説明

分枝スクシニミド系分散剤化合物および前記化合物の製造方法

【課題】 分枝スクシニミド系分散剤化合物および前記化合物の製造方法。
【解決手段】 本開示に従い、本出願の1つの面は、(i)ヒドロカルビルカルボニル化合物と(ii)アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物と(iii)ポリアミンの第一級アミン部分の反応生成物を含んで成る分散剤化合物に向けたものである。また、本分散剤化合物の製造方法および使用方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、分散剤化合物(dispersant compounds)および本分散剤化合物の製造方法、より具体的には、燃料および潤滑組成物(lubricant compositions)に使用可能な分散剤化合物に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
化学製品を内燃機関用の分散添加剤(dispersant additives)として開発する努力がかなり払われてきた。潤滑油の中に生じる沈着物およびワニスの生成を制御しかつスラッジおよび他の固体物、例えば酸化された基油などを懸濁状態に保持する目的で潤滑油用油溶性分散剤が開発された。分散剤をエンジンに用いられる炭化水素燃料に添加すると、それは気化器ポート、スロットル本体、ベンチュリー(venturies)、吸気ポートおよび吸気弁などに通常生じる沈着物の生成を有効に減少させる。そのような沈着物の濃度を低下させると結果としてエンジンの効率が高くなりかつ炭化水素および一酸化炭素の排出濃度が低下する。
【0003】
分散剤を油用および燃料用添加剤として用いる点で進展が見られたにも拘らず、分散剤がスラッジを懸濁させそして/または粒子を分散させる能力を絶えず向上させる必要性が存在したままである。従って、向上した分散特性を示す新規な化合物が必要とされている。
【発明の開示】
【0004】
本開示の要約
本開示に従い、本出願の1つの面は、(i)ヒドロカルビルカルボニル化合物と(ii)アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物と(iii)ポリアミンの第一級アミン部分の反応生成物を含んで成る分散剤化合物に向けたものである。
【0005】
本出願の別の面は、分散剤化合物を生じさせる方法に向けたものである。この方法は、カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることでポリアミンポリアミド中間体を生じさせることを含んで成る。前記中間体をヒドロカルビルカルボニル化合物と反応させる。
【0006】
本出願の別の面は、カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることで生じさせたポリアミンポリアミド中間体化合物に向けたものである。
【0007】
本出願の別の面は、式III,
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR,R10,R11,R12およびR13は、独立して、OH、ポリアミン基またはポリアミン基の塩から選択されるが、但しR,R10,R11,R12およびR13の中の少なくとも1つがポリアミン基であることを条件とする]
で表されるポリアミンポリアミド化合物に向けたものである。
【0010】
本出願の別の面は、ポリアミンポリアミド中間体化合物を生じさせる方法に向けたものである。この方法は、アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることを含んで成る。
【0011】
本出願の別の面は、分散剤化合物を生じさせる方法に向けたものである。この方法は、ヒドロカルビルカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることでモノ−スクシニミドアミン中間体を生じさせることを含んで成る。前記モノ−スクシニミドアミン中間体をカルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物と反応させる。
【0012】
本出願の別の面は、式VI:
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR25,R26,R27,R28およびR29は、独立して、ポリアミンスクシニミド基またはポリアミンスクシニミド基の塩から選択されるが、但しR25,R26,R27,R28およびR29の中の少なくとも1つがポリアミンスクシニミド基であることを条件とする]
で表されるポリアミンポリアミドスクシニミドに向けたものである。
【0015】
本出願の別の面は、基油および本出願の分散剤化合物を含有して成る潤滑組成物(lubricating composition)に向けたものである。
【0016】
本出願の別の面は、潤滑化された表面上の沈着物を減少させる方法に向けたものであり、この方法は、本出願の潤滑組成物による前記表面の潤滑化(lubricating)を含み、ここで、本出願の分散剤化合物が前記潤滑組成物に含まれており、その量は、潤滑化された表面上の沈着物の量を、同じ作動条件下に置かれ、前記分散剤化合物が入っていない以外は同じ潤滑剤組成物で潤滑化された表面上の沈着物の量に比べて、減少させるのに十分な量である。
【0017】
本出願の別の面は、スラッジの懸濁度を向上させる方法に向けたものであり、この方法は、本出願の潤滑組成物の燃焼系への供給を含み、ここで、前記分散剤化合物は、基油中のスラッジの少なくともいくらかを、基油が前記分散剤化合物を含まない場合に比べて長い期間、懸濁状態に保持するのに十分な量で存在する。
【0018】
本出願の別の面は、希釈剤および本出願の分散剤化合物を含有して成る潤滑添加剤パッケージ組成物(lubricant additive package composition)に向けたものである。
【0019】
本出願の別の面は、基礎燃料(base fuel)および本出願の分散剤化合物を含有して成る燃料組成物に向けたものである。
【0020】
本出願の別の面は、内燃機関の燃料系の中の沈着物を減少させる方法に向けたものであり、この方法は、本出願の燃料組成物の前記内燃機関用燃料としての使用を含み、ここで、本出願の分散剤化合物が燃料中に存在し、その量は、燃料系の中の沈着物を、同じ様式で作動し、前記分散剤化合物が入っていない以外は同じ燃料組成物を用いている燃料系の中の沈着物の量に比べて、減少させるのに十分な量である。
【0021】
本出願の別の面は、煤を分散させる方法に向けたものであり、この方法は、本出願の燃料組成物を燃焼系に供給することを含んで成る。本出願の分散剤化合物を本燃料組成物中に、基礎燃料中の煤の少なくともいくらかが、前記基礎燃料に前記分散剤化合物が入っていない時に比べて長い時間に渡って懸濁状態に維持されるに充分な量で存在させる。
【0022】
希釈剤および本出願の分散剤化合物を含有して成る燃料添加剤パッケージ組成物。
【0023】
本開示の追加的面および利点をある程度ではあるが以下の説明の中に示し、そしてそれらは本開示の実施によって習得可能であろう。この上で行った一般的説明そして以下に行う詳細な説明は両方ともが単に例示かつ説明であり、請求する如き本開示を制限するものでないと理解されるべきである。
【0024】
態様の説明
本出願は新規な分散剤化合物の製造およびこれらの使用に向けたものである。本出願の1つの面における分散剤化合物は、(i)ヒドロカルビルカルボニル化合物と(ii)アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物と(iii)ポリアミンの第一級アミン部分の反応生成物を含んで成る。本出願の分散剤化合物は広がった極性領域を有する結果として1つ以上の利点を有し、例えば燃料および/または潤滑組成物中で分散させる機能が向上していると言った利点などを持ち得る。
【0025】
いくつかの面では、ポリアミンポリアミド中間体を生じさせてそれをヒドロカルビルカルボニル化合物と反応させることで本出願の分散剤化合物を生じさせる。前記中間体の調
製は、アシル化用カルボニル部分を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物とポリアミンの第一級アミン部分を反応させることで実施可能である。以下により詳細に考察するように、本出願の分散剤化合物を生じさせる時に他の適切な方法を用いることも可能である。
【0026】
ポリカルボニル化合物
本出願のポリアミンポリアミド中間体を生じさせる時に用いる反応体であるポリカルボニル化合物には、アシル化用カルボニル基を少なくとも3個有していてアミドを形成する反応を起こし得る適切な有機化合物のいずれも含まれ得る。いくつかの態様において、そのようなポリカルボニル化合物は第三級窒素原子を1個以上含有し得る。そのようなポリカルボニル化合物の例には、これらに限定するものでないが、下記の式I:
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、nは0から約10の範囲であってもよく、そしてR,R,R,RおよびRは、独立して、水素原子およびCからC10の直鎖もしくは分枝アルキル基、例えばメチル、エチルおよびブチルなどから選択される]
で表されるアミンポリカルボン酸もしくはエステルが含まれる。前記式Iで表されるカルボニル化合物の非限定例には、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸ばかりでなくこれらの酸のメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステルが含まれる。
【0029】
前記式Iで表される化合物の1つの態様では、R,R,R,RおよびRの中の少なくとも1個以上がCからC10直鎖もしくは分枝アルキル基であるようにそれらを選択する。例えば、前記式Iで表される化合物はエチレンジアミンテトラ酢酸のモノ、ジ、トリもしくはテトラエステルであってもよい。このようなエステルを適切な如何なる方法で生じさせてもよい。例えば、式Iの酸もしくは塩、例えばEDTAまたはEDTAのナトリウム塩とアルコールをエステル化用触媒として働き得る酸の存在下で反応させてもよい。適切なアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールが含まれる。適切なエステル化用触媒である酸の例には、硫酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、塩化水素が含まれる。
【0030】
他の態様におけるポリカルボニル化合物は、前記式Iで表される化合物以外の化合物であってもよい。例えば、1つの面におけるポリカルボニル化合物は、アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するカルボン酸またはこれのエステル(第三級窒素を含有しない)、例えばクエン酸またはクエン酸のエステルなどであってもよい。
【0031】
ポリアミン化合物
いくつかの面において、本出願のポリアミンポリアミド中間体を生じさせる時に用いる
反応体であるポリアミンは、第一級アミン部分を少なくとも1個有する直鎖、分枝もしくは環式ポリアルキレンアミンであってもよい。そのようなポリアミンは、例えば下記の式II:
【0032】
【化4】

