分析装置および分析方法
【課題】血液フィルタを用いた血液検査において、部品点数を少なくして装置の小型化を図るとともに、コストダウンおよび平均故障時間の長時間化を実現する。
【解決手段】試料を通過させる抵抗体2と、抵抗体2での試料の移動時間を測定するための流量センサ53と、を備えた分析装置1において、流量センサ53を、抵抗体2に供給された液体を廃棄するための廃液用の配管74〜77の途中に配置した。好ましくは、流量センサ53は、液体または気体が通過する管状体と、管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいる。
【解決手段】試料を通過させる抵抗体2と、抵抗体2での試料の移動時間を測定するための流量センサ53と、を備えた分析装置1において、流量センサ53を、抵抗体2に供給された液体を廃棄するための廃液用の配管74〜77の途中に配置した。好ましくは、流量センサ53は、液体または気体が通過する管状体と、管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の流動特性を検査する技術に関する。本発明は、一例において、血液フィルタなどの抵抗体を用いて、血液の流動性や血液中の細胞の変形能や活性度などといった細胞の状態を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の流動性や血液中の細胞の状態を検査する方法としては、血液フィルタを用いる方法がある(たとえば特許文献1,2)。血液フィルタは、微細な溝が形成された基板に他の基板を接合したものである。このような血液フィルタを用いる場合には、血液が溝を通過するときの速度を測定し、溝を通過する際の血液中の細胞の状態を観察することができる。
【0003】
図28には、血液フィルタを用いた血液検査装置の一例を配管図として示してある。血液検査装置9は、送液機構91、廃液機構92、血液供給機構93および流量測定機構94を備えている。
【0004】
送液機構91は、血液フィルタ90に所定の液体を供給するためのものであり、液保持ボトル91A,91Bおよび送液ノズル91Cを有している。液保持ボトル91Aは測定用のための生理食塩水を保持したものであり、液保持ボトル91Bは洗浄のための蒸留水を保持したものである。この送液機構91では、送液ノズル91Cを血液フィルタ90に装着した状態で三方弁91Dを適宜切り替えることにより、送液ノズル91Cに生理食塩水が供給される状態と、送液ノズル91Cに蒸留水が供給される状態とを選択することができる。
【0005】
廃液機構92は、血液フィルタ90の液体を廃棄するためのものであり、廃液ノズル92A、減圧ボトル92B、減圧ポンプ92Cおよび廃液ボトル92Dを有している。この廃液機構92では、廃液ノズル92Aを血液フィルタ90に装着した状態で減圧ポンプ92Cを動作させることにより、配管92Eを介して血液フィルタ90の液体が減圧ボトル92Bに廃棄される。減圧ボトル92Bの液体は、減圧ポンプ92Bによって、配管92Fを介して廃液ボトル92Dに廃棄される。
【0006】
血液供給機構93は、血液フィルタ90から液体を吸い出して血液供給用の空間を形成するとともに、血液供給用の空間に血液を供給するためのものであり、サンプリングノズル93Aを有している。
【0007】
流量測定機構94は、血液フィルタ90を移動する血液の速度を測定するのに必要な情報を得るためのものであり、U字管94Aおよび測定ノズル94Bを有している。U字管94Aは、配管94Cを介して血液フィルタ90に接続されている。U字管94Aには液体が充填されている一方で、配管94Cには空気が充填されている。血液フィルタ90の血液は血液フィルタ90と減圧ボトル92Bとの水頭差によって移動させられる。
【0008】
血液検査装置9では、次のようにして血液の移動時間が測定される。
【0009】
まず、図29に示したように、血液フィルタ90の内部を生理食塩水により置換する。より具体的には、送液機構91の送液ノズル91Cを血液フィルタ90に装着するとともに、液保持ボトル91Aの生理食塩水を送液ノズル91Cに供給可能状態に三方弁91Dを切り替えておく。その一方、廃液機構92の廃液ノズル92Aを血液フィルタ90に装着するとともに、減圧ポンプ92Cを動作させる。これにより、液保持ボトル91Aの生理食塩水が送液ノズル91Cを介して血液フィルタ90に供給されるとともに、血液フィルタ90の廃液が廃液ノズル92Aを介して廃液ボトル92Dに廃棄される。
【0010】
次いで、血液フィルタ90から送液ノズル91Cを取り外し、図30(a)に示したように、血液供給機構93のサンプリングノズル93Aによって血液フィルタ90の生理食塩水の一部を吸い出して、図30(b)に示したように血液を供給するための空間95を形成する。
【0011】
さらに、図31(a)に示したように、サンプリングノズル93Aによって採血管96から血液を採取する一方で、図31(b)に示したように、採取した血液97を血液フィルタ90の空間95に充填する。
【0012】
次いで、図32(a)に示したように、流量測定機構94の測定ノズル94Bを血液フィルタ90に装着する。これにより、血液フィルタ90と減圧ボトル92Bとの間に生じる水頭差によって、血液フィルタ90の血液が移動し、U字管94Aでの液面位置が変化する。血液検査装置9では、図32(b)に示したように、U字管94Aにおける液面位置の変化速度を複数のフォトセンサ97によって検出し、その検出結果に基づいて、血液の移動時間を演算する。
【0013】
しかしながら、U字管94Aと血液フィルタ90との接続する方法では、U字管94Aにおける液面位置が変化するため、測定圧力(血液フィルタ90の血液97に作用する圧力)に変動が生じる。また、水頭差によって血液フィルタ90において血液97を移動させるためには、U字管94Aおよび血液フィルタ90から減圧ボトル92Bに至るまでの配管92E,94Cに液体が充填されている必要があるため、比較的な大きな配管長を必要とするために配管抵抗が大きくなる。しかも、送液ノズル91Cおよび廃液ノズル92Aの他に、U字管94Aと血液フィルタ90とを接続するための測定ノズル94Bが必要となるため、測定に必要なノズル数が多くなる。そればかりか、ノズル数が多いために配管も複雑になり、またノズル91C,92A,93A,94Bの切り替えるためのバルブ数も多くなるなど部品点数が多く、このことが装置の小型化の妨げとなっている。また、部品点数が多くなると、バルブなどのように比較的に故障率の高い部品も多く含まれることとなるため、装置の故障率(性能)を示す指標であるである平均故障時間(MTBF)が短くなってしまう。
【0014】
また、血液フィルタ90に血液を供給する前にサンプリングノズル93Aを用いて血液フィルタ90からの生理食塩水の吸い出す方法では、ノズル91C,92A,93A,94Bを頻繁に切り替えて使用する必要があるために測定時間が長くなってしまう。とくに、生理食塩水の吸い出し量を適切に制御するためには、血液フィルタ90における液面を適切にモニタリングしつつ生理食塩水を吸い出す必要があり、生理食塩水の吸い出しに時間を多くの時間を費やしてしまう。
【0015】
さらに、血液フィルタ90に対する生理食塩水の充填には、廃液機構92の減圧ポンプ92Cを利用して行なわれている。しかしながら、血液フィルタ90の下流側からのみの吸引では、血液フィルタ90には気泡が混入しやすい。このような不具合を回避するためには、高い負圧によって比較的に長時間、血液フィルタ90に生理食塩水を流通させる必要が生じる。この場合には、使用する生理食塩水の量が多くなって不経済であるばかりか、減圧ポンプの消費電力が大きくなり、ランニングコスト的に不利となる。
【0016】
【特許文献1】特開平2−130471号公報
【特許文献2】特開平11−118819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、血液フィルタを用いた血液検査において、部品点数を少なくして装置の小型化を図るとともに、コストダウンおよび平均故障時間の長時間化を実現することを課題としている。
【0018】
本発明の別の課題は、装置における配管の圧力変動および抵抗を小さくし、測定精度の向上、測定時間の短縮化、ならびにランニングコストの低減を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の側面においては、試料を通過させる抵抗体と、上記抵抗体での試料の移動時間を測定するための流量センサと、を備えた分析装置であって、上記流量センサは、上記抵抗体に供給された液体を廃棄するための廃液用の配管の途中に配置されていることを特徴とする、分析装置が提供される。
【0020】
流量センサは、たとえば液体または気体が通過する管状体と、管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいる。管状体は、たとえば直線管として構成される。
【0021】
好ましくは、直線管は、水平方向に延びるように配置され、複数の検知エリアは、水平方向に並んで配置される。
【0022】
本発明の分析装置は、管状体を移動させる空気を導入するための空気導入手段をさらに備えたものとすることもできる。
【0023】
本発明の分析装置は、抵抗体に供給された液体を移動させる動力を付与するための減圧ポンプと、管状体と減圧ポンプとの間に設けられた減圧ボトルと、をさらに備えたものとすることができる。この場合の空気導入手段は、たとえば減圧ボトルと、管状体が大気に連通する状態を選択可能とするバルブと、を含んでおり、かつ、バルブを切り替えて管状体を大気に連通させることにより、バルブと減圧ボトルとの間の流路に空気を導入するように構成される。空気導入手段は、減圧ボトルの負圧によって、流路に空気を導入するように構成することもできる。
【0024】
本発明の分析装置は、たとえば抵抗体の内部を液体で充填した後に減圧ポンプによって液体を移動させて抵抗体に空気を導入することにより、抵抗体の内部に試料を充填する空間を確保するように構成された制御手段をさらに備えている。
【0025】
制御手段は、たとえば流路の液体を空気に置換した後、上記バルブを切り替えて上記流路において液体を導入するとともに、上記流量センサにおいて上記液体と上記空気との界面が検知されたときに、上記流路における液体の移動を停止させるように構成される。この場合、流路に導入される液体の容量が、抵抗体における試料を充填するための空間の容量と一致または略一致させられる。
【0026】
制御手段は、流路に導入された空気と液体との界面が流量センサにおいて検出されたときに、流路における空気の移動を停止させるように構成してもよい。この場合、流路に導入される空気の容量が、抵抗体における試料を充填するための空間の容量と一致または略一致させられる。
【0027】
好ましくは、本発明の分析装置は、抵抗体の内部に液体を導入するための供給用の配管の途中に設けられた加圧ポンプをさらに備えたものとされる。
【0028】
試料は、たとえば粒子を含むもの、典型的には血球を含む血液である。
【0029】
抵抗体は、たとえば試料を移動させる複数の微細溝を有したものとされている。
【0030】
本発明の第2の側面においては、試料を通過させる抵抗体の内部に液を充填する第1ステップと、上記抵抗体の内部の液の一部を廃棄し、上記抵抗体の内部に試料を充填する空間を確保する第2ステップと、上記空間に試料を供給する第3ステップと、上記抵抗体の内部において試料を移動させる第4ステップと、上記抵抗体の内部における試料の移動時間を、上記抵抗体に接続された廃液用配管の途中に設けられた流量センサを利用して測定する第5ステップと、を含むことを特徴とする、分析方法が提供される。
【0031】
好ましくは、本発明の分析方法は、流量センサとして、管状体と、管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいるものを用い、かつ、第1ステップと第2ステップとの間において行なわれ、かつ管状体に空気を導入する第6ステップをさらに含んでいる。この場合、第5ステップは、たとえば管状体を移動する液体と空気との界面を上記各センサ部において捕捉したときに得られ情報に基づいて演算することにより行なわれる。
【0032】
第1ステップは、たとえば減圧ポンプの動力を、減圧ボトルおよび上記廃液用の配管を介して上記抵抗体に作用させることにより行なわれる。この場合に第6ステップは、廃液用の配管の途中に設けられたバルブを切り替えることにより、抵抗体の上流側を大気開放することにより行なわれる。
【0033】
第6ステップは、たとえば減圧ポンプを停止させた状態において、上記減圧ボトルの負圧を上記配管に作用させることにより行なわれる。第6ステップは、たとえばバルブと減圧ボトルとの間の流路を空気により置換することにより行なわれる。この場合、本発明の分析方法は、減圧ポンプの動力によってバルブの上流側から流路に液体を導入する第7ステップをさらに含んでいてもよい。第7ステップは、流量センサにおいて液体と空気との界面が検知されたときに、流路における液体の移動を停止させ、抵抗体の内部に目的とする容量の空間を確保するように行なわれる。
【0034】
第7ステップは、バルブを介してバルブと減圧ボトルとの間の流路に導入された空気と液体との界面が流量センサにおいて検出されたときに、流路における空気の移動を停止させることにより行なってもよい。
【0035】
好ましくは、第5ステップを行なう場合の減圧度は、第1ステップを行なう場合に比べて小さく設定される。
【0036】
本発明の分析方法では、試料しては、たとえば粒子を含むもの、典型的には血球を含む血液が用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る血液検査装置および血液検査方法ついて、図面を参照して具体的に説明する。
【0038】
図1に示した血液検査装置1は、血液フィルタ2を用いて、たとえば全血などの血液試料の流動性、赤血球の変形形態および白血球の活性度を測定するように構成されたものである。この血液検査装置1は、液供給機構3、サンプリング機構4、廃液機構5および撮像機6を備えている。
【0039】
図2ないし図5に示したように、血液フィルタ2は、血液を移動させる流路を規定するものであり、ホルダ20、流路基板21、パッキン22、透明カバー23およびキャップ24を有している。
【0040】
