説明

分散直流電源制御回路

【課題】複数の分散直流電源が並列に直流送電線路に接続した状態で連系運転を行う場合、各々の分担出力電流を安定的に制御するためには相互に出力電流値を高速の伝送によって、伝送することが必要である。または分散直流電源の出力部と直流送電線路間に抵抗器を設置することが必要であり、抵抗器による電力損失が発生する。また多数の分散直流電源の連系運転における単独運転状態の判定方法が確立されていない。
【解決手段】 分散直流電源の出力電流に対する電圧低下量を設定可能とする。直流送電線路の負荷電流が変化したことによって直流送電線路の電圧が変化した場合、各々の分散直流電源の分担する出力電流にたいする出力電圧が、その直流送電線路の電圧に等しくなる各分散直流電源の出力電流値において安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流送電線路における分散直流電源に関する。
【背景技術】
【0002】
分散電源の連系は交流伝送路を経由して連系するのが一般的である。
直流電源を並列に接続する場合、近距離の電源同士である。各直流電源の電流分担は各分散直流電源の出力電流を検出し、高速伝送回路を経由して各電源の出力電流値データを各電源間で授受することによって、各電源相互の出力電流を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−275348号公報
【特許文献2】特開2004−208426号公報
【特許文献3】特開平7−194118号公報
【特許文献4】特開昭54−67647号公報
【特許文献5】特開2001−224176号公報
【特許文献6】特開2000−322134号公報
【特許文献7】特開平11−275862号公報
【特許文献8】特開平11−155282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術においては、複数の直流電源を直流送電路で連系する場合、基本的に近距離の分散直流電源回路を前提にしている。そのため太陽光発電などの発電電力を直流送電路において連系運転すると同時に電力を送電する場合のように分散直流電源間の距離が近距離でない場合には適切でない。
【0005】
先行技術においては、直流電源を並列に運転する場合に各直流電源間の制御が独立していないので、直流電源を追加、撤去する場合に各直流電源の制御回路間の信号を変更する必要が発生する。
【0006】
分散直流電源相互の影響を少なくするために分散直流電源の出力部に抵抗を挿入する方法もあるが大容量の抵抗が必要となり、抵抗において発生する損失が大きい。
【0007】
自然エネルギーを電力源とする電源の発電量は不安定であり、出力可能電力を推定する技術が必要である。
【0008】
直流送電線路に多数の分散直流電源が存在する場合、分散直流電源の単独運転を検出する方法の提案がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の分散直流電源と、前記分散直流電源が並列に接続する直流送電線路と、で構成される分散直流電源連系システムにおいて、前記分散直流電源の出力部に出力電流の逆流を防止し、出力電圧および出力電流を制御するDC/DCコンバータを有し、
前記DC/DCコンバータに内部設定器あるいは外部より伝送によって前記DC/DCコンバータ内に直接設定される、あるいは設定された内部定数によって計算される、前記DC/DCコンバータの出力電流計測値に応じた出力電圧設定値と、最大出力電圧設定値と最小出力電圧設定値と、別途設定される最大出力可能電流設定値と前記DC/DCコンバータの出力電圧計測値すなわち分散直流電源と直流送電線路の接続点である連系点における直流送電線路電圧計測値と、によって算出される出力電流設定値を目標値として、
前記DC/DCコンバータの前記出力電流計測値を前記目標値に等しくなるように制御する、また前記分散直流電源の前記出力電圧計測値が直流送電線路最大出力電圧設定値を超えないように、さらに前記分散直流電源の前記出力電流計測値が前記最大出力可能電流設定値を超えないように制御することによって、各々の前記分散直流電源の前記直流送電線路における電流分担率を制御することを特徴とする分散直流電源制御回路を提供するものである。
【0010】
すなわち分散直流電源の出力電圧一定制御範囲あるいは出力電流一定制御範囲を除き、出力電流が増加するとその出力電圧が一定の割合で電圧が低下するように制御することによって、各々の分散直流電源の直流送電線路における電流分担率を制御可能とするものである。
【0011】