【0033】
[式中、Rは水素原子または炭素原子数が約1から約6の低分子量アルキル基であってもよく、mは約1から約3の範囲の整数であってもよく、そしてnは約2から約10の範囲の整数であってもよい]
で表されるポリアルキレンアミンであってもよい。Rアルキル基の非限定例には、メチル、エチル、プロピルまたはブチルが含まれる。
【0034】
適切なポリアミンの非限定例には、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)、ジプロピレントリアミンおよびトリプロピレンテトラアミンが含まれる。そのようなポリアミンには直鎖、分枝もしくは環式化合物またはこれらの混合物が含まれ得る。1つの面におけるポリアミンは、ポリエチレンアミン、例えばDETA,TETA,TEPA,PEHAおよびHEHAなどである。1つの面におけるポリアミンは、この上に示したポリエチレンアミンの中のいずれか1つの共重合体であってもよく、それの分子量は約100から約600の範囲であってもよい。
【0035】
いくつかの面におけるポリアミンには、2種以上のポリアミン化合物の混合物、例えばTEPA,PEHA,HEHAおよび分子量がより高いポリエチレンアミン製品から選択した2種以上の化合物の混合物などが含まれ得る。いくつかの面において、そのような混合物に重質ポリアミンを含有させてもよい。重質ポリアミンは、低級アミンのオリゴマー、例えばTEPAおよびPEHAなど、主に窒素原子数が7以上で第一級アミンの数が1分子当たり2以上で通常のアミン混合物に比べて分枝がより広がっているオリゴマーを少量含有して成るポリアルキレンアミン混合物である。
【0036】
必要な中間体化合物を結果としてもたらす適切な如何なる反応条件も使用可能である。1つの面では、当該ポリカルボニル化合物を比較的不活性な雰囲気、例えば真空下または窒素ガス中などで約100℃から約125℃の範囲の温度に加熱してもよい。次に、その加熱しておいたポリカルボニルを当該ポリアミンと混合してもよい。この面では反応時間を約1時間から約5時間の範囲にしてもよい。この反応は混ぜ物無しでか或は溶媒を用いて実施可能である。いくらか存在する水または溶媒を除去することで必要なポリアミンポリアミド中間体を得ることができる。
【0037】
前記ポリカルボニル反応体とポリアミン反応体の比率をこれらの反応体の中の第一級アミン部分に対するカルボニル部分の比率を基にしてもよい。そのような第一級アミンに対するカルボニルの比率は当該中間体に未反応の第一級アミン部分が少なくとも1個残存するような適切な比率のいずれであってもよい。1つの態様では、当該ポリカルボニル化合物と第一級アミン化合物の比率を約1:1から約1:5の範囲にしてもよい。
【0038】
その結果としてもたらされる中間体化合物は、ポリアミンポリアミド基を1個以上有するアルキルもしくはアルキルアミンバックボーンおよび場合によりカルボキシル官能基お
よび/またはカルボキシレート部分を1個以上含有して成る。そのような中間体化合物は、例えば式III,
【0039】
【化5】