ホルダ20は、流路基板21を保持するためのものであるとともに、流路基板21への液体の供給、および流路基板21からの液体の廃棄を可能とするものである。このホルダ20は、一対の小径円筒部25A,25Bを、矩形筒部26および大径円筒部27の内部に設けたものである。一対の小径円筒部25A,25Bは、上部開口25Aa,25Baおよび下部開口25Ab,25Bbを有する円筒状に形成されており、フィン25Cを介して矩形筒部26および大径円筒部27に一体化されている。大径円筒部27は、流路基板21を固定する役割をも果すものであり、円柱状凹部27Aを有している。円柱状凹部27Aは、パッキン22が嵌め込まれる部分であり、その内部には一対の円柱状凸部27Aaが形成されている。矩形筒部26と大径円筒部27との間には、フランジ20Aが設けられている。このフランジ20Aは、キャップ24をホルダ20に固定するのに利用するものであり、平面視略矩形状に形成されている。フランジ20Aのコーナ部20Bには円柱状突起20Cが設けられている。
【0041】
図3および図6に示したように、流路基板21は、血液を移動させるときに移動抵抗を与えるとともに、フィルタとして機能するものであり、ホルダ20の大径円筒部27(円柱状凹部27A)にパッキン22を介して固定されている。図7ないし図9に示したように、流路基板21は、たとえばシリコンにより全体として矩形板状に形成されており、その一面をフォトリソグラフィの手法を利用し、またエッチング処理を行なうことにより、土手部28および複数の連絡溝29を有するものとして形成されている。
【0042】
土手部28は、流路基板21の長手方向の中央部において、蛇行状に形成されている。土手部28は、流路基板21の長手方向に延びる複数の直線部28Aを有しており、これらの直線部28Aによって導入用流路28Bおよび廃棄用流路28Cが規定されている。土手部28の両サイドにはまた、図6および図7に示したようにホルダ20の小径円筒部25A,25Bの下部開口25Ab,25Bbに対応する部分に、貫通孔28D,28Eが形成されている。貫通孔28Dは、小径円筒部25Aからの液体を流路基板21に導入するためのものであり、貫通孔28Eは流路基板21の液体を小径円筒部25Bに排出するためのものである。
【0043】
一方、図6ないし図9に示したように、複数の連絡溝29は、土手部28の直線部28Aにおいて、その幅方向に延びるように形成されている。すなわち、連絡溝29は、導入用流路28Bと廃棄用流路28Cとの間を連通させている。各連絡溝29は、血球や血小板などの細胞の変形能を観察する場合には、その幅寸法は細胞の径よりも小さく設定され、たとえば4〜6μmとされる。また、隣接する連絡溝29の間の間隔は、たとえば15〜20μmとされる。
【0044】
このような流路基板21では、貫通孔28Dを介して導入された液体は、導入用流路28B、連絡溝29、および廃棄用流路28Cを順に移動し、貫通孔28Eを介して流路基板21から廃棄される。
【0045】
図2ないし図6に示したように、パッキン22は、ホルダ20の大径円筒部27に流路基板21を密閉状態で収容するためのものである。このパッキン22は、全体として円板状の形態を有しており、ホルダ20の大径円筒部27における円柱状凹部27Aに嵌め込まれている。パッキン22には、一対の貫通孔22Aおよび矩形凹部22Bが設けられている。一対の貫通孔22Aは、ホルダ20における大径筒部27の円柱状凸部27Aが嵌め込まれる部分である。一対の貫通孔22Aに円柱状凸部27Aaを嵌め込むことにより、パッキン22は大径円筒部27に位置決めされる。矩形凹部22Bは、流路基板21を収容するためのものであり、流路基板21の外観形状に対応した形態とされている。ただし、矩形凹部22Bの深さは、流路基板21の最大厚みと同程度もしくはそれよりも若干小さくされている。矩形凹部22Bには、一対の連通孔22C,22Dが設けられている。これらの連通孔22C,22Dは、ホルダ20の小径円筒部25A,25Bの下部開口25Ab,25Bbを流路基板21の貫通孔28D,28Eと連通させるためのものである。
【0046】
図3ないし図6に示したように、透明カバー23は、流路基板21に当接させて流路基板21における導入用流路28B、連通溝29および廃棄用流路28Cを閉断面構造とするためものである。この透明カバー23は、たとえばガラスにより円板状に形成されている。透明カバー23の厚みは、ホルダ20の大径円筒部27における円柱状凹部27Aの深さよりも小さくされているとともに、透明カバー23とパッキン22の最大厚みの合計は、円柱状凹部27Aの深さよりも大きくされている。
【0047】
図2ないし図5に示したように、キャップ24は、流路基板21をパッキン22および透明カバー23とともに固定するためのものであり、円筒部24Aおよびフランジ24Bを有している。円筒部24Aは、ホルダ20の大径円筒部27を外套するものであり、貫通孔24Cを有している。貫通孔24Cは、流路基板21における血液の移動状態を確認するときに、その視認性を阻害しないようにするためものである。フランジ24Bは、ホルダ20のフランジ20Aに対応した形態を有しており、そのコーナ部24Dに凹部24Eが設けられている。この凹部24Eは、ホルダ20のフランジ20Aにおける円柱状突起20Cを嵌合させるためのものである。
【0048】
上述のように、透明カバー23の厚みは、ホルダ20の大径円筒部27における円柱状凹部27Aの深さよりも小さくされているとともに、透明カバー23とパッキン22の最大厚みの合計は、円柱状凹部27Aの深さよりも大きくされている。一方、矩形凹部22Bの深さは、流路基板21の最大厚みと同程度もしくはそれよりも若干大きくされている。そのため、キャップ24によって流路基板21をパッキン22および透明カバー23とともに固定したときに、パッキン22が圧縮させられて透明カバー23が流路基板21に適切に密着させられ、流路基板21と透明カバー23との間から液体が漏れ出すことを抑制することができる。
【0049】
図1に示した液供給機構3は、血液フィルタ2に液体を供給するためのものであり、ボトル30,31、三方弁32、加圧ポンプ33、および液供給ノズル34を有している。
【0050】
ボトル30,31は、血液フィルタ2に供給すべき液体を保持したものである。ボトル30は、血液の検査のために使用する生理食塩水を保持したものであり、配管70を介して三方弁32に接続されている。一方、ボトル31は、配管の洗浄ために蒸留水を保持したものであり、配管71を介して三方弁32に接続されている。
【0051】
三方弁32は、液供給ノズル34に供給すべき液体の種類を選択するためのものであり、配管72を介して加圧ポンプ33に接続されている。すなわち、三方弁32を適宜切り替えることにより、ボトル30から液体供給ノズル34に生理食塩水が供給される状態、およびボトル31から液体供給ノズル34に蒸留水が供給される状態のいずれかを選択することができる。
【0052】
加圧ポンプ33は、ボトル30,31から液供給ノズル34に液体を移動させるための動力を与えるためのものであり、配管73を介して液供給ノズル34に接続されている。加圧ポンプと33としては、公知の種々のものを使用することができるが、装置を小型化する観点からは、チューブポンプを用いるのが好ましい。
【0053】
液供給ノズル34は、各ボトル30,31からの液体を血液フィルタ2に供給するためのものであり、血液フィルタ2における小径筒部25Aの上部開口25Aa(図2および図3参照)に装着されるものである。この液供給ノズル34は、上部開口25Aa(図2および図3参照)に装着されるジョイント35が設けられている一方で、他端部において配管73を介して加圧ポンプ33に接続されている。
【0054】
サンプリング機構4は、血液フィルタ2に血液を供給するためのものであり、サンプリングポンプ40、血液供給ノズル41、および液面検知センサ42を有している。
【0055】
サンプリングポンプ40は、血液を吸引・吐出するための動力を付与するためのものであり、たとえばシリンジポンプとして構成されている。
【0056】
血液供給ノズル41は、先端部にチップ43を装着して使用するものであり、サンプリングポンプ40によってチップ43の内部に負圧を作用させることにより、採血管81からチップ43の内部に血液を吸引し、サンプリングポンプ40によってチップ内部の血液を加圧することにより血液を吐出するように構成されている。
【0057】
液面センサ42は、チップ43の内部に吸引された血液の液面を検知するためのものである。この液面センサ42は、チップ43の内部の圧力が所定値となったときにその旨の信号を出力し、目的量の血液が吸引されたことを検出するものである。
【0058】
廃液機構5は、各種配管および血液フィルタ2の内部の液体を廃棄するためのものであり、廃液ノズル50、電磁弁51、三方弁52、流量センサ53、圧力センサ54、減圧ボトル55、減圧ポンプ56、および廃液ボトル57を有している。
【0059】
廃液ノズル50は、血液フィルタ2の内部の液体を吸引するためのものであり、血液フィルタ2における小径筒部25Bの上部開口25Ba(図2および図3参照)に装着されるものである。この廃液ノズル50は、先端部に血液フィルタ2の上部開口25Baに装着されるジョイント50Aが設けられている一方で、他端部が配管74を介して電磁弁51に接続されている。
【0060】
電磁弁51は、廃棄ノズル50と三方弁52との間の連通状態を選択し、廃棄ノズル57からの廃液が三方バルブ52に供給される状態と、供給されない状態とを選択するためのものである。この電磁弁51は、配管75を介して三方弁52に接続されている。もちろん、電磁弁51に代えて、電気弁などの他の種類のバルブを使用することもできる。
【0061】
三方弁52は、配管76を介して流量センサ53に接続させられているとともに、大気開放用の配管7Aが接続されたものである。この三方弁52では、減圧ボトル55に液を廃棄しうる状態と、配管7Aを介して配管76に空気を導入する状態と、を選択することができる。
【0062】
図10および図11に示したように、流量センサ53は、空気Arと生理食塩水83との界面Inの位置を捕捉して血液の移動時間を測定するために利用されるものであり、複数(図面上は5つ)のフォトセンサ58A,58B,58C,58D,58Eおよび直線管59を有している。
【0063】
複数のフォトセンサ58A〜58Eは、直線管59における対応する領域を空気Arと生理食塩水83との界面Inが到達(通過)したか否かを検出するためのものであり、水平方向において、等間隔に並んで配置されている。各フォトセンサ58A〜58Eは、発光素子58Aa,58Ba,58Ca,58Da,58Eaおよび受光素子58Ab,58Bb,58Cb,58Db,58Ebを有しており、それらの素子58Aa〜58Ea,58Ab〜58Ebが互いに対面して配置された透過型センサとして構成されている。
【0064】
もちろん、フォトセンサ58A〜58Eとしては、透過型に限らず、反射型のものを使用することもできる。
【0065】
直線管59は、検査時において、空気Arと生理食塩水83との間の界面Inが移動させられる部分であり、配管76を介して三方弁52に接続されている一方で、配管77を介して減圧ボトル55の内部に連通させられている(図1参照)。配管76,77における直線管59の近傍の内径は、直線管59と同一または略同一(たとえば直線管59の内面積の−3%〜+3%の内面積に相当する内径)に設定するのが好ましい。この直線管59は、支持部59Aによって、各フォトセンサ58A〜58Eにおける発光素子58Aa〜58Eaと受光素子58Ab〜58Ebとの間に位置するように、水平方向に延びるように配置されている。この直線管59は、透光性を有する材料、たとえば透明ガラスあるいは透明樹脂により、一様断面を有する円筒状に形成されている。ここで、一様断面を有する円筒状とは、内径が一定または略一定(たとえば目的とする内面積に対して−3%〜+3%の範囲の内面積に相当する内径)の円形断面を有することを意味している。直線管59の内径は、空気Arと生理食塩水83との間の界面Inの移動時間を適切に測定できる範囲に設定すればよく、たとえば0.5mm〜3mmとされる。空気Arの移動する部分、たとえば直線管59の内径を一様(一定または略一定)にし、あるいは直線管59に加えて直線管56に接続された配管76,77における直線管59の近傍の内径を直線管59と同一または略同一に設定すれば、空気Arが直線管59の前後を移動する場合であっても、空気Arと配管の内面との間に接触面積の変化が生じることを抑制し、接触面積を一定または略一定に維持することができる。また、直線管59は、内径の寸法公差を考慮した場合、透明ガラスにより形成するのが好ましい。そうすれば、界面Inの移動時間をより正確に測定することが可能となる。
【0066】
図12(a)および図12(b)に示したように、空気Arと生理食塩水83との間の界面Inが直線管59を移動する場合には、各フォトセンサ58A〜58Eに対応する領域における空気Arと生理食塩水83の比率が徐々に変化するため、図13に示したように、フォトセンサ58A〜58Eの受光素子58Ab〜58Ebにおいて得られる受光量(透過率)が変化する。そのため、フォトセンサ58A〜58Eにおいて得られる受光量(透過率)が変化し始めた時点T1、あるいは受光量(透過率)が変化し始めた後において受光量(透過率)が一定値になる時点T2などを基準として、フォトセンサ58A〜58Eにおいてでは空気Arと生理食塩水83との間の界面In(生理食塩水83)が到達したことを検出することができる。そして、複数のフォトセンサ58A〜58Eにおいて空気Arと生理食塩水83との間の界面In(生理食塩水83)が到達したことを個別に検出すれば、隣接するフォトセンサ58A〜58Eの間を空気Arと生理食塩水83との間の界面In通過する時間、すなわち生理食塩水83の移動時間を検出することができる。また、3つ以上のフォトセンサ58A〜58Eを設けることにより、ある時点での生理食塩水83の移動時間ばかりでなく、生理食塩水83の移動時間の経時的変化を測定することができる。なお、複数のフォトセンサ58A〜58Eの設置間隔は、たとえば流体量を基準として10〜30μLに相当する量に対応する距離からか選択される。
【0067】
ここで、生理食塩水83の移動時間は、血液が血液フィルタ2(図1ないし図3参照)における流路基板21を移動するときの移動抵抗に依存する。そのため、流量センサ53において生理食塩水83の移動時間を検出することにより、血液の流動性などの情報を得ることができるようになる。
【0068】