また本発明は、前記分散直流電源の前記出力電圧設定値をDC/DCコンバータ制御回路内部制御回路あるいは外部からの伝送によって一時的に設定値と異なる値に設定変更し、前記分散直流電源の出力電流を変動させて、その時の前記DC/DCコンバータの出力電圧、出力電流を計測することにより、前記DC/DCコンバータの前記最大出力可能電流設定値を設定することを特徴とする請求項1の分散直流電源制御回路を提供するものである。
【0012】
すなわちその分散直流電源の電力源が太陽電池等のように天候などによって、その発電電力が不安定な電力源である場合、その電力源の発電可能電力の上限値に応じた最大出力可能電流設定値を設定可能とする。以後は前記最大出力可能電流設定値を直流送電線路におけるその分散直流電源の電流分担率を算出するための基準とすることによって、その電力源の最大出力可能電力に応じた送電線路の電流を分担することを可能とするものである。
【0013】
また本発明は、分散直流電源の前記出力電圧設定値を一時的に設定値と異なる値に変更した時、その出力電力が前記発電可能電力以下である範囲内において、前記出力電流計測値の変動量が閾値より少ないことを出力電流計測回路によって計測することによって、前記分散直流電源が単独運転状態であると判定することを特徴とする請求項1の分散直流電源制御回路を提供するものである。
【0014】
すなわちその分散直流電源が連系運転している直流送電線路において、その分散直流電源が単独運転状態であることを検出することを可能とするものである。
【発明の効果】
【0015】
各分散直流電源の制御回路が独立しており、各分散直流電源の分担率を変更するためには伝送回線経由で各分散直流電源内部の設定値を変更することで可能となる。分散直流電源を追加、撤去する場合に、他の分散直流電源との間で信号の授受などを変更する作業が容易となる。
【0016】
分散直流電源の電力源が太陽電池等の場合、天候などによってその発電電力が不安定である。その分散直流電源が他分散直流電源と連系運転している直流送電路における電流分担率を、その電力源の最大発電可能電力に応じて、自動的に調整することが可能となる。
【0017】
事故発生時などによって分散直流電源の単独運転が発生した場合、直流送電線路が充電状態のままとなる等の単独運転に起因する問題を、分散直流電源の単独運転を検出することによって回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例における分散直流電源連系システムブロック図
【図2】本発明の実施例におけるDC/DCコンバータブロック図
【図3】本発明のDC/DCコンバータ出力電圧・電流関係図
【図4】本発明のDC/DCコンバータ制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係わる分散直流電源制御回路の実施形態について説明する。
近年問題になっている地球温暖化は二酸化炭素の排出が大きな原因の一つである。クリーンなエネルギー源として太陽電池は有効である。
しかし太陽電池は発電効率が20%前後で電力密度が低いために広範囲に分散設置される。多数の分散直流電源と負荷装置が直流送電線路によって接続される。
【0020】
広範囲に分散設置した複数の分散直流電源の発生電力を直流送電線路経由で負荷装置に送電する場合、各分散直流電源の出力電流に対する電圧低下量を設定することによって、直流送電線路においてその分散直流電源より供給する電流の分担量を制御する。
【0021】
太陽電池などの分散直流電源の発電電力は時間、天候などの影響を受けるために不安定である。本発明は分散直流電源の出力電圧設定値を一時的に変動することによって、その分散直流電源の最大発電可能電力を計測し、その最大発電可能電力に対応する最大出力可能電流設定値を設定する。
【0022】
各分散直流電源の前記最大発電可能電力に相当する最大出力可能電流を基準として、各分散直流電源の出力電流に対する電圧低下量の設定を行う。送電線路電流の分担量を前記各分散直流電源の前記最大出力可能電流に応じて設定する事が可能となる。
【0023】
単独運転を判定することによって、単独運転によって直流送電線路が充電状態のままとなる等の状態を回避可能となる。
【0024】
図1の分散直流電源10a〜10nは太陽電池パネル11a〜11nと、太陽パネル間の電流の逆流を防止する逆流防止整流器12a〜12nとDC/DCコンバータ13a〜13nと、伝送制御回路15a〜15nと、で構成されている。上記分散直流電源10a〜10nは直流送電線路1に並列に接続されている。直流送電線路1には負荷装置20a〜20mも並列に接続されている。
