説明

分散剤、それを含むペースト組成物、及びそれを使用して製造される無機素子、並びにそれを含むディスプレイ装置

【課題】分散剤、それを含むペースト組成物及びそれを使用して製造される無機素子、並びにそれを採用したディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】分枝型アルキル基及びアリーレン基を含む疎水部と、酸化アルキレン基及びカルボキシル基を含む親水部を含む分散剤が提供される。前記アルキル基は、炭素数5ないし30の置換または非置換のアルキル基であり、前記アリーレン基は、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基であり、前記酸化アルキレン基は、炭素数2ないし10の置換または非置換の酸化アルキレン基である。前記分散剤は、分散性が優秀であり、かつ焼結後に残留する炭素量が少ないため、前記分散剤を含むペースト組成物は、低い粘度を維持しつつも、多量の無機粒子を分散させうる。従って、前記ペースト組成物を使用して製造された無機素子は、低い残留炭素量及び高い充填密度を有しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤、それを含むペースト組成物、及びそれを使用して製造された無機素子、並びにそれを含むディスプレイ装置に係り、さらに詳細には、分散性に優れ、かつ残留炭素量の少ない分散剤、前記分散剤を含むペースト組成物、及び前記ペースト組成物を使用して製造される無機素子、並びにそれを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の情報伝達媒体の重要部分であるディスプレイ素子の代表的な活用分野としては、個人用コンピュータ(PC:Personal Computer)のモニター及びTV受像機などが挙げられる。このようなディスプレイ素子は、高速熱電子放出を利用する陰極線管(CRT:Cathode Ray Tube)と、最近に急速に発展している液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)及び電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)またはカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)をベースとするランプのようなフラットパネルディスプレイとに大別されうる。
【0003】
このようなフラットパネルディスプレイのうち、例えば、PDPは、透明電極間に電圧を印加することによって、誘電層及び保護膜の表面上で放電が起きて紫外線が発生し、このように発生した紫外線が背面基板上に塗布されている蛍光体粒子を励起して発光させるディスプレイ素子であり、FED、及びCNTベースのランプは、陰極電極上に一定の間隔に配列されたエミッタに、ゲート電極から強い電場を印加することによって、エミッタから電子を放出させ、この電子を陽極電極の表面に塗布された蛍光物質に衝突させて発光させるディスプレイ素子である。
【0004】
前記フラットパネルディスプレイの原理的な差異点にも拘わらず、前記フラットパネルディスプレイの製造時にパネルの間に位置する構成要素(例えば蛍光体層等)は、ペースト組成物を基板上に塗布することにより形成されることが一般的である。この場合、前記ペーストを構成する各種の成分は、ペースト内で均一に分散されていなければならず、容易に沈殿されてはならない。そうしなければ、焼結などの以後段階を経た後にも均一な品質を有する素子が得られないためである。これは、単にフラットパネルディスプレイの場合だけでなく、電子分野に使われる他の多くの素子の場合にも同一に要求されるものであって、ペースト組成物の分散性が劣る場合、焼結などの硬化段階を経た後に均一な電気的または磁気的特性を示し難い。
【0005】
従って、このような分散性の向上のために、前記ペーストには、分散剤が添加されることが一般的である。例えば、PDPのバリアリブ(隔壁)用のペースト組成物に分散剤を使用した場合としては、特許文献1、2及び3など多くの従来の技術が知られており、特に、分散性に優れた分散剤としては、リン酸塩をベースとする分散剤が知られている。
【0006】
通常、分散剤含有ペーストは、所望の製品の完成のために焼結段階を経る。この場合、前記分散剤は、炭化された後に気化されることが一般的であるが、一部は残留する。例えば、分散剤を含むペーストを使用したフラットパネルディスプレイの場合に、誘電体にかかる残留炭素が存在すれば、可視光線が通過する場合、一種の黒い点に見え、結果的に完成品の色純度を下げて画質を低下させる。更に、残留炭素がPDP用のバリアリブ上に存在する場合には、放電寿命を短縮させるので、製品性能に致命的な結果をもたらす。従って、前記ペーストに使われる分散剤は、優れた分散性に加えて残留炭素量が少なくなければならない。
【0007】
しかし、従来より使われている分散剤は、分散性が良好な場合に残留炭素量が多いか、または残留炭素量が少ない場合、分散性に劣るという問題があって、その適用に限界があった。従って、良好な分散性と、少ない残留炭素量を同時に備えた分散剤の開発が依然として要求される。
【特許文献1】韓国特許出願公開第2001−0037347号明細書
【特許文献2】韓国特許出願公開第2003−0033564号明細書
【特許文献3】特開2000−203887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする第1の技術的課題は、分散性に優れ、残留炭素量が少ない分散剤を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする第2の技術的課題は、前記分散剤を含んで製造されるペースト組成物を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする第3の技術的課題は、前記ペースト組成物を使用したディスプレイ装置を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする第4の技術的課題は、前記ペースト組成物を使用して製造されたバリアリブを含む、プラズマディスプレイパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記第1の技術的課題を達成するために、分枝型アルキル基及びアリーレン基を含む疎水部と;酸化アルキレン基及びカルボキシル基を含む親水部とを含む分散剤が提供され、前記アルキル基が炭素数5ないし30の置換または非置換のアルキル基であり、前記アリーレン基が炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基であり、前記酸化アルキレン基が炭素数2ないし10の置換または非置換の酸化アルキレン基である。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記分散剤は、下記の化学式1で表示されることが望ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
前記式で、
は、炭素数5ないし30の置換または非置換の分枝型アルキル基であり;
Aは、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基であり;
及びRは、それぞれ独立して炭素数2ないし5の置換または非置換のアルキレン基であり;
kは、0ないし4の実数であり;
n及びmは、それぞれ独立して0ないし30の実数であり、かつ3≦n+m≦30である。
【0016】
本発明の他の実施例によれば、前記分散剤は、下記の化学式2で表示されることも望ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
前記式で、
は、炭素数5ないし30の置換または非置換の分枝型アルキル基であり;
は、炭素数2ないし5の置換または非置換のアルキレン基であり;
n’は、1ないし30の実数である。
【0019】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記分散剤は、下記の化学式3で表示されることが望ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
前記式で、pは、2ないし10の実数である。
【0022】
本発明は、前記第2の技術的課題を達成するために、無機粒子と;有機溶媒と;前記による分散剤とを含むペースト組成物を提供する。
