説明

分散剤およびその製造方法、使用方法

【課題】 本発明は、分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重結合を有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】 分子主鎖中に、一般式(化1)で表される不飽和二重結合を有する結合単位を含有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤。
【化1】


(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖に特定モノマー由来の二重結合を有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤およびその製造方法、使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に反応性の不飽和二重結合を導入したポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコールを、重合性二重結合を含有する反応性分子で後変性(post−modification)することによりポリビニルアルコール側鎖に不飽和二重結合を導入して得られたもの(例えば、特許文献1参照)や、保護されたエチレン性不飽和二重結合を有するポリビニルエステル系共重合体を得た後で保護を外して得られたもの(例えば、特許文献2参照)、アルデヒド類を連鎖移動剤として用いてポリビニルアルコール分子末端に不飽和二重結合を導入させたもの(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【特許文献1】特開平04−283749号公報
【特許文献2】特開2001−072720号公報
【特許文献3】特開2004−250695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重結合を有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤およびその製造方法、使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定のモノマーを重合させてケン化反応させたポリビニルアルコールからなる分散剤により、上記の課題を解決できる。
【0005】
すなわち本発明は、分子主鎖中に、一般式(化9)で表される結合単位を含有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤である。この場合において、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度は0.05以上が好ましく、分散剤中の未変性ポリビニルアルコールの含有量が25質量%以下であることが好ましい。
【化9】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【発明の効果】
【0006】
分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重結合を有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
変性ポリビニルアルコールは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーを共重合させた後に、ケン化させてカルボニル基含有ポリビニルアルコールを得、洗浄、乾燥を行って得られるものであり、主鎖にカルボキシル基を起点とする不飽和二重結合をランダムに導入させたものである。
【0008】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、一般式(化10)で表されるものを好適に使用出来る。
【化10】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基または水素原子を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等がある。
【0009】
また、一般式(化11)で表されるモノマーも好適に使用出来る。
【化11】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基または水素原子を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、シトラコン酸ジメチル等がある。
【0010】
また、一般式(化12)で表されるモノマーも好適に使用出来る。
【化12】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等がある。
【0011】
これらモノマーの含有量(共重合量)は、特に限定するものではないが、分子内の不飽和二重結合量と水溶性を確保する観点から、0.1〜50モル%が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましい。
【0012】
ビニルエステル単位を有するモノマーとしては、特に限定するものではないが、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等があり、安定して重合を行えるという観点から酢酸ビニルが好ましい。
【0013】
また、必要に応じて、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。共重合可能なモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類、またはその塩類、または炭素数1〜18のモノアルキルエステル類もしくはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのメタクリルアミド類、炭素数1〜18のアルキル鎖長を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル等がある。これら共重合可能なモノマーの使用量は、特に限定するものではないが、使用する全モノマーに対して0.001〜20モル%が好ましい。
【0014】
変性ポリビニルアルコールの数平均分子量(以下Mnと略記する。)は、特に限定するものではないが、一般に使用されている1900〜66500の範囲がよく、水溶性、保護コロイド性のバランスを向上させる観点から3800〜28500の範囲がより好ましい。
【0015】
モノマーの重合方法は、特に限定するものではないが、公知の重合方法が用いられ、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコールなどのアルコールを溶媒とする溶液重合が行なわれる。バルク重合、乳化重合、懸濁重合を行なうことも可能である。かかる溶液重合において、連続重合でもバッチ重合でもよく、モノマーは、分割して仕込んでもよいし、一括で仕込んでもよく、あるいは連続的にまたは断続的に添加するなど任意の手段を用いてよい。
【0016】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。重合反応温度は、通常30℃〜90℃程度の範囲から選択される。
【0017】
ケン化は、モノマーを共重合させて得られた共重合体をアルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で分子中のエステルを加水分解するものである。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等がある。アルコール中の共重合体の濃度は、特に限定するものではないが、10〜80重量%の範囲から選ばれる。アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。これら触媒の使用量は、共重合体に対して1〜100ミリモル当量にすることがよい。ケン化温度は、特に限定するものではないが、10〜70℃、好ましくは30〜40℃の範囲がよい。反応時間は、特に限定するものではないが、30分〜3時間にわたって行われる。
【0018】
変性ポリビニルアルコールの吸光度は、特に限定するものではないが、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度が、0.05以上のものが好ましい。この吸光度は、ケン化工程において使用する触媒の量、ケン化時間、ケン化温度を変更することによって任意の値に調整することができる。
【0019】
ここで、紫外線吸収スペクトルの帰属については、特開2004−250695公報等に、215nmの吸収はポリビニルアルコール系樹脂中の−CO−CH=CH−の構造に帰属し、280nmの吸収はポリビニルアルコール系樹脂中の−CO−(CH=CH)2−の構造に帰属し、320nmの吸収はポリビニルアルコール系樹脂中の−CO−(CH=CH)3−の構造に帰属に関するという記載がある。
【0020】
一般的なアルデヒド類を連鎖移動剤として用いたポリビニルアルコールの不飽和二重結合の二連鎖構造(−CO−(CH=CH)2−)由来の紫外線吸収スペクトルは、280nm近傍にピークトップがくるが、本発明の変性ポリビニルアルコールにおける、一般式(化13)の構造に由来し270nm中心で265〜275nmの範囲に含まれるピークを有するものである。比較のチャートを(図1)に示す。
【化13】

