右腸骨動脈への展開に適した実施形態としては、図3aの人工器官40の長手方向の鏡像が考えられる。人工器官40は、人工器官胴部42と周辺人工器官分岐部44を含んでいる。この人工器官40及びここに記載の他の人工器官では、人工器官分岐部44は、図示のように人工器官胴部42の前方部を取り巻くように曲がっているのが望ましいが、代わりに人工器官胴部42の後方部を取り巻くように曲がっていてもよい。人工器官分岐部44は、吻合部46を介して人工器官胴部42と流体連通している。吻合部46は、図示のように、漏斗様すなわち漏斗形状を有しているのが望ましい。これは典型的な生理学的吻合部を模倣しており、人工器官分岐部44への流れの血液動力学を改善する。人工器官分岐部44は、人工器官胴部42に縫合され血液を通さないシールを形成するのが望ましい。人工器官胴部の基端は、人工器官40の展開をやり易くするために、貝殻状の切り込みが入れられているが、これについては後に述べる。
【0048】
人工器官胴部42は、綾織で孔隙率が約350ml/min/cm2の織布ポリエステル(英国スコットランド、レンフルーシャー、VASCUTEK(登録商標)社から市販)で作られているのが望ましい。人工器官分岐部44は、継目無し織布ポリエステルで作られているのが望ましい。また、人工器官胴部42と人工器官分岐部44は、少なくとも実質的に生体適合性を有するものであれば、他のポリエステル布、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE、及び当業者には既知の他の合成材を含め、他のどの様な材料で作ってもよい。コラーゲンのような天然に生じる生体適合材料も極めて望ましく、具体的には、小腸粘膜下組織(SIS)の様な細胞外基質(ECM)として知られている派生コラーゲン材料が望ましい。ECMのその他の例としては、心膜、胃粘膜下組織、肝基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、硬膜などがある。SISは、とりわけ有用であり、Badylak他に与えられた米国特許第4,902,508号、Carrに与えられた米国特許第5,733,337号、Cook他に与えられた米国特許第6,206,931号、Fearnot他に与えられた米国特許第6,358,284号、17Nature Biotechnology 1083(1999年11月)、及び特許出願広報PCT/US97/14855号であるCook他に対する1998年5月28日付WIPO広報WO98/22158号、に記載の方式で作ることができる。上記参考文献全てを、本願に援用する。また、生理学的力が加わっても漏れや発汗のないように、材料が無孔質であることも望ましい。
【0049】
人工器官分岐部44は、必ずしもというわけではないが、分岐伸長部に接続されているのが望ましい。人工器官分岐部44と分岐伸長部55は、相補的な環状クリンプ48を有しているのが望ましい。クリンピングは、捩れのリスクを下げ、人工器官の開存性を維持する役に立つ。トロンボーン式相互接続部の相補的なクリンピング又は他の型式の突起物は、密封性の維持と引き抜き防止にも役立つ。重なり合ったモジュール上の相補的な突起物によって互いに係合し易くなり、相対する接触面の間の面接触域を最大化する。
【0050】
図3aに示すクリンプは、例えば、実質的に同じ直径のマンドレルに人工器官分岐部44を外挿することにより作り出される。それから、ねじ、ワイヤ、又は他のフィラメントが、人工器官分岐部44の周りに螺旋状に巻き付けられる。次いで、これを、138℃で8時間加熱する。これ以外の温度でもよい。通常、温度が高くなるほど、適切なクリンピングに要する時間は短くなり、その逆も成り立つ。これにより、人工器官の巻き付け部分に螺旋状のクリンピングができる。環状のクリンプは、環状のフィラメントを人工器官分岐部44に取りつけて、上記処理のその他の工程を行うことによっても作ることができる。クリンプの頂点同士を任意の適した距離だけ離すことができるが、10mm当たり約5個のクリンプ頂点があるのが望ましい。クリンプ式相互接続及びクリンプの形成方法については、2003年10月10日出願の米国仮特許出願第60/510,617号「相互接続可能なモジュールを備えた管腔内人工器官」に詳しく記載されており、同出願を、ここに参考文献として援用する。
【0051】
人工器官モジュール40の好適な大きさと形状は、移植しようとする部位の解剖学的構造と、その人工器官モジュール40の接続相手である対応するモジュールによって決まる。人工器官胴部の適正な大きさと形状の決定には、生理学的変数、展開特性、及び他の因子も寄与する。人工器官胴部42は、図示のように、その全長を通して直径が12mmであるのが望ましいが、テーパ状、巻き状、又はその他の適した幾何学的形状であってもよい。ここに記載する何れの人工器官の寸法も、一例として示しているに過ぎず、具体的な患者の解剖学的構造に整合するように適宜変更されることになる。
【0052】
ステント50、52、53は、人工器官の開存性を維持し、周囲の血管組織に対する適切な密封性を保証する。内部的であれ外部的であれ、ステントの設計及び配置の目的の1つは、金属対金属接触を防ぎ、2つの異種合金間の接触を防ぎ、及び微細運動を最小化することである。ステントの寸法、間隔及び設計は、蛇行する解剖学的構造においてもステント対ステント接触が無いように決めなければならない。ステントは、開存性を維持しつつ人工器官の可撓性を最大化すると共に、材料の摩耗とステントの疲労を低減するように配置するのが望ましい。更に、ステントは人工器官分岐部に干渉せず、電解腐食の可能性を最小化し適切な結合部安定性を保証することが望ましい。ステントの振幅、間隔及びねじれの程度は、各人工器官設計毎に最適化するのが望ましい。ここに記載のステントには、何れも、人工器官の移動を抑えるのに役立つように逆棘が設けられている。
【0053】
Z型ステント設計は、大動脈の直線区間に好適であり、かなりの半径方向の力とある程度の長手方向の支持の両方を提供する。蛇行する解剖学的構造、分岐箇所、又は穿孔箇所では、ステント対ステント接触を回避するため、代わりのステントを使うか、又はZ型ステント設計に修正を加えることが望ましい。更に、複雑な解剖学的状況では、外部ステントは、分岐血管へのアクセス、密封性及び固定を確保するために使用されるワイヤ及び他の装置と絡み合ってしまう可能性がある。場合によっては、ステントの幾つかを人工器官の内部表面に取り付けるのが望ましいこともある。ここに記載のステントは、全て、標準的な医療等級のステンレス鋼で作り、銀標準はんだ(鉛、錫を含有せず)を使ってはんだ付けするのが望ましい。
【0054】
ステント50、52、53は、人工器官40に対して内側50及び外側52、53に取り付けられている。図示のように、14又は16ゲージのGianturco式Z型ステント(インディアナ州ブルーミントンのCook社から市販)を採用するのが望ましい。ステント50、52、53は、頂点と頂点で測定して互いに4mm離間して配置するのが望ましい。ピーク59は、互いに接触する可能性を最小化するために互い違いに配置するのが望ましい。ステント50、52は、14mmの振幅41であるのが望ましい。吻合部46に最も近いステント53は、吻合部46付近を除き振幅が22mmで、吻合部付近では吻合部46に干渉しないように、振幅は11mmであるのが望ましい。このステント53を内側に取り付けてもよい。
【0055】
人工器官分岐部44には少なくとも1つのステント(図示せず)が関係付けられ、人工器官分岐部44の基端継目47の直ぐ下に取り付けられるのが望ましい。ステントは、吻合部46を開いた状態に保ち、人工器官分岐部44が曲がったとき捩れないようにするために採用されている。先端シーリングステント50にはPROLENE(登録商標)5−0縫合糸(図示せず)を使用するのが望ましく、一方、他の全てのステント52、53にはポリエステル4−0縫合糸(図示せず)が使用される。各支柱57に2本の従来型の縫合糸が結ばれ、各頂点59に1本の縫合糸が結ばれるのが望ましい。
【0056】
人工器官分岐部44の入射角度は、人工器官胴部42に対して約20度から約60度であるのが望ましく、約45度であるのがより好ましく、また傾斜は吻合部46で約0度から約30度であるのが望ましい。人工器官分岐部44は、吻合部46から約4mm以上離れた3本の間隔を空けて配置された縫合糸(図示せず)で、人工器官胴部42に固定されているのが望ましい。
【0057】