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記有機溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトール、酢酸ブチルカルビトール、ペンテンジオール、ジペンテン、リモネン、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、酢酸エチレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジエチレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジエチレングリコールジアルキルエーテル、酢酸トリエチレングリコールアルキルエーテル、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸プロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸トリプロピレングリコールアルキルエーテル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、及び蒸留水からなる群から選択されるいずれか一以上であることが望ましい。
【0024】
本発明の他の実施例によれば、前記ペースト組成物は、無機粒子100質量部を基準として、有機溶媒24ないし80質量部、及び分散剤0.5ないし3質量部を含むことが望ましい。
【0025】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記無機粒子はガラス粉末であり、前記ペースト組成物は有機バインダーを更に含むことが望ましい。この場合、前記ペースト組成物は、添加剤を更に含むことが望ましい。
【0026】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記ガラス粉末は、PbO、BaO、SiO、B、Al、ZnO、Bi、MgO、NaO、KO、TiO、ZrO、CuO、及びSnOからなる群から選択される、いずれか一以上であることが望ましい。
【0027】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記有機バインダーは、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、酸化ポリエチレン、アクリレート樹脂、ビニル樹脂、及びポリプロピレンカーボネートからなる群から選択される、いずれか一以上であることが望ましい。
【0028】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記ペースト組成物は、前記ガラス粉末100質量部を基準として、前記有機バインダー3ないし6質量部、前記有機溶媒21ないし74質量部、及び前記分散剤0.5ないし3.0質量部を含むことが望ましい。この場合、前記ペースト組成物は、前記ガラス粉末100質量部を基準として、前記添加剤0.1ないし3質量部を更に含むことが望ましい。
【0029】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記ペースト組成物は、温度25℃、せん断速度1sec−1での粘度が10,000ないし60,000cpsであることが望ましい。
【0030】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記無機粒子は蛍光体粒子であり、前記組成物は有機バインダーを更に含むことが望ましい。この場合、前記組成物は添加剤を更に含むことも望ましい。
【0031】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記蛍光体粒子は、YBO:Tb、BaMg10Al17:Eu、YGdBO:Eu、及びZnSiO:Mnからなる群から選択されるいずれか一以上であることが望ましい。
【0032】
本発明のさらに他の実施例によれば、前記組成物は、前記蛍光体粒子100質量部を基準として、前記有機バインダー3ないし6質量部、前記有機溶媒21ないし74質量部、及び前記分散剤0.5ないし3質量部を含むことが望ましい。この場合、前記組成物は、前記蛍光体粒子100質量部を基準として、添加剤0.1ないし3質量部を更に含むことが望ましい。
【0033】
本発明は、前記第3の技術的課題を達成するために、前記ペースト組成物を用いたディスプレイ装置を提供する。
【0034】
本発明の一実施例によれば、前記ディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネルであることが望ましい。
【0035】
本発明の他の実施例によれば、前記ディスプレイ装置は、電界放出ディスプレイであることが望ましい。
【0036】
本発明は、前記第4技術的課題を達成するために、前記ペースト組成物を使用して製造されたバリアリブを含む、プラズマディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明の分散剤は、分散性に優れ、かつ焼結後に残留する炭素量が少ないため、前記分散剤を含むペースト組成物は、低い粘度を維持しつつも、多量の無機粒子を分散させることが可能である。従って、前記ペースト組成物を使用して製造された無機素子は、少ない残留炭素量及び高い充填密度を有することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0039】
本発明の分散剤は、分枝型アルキル基及びアリーレン基を伴う疎水部と酸化アルキレン基及びカルボキシル基を伴う親水部とを含み、分散性が優秀であるか若しくは残留炭素量が少ないかのいずれか一方しか満たさない従来の一般的な分散剤とは異なり、分散性が優秀でありつつも焼結後に残留する炭素量が少ないため、本発明の分散剤を含むペースト組成物は、粘度が低く、前記ペースト組成物を使用して製造された無機素子は、残留炭素量が低く、充填密度の改善が可能である。
【0040】
本発明の分散剤は、分枝型アルキル基及びアリーレン基を伴う疎水部と酸化アルキレン基及びカルボキシル基を伴う親水部とを含む。ここで、前記アルキル基は、炭素数5ないし30の置換または非置換のアルキル基である。前記炭素数については、望ましくは5ないし20、より望ましくは5ないし10である。非置換の分枝型アルキル基としては、以下に限定されることはないが例えば、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,3−ジメチルブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−iso−プロピルブチル基、2−メチル−1−iso−プロピルブチル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、等が可能である。置換の分枝型アルキル基に採用されうる置換基としては、以下に限定されることはないが、例えばハロゲン原子であって、さらに具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が望ましく、さらに望ましくはフッ素原子である。前記アリーレン基は、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基である。前記アリーレン基としては、以下に限定されることはないが例えば、フェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基、ファナントリレン基、アントラセニレン基、ピレニレン基などが可能であり、望ましくはフェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基が可能である。置換のアリーレン基に採用されうる置換基としては、以下に限定されることはないが、例えばハロゲン原子であって、さらに具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が望ましく、さらに望ましくはフッ素原子である。前記酸化アルキレン基は、炭素数2ないし10の置換または非置換の酸化アルキレン基である。酸化アルキレン基としては、以下に限定されることはないが例えば、酸化エチレン基、酸化プロピレン基、酸化ブチレン基、酸化ペンテン基、酸化ヘキセン基、等の直鎖、分枝または環状の酸化アルキレン基が可能である。置換の酸化アルキレン基に採用されうる置換基としては、以下に限定されることはないが、例えばヒドロキシル基または炭素数1ないし3のアルコキシ基であって、さらに具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が望ましい。
【0041】
ここで言う分散剤という用語は、特に、粒子の分布や分離を促進するために用いられる界面活性剤を表す。分散剤が必ずしも界面活性剤でなければならないというのではないが、連続相の間に分散された不連続相の粒子は、互いに塊になろうとする傾向があるので、前記の不連続相の粒子間に反撥力を与えるためには、ほとんどの場合に連続相及び不連続相の界面に存在する界面活性剤を使用する。
【0042】
本発明の分散剤は、疎水部に分枝型アルキル基及びアリーレン基を同時に含む。分枝型アルキル基は、直鎖型アルキル基に比べ、縦横比が低いため、界面の単位面積に存在する分散性分子数を減少させる。従って、界面張力の低下は相対的に大きくないが、前記のアルキル基の分枝された枝によって一種の架橋されている疎水部を形成できるので、他の分散された粒子との衝突時にも疎水部を比較的良好に維持できて、分散性は向上するという結果をもたらせる。そして、疎水部が長さに比べて幅が広くなるので、前記分散剤の体積が相対的に増加して、分散された粒子の表面を効果的に覆い包みうるので、粒子の分散を安定化させる役割を行う。代表的な分散剤であるエアロゾールOTの場合にも、疎水部が直鎖型ではなく分枝型であり、前記疎水部は一種の二等辺三角形のような形を有する2本の疎水鎖を有しているため、体積が非常に大きい。本発明の分散剤の疎水部のアリーレン基は、安定な芳香族環を形成するため、粒子と液体の界面で、前記分散剤の吸着性を高める。
