説明

分注装置、自動分析装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法

【課題】分注装置のすべりねじの経時的な磨耗量を簡易に検知することが可能な分注装置、自動分析装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法を提供すること。
【解決手段】昇降モータ23によって駆動されるすべりねじ25と、すべりねじによって昇降されるスライダ27と、スライダの昇降位置を検知するセンサSuとを有し、水平面内の回動と、スライダの昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する検体分注装置20、自動分析装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法。分注装置は、スライダをセンサの近傍で昇降させ、センサによるスライダの検知と非検知との間の昇降モータの最小駆動信号量をもとにすべりねじの磨耗量を検知する制御部15を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置、自動分析装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体分注機構や試薬分注機構等の各種被駆動機構における異常の兆候を事前に判断することを目的に、前記被駆動機構を動作させる駆動手段からの出力記録をもとに異常の兆候を判断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−184141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検体分注機構や試薬分注機構等の各種被駆動機構、例えば、検体分注機構は、すべりねじを用いて分注アームを昇降させ、センサによって検知した分注アームの最上昇位置を基準として分注アームの昇降動作を制御するものがある。この場合、すべりねじは、使用に伴うナットとねじ軸との間の摩擦によりねじ軸に経時的な磨耗を生ずるが、すべりねじを動作させる駆動手段からの出力記録では、ねじ軸の磨耗量の検知が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分注装置のすべりねじの経時的な磨耗量を簡易に検知することが可能な分注装置、自動分析装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、駆動手段によって駆動されるすべりねじと、前記すべりねじによって昇降される昇降部材と、前記昇降部材の昇降位置を検知する位置検知手段とを有し、水平面内の回動と、前記昇降部材の昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する分注装置において、前記昇降部材を前記位置検知手段の近傍で昇降させ、前記位置検知手段による前記昇降部材の検知と非検知との間の前記駆動手段の最小駆動信号量をもとに前記すべりねじの磨耗量を検知する磨耗量検知手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記磨耗量検知手段の検知した磨耗量が所定許容範囲を超えている場合に、当該分注装置が異常である旨を告知する告知手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記駆動手段は、パルスモータであり、前記位置検知手段は、前記昇降部材の最上昇位置を基準位置として検知する上点センサであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記昇降部材の最下降位置を検知する下点センサを備えることを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、駆動手段によって駆動されるすべりねじと、前記すべりねじによって昇降される昇降部材と、前記昇降部材の昇降位置を検知する位置検知手段とを有し、水平面内の回動と、前記昇降部材の昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する分注装置を用いて分注される検体と試薬とを反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、前記分注装置は、前記昇降部材を前記位置検知手段の近傍で昇降させ、前記位置検知手段による前記昇降部材の検知と非検知との間の前記駆動手段の最小駆動信号量をもとに前記すべりねじの磨耗量を検知する磨耗量検知手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記磨耗量検知手段の検知した磨耗量が所定許容範囲を超えている場合に、当該分注装置が異常である旨を告知する告知手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記駆動手段は、パルスモータであり、前記位置検知手段は、前記昇降部材の最上昇位置を基準位置として検知する上点センサであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記昇降部材の最下降位置を検知する下点センサを備えることを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法は、すべりねじによって昇降される昇降部材と、前記昇降部材の昇降位置を検知する位置検知手段とを有し、水平面内の回動と、前記昇降部材の昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法であって、前記昇降部材を前記位置検知手段の近傍で昇降させ、前記位置検知手段による前記昇降部材の検知と非検知との間の最小駆動信号量を測定する測定工程と、測定した最小駆動信号量をもとに前記すべりねじの磨耗量を検知する検知工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法は、上記の発明において、検知した磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する判定工程と、磨耗量が所定許容範囲を超えている場合に当該分注装置が異常である旨を告知する告知工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、昇降部材を位置検知手段の近傍で昇降させ、位置検知手段による昇降部材の検知と非検知との間の駆動手段の最小駆動信号量をもとにすべりねじの磨耗量を検知するので、分注装置のすべりねじの経時的な磨耗量を簡易に検知することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注装置、自動分析装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置の概略構成図である。図2は、本発明の分注装置として図1の自動分析装置で使用する検体分注装置を示す概略構成図である。
【0018】
自動分析装置1は、血球成分を含む血液や尿等の検体を自動分析する装置であり、図1に示すように、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、検体容器移送機構8、分析光学系11、洗浄機構12、第一攪拌装置13、第二攪拌装置14、制御部15及び検体分注装置20を備えている。