この人工器官を展開するには、以下に詳しく説明するような標準的な管腔内技法を使うことができる。負荷の問題で20フレンチの様な大きなシースを正当化する根拠がない限り、18フレンチのシースを使用するのがよい。人工器官をX線透視装置で見る場合、グラフトの配置を支援するため、標準的な放射線不透過性の金のマーカー(インディアナ州ブルーミントン、Cook社)を使用するのが望ましい。
【0058】
図3bは、図3aの人工器官40の別の斜視図である。これは、吻合部46の形状を示している。吻合部46の大きさと形状は、層流及び他の能動的な血液動力学特性を促進する。この種の吻合部を形成する1つの方法を、図5を参照しながら後に説明する。
【0059】
人工器官40が移植された後、人工器官分岐部44の先端口54は、主血管−分岐血管吻合部の付近に位置しているのが望ましい。次いで、図3cに示す分岐伸長部55が、人工器官分岐部44とのトロンボーン式接続を形成するように移植される。人工器官分岐部44の先端口54と分岐伸張部55の間の相互接続箇所は、密封型相互接続性を高めるために、直径差が1mm以下であるのが望ましい。分岐伸長部55は、ステントを有していてもよいが、対応するクリンプ48間の密封性又は嵌合に対する干渉を起こし難い内部ステントであるのが望ましい。
【0060】
図4aは、人工器官胴部62と人工器官分岐部64を備えた人工器官60の上面図を示している。この人工器官60は、右総腸骨動脈内に展開し、右内腸骨動脈に分岐するように設計されているが、他の血管内に展開するように適合させることもできる。人工器官分岐部64は、人工器官胴部62に関し長手方向且つ周方向に、即ち、全体的には長手方向軸75の周りに螺旋を形成するように配置されている。図4aに示す人工器官分岐部64は、図4aに示すように、吻合部の中心点77から先端口65の中心点までを測定して、人工器官胴部62の周りに195度(又は全周の半分を僅かに超えて)巻き付いている。この斜視図は、人工器官分岐部64の先端口65が30度斜角を付けられていることを示している。これによりアクセス角度が増し、分岐伸長部の挿入がやり易くなる。図4aの人工器官60の側面図を図4bと図4cに示している。この人工器官60は、人工器官胴部62付近に3つの外部Z型ステントを有している。図4cの人工器官の骨格図では、吻合部68に跨っている内部Z型ステント70と、先端端部74の内部ステント72を示している。拡張した吻合部68を形成する1つの方法を図5aから図5dに示している。
【0061】
図5aは、拡張した、即ち「涙滴」状の吻合部を作り出す過程を示している。人工器官分岐部80の基材は、代表的には、ポリエステル人工器官生地の筒状部である。人工器官分岐部80の基端84は、図示のように人工器官分岐部80の長手方向軸に対して直角に切断してもよいし、斜角を付けたり別の形状に成形してもよい。人工器官分岐部80の基端84を線82に沿って切る。線82は、管の軸に対して平行でなくともよい。次いで、図5bに示すように、基端端84を朝顔型に広げる。広げた後、基端84を成形して、図5cに示すような新しい周囲部86を形成する。図5bに示す基端84の広げた周囲部89は、図5dに示すように、広げた周囲部89に整合する形状と寸法の人工器官胴部88の開窓部(図示せず)の周囲に縫い付けるのが望ましい。縫い目は、血液の漏れないものであるのが望ましい。開窓部は、人工器官分岐部80に傾斜を付けるため、人工器官胴部88の軸に対してどの様に向けてもよい。次いで、人工器官分岐部80が、人工器官胴部88に対して長手方向且つ周方向に配置されるように、人工器官分岐部80を人工器官胴部88に取り付けるのが望ましい。
【0062】
図6aは、人工器官90を示しており、2本の螺旋状周辺人工器官分岐部92、94がそこから伸張している。この人工器官は、人工器官分岐部92、94が腎動脈に伸張することができるように、大動脈内に配置されるよう設計されているが、この人工器官の設計は、他の血管で使用できるように修正することもできる。次いで、分岐伸長部は、人工器官分岐部92、94とトロンボーン式接続を形成するように、腎動脈内に配置される。露出したステント96は、副腎固定ステントで、逆棘(図示せず)を有していてもよい。図6aの人工器官90の骨格図を図6bに示している。人工器官90の先端93に最も接近して配置されるステント95は、吻合部付近のステント97のように、内側に取り付けられているのが望ましい。吻合部98は、図示のようでもよいし、図5に関連して説明した拡張型吻合部でもよい。人工器官分岐部92、94は、図示のように人工器官90の先端93から遠ざかる方向に、又は人工器官90の先端93に向かって、傾斜していてもよい。人工器官分岐部92、94を開存状態に維持するため、ステント(図示せず)を使用してもよい。腸骨、SMA、及び/又は他の分岐血管へ血液の短絡路を作るために、人工器官90に追加の人工器官分岐部を吻合してもよい。
【0063】
図7aは、螺旋状の対側人工器官分岐部112を備えた人工器官110の骨格図を示している。人工器官110は、右腸骨動脈内に展開し、内腸骨動脈へと分岐するように設計されている。分岐点116に対して先端方向に、人工器官分岐部112の長さ部分が人工器官胴部114に関して長手方向且つ周方向に配置されており、長さ方向に継目は無い。人工器官分岐部112の長手方向及び周方向の配置は、人工器官分岐部112の先端口120付近及びそこから更に基端方向で、1つ又はそれ以上の縫合糸(図示せず)によって固定されている。この人工器官及び他の人工器官でも、分岐管腔(図示せず)が人工器官胴部114の管腔(図示せず)内で始まるように、人工器官分岐部112は分岐点116に対して基端方向に人工器官胴部114内まで伸張していてもよい。
【0064】
人工器官110は、先に説明した織布ポリエステルで作るのが望ましく、人工器官分岐部112はクリンプされているのが望ましい。ステントは、PROLENE5−0縫合糸を使って取り付けられる。X線透視装置下で人工器官110の位置と向きを示すために、人工器官110の各位置に金のマーカー(図示せず)を取り付けるのが望ましい。
【0065】
人工器官分岐部112を開存状態に維持し、ねじれを防ぐために、人工器官分岐部112の縫い目118の少し下方で分基点116付近に、内部ステント123が使用されており、このステント123は、人工器官110の内側にあるのが望ましいが、外側にあってもよい。ステント123は、直径が6ゲージで、振幅が8mm、周期が6であるのが望ましい。分岐点116に対して基端方向に2つの人工器官胴部ステント126が取り付けられているが、これらのステント126は、振幅が17mm、直径が20ゲージ、周期が9であるのが望ましい。人工器官110には、更に、分岐点116の先端方向に4つのステント128が配置されているが、これらステント128は、振幅が14mm、直径が14ゲージ、周期が7であるのが望ましい。ステント126と128は、互いに約4mm間隔を空けて配置され、先端ステント128の頂点127は、両者の間の接触ができる限り少なくなるように互い違いに配置されている。人工器官胴部114上の最も先端の2つのステント125は、分岐伸長部の展開への干渉を防ぐために内側に取り付けられる。
【0066】
人工器官分岐部112の先端口120は、直径が6mmであるのが望ましい。人工器官胴部114の先端122は、直径が14mmであるのが望ましく、人工器官胴部114の基端口130は、直径が20mmであるのが望ましい。人工器官胴部114の直径は12mmまで小さくしてもよい。人工器官胴部114の基端124と人工器官分岐部112の先端132の間の距離は、約65mmであるのが望ましい。上記寸法は一例に過ぎず、具体的な患者の解剖学的構造と整合するように変えることができる。
【0067】
図7bは、図7aの人工器官の概略上面図を示している。人工器官分岐部112は、人工器官胴部114の長手方向軸139の周りに151度に亘って巻き付いているのが望ましい。
【0068】
図8aから図8dは、図7aから図7bで説明した分岐型人工器官に類似した対側分岐型人工器官140の異なる斜視図を示している。この人工器官140は、右腸骨動脈内に展開し、右内腸骨動脈に分岐するように設計されている。人工器官140には、放射線不透過性マーカー142が縫い付けられている。人工器官分岐部144は、織布クリンプ状ポリエステルで作られているのが望ましい。図8dでは、人工器官分岐部144と人工器官胴部141の間の継目146がはっきりしている。人工器官胴部141の先端145に最も近いステント(図示せず)は内側に取り付けられている。継目146の先端方向に配置されている外部ステント143の幾つか又は全てを、内側に移してもよい。また、継目146の人工器官分岐部144は、斜角を付けてもよく、そうすれば口を大きくすることができる。