【0043】
また、本発明の分散剤は、酸化アルキレン基及びカルボキシル基を含む親水部を備える。酸化アルキレン基は、代表的な非イオン性作用基であって、代表的な親水基としては、酸化エチレン基を例として挙げられる。前記分散剤中の酸化アルキレン基数は、反応条件によって容易に調節することが可能であるので、前記分散剤の分散特性を制御することが容易となる。そして、カルボキシル基は、極性作用基であって、一般的には、金属塩(例えば、石鹸)の形態中で使われる。しかし、前記カルボキシル基の金属塩はイオン性分散剤を形成するため、分散性分子間の反発が過度に大きくなり、分散剤としての使用には適していない場合がある。従って、本発明ではカルボキシル基の形態をそのまま使用する。カルボキシル基を有する代表的な化合物は、炭素数が10個以上である脂肪酸であって補助的な乳化剤などに使われている。カルボキシル基は、2つの極性基、すなわちヒドロキシル基及びカルボニル基を同時に有しているため、前記分散剤は極性粒子の表面に容易に吸着され、熱を加えて処理された場合、二酸化炭素を産生する。
【0044】
前記分散剤をさらに具体的に説明すれば、本発明の分散剤のアルキル基は、炭素数5ないし30、望ましくは5ないし20、より望ましくは5ないし10の置換または非置換のアルキル基である。前記アルキル基の炭素数が5未満である場合には、疎水性が低下しうる。一方、前記アルキル基の炭素数が30を超える場合には、疎水性が過度に向上する。前記分散剤のアリーレン基は、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基である。前記アリーレン基の炭素数が6未満である場合、中性状態で平面状のアリーレン基を得難いという問題があり、一方で、炭素数が30を超える場合には、アリーレン基が非常に大きくなって、粒子と液体の界面で前記分散剤が稠密に吸着し難くなるという問題がある。前記分散剤で酸化アルキレン基は、炭素数2ないし10の置換または非置換の酸化アルキレン基である。炭素数1の酸化アルキレン基は合成が困難であり、炭素数10を超える酸化アルキレン基である場合には、前記分散剤が親水性を発揮し難い場合がある。前記アルキル基、前記アリーレン基、及び前記酸化アルキレン基は、前記技術分野で公知の、多様な置換基で置換が可能であり、特別に限定されず、このような置換によって前記分散剤の界面張力を更に減少させうる。
【0045】
特に、前記アリーレン基の例としては、フェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基、ファナントリレン基、アントラセニレン基、ピレニレン基などが可能であり、望ましくはフェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基が可能であるが、本発明は上記の例に限定されない。当然、本技術分野で公知のアリーレン基が本発明では使用可能である。
【0046】
前記分散剤は、下記の化学式1で表示されることが望ましい。
【0047】
【化4】

【0048】
前記式で、
は、炭素数5ないし30の置換または非置換の分枝型アルキル基であり、炭素数の望ましい範囲、非置換の分枝型アルキル基の例、及び置換の分枝型アルキル基に採用されうる置換基の例は前述の通りである;
Aは、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基であり、非置換のアリーレン基の例、及び置換のアリーレン基に採用されうる置換基の例は前述の通りである;
及びRは、それぞれ独立して炭素数2ないし5の置換または非置換のアルキレン基であり、−OR−及び−OR−で表される非置換の酸化アルキレン基の例、及び置換の酸化アルキレン基に採用されうる置換基の例は前述の通りである;
kは、0ないし4の実数であり;
n及びmは、それぞれ独立して0ないし30の実数であり、かつ3≦n+m≦30である。前記nは、望ましくは0ないし15の実数、さらに望ましくは2ないし10の実数であり、前記mは、望ましくは0ないし15の実数、さらに望ましくは2ないし10の実数である。前記<化学式1>で示される化合物は、2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0049】
更に望ましくは、前記分散剤は、下記の化学式2で表示されうる。
【0050】
【化5】

【0051】
前記式で、
は、炭素数5ないし30の置換または非置換の分枝型アルキル基であり、炭素数の望ましい範囲、非置換の分枝型アルキル基の例、及び置換の分枝型アルキル基に採用されうる置換基の例は前述の通りである;
は、炭素数2ないし5の置換または非置換のアルキレン基であり、−OR−で表される非置換の酸化アルキレン基の例、及び置換の酸化アルキレン基に採用されうる置換基の例は前述の通りである;
n’は、1ないし30の実数であり、望ましくは1ないし15の実数、さらに望ましくは2ないし10の実数である。前記<化学式2>で示される化合物は、2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0052】
更に望ましくは、前記分散剤は、下記の化学式3で表示されうる。
【0053】
【化6】

【0054】
前記式で、pは、2ないし10の実数である。前記<化学式3>で示される化合物は、2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0055】
本発明による分散剤を合成する方法は、本技術分野で公知の、一般的な全ての方法が使用可能であり、特別にある方法に限定されない。
【0056】
そして、本発明による分散剤は、600℃での残留炭素量が2質量%未満であることが望ましい。
【0057】
本発明は、無機粒子と、有機溶媒と、前記分散剤とを含むペースト組成物も提供する。前記無機粒子は、特別に限定されず、有機溶媒等の中で分散されてペーストを形成しうる、本技術分野で公知の、いかなる無機粒子(例えば無機酸化物、金属酸化物等)であってもよい。例えば、前記無機粒子とは、ガラス粉末、ガラス粒子、蛍光体粒子、磁性体粒子などである。前記無機粒子を用いて製造されたペースト組成物において、前記無機粒子の化学的組成よりは平均粒径がさらに重要に取り扱われるが、本発明のペースト組成物に使われる前記無機粒子の平均粒径(Davg)は、0.001ないし1000μmが望ましく、さらに望ましくは0.01ないし100μm、最も望ましくは0.1ないし10μmである。
【0058】
前記ペースト組成物に使われる前記有機溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトール(BC)、酢酸ブチルカルビトール(BCA)、ペンテンジオール、ジペンテン、リモネン、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、酢酸エチレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジエチレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジエチレングリコールジアルキルエーテル、酢酸トリエチレングリコールアルキルエーテル、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸プロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸トリプロピレングリコールアルキルエーテル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、蒸留水、またはこれらの混合物などが望ましいが、本発明は前記の例に限定されず、前記無機粒子を分散させうる溶媒として当該技術分野で使われる溶媒ならば、何れも使用可能である。
【0059】
本発明のペースト組成物は、無機粒子としてのガラス粉末、有機バインダー、有機溶媒、及び前記分散剤を含むガラスペースト組成物であることが望ましい。
【0060】
本発明で使用するガラス粉末は、60×10−7ないし90×10−7/℃(30〜300℃)の熱膨張係数、及び400ないし600℃の軟化点を有するガラスフリットであることが望ましい。前記ガラス粉末は、制限はないが、PbO−SiO系、PbO−SiO−B系、PbO−SiO−B−ZnO系、PbO−SiO−B−BaO系、PbO−SiO−ZnO−BaO系、ZnO−SiO系、ZnO−B−SiO系、ZnO−KO−B−SiO−BaO系、Bi−SiO系、Bi−B−SiO系、Bi−B−SiO−BaO系、ZnO−BaO−B−P−NaO系、及びBi−B−SiO−BaO−ZnO系からなる群から選択されるのが望ましい。
【0061】