図1に示した圧力センサ54は、配管77を移動する液体の圧力をモニタリングするためのものであり、配管77の途中に設けられている。圧力センサ54での圧力のモニタリング結果は、後述する減圧ポンプ56にフィードバックされ、配管77を流れる液体、ひいては血液フィルタ2の内部の液体の圧力が略一定に維持される。血液フィルタ2の内部の液体の圧力は、圧力センサ54を設ける代わりに、減圧ボトル55の圧量をモニタリングすることにより略一定に維持することもできる。
【0069】
減圧ボトル55は、廃液を一時的に保持するためのものであるとともに、減圧空間を規定するためのものである。この廃液ボトル57は、配管78を介して減圧ポンプ56に接続されている。
【0070】
減圧ポンプ56は、血液フィルタ2の内部の液体を吸引するため、あるいは空気Ar(図11参照)を配管76に導入するために、減圧ボトル55の内部を減圧するものである。この減圧ポンプ56は、配管79を介して廃液ボトル57に接続されており、減圧ボトル55の廃液を廃液ボトル57に送液する役割をも有している。減圧ポンプと56としては、公知の種々のものを使用することができるが、装置を小型化する観点からは、チューブポンプを用いるのが好ましい。
【0071】
廃液ボトル57は、血液を検査したときの血液フィルタ2や配管74〜77の内部の廃液、あるいは配管72〜77を洗浄したときの廃液を保持するためのものである。
【0072】
撮像機6は、流路基板21における血液の移動状態を撮像するためものである。この撮像機6は、たとえばCCDカメラにより構成されており、流路基板21の正面に位置するように配置されている。撮像機6における撮像結果は、たとえばモニタ60に出力され、血液の移動状態をリアルタイムで、あるいは録画画像として確認することができる。
【0073】
血液検査装置1は、図1に示した各要素の他に、図14に示したように制御部10および演算部11をさらに備えている。
【0074】
制御部10は、各要素の動作を制御するためものである。この制御部10は、たとえば三方弁32,52の切替制御、電磁弁51の開閉制御、各ポンプ33,40,56の駆動制御、各ノズル34,41,50の駆動制御、撮像機6やモニタ60の動作制御を行なうものである。
【0075】
演算部11は、各要素を動作させるのに必要な演算、たとえば液面検知センサ42や圧力センサ54でのモニタリング結果に基づいて各ポンプ33,40,56の制御量を演算し、流量センサ53でのモニタリング結果に基づいて電磁弁51の開閉制御や三方弁52の切替制御に必要な演算などを行うものである。演算部11はさらに、流量センサ53でのモニタリング結果に基づいて、血液フィルタ2における血液の移動時間(流動性)を演算するものでもある。
【0076】
次に、血液検査装置1における動作について説明する。
【0077】
まず、図15に示したように、血液フィルタ2を所定位置にセットした上で、測定を開始する旨の合図を行なう。この合図は、たとえば血液検査装置1に設けられたボタンをユーザが操作することにより、あるいは血液フィルタ2をセットすることにより自動的に行なわれる。制御部10(図14参照)は、測定開始の合図があったと認識した場合には、血液フィルタ2の内部の気液置換動作を行なう。より具体的には、制御部10(図14参照)は、まず、液供給機構3の液供給ノズル34を血液フィルタ2における小径筒部25Aの上部開口25Aaに装着するとともに、廃液機構5の廃液ノズル50を血液フィルタ2における小径筒部25Bの上部開口25Baに装着する。その一方、制御部10(図14参照)は、三方弁32切り替えてボトル30が液供給ノズル34に連通した状態とするとともに、三方弁52を切り替え、電磁弁51を開けることにより廃液ノズル50が減圧ボトル55に連通した状態とする。すなわち、ボトル30と減圧ボトル55との間が血液フィルタ2の内部を介して連通する。この状態において、制御部10(図14参照)は、液供給機構3の加圧ポンプ33および廃液機構5の減圧ポンプ56を駆動する。ここで、加圧ポンプ33の加圧力は、たとえば1〜150kPaとされ、減圧ポンプ56の減圧力は、0〜−50kPaとされる。
【0078】
このようにして加圧ポンプ33および減圧ポンプ56を駆動させた場合には、液ボトル30の生理食塩水は、配管71〜73を介して液供給ノズル34に供給されるとともに、血液フィルタ2の内部を通過した後、廃液ノズル50、配管74〜77を介して減圧ボトル55に廃棄される。減圧ボトル55に廃棄された生理食塩水は、減圧ポンプ56の動力により、配管78,79を介して廃液ボトル57に廃棄される。これにより、血液フィルタ2の内部の気体は生理食塩水により排出され、血液フィルタ2の内部は生理食塩水により置換される。
【0079】
血液検査装置1では、血液フィルタ2に対する気液置換を、血液フィルタ2の上流側に配置された加圧ポンプ33、および血液フィルタ2の下流側に配置された減圧ポンプ56を用いて行なわれている。そのため、血液フィルタ2の下流側に配置された減圧ポンプ56を用いる場合に比べて、血液フィルタ2の内部に気泡が残存する可能性が著しく軽減され、血液フィルタ2の内部の気体を排出するのに必要な時間も軽減される。これにより、血液検査に必要な時間を短縮することが可能となる。また、血液検査装置1では、減圧ポンプ56に加えて加圧ポンプ33を併用しているものの、気液置換に必要なポンプ動力を小さくし、置換時間を短くすることができるため、ランニングコストを却って小さくすることができる。
【0080】
次に、血液検査装置1では、図16に示したように、配管76の内部へ空気の導入するための処理を行なう。より具体的には、制御部10(図14参照)は、電磁弁51を閉じるとともに減圧ポンプ56の動作を停止させ、図17(a)から図17(b)に示した状態に三方弁52を切り替えて配管76が配管7Aを介して大気に連通した状態とする。その一方で、制御部10(図14参照)は、減圧ポンプ56を駆動させる。これにより、配管7Aおよび配管76が減圧されるため、図17(b)および図17(c)に示したように配管7Aを介して配管76に空気Arが導入される。このような配管76への空気Arの導入は、配管76の内部が空気Arによって完全に置換されるまで行なわれる。このような空気Arによる置換は、予め定められた時間だけ配管86を大気開放した後に三方弁52を切り替えることにより、あるいは配管76の内部の圧力を圧力センサ54によってモニタリングし、配管76の内部の圧力が所定値になったときに三方弁52を切り替えることにより行なわれる。もちろん、配管76への空気Arの導入は、減圧ポンプ56を駆動することなく、減圧ボトル55(図16参照)の残圧により行なってもよい。
【0081】
次いで、図18に示したように、血液検査装置1では、血液フィルタ2から生理食塩水を一定量廃棄し、血液フィルタ2に血液を供給するのに必要な空間82を確保する。より具体的には、制御部10(図14参照)は、液供給ノズル34を血液フィルタ2から取り外した状態において電磁弁51を開放する。このとき、減圧ボトル55(図16参照)は、先に行なった配管76の空気置換により減圧された状態となっている。そのため、電磁弁51を開放することにより、図19(a)および図19(b)に示したように、血液フィルタ2の内部の生理食塩水は、廃液ノズル50を介して吸引除去され、血液フィルタ2に空気84が導入される。このとき、図20(a)および図20(b)に示したように配管76,77の生理食塩水83は、減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動させられ、これに伴い、配管76の空気Arも減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動する。
【0082】
その一方で、流量センサ53のフォトセンサ58Aでは、生理食塩水83と空気Arとの界面Inが到達したか否かが検出される。上述のように、フォトセンサ58Aを界面Inが通過する際には、受光素子58Abにおける受光量が小さくなるため、フォトセンサ58Aでは界面Inが到達したことを検出することができる。そして、制御部10(図14参照)は、フォトセンサ58Aにおいて界面Inが到達したことが検出された場合には、電磁弁51(図18参照)を閉じ、生理食塩水83および界面Inの移動を停止させる。
【0083】
ここで、界面Inがフォトセンサ58Aによって検出されるまでの配管76への生理食塩水83の導入量(血液フィルタ2からの生理食塩水の廃棄量)は、血液フィルタ2に供給すべき血液の量と一致または略一致させられている。すなわち、配管76におけるフォトセンサ58Aよりも上流側の容量は、血液フィルタ2に供給すべき血液の量にしたがって設定されている。そのため、界面Inがフォトセンサ58Aによって検出されたときに電磁弁51(図18参照)を閉じることにより、血液フィルタ2において、供給すべき血液の量に合致した容量の空間82を確保することができる。ここで、空間82の容量は、たとえば血液検査において使用される血液量(たとえば50〜200μL)の1.2〜3.0倍(たとえば100〜250μL)とされる。
【0084】
このように血液検査装置1では、流量センサ53において界面Inの位置を検出することにより、血液フィルタ2からの生理食塩水の廃棄量を規制することとしている。そのため、従来の血液検査装置のように、血液供給ノズルに液面検知センサによって生理食塩水の廃棄量を規制する場合に比べて、血液検査装置1では生理食塩水の廃棄量の規制(界面出し)を短時間で行なうことができる。これにより、血液検査に要する時間を短縮化することが可能となる。
【0085】
次いで、図21に示したように、制御部10(図14参照)は、血液フィルタ2に設けられた空間82に血液85を供給させる。より具体的には、制御部10(図14参照)は、サンプリングポンプ40の動力を利用して、採血管81から血液供給ノズル41に装着したチップ43の内部に血液を吸引した後、図22(a)および図22(b)に示したようにチップ43の血液85を血液フィルタ2の空間82に吐出させる。血液フィルタ2に対する血液85の吐出量は、空間82の容積に対応した量とされ、その吐出量の制御は、液面検知センサ42(図21参照)においてチップ43の内部の血液の液面を検知することにより行なわれる。
【0086】
次いで、血液検査装置1では、図23に示したように、血液フィルタ2の空間82に供給された血液85の検査を行なう。より具体的には、制御部10(図14参照)は、減圧ポンプ56の動力を利用して、廃液ノズル50を介して血液フィルタ2の生理食塩水83を廃棄する。このとき、血液フィルタ2においては、生理食塩水83とともに血液85が移動させられる。
【0087】
より具体的には、血液フィルタ2においては、血液85は、流路基板21と透明カバー23との間に形成された流路(図6ないし図9参照)を通過した後に小径筒部25Bに移動させられる。流路基板21においては、血液85は、図6ないし図9を参照して説明したように、貫通孔28Dを介して導入用流路28Bに導入された後に、連絡溝29および廃棄用流路28Cを順に移動し、貫通孔28Eを介して廃棄される。ここで、連絡溝29の幅寸法を血液85中の血球や血小板などの細胞の径よりも小さく設定した場合には、細胞は変形しつつ連絡溝29を移動し、あるいは連絡溝29において目詰まりを起こす。このような細胞の状態は、撮像機6において撮影される。撮像機6における撮像結果は、リアルタイムでモニタ60に表示してもよいし、録画後にモニタ60において表示してもよい。
【0088】
その一方で、図11に示したように、流量センサ53においては、直線管59を移動する界面Inが検出される。そして、演算部11(図14参照)では、各フォトセンサ58A〜58Eから得られる情報に基づいて、界面Inが通過したか否かが判断されるとともに、界面Inの移動時間が演算される。界面Inの移動時間は、血液フィルタ2における血液85の移動時間、すなわち血液85の流動性(抵抗)に相関するものであるから、界面Inの移動時間によって血液85の状態を把握することができる。
【0089】
ここで、流量センサ53は、直線管59が水平に配置された構成であるため、U字管を用いた流量センサのように、血液検査時において流量センサでの水頭差が変化することもない。そのため、血液検査装置1では、血液検査時における水頭差変化に起因する測定誤差を抑制し、測定精度を向上させることが可能となる。
【0090】
図24に示したように、血液の検査が終了した場合には、ユーザの選択により、廃液機構5の配管74〜77の洗浄を行なう。このような洗浄処理は、血液フィルタ2をセットする位置に洗浄用のタミーチップ2′をセットした上で、ユーザが洗浄モードを選択することにより行なわれる。ここで、ダミーチップ2′は、外観形状において血液フィルタ2と同様なものであるとともに、その内部に連通孔20′が設けられたものである。連通孔20′は、血液フィルタ2における小径筒部25A,25Bの上部開口25Aa,25Ba(図2および図3参照)に対応する部分に設けられた開口21′,22′を有するものである。
【0091】
血液検査装置1においては、洗浄モードが選択された場合には、制御部10(図14参照)は、まず、液供給機構3の液供給ノズル34をダミーチップ2′における連通孔20′の開口21′に装着するとともに、廃液機構5の廃液ノズル50をダミーチップ2′における連通孔20′の開口22′に装着する。その一方、制御部10(図14参照)は、三方弁32切り替えてボトル31が液供給ノズル34に連通した状態とするとともに、三方弁52を切り替え、電磁弁51を開けることにより廃液ノズル50が減圧ボトル55に連通した状態とする。すなわち、ボトル31と減圧ボトル55との間がダミーチップ2′の連通孔20′を介して連通する。この状態において、制御部10(図14参照)は、液供給機構3の加圧ポンプ33および廃液機構5の減圧ポンプ56を駆動する。ここで、加圧ポンプ33の加圧力は、たとえば1〜150kPaとされ、減圧ポンプ56の減圧力は、0〜−50kPaとされる。
【0092】
このようにして加圧ポンプ33および減圧ポンプ56を駆動させた場合には、液ボトル31の蒸留水は、配管70,72,73を介して液供給ノズル34に供給されるとともに、ダミーチップ2′の連通孔20′を通過した後、廃液ノズル50、配管74〜77を介して減圧ボトル55に廃棄される。減圧ボトル55に廃棄された蒸留水は、減圧ポンプ56の動力により、配管78,79を介して廃液ボトル57に廃棄される。これにより、廃液機構5における配管74〜77は蒸留水により洗浄される。
【0093】