【0040】
[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR,R10,R11,R12およびR13は、独立して、ヒドロキシル基、ポリアミン基またはポリアミン塩基(例えば−O− +H−TEPA)から選択されるが、但しR,R10,R11,R12およびR13の中の少なくとも1つがポリアミン基であることを条件とする]
で表される化合物であってもよい。そのようなポリアミン基およびポリアミン塩基は、この上に記述したポリアミン化合物のいずれかに由来するものであり得る。そのような基の例には、プロピレンジアミン基、ブチレンジアミン基、ジエチレントリアミン(DETA)基、トリエチレンテトラアミン(TETA)基、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)基、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)基、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)基、ジプロピレントリアミン基およびトリプロピレンテトラアミン基およびこれらの基の塩が含まれる。R,R10,R11,R12またはR13がポリアミン基の場合、このポリアミンの第一級アミン窒素原子が式IIIの相当するアシル化用カルボニル基と連結してアミドを生じる。
【0041】
ヒドロカルビルカルボニル化合物
本出願の反応体であるヒドロカルビルカルボニル化合物は、ヒドロカルビル部分とカルボニル部分を有していて当該ポリアミンポリアミド中間体化合物と結合して本出願の分散剤化合物をもたらし得る適切な化合物のいずれであってもよい。適切なヒドロカルビルカルボニル化合物の非限定例には、これらに限定するものでないが、無水ヒドロカルビル置換こはく酸、ヒドロカルビル置換こはく酸およびヒドロカルビル置換こはく酸のエステルが含まれる。具体例には、無水ドデセニルこはく酸、無水C16−18アルケニルこはく酸および無水ポリイソブテニルこはく酸(PIBSA)の如き化合物が含まれる。いくつかの態様におけるPIBSAは、分子量が約200から約6000ダルトンの範囲のポリイソブチレン部分を有していてもよくそしてこれのビニリデン含有量は約4%から約90%より上の範囲であってもよい。いくつか態様において、前記ヒドロカルビカルボニル化合物中のカルボニル基の数とヒドロカルビル部分の数の比率は約1:1から約6:1の範囲であってもよい。
【0042】
用語「ヒドロカルビル基」または「ヒドロカルビル」を本明細書で用いる場合、これを本分野の技術者に良く知られている通常の意味で用いる。具体的には、それは分子の残りと直接結合している炭素原子を有しかつ主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には下記が含まれる:
(1)炭化水素置換基、即ち脂肪(例えばアルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基および芳香置換、脂肪置換および脂環式置換
芳香置換基ばかりでなく環が分子の別の部分によって完結している環式置換基(例えば2個の置換基が一緒に脂環式基を形成している);
(2)置換炭化水素置換基、即ち炭化水素以外の基(本明細書における説明に関連して、主に炭化水素の置換基を変えない)[例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ]を含有する置換基
(3)ヘテロ置換基、即ち主に炭化水素の特性を有するが、本説明に関連して、炭素原子で構成されている環または鎖の中に炭素以外の原子(ヘテロ原子には硫黄、酸素、窒素が含まれる)を含有する置換基[ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの如き置換基が含まれる]。
【0043】
一般に、炭化水素以外の置換基がヒドロカルビル基の中に存在する数は炭素原子10個当たりに2個以下、またはさらなる例として、1個以下であり、いくつか態様では、炭化水素以外の置換基がヒドロカルビル基の中に存在する数はゼロである。
【0044】
いくつかの面において、そのようなヒドロカルビルカルボニル化合物は、下記の式IV:
【0045】
【化6】

【0046】
[式中、R14はヒドロカルビル部分、例えば数平均分子量が約350から約10,000ダルトンのポリオレフィン基などである]
で表される無水ポリアルキレンこはく酸反応体であってもよい。R14の数平均分子量はGPCで測定して例えば約1000から約5000ダルトンの範囲であってもよい。特に明記しない限り、本明細書に示す分子量は数平均分子量である。
【0047】
いくつかの面において、R14は、直鎖もしくは分枝アルケニル単位から選択される重合体単位を1単位以上含有して成るポリオレフィン基であってもよい。いくつかの面におけるアルケニル単位の炭素原子数は約2から約10であってもよい。そのようなポリオレフィン基は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基、オクテン基およびデセン基から選択される直鎖もしくは分枝重合体単位を1単位以上含有して成っていてもよい。いくつかの面におけるR14は、例えばホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーの形態のポリオレフィン基であってもよい。例えば、そのようなポリオレフィン基はエチレンとプロピレンのコポリマーであってもよい。別の例として、そのポリオレフィン基はポリイソブチレンのホモポリマーであってもよい。R14ポリオレフィン基を生じさせる時に用いるポリオレフィン化合物の生成は適切ないずれかの方法で実施可能であり、例えば通常の触媒を用いたアルケンのオリゴマー化などで実施可能である。
【0048】
いくつか面において、末端ビニリデン基を有する重合体分子を比較的高い比率で有する高反応性ポリイソブテンを用いてそのようなヒドロカルビル置換基を生じさせることがで
きる。1つの例として、そのような高反応性ポリイソブテンが有する末端オレフィン二重結合全体の少なくとも4%がメチルビニリデン異性体であってもよい。他の例として、末端オレフィン二重結合全体の50%以上、例えば少なくとも70%がメチルビニリデン異性体であってもよい。良く知られている高反応性ポリイソブテンが例えば米国特許第4,152,499号(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などに開示されている。
【0049】
当該ヒドロカルビルカルボニル化合物の製造は適切ないずれかの方法を用いて実施可能である。ヒドロカルビルカルボニル化合物を生じさせる方法は本技術分野で良く知られている。ヒドロカルビルカルボニル化合物を生じさせるに適することが知られている方法の一例は、ポリオレフィンと無水マレイン酸を混合することを含んで成る。反応体であるポリオレフィンと無水マレイン酸を場合により触媒、例えば塩素または過酸化物などを用いて例えば約150℃から約250℃の温度に加熱する。
【0050】
当該ヒドロカルビルカルボニル化合物とポリアミンポリアミド中間体を本出願の所望分散剤化合物をもたらすに適した如何なる反応条件下で一緒にしてもよい。例えば、当該ヒドロカルビルカルボニルを窒素下で約100℃から約160℃の範囲の温度で加熱してもよい。次に、当該ポリアミンポリアミド中間体を添加してもよい。その反応体混合物を減圧下で撹拌しながら約140℃から約200℃の範囲の温度に約2時間から約6時間加熱してもよい。この反応は混ぜ物無しにか或は溶媒および/または希釈剤、例えば加工油などを用いて実施可能である。反応が完了した後の混合物を加工油で希釈した後、濾過することで所望の分散剤を得ることができる。
【0051】
代替態様では、当該ポリカルボニルとポリアミンとヒドロカルビルカルボニル化合物の反応をこの上に記述した順とは異なる順で実施してもよい。例えば、ポリカルボニル化合物とポリアミン化合物を反応させて前記ポリアミンポリアミド中間体を生じさせる代わりに、この上に記述したヒドロカルビルカルボニル化合物をこの上に記述したポリアミン化合物と反応させることでモノ−スクシニミドアミン中間体を生じさせることも可能である。そのようなモノ−スクシニミドアミン中間体の例は、下記の式V.
【0052】
【化7】