例えば、PbO−B−SiO系ガラスフリットは、質量百分率でPbOを35ないし75%、Bを0ないし50%、SiOを8ないし30%、Alを0ないし10%、ZnOを0ないし10%、CaO+MgO+SrO+BaOを0ないし10%、及びSnO+TiO+ZrOを0ないし6%の組成で有することが望ましい。
【0062】
BaO−ZnO−B−SiO系ガラスフリットは、質量百分率でBaOを20ないし50%、ZnOを25ないし50%、Bを10ないし35%、及びSiOを0ないし10%の組成、またはBaOを3ないし25%、ZnOを30ないし60%、Bを15ないし35%、SiOを3ないし20%、及びLiO+NaO+KOを1ないし12%の組成で有することが望ましい。
【0063】
ZnO−Bi−B−SiO系ガラスフリットは、質量百分率でZnOを25ないし45%、Biを15ないし40%、Bを10ないし30%、SiOを0.5ないし10%、及びCaO+MgO+SrO+BaOを0ないし24%の組成で有することが望ましい。
【0064】
ZnO−BaO−B−P−NaO系ガラスフリットは、質量百分率でZnOを30ないし35%、BaOを20ないし25%、Bを30ないし35%、Pを8ないし12%、及びNaOを3ないし5%の組成で有することが望ましい。
【0065】
前記ガラスフリットの粒子形状は、特別に限定されていないが、球形であることが望ましい。これは、球形の粒子が充填率及び紫外線透過度において板状や無定形より優秀な特性を有するためである。前記ガラスフリットの平均粒径(Davg)は2ないし5μm、最小粒径(Dmin)は0.5μm、最大粒径(Dmax)は10μmであることが望ましい。前記ガラスフリットの平均粒径が2μm未満であるか、前記ガラスフリットの最小粒子径が0.5μm未満であれば、露光感度が低下するか、若しくは焼結による収縮率が高くなり、結果として所望のプラズマディスプレイパネル用のバリアリブ形態を得られにくくなる。一方、前記ガラスフリットの平均粒径が5μmを超えるか、前記ガラスフリットの最大粒径が10μmを超えれば、バリアリブの緻密性及び直進性が低下しうるという問題点があって、望ましくない。
【0066】
前記したように、前記ガラスフリットの軟化点は、400ないし600℃であることが望ましいが、軟化点が400℃未満となれば、焼結後に所望の形状のバリアリブが得られない場合がある。一方、前記ガラスフリットの軟化点が600℃を超えれば、軟化が正しく起こらないという問題点があって、望ましくない。また、前記ガラスフリットの熱膨張係数は、バリアリブ形成用の基板の熱膨脹係数に近いほど良いが、これは、前記ガラスフリットと前記基板の間の熱膨張係数の差が大きくなれば、前記基板が反り、ひいては破損する恐れもあるためである。
【0067】
本発明の目的から逸脱しない限り、前記ガラス粉末が純粋なガラスの構成要素に加えて、他の構成要素を更に含んでもよい。従って、前記ガラス粉末は、La、Yなどの希土類酸化物、P、MnO、Fe、CoO、NiO、GeO、MoO、Rh、AgO、In、TeO、WO、ReO、VO、PdOなどを含んでもよく、また前記ガラス粉末は、セラミック充填剤を含むことも可能である。このような充填剤としては、アルミナ、チタニア(ルチル、アナターゼ型)、ジルコニア、ジルコン、α−石英、石英ガラス、β−石英固溶体などが可能である。特に、α−石英などのシリカ系材料を前記セラミック充填剤として使用すれば、バリアリブの低誘電化を図りうるので、消費電力を低減できる。更に、バリアリブの機械的な強度を向上させるために、前記充填剤の一部または全部を球形にしても良い。
【0068】
従って、前記ガラス粉末は、PbO、BaO、SiO、B、Al、ZnO、Bi、MgO、NaO、KO、TiO、ZrO、CuO、及びSnOからなる群から選択される1以上で形成されるガラスフリット、及びその他の構成要素を含むことが望ましい。
【0069】
前記有機バインダーは、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、酸化ポリエチレン、アクリレート樹脂、ビニル樹脂、及びポリプロピレンカーボネートなどであることが望ましいが、本発明はこれに限定されず、もちろん本技術分野で公知の、一つまたは二つ以上の有機バインダーもまた使用可能である。
【0070】
さらに具体的に、セルロース樹脂は、ドライフィルムの強度、及び基板とドライフィルムレジスト間の付着性を向上させる効果がある。前記セルロース系樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが可能である。エチルセルロースは、バリアリブ材料の印刷やコーティングに適したペースト特性となるので特に望ましい。
【0071】
前記ブチラール樹脂は、基板とドライフィルムレジスト間の付着性の確保に重要な役割を果たす。前記付着性は、前記ブチラール樹脂と前記セルロース樹脂との共存によって有効に確保されうる。ドライフィルムの所望の強度及び柔軟性を得るためには、ブチラール系樹脂として、重合度が200ないし1,000であり、重量平均分子量(Mw)が30,000ないし200,000であるものを使用することが望ましい。また、基板とドライフィルム間の付着性を向上させるためには、ブチラール化度が70ないし80mol%であるブチラール樹脂を使用することが望ましい。
【0072】
セルロース樹脂は、本発明のガラスペースト組成物の有機バインダーに単独で使用されることが望ましい。しかし、セルロース樹脂とブチラール樹脂とを混合して、その質量比率が90:10ないし50:50の範囲のものを使用することも可能である。
【0073】
本発明のガラスペースト組成物で使われる分散剤は、前述した分散剤以外にフィッシュオイル、ポリエチレンイミン、グリセリルトリオリレート、ポリアクリル酸、コーンオイル、グリセリン、またはリン酸エステルなどを更に含んでもよい。
【0074】
本発明のガラスペースト組成物は、他の添加剤を更に含んでもよい。前記添加剤としては、可塑剤としてシュウ酸ジエチル、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、またはフタル酸ジオクチルなどが使われうる。また、その他の添加剤として、酸化防止剤、平滑剤、気泡除去剤、沈降防止剤などが使われうる。
【0075】
前記ガラスペースト組成物は、一例として、前記ガラス粉末100質量部を基準として、前記有機バインダー3ないし6質量部、前記有機溶媒21ないし74質量部、及び前記分散剤0.5ないし3質量部を含むことが望ましい。
【0076】
前記有機バインダーが3質量部未満である場合には、溶媒乾燥後、ドライフィルムの亀裂及び欠陥が発生しうる問題があり、一方、6質量部を超える場合には、有機溶液の初期粘度が高いためにペーストの粘度が高まるという問題がある。
【0077】
前記有機溶媒が21質量部未満である場合には、有機溶液の初期粘度が高いためにペーストの粘度が高まるという問題があり、一方、74質量部を超える場合には、相対的に前記有機バインダーの含量が低いため、ドライフィルムの亀裂及び欠陥が発生しうるという問題がある。
【0078】
前記分散剤が0.5質量部未満である場合には、無機粒子の分散が十分になされない場合があるため、ペーストの粘度が高まるという問題があり、一方、3質量部を超える場合には、無機粒子の表面に吸着しない剰余分散性分子が高分子溶液と混合されつつ、ペーストの粘度を高まるという問題がある。
【0079】
また、前記ガラスペースト組成物は、前記ガラス粉末100質量部を基準として前記添加剤0.1ないし3質量部を更に含むことが望ましい。
【0080】
前記添加剤が0.1質量部未満である場合には、乾燥時にフィルムの亀裂が発生しうるという問題が発生し、一方、3質量部を超える場合には、かえって前記分散剤の機能を妨害するという問題が発生しうる。
【0081】
本発明のペースト組成物は、温度25℃、せん断速度1sec−1での粘度が10ないし60Pa・s(10,000ないし60,000cps)であることが望ましい。すなわち、粘度が60Pa・s(60,000cps)を超えれば、効果的な印刷が難しいという問題があり、一方、粘度が10Pa・s(10,000cps)未満である場合には、印刷後のフィルムの形成が不良になるという問題が起こりうる。
【0082】
本発明のペースト組成物は、無機粒子としての蛍光体粒子、有機バインダー、有機溶媒、及び分散剤を含む蛍光体ペースト組成物であることも可能である。
【0083】
前記蛍光体ペースト組成物において、前記蛍光体粒子は、YBO:Tb、BaMg10Al17:Eu、YGdBO:Eu、及びZnSiO:Mnなどが望ましい。また、前記蛍光体粒子の平均粒径は、0.5ないし5.0μmであることが望ましいが、蛍光体粒子の平均粒径が0.5μm未満である場合には、光特性に不利な影響を及ぼすので望ましくなく、一方、5.0μmを超える場合には、ノズル閉鎖現象によってフィルムの形成が不良になるという問題が起こりうるので望ましくない。
【0084】
前記蛍光体ペースト組成物の前記有機バインダー及び前記有機溶媒は、前記ガラスペースト組成物に関して先に記載された通りである。
【0085】
前記蛍光体ペースト組成物は、可塑剤、酸化防止剤、及び平滑剤等の添加剤を更に含むことが望ましい。