血液検査装置1では、血液フィルタ2よりも下流に設けられた流量センサ53からの情報に基づいて、血液の状態を把握するようにしている。そのため、従来の血液検査装置のように、流量センサ53と血液フィルタ2との間を繋ぐ配管およびノズルを、廃液機構5の配管74〜79や廃液ノズル50とは別に設ける必要はない。その結果、血液検査装置1は、装置構成が簡略化され、コスト的に有利に製造できるとともに装置の小型化が可能となる。そればかりか、駆動制御すべきノズルやバルブの数が少なくなることにより、平均故障時間(MTBF)を長くすることができる。また、流量センサ53を廃液機構5の配管の途中に設けているため、流量センサ53のための配管を廃液機構5の配管74〜79とは別に設ける必要もなく、血液検査に必要な配管長を短くすることができる。そのため、血液検査時における流体抵抗を小さくすることができるため、血液検査時において減圧ポンプ56に必要とされる動力を小さく設定することが可能となる。これにより、ランニングコストを低減することができる。
【0094】
次に、配管への空気を導入するための処理および血液フィルタに血液を供給するための空間を確保するための処理の他の例を、先に参照した図面に加えて、必要に応じて図25ないし図27を参照して説明する。
【0095】
図16に示したように、配管76への空気Arの導入においては、まず制御部10(図14参照)は、電磁弁51を閉じるとともに減圧ポンプ56の動作を停止させ、図17(a)から図17(b)に示した状態に三方弁52を切り替えて配管76が配管7Aを介して大気に連通した状態とする。その一方で、制御部10(図14参照)は、減圧ポンプ56を駆動させる。これにより、配管7Aおよび配管76が減圧されるため、図17(b)および図17(c)に示したように配管7Aを介して配管76に空気Arが導入される。このような配管76への空気Arの導入は、目的量の空気Arが配管76に導入されるまで行なわれる。配管76への空気の導入の停止は、図16に示したように、圧力センサ54において配管77の圧力をモニタリングしつつ、圧力センサ54において検出される圧力が所定値となったときに、三方弁52を電磁弁51側に切り替えることにより行なわれる。このとき、電磁弁51は閉じられているので、配管76に導入された空気Ar(図17(c)参照)の移動は速やかに停止させられる。
【0096】
ここで、配管76に対する空気の導入量は、配管76への空気の導入後において、導入された空気Arと生理食塩水83との界面Inが流量センサ53のフォトセンサ58Aにおいて検知される位置に達するまでの移動量(廃液量)が、血液フィルタ2に対する血液の供給量と一致または略一致するように設定される(図19(b)および図20(b)参照)。すなわち、先に説明した例とは異なり、配管76は完全には空気Arによって置換されず、配管76の内部に空気溜りが存在した状態となっている。
【0097】
上述した実施の形態では、配管76に対して空気Arを導入する場合に、圧力センサ54において配管77の圧力をモニタリングし、空気Arの導入量を規制していたが、流量センサ53において空気Arの位置をモニタリングし、その結果に基づいて、空気Arの導入量を規制してもよく、また配管76の圧力をモニタリングして空気Arの導入量を規制してもよい。
【0098】
図25(a)および図25(b)に示したように、空気Ar(界面In)が直線管59を移動する場合には、各フォトセンサ58A〜58Eに対応する領域における生理食塩水83と空気Arの比率が徐々に変化するため、図26に示したように、フォトセンサ58A〜58Eの受光素子58Ab〜58Ebにおいて得られる受光量(透過率)が変化する。そのため、フォトセンサ58A〜58Eにおいて得られる受光量(透過率)が変化し始めた時点T1、あるいは受光量(透過率)が変化し始めた後において受光量(透過率)が一定値になる時点T2などを基準として、空気Ar(界面In)が到達したことを検出することができる。そして、複数のフォトセンサ58A〜58Eにおいて空気Ar(界面In)が到達したことを個別に検出すれば、空気Ar(界面In)が隣接するフォトセンサ58A〜58Eの間を通過する時間、すなわち空気Ar(界面In)の移動時間を検出することができる。また、3つ以上のフォトセンサ58A〜58Eを設けることにより、ある時点での空気Ar(界面In)の移動時間ばかりでなく、空気Ar(界面In)の移動時間の経時的変化を測定することができる。
【0099】
血液フィルタ2に血液を供給するのに必要な空間82の確保においては、制御部10(図14参照)は、液供給ノズル34を血液フィルタ2から取り外すとともに、電磁弁51を開放し、減圧ポンプ56を駆動させる。これにより、図19(a)および図19(b)に示したように、血液フィルタ2の内部の生理食塩水は、廃液ノズル50を介して吸引除去され、血液フィルタ2に空気84が導入される。このとき、図27(a)および図27(b)に示したように配管76,77の生理食塩水83は、減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動させられ、これに伴い、配管76の空気Arも減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動する。
【0100】
その一方で、流量センサ53のフォトセンサ58Aでは、空気Ar(界面In)が到達したか否かが検出される。上述のように、フォトセンサ58Aを空気Ar(界面In)が通過する際には、受光素子58Abにおける受光量が大きくなるため、フォトセンサ58Aでは空気Ar(界面In)が到達したことを検出することができる。そして、制御部10(図14参照)は、フォトセンサ58Aにおいて空気Ar(界面In)が到達したことが検出された場合には、電磁弁51(図18参照)を閉じ、生理食塩水83および空気Arの移動を停止させる。
【0101】
上述のように、配管76に対する空気Arの導入量は、配管76への空気Arの導入後において、導入された空気Arと生理食塩水83との界面Inが流量センサ53のフォトセンサ58Aにおいて検知される位置に達するまでの移動量(廃液量)が、血液フィルタ2に対する血液の供給量と一致または略一致するように設定される。すなわち、配管76に対する空気の導入量(生理食塩水と空気の界面の位置)が予め規制されているため、空気Arがフォトセンサ76において検出される位置に到達した場合(図20(b)参照)には、血液フィルタ2において形成される空間82は、その容積が血液フィルタ2に供給すべき血液の量に一致または略一致させられている(図19(b)参照)。
【0102】
このように血液検査装置1では、流量センサ53において空気Ar(界面In)の位置を検出することにより、血液フィルタ2から生理食塩水の廃棄量を規制することとしている。そのため、従来の血液検査装置のように、血液供給ノズルに液面検知センサによって生理食塩水の廃棄量を規制する場合に比べて、血液検査装置1では生理食塩水の廃棄量の規制(界面出し)を短時間で行なうことができる。これにより、血液検査に要する時間を短縮化することが可能となる。
【0103】
本発明は、上述の実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば、本発明は、血球を含む血液に限らず、粒子を含む液体全般、あるいは粒子を含まない一定以上の粘性を有する試料において、粘性や粒度分布などの特性を検査する場合にも適用することができる。より具体的には、木工用ボンドなどの接着剤のように、一定以上の粘性が必要な試料において所望の粘性が確保されているか否かを検査する場合、ゼリーなどの食品において所望とする食感に応じた粘性が確保されているか否かを検査する場合、粉体の粒度分布が所望範囲にあるか否かを検査するために粉体を溶媒中に分散させたものを試料として用いる場合にも適用することができる。
【0104】
また、流量センサとしては、直線管に代えて曲管を採用したもの、あるいはセンサ部として複数のフォトセンサに代えて導電式や誘電容量式を採用したものを使用することもできる。導電式のセンサ部は、たとえば個別電極と、接地電極との間が液体により液絡したか否かを電気的に検出することにより、空気と液体の界面(液体の有無あるいは空気の有無)を検出するものである。一方、誘電容量指揮のセンサ部は、たとえば個別電極と接地電極との間の静電容量の変化により、空気と液体の界面(液体の有無あるいは空気の有無)検出するものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る血液検査装置の一例を示す配管図である。
【図2】図1に示した血液検査装置で用いる血液フィルタを説明するための全体斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2に示した血液フィルタの分解斜視図である。
【図5】図2に示した血液フィルタを底面側から見た分解斜視図である。
【図6】図2に示した血液フィルタにおける流路基板の全体斜視図である。
【図7】図7(a)は図6に示した流路基板における連絡溝に沿った断面の要部の示す断面図であり、図7(b)は図6示した流路基板における土手の直線部に沿った断面の要部を示す断面図である。
【図8】図6示した流路基板の要部を拡大して示した斜視図である。
【図9】図2に示した血液フィルタを説明するための要部を示す断面図である。
【図10】図1に示した血液検査装置における流量センサを示す斜視図である。
【図11】図10に示した流量センサの動作を説明するための断面図である。
【図12】図10に示した流量センサの動作を説明するための要部を拡大して示した断面図である。
【図13】図10に示した流量センサの各フォトセンサにおいて得られる光学的情報の一例を示すグラフである。
【図14】図1に示した血液検査装置のブロック図である。
【図15】図1に示した血液検査装置における気液置換動作を説明するための配管図である。
【図16】図1に示した血液検査装置における空気導入動作を説明するための配管図である。
【図17】図1に示した血液検査装置の空気導入動作における三方弁周りの状態を説明するための一部破断図である。
【図18】図1に示した血液検査装置における血液フィルタに空間を形成するための廃液動作を説明するための配管図である。
【図19】図1に示した血液検査装置の血液フィルタに空間を形成するための廃液動作における血液フィルタ周りの断面図である。
【図20】図1に示した血液検査装置の血液フィルタに空間を形成するための廃液動作における流量センサ周りの状態を説明するための断面図である。
【図21】図1に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための配管図である。
【図22】図1に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための血液フィルタ周りの断面図である。
【図23】図1に示した血液検査装置における測定動作を説明するための配管図である。
【図24】図1に示した血液検査装置における配管の洗浄動作を説明するための配管図である。
【図25】本発明に係る血液検査方法における配管へ空気を導入する処理の他の例を説明するための図12に相当する流量センサの断面図である。
【図26】空気の導入動作での流量センサの各フォトセンサにおいて得られる光学的情報の一例を示すグラフである。
【図27】血液フィルタに血液を供給するための空間を形成する処理の他の例を説明するための流量センサ周りの状態を示す図20に相当する断面図である。
【図28】従来の血液検査装置の一例を示す配管図である。
【図29】図28に示した血液検査装置における気液置換動作を説明するための配管図である。
【図30】図30(a)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタに対する液排出動作を説明するための配管図であり、図30(b)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタからの廃液出動作を説明するための血液フィルタ周りの断面図である。
【図31】図31(a)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための配管図であり、図31(b)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための血液フィルタ周りの断面図である。
【図32】図32(a)は図28に示した血液検査装置における測定動作を説明するための配管図であり、図32(b)は測定動作における流路センサを説明するための正面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 血液検査装置(分析装置)
10 制御部(制御手段)
2 血液フィルタ(抵抗体)
33 加圧ポンプ
52 三方弁(バルブ)
53 流量センサ
55 減圧ボトル
56 減圧ポンプ
58A〜58E (流量センサの)フォトセンサ(検知エリア)
59 (流量センサの)直線管(管状体)
71〜73 (供給用)配管
74〜77 (廃棄用)配管
82 (血液供給用の)空間
83 生理食塩水(液体)
85 血液(試料)
Ar 空気
In 界面
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の流動特性を検査する技術に関する。本発明は、一例において、血液フィルタなどの抵抗体を用いて、血液の流動性や血液中の細胞の変形能や活性度などといった細胞の状態を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の流動性や血液中の細胞の状態を検査する方法としては、血液フィルタを用いる方法がある(たとえば特許文献1,2)。血液フィルタは、微細な溝が形成された基板に他の基板を接合したものである。このような血液フィルタを用いる場合には、血液が溝を通過するときの速度を測定し、溝を通過する際の血液中の細胞の状態を観察することができる。
【0003】
図28には、血液フィルタを用いた血液検査装置の一例を配管図として示してある。血液検査装置9は、送液機構91、廃液機構92、血液供給機構93および流量測定機構94を備えている。
【0004】
送液機構91は、血液フィルタ90に所定の液体を供給するためのものであり、液保持ボトル91A,91Bおよび送液ノズル91Cを有している。液保持ボトル91Aは測定用のための生理食塩水を保持したものであり、液保持ボトル91Bは洗浄のための蒸留水を保持したものである。この送液機構91では、送液ノズル91Cを血液フィルタ90に装着した状態で三方弁91Dを適宜切り替えることにより、送液ノズル91Cに生理食塩水が供給される状態と、送液ノズル91Cに蒸留水が供給される状態とを選択することができる。