【0053】
[式中、R,R14,mおよびnは、この上で定義した通りである]
で表される中間体であり得る。
【0054】
前記ヒドロカルビルカルボニルとポリアミン化合物の反応は所望のモノ−スクシニミド化合物をもたらす如何なる条件下でも実施可能である。例えば、ヒドロカルビルカルボニル化合物とポリアミンを1:1のモル当量で混合して例えば約120℃から約250℃の範囲の温度に加熱してもよい。
【0055】
次に、そのモノ−スクシニミドアミン中間体をこの上に記述したポリカルボニルエステ
ル化合物、例えば式Iのエステルまたはカルボン酸のエステルなどと反応させることで本出願の所望分散剤化合物を生じさせてもよい。この反応は前記モノ−スクシニミドアミン中間体とポリカルボニルエステル化合物を適切ないずれかの量で適切な工程条件下で混合することで実施可能である。例えば、モノ−スクシニミドアミン中間体とポリカルボニルエステル化合物の比率を約2.7:1から約4:1の範囲にしてもよい。この反応はアミンとエステルを反応させてアミド結合を生じさせるに必要な条件下で実施可能である。例えば、この反応は混ぜ物無しにか或は加工油中で約100℃から約180℃の範囲の温度で実施可能である。
【0056】
ポリアミンポリアミドスクシニミド化合物
いくつか面において、本出願の分散剤化合物はポリアミンポリアミドスクシニミド化合物を含んで成り得る。本出願のポリアミンポリアミドスクシニミド分散剤化合物は、ポリアミンポリアミドスクシニミド基を1個以上および場合によりカルボキシレート官能基および/またはポリアミンポリアミドスクシニミド塩を1個以上有するアルキルもしくはアルキルアミンバックボーンを含有して成る。そのようなポリアミンポリアミドスクシニミド化合物の非限定例には、式VI:
【0057】
【化8】

【0058】
[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR25,R26,R27,R28およびR29は、独立して、ポリアミンスクシニミド基またはポリアミンスクシニミド基の塩(例えば-O H−TEPAスクシニミド基)から選択されるが、但しR25,R26,R27,R28およびR29の中の少なくとも1つがポリアミンスクシニミド基であることを条件とする]
で表される化合物が含まれる。
【0059】
本出願の1つの面では、R25,R26,R27,R28およびR29を独立して式VII,
【0060】
【化9】