分散直流電源10a〜10n内の伝送制御回路15a〜15nと、中央監視制御装置30内の伝送制御回路35と、は伝送線路2で接続されている。
【0025】
図2は前記DC/DCコンバータ13(図1においては13a〜13n)の内部回路の例をブロック図で示したものである。前記DC/DCコンバータ13は伝送制御回路15(図1においては15a〜15n)、伝送路2を経由して中央監視装置30と前記DC/DCコンバータ13(図1においては13a〜13n)の運転状態、故障内容などの監視信号及び運転制御信号を送受信するだけでなく、下記制御データを中央監視装置30より受信する。
Vsmx 最大出力電圧設定値
Vmx 直流送電線路最大出力電圧設定値
Vsmn 直流送電線路最小出力電圧設定値
また前記DC/DCコンバータ13内の各部の計測値、設定値などは伝送制御回路15(図1においては15a〜15n)、伝送路2を経由して中央監視装置30に送信する。
下記制御データは前記DC/DCコンバータ13(図1においては13a〜13n)内の設定器によって装置固有の制御データとして設定される。
Vmax 装置最大出力可能電圧
Imax 装置最大出力可能電流
下記制御データは中央監視装置30よりデータを受信する、あるいは請求項2によって推定した最大出力可能電力に相当する電流値を設定する。
Ismx 最大出力電流設定値
【0026】
前記DC/DCコンバータ13(図1においては13a〜13n)内の電流計測部51、電圧計測部52において各回路部の電流値、電圧値を計測する。PWM制御部53は制御回路56からの指令によって、PWM制御信号を絶縁手段49経由でスイッチング素子41に送信することにより出力部電圧を制御する。電流制限回路54は出力電流計測値Ioが装置最大出力可能電流Imaxを超えた場合に制御回路56に対して電流制限信号を発信する。同様に電圧制限回路55は出力電圧計測値Voが装置最大出力可能電圧Vmaxを超えた場合に制御回路56に対して電圧制限信号を発信する。制御回路56は前記電流制限信号、電圧制限信号を受信した場合、PWM制御部53への信号を制御することによって電流あるいは電圧の上昇を抑制する。
【0027】
前記制御回路56が前記電流制限信号、電圧制限信号を受信しない状態においては伝送制御回路15を経由して監視制御回路57の内部に設定された制御データを使用して、図4のフローチャートにしたがって制御される。
【0028】
図4のフローチャートにおいては直流送電線路1と分散直流電源10(図1においては10a〜10n)との接続点すなわち連系点の電圧計測値Vl即ち分散直流電源10(図1においては10a〜10n)の出力電圧計測値Vo、及び分散直流電源10(図1においては10a〜10n)の出力電流計測値Ioが図3における図形OHCEL内になるように制御される。従って直流送電線路電圧計測値Vlが直流送電線路最大出力電圧設定値Vmx以下の場合は出力電流計測値Ioが増加すると出力電圧計測値Voが一定の割合で低下する。
【0029】
直流送電線路1に接続されている負荷装置の電流が増加して直流送電線路1の直流送電線路電流が増加した場合、分散直流電源10a〜10nは共通の直流送電線路1に並列に接続されているので各分散直流電源の出力電流計測値Ioが増加する。各分散直流電源の出力電流計測値Ioが増加すると出力電圧計測値Voが低下する。各分散直流電源10a〜10nは各出力電圧計測値Voが同じ値になる各分散直流電源10a〜10nの出力電流計測値Ioにおいて直流送電線路電流を分担する状態で安定する。
【0030】
各分散直流電源10a〜10nが出力可能な電流は各分散直流電源10a〜10n内の太陽電池パネル11a〜11nの発生電力、従って天候などの影響を受ける。
【0031】
一時的に直流電源内の出力電圧設定値Vsoを各分散直流電源10a〜10nの内部制御あるいは外部からの設定によって設定値の変更を行い、その直流電源が分担する直流送電線路電流の分担量を増加した場合、DC/DCコンバータ13a〜13nの出力電圧設定値Vsoを増加しても、出力電圧計測値Vo、出力電流計測値Io共にをそれ以上増加することができなくなる状態における分散直流電源10a〜10nの出力電力が最大出力可能電力である。前記最大出力可能電力発生時における出力電流計測値Ioを最大出力可能電流設定値Ismxとして設定することによって、各分散直流電源10a〜10nの発生可能電力を基準とした、各分散直流電源10a〜10nによる直流送電線路1の電流の分担が可能となる。
【0032】