【0005】
廃液機構92は、血液フィルタ90の液体を廃棄するためのものであり、廃液ノズル92A、減圧ボトル92B、減圧ポンプ92Cおよび廃液ボトル92Dを有している。この廃液機構92では、廃液ノズル92Aを血液フィルタ90に装着した状態で減圧ポンプ92Cを動作させることにより、配管92Eを介して血液フィルタ90の液体が減圧ボトル92Bに廃棄される。減圧ボトル92Bの液体は、減圧ポンプ92Bによって、配管92Fを介して廃液ボトル92Dに廃棄される。
【0006】
血液供給機構93は、血液フィルタ90から液体を吸い出して血液供給用の空間を形成するとともに、血液供給用の空間に血液を供給するためのものであり、サンプリングノズル93Aを有している。
【0007】
流量測定機構94は、血液フィルタ90を移動する血液の速度を測定するのに必要な情報を得るためのものであり、U字管94Aおよび測定ノズル94Bを有している。U字管94Aは、配管94Cを介して血液フィルタ90に接続されている。U字管94Aには液体が充填されている一方で、配管94Cには空気が充填されている。血液フィルタ90の血液は血液フィルタ90と減圧ボトル92Bとの水頭差によって移動させられる。
【0008】
血液検査装置9では、次のようにして血液の移動時間が測定される。
【0009】
まず、図29に示したように、血液フィルタ90の内部を生理食塩水により置換する。より具体的には、送液機構91の送液ノズル91Cを血液フィルタ90に装着するとともに、液保持ボトル91Aの生理食塩水を送液ノズル91Cに供給可能状態に三方弁91Dを切り替えておく。その一方、廃液機構92の廃液ノズル92Aを血液フィルタ90に装着するとともに、減圧ポンプ92Cを動作させる。これにより、液保持ボトル91Aの生理食塩水が送液ノズル91Cを介して血液フィルタ90に供給されるとともに、血液フィルタ90の廃液が廃液ノズル92Aを介して廃液ボトル92Dに廃棄される。
【0010】
次いで、血液フィルタ90から送液ノズル91Cを取り外し、図30(a)に示したように、血液供給機構93のサンプリングノズル93Aによって血液フィルタ90の生理食塩水の一部を吸い出して、図30(b)に示したように血液を供給するための空間95を形成する。
【0011】
さらに、図31(a)に示したように、サンプリングノズル93Aによって採血管96から血液を採取する一方で、図31(b)に示したように、採取した血液97を血液フィルタ90の空間95に充填する。
【0012】
次いで、図32(a)に示したように、流量測定機構94の測定ノズル94Bを血液フィルタ90に装着する。これにより、血液フィルタ90と減圧ボトル92Bとの間に生じる水頭差によって、血液フィルタ90の血液が移動し、U字管94Aでの液面位置が変化する。血液検査装置9では、図32(b)に示したように、U字管94Aにおける液面位置の変化速度を複数のフォトセンサ97によって検出し、その検出結果に基づいて、血液の移動時間を演算する。
【0013】
しかしながら、U字管94Aと血液フィルタ90との接続する方法では、U字管94Aにおける液面位置が変化するため、測定圧力(血液フィルタ90の血液97に作用する圧力)に変動が生じる。また、水頭差によって血液フィルタ90において血液97を移動させるためには、U字管94Aおよび血液フィルタ90から減圧ボトル92Bに至るまでの配管92E,94Cに液体が充填されている必要があるため、比較的な大きな配管長を必要とするために配管抵抗が大きくなる。しかも、送液ノズル91Cおよび廃液ノズル92Aの他に、U字管94Aと血液フィルタ90とを接続するための測定ノズル94Bが必要となるため、測定に必要なノズル数が多くなる。そればかりか、ノズル数が多いために配管も複雑になり、またノズル91C,92A,93A,94Bの切り替えるためのバルブ数も多くなるなど部品点数が多く、このことが装置の小型化の妨げとなっている。また、部品点数が多くなると、バルブなどのように比較的に故障率の高い部品も多く含まれることとなるため、装置の故障率(性能)を示す指標であるである平均故障時間(MTBF)が短くなってしまう。
【0014】
また、血液フィルタ90に血液を供給する前にサンプリングノズル93Aを用いて血液フィルタ90からの生理食塩水の吸い出す方法では、ノズル91C,92A,93A,94Bを頻繁に切り替えて使用する必要があるために測定時間が長くなってしまう。とくに、生理食塩水の吸い出し量を適切に制御するためには、血液フィルタ90における液面を適切にモニタリングしつつ生理食塩水を吸い出す必要があり、生理食塩水の吸い出しに時間を多くの時間を費やしてしまう。
【0015】
さらに、血液フィルタ90に対する生理食塩水の充填には、廃液機構92の減圧ポンプ92Cを利用して行なわれている。しかしながら、血液フィルタ90の下流側からのみの吸引では、血液フィルタ90には気泡が混入しやすい。このような不具合を回避するためには、高い負圧によって比較的に長時間、血液フィルタ90に生理食塩水を流通させる必要が生じる。この場合には、使用する生理食塩水の量が多くなって不経済であるばかりか、減圧ポンプの消費電力が大きくなり、ランニングコスト的に不利となる。
【0016】
【特許文献1】特開平2−130471号公報
【特許文献2】特開平11−118819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、血液フィルタを用いた血液検査において、部品点数を少なくして装置の小型化を図るとともに、コストダウンおよび平均故障時間の長時間化を実現することを課題としている。
【0018】
本発明の別の課題は、装置における配管の圧力変動および抵抗を小さくし、測定精度の向上、測定時間の短縮化、ならびにランニングコストの低減を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の側面においては、試料を通過させる抵抗体と、上記抵抗体での試料の移動時間を測定するための流量センサと、を備えた分析装置であって、上記流量センサは、上記抵抗体に供給された液体を廃棄するための廃液用の配管の途中に配置されていることを特徴とする、分析装置が提供される。
【0020】
流量センサは、たとえば液体または気体が通過する管状体と、管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいる。管状体は、たとえば直線管として構成される。
【0021】
好ましくは、直線管は、水平方向に延びるように配置され、複数の検知エリアは、水平方向に並んで配置される。
【0022】
本発明の分析装置は、管状体を移動させる空気を導入するための空気導入手段をさらに備えたものとすることもできる。
【0023】
本発明の分析装置は、抵抗体に供給された液体を移動させる動力を付与するための減圧ポンプと、管状体と減圧ポンプとの間に設けられた減圧ボトルと、をさらに備えたものとすることができる。この場合の空気導入手段は、たとえば減圧ボトルと、管状体が大気に連通する状態を選択可能とするバルブと、を含んでおり、かつ、バルブを切り替えて管状体を大気に連通させることにより、バルブと減圧ボトルとの間の流路に空気を導入するように構成される。空気導入手段は、減圧ボトルの負圧によって、流路に空気を導入するように構成することもできる。
【0024】
本発明の分析装置は、たとえば抵抗体の内部を液体で充填した後に減圧ポンプによって液体を移動させて抵抗体に空気を導入することにより、抵抗体の内部に試料を充填する空間を確保するように構成された制御手段をさらに備えている。
【0025】
制御手段は、たとえば流路の液体を空気に置換した後、上記バルブを切り替えて上記流路において液体を導入するとともに、上記流量センサにおいて上記液体と上記空気との界面が検知されたときに、上記流路における液体の移動を停止させるように構成される。この場合、流路に導入される液体の容量が、抵抗体における試料を充填するための空間の容量と一致または略一致させられる。
【0026】
制御手段は、流路に導入された空気と液体との界面が流量センサにおいて検出されたときに、流路における空気の移動を停止させるように構成してもよい。この場合、流路に導入される空気の容量が、抵抗体における試料を充填するための空間の容量と一致または略一致させられる。
【0027】
好ましくは、本発明の分析装置は、抵抗体の内部に液体を導入するための供給用の配管の途中に設けられた加圧ポンプをさらに備えたものとされる。
【0028】
試料は、たとえば粒子を含むもの、典型的には血球を含む血液である。
【0029】
抵抗体は、たとえば試料を移動させる複数の微細溝を有したものとされている。
【0030】
本発明の第2の側面においては、試料を通過させる抵抗体の内部に液を充填する第1ステップと、上記抵抗体の内部の液の一部を廃棄し、上記抵抗体の内部に試料を充填する空間を確保する第2ステップと、上記空間に試料を供給する第3ステップと、上記抵抗体の内部において試料を移動させる第4ステップと、上記抵抗体の内部における試料の移動時間を、上記抵抗体に接続された廃液用配管の途中に設けられた流量センサを利用して測定する第5ステップと、を含むことを特徴とする、分析方法が提供される。
【0031】
好ましくは、本発明の分析方法は、流量センサとして、管状体と、管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいるものを用い、かつ、第1ステップと第2ステップとの間において行なわれ、かつ管状体に空気を導入する第6ステップをさらに含んでいる。この場合、第5ステップは、たとえば管状体を移動する液体と空気との界面を上記各センサ部において捕捉したときに得られ情報に基づいて演算することにより行なわれる。
【0032】
第1ステップは、たとえば減圧ポンプの動力を、減圧ボトルおよび上記廃液用の配管を介して上記抵抗体に作用させることにより行なわれる。この場合に第6ステップは、廃液用の配管の途中に設けられたバルブを切り替えることにより、抵抗体の上流側を大気開放することにより行なわれる。
【0033】
第6ステップは、たとえば減圧ポンプを停止させた状態において、上記減圧ボトルの負圧を上記配管に作用させることにより行なわれる。第6ステップは、たとえばバルブと減圧ボトルとの間の流路を空気により置換することにより行なわれる。この場合、本発明の分析方法は、減圧ポンプの動力によってバルブの上流側から流路に液体を導入する第7ステップをさらに含んでいてもよい。第7ステップは、流量センサにおいて液体と空気との界面が検知されたときに、流路における液体の移動を停止させ、抵抗体の内部に目的とする容量の空間を確保するように行なわれる。
【0034】
第7ステップは、バルブを介してバルブと減圧ボトルとの間の流路に導入された空気と液体との界面が流量センサにおいて検出されたときに、流路における空気の移動を停止させることにより行なってもよい。
【0035】
好ましくは、第5ステップを行なう場合の減圧度は、第1ステップを行なう場合に比べて小さく設定される。
【0036】
本発明の分析方法では、試料しては、たとえば粒子を含むもの、典型的には血球を含む血液が用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る血液検査装置および血液検査方法ついて、図面を参照して具体的に説明する。
【0038】
図1に示した血液検査装置1は、血液フィルタ2を用いて、たとえば全血などの血液試料の流動性、赤血球の変形形態および白血球の活性度を測定するように構成されたものである。この血液検査装置1は、液供給機構3、サンプリング機構4、廃液機構5および撮像機6を備えている。
【0039】
図2ないし図5に示したように、血液フィルタ2は、血液を移動させる流路を規定するものであり、ホルダ20、流路基板21、パッキン22、透明カバー23およびキャップ24を有している。
【0040】
ホルダ20は、流路基板21を保持するためのものであるとともに、流路基板21への液体の供給、および流路基板21からの液体の廃棄を可能とするものである。このホルダ20は、一対の小径円筒部25A,25Bを、矩形筒部26および大径円筒部27の内部に設けたものである。一対の小径円筒部25A,25Bは、上部開口25Aa,25Baおよび下部開口25Ab,25Bbを有する円筒状に形成されており、フィン25Cを介して矩形筒部26および大径円筒部27に一体化されている。大径円筒部27は、流路基板21を固定する役割をも果すものであり、円柱状凹部27Aを有している。円柱状凹部27Aは、パッキン22が嵌め込まれる部分であり、その内部には一対の円柱状凸部27Aaが形成されている。矩形筒部26と大径円筒部27との間には、フランジ20Aが設けられている。このフランジ20Aは、キャップ24をホルダ20に固定するのに利用するものであり、平面視略矩形状に形成されている。フランジ20Aのコーナ部20Bには円柱状突起20Cが設けられている。
【0041】
図3および図6に示したように、流路基板21は、血液を移動させるときに移動抵抗を与えるとともに、フィルタとして機能するものであり、ホルダ20の大径円筒部27(円柱状凹部27A)にパッキン22を介して固定されている。図7ないし図9に示したように、流路基板21は、たとえばシリコンにより全体として矩形板状に形成されており、その一面をフォトリソグラフィの手法を利用し、またエッチング処理を行なうことにより、土手部28および複数の連絡溝29を有するものとして形成されている。
【0042】
土手部28は、流路基板21の長手方向の中央部において、蛇行状に形成されている。土手部28は、流路基板21の長手方向に延びる複数の直線部28Aを有しており、これらの直線部28Aによって導入用流路28Bおよび廃棄用流路28Cが規定されている。土手部28の両サイドにはまた、図6および図7に示したようにホルダ20の小径円筒部25A,25Bの下部開口25Ab,25Bbに対応する部分に、貫通孔28D,28Eが形成されている。貫通孔28Dは、小径円筒部25Aからの液体を流路基板21に導入するためのものであり、貫通孔28Eは流路基板21の液体を小径円筒部25Bに排出するためのものである。
【0043】
一方、図6ないし図9に示したように、複数の連絡溝29は、土手部28の直線部28Aにおいて、その幅方向に延びるように形成されている。すなわち、連絡溝29は、導入用流路28Bと廃棄用流路28Cとの間を連通させている。各連絡溝29は、血球や血小板などの細胞の変形能を観察する場合には、その幅寸法は細胞の径よりも小さく設定され、たとえば4〜6μmとされる。また、隣接する連絡溝29の間の間隔は、たとえば15〜20μmとされる。