【0069】
図9aと図9bは、図7で説明したものによく似た対側分岐型人工器官の別の実施形態を示している。図9aは、骨格図であり、内部ステント160と外部ステント162の両方を示している。図9の人工器官には、分岐点168から垂直方向下向きに伸張し次いで人工器官胴部170に巻きつくように曲がっている人工器官分岐部161がある。最も先端側から2番目のステント163も、内側に取り付けることができる。
【0070】
図10aと図10bは、後の図11aから図11cに関連して説明する人工器官の概略図であり、対側分岐型人工器官210の別の実施形態を示している。この人工器官210は、総腸骨動脈内へ展開し内腸骨動脈へと分岐するように設計されているが、あらゆる分岐型血管での使用に備えて修正することもできる。人工器官分岐部212の長手方向及び周方向の配置は、人工器官分岐部212の先端220付近及び先端220から更に基端方向で、1つ又はそれ以上の縫合部によって固定されている。人工器官210は、織布ポリエステルで作られているのが望ましく、人工器官分岐部212はクリンプ状ポリエステルであるのが望ましい。図10bは、人工器官分岐部212の人工器官胴部214に対する相対的な向きを示しており、人工器官分岐部212は、人工器官胴部214の周りに151度に亘って螺旋状に巻き付いているのが望ましい。
【0071】
図11aから図11cは、右腸骨動脈内に展開し内腸骨動脈へと分岐させるのに適した分岐型対側人工器官211を示している。人工器官胴部233には、直径が約20mmの基端部217と直径が約12mmの先端部219がある。人工器官分岐部213は、直径20mmの基端部217で始まり、直径12mmの先端部219周りの螺旋状経路を有している。人工器官分岐部213の螺旋状経路は、周方向に約180度で、継目225から長さ方向に約60mmである。ピッチは約45度であるのが望ましい。人工器官分岐部213は、その全長を通して直径が6mmであり、クリンプ状ポリエステルのグラフト材料で構成されているのが望ましい。
【0072】
図11aに示す内部ステント223は、分岐点227と面一になるように継ぎ目225と少し重なって、口の開口を維持し、人工器官分岐部213を曲げた際に捻れるのを防いでいる。このステント223は、人工器官211の内側表面に取り付けるのが望ましいが、外側に取り付けてもよい。ステント223は、厚さが6ゲージ、高さが8mm、周期が6であるのが望ましい。分岐点227の基端方向に2つのステント226が取り付けられているが、これらのステント226は、振幅が18mm、直径が20ゲージ、周期が10で、互いの間隔は2mmであるのが望ましい。人工器官211は、更に、分岐点227の先端方向に4つのステント228を有しており、これらのステント228は、厚さが14ゲージ、振幅が14mm、周期が7で、間隔が3mmであるのが望ましい。最も先端側の2つのステント229は、内側に取り付けるのが望ましい。ステントは、PROLENE5−0を使って取り付けるのが望ましい。X線透過装置下で人工器官211の位置を表示するために、人工器官211の各箇所に金のマーカー215が取り付けられている。
【0073】
人工器官分岐部213の先端口220は直径が6mmで、人工器官胴部214の先端222は直径が12mmで、人工器官胴部214の基端口230は直径が20mmであるのが望ましい。人工器官211の寸法は、これまで説明してきた他の人工器官と同じく、具体的な患者の解剖学的構造に整合させるのが望ましい。人工器官胴部ステント226、228の頂点231は、ピーク同士の接触をできる限り小さくするため互い違いになっている。人工器官胴部214の基端224と人工器官分岐部212の先端222の間の距離は、約70mmであるのが望ましい。この人工器官211の展開は、螺旋状設計により更に簡単になり、これにより「アクセス角度」をY型又はT型分岐人工器官の約3倍の大きさにすることができる。
【0074】
図12aは、周辺分岐型人工器官250の骨格図である。この人工器官250の人工器官分岐部252は、人工器官胴部254の側面から或る角度で伸張し、次いで人工器官分岐部254へと曲がって戻り、そこに縫合糸で取り付けられている。人工器官分岐部252と人工器官胴部254の間には隙間256がある。人工器官分岐部252は、クリンプされ(図示せず)、継目無しで、その全長を通して直径が6mmであるのが望ましい。人工器官胴部254は、継目無しで、その全長を通して直径が約12mmである。人工器官分岐部252は、人工器官胴部254の第1基端ステント253と第2基端ステント255の間に吻合されている。
【0075】
図12bは、図12aの人工器官の外観図である。図示のように、上2つのステント253、255だけが、人工器官250の外側に取り付けられている。図12aに示す他のステントは内側に取り付けられている。吻合部259を取り囲んでいるステント253と255は、人工器官250の展開に使用されるガイドワイヤ(図示せず)に絡まったりすることのないように内側に取り付けてもよい。図12cは、図12a及び図12bの人工器官の上面図を示している。人工器官分岐部252は、人工器官胴部254の周りに137度に亘って巻き付いており、位置261で人工器官胴部254に取り付けられている。
【0076】
周辺分岐型人工器官300の外観図を図13aに示している。人工器官胴部302と人工器官分岐部304は、両方共ポリエステルで作られているのが望ましい。人工器官分岐部304は、クリンプされ(図示せず)継目無しであるのが望ましい。振幅が14mmと22mmの両方のZ型ステント306が、人工器官300に縫合糸(図示せず)で取り付けられているのが望ましい。先端ステント312の取り付けにはPROLENE5−0が使用され、基端ステント310の取り付けにはポリエステル4−0が使用される。金のマーカー(図示せず)が採用されている。
【0077】
人工器官胴部302は、真っ直ぐであるのが望ましく、全長を通して直径が12mmで一定である。人工器官分岐部302に当接するステント314は、振幅が、図13bに示すように吻合部320付近の振幅が11mmである以外は、22mmである。このステント314は、図示のように外側に取り付けるのが望ましいが、内側に取り付けてもよい。人工器官分岐部304の、人工器官胴部302に対する吻合部320での入射角度は、約20度から約60度の範囲にあり、約45度が望ましく、長手方向軸324に対する傾斜は約0度から約20度の間が望ましく、約0度であるのがより望ましい。人工器官分岐部304の長さ部分は、人工器官胴部302に隣接しており、これにより材料の分布が改善され、人工器官300の展開時の詰め込み密度が下がる。人工器官分岐部304は、略3本の縫合糸を使って吻合部320から約4mm人工器官胴部302に固定されており、吻合部320の可撓性を確保する場合にはもっと遠くまで取り付けてもよい。
【0078】
最も基端側のステント322は、振幅が14mmで、人工器官300の外側に取り付けられている。最も基端側のステント322の下層の材料は、基端人工器官との嵌合を高めるためにクリンプ状にされている、このステント322は、接合部300の内側表面に取り付けてもよい。先に図5に関連して説明した拡張型吻合部320を使用して、人工器官分岐部304を人工器官胴部302に接続する。3つの先端側ステント312は、内側に取り付けられている。
【0079】
図13cは、図13aと図13bの人工器官の上面図を示している。人工器官分岐部304は、人工器官胴部302の周りを約150度取り巻いているのが望ましい。人工器官分岐部304の先端口330は、約30度斜角を付けているのが望ましい。
【0080】
図14aと図14bは、図13に関連して説明したものと同様の人工器官350を示している。人工器官分岐部352は、クリンプ状ポリエステル生地で作るのが望ましい。基端側ステント358の下の領域がクリンプ状になっている。吻合部354は、図5に関連して先に説明した拡張型である。人工器官分岐部352は、人工器官350の長手方向軸356に対して傾斜しており、入射角度は約30度から約40度であるのが望ましい。人工器官分岐部304の斜角部はトリミングして、上のステント358との間隙を広げるようにしてもよい。
【0081】