【0061】
[式中、R,R14,mおよびnは、この上で定義した通りである]
で表されるポリアミンスクシニミド基およびこれらの塩から選択する。そのようなポリアミンスクシニミド基の非限定例には、プロピレンジアミンスクシニミド基、ブチレンジアミンスクシニミド基、ジエチレントリアミン(DETA)スクシニミド基、トリエチレンテトラアミン(TETA)スクシニミド基、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)スクシニミド基、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)スクシニミド基、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)スクシニミド基、ジプロピレントリアミンスクシニミド基およびトリプロピレンテトラアミンスクシニミド基およびこれらの基の塩が含まれる。
【0062】
本出願の分散剤化合物は潤滑組成物に入れる分散剤として用いるに有用である。従って、本出願の1つの面は、潤滑粘度を有する油を主要量で含有しかつ本出願の分散剤化合物を分散性をもたらすに充分な量で含有して成る潤滑油組成物に関する。本明細書で用いる如き用語「主要量」は、当該組成物の総重量を基準にして50重量%に等しいか或はそれ以上の量を意味する。
【0063】
本出願の分散剤化合物を潤滑組成物に入れて用いる場合、それらを適切な如何なる量で存在させてもよい。一例として、本分散剤化合物を当該組成物全体の約0.1から約20重量%の量、例えば約0.5から約15重量%、別の例として、約1から約7重量%の量で存在させてもよい。
【0064】
本明細書に開示する潤滑組成物は基油を含有して成り得る。この開示する組成物の配合で用いるに適した基油は、例えば合成もしくは鉱油またはこれらの混合物から選択可能である。
【0065】
そのような基油を主要量で存在させてもよく、ここで、「主要量」は、当該潤滑組成物の50重量%に等しいか或はそれ以上、例えば当該潤滑組成物の約80から約98重量パーセントなどを意味すると理解する。そのような基油が100℃で示す粘度は典型的に例えば約2から約15cSt、さらなる例として、約2から約10cStである。
【0066】
基油として用いるに適した鉱油の非限定例には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)ばかりでなく他の潤滑用鉱油、例えば液状石油および溶媒による処理または酸による処理を受けたパラフィン系、ナフテン系またはパラフィン系−ナフテン系混合型の潤滑用鉱油が含まれる。また、石炭または頁岩から誘導された油も適切である。更に、またガスツーリキッド方法(gas−to−liquid process)で得られる油も適切である。
【0067】
合成油の非限定例には、炭化水素油、例えばオレフィンの重合体および共重合体(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンとイソブチレンの共重合体など);ポリアルファオレフィン、例えばポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)などおよびこれらの混合物;アルキルベンゼン[例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど];ポリフェニル(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル置換ポリフェニルなど);アルキル置換ジフェニルエーテルおよびアルキル置換ジフェニルスルフィド、そしてそれらの誘導体、類似物および同族体などが含まれる。
【0068】
アルキレンオキサイド重合体および共重合体、そしてそれらの末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによる修飾を受けている誘導体が別の種類の使用可能な公知合成油を構成している。そのような油の例は、エチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドの重合で作られた油、そのようなポリオキシアルキレン重合体のアルキルおよびア
リールエーテル(例えば平均分子量が約1000のメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量が約500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が約1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)またはそれらのモノ−およびポリカルボン酸エステル、例えばテトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3−8脂肪酸エステルまたはC13オキソ酸ジエステルなどである。
【0069】
別の種類の使用可能な合成油には、ジカルボン酸(例えばフタル酸、こはく酸、アルキルこはく酸、アルケニルこはく酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)といろいろなアルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)のエステルが含まれる。そのようなエステルの具体例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールと2モルのオクチル酸を反応させることで生じさせた複合エステルなどが含まれる。
【0070】
また、合成油として用いるに有用なエステルには、C5−12モノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどから作られたエステルも含まれる。
【0071】
従って、本明細書に記述する如き組成物を製造する時に用いる使用可能な基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesが指定する如きグループI−Vに入る基油のいずれからも選択可能である。そのような基油グループは下記の通りである:
グループIは飽和物含有量が90%未満でありそして/または硫黄含有量が0.03%より高くそして粘度指数が80に等しいか或はそれ以上から120未満であり、グループIIは飽和物含有量が90%に等しいか或はそれ以上でありかつ硫黄含有量が0.03%に等しいか或はそれ以下でありそして粘度指数が80に等しいか或はそれ以上から120未満であり、グループIIIは飽和物含有量が90%に等しいか或はそれ以上でありかつ硫黄含有量が0.03%に等しいか或はそれ以下でありそして粘度指数が120に等しいか或はそれ以上であり、グループIVはポリアルファオレフィン(PAO)であり、そしてグループVにグループIにもIIにもIIIにもIVにも入らない他のベースストック(base stocks)の全部が含まれる。
【0072】
前記グループの限定で用いられる試験方法は、飽和物の場合のASTM D2007、粘度指数の場合のASTM D2270、そして硫黄の場合にはASTM D2622、4294、4927および3120の中の1つである。
【0073】
グループIVのベースストック、即ちポリアルファオレフィン(PAO)には、アルファ−オレフィンのオリゴマーの水添品が含まれ、オリゴマー化の最も重要な方法はフリーラジカル方法、チーグラー触媒反応、およびカチオン性、フリーデルクラフツ触媒反応である。
【0074】
そのようなポリアルファオレフィンが100℃で示す粘度は典型的に2から100cS
t、例えば100℃で4から8cStである。それらは、例えば炭素原子数が約2から約30の分枝もしくは直鎖アルファ−オレフィンのオリゴマーであってもよく、非限定例には、ポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテンおよびポリ−1−デセンが含まれる。ホモ重合体、共重合体および混合物が含まれる。
【0075】
この上に示したベースストックのバランスに関して、「グループIのベースストック」には、また、他の1つ以上のグループのベースストック1種または2種以上が混ざっていてもよいグループIのベースストックも含まれるが、但しその結果としてもたらされる混合物がこの上にグループIのベースストックに関して指定した特性の範囲内の特性を有することを条件とする。
【0076】
典型的なベースストックにはグループIのベースストックおよびグループIIのベースとグループIのベースストックの混合物が含まれる。
【0077】
本明細書で用いるに適したベースストックは多種多様な方法を用いて製造可能であり、そのような方法には、これらに限定するものでないが、蒸留、溶媒による精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製が含まれる。
【0078】
そのような基油はフィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導された油であってもよい。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を用いてHとCOを含有する合成ガスから製造可能である。そのような炭化水素は、典型的に、これが基油として有用であるようにする目的で、さらなる処理を必要とする。例えば、そのような炭化水素に米国特許第6,103,099号または6,180,575号に開示されている方法を用いた水素化異性化を受けさせ(hydroisomerized)てもよいか、米国特許第4,943,672号または6,096,940号に開示されている方法を用いた水素化分解および水素化異性化を受けさせてもよいか、米国特許第5,882,505号に開示されている方法を用いた脱蝋を受けさせてもよいか、或は米国特許第6,013,171号、6,080,301号または6,165,949号に開示されている方法を用いた水素化異性化および脱蝋を受けさせてもよい。
【0079】
本明細書の上に開示した種類の鉱油もしくは合成油の未精製、精製および再精製油(ばかりでなくこれらのいずれか2種以上の混合物)を基油として用いることができる。未精製油は、鉱油もしくは合成源からさらなる精製処理なしに直接得られる油である。例えば、レトルト採収操作で直接得られるシェール油、一次蒸留で直接得られる石油、またはエステル化工程で直接得られるエステル油(さらなる処理なしに使用)が未精製油であろう。精製油は、1つ以上の特性を向上させる目的でさらなる処理を1段階以上の精製段階で受けさせた以外は未精製油と同様である。そのような精製技術は本分野の技術者に数多く知られており、例えば溶媒による抽出、二次蒸留、酸または塩基による抽出、濾過、パーコレーションなどが知られる。再精製油は、精製油を得る目的で用いられる処理と同様な処理で得られる油であるが、その場合には、そのような処理を既に実用で使用されていた精製油に適用する。そのような再精製油はまた再生もしくは再処理油としても知られ、しばしば、それらは使用済み添加剤、汚染物および油分解生成物を除去することに向けた技術を用いた追加的処理を受けている。
【0080】
本出願の潤滑組成物は、本出願の潤滑組成物によって利益を受け得るエンジンまたは他の燃焼系または機械装置のいずれにも使用可能である。例えば、本潤滑組成物は内燃機関のクランクケースに用いるに適し得る。
【0081】
いくつかの態様では、本出願の分散剤化合物を潤滑添加剤パッケージの形態で当該潤滑
組成物に添加してもよい。潤滑添加剤パッケージには、希釈剤、例えば鉱油、合成炭化水素油およびこれらの混合物などに溶解している濃縮液が含まれる。そのような濃添加剤組成物を当該基油と混合する時、それによって前記基油中の本添加剤の濃度が有効な濃度になるようにしてもよい。そのような潤滑添加剤パッケージ中の本出願の分散剤化合物の量を濃添加剤組成物の約5重量%から約75重量%、例えば約5重量%から約50重量%に及んで変えてもよい。
【0082】
本出願の潤滑添加剤パッケージ組成物および完成潤滑油に他の追加的添加剤を含有させることも可能である。そのような追加的添加剤の例には、本出願の分散剤以外の分散剤、清浄剤、抗摩耗剤、補足抗酸化剤、粘度指数改良剤、流動点降下剤、腐食抑制剤、錆抑制剤、発泡抑制剤および摩擦改良剤が含まれる。そのような添加剤は本技術分野で良く知られており、潤滑組成物に入れる追加的添加剤の有効量の選択は本分野の通常の技術の範囲内であろう。
【0083】
1つの面において、本出願は、潤滑された表面上の沈着物を減少させる方法に向けたものであり、この方法は、本発明の分散剤化合物を含有させた潤滑油を前記表面に潤滑油として用いることを含んで成る。本分散剤化合物を、前記表面上の沈着物の量が本分散剤化合物が入っていない以外は同じ潤滑油が用いられていて前記表面が同じ作動条件を受けたとした場合にそれの上に生じるであろう沈着物の量に比較して減少するに充分な量で存在させてもよい。本発明の組成物を用いて減少させることができる沈着物の代表例には、ピストンの沈着物、リングランド(ring land)の沈着物、クラウンランドの沈着物およびトップランドの沈着物が含まれる。
【0084】
別の面において、本出願は、潤滑油中のスラッジの懸濁度を向上させる方法に向けたものである。この方法は、本出願の潤滑油を燃焼系に本分散剤化合物が油中のスラッジの少なくともいくらかを前記油に本分散剤化合物が入っていない時に比べて長い時間に渡って懸濁状態に維持するに充分な量で存在するように供給することを含んで成る。
【0085】
本出願の分散剤化合物はまた燃料に入れる分散剤としても有用である。従って、本出願の別の面は、燃料を主要量で含有しかつ本出願の分散剤化合物を少量ではあるが必要な分散性をもたらすに充分な量で含有して成る燃料組成物である。燃料中の本添加剤の濃度はいろいろな要因に依存し、そのような要因には、用いる燃料の種類、他の分散剤または他の添加剤の存在有り無しなどが含まれる。非限定例の濃度は100万部当たり約10から約10,000重量部または100万部当たり約30から約5,000重量部の範囲であり得る。
【0086】
本発明の燃料組成物を調合する時に用いる基礎燃料には、火花点火または圧縮点火内燃機関の作動で用いるに適した基礎燃料、例えばディーゼル燃料、ジェット燃料、ケロセン、鉛含有もしくは無鉛のモーターおよび航空用ガソリン、およびガソリン沸騰範囲の炭化水素と燃料可溶酸素含有化合物、例えばアルコール、エーテルおよび他の適切な酸素含有有機化合物などの両方を含有していてもよいいわゆる改質ガソリンなどのいずれも含まれ得る。
【0087】
本出願で用いるに適した酸素含有化合物の例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、混合CからCアルコール、メチル第三ブチルエーテル、第三アミルメチルエーテル、エチル第三ブチルエーテルおよび混合エーテルが含まれる。酸素含有化合物を用いる場合、それを基礎燃料に存在させてもよい量は例えば約25体積%未満である。いくつかの態様では、そのような酸素含有化合物を燃料全体中の酸素含有量を約0.5から約5体積パーセントの範囲にする量で存在させてもよい。
【0088】
本発明の燃料組成物を調合する時に用いる基礎燃料には、例えばASTM D 2622−98に指定されている試験方法で測定した時の硫黄含有量が約0.2重量%以下、例えば約0.05重量%以下の圧縮点火燃料などが含まれ得る。いくつか態様において、本発明で用いるに適した圧縮点火燃料は硫黄含有量が低いディーゼル燃料である。
【0089】
本出願の更に別の面における分散剤化合物は、燃料添加剤濃縮液として用いるに有用である。そのような燃料濃縮液は、安定で不活性な有機溶媒を希釈剤として含有しかつ本出願の分散剤化合物を約5から50重量パーセント含有して成っていてもよい。適切な希釈剤の非限定例には、ベンゼン、トルエン、キシレンまたは沸点がより高い芳香族が含まれる。
【0090】
1つの面において、本出願は、内燃機関の燃料系の中の沈着物を減少させる方法に向けたものであり、この方法は、この上に記述した燃料組成物を前記内燃機関用燃料として用いることを含んで成る。本出願の分散剤化合物を前記燃料中に前記燃料系の中の沈着物を減少させるに充分な量で存在させてもよい。同じ燃料組成物が用いられていて同じ様式で作動しているが燃料組成物に本分散剤化合物が入っていない時に同じ燃料系の中に生じるであろう沈着物の量に比較して沈着物を減少させることができる。
【0091】
1つの面において、本出願は、基礎燃料の中の煤を分散させる方法に向けたものである。この方法は、本出願の燃料組成物を燃焼系に供給することを含んで成り、ここでは、本分散剤化合物を基礎燃料中に前記基礎燃料の中の煤の少なくともいくらかが前記基礎燃料に本分散剤化合物が入っていない時に比べて長い時間に渡って懸濁状態に維持されるに充分な量で存在させる。
【0092】
本発明を具体的に例示する目的で以下の実施例を示す。本実施例および例示は決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきでない。
【実施例】
【0093】
実施例1A
1リットルの樹脂製槽にエチレンジアミンテトラ酢酸を43.8gおよび水を370mL仕込んだ。その結果として生じた懸濁液を撹拌しながら100℃に加熱した。滴下漏斗を用いてTEPA(113.4g)を添加した後の反応混合物を窒素下で撹拌しながら3時間加熱した。アミンを添加すると前記懸濁液が黄色の溶液に変わった。その反応混合物から水を真空下で除去することで粘性のある黄色油を156g得た。この中間体を100gの水で希釈した後、ジャーに移した。
【0094】
実施例1Aの方法で提案する中間体は以下に例示する反応の生成物であるとして示す:
【0095】
【化10】