【0044】
このような流路基板21では、貫通孔28Dを介して導入された液体は、導入用流路28B、連絡溝29、および廃棄用流路28Cを順に移動し、貫通孔28Eを介して流路基板21から廃棄される。
【0045】
図2ないし図6に示したように、パッキン22は、ホルダ20の大径円筒部27に流路基板21を密閉状態で収容するためのものである。このパッキン22は、全体として円板状の形態を有しており、ホルダ20の大径円筒部27における円柱状凹部27Aに嵌め込まれている。パッキン22には、一対の貫通孔22Aおよび矩形凹部22Bが設けられている。一対の貫通孔22Aは、ホルダ20における大径筒部27の円柱状凸部27Aが嵌め込まれる部分である。一対の貫通孔22Aに円柱状凸部27Aaを嵌め込むことにより、パッキン22は大径円筒部27に位置決めされる。矩形凹部22Bは、流路基板21を収容するためのものであり、流路基板21の外観形状に対応した形態とされている。ただし、矩形凹部22Bの深さは、流路基板21の最大厚みと同程度もしくはそれよりも若干小さくされている。矩形凹部22Bには、一対の連通孔22C,22Dが設けられている。これらの連通孔22C,22Dは、ホルダ20の小径円筒部25A,25Bの下部開口25Ab,25Bbを流路基板21の貫通孔28D,28Eと連通させるためのものである。
【0046】
図3ないし図6に示したように、透明カバー23は、流路基板21に当接させて流路基板21における導入用流路28B、連通溝29および廃棄用流路28Cを閉断面構造とするためものである。この透明カバー23は、たとえばガラスにより円板状に形成されている。透明カバー23の厚みは、ホルダ20の大径円筒部27における円柱状凹部27Aの深さよりも小さくされているとともに、透明カバー23とパッキン22の最大厚みの合計は、円柱状凹部27Aの深さよりも大きくされている。
【0047】
図2ないし図5に示したように、キャップ24は、流路基板21をパッキン22および透明カバー23とともに固定するためのものであり、円筒部24Aおよびフランジ24Bを有している。円筒部24Aは、ホルダ20の大径円筒部27を外套するものであり、貫通孔24Cを有している。貫通孔24Cは、流路基板21における血液の移動状態を確認するときに、その視認性を阻害しないようにするためものである。フランジ24Bは、ホルダ20のフランジ20Aに対応した形態を有しており、そのコーナ部24Dに凹部24Eが設けられている。この凹部24Eは、ホルダ20のフランジ20Aにおける円柱状突起20Cを嵌合させるためのものである。
【0048】
上述のように、透明カバー23の厚みは、ホルダ20の大径円筒部27における円柱状凹部27Aの深さよりも小さくされているとともに、透明カバー23とパッキン22の最大厚みの合計は、円柱状凹部27Aの深さよりも大きくされている。一方、矩形凹部22Bの深さは、流路基板21の最大厚みと同程度もしくはそれよりも若干大きくされている。そのため、キャップ24によって流路基板21をパッキン22および透明カバー23とともに固定したときに、パッキン22が圧縮させられて透明カバー23が流路基板21に適切に密着させられ、流路基板21と透明カバー23との間から液体が漏れ出すことを抑制することができる。
【0049】
図1に示した液供給機構3は、血液フィルタ2に液体を供給するためのものであり、ボトル30,31、三方弁32、加圧ポンプ33、および液供給ノズル34を有している。
【0050】
ボトル30,31は、血液フィルタ2に供給すべき液体を保持したものである。ボトル30は、血液の検査のために使用する生理食塩水を保持したものであり、配管70を介して三方弁32に接続されている。一方、ボトル31は、配管の洗浄ために蒸留水を保持したものであり、配管71を介して三方弁32に接続されている。
【0051】
三方弁32は、液供給ノズル34に供給すべき液体の種類を選択するためのものであり、配管72を介して加圧ポンプ33に接続されている。すなわち、三方弁32を適宜切り替えることにより、ボトル30から液体供給ノズル34に生理食塩水が供給される状態、およびボトル31から液体供給ノズル34に蒸留水が供給される状態のいずれかを選択することができる。
【0052】
加圧ポンプ33は、ボトル30,31から液供給ノズル34に液体を移動させるための動力を与えるためのものであり、配管73を介して液供給ノズル34に接続されている。加圧ポンプと33としては、公知の種々のものを使用することができるが、装置を小型化する観点からは、チューブポンプを用いるのが好ましい。
【0053】
液供給ノズル34は、各ボトル30,31からの液体を血液フィルタ2に供給するためのものであり、血液フィルタ2における小径筒部25Aの上部開口25Aa(図2および図3参照)に装着されるものである。この液供給ノズル34は、上部開口25Aa(図2および図3参照)に装着されるジョイント35が設けられている一方で、他端部において配管73を介して加圧ポンプ33に接続されている。
【0054】
サンプリング機構4は、血液フィルタ2に血液を供給するためのものであり、サンプリングポンプ40、血液供給ノズル41、および液面検知センサ42を有している。
【0055】
サンプリングポンプ40は、血液を吸引・吐出するための動力を付与するためのものであり、たとえばシリンジポンプとして構成されている。
【0056】
血液供給ノズル41は、先端部にチップ43を装着して使用するものであり、サンプリングポンプ40によってチップ43の内部に負圧を作用させることにより、採血管81からチップ43の内部に血液を吸引し、サンプリングポンプ40によってチップ内部の血液を加圧することにより血液を吐出するように構成されている。
【0057】
液面センサ42は、チップ43の内部に吸引された血液の液面を検知するためのものである。この液面センサ42は、チップ43の内部の圧力が所定値となったときにその旨の信号を出力し、目的量の血液が吸引されたことを検出するものである。
【0058】
廃液機構5は、各種配管および血液フィルタ2の内部の液体を廃棄するためのものであり、廃液ノズル50、電磁弁51、三方弁52、流量センサ53、圧力センサ54、減圧ボトル55、減圧ポンプ56、および廃液ボトル57を有している。
【0059】
廃液ノズル50は、血液フィルタ2の内部の液体を吸引するためのものであり、血液フィルタ2における小径筒部25Bの上部開口25Ba(図2および図3参照)に装着されるものである。この廃液ノズル50は、先端部に血液フィルタ2の上部開口25Baに装着されるジョイント50Aが設けられている一方で、他端部が配管74を介して電磁弁51に接続されている。
【0060】
電磁弁51は、廃棄ノズル50と三方弁52との間の連通状態を選択し、廃棄ノズル57からの廃液が三方バルブ52に供給される状態と、供給されない状態とを選択するためのものである。この電磁弁51は、配管75を介して三方弁52に接続されている。もちろん、電磁弁51に代えて、電気弁などの他の種類のバルブを使用することもできる。
【0061】
三方弁52は、配管76を介して流量センサ53に接続させられているとともに、大気開放用の配管7Aが接続されたものである。この三方弁52では、減圧ボトル55に液を廃棄しうる状態と、配管7Aを介して配管76に空気を導入する状態と、を選択することができる。
【0062】
図10および図11に示したように、流量センサ53は、空気Arと生理食塩水83との界面Inの位置を捕捉して血液の移動時間を測定するために利用されるものであり、複数(図面上は5つ)のフォトセンサ58A,58B,58C,58D,58Eおよび直線管59を有している。
【0063】
複数のフォトセンサ58A〜58Eは、直線管59における対応する領域を空気Arと生理食塩水83との界面Inが到達(通過)したか否かを検出するためのものであり、水平方向において、等間隔に並んで配置されている。各フォトセンサ58A〜58Eは、発光素子58Aa,58Ba,58Ca,58Da,58Eaおよび受光素子58Ab,58Bb,58Cb,58Db,58Ebを有しており、それらの素子58Aa〜58Ea,58Ab〜58Ebが互いに対面して配置された透過型センサとして構成されている。
【0064】
もちろん、フォトセンサ58A〜58Eとしては、透過型に限らず、反射型のものを使用することもできる。
【0065】
直線管59は、検査時において、空気Arと生理食塩水83との間の界面Inが移動させられる部分であり、配管76を介して三方弁52に接続されている一方で、配管77を介して減圧ボトル55の内部に連通させられている(図1参照)。配管76,77における直線管59の近傍の内径は、直線管59と同一または略同一(たとえば直線管59の内面積の−3%〜+3%の内面積に相当する内径)に設定するのが好ましい。この直線管59は、支持部59Aによって、各フォトセンサ58A〜58Eにおける発光素子58Aa〜58Eaと受光素子58Ab〜58Ebとの間に位置するように、水平方向に延びるように配置されている。この直線管59は、透光性を有する材料、たとえば透明ガラスあるいは透明樹脂により、一様断面を有する円筒状に形成されている。ここで、一様断面を有する円筒状とは、内径が一定または略一定(たとえば目的とする内面積に対して−3%〜+3%の範囲の内面積に相当する内径)の円形断面を有することを意味している。直線管59の内径は、空気Arと生理食塩水83との間の界面Inの移動時間を適切に測定できる範囲に設定すればよく、たとえば0.5mm〜3mmとされる。空気Arの移動する部分、たとえば直線管59の内径を一様(一定または略一定)にし、あるいは直線管59に加えて直線管56に接続された配管76,77における直線管59の近傍の内径を直線管59と同一または略同一に設定すれば、空気Arが直線管59の前後を移動する場合であっても、空気Arと配管の内面との間に接触面積の変化が生じることを抑制し、接触面積を一定または略一定に維持することができる。また、直線管59は、内径の寸法公差を考慮した場合、透明ガラスにより形成するのが好ましい。そうすれば、界面Inの移動時間をより正確に測定することが可能となる。
【0066】
図12(a)および図12(b)に示したように、空気Arと生理食塩水83との間の界面Inが直線管59を移動する場合には、各フォトセンサ58A〜58Eに対応する領域における空気Arと生理食塩水83の比率が徐々に変化するため、図13に示したように、フォトセンサ58A〜58Eの受光素子58Ab〜58Ebにおいて得られる受光量(透過率)が変化する。そのため、フォトセンサ58A〜58Eにおいて得られる受光量(透過率)が変化し始めた時点T1、あるいは受光量(透過率)が変化し始めた後において受光量(透過率)が一定値になる時点T2などを基準として、フォトセンサ58A〜58Eにおいてでは空気Arと生理食塩水83との間の界面In(生理食塩水83)が到達したことを検出することができる。そして、複数のフォトセンサ58A〜58Eにおいて空気Arと生理食塩水83との間の界面In(生理食塩水83)が到達したことを個別に検出すれば、隣接するフォトセンサ58A〜58Eの間を空気Arと生理食塩水83との間の界面In通過する時間、すなわち生理食塩水83の移動時間を検出することができる。また、3つ以上のフォトセンサ58A〜58Eを設けることにより、ある時点での生理食塩水83の移動時間ばかりでなく、生理食塩水83の移動時間の経時的変化を測定することができる。なお、複数のフォトセンサ58A〜58Eの設置間隔は、たとえば流体量を基準として10〜30μLに相当する量に対応する距離からか選択される。
【0067】
ここで、生理食塩水83の移動時間は、血液が血液フィルタ2(図1ないし図3参照)における流路基板21を移動するときの移動抵抗に依存する。そのため、流量センサ53において生理食塩水83の移動時間を検出することにより、血液の流動性などの情報を得ることができるようになる。
【0068】
図1に示した圧力センサ54は、配管77を移動する液体の圧力をモニタリングするためのものであり、配管77の途中に設けられている。圧力センサ54での圧力のモニタリング結果は、後述する減圧ポンプ56にフィードバックされ、配管77を流れる液体、ひいては血液フィルタ2の内部の液体の圧力が略一定に維持される。血液フィルタ2の内部の液体の圧力は、圧力センサ54を設ける代わりに、減圧ボトル55の圧量をモニタリングすることにより略一定に維持することもできる。
【0069】
減圧ボトル55は、廃液を一時的に保持するためのものであるとともに、減圧空間を規定するためのものである。この廃液ボトル57は、配管78を介して減圧ポンプ56に接続されている。
【0070】
減圧ポンプ56は、血液フィルタ2の内部の液体を吸引するため、あるいは空気Ar(図11参照)を配管76に導入するために、減圧ボトル55の内部を減圧するものである。この減圧ポンプ56は、配管79を介して廃液ボトル57に接続されており、減圧ボトル55の廃液を廃液ボトル57に送液する役割をも有している。減圧ポンプと56としては、公知の種々のものを使用することができるが、装置を小型化する観点からは、チューブポンプを用いるのが好ましい。
【0071】
廃液ボトル57は、血液を検査したときの血液フィルタ2や配管74〜77の内部の廃液、あるいは配管72〜77を洗浄したときの廃液を保持するためのものである。
【0072】
撮像機6は、流路基板21における血液の移動状態を撮像するためものである。この撮像機6は、たとえばCCDカメラにより構成されており、流路基板21の正面に位置するように配置されている。撮像機6における撮像結果は、たとえばモニタ60に出力され、血液の移動状態をリアルタイムで、あるいは録画画像として確認することができる。
【0073】
血液検査装置1は、図1に示した各要素の他に、図14に示したように制御部10および演算部11をさらに備えている。
【0074】
制御部10は、各要素の動作を制御するためものである。この制御部10は、たとえば三方弁32,52の切替制御、電磁弁51の開閉制御、各ポンプ33,40,56の駆動制御、各ノズル34,41,50の駆動制御、撮像機6やモニタ60の動作制御を行なうものである。
【0075】
演算部11は、各要素を動作させるのに必要な演算、たとえば液面検知センサ42や圧力センサ54でのモニタリング結果に基づいて各ポンプ33,40,56の制御量を演算し、流量センサ53でのモニタリング結果に基づいて電磁弁51の開閉制御や三方弁52の切替制御に必要な演算などを行うものである。演算部11はさらに、流量センサ53でのモニタリング結果に基づいて、血液フィルタ2における血液の移動時間(流動性)を演算するものでもある。