また分散直流電源10a〜10nが直流送電線路1によって連系運転する場合、直流送電線路1の線路の切断、あるいは事故による他分散直流電源の遮断等によって分散直流電源が単独状態となった場合、単独運転による感電事故などが発生して安全を脅かすおそれがある。このため、分散直流電源の単独運転状態を検出することによって、分散直流電源の単独運転を防止する機能が不可欠である。
【0033】
単独運転状態でない場合、分散直流電源の出力電圧設定値Vsoを変動することによって、その分散直流電源の出力電流計測値Ioが変動する。しかし単独運転状態においてはこの電流変化が少ない。出力電圧設定値Vsoの設定変更を定期的かつ一次的に行い、その変更によって生ずる出力電流計測値Ioの変化が閾値以内であることによって、当該分散直流電源が単独運転状態であると判定することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 直流送電線路
2 伝送線路
10(10a〜10n) 分散直流電源
11(11a〜11n) 太陽電池パネル
12(12a〜12n) 逆流防止整流器
13(13a〜13n) DC/DCコンバータ
15(15a〜15n) 伝送制御回路
20(20a〜20m) 負荷装置
25(25a〜25m) 伝送制御回路
30 中央監視制御装置
35 伝送制御回路
41 スイッチング素子
42 変圧器
43 整流器
44 整流器
45 整流器
46 リアクトル
47 コンデンサ
48 電流計測抵抗
49 絶縁手段
51 電流計測部
52 電圧計測部
53 PWM制御部
54 電流制限回路
55 電圧制限回路
56 制御回路
57 監視制御回路
Vsmx 最大出力電圧設定値
Vmax 装置最大出力可能電圧
Vmx 直流送電線路最大出力電圧設定値
Vso 出力電圧設定値
Vo 出力電圧計測値
Vsmn 直流送電線路最小出力電圧設定値
Vl 直流送電線路電圧計測値
Imax 装置最大出力可能電流
Ismx 最大出力可能電流設定値
Iso 出力電流設定値
Io 出力電流計測値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分散直流電源と、前記分散直流電源が並列に接続する直流送電線路と、で構成される分散直流電源連系システムにおいて、前記分散直流電源の出力部に出力電流の逆流を防止し、出力電圧および出力電流を制御するDC/DCコンバータを有し、前記DC/DCコンバータに内部設定器あるいは外部より伝送によって前記DC/DCコンバータ内に直接設定される、あるいは設定された内部定数によって計算される、前記DC/DCコンバータの出力電流計測値に応じた出力電圧設定値と、最大出力電圧設定値と最小出力電圧設定値と、別途設定される最大出力可能電流設定値と前記DC/DCコンバータの出力電圧計測値すなわち分散直流電源と直流送電線路の接続点である連系点における直流送電線路電圧計測値と、によって算出される出力電流設定値を目標値として、前記DC/DCコンバータの前記出力電流計測値を前記目標値に等しくなるように制御する、また前記分散直流電源の前記出力電圧計測値が直流送電線路最大出力電圧設定値を超えないように、さらに前記分散直流電源の前記出力電流計測値が前記最大出力可能電流設定値を超えないように制御することによって、各々の前記分散直流電源の前記直流送電線路における電流分担率を制御することを特徴とする分散直流電源制御回路。
【請求項2】
前記分散直流電源の前記出力電圧設定値をDC/DCコンバータ制御回路内部制御回路あるいは外部からの伝送によって一時的に設定値と異なる値に設定変更し、前記分散直流電源の出力電流を変動させて、その時の前記DC/DCコンバータの出力電圧、出力電流を計測することにより、前記DC/DCコンバータの前記最大出力可能電流設定値を設定することを特徴とする請求項1の分散直流電源制御回路。
【請求項3】
分散直流電源の前記出力電圧設定値を一時的に設定値と異なる値に変更した時、その出力電力が前記発電可能電力以下である範囲内において、前記出力電流計測値の変動量が閾値より少ないことを出力電流計測回路によって計測することによって、前記分散直流電源が単独運転状態であると判定することを特徴とする請求項1の分散直流電源制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80736(P2012−80736A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226222(P2010−226222)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(309003566)
【Fターム(参考)】