図15は、動脈瘤大動脈402に移植された分岐型管腔内人工器官400の概略図を示している。人工器官400は腸骨動脈404、405内に伸張している。一方の腸骨動脈肢407は、ここでいう人工器官胴部にあたる腸骨動脈伸長部409とトロンボーン式相互接続を形成している。腸骨動脈伸張部(即ち、人工器官胴部)409は、螺旋状の人工器官分岐部408に吻合されている。螺旋状の人工器官分岐部408は、内腸骨動脈406内に在る内腸骨動脈分岐伸長部410とトロンボーン式相互接続を形成している。
【0082】
動脈の解剖学的構造と動脈瘤のトポロジーは患者により差があるので、上記の人工器官設計は、何れも、具体的な患者の要件に合うように修正されるのが望ましい。第1の段階は、患者のCTスキャンを検討することである。各患者にとって必要な装置のための人工器官設計の重大なパラメータ(展開部位、基端及び先端密封箇所)が定義される。当業者には既知の技法を使って、動脈瘤の三次元(3D)モデルが作成される。
【0083】
動脈瘤モデルは、Solid Works(登録商標)又は他の適した固体及び表面モデリングソフトウェアに組み入れることができる。このソフトウェアを使えば、3D管腔内人工器官を、動脈瘤モデルと定義された重要なパラメータに基づいて設計することができる。機構図は3D装置から作成される。次いで、機構図の仕様を使って、人工器官の生地及びステントを含む、プロトタイプの人工器官の構成材料を製作する。次に、材料とステントを組み立てて最終的な人工器官を形成する。
モジュール式人工器官と導入器
【0084】
モジュール式人工器官は、下行胸部及び腹部大動脈の動脈瘤の治療に使用されることが知られており、この場合、人工器官の基端は動脈内に配置するための単一の管腔を画定しており、他方の端部は両腸骨動脈内へ伸張させるため二股に分岐している。腸骨動脈伸張人工器官モジュールは、二股分岐部の各端部に接続される。このような人工器官の概略図は、PCT出願WO98/53761号に更に詳しく記載されている。
【0085】
WO98/53761号では、ポリエステル布又はポリテトラフルオロエチレン(PTEE)の様な生体適合性を有し、単一管腔部分と二股分岐部を画定している人工器官材料のスリーブ又はチューブを含んでおり、更に、それに沿って固定されている幾つかのステントを含んでいる人工器官が開示されている。人工器官は、2つの腸骨動脈から大動脈に沿って基端方向に伸張している動脈瘤に亘って伸びるように設計されている。この参考文献では、導入器アッセンブリを使用して、患者体内でステント人工器官を展開するやり方も開示されている。
【0086】
WO98/53761号出願では、人工器官の単一管腔の基端の材料で覆われた部分が大動脈の動脈瘤の上方の壁を支え、動脈瘤を、腎動脈への入口から先端方向に間隔を空けた箇所で密封している。基端に取り付けられたステントの細いワイヤ支柱が、腎動脈入口を塞ぐことなく横断し、同時に人工器官を大動脈内の所定の位置に固定している。
【0087】
伸長部モジュールは、人工器官の一方の脚部に固定され、各腸骨動脈に沿って伸張するが、随意で、伸長部を両方の脚部に固定してもよい。伸長部モジュールは、トロンボーン式接続で取り付けられる。同じ特許出願には、展開装置又は導入器を使用して、遠隔位置から患者の管腔内にモジュール式管腔内人工器官を展開することが開示されている。PCT出願WO98/53761号を参考文献としてここに援用する。
【0088】
WO98/53761号に記載のものと同様のモジュール式人工器官の1つとして、Cook社から市販されているZENITH(登録商標)AAA脈管内グラフトが、大動脈動脈瘤の治療用として食品医薬品局(FDA)により認可されている。ZENITH(登録商標)AAA脈管内グラフトは、3つの人工器官モジュール、即ち本体モジュールと2つの脚部モジュールで構成されている。本体は、大動脈内に配置される。脚部は腸骨動脈内に配置され本体に接続される。こうして、人工器官は腎動脈下方の大動脈から両腸骨動脈に伸張する。人工器官自体は、切開手術修復に使用されるもののようなポリエステル材料で作られている。グラフト材料をステンレス鋼ステントのフレームに縫い付けるには標準的な外科的縫合技法が使用される。これら自己拡張式ステントは、グラフト材料に支持を提供する。
【0089】
図16は、ZENITH(登録商標)の自己拡張式二股分岐型人工器官520(製品コードTFB1からTFB5、インディアナ州ブルーミントン、Cook社より市販)と、医療処置中に患者の管腔に人工器官520を展開するための、導入器500としても知られている脈管内展開システム500とを示している。これらの品目は、それぞれPCT出願WO98/53761号に更に詳しく記載されている。図13bに関連して説明したものと同様の自己拡張式分岐型人工器官550も示されている。
【0090】
二股分岐式人工器官520は、全体的には逆Y字型構成である。人工器官520は、本体523、短脚560、及び長脚532を含んでいる。二股分岐型人工器官520は、自己拡張式ステント519が取り付けられている、ポリエステルの様な管状のグラフト材料を備えている。自己拡張式ステント519は、人工器官520が導入器500から放出されると、人工器官520を拡張させる。人工器官520は、その基端から伸張する自己拡張式Z型ステント521も含んでいる。自己拡張式Z型ステント521は、先端方向に伸張する逆棘551を有している。導入器500から放出されると、自己拡張式Z型ステント521は、逆棘551と、従って人工器官520の基端を、患者の管腔に固定する。図16に示す人工器官520の代わりに、図6に示す様な人工器官を展開させ、その後に腎分岐伸張部を展開させることもでき、そうすると、腎動脈内の動脈瘤組織を排除し、動脈グラフトが更に基端方向に伸張できるようになるという利点が付加されることになる。自己拡張式分岐型人工器官550は、図13bに関連して説明した分岐型人工器官と同様であり、二股分岐式人工器官520の短脚560及び分岐伸長部とトロンボーン式接続を形成するように構成されている。モジュールの展開をやり易くするために、分岐型人工器官550の基端にノッチ又は貝殻形状を切り込んでもよい。
【0091】
導入器500は、外部操作部580、先端取り付け領域582、及び基端取り付け領域584を含んでいる。先端取り付け領域582と基端取り付け領域584は、人工器官520の先端と基端をそれぞれ固定する。人工器官520を展開するための医療処置の間に、先端及び基端取り付け領域582と584は、所望の展開部位まで管腔内を移動する。ユーザーによる導入器の操作に応じて作動する外部操作部580は、処置全体を通して患者の体外に置かれている。
【0092】
導入器500の基端取り付け領域854は、筒状のスリーブ510を含んでいる。筒状のスリーブ510は、その基端から伸張している長い先細の可撓性伸張部511を有している。可撓性伸長部511には、内部に長手方向の孔(図示せず)がある。長手方向の孔は、先細の可撓性伸張部511が挿入ワイヤ(図示せず)に沿って前進し易いようにする。長手方向の孔は、更に、医用試薬投入用の経路ともなる。例えば、医療処置手順の内の配置及び展開の段階の間に血管造影法を実施できるようにするため、造影剤を供給することが望ましい。
【0093】
伸長部511には薄壁の金属管515が締結されている。薄壁の金属管515は可撓性なので、導入器500を大腿動脈の様な比較的蛇行する血管に沿って前進させることができ、また先端取り付け領域582を長手方向且つ回転方向に操作することができる。薄壁の金属管515は、導入器500内部を操作部580まで伸張し、接続手段516で終端している。
【0094】
接続手段516は、試薬を薄壁の金属管515内へ導入し易くするため、注射器を受け入れることができるようになっている。薄壁の金属管515は、可撓性伸張部511の孔512と流体連通している。従って、接続手段516に導入された試薬は、孔512に流入し、そこから放出される。
【0095】
プラスチック管541は、薄壁の金属管515と同軸で、半径方向外側にある。プラスチック管541は、「厚壁」で、その壁は、薄壁の金属管515の壁肉厚の数倍の厚さであるのが望ましい。シース530は、プラスチック管541と同軸で、半径方向外側にある。厚壁プラスチック管541とシース530は、先端方向に操作領域580まで伸張している。
【0096】