【0086】
前記蛍光体ペースト組成物は、前記蛍光体粒子100質量部を基準として、前記有機バインダー3ないし6質量部、前記有機溶媒21ないし74質量部、及び前記分散剤0.5ないし3質量部を含むことが望ましい。
【0087】
前記有機バインダーの含量が3質量部未満である場合には、ペーストの粘度調節が難しいため望ましくなく、一方、6質量部を超える場合には、焼結後の残留炭素により、光ルミネッセンス効率の低下の問題点があって望ましくない。
【0088】
前記有機溶媒の含量が21質量部未満である場合には、ペーストが高粘度のため、印刷能力が低いという問題点があって望ましくなく、一方、74質量部を超える場合には、ペーストの粘度低下の問題点があって望ましくない。
【0089】
また、前記分散剤の含量が0.5質量部未満である場合には、無機粒子の分散が十分になされなくてペーストの粘度が向上するという問題があり、一方、3質量部を超える場合には、無機粒子の表面に吸着しない剰余分散性分子が高分子溶液と混合されつつ、ペーストの粘度を向上させるという問題があって望ましくない。
【0090】
また、前記蛍光体ペースト組成物は、前記蛍光体粒子100質量部を基準として、前記添加剤0.1ないし3質量部を更に含むことが望ましい。
【0091】
前記添加剤の含量が、0.1質量部未満である場合には、形成されたフィルムの強度低下のために、乾燥時の熱的ストレスによるフィルムの亀裂、陥没などの問題があり、一方、3質量部を超える場合には、有機溶液の初期粘度が高いため、粒子の分散が不十分となる問題がある。
【0092】
本発明はまた、前記ペースト組成物を用いたディスプレイ装置、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、または電界放出ディスプレイ(FED)などを提供する。さらに具体的には、本発明は前記ペースト組成物から焼結、加工などの工程を経て製造される焼結物を含むディスプレイ装置を提供する。前記焼結物は、無機素子であって、向上した充填密度の具現が可能である。すなわち、本発明のペースト組成物により、同じ粘度で従来のペースト組成物よりもさらに多量の無機粒子を含むスラリを製造できて、このようなスラリを焼結する場合、さらに向上した充填密度を有する焼結物、すなわち、無機素子が得られる。本発明で、前記焼結物は、PDP用のバリアリブまたは蛍光体層であることが望ましい。前記バリアリブまたは蛍光体層は、前記ペースト組成物を乾燥、焼結などの工程を経て、本技術分野で公知のあらゆる方法により、本発明のペースト組成物から形成されうる。例えば、PDP用のバリアリブは、スクリーンプリンティング法、サンドブラスト法、添加法、感光性ペースト法、及びLTCCM(Low Temperature Cofired Ceramicon Metal)方法などを用いて形成できる。
【0093】
本発明はまた、本発明のペースト組成物を焼結させて得られた焼結物を含むディスプレイ装置を提供する。本発明の前記ディスプレイ装置は、PDPであってもよい。前記PDPは、図1に示したような構成を有し、PDPの製造方法として、まず前面ガラス基板111上にX電極113及びY電極112をそれぞれ含む電極対114をパターニングして形成し、バス電極113aを形成した後、前記電極対114を保護する目的で、前記電極対114が透明誘電体層115で被覆され、その後、前記透明誘電体層115上に通常MgOで形成される保護膜116を形成して、前面パネル110を完成させる。
【0094】
一方、背面パネル120の製作では、背面ガラス基板121上に、アドレス電極122をパターニングして形成した後、前記アドレス電極を被覆する誘電体層123を形成する。本発明のペースト組成物を前記誘電体層123の全面上に塗布して乾燥させた後、サンドブラスト法によって所望の仕切り壁パターンに加工、焼結してバリアリブ124を形成する。次いで、蛍光体層125を、本発明のペースト組成物を印刷、焼結することにより形成する。
【0095】
前記前面ガラス基板111及び前記背面ガラス基板121の周囲に封止材がディスペンサーにより塗布され、前記により製作された前面パネル110と背面パネル120とが、両パネルの電極が対向するように組立てられ、かつパネル化された後に焼結され、放電空間にNeやHe−Xeなどの放電気体を封入するために排気される。PDPの他の構成要素もまた、本発明のペースト組成物を利用して製造されうる。
【0096】
本発明によるディスプレイ装置の他の例として、前記ディスプレイ装置は、FEDであることが望ましい。前記FEDは、図2に示したような構成を有し、陰極電極412、陽極電極422、及びゲート電極414からなる3極管の構造を有する。その製造方法として、まず前記陰極電極412と前記ゲート電極414とを、エミッタ416が配置された背面基板411上に形成し、その後、前記陽極電極422を前面基板421の裏面上に形成し、前記陽極電極422の裏面上には、本発明による蛍光体ペースト組成物から製造された蛍光層423とコントラストの向上のためのブラックマトリックス424を形成する。前記陰極電極412の上には、微細開口415を規定する絶縁層413及び前記ゲート電極414を形成する。そして、前記背面基板411と前記前面基板421とは、その間にはスペーサ431を配置して相互間の間隔を維持する。
【0097】
本発明のペースト組成物を焼結することで得られた焼結物を含むディスプレイ装置は、前記ディスプレイ装置に限定されず、本技術分野で公知の、その他の全てのディスプレイ装置に適用されることも可能である。特に、本発明のペースト組成物を焼結することで得られるバリアリブを含むPDPが望ましい。
【実施例】
【0098】
以下の実施例及び比較例を通じて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、実施例は、本発明を例示するためのものであり、これらだけで本発明の範囲を限定するものではない。
【0099】
分散剤の調製
実施例1
フラスコにNaH7.32g(305mmol)を入れてTHF500mlと混合した後、アルゴン雰囲気下、13g(30.5mmol)の下記化合物1を室温で前記混合物に滴下しながら加え、約4時間攪拌し、そこへ76.4g(457.7mmol)の下記化合物2を滴下しながら加えた。次いで、得られた反応混合物を48時間室温で反応させた。それから、溶媒を除去し、その残留物をn−へキサンで洗浄した。生じた沈殿物をセライトで濾過して、濾液を減圧下で蒸留した。蒸留後の残留物をカラム(MC:MeOH=20:1)で精製して赤色のオイル物質(化合物3)を得た(収率78%)。
【0100】
前記で得られた12.7g(23.9mmol)の化合物3を、200mlの1NのNaOH水溶液で12時間以上還流させた。次いで、前記の還流後の水溶液に1NのHClを添加してpHを2に調整した後、200mlのCHClを用いての抽出を2回行った。得られたCHClの層をMgSOで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。残留物をカラム(MC:MeOH=20:1)で精製して黄色のオイル物質(化合物4:ポリオキシエチレン−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニルエーテルカルボン酸)を10.28g得た(収率88.6%)。前記化合物4のH−NMRスペクトルは、図10に示されている。
【0101】
前記の分散剤の製造方法は、以下の反応式1に概略的に示されている。
【0102】
【化7】

【0103】
実施例2
フラスコにNaH50mmolを入れてTHF50mlと混合した後、アルゴン雰囲気下でTriton−X 100(ポリオキシエチレン−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニルエトキシレート、酸化エチレンユニットの平均モル数:10)20mmolを25℃で前記混合物に滴下しながら添加し、約2時間攪拌した。次いで、エチルブロモアセテート50mmolを0℃で2時間前記溶液に滴下しながら添加し、次いで、得られた反応混合物を25℃で12時間反応させた。次いで、前記反応混合物を氷水に投入した。得られた有機層を分離し、塩酸及び水で順次に洗浄し、減圧下で蒸留した。溶媒を留去して黄色の粘性オイル(ポリオキシエチレン−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニルエーテルエチルカルボン酸)を得た(収率78%)。
【0104】
前記で得られた黄色の粘性オイル18mmolを1MのNaOH水溶液200ml及びメタノール10mlの混合溶液に投入した。次いで、前記溶液を12時間還流させた。そして、前記の還流後の溶液に1NのHClを添加してpHを2に調整した後、CHCl200mlを用いて抽出を2回行った。得られたCHClの層をMgSOで乾燥した後、減圧下で溶媒を蒸留させた。蒸留後に残った残留物をカラム(MC:MeOH=20:1)で精製して黄色のオイル物質(ポリオキシエチレン−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニルエーテルカルボン酸)を得た(収率84%)。