【0096】
ここで、R20およびR21は、独立して、OH,TEPAおよびTEPA塩(O H−TEPA)から選択可能である。
【0097】
実施例1B
塔頂撹拌機を取り付けておいた3リットルの樹脂製槽にMnが1250のPIBSAを951g仕込んだ。そのPIBSAを窒素下で撹拌しながら160℃に加熱した。次に、滴下漏斗を用いて実施例1Aで得た中間体(248.1g)を1時間かけて添加した。その反応混合物を減圧下で撹拌しながら3時間加熱した。その反応混合物を880gの加工油で希釈した後、濾過することで所望生成物を1800g得た。
【0098】
実施例1Bの方法で提案する反応を以下に例示する:
【0099】
【化11】

【0100】
ここで、‘R20および‘R21は、独立して、TEPAスクシニミドおよびTEPAスクシニミドの塩から選択可能である。
【0101】
実施例2
実施例1Bの添加剤を他の成分が用いられている乗用車用モーターオイル調合物に混合したが、そのような他の成分には、金属含有スルホネート、ジチオ燐酸亜鉛である摩耗抑制剤、硫黄含有抗酸化剤、ジアリールアミンおよびフェノール系抗酸化剤、オレエートおよびモリブデン系摩擦改良剤、流動点降下剤、粘度指数改良剤(HiTEC(R)5751)および潤滑用基油が含まれる。そのような他の成分を完全調合マルチグレード(multi−grade)乗用車用モーターオイルに典型的に見られる濃度で存在させた。
【0102】
100℃における動粘度(KV100)(mm/s)および30℃における冷クランキングシミュレーター粘度(cold cranking simulator vis
cosity)(CCS−30)(センチポイズ)を測定し、その結果を以下の表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
実施例3
以下の表2では、この上に記述した如き実施例1Bの分散剤を含有させた潤滑油と市販の分散剤を含有させた比較潤滑油が示すスラッジ含有特性(sludge containing properties)の比較を平均エンジンスラッジ(“AES”),ロッカーカバースラッジ(rocker cover sludge)(“RCS”),ピストンスカートワニス(“PSV”)および平均エンジンワニス(“AEV”)を測定するSequence VGエンジンテスト(産業分散スラッジテスト)を用いて実施した。使用した潤滑油は完全調合潤滑油であった。各サンプルに入れる潤滑油の材料を分散剤を除いて正確に同じにする。
【0105】
Sequence VGエンジンスラッジおよびワニス沈着物試験は、潤滑油がスラッジおよびワニス沈着物の生成を最小限にする能力を評価する燃焼エンジン−ダイナモメーター試験(fired engine−dynamometer test)である。この試験方法は各々が4時間の54サイクルで構成されるサイクル試験であり、全運転時間は216時間であった。試験エンジンはFordの4.6L,火花点火4サイクル8気筒“V”形態エンジンであった。このエンジンの特徴には、デュアルオーバーヘッドカムシャフト、クロスフロー迅速燃焼シリンダーヘッドデザイン、シリンダー1個当たり2個の弁、および電子ポート燃料注入が含まれる。各試験に先立って90分間の慣らしスケジュールを実施した、と言うのは、各試験毎に使用するエンジンを新しく組み立てたからである。試験完了時にエンジンを解体して、スラッジの等級付けを実施した。各サンプル毎に平均エンジンスラッジを計算した。
【0106】
この試験の結果を表2に示す。また、各性能測定毎の合格限界も表に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
この上に示した表2から分かるであろうように、実施例1Bの分散剤を含有させた潤滑油は各性能測定に合格するばかりでなく、結果としてもたらしたAES,RCS,AEV
およびPSV試験スコアも比較実施例Aがもたらしたそれらよりも高かった。この試験の結果は本出願の分散剤が向上した性能を有することを示している。
【0109】
本明細書および添付請求項の目的で、特に明記しない限り、量、パーセントまたは比率を表す数値および本明細書および請求項で用いた他の数値は全てのケースで用語「約」の修飾を受けていると理解されるべきである。従って、反対であると示さない限り、本明細書および添付請求項に示す数値パラメーターは、本開示で得ることを探求する所望特性に応じて変わり得る近似値である。最低限でも、本請求項の範囲に適用する相当物の原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは少なくとも報告する有効数字の数に照らして通常の四捨五入技術を適用することで解釈されるべきである。
【0110】
本明細書および添付請求項で用いる如き単数形「a」、「an」および「the」は明瞭かつ明らかに1つの指示対象に限定しない限り複数の指示対象を包含することを特記する。このように、例えば「ある酸」の言及は2種以上の異なる酸を包含する。本明細書で用いる如き用語「包含」およびこれの文法的変形は限定を意図するものでなく、リストの中の項目を列挙することはその挙げた項目の代わりにか或はそれに加えて用いることができる他の同様な項目を排除するものでない。
【0111】
個々の態様を記述してきたが、現在予期しないか或は予期することができない代替物、修飾形、変形、改良物および実質的な相当物が本出願者または本分野の他の技術者に思い浮かぶ可能性がある。従って、出願したままおよび補正を行うことが可能な如き添付請求項にそのような代替物、修飾形、変形、改良物および実質的な相当物の全部を包含させることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤化合物であって、(i)ヒドロカルビルカルボニル化合物と(ii)アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物と(iii)ポリアミンの第一級アミン部分の反応生成物を含んで成る分散剤化合物。
【請求項2】
前記ポリカルボニル化合物が第三級窒素原子を1個以上含有して成る請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリカルボニル化合物が式I:
【化1】