医療処置の内の配置段階の間、人工器官520は、シース530で圧縮された状態に保持される。シース530は、外部操作部580の把持及び止血用密封手段535まで先端方向に伸張している。導入器500の組立時、シース530は、基端取り付け領域584の筒状スリーブ510を覆って前進させるが、人工器官520は外部の力で圧縮された状態に保持されている。先端取り付け(保持)部540は、厚壁プラスチック管541に連結される。先端取り付け部540は、処置の間、人工器官520の先端542を保持する。同様に、筒状スリーブ510は、自己拡張式Z型ステント521を保持する。
【0097】
人工器官520の先端542は、先端取り付け部540に保持されている。人工器官520の先端542にはループ(図示せず)があり、その中を先端トリガワイヤ(図示せず)が伸びている。先端トリガワイヤは、先端取り付け部540内の孔(図示せず)を通って、薄壁管515と厚壁管541の間の環状領域内に伸びている。先端トリガワイヤは環状空間を通って操作部へ伸びている。先端トリガワイヤは、先端ワイヤ解放機構525で環状空間を出ていく。
【0098】
外部操作部580は、止血密封手段535を含んでいる。止血密封手段535は、止血シール(図示せず)と側管529を含んでいる。止血密封手段535は、更に、シース530を止血シールに締め付け固定する締め付けカラー(図示せず)と、厚壁プラスチック管541の周りに止血シールを形成するシリコンシールリング(図示せず)も含んでいる。側管529は、厚壁管541とシール530の間へ医用試薬を投与し易くしている。
【0099】
外部操作部580の基端部は、本体536を有するリリースワイヤ作動部を含んでいる。本体536は、厚壁プラスチック管541上に取り付けられている。薄壁管515は、本体536を貫通している。先端ワイヤ解放機構525と基端ワイヤ解放機構524は、本体536上に滑動可能に取り付けられている。
【0100】
基端及び先端ワイヤ解放機構524、525は、先端ワイヤ解放機構525を動かす前に、基端ワイヤ解放機構524を動かさねばならないように配置されている。従って、人工器官520の先端542は、自己拡張式Z型ステント521が解放され、逆棘551が管腔に固定されるまで解放されない。締め付けスクリュー537は、人工器官520が不用意に早期に解放されてしまうのを防いでいる。止血シール(図示せず)が含まれているので、医療処置中に不必要に失血すること無く、本体536を通してリリースワイヤを外に伸ばすことができる。
【0101】
外部操作部580の先端部は、ピンバイス539を含んでいる。ピンバイス539は、本体536の先端に装着されている。ピンバイス539は、スクリューキャップ546を有している。締め込まれると、ピンバイス539のバイスジョー(図示せず)は、薄壁の金属管515を締め付け又はこれに係合する。バイスジョーが係合すると、薄壁管515は、本体536と共にしか移動できず、従って、薄壁管515は厚壁管541と共にしか動けない。スクリューキャップ546を締め付けると、アッセンブリ全体を一体として動かすことができる。
【0102】
螺旋分岐型人工器官550を導入してトロンボーン式接続を作り出すには、第2の導入器を使用してもよい。この第2導入器は、上記導入器500と同じ原理に基づいているが、それほど複雑ではない。例えば、第2導入器は、分岐型人工器官550が圧縮状態で入っているシースを含むことができ、目標の解剖学的構造に導入し、その後、解放して自己拡張させるか、又はバルーンによって積極的に拡張させることができる。第2導入器には、ガイドワイヤを大動脈分岐部分に展開させることのできる、図17に示すような送出チップ600を装着してもよい。分岐伸長部を展開するのに第3の導入器を使用してもよい。
展開
【0103】
人工器官モジュールは、順次展開されるのが望ましい。分岐型人工器官550と二股分岐型人工器官520とのモジュール間接続は、現場で形成される。最初に、二股分岐型人工器官520が展開され、次いで分岐型人工器官550が展開される。例えば、WO98/53761号に記載の二股分岐型動脈人工器官520は、腹部大動脈内に展開される。二股分岐型人工器官520は、本体部分523、短脚560、及び長脚532を有する概ね逆Y字型の構成である。人工器官の本体は、管状の織布ポリエステル生地で作られている。人工器官520の基端には、人工器官の端を越えて伸長し、先端方向に伸張する逆棘551を有する自己拡張式ステント521がある。短脚560と長脚532は、先端終点から伸張する内部突起を有している。
【0104】
この二股分岐型人工器官520は、当該技術では既知のどの様な方法で展開してもよいが、外科的切開部を介して導入器により大腿動脈に装置を挿入し、次いで管腔内介入技法を使って硬いワイヤガイド上を所望の位置まで前進させる、WO98/53761号に記載の方法が望ましい。例えば、先ず、ガイドワイヤ(図示せず)を患者の大腿動脈に挿入し、その先端が人工器官520の所望の展開領域を越えるまで前進させる。この段階で、導入器アッセンブリ500は完全に組み立てられており、患者体内への導入準備が整っている。人工器官520は、一端が筒状スリーブ510で保持され、他端が先端取り付け部540で保持され、シース530で圧縮されている。大動脈動脈瘤を修復しようとする場合、導入器アッセンブリ500を、ガイドワイヤに沿って大腿動脈に挿入し、X線画像技法で配置するが、これについてはここでは論じない。
【0105】
導入器アッセンブリ500が所望の展開位置にくると、シース530を先端取り付け部540のすぐ近くまで引き抜く。この動作によって人工器官520の中間部が解放され、半径方向に拡張することができる。しかしながら、基端自己拡張式ステント521は、まだ筒状スリーブ510内に留まっている。また、人工器官520の先端542も、まだ外部シース530内に留まっている。
【0106】
次に、ピンバイス539を解放し、薄壁管515が厚壁管541に対して少し動かせるようにする。この動きにより、人工器官520を、管腔内の所望の位置に正確に配置するため、長くしたり短くしたり回転したり圧縮したりできるようになる。人工器官の配置を支援するために、人工器官520に沿ってX線不透過マーカー(図示せず)を配置することもできる。
【0107】
人工器官520の基端が所定の位置にくると、基端ワイヤ解放機構524を先端方向に動かすことにより基端トリガワイヤを引き抜く。基端ワイヤ解放機構524と基端トリガワイヤは、基端ワイヤ解放機構524を、ピンバイス539、スクリューキャップ546、及び接続手段516上を通過させることにより完全に取り外すことができる。
【0108】
次に、ピンバイス539のスクリューキャップ546を緩める。緩めると、薄壁管515を基端方向に押して、筒状スリーブ510を基端方向に動かすことができるようになる。筒状スリーブ510が自己拡張式ステント521の周囲から外れると、自己拡張式ステント521が拡張する。自己拡張式ステント521が拡張すると、逆棘551が管腔の壁を把持し、人工器官520の基端を所定の位置に保持する。この段階以降、人工器官520の基端を再度動かすことはできない。
【0109】
人工器官520の基端が固定されると、外部シース530を、先端取り付け部540の先端部まで引き抜く。この引き抜きによって、人工器官520の対側肢560と長脚532が拡張できるようになる。この時点では、人工器官520の先端542は、まだ動かすことができる。従って、人工器官520を、正確に配置するため、回転させたり短くしたりすることができる。人工器官520のこのような配置により、短脚560が確実に対側動脈の方向に伸張するようになる。
【0110】
短脚560が腸骨動脈の反対方向に伸張した後、分岐型人工器官550を展開させる。分岐型人工器官550は、短脚560とトロンボーン式接続を形成し、短脚560から対側動脈内に伸張するように展開させる。人工器官520と分岐型人工器官550との連結は、本開示の他の箇所で詳しく説明している。
【0111】
分岐型人工器官モジュール550の導入方法は、次の通りである。ガイドワイヤ(図示せず)を対側大腿動脈に導入して、その先端が人工器官を展開させようとする領域の上方にくるまで前進させる。次いで、第2導入器を、ガイドワイヤ上に沿わせて振動と回転の動作をさせながら、伸長部人工器官が対側肢560内のステント1つ分に完全に重なるまで前進させる。厚壁管を所定の位置に保ったまま、シースを引き抜く前に、最終的な位置確認を行う。
【0112】