【0105】
実施例3
TritonX−100の代りに、TritonX−45(ポリオキシエチレン−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニルエトキシレート、酸化エチレンユニットの平均モル数:5)を使用したことを除いては、実施例2と同じ方法で分散剤を調製した。
【0106】
実施例4
TritonX−100の代りに、Igepal CA−210(ポリオキシエチレン−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェニルエトキシレート、酸化エチレンユニットの平均モル数:2)を使用したことを除いては、実施例2と同じ方法で分散剤を調製した。
【0107】
比較例1
リン酸系分散剤であるBYK111(BYK−Chemie GmbH社製、製品名:Disperbyk 111)を使用した。
【0108】
比較例2
脂肪酸であるオレイン酸(Aldrich社製の試薬級)を使用した。
【0109】
比較例3
サルコシン(オレイルサルコシン、株式会社日本油脂製)を使用した。
【0110】
比較例4
カルボン酸系分散剤であるKD9(Uniqema社製)を使用した。
【0111】
比較例5
酸系分散剤であるKD15(Uniqema社製)を使用した。
【0112】
ガラスペースト組成物の調製
実施例5
ガラス粉末(ガラスフリット(ZnO35質量%、BaO20質量%、B30質量%、P12質量%)85質量%、ZnO5質量%、Al10質量%)37.69g、エチルセルロース1.93g、テルピネオール8.68g、酢酸ブチルカルビトール8.68g、フタル酸ジブチル0.4g、及び実施例1で調製した前記分散剤0.38gを混合して、攪拌器で攪拌した後、3−ロールミルを利用して練ることによって本発明によるガラスペースト組成物を調製した。ここで、前記ガラス粉末はビヒクルと共に用いられた。前記組成物の製造においては、ビヒクルの構成要素を混合してビヒクルを製造した後、前記ガラス粉末を添加した。
【0113】
比較例6
実施例1で調製した分散剤の代りに、比較例1のリン酸系分散剤であるBYK111を使用したことを除いては、実施例5と同じ方法でガラスペースト組成物を調製した。
【0114】
比較例7
実施例1で調製された分散剤の代りに、比較例2のオレイン酸を使用したことを除いては、実施例5と同じ方法でガラスペースト組成物を調製した。
【0115】
比較例8
実施例1で調製された分散剤の代りに、比較例3のサルコシンを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法でガラスペースト組成物を調製した。
【0116】
蛍光体ペースト組成物の調製
実施例6
蛍光体粒子として平均粒径2.5μm前後のBaMg10Al17:Euを40g、有機バインダーとしてエチルセルロース(EC)を6g、有機溶媒として質量比7:3のテルピネオールと酢酸ブチルカルビトール(BCA)との混合溶媒を54g、及び実施例1で調製した分散剤0.4gを、ペースト専用攪拌器を使用して混合することによって、本発明による蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0117】
実施例7
蛍光体粒子として、平均粒径約3.81μmであり、前もって130℃で24時間真空乾燥した、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+を40g(日本化成オプトニクス社製)、有機バインダーとしてエチルセルロース(EC,Ethocel,standard 45,米国のDow Chemical社製)6g、分散媒質として質量比7:3のα−テルピネオール(関東化学株式会社製)と酢酸ブチルカルビトール(BCA)(関東化学株式会社製)の混合溶媒54g、及び実施例2で調製した分散剤0.4gをペースト専用攪拌器を使用して混合することによって、本発明による蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0118】
実施例8
実施例2で調製した分散剤の代りに、実施例3で調製した分散剤を使用したことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0119】
実施例9
実施例2で調製した分散剤の代りに、実施例4で調製した分散剤を使用したことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0120】
実施例10
分散剤の含量を1質量%に定め、固形分の含量を10ないし40体積%の範囲で5体積%ずつ増加させたことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。同時に、前記固形分の増加によって前記分散媒質の量を減少させた。
【0121】
実施例11
分散剤の含量を1質量%に定め、固形分の含量を32体積%に定めたことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。同時に、前記固形分の増加によって前記分散媒質の量を減少させた。
【0122】
比較例9
分散剤を使用しないことを除いては、実施例6と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0123】
比較例10
実施例2で調製した分散剤の代りに、比較例2による分散剤を使用したことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0124】
比較例11
実施例2で調製した分散剤の代りに、比較例3による分散剤を使用したことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0125】
比較例12
実施例2で調製した分散剤の代りに、比較例4による分散剤を使用したことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0126】
比較例13
実施例2で調製した分散剤の代りに、比較例5による分散剤を使用したことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0127】
比較例14
分散剤を使用しないことを除いては、実施例7と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。
【0128】
比較例15
固形分の含量を10ないし30体積%の範囲で5体積%ずつ増加させたことを除いては、比較例9と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。同時に、前記固形分の増加によって分散媒質の量を減少させた。
【0129】
比較例16
固形分の含量を24体積%に定めたことを除いては、比較例9と同じ方法で蛍光体ペースト組成物を調製した。同時に、前記固形分の増加によって分散媒質の量を減少させた。
【0130】
PDPのバリアリブの製造
実施例12
実施例5で調製したガラスペースト組成物を約150μmの厚さに基板上に塗布し、その後乾燥させた。次いで、前記ペーストコーティング層の表面上に耐摩耗性の感光性フィルム(DFR:Dry Film Resister)をラミネートさせた。前記フィルムは、ロールを利用して前記ペーストコーティング層を加圧することによってラミネートされ、その目的は、後に行うサンドブラスティング工程で前記ペーストコーティング層を選択的に除去するためである。その後、前記DFRフィルムを露光及び現像させることによって、前記サンドブラスティングに対するマスクパターンを形成した。このような状態で高速のサンドブラスティングが実行されると、前記マスクパターンで遮蔽されていない部分の前記ペーストコーティング層が摩耗されて、バリアリブが形成された。その後、前記マスクパターンが除去され、480ないし500℃の温度で30分間前記バリアリブが焼結され、2時間という総焼結時間を経て、所望のバリアリブを完成した。
【0131】
比較例17
前記実施例5で調製したガラスペースト組成物の代りに、前記比較例7により調製したガラスペースト組成物を使用したことを除いては、実施例12と同じ方法でバリアリブを製造した。
【0132】
蛍光体層の製造
実施例13
実施例6で調製した蛍光体ペースト組成物を実施例12で形成したバリアリブ上に塗布して乾燥させた後、480ないし500℃の温度で30分間焼結し、2時間という総焼結時間を経て、蛍光体層を形成した。
【0133】
比較例18
実施例6で調製した蛍光体ペースト組成物の代りに、比較例15によって調製した蛍光体ペースト組成物を使用したことを除いては、実施例5と同じ方法で蛍光体層を形成した。
【0134】
実験例1:ガラスペースト組成物の粘度測定(分散性評価)
実施例5及び比較例6ないし8で調製したガラスペースト組成物の粘度を測定して、前記ガラスペースト組成物の分散性を評価した。粘度計としては、ブルークフィールド社のモデルRVIIを使用した。使用したスピンドルは、シリンダー型14番であった。温度は25℃であり、前記実験の結果を下記の表1に示した。
【0135】
【表1】