【0076】
次に、血液検査装置1における動作について説明する。
【0077】
まず、図15に示したように、血液フィルタ2を所定位置にセットした上で、測定を開始する旨の合図を行なう。この合図は、たとえば血液検査装置1に設けられたボタンをユーザが操作することにより、あるいは血液フィルタ2をセットすることにより自動的に行なわれる。制御部10(図14参照)は、測定開始の合図があったと認識した場合には、血液フィルタ2の内部の気液置換動作を行なう。より具体的には、制御部10(図14参照)は、まず、液供給機構3の液供給ノズル34を血液フィルタ2における小径筒部25Aの上部開口25Aaに装着するとともに、廃液機構5の廃液ノズル50を血液フィルタ2における小径筒部25Bの上部開口25Baに装着する。その一方、制御部10(図14参照)は、三方弁32切り替えてボトル30が液供給ノズル34に連通した状態とするとともに、三方弁52を切り替え、電磁弁51を開けることにより廃液ノズル50が減圧ボトル55に連通した状態とする。すなわち、ボトル30と減圧ボトル55との間が血液フィルタ2の内部を介して連通する。この状態において、制御部10(図14参照)は、液供給機構3の加圧ポンプ33および廃液機構5の減圧ポンプ56を駆動する。ここで、加圧ポンプ33の加圧力は、たとえば1〜150kPaとされ、減圧ポンプ56の減圧力は、0〜−50kPaとされる。
【0078】
このようにして加圧ポンプ33および減圧ポンプ56を駆動させた場合には、液ボトル30の生理食塩水は、配管71〜73を介して液供給ノズル34に供給されるとともに、血液フィルタ2の内部を通過した後、廃液ノズル50、配管74〜77を介して減圧ボトル55に廃棄される。減圧ボトル55に廃棄された生理食塩水は、減圧ポンプ56の動力により、配管78,79を介して廃液ボトル57に廃棄される。これにより、血液フィルタ2の内部の気体は生理食塩水により排出され、血液フィルタ2の内部は生理食塩水により置換される。
【0079】
血液検査装置1では、血液フィルタ2に対する気液置換を、血液フィルタ2の上流側に配置された加圧ポンプ33、および血液フィルタ2の下流側に配置された減圧ポンプ56を用いて行なわれている。そのため、血液フィルタ2の下流側に配置された減圧ポンプ56を用いる場合に比べて、血液フィルタ2の内部に気泡が残存する可能性が著しく軽減され、血液フィルタ2の内部の気体を排出するのに必要な時間も軽減される。これにより、血液検査に必要な時間を短縮することが可能となる。また、血液検査装置1では、減圧ポンプ56に加えて加圧ポンプ33を併用しているものの、気液置換に必要なポンプ動力を小さくし、置換時間を短くすることができるため、ランニングコストを却って小さくすることができる。
【0080】
次に、血液検査装置1では、図16に示したように、配管76の内部へ空気の導入するための処理を行なう。より具体的には、制御部10(図14参照)は、電磁弁51を閉じるとともに減圧ポンプ56の動作を停止させ、図17(a)から図17(b)に示した状態に三方弁52を切り替えて配管76が配管7Aを介して大気に連通した状態とする。その一方で、制御部10(図14参照)は、減圧ポンプ56を駆動させる。これにより、配管7Aおよび配管76が減圧されるため、図17(b)および図17(c)に示したように配管7Aを介して配管76に空気Arが導入される。このような配管76への空気Arの導入は、配管76の内部が空気Arによって完全に置換されるまで行なわれる。このような空気Arによる置換は、予め定められた時間だけ配管86を大気開放した後に三方弁52を切り替えることにより、あるいは配管76の内部の圧力を圧力センサ54によってモニタリングし、配管76の内部の圧力が所定値になったときに三方弁52を切り替えることにより行なわれる。もちろん、配管76への空気Arの導入は、減圧ポンプ56を駆動することなく、減圧ボトル55(図16参照)の残圧により行なってもよい。
【0081】
次いで、図18に示したように、血液検査装置1では、血液フィルタ2から生理食塩水を一定量廃棄し、血液フィルタ2に血液を供給するのに必要な空間82を確保する。より具体的には、制御部10(図14参照)は、液供給ノズル34を血液フィルタ2から取り外した状態において電磁弁51を開放する。このとき、減圧ボトル55(図16参照)は、先に行なった配管76の空気置換により減圧された状態となっている。そのため、電磁弁51を開放することにより、図19(a)および図19(b)に示したように、血液フィルタ2の内部の生理食塩水は、廃液ノズル50を介して吸引除去され、血液フィルタ2に空気84が導入される。このとき、図20(a)および図20(b)に示したように配管76,77の生理食塩水83は、減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動させられ、これに伴い、配管76の空気Arも減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動する。
【0082】
その一方で、流量センサ53のフォトセンサ58Aでは、生理食塩水83と空気Arとの界面Inが到達したか否かが検出される。上述のように、フォトセンサ58Aを界面Inが通過する際には、受光素子58Abにおける受光量が小さくなるため、フォトセンサ58Aでは界面Inが到達したことを検出することができる。そして、制御部10(図14参照)は、フォトセンサ58Aにおいて界面Inが到達したことが検出された場合には、電磁弁51(図18参照)を閉じ、生理食塩水83および界面Inの移動を停止させる。
【0083】
ここで、界面Inがフォトセンサ58Aによって検出されるまでの配管76への生理食塩水83の導入量(血液フィルタ2からの生理食塩水の廃棄量)は、血液フィルタ2に供給すべき血液の量と一致または略一致させられている。すなわち、配管76におけるフォトセンサ58Aよりも上流側の容量は、血液フィルタ2に供給すべき血液の量にしたがって設定されている。そのため、界面Inがフォトセンサ58Aによって検出されたときに電磁弁51(図18参照)を閉じることにより、血液フィルタ2において、供給すべき血液の量に合致した容量の空間82を確保することができる。ここで、空間82の容量は、たとえば血液検査において使用される血液量(たとえば50〜200μL)の1.2〜3.0倍(たとえば100〜250μL)とされる。
【0084】
このように血液検査装置1では、流量センサ53において界面Inの位置を検出することにより、血液フィルタ2からの生理食塩水の廃棄量を規制することとしている。そのため、従来の血液検査装置のように、血液供給ノズルに液面検知センサによって生理食塩水の廃棄量を規制する場合に比べて、血液検査装置1では生理食塩水の廃棄量の規制(界面出し)を短時間で行なうことができる。これにより、血液検査に要する時間を短縮化することが可能となる。
【0085】
次いで、図21に示したように、制御部10(図14参照)は、血液フィルタ2に設けられた空間82に血液85を供給させる。より具体的には、制御部10(図14参照)は、サンプリングポンプ40の動力を利用して、採血管81から血液供給ノズル41に装着したチップ43の内部に血液を吸引した後、図22(a)および図22(b)に示したようにチップ43の血液85を血液フィルタ2の空間82に吐出させる。血液フィルタ2に対する血液85の吐出量は、空間82の容積に対応した量とされ、その吐出量の制御は、液面検知センサ42(図21参照)においてチップ43の内部の血液の液面を検知することにより行なわれる。
【0086】
次いで、血液検査装置1では、図23に示したように、血液フィルタ2の空間82に供給された血液85の検査を行なう。より具体的には、制御部10(図14参照)は、減圧ポンプ56の動力を利用して、廃液ノズル50を介して血液フィルタ2の生理食塩水83を廃棄する。このとき、血液フィルタ2においては、生理食塩水83とともに血液85が移動させられる。
【0087】
より具体的には、血液フィルタ2においては、血液85は、流路基板21と透明カバー23との間に形成された流路(図6ないし図9参照)を通過した後に小径筒部25Bに移動させられる。流路基板21においては、血液85は、図6ないし図9を参照して説明したように、貫通孔28Dを介して導入用流路28Bに導入された後に、連絡溝29および廃棄用流路28Cを順に移動し、貫通孔28Eを介して廃棄される。ここで、連絡溝29の幅寸法を血液85中の血球や血小板などの細胞の径よりも小さく設定した場合には、細胞は変形しつつ連絡溝29を移動し、あるいは連絡溝29において目詰まりを起こす。このような細胞の状態は、撮像機6において撮影される。撮像機6における撮像結果は、リアルタイムでモニタ60に表示してもよいし、録画後にモニタ60において表示してもよい。
【0088】
その一方で、図11に示したように、流量センサ53においては、直線管59を移動する界面Inが検出される。そして、演算部11(図14参照)では、各フォトセンサ58A〜58Eから得られる情報に基づいて、界面Inが通過したか否かが判断されるとともに、界面Inの移動時間が演算される。界面Inの移動時間は、血液フィルタ2における血液85の移動時間、すなわち血液85の流動性(抵抗)に相関するものであるから、界面Inの移動時間によって血液85の状態を把握することができる。
【0089】
ここで、流量センサ53は、直線管59が水平に配置された構成であるため、U字管を用いた流量センサのように、血液検査時において流量センサでの水頭差が変化することもない。そのため、血液検査装置1では、血液検査時における水頭差変化に起因する測定誤差を抑制し、測定精度を向上させることが可能となる。
【0090】
図24に示したように、血液の検査が終了した場合には、ユーザの選択により、廃液機構5の配管74〜77の洗浄を行なう。このような洗浄処理は、血液フィルタ2をセットする位置に洗浄用のタミーチップ2′をセットした上で、ユーザが洗浄モードを選択することにより行なわれる。ここで、ダミーチップ2′は、外観形状において血液フィルタ2と同様なものであるとともに、その内部に連通孔20′が設けられたものである。連通孔20′は、血液フィルタ2における小径筒部25A,25Bの上部開口25Aa,25Ba(図2および図3参照)に対応する部分に設けられた開口21′,22′を有するものである。
【0091】
血液検査装置1においては、洗浄モードが選択された場合には、制御部10(図14参照)は、まず、液供給機構3の液供給ノズル34をダミーチップ2′における連通孔20′の開口21′に装着するとともに、廃液機構5の廃液ノズル50をダミーチップ2′における連通孔20′の開口22′に装着する。その一方、制御部10(図14参照)は、三方弁32切り替えてボトル31が液供給ノズル34に連通した状態とするとともに、三方弁52を切り替え、電磁弁51を開けることにより廃液ノズル50が減圧ボトル55に連通した状態とする。すなわち、ボトル31と減圧ボトル55との間がダミーチップ2′の連通孔20′を介して連通する。この状態において、制御部10(図14参照)は、液供給機構3の加圧ポンプ33および廃液機構5の減圧ポンプ56を駆動する。ここで、加圧ポンプ33の加圧力は、たとえば1〜150kPaとされ、減圧ポンプ56の減圧力は、0〜−50kPaとされる。
【0092】
このようにして加圧ポンプ33および減圧ポンプ56を駆動させた場合には、液ボトル31の蒸留水は、配管70,72,73を介して液供給ノズル34に供給されるとともに、ダミーチップ2′の連通孔20′を通過した後、廃液ノズル50、配管74〜77を介して減圧ボトル55に廃棄される。減圧ボトル55に廃棄された蒸留水は、減圧ポンプ56の動力により、配管78,79を介して廃液ボトル57に廃棄される。これにより、廃液機構5における配管74〜77は蒸留水により洗浄される。
【0093】
血液検査装置1では、血液フィルタ2よりも下流に設けられた流量センサ53からの情報に基づいて、血液の状態を把握するようにしている。そのため、従来の血液検査装置のように、流量センサ53と血液フィルタ2との間を繋ぐ配管およびノズルを、廃液機構5の配管74〜79や廃液ノズル50とは別に設ける必要はない。その結果、血液検査装置1は、装置構成が簡略化され、コスト的に有利に製造できるとともに装置の小型化が可能となる。そればかりか、駆動制御すべきノズルやバルブの数が少なくなることにより、平均故障時間(MTBF)を長くすることができる。また、流量センサ53を廃液機構5の配管の途中に設けているため、流量センサ53のための配管を廃液機構5の配管74〜79とは別に設ける必要もなく、血液検査に必要な配管長を短くすることができる。そのため、血液検査時における流体抵抗を小さくすることができるため、血液検査時において減圧ポンプ56に必要とされる動力を小さく設定することが可能となる。これにより、ランニングコストを低減することができる。
【0094】
次に、配管への空気を導入するための処理および血液フィルタに血液を供給するための空間を確保するための処理の他の例を、先に参照した図面に加えて、必要に応じて図25ないし図27を参照して説明する。
【0095】
図16に示したように、配管76への空気Arの導入においては、まず制御部10(図14参照)は、電磁弁51を閉じるとともに減圧ポンプ56の動作を停止させ、図17(a)から図17(b)に示した状態に三方弁52を切り替えて配管76が配管7Aを介して大気に連通した状態とする。その一方で、制御部10(図14参照)は、減圧ポンプ56を駆動させる。これにより、配管7Aおよび配管76が減圧されるため、図17(b)および図17(c)に示したように配管7Aを介して配管76に空気Arが導入される。このような配管76への空気Arの導入は、目的量の空気Arが配管76に導入されるまで行なわれる。配管76への空気の導入の停止は、図16に示したように、圧力センサ54において配管77の圧力をモニタリングしつつ、圧力センサ54において検出される圧力が所定値となったときに、三方弁52を電磁弁51側に切り替えることにより行なわれる。このとき、電磁弁51は閉じられているので、配管76に導入された空気Ar(図17(c)参照)の移動は速やかに停止させられる。
【0096】