ガイドワイヤ602は、捕捉され同側側部まで引っ張られてきた第2導入器のチップ600から展開させて、第3導入器が同側側部を通って対側側部へと展開し分岐伸長部を内腸骨動脈内に展開し易くなるようにすることができる。人工器官分岐部の肢部内の予荷重の掛けられたワイヤ又はスネアにより、分岐部の複雑な定位、カテーテル挿入、及びシースを通してのワイヤの個別挿入、の必要性がなくなり好都合である。この方法は、複数の分岐部が存在する場合にとりわけ重要である。送出システムの先端ハンドルには、この特徴に対応するため、追加のトリガワイヤを装備することもできる。第2及び第3導入器とそれらの使用法については、2003年10月14日出願の米国特許出願第60/510,823号「腸骨動脈側分岐装置用の導入器」に詳しく説明されており、同出願を本願に参考文献として援用する。
【0113】
上記導入器及び展開法は、他の部位の移植に適合させることもできる。例えば、第1人工器官モジュールが大動脈内に配置される場合、接続用人工器官モジュールを腎動脈、腸骨動脈、上腸間膜動脈、腹腔動脈、及び他の動脈内に配置して、トロンボーン式相互接続を形成することができる。第1人工器官モジュールが胸部大動脈内に配置される場合、接続用人工器官モジュールは、胸部大動脈の他の部分、左鎖骨下動脈、左総頚動脈、腕頭動脈、又は他の動脈に配置することができる。更に、同一動脈に移植される人工器官モジュールを互いに接続することもできる。上記各実施形態の重なった領域は、関係する解剖学的構造の大きさと、当該解剖学的構造内で人工器官が受ける力に適合させるのが望ましい。
【実施例1】
【0114】
分岐した肢部に掛かる流れの力は、分岐点にかかる荷重と人工器官分岐部の最終的な角形成で決まる。人工器官分岐部から分岐伸長部を引き離す力が、とりわけ関心の対象となる。Y方向の流れによる力は、十分に強ければ、分岐伸長部と人工器官分岐部とを一体に保持する摩擦力よりも大きくなり、分離を引き起こすことになりかねない。分離が相当なものであれば、III型内漏れが発生して、もはや動脈瘤を排除できなくなる。
【0115】
上記人工器官は、体外の漏れ圧力テストに掛けることもできる。このテストを行う目的は、2つの人工器官の間の嵌合点に漏れを発生させるのに要する最小内圧を求めることである。
【0116】
このテストには、圧力変換器、圧力モニター、水/グリセリン混合物(染めたもの)@3.64cP、水槽、水中ヒーター、水ポンプ、温度制御装置、嵌合面サーモカプル、及び水銀温度計が必要である。
【0117】
人工器官分岐部と分岐伸長部は、適したトロンボーン式接続部が形成されるよう、望ましくは1.5cmから2cm重なり、相互接続部の直径の差が1mm以下になるように嵌め合わされる。装置は、適した大きさのバルーン膨張カテーテルを使って30秒間膨らますことができる。
【0118】
嵌め合わされた装置の内部圧力は、圧力変換器と圧力モニターを使って測定する。これらの器具は、手動制御された圧力を嵌め合わされた装置に供給する注射器に接続されている。圧力液は、青色食品着色剤で染めた3.64センチポアズ(cP)のグリセリン/水混合液である。この装置を37℃の水槽に入れ、青色に染色されたグリセリン/水混合液の漏れにより漏れの有無を判定し識別した。漏れの視認評価とピーク圧力の記録を手動で記録した。
【実施例2】
【0119】
上記人工器官は、望ましくはヒト以外の哺乳類で、体内試験を行う。試験及び治療目的での人工器官の移植に適した哺乳類は家畜牛である。試験を目的として、年齢が6週から10週の雄牛を使用した。
【0120】
術前準備として、各動物には、血小板抑制を目的として処置の一日前からアスピリンを一日当たりの服用量325mgとして与えた。各動物には、各処置に先立ち凡そ8ないし12時間前から食物を与えず、凡そ2時間前から水を与えない状態においた。Hemochron Jr.Signature Series Machine(NJ州エジソンのITC社から市販)で、術前ベースラインACTを測定した。
【0121】
各牛は、キシラジン(1.0mg/10lbs、IM)で鎮静させた。動物がやや鎮静した後、吸気マスクを使用してイソフルオレン(2%から4%)を送出した。吸入麻酔薬を送出する間、牛の顔はマスク内に配置した。動物は、標準的な様式で挿管してもよい。一旦気管内管を配置して、固定した。通気装置をオンにして動物に接続し、麻酔を深くし、動物には機械的に通気した。イソフルオレン投与量は約0.8%から1.25%であったが、パーセンテージは関係する要素に基づきいくらにしてもよい。この術前準備中、各動物にはプロカインペニシリンベンザチン(30,000から0,000U/kgIM)を注射した。
【0122】
動物は、左側を下にして寝かせ、右後脚を上に伸ばしガーゼの紐で固定した。グラウンドパッドとEKGリード線を動物の上に配置した。周辺脚静脈内に静脈内カテーテル(IV)を挿入しテープで固定した。適切な水分補給のため、処置の期間中にカテーテルを通して乳酸リンガー液を注入した。両鼠径部は毛剃りして、70%アルコールとベタジンで消毒を施し準備した。
【0123】
この分岐型血管装置の移植には、基本的な血管内技術を用いた。左脚大腿部に切開を施し、大腿血管へのアクセスを得た。後腹膜切開を施して、右腸骨動脈へのアクセスを設けた。第3のアクセスポイントは、右頚動脈を露出する切開を介して得た。動脈上に基端方向及び先端方向に止血導管ループを配置した。単一壁穿刺針を使用して左大腿動脈にアクセスし、カニューレ挿入の整合性は、針のハブからのパルス動脈流の有無で確認した。
【0124】
パルス流が在ることを観察し、下行腹部大動脈にワイヤを配置した。動物は、200IUのブタヘパリン/kgのヘパリン投与を行った。ヘパリン投与後3分から10分で活性化凝固時間を得て、適切な抗凝血を確保し、ベースラインACTの1.5倍から2倍の好適な最小値を実現した。左動脈管腔内に8フレンチ導入器シースを前進させた。配置の前後に、各シースの側口を0.9%の通常の生理食塩水で洗い流した。
【0125】
導入器シースを通してワイヤに5フレンチの豚の尾状カテーテルを外挿し、X線透視検査ガイダンスを使って動脈アーチ部位内に前進させた。適量の造影剤を使用して下行胸部大動脈のベースラインデジタルサブトラクション血管造影像を得た。一旦ベースライン血管造影像を得ると、豚の尾状カテーテルを通してワイヤを挿入し胸部大動脈内に前進させた。次いでカテーテルを取り出した。12.5MHzのBoston Scientific IVUS(静脈内超音波)探針をモノレール方式でワイヤに外挿挿入し、ベースラインIVUS測定を行った。これらの測定には、三叉部に対し凡そ9cm基端側の先端腹部動脈の断面直径が含まれていた。
【0126】
図11に示し、これに関連して説明したものと同様の外部螺旋状装置を採用した。この具体的な人工器官は、発泡PTFEで作られたViabahn(登録商標)Endoprosthesis(デラウェア州ニューワークのW.L.Gore&Associates社)で製作した。これを、主装置内に0.035インチのワイヤアクセスを提供し、分岐した肢部内に0.018インチのワイヤを事前に装填した4フレンチカテーテルを備えた、18フレンチカートリッジに装填した。
【0127】
単一壁穿刺針を使用して右腸骨動脈にアクセスした。一旦Amplatsガイドワイヤを配置すると、20フレンチCheck−Flo(登録商標)(インディアナ州ブルーミントンのCook社)導入器シースを、動脈二股分岐部の上方9cmに前進させて、送出システムとして利用した。事前装填された0.018インチワイヤを、ピールアウェイシースを使用して、Check−Flo(登録商標)のシースの弁を通して前進させた。次いで、装填済装置カートリッジを、プッシャとして拡張器を使って、20フレンチCheck−Flo(登録商標)に挿入した。頚動脈から0.018インチワイヤを回収して、分岐血管ワイヤのための全貫通アクセスを設けた。次いで、人工器官分岐部の口が露出する地点まで人工器官を展開した。その後、人工器官を対側大腿動脈内に前進させた。
【0128】
人工器官を、人工器官分岐部内に2.0cm重なるように展開した。人工器官を全長に亘り、7mmx4cmのバルーンで膨らませた。移植後の血管造影とIVUS評価を行った。最終的なIVUS評価として、口並びにステントグラフトの基端、中間、及び先端箇所を測定すると同時に、血管造影によって内漏れの有無並びにステントグラフトの位置を評価した。必要であれば、人工器官を体外移植して、体外移植後分析を行ってもよい。
【0129】
本明細書を通して、本発明の範囲に関し各種適用例を示してきたが、本発明は、それらに限定されるものではなく、それらを2つ以上組み合わせたものであってもよい。実施例は、説明だけを目的としており、限定を加えるものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内人工器官において、