【0136】
表1に示したように、(リン酸系分散剤であるBYK111を使用した)比較例6の前記ガラスペースト組成物は、粘度が最も低くて分散性が最も優秀であった。実施例5の前記ガラスペースト組成物の粘度は、比較例6の場合と相対的に類似した範囲の粘度を示した。比較例7及び8の場合には、実施例5の場合より粘度がより高く表れた。前記表1に示した結果は、図3にグラフで示されている。実施例5の場合に表れる低い粘度は、実施例5に使われた本発明の分散剤により、説明することができる。すなわち、前記分散剤は分枝型アルキル基及びアリーレン基を伴った疎水部を有しているため、ガラス粒子同士の衝突によっても容易に壊れない安定な疎水性フィルム、及び表面張力を十分に低下させる、有機溶媒と前記ガラス粒子との間の界面でガラス粒子を伴った比較的大きな接触領域を有する親水部の両方を、ガラス粒子の表面上に形成することが可能となり、結果として前記分散剤は前記ガラス粒子を安定化させる。
【0137】
実験例2:蛍光体ペースト組成物の動的粘度の測定(分散性評価)
前記実施例6及び比較例9で調製された蛍光体ペースト組成物の動的粘度を測定して、前記蛍光体ペースト組成物の分散性を評価した。使用した粘度計は、TA(Thermal Analysis)Instruments社のAR200であった。また、25℃で60mmの円錐型スピンドルを使用した。前記実験の結果を下記の表2に示した。
【0138】
【表2】

【0139】
実施例6及び比較例9についての実験結果を図4ないし6に示した。図4に示したように、実施例6の分散剤含有蛍光体ペースト組成物が、比較例9の分散剤非含有蛍光体ペースト組成物に比べて相対的に低い動的粘度を表した。前記実験の結果は、解釈のために、図5に示したようにG’(貯蔵弾性率)及びG”(損失弾性率)で示されうる。ここで、G’は、変形が加えられた時に流体内に貯蔵されるエネルギーに該当し、G”は、変形が加えられた時に流体から損失されるエネルギーに該当する。また、図6に示したように、前記貯蔵弾性率に対する前記損失弾性率の割合(G”/G’)はtanδで表され、弾性の低い流体、すなわち、優れた分散性を伴う流体、若しくは低濃度の溶液では、tanδ値が増加するが、弾性の高い流体、すなわち、分散の劣る流体、若しくは高濃度の溶液では、tanδ値が減少する。前記図6に示したように、実施例6の分散剤含有蛍光体ペースト組成物が、比較例9の分散剤非含有蛍光体ペースト組成物よりも高いtanδ値を示したので、実施例6の前記蛍光体ペースト組成物は比較例9の場合に比べてさらに優れた分散性を有することが示された。
【0140】
実験例3:蛍光体ペースト組成物の動的粘度の測定(分散性評価)
実施例7ないし9及び比較例9で調製した蛍光体ペースト組成物の動的粘度を測定して、前記蛍光体ペースト組成物の分散性を評価した。使用した粘度計は、TA Instruments社のAR200であった。また、25℃で60mmの円錐型スピンドルを使用した。前記実験の結果を図11に示した。
【0141】
そして、実施例7及び比較例9、10ないし13で調製した蛍光体ペースト組成物の動的粘度も、上記と同じ方式で測定した。前記実験の結果を図12に示した。
【0142】
図11に示したように、本発明の分散剤における酸化エチレン基のサイズが増大するにつれて、ペースト組成物の粘度が急激に低下した。このような粘度低下は、分散剤と、分散媒質として用いられるエチルセルロースとの間の溶解性の違いのためであると考えられる。
【0143】
また、図12に示したように、本発明による実施例7の蛍光体ペースト組成物は、比較例9、10ないし13の場合よりも低い粘度を示した。このような低い粘度は、酸化エチレン基とカルボキシル基とを有する親水部、及びアルキル基とアリーレン基とを有する疎水部を伴った分散剤の構造のためであると考えられる。
【0144】
実験例4:固形分の含量に関する蛍光体ペースト組成物の粘度測定
実施例10及び比較例15で調製した蛍光体ペースト組成物の粘度を測定した。具体的な測定方法は、実験例1と同一である。前記実験の結果を図13に示した。
【0145】
図13に示したように、実施例10及び比較例15の蛍光体ペースト組成物の粘度は、固形分の含量の増加と共に上昇した。しかし、実施例10の場合には、固形分の含量が32体積%の時、粘度がスクリーン印刷工程に適したレベルである20Pa・sまで上昇したが、比較例15の場合には、固形分の含量が24体積%の時、粘度が実施例10と同等なレベルにまで到達した。従って、本発明の分散剤を含む蛍光体ペーストスラリは、それと同等の粘度を有する従来の蛍光体ペーストスラリよりも多くの蛍光体粒子を含むことが可能であることが示された。
【0146】
実験例5:蛍光体ペースト組成物を焼結することにより形成された蛍光体層の微細構造の評価
実施例11及び比較例16で調製した蛍光体ペースト組成物を、コーター(BYK gardner)を使用して基板上にコーティングし、蛍光体層を形成した。前記蛍光体層を480℃で30分間焼結させた。焼結された蛍光体層の微細構造をSEM(Scanning Electron Microscope,Hitachi S−4200)で観察した。観察結果を図14A及び図14B、並びに図15A及び図15Bに示した。
【0147】
図14A及び図15Aに示したように、比較例16で調製した蛍光体ペースト組成物を焼結することにより形成された蛍光体層は、表面が粗く、かつ分散性に劣るため、充填効率が低かった。一方、図14B及び図15Bに示したように、実施例11の蛍光体ペースト組成物を焼結することにより形成された蛍光体層は、表面が柔らかく、かつ優れた分散性により、充填効率が高かった。
【0148】
実験例6:残留炭素量の測定
実施例1で調製した分散剤、及び比較例1及び3の通常利用可能な分散剤に対して、TA−instruments社製のHi−Res TGA 2950熱重量分析機を使用してN雰囲気下で10℃/minの割合で昇温させつつ、前記分散剤サンプルの質量変化を測定した。前記測定の結果を表3に示した。
【0149】
【表3】

【0150】
表3に示したように、実施例1の分散剤が、2%未満という最も低い残留炭素量を示した。これに比べて、分散性に優れた比較例1の分散剤(リン酸系分散剤)は、約10%の残留炭素量を示した。このような高い残留炭素量を有する場合、分散剤の実際的な使用が困難になる。比較例3の場合にも、実施例1より高い残留炭素量を示した。本発明の分散剤がこのような低い残留炭素量を示すために、疎水部の分枝型アルキル基とアリーレン基、及び親水部の酸化アルキレン基とカルボキシル基が炭化された後、高分子化されずに分解されて気化すると考えられる。表3に示した結果は、図7ないし図9に具体的に示した。従って、実施例1の分散剤を含むガラスペースト組成物を使用して製造されたバリアリブは、従来のバリアリブよりも低い残留炭素量、及び向上した充填密度とを示しうる。
【0151】
図7は、本発明による実施例1の分散剤の熱重量分析結果であり、図8は、比較例1の通常利用可能なリン酸系分散剤の熱重量分析結果である。前記図面を通じて分かるように、比較例1のリン酸系分散剤は、焼結温度500℃以上で9.98%の残留炭素量を示すのに比べて、実施例1の分散剤は、焼結温度500℃以上で1.37%の残留炭素量を示した。これにより、本発明の分散剤は、残留炭素量を顕著に減少しうるということが分かる。
【0152】
実験例7:光ルミネッセンス(PL)効率の測定
実施例11及び比較例16で調製した蛍光体ペースト組成物がガラス基板上に印刷され、実験例5と同じ条件で焼結された後に、前記蛍光体ペースト組成物のPL(Photo Luminescence)強度が測定された。蛍光体ペースト組成物の発光特性は、蛍光分光光度計(ISS PCI,ISS Inc.)を使用して測定した。測定結果は、図16に示した。
【0153】
図16に示したように、前記蛍光体ペースト組成物は、410nmの紫外線によって励起されて、516nmで強いPL強度を示した。実施例11の蛍光体ペースト組成物を焼結させて得られた蛍光体ペースト組成物のPL強度は、比較例16の蛍光体ペースト組成物を焼結させて得られた蛍光体ペースト組成物のPL強度より10.23%も高かった。前記の向上したPL強度が、蛍光体粒子の均一かつ稠密な充填に起因していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、PDP関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明によるプラズマディスプレイパネルを示す略平面図である。
【図2】本発明による電界放出ディスプレイを示す略平面図である。
【図3】実施例5及び比較例6ないし8に対して調製されたペースト組成物の見かけ粘度を示すグラフである。
【図4】実施例6及び比較例9に対して調製されたペースト組成物の動的粘度を周波数(せん断速度)について示すグラフである。
【図5】実施例6及び比較例9に対して調製された前記ペースト組成物の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を示すグラフである。
【図6】実施例6及び比較例9に対して調製された前記ペースト組成物のtanδを示すグラフである。