ここで、配管76に対する空気の導入量は、配管76への空気の導入後において、導入された空気Arと生理食塩水83との界面Inが流量センサ53のフォトセンサ58Aにおいて検知される位置に達するまでの移動量(廃液量)が、血液フィルタ2に対する血液の供給量と一致または略一致するように設定される(図19(b)および図20(b)参照)。すなわち、先に説明した例とは異なり、配管76は完全には空気Arによって置換されず、配管76の内部に空気溜りが存在した状態となっている。
【0097】
上述した実施の形態では、配管76に対して空気Arを導入する場合に、圧力センサ54において配管77の圧力をモニタリングし、空気Arの導入量を規制していたが、流量センサ53において空気Arの位置をモニタリングし、その結果に基づいて、空気Arの導入量を規制してもよく、また配管76の圧力をモニタリングして空気Arの導入量を規制してもよい。
【0098】
図25(a)および図25(b)に示したように、空気Ar(界面In)が直線管59を移動する場合には、各フォトセンサ58A〜58Eに対応する領域における生理食塩水83と空気Arの比率が徐々に変化するため、図26に示したように、フォトセンサ58A〜58Eの受光素子58Ab〜58Ebにおいて得られる受光量(透過率)が変化する。そのため、フォトセンサ58A〜58Eにおいて得られる受光量(透過率)が変化し始めた時点T1、あるいは受光量(透過率)が変化し始めた後において受光量(透過率)が一定値になる時点T2などを基準として、空気Ar(界面In)が到達したことを検出することができる。そして、複数のフォトセンサ58A〜58Eにおいて空気Ar(界面In)が到達したことを個別に検出すれば、空気Ar(界面In)が隣接するフォトセンサ58A〜58Eの間を通過する時間、すなわち空気Ar(界面In)の移動時間を検出することができる。また、3つ以上のフォトセンサ58A〜58Eを設けることにより、ある時点での空気Ar(界面In)の移動時間ばかりでなく、空気Ar(界面In)の移動時間の経時的変化を測定することができる。
【0099】
血液フィルタ2に血液を供給するのに必要な空間82の確保においては、制御部10(図14参照)は、液供給ノズル34を血液フィルタ2から取り外すとともに、電磁弁51を開放し、減圧ポンプ56を駆動させる。これにより、図19(a)および図19(b)に示したように、血液フィルタ2の内部の生理食塩水は、廃液ノズル50を介して吸引除去され、血液フィルタ2に空気84が導入される。このとき、図27(a)および図27(b)に示したように配管76,77の生理食塩水83は、減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動させられ、これに伴い、配管76の空気Arも減圧ボトル55(図18参照)に向けて移動する。
【0100】
その一方で、流量センサ53のフォトセンサ58Aでは、空気Ar(界面In)が到達したか否かが検出される。上述のように、フォトセンサ58Aを空気Ar(界面In)が通過する際には、受光素子58Abにおける受光量が大きくなるため、フォトセンサ58Aでは空気Ar(界面In)が到達したことを検出することができる。そして、制御部10(図14参照)は、フォトセンサ58Aにおいて空気Ar(界面In)が到達したことが検出された場合には、電磁弁51(図18参照)を閉じ、生理食塩水83および空気Arの移動を停止させる。
【0101】
上述のように、配管76に対する空気Arの導入量は、配管76への空気Arの導入後において、導入された空気Arと生理食塩水83との界面Inが流量センサ53のフォトセンサ58Aにおいて検知される位置に達するまでの移動量(廃液量)が、血液フィルタ2に対する血液の供給量と一致または略一致するように設定される。すなわち、配管76に対する空気の導入量(生理食塩水と空気の界面の位置)が予め規制されているため、空気Arがフォトセンサ76において検出される位置に到達した場合(図20(b)参照)には、血液フィルタ2において形成される空間82は、その容積が血液フィルタ2に供給すべき血液の量に一致または略一致させられている(図19(b)参照)。
【0102】
このように血液検査装置1では、流量センサ53において空気Ar(界面In)の位置を検出することにより、血液フィルタ2から生理食塩水の廃棄量を規制することとしている。そのため、従来の血液検査装置のように、血液供給ノズルに液面検知センサによって生理食塩水の廃棄量を規制する場合に比べて、血液検査装置1では生理食塩水の廃棄量の規制(界面出し)を短時間で行なうことができる。これにより、血液検査に要する時間を短縮化することが可能となる。
【0103】
本発明は、上述の実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば、本発明は、血球を含む血液に限らず、粒子を含む液体全般、あるいは粒子を含まない一定以上の粘性を有する試料において、粘性や粒度分布などの特性を検査する場合にも適用することができる。より具体的には、木工用ボンドなどの接着剤のように、一定以上の粘性が必要な試料において所望の粘性が確保されているか否かを検査する場合、ゼリーなどの食品において所望とする食感に応じた粘性が確保されているか否かを検査する場合、粉体の粒度分布が所望範囲にあるか否かを検査するために粉体を溶媒中に分散させたものを試料として用いる場合にも適用することができる。
【0104】
また、流量センサとしては、直線管に代えて曲管を採用したもの、あるいはセンサ部として複数のフォトセンサに代えて導電式や誘電容量式を採用したものを使用することもできる。導電式のセンサ部は、たとえば個別電極と、接地電極との間が液体により液絡したか否かを電気的に検出することにより、空気と液体の界面(液体の有無あるいは空気の有無)を検出するものである。一方、誘電容量指揮のセンサ部は、たとえば個別電極と接地電極との間の静電容量の変化により、空気と液体の界面(液体の有無あるいは空気の有無)検出するものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る血液検査装置の一例を示す配管図である。
【図2】図1に示した血液検査装置で用いる血液フィルタを説明するための全体斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2に示した血液フィルタの分解斜視図である。
【図5】図2に示した血液フィルタを底面側から見た分解斜視図である。
【図6】図2に示した血液フィルタにおける流路基板の全体斜視図である。
【図7】図7(a)は図6に示した流路基板における連絡溝に沿った断面の要部の示す断面図であり、図7(b)は図6示した流路基板における土手の直線部に沿った断面の要部を示す断面図である。
【図8】図6示した流路基板の要部を拡大して示した斜視図である。
【図9】図2に示した血液フィルタを説明するための要部を示す断面図である。
【図10】図1に示した血液検査装置における流量センサを示す斜視図である。
【図11】図10に示した流量センサの動作を説明するための断面図である。
【図12】図10に示した流量センサの動作を説明するための要部を拡大して示した断面図である。
【図13】図10に示した流量センサの各フォトセンサにおいて得られる光学的情報の一例を示すグラフである。
【図14】図1に示した血液検査装置のブロック図である。
【図15】図1に示した血液検査装置における気液置換動作を説明するための配管図である。
【図16】図1に示した血液検査装置における空気導入動作を説明するための配管図である。
【図17】図1に示した血液検査装置の空気導入動作における三方弁周りの状態を説明するための一部破断図である。
【図18】図1に示した血液検査装置における血液フィルタに空間を形成するための廃液動作を説明するための配管図である。
【図19】図1に示した血液検査装置の血液フィルタに空間を形成するための廃液動作における血液フィルタ周りの断面図である。
【図20】図1に示した血液検査装置の血液フィルタに空間を形成するための廃液動作における流量センサ周りの状態を説明するための断面図である。
【図21】図1に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための配管図である。
【図22】図1に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための血液フィルタ周りの断面図である。
【図23】図1に示した血液検査装置における測定動作を説明するための配管図である。
【図24】図1に示した血液検査装置における配管の洗浄動作を説明するための配管図である。
【図25】本発明に係る血液検査方法における配管へ空気を導入する処理の他の例を説明するための図12に相当する流量センサの断面図である。
【図26】空気の導入動作での流量センサの各フォトセンサにおいて得られる光学的情報の一例を示すグラフである。
【図27】血液フィルタに血液を供給するための空間を形成する処理の他の例を説明するための流量センサ周りの状態を示す図20に相当する断面図である。
【図28】従来の血液検査装置の一例を示す配管図である。
【図29】図28に示した血液検査装置における気液置換動作を説明するための配管図である。
【図30】図30(a)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタに対する液排出動作を説明するための配管図であり、図30(b)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタからの廃液出動作を説明するための血液フィルタ周りの断面図である。
【図31】図31(a)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための配管図であり、図31(b)は図28に示した血液検査装置における血液フィルタに対する血液供給動作を説明するための血液フィルタ周りの断面図である。
【図32】図32(a)は図28に示した血液検査装置における測定動作を説明するための配管図であり、図32(b)は測定動作における流路センサを説明するための正面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 血液検査装置(分析装置)
10 制御部(制御手段)
2 血液フィルタ(抵抗体)
33 加圧ポンプ
52 三方弁(バルブ)
53 流量センサ
55 減圧ボトル
56 減圧ポンプ
58A〜58E (流量センサの)フォトセンサ(検知エリア)
59 (流量センサの)直線管(管状体)
71〜73 (供給用)配管
74〜77 (廃棄用)配管
82 (血液供給用の)空間
83 生理食塩水(液体)
85 血液(試料)
Ar 空気
In 界面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を通過させる抵抗体と、上記抵抗体での試料の移動時間を測定するための流量センサと、を備えた分析装置であって、
上記流量センサは、上記抵抗体に供給された液体を廃棄するための廃液用の配管の途中に配置されていることを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
上記流量センサは、液体または気体が通過する管状体と、上記管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
上記管状体は直線管である、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
試料を通過させる抵抗体の内部に液を充填する第1ステップと、
上記抵抗体の内部の液の一部を廃棄し、上記抵抗体の内部に試料を充填する空間を確保する第2ステップと、
上記空間に試料を供給する第3ステップと、
上記抵抗体の内部において試料を移動させる第4ステップと、
上記抵抗体の内部における試料の移動時間を、上記抵抗体に接続された廃液用配管の途中に設けられた流量センサを利用して測定する第5ステップと、
を含むことを特徴とする、分析方法。
【請求項5】
上記流量センサとして、管状体と、上記管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいるものを用い、かつ、
上記第1ステップと上記第2ステップとの間において行なわれ、かつ上記管状体に空気を導入する第6ステップをさらに含んでいる、請求項4に記載の分析方法。
【請求項1】
試料を通過させる抵抗体と、上記抵抗体での試料の移動時間を測定するための流量センサと、を備えた分析装置であって、
上記流量センサは、上記抵抗体に供給された液体を廃棄するための廃液用の配管の途中に配置されていることを特徴とする、分析装置。
【請求項2】
上記流量センサは、液体または気体が通過する管状体と、上記管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
上記管状体は直線管である、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
試料を通過させる抵抗体の内部に液を充填する第1ステップと、
上記抵抗体の内部の液の一部を廃棄し、上記抵抗体の内部に試料を充填する空間を確保する第2ステップと、
上記空間に試料を供給する第3ステップと、
上記抵抗体の内部において試料を移動させる第4ステップと、
上記抵抗体の内部における試料の移動時間を、上記抵抗体に接続された廃液用配管の途中に設けられた流量センサを利用して測定する第5ステップと、
を含むことを特徴とする、分析方法。
【請求項5】
上記流量センサとして、管状体と、上記管状体を移動する液体と空気との界面を検出するための複数の検知エリアを有するセンサ部と、を含んでいるものを用い、かつ、
上記第1ステップと上記第2ステップとの間において行なわれ、かつ上記管状体に空気を導入する第6ステップをさらに含んでいる、請求項4に記載の分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2010−71710(P2010−71710A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237489(P2008−237489)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【出願人】(302036563)株式会社エムシー研究所 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【出願人】(302036563)株式会社エムシー研究所 (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]