人工器官胴部であって、前記胴部を通って伸張する胴部管腔と、壁部と、前記壁部内の吻合部とを備えている人工器官胴部と、
人工器官分岐部であって、前期分岐部を通って伸張する分岐管腔を備えており、前記分岐管腔は、前記胴部管腔と前記吻合部を通して流体連通しており、前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向で且つ前記人工器官胴部の周方向に配置されている、人工器官分岐部と、を備えている管腔内人工器官。
【請求項2】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の周囲の少なくとも約4分の1に亘って前記人工器官胴部の周りに伸張している、請求項1に記載の人工器官。
【請求項3】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の周囲の少なくとも約2分の1に亘って前記人工器官胴部の周りに伸張している、請求項2に記載の人工器官。
【請求項4】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の周囲の少なくとも約3分の2に亘って前記人工器官胴部の周りに伸張している、請求項3に記載の人工器官。
【請求項5】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約10mm以上に亘って伸張している、請求項1に記載の人工器官。
【請求項6】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約10mm以上に亘って伸張している、請求項3に記載の人工器官。
【請求項7】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約30mm以上に亘って伸張している、請求項5に記載の人工器官。
【請求項8】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約30mm以上に亘って伸張している、請求項6に記載の人工器官。
【請求項9】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約50mm以上に亘って伸張している、請求項7に記載の人工器官。
【請求項10】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約50mm以上に亘って伸張している、請求項8に記載の人工器官。
【請求項11】
前記分岐部管腔は、前記人工器官胴部の外側をその長手方向且つ周方向に配置されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項12】
前記分岐部管腔は、前記人工器官胴部の内側をその長手方向且つ周方向に配置されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項13】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の前記吻合部に対して先端方向の1箇所で、人口器官胴部に付着されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項14】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の前記吻合部に対して先端方向の複数の箇所で人工器官胴部に付着されている、請求項13に記載の人工器官。
【請求項15】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の前記吻合部に対して基端方向の1箇所で人工器官胴部に付着されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項16】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の前記吻合部に対して先端方向の複数の箇所で人工器官胴部に付着されている、請求項15に記載の人工器官。
【請求項17】
前記人工器官分岐部は、基端口と先端口を備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項18】
前記基端口は漏斗状である、請求項17に記載の人工器官。
【請求項19】
前記人工器官分岐部の前記基端口の直径は、前記先端口よりも大きくされている、請求項17に記載の人工器官。
【請求項20】
前記基端口には斜角が付けられている、請求項17に記載の人工器官。
【請求項21】
第2人工器官分岐部を更に備えており、前記第2人工器官分岐部は、その中を通って伸張する第2分岐管腔を有しており、前記第2分岐管腔は、前記胴部管腔と第2吻合部を通して流体連通しており、前記第2人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の周りに長手方向及且つ周方向に配置されている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項22】
第2人工器官分岐部を更に備えており、前記第2人工器官分岐部は、その中を通って伸張する第2分岐管腔を有しており、前記第2分岐管腔は、前記胴部管腔と第2吻合部を通して流体連通しており、前記第2人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の周りに長手方向且つ円周方向に配置されている、請求項8に記載の人工器官。
【請求項23】
前記両人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に対して先端方向に血液の短絡路を形成する、請求項22に記載の人工器官。
【請求項24】
前記人工器官分岐部に接続され、これと流体連通している分岐伸長部を更に備えている、請求項1に記載の人工器官。
【請求項25】
前記人工器官分岐部は、20度よりも大きなアクセス角度を有している、請求項2に記載の人工器官。
【請求項26】
前記アクセス角度は、60度よりも大きい、請求項25に記載の人工器官。
【請求項27】
前記人工器官分岐部は、約40度から約60度の間で傾斜している、請求項2に記載の人工器官。
【請求項28】
前記人工器官分岐部は、約0度から約40度の間で傾斜している、請求項2に記載の人工器官。
【請求項29】
前記人工器官分岐部は、約20度から約60度の間の入射角度を有している、請求項2に記載の人工器官。
【請求項30】
前記人工器官分岐部は、約35度から約50度の間の入射角度を有している、請求項29に記載の人工器官。
【請求項31】
管腔内人工器官のモジュール同士を接続する方法において、
人工器官胴部を提供する段階と、
基端と先端とを有する人工器官分岐部を提供する段階と、
前記人工器官分岐部の前記基端を前記人工器官胴部に吻合する段階と、
前記人工器官分岐部を位置決めする段階と、
前記人工器官分岐部を前記人工器官胴部に取り付けてらせん状の流体通路を提供する段階と、から成る方法。
【請求項32】
管腔内人工器官へのアクセス角度を大きくする方法において、
人工器官胴部であって、前記胴部を通って伸張する胴部管腔と、壁部と、前記壁部内の吻合部とを備えている人工器官胴部を提供する段階と、
人工器官分岐部を通って伸張する分岐管腔を有する人工器官分岐部を提供する段階と、を有し、
前記分岐管腔は、前記胴部管腔と前記吻合部を通して流体連通しており、前記胴部管腔の周りに長手方向に且つ周方向に配置されている方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内人工器官(300)において、
人工器官胴部(302)であって、前記胴部を通って伸張する胴部管腔と、壁部と、前記壁部内の吻合部(320)とを備えている人工器官胴部(302)と、
人工器官分岐部(304)であって、前期分岐部を通って伸張する分岐管腔を備えており、前記分岐管腔は、前記胴部管腔と前記吻合部を通して流体連通しており、前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部(302)に沿って長手方向で且つ前記人工器官胴部(302)の周方向に配置されていることを特徴とする人工器官分岐部(304)と、を備えている管腔内人工器官。