【図7】実施例1に対して調製された分散剤についての熱重量分析(TGA)結果を示すグラフである。
【図8】比較例1に対して調製された分散剤についてのTGA結果を示すグラフである。
【図9】比較例3に対して調製された分散剤についてのTGA結果を示すグラフである。
【図10】p=5である化学式3の化合物のNMRスペクトルである。
【図11】実施例7ないし9及び比較例9に対して調製されたペースト組成物の動的粘度を示すグラフである。
【図12】実施例7及び比較例9ないし13に対して調製されたペースト組成物の動的粘度を示すグラフである。
【図13】実施例10及び比較例15に対して調製されたペースト組成物の動的粘度を示すグラフである。
【図14A】比較例16に対して調製されたペースト組成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14B】実施例11に対して調製されたペースト組成物のSEM写真である。
【図15A】比較例16に対して調製されたペースト組成物のSEM写真である。
【図15B】実施例11に対して調製されたペースト組成物のSEM写真である。
【図16】実施例11及び比較例16の前記ペースト組成物を用いて調製された蛍光体ペースト組成物の光ルミネッセンス(PL)効率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0156】
110 前面パネル
111 前面ガラス基板
112 Y電極
112a バス電極
112b 表示電極
113 X電極
113a バス電極
113b 表示電極
114 維持電極対
115 前面誘電体層
116 保護膜
120 背面パネル
121 背面ガラス基板
122 アドレス電極
123 背面誘電体層
124 バリアリブ(隔壁)
125 蛍光体層
411 背面基板
412 陰極
413 絶縁層
414 ゲート
415 微細開口
416 エミッタ
421 前面基板
422 陽極
423 蛍光層
424 ブラックマトリックス
431 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分枝型アルキル基及びアリーレン基を含む疎水部と;
酸化アルキレン基及びカルボキシル基を含む親水部とを含む分散剤であって、
前記アルキル基が炭素数5ないし30の置換または非置換のアルキル基であり、前記アリーレン基が炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基であり、前記酸化アルキレン基が炭素数2ないし10の置換または非置換の酸化アルキレン基である、分散剤。
【請求項2】
前記分散剤は、下記の化学式1:
【化1】

前記式で、
は、炭素数5ないし30の置換または非置換の分枝型アルキル基であり;
Aは、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリーレン基であり;
及びRは、それぞれ独立して炭素数2ないし5の置換または非置換のアルキレン基であり;
kは、0ないし4の実数であり;
n及びmは、それぞれ独立して0ないし30の実数であり、かつ3≦n+m≦30である、
で示される、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
前記分散剤は、下記の化学式2:
【化2】

前記式で、
は、炭素数5ないし30の置換または非置換の分枝型アルキル基であり;
は、炭素数2ないし5の置換または非置換のアルキレン基であり;
n’は、1ないし30の実数である、
で示される、請求項1または2に記載の分散剤。
【請求項4】
前記分散剤は、下記の化学式3:
【化3】

前記式で、pは、2ないし10の実数である、
で示される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分散剤。
【請求項5】
無機粒子と;
有機溶媒と;
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の分散剤を含む、ペースト組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、テルピネオール、ブチルカルビトール、酢酸ブチルカルビトール、ペンテンジオール、ジペンテン、リモネン、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、酢酸エチレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジエチレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジエチレングリコールジアルキルエーテル、酢酸トリエチレングリコールアルキルエーテル、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸プロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールアルキルエーテル、酢酸トリプロピレングリコールアルキルエーテル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、及び蒸留水からなる群から選択される、いずれか一以上である、請求項5に記載のペースト組成物。
【請求項7】
前記組成物は、前記無機粒子100質量部を基準として、前記有機溶媒24ないし80質量部、及び前記分散剤0.5ないし3質量部を含む、請求項5または6に記載のペースト組成物。
【請求項8】
前記無機粒子はガラス粉末であり、前記ペースト組成物は有機バインダーを更に含む、請求項5ないし7のいずれか1項に記載のペースト組成物。
【請求項9】
前記ガラス粉末は、PbO、BaO、SiO、B、Al、ZnO、Bi、MgO、NaO、KO、TiO、ZrO、CuO、及びSnOからなる群から選択される、いずれか一以上である、請求項8に記載のペースト組成物。
【請求項10】
前記有機バインダーは、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、酸化ポリエチレン、アクリレート樹脂、ビニル樹脂、及びポリプロピレンカーボネートからなる群から選択される、いずれか一以上である、請求項8または9に記載のペースト組成物。
【請求項11】
前記組成物は、添加剤を更に含む、請求項8ないし10のいずれか1項に記載のペースト組成物。
【請求項12】
前記組成物は、前記ガラス粉末100質量部を基準として、前記有機バインダー3ないし6質量部、前記有機溶媒21ないし74質量部、及び前記分散剤0.5ないし3.0質量部を含む、請求項8ないし10のいずれか1項に記載のペースト組成物。
【請求項13】
前記組成物は、前記ガラス粉末100質量部を基準として、添加剤0.1ないし3質量部を更に含む、請求項11に記載のペースト組成物。
【請求項14】
前記組成物は、温度25℃、せん断速度1sec−1での粘度が10,000ないし60,000cpsである、請求項5ないし13のいずれか1項に記載のペースト組成物。
【請求項15】
前記無機粒子は、蛍光体粒子であり、前記組成物は、有機バインダーを更に含む、請求項5ないし7のいずれか1項に記載のペースト組成物。
【請求項16】
前記蛍光体粒子は、YBO:Tb、BaMg10Al17:Eu、YGdBO:Eu、及びZnSiO:Mnからなる群から選択される、いずれか一以上である、請求項15に記載のペースト組成物。
【請求項17】
前記組成物は、添加剤を更に含む、請求項15または16に記載のペースト組成物。
【請求項18】
前記組成物は、前記蛍光体粒子100質量部を基準として、前記有機バインダー3ないし6質量部、前記有機溶媒21ないし74質量部、及び前記分散剤0.5ないし3質量部を含む、請求項15ないし17のいずれか1項に記載のペースト組成物。
【請求項19】
前記組成物は、前記蛍光体粒子100質量部を基準として、添加剤0.1ないし3質量部を更に含む、請求項17に記載のペースト組成物。
【請求項20】
請求項5ないし19のいずれか1項に記載のペースト組成物を用いたディスプレイ装置。
【請求項21】
前記ディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネルである、請求項20に記載のディスプレイ装置。
【請求項22】
前記ディスプレイ装置は、電界放出ディスプレイである、請求項20に記載のディスプレイ装置。
【請求項23】
請求項5ないし19のいずれか1項に記載のペースト組成物を用いて製造されたバリアリブを含む、プラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図10】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2007−7648(P2007−7648A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181612(P2006−181612)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】