【0021】
変性ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定するものではないが、十分な不飽和二重結合を生成させるという観点から30モル%〜99.9モル%がよい。
【0022】
本発明の分散剤は、例えば、エチレン性不飽和モノマーを重合する際に好適に使用されるものである。ここでいうエチレン性不飽和モノマーとは、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、ビニルエステル単位を有するモノマー、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー及び(メタ)アクリル酸モノマーや、これらのモノマーと共重合可能なモノマーなどがあり、これらは単独で重合させてもよく、複数のモノマーを共重合させてもよい。
重合方法としては、懸濁重合や乳化重合が挙げられる。
【0023】
分散剤の添加方法は、特に限定するものではないが、重合初期に重合させるモノマーとともに全量を添加する方法(初期添加)や、重合させるモノマーの重合率が50%〜99%になった時点から重合終了までの間に添加する方法(後添加)、重合初期に添加する分散剤の10質量%〜99質量%を添加し、残りの分散剤を重合させるモノマーの重合率が10%〜99%になった時点から重合終了までの間に添加する方法(分散添加)がある。得られる重合粒子の機械的安定性を向上させるという観点からは、分散剤を後添加や分散添加する方法が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明する。
尚、特に断りがない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0025】
実施例1
〈変性ポリビニルアルコールの製造〉
酢酸ビニル17部、メタノール14部、マレイン酸ジメチル0.023部及び酢酸ビニルに対して0.10%のアゾビスイソブチロニトリルを重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温し、更に、酢酸ビニル6部、メタノール5部及びマレイン酸ジメチル0.207部の混合液を重合率75%に達するまで連続的に添加して重合させ、重合率90%に達した時点で重合を停止した。次いで常法により未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を水酸化ナトリウムで常法によりケン化した。その後、90℃で90分熱風乾燥し、分子量(Mn)11000、ケン化度88.0モル%、マレイン酸ジメチル0.6モル%、0.2%水溶液の波長270nmにおける吸光度0.9、無変性ポリビニルアルコール量13%の変性ポリビニルアルコールを得た。
【0026】
〈分析方法〉
変性ポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K 6276「3.5ケン化度」に準じて測定したものであり、変性ポリビニルアルコールの分子量は、GPCを使用し、試料濃度0.25w/v%水溶液を40℃で測定し、標準ポリエチレングリコール換算でMnを計算しものである。無変性ポリビニルアルコールの含有量は、変性ポリビニルアルコールをメタノール中でアルカリ触媒にて完全ケン化し、ソックスレー抽出した試料を濃度0.01w/v%水溶液に調整し、イオン排除のHPLCを使用し、IR検出器の面積比で計算したものである。270nm吸光度は、変性ポリビニルアルコールを0.2質量%の水溶液に調整し、270nmの紫外線の吸光度を測定したものである。マレイン酸ジメチルの含有量はNMRにより測定したものである。
【0027】
〈アクリルモノマーの乳化重合〉
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入口を備えたガラス製重合容器にイオン交換水500部を加え、ポリビニルアルコール40部を添加して、加熱攪拌し溶解した。その後、重合容器内温度を70℃にして、重合開始剤として過硫酸アンモニウム2重量部とメタクリル酸メチル23部とアクリル酸2エチルヘキシル23部を添加し30分重合した。次に重合容器内温度を80℃に昇温して、メタクリル酸メチル207部とアクリル酸2エチルヘキシル207部を3時間かけて連続的に添加した。連続添加終了後、過硫酸アンモニウム0.05gを追加して1時間熟成反応を行い、重合を完結した。得られたアクリル樹脂エマルジョンの物性を下記の方法に従い測定した。
【0028】
〈酢酸ビニルモノマーの乳化重合(初期添加)〉
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入口を備えたガラス製重合容器にイオン交換水500部を加え、ポリビニルアルコール40部を添加して、加熱攪拌し溶解した。その後、重合容器内温度を70℃にして、重合開始剤として過硫酸アンモニウム2重量部と酢酸ビニル64部を添加し30分重合した。次に重合容器内温度を80℃に昇温して、酢酸ビニル514部を3時間かけて連続的に添加した。連続添加終了後、過硫酸アンモニウム0.05gを追加して1時間熟成反応を行い、重合を完結した。得られた酢酸ビニル樹脂エマルジョンの物性を下記の方法に従い測定した。
【0029】
〈酢酸ビニルモノマーの乳化重合(後添加)〉
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入口を備えたガラス製重合容器にイオン交換水550部を加え、鹸化度95.4モル%、重合度1700のポリビニルアルコール35部を添加して、加熱攪拌し溶解した。その後、重合容器内温度を75℃にして、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と酢酸ビニル41.5部を添加し30分重合した。次に、過硫酸アンモニウム0.7重量部と酢酸ビニル373.5部を2.5時間かけて連続的に添加した。酢酸ビニルモノマーの重合率が94%になった時点で、10%ポリビニルアルコール水溶液50部を後添加した後、1時間熟成反応を行い、重合を完結した。得られた酢酸ビニル樹脂エマルジョンの物性を下記の方法に従い測定した。
【0030】
〈エマルジョン平均粒子径〉
レーザー回折粒度分布計「SALD 3000」(株式会社島津製作所製)を使用し、超音波5分間照射後に測定を実施した。
【0031】
〈エマルジョン粘度〉
エマルジョンを30℃に温調した後、BH型粘度計(ローターNo.6またはNo.7)を使用し4rpmで粘度を測定した。