【請求項2】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)の周囲の少なくとも約4分の1に亘って前記人工器官胴部(302)の周りに伸張している、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項3】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)の周囲の少なくとも約2分の1に亘って前記人工器官胴部(302)の周りに伸張している、請求項2に記載の人工器官(300)
【請求項4】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)の周囲の少なくとも約3分の2に亘って前記人工器官胴部(302)の周りに伸張している、請求項3に記載の人工器官(300)
【請求項5】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部に沿って長手方向に約10mm以上に亘って伸張している、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項6】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)に沿って長手方向に約10mm以上に亘って伸張している、請求項3に記載の人工器官。
【請求項7】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)に沿って長手方向に約30mm以上に亘って伸張している、請求項5に記載の人工器官(300)
【請求項8】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)に沿って長手方向に約30mm以上に亘って伸張している、請求項6に記載の人工器官(300)
【請求項9】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)に沿って長手方向に約50mm以上に亘って伸張している、請求項7に記載の人工器官(300)
【請求項10】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)に沿って長手方向に約50mm以上に亘って伸張している、請求項8に記載の人工器官(300)
【請求項11】
前記分岐部管腔は、前記人工器官胴部(302)の外側をその長手方向且つ周方向に配置されている、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項12】
前記分岐部管腔は、前記人工器官胴部(302)の内側をその長手方向且つ周方向に配置されている、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項13】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)の前記吻合部に対して先端方向の1箇所で、人口器官胴部に付着されている、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項14】
前記人工器官分岐部(304)は、前記人工器官胴部(302)の前記吻合部(320)に対して先端方向の複数の箇所で人工器官胴部に付着されている、請求項13に記載の人工器官(300)
【請求項15】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部の前記吻合部(320)に対して基端方向の1箇所で人工器官胴部に付着されている、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項16】
前記人工器官分岐部は、前記人工器官胴部(302)の前記吻合部(320)に対して先端方向の複数の箇所で人工器官胴部に付着されている、請求項15に記載の人工器官(300)
【請求項17】
前記人工器官分岐部(304)は、基端口と先端口を備えている、請求項1に記載の人工器官(300)
【請求項18】
前記基端口は漏斗状である、請求項17に記載の人工器官(300)
【請求項19】
前記人工器官分岐部(304)の前記基端口の直径は、前記先端口よりも大きくされている、請求項17に記載の人工器官(300)
【請求項20】
前記基端口には斜角が付けられている、請求項17に記載の人工器官(300)
【請求項21】
第2人工器官分岐部(94)を更に備えており、前記第2人工器官分岐部(94)は、その中を通って伸張する第2分岐管腔を有しており、前記第2分岐管腔は、前記胴部管腔と第2吻合部(98)を通して流体連通しており、前記第2人工器官分岐部(94)は、前記人工器官胴部の周りに長手方向及且つ周方向に配置されている、請求項1に記載の人工器官(90)
【請求項22】
第2人工器官分岐部(94)を更に備えており、前記第2人工器官分岐部(94)は、その中を通って伸張する第2分岐管腔を有しており、前記第2分岐管腔は、前記胴部管腔と第2吻合部(98)を通して流体連通しており、前記第2人工器官分岐部(94)は、前記人工器官胴部の周りに長手方向且つ円周方向に配置されている、請求項8に記載の人工器官(90)
【請求項23】
前記両人工器官分岐部(92,94)は、前記人工器官胴部に対して先端方向に血液の短絡路を形成する、請求項22に記載の人工器官(90)
【請求項24】
前記人工器官分岐部(408)に接続され、これと流体連通している分岐伸長部(410)を更に備えている、請求項1に記載の人工器官(400)
【請求項25】
前記人工器官分岐部(408)は、20度よりも大きなアクセス角度を有している、請求項2に記載の人工器官(400)
【請求項26】
前記アクセス角度(408)は、60度よりも大きい、請求項25に記載の人工器官(400)
【請求項27】
前記人工器官分岐部(408)は、約40度から約60度の間で傾斜している、請求項2に記載の人工器官(400)
【請求項28】
前記人工器官分岐部(408)は、約0度から約40度の間で傾斜している、請求項2に記載の人工器官(400)
【請求項29】
前記人工器官分岐部(408)は、約20度から約60度の間の入射角度を有している、請求項2に記載の人工器官(400)
【請求項30】
前記人工器官分岐部(408)は、約35度から約50度の間の入射角度を有している、請求項29に記載の人工器官(400)
【請求項31】
管腔内人工器官のモジュール同士を接続する方法において、
人工器官胴部(409)を提供する段階と、
基端と先端とを有する人工器官分岐部(408)を提供する段階と、
前記人工器官分岐部(408)の前記基端を前記人工器官胴部(409)に吻合する段階と、から成る方法であって、
前記方法は、前記人工器官分岐部を位置決めする段階と、
前記人工器官分岐部を前記人工器官胴部に取り付けてらせん状の流体通路を提供する段階と、を有することを特徴とする方法
【請求項32】
管腔内人工器官へのアクセス角度を大きくする方法において、
人工器官胴部(409)であって、前記胴部を通って伸張する胴部管腔と、壁部と、前記壁部内の吻合部とを備えている人工器官胴部(409)を提供する段階と、
管腔内人工器官へのアクセス角度を大きくする方法において、
人工器官胴部であって、前記胴部を通って伸張する胴部管腔と、壁部と、前記壁部内の吻合部とを備えている人工器官胴部を提供する段階と、
人工器官分岐部を通って伸張する分岐管腔を有する人工器官分岐部(408)を提供する段階と、を有し、
前記分岐管腔は、前記胴部管腔と前記吻合部を通して流体連通しており、前記胴部管腔の周りに長手方向に且つ周方向に配置されていることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−522615(P2006−522615A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500931(P2006−500931)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/000782
【国際公開番号】WO2004/064686
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(504291867)ザ クリーヴランド クリニック ファウンデーション (11)
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
【Fターム(参考)】