[式中、nは0から約10の範囲であり、そしてR,R,R,RおよびRは、独立して、水素原子およびCからC10の直鎖もしくは分枝アルキル基から選択される]
で表される化合物である請求項1記載の化合物
【請求項4】
前記ポリカルボニル化合物がエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸およびこれらの酸のエステルから選択される請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリカルボニル化合物がクエン酸である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリアミンが第一級アミン部分を少なくとも1個有する直鎖、分枝もしくは環式ポリアルキレンアミンである請求項1記載の化合物。
【請求項7】
前記ポリアミンが式II:
【化2】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数が約1から約6の低分子量アルキル基であり、mは約1から約3の範囲の整数であり、そしてnは約2から約10の範囲の整数である]で表される化合物である請求項1記載の化合物。
【請求項8】
前記ポリアミンがプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)、ジプロピレントリアミンおよびトリプロピレンテトラアミンから成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項9】
前記ポリアミンが2種以上のポリエチレンアミンの共重合体である請求項1記載の化合物。
【請求項10】
前記ポリカルボニル化合物と前記ポリアミンを反応させることで生じさせたポリアミンポリアミド中間体と前記ヒドロカルビルカルボニル化合物の反応生成物である請求項1記載の化合物。
【請求項11】
前記ポリアミンポリアミド中間体が前記ポリカルボニル化合物を異なる2種以上のポリアミンの混合物と反応させることで生じさせたものである請求項10記載の化合物。
【請求項12】
前記ポリアミンポリアミド中間体が未反応の第一級アミン部分を少なくとも1個含有して成る請求項10記載の化合物。
【請求項13】
前記ポリアミンポリアミド中間体が式III,
【化3】

[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR,R10,R11,R12およびR13は、独立して、OH、ポリアミン基またはポリアミン基の塩から選択されるが、但しR,R10,R11,R12およびR13の中の少なくとも1つがポリアミン基であることを条件とする]
で表される化合物である請求項10記載の化合物。
【請求項14】
前記ポリアミン基がプロピレンジアミン基、ブチレンジアミン基、ジエチレントリアミン(DETA)基、トリエチレンテトラアミン(TETA)基、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)基、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)基、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)基、ジプロピレントリアミン基およびトリプロピレンテトラアミン基から成る群から選択される請求項13記載の化合物。
【請求項15】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物がヒドロカルビル置換無水こはく酸、ヒドロカルビル置換こはく酸およびヒドロカルビル置換こはく酸のエステルから選択される請求項1記載の化合物。
【請求項16】
前記ヒドロカルビカルボニル化合物中のカルボニル基の数とヒドロカルビル部分の数の比率が約1:1から約6:1の範囲である請求項1記載の化合物。
【請求項17】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物が下記の式IV:
【化4】

[式中、R14はヒドロカルビル基である]
で表される化合物である請求項1記載の化合物。
【請求項18】
14が数平均分子量が約350から約10,000の範囲のポリオレフィン基である請求項17記載の化合物。
【請求項19】
14がポリイソブテンである請求項17記載の化合物。
【請求項20】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物と前記ポリアミンを反応させることで生じさせたモノ−スクシニミドアミン中間体と前記ポリカルボニルエステル化合物の反応生成物である請求項1記載の化合物。
【請求項21】
潤滑組成物であって、
基油、および
請求項1記載の分散剤化合物、
を含有して成る潤滑組成物。
【請求項22】
前記分散剤化合物の濃度が全組成物の約0.1重量%から約20重量%の範囲である請求項21記載の潤滑組成物。
【請求項23】
潤滑化された表面上の沈着物を減少させる方法であって、請求項21記載の潤滑組成物による前記表面の潤滑化を含み、ここで、分散剤化合物が、潤滑化された表面上の沈着物の量を、同じ作動条件下に置かれ、前記分散剤化合物が入っていない以外は同じ潤滑剤組成物で潤滑化された表面上の沈着物の量に比べて、減少させるのに十分な量で存在する方法。
【請求項24】
スラッジの懸濁度を向上させる方法であって、請求項21記載の潤滑組成物の燃焼系への供給を含み、ここで、分散剤化合物が、基油中のスラッジの少なくともいくらかを、基油が前記分散剤化合物を含まない場合に比べて長い期間、懸濁状態に保持するのに十分な量で存在する方法。
【請求項25】
潤滑添加剤パッケージ組成物であって、
希釈剤、および
請求項1記載の分散剤化合物、
を含有して成る潤滑添加剤パッケージ組成物。
【請求項26】
前記分散剤化合物の濃度が全添加剤パッケージ組成物の約5から約75重量パーセントの範囲である請求項25記載の添加剤パッケージ。
【請求項27】
更に、請求項1記載の分散剤化合物以外の分散剤、清浄剤、抗摩耗剤、補足抗酸化剤、
粘度指数改良剤、流動点降下剤、腐食抑制剤、錆抑制剤、発泡抑制剤および摩擦改良剤から選択される1種以上の追加的添加剤も含有して成る請求項25記載の潤滑添加剤パッケージ。
【請求項28】
燃料組成物であって、
基礎燃料、および
請求項1記載の分散剤化合物、
を含有して成る燃料組成物。
【請求項29】
前記基礎燃料がガソリンである請求項28記載の燃料組成物。
【請求項30】
前記基礎燃料がディーゼル燃料である請求項28記載の燃料組成物。
【請求項31】
前記分散剤化合物の濃度が100万当たり約10から約10,000重量部(約10−約10,000重量ppm)の範囲である請求項28記載の燃料組成物。
【請求項32】
内燃機関の燃料系の中の沈着物を減少させる方法であって、請求項28記載の燃料組成物の前記内燃機関用燃料としての使用を含み、ここで、分散剤化合物が燃料中に、燃料系の中の沈着物を、同じ様式で作動し、前記分散剤化合物が入っていない以外は同じ燃料組成物を用いている燃料系の中の沈着物の量に比べて、減少させるのに十分な量存在する、方法。
【請求項33】
煤を分散させる方法であって、請求項28記載の燃料組成物を、燃焼系に、前記分散剤化合物が基礎燃料中の煤の少なくともいくらかを前記基礎燃料に前記分散剤化合物が入っていない時に比べて長い時間に渡って懸濁状態に維持するに充分な量で存在するように、供給することを含んで成る方法。
【請求項34】
燃料添加剤パッケージ組成物であって、
希釈剤、および
請求項1記載の分散剤化合物、
を含有して成る燃料添加剤パッケージ組成物。
【請求項35】
前記希釈剤がベンゼン、トルエンおよびキシレンから選択される請求項34記載の燃料添加剤パッケージ組成物。
【請求項36】
前記分散剤化合物の濃度が全燃料添加剤パッケージ組成物の約5重量パーセントから約50重量パーセントの範囲である請求項34記載の燃料添加剤パッケージ組成物。
【請求項37】
分散剤化合物を生じさせる方法であって、
(i)カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることでポリアミンポリアミド中間体を生じさせ、そして
(ii)前記ポリアミンポリアミド中間体をヒドロカルビルカルボニル化合物と反応させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項38】
前記ポリカルボニル化合物が式I:
【化5】