【0032】
〈機械安定性〉
エマルジョン50gを純水50gで希釈し、マーロン機械安定性試験機により加重10kgを加え1000rpmで10分間攪拌した。その後、80メッシュの金網で洗浄ろ過し110℃の機やオーブンで2時間乾燥し下記計算式で機械安定性を求めた。
機械安定性(wt%/エマルジョン)=乾燥重量/エマルジョン重量×100
【0033】
実施例2〜14、比較例1〜9
ケン化度、分子量(Mn)、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの種類、変性量、エチレン性不飽和モノマー乳化重合時のポリビニルアルコールの添加量をそれぞれ表1または表2に記載したように変えた以外は、実施例1と同様にして変性ポリビニルアルコールを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
【0034】
本発明の分散剤を不飽和酸類重合体、ビニルエステル単位を有するモノマー重合体等の乳化重合用分散剤として用いる時、得られる重合体のエマルジョン平均粒子径は大きく安定であり、かつ分散性に優れる。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1の変性モノマーの欄において、Iはマレイン酸ジメチル、IIは無水マレイン酸を表す。また、表1及び表2のエマルジョン重合モノマーの欄において、iは酢酸ビニル、iiはメタクリル酸メチルとアクリル酸2エチルヘキシルの混合物を表す。
【産業上の利用可能性】
【0038】
変性ポリビニルアルコールは、必要に応じて、光開始剤、重合性モノマー等と組み合わせることにより、紫外線、電子線等のエネルギー線で容易に硬化させることが可能であり、塗料、インキ、接着剤、印刷版、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、懸濁重合時の分散剤、酢酸ビニルエマルジョン重合時の保護コロイド剤、アクリルエマルジョン重合時の保護コロイド剤、スチレンエマルジョン重合時の保護コロイド剤等に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例2、実施例4の紫外線吸収スペクトルと、従来のアルデヒド変性ポリビニルアルコールの紫外線吸収スペクトルを比較した図
【符号の説明】
【0040】
1 実施例2の紫外線吸収スペクトル
2 実施例4の紫外線吸収スペクトル
3 従来のアルデヒド変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製L−8)の紫外線吸収スペクトル
1 従来のアルデヒド変性ポリビニルアルコール(シンソマー・リミテッド製アルコテックス72.5)の紫外線吸収スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子主鎖中に、一般式(化1)で表される結合単位を含有する変性ポリビニルアルコールからなる分散剤。
【化1】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項2】
0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度が、0.05以上であることを特徴とする請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
一般式(化2)で表される不飽和二重結合由来の紫外線吸収スペクトルのピークトップが、265〜275nmの間にあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の分散剤。
【化2】

【請求項4】
分散剤中の未変性ポリビニルアルコールの含有量が、25%質量以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載した分散剤。
【請求項5】
一般式(化3)〜一般式(化5)で表されるモノマーの少なくとも一種と、ビニルエステル単位を有するモノマーとを共重合させた後、得られた共重合体をケン化することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載した分散剤の製造方法。
【化3】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化4】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化5】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項6】
一般式(化6)〜一般式(化8)で表されるモノマーの少なくとも一種と、ビニルエステル単位を有するモノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させた後、得られた共重合体をケン化することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載した分散剤の製造方法。
【化6】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化7】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子または金属塩を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【化8】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩または水素原子を表す。)
【請求項7】
エチレン性不飽和モノマーを重合する際に使用される請求項1〜4いずれか一項に記載した分散剤。
【請求項8】
エチレン性不飽和モノマーの重合率が50%〜99%になった時点から重合終了までの間に、請求項1〜4のいずれか一項に記載した分散剤を添加することを特徴とする分散剤の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−100060(P2007−100060A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352151(P2005−352151)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】