[式中、nは0から約10の範囲であり、そしてR,R,R,RおよびRは、独立して、水素原子およびCからC10の直鎖もしくは分枝アルキル基から選択させる]
で表される化合物である請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記ポリアミンが式II:
【化6】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数が約1から約6のアルキル基であり、mは約1から約3の範囲の整数であり、そしてnは約2から約10の範囲の整数である]
で表される化合物である請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物をヒドロカルビル置換無水こはく酸、ヒドロカルビル置換こはく酸およびヒドロカルビル置換こはく酸のエステルから選択する請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物が下記の式IV:
【化7】

[式中、R14はヒドロカルビル基である]
で表される化合物である請求項37記載の方法。
【請求項42】
14がポリイソブテンである請求項41記載の方法。
【請求項43】
カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることで生じさせたポリアミンポリアミド中間体化合物。
【請求項44】
式III,
【化8】

[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR,R10,R11,R12およびR13は、独立して、OH、ポリアミン基またはポリアミン基の塩から選択されるが、但しR,R10,R11,R12およびR13の中の少なくとも1つがポリアミン基であることを条件とする]
で表されるポリアミンポリアミド化合物。
【請求項45】
前記ポリアミン基がプロピレンジアミン基、ブチレンジアミン基、ジエチレントリアミン(DETA)基、トリエチレンテトラアミン(TETA)基、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)基、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)基、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)基、ジプロピレントリアミン基およびトリプロピレンテトラアミン基およびこれらの基の塩から成る群から選択される請求項44記載のポリアミンポリアミド中間体化合物。
【請求項46】
ポリアミンポリアミド中間体化合物を生じさせる方法であって、アシル化用カルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることを含んで成る方法。
【請求項47】
前記ポリカルボニル化合物が第三級窒素原子を1個以上含有して成る請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記ポリカルボニル化合物が式I:
【化9】

[式中、nは0から約10の範囲であり、そしてR,R,R,RおよびRは、独立して、水素原子およびCからC10の直鎖もしくは分枝アルキル基から選択される]
で表される化合物である請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記ポリカルボニル化合物をエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸およびこれらの酸のエステルから選択する請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記ポリカルボニル化合物がクエン酸である請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記ポリアミンが第一級アミン部分を少なくとも1個有する直鎖、分枝もしくは環式ポリアルキレンアミンである請求項46記載の方法。
【請求項52】
前記ポリアミンが式II:
【化10】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数が約1から約6の低分子量アルキル基であり、mは約1から約3の範囲の整数であり、そしてnは約2から約10の範囲の整数である]で表される化合物である請求項46記載の方法。
【請求項53】
前記ポリアミンをプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタアミン(HEHA)、ジプロピレントリアミンおよびトリプロピレンテトラアミンから成る群から選択する請求項46記載の方法。
【請求項54】
分散剤化合物を生じさせる方法であって、
(iii)ヒドロカルビルカルボニル化合物をポリアミンの第一級アミン部分と反応させることでモノ−スクシニミドアミン中間体を生じさせ、そして
(iv)前記モノ−スクシニミドアミン中間体をカルボニル官能を少なくとも3個有するポリカルボニル化合物と反応させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項55】
前記ポリカルボニル化合物が式I:
【化11】

[式中、nは0から約10の範囲であり、そしてR,R,R,RおよびRは、独立して、水素原子およびCからC10の直鎖もしくは分枝アルキル基から選択させる]
で表される化合物である請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記ポリアミンが式II:
【化12】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数が約1から約6のアルキル基であり、mは約1から約3の範囲の整数であり、そしてnは約2から約10の範囲の整数である]
で表される化合物である請求項54記載の方法。
【請求項57】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物をヒドロカルビル置換無水こはく酸、ヒドロカルビル置換こはく酸およびヒドロカルビル置換こはく酸のエステルから選択する請求項54記載の方法。
【請求項58】
前記ヒドロカルビルカルボニル化合物が下記の式IV:
【化13】

[式中、R14はヒドロカルビル基である]
で表される化合物である請求項54記載の方法。
【請求項59】
14がポリイソブテンである請求項58記載の方法。
【請求項60】
式VI:
【化14】

[式中、nは0から10の範囲であり、そしてR25,R26,R27,R28およびR29は、独立して、ポリアミンスクシニミド基またはポリアミンスクシニミド基の塩から選択されるが、但しR25,R26,R27,R28およびR29の中の少なくとも1つがポリアミンスクシニミド基であることを条件とする]
で表されるポリアミンポリアミドスクシニミド。
【請求項61】
25,R26,R27,R28およびR29が独立して式VII:
【化15】

[式中、Rは水素原子または炭素原子数が約1から約6のアルキル基であり、R14はヒドロカルビル基であり、mは約1から約3の範囲の整数であり、そしてnは約2から約10の範囲の整数である]
で表されるポリアミンスクシニミド基およびこれらの塩から選択される請求項60記載のポリアミンポリアミドスクシニミド。

【公開番号】特開2008−94841(P2008−94841A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260731(P2007−260731)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】