【0019】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ第一試薬の試薬容器2aと第二試薬の試薬容器3aが周方向に複数配置され、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。複数の試薬容器2a,3aは、それぞれ検査項目に応じて血球成分を溶血させる前処理液を含む試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が付加されている。ここで、試薬テーブル2,3の外周には、試薬容器2a,3aに付加した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置が設置されている。
【0020】
キュベットホイール4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列されており、試薬テーブル2,3を駆動する駆動手段とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転されて反応容器5を周方向に移動させる。キュベットホイール4は、光源11aと分光部11bとの間に配置され、反応容器5を保持する保持部4aと光源11aが出射した光束を分光部11bへ導く円形の開口からなる光路4bとを有している。保持部4aは、キュベットホイール4の外周に周方向に沿って所定間隔で配置され、保持部4aの内周側に半径方向に延びる光路4bが形成されている。
【0021】
反応容器5は、分析光学系11から出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等によって四角筒状に成形されたキュベットと呼ばれる容器である。反応容器5は、近傍に設けた試薬分注装置6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。ここで、試薬分注装置6,7は、それぞれ水平面内を回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム6a,7aに試薬を分注する分注プローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によって分注プローブ6b,7bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0022】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、配列された複数のラック9を矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック9は、検体を収容した複数の検体容器9aを保持している。ここで、検体容器移送機構8には、図1に示すように、ラック9に保持される検体容器9aに貼付した前記記録媒体を読み取り、読み取った検体情報及び形状情報を制御部15へ出力する情報取得手段として読取装置10が設けられている。
【0023】
分析光学系11は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料に分析光を透過させて測光する光学系であり、図1に示すように、光源11a、分光部11b及び受光部11cを有している。光源11aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部11bと対向する位置に設けた受光部11cによって受光される。受光部11cは、制御部15と接続されている。
【0024】
洗浄機構12は、ノズル12aによって反応容器5内の液体試料を吸引して排出した後、ノズル12aによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、分析光学系11による測光が終了した反応容器5を洗浄する。
【0025】
第一攪拌装置13及び第二攪拌装置14は、分注された検体と試薬とを攪拌棒13a,14aによって攪拌し、反応させる。
【0026】
制御部15は、試薬テーブル2,3、試薬分注装置6,7、検体容器移送機構8、分析光学系11、洗浄機構12、攪拌装置13,14、入力部16、表示部17及び検体分注装置20等と接続されてこれら各部の作動を制御し、マイクロコンピュータ等が使用される。また、制御部15は、試薬容器2a,3aに付加した情報記録媒体から読み取った情報に基づき、試薬のロットが異なる場合や有効期限外等の場合に分析作業を中止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警報を発する。
【0027】
特に、制御部15は、すべりねじ25の磨耗量を検知する磨耗量検知手段としても機能する。制御部15は、すべりねじ25の磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する際に、スライダ27を上点センサSuの近傍で昇降させる。このとき、制御部15は、上点センサSuによるスライダ27に設けた検出片27aの検知と非検知との間の昇降モータ23の最小駆動信号量をもとに磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する。制御部15は、上点センサSuが出力する検出片27aの検知と非検知とに係るオンオフ信号、そのときの昇降モータ23の最小駆動信号量、磨耗量が所定許容範囲内か否かの判定結果等の判定履歴を記憶する。そして、制御部15は、入力部16からの出力要請に応じてこれらの判定履歴をグラフ化して表示部17に表示し、或いはグラフ化した判定履歴を出力部からプリントアウトする。
【0028】
入力部16は、制御部15へ検査項目や沈降成分を含む検体の分注手順等に関する入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部17は、分析内容,分析結果或いは警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。表示部17は、検体分注装置20が異常である場合にその旨を告知する場合にも使用される。この他、自動分析装置1は、分析結果を一覧表等にしてプリントアウトする出力部も備えている。
【0029】
検体分注装置20は、検体容器9a内の検体の液面を検知する液面検知手段を備えており、図2に示すように、駆動機構22によって駆動されるアーム20aに検体を分注する分注プローブ20bが設けられている。アーム20aは、駆動機構22によって昇降駆動と回動駆動される支柱21に支持されている。支柱21は、外面にスプラインが形成された中空の軸である。
【0030】
駆動機構22は、図2に示すように、筺体22aに昇降モータ23、すべりねじ25、スライダ27、ガイド軸28、支持軸31及び回動モータ34を有している。
【0031】
昇降モータ23は、ステッピングモータが使用され、制御部15によって駆動パルス数を制御することにより、スライダ27の上下位置を微細に制御している。昇降モータ23は、図2に示すように、筺体22aの底板22bにスペーサ22cを介して支持され、回転軸23aがジョイント24によってねじ軸25aの下端と連結されている。すべりねじ25は、ねじ軸25aとナット25bを有している。ねじ軸25aは、底板22bに設けたベアリング26を介して下方へ延出し、上端が仕切り板22dに回転自在に支持されている。ナット25bは、スライダ27に取り付けられている。
【0032】
スライダ27は、ねじ軸25aの回転によってナット25bと共に上下動する昇降部材である。図2は、スライダ27が最上昇位置にある状態の図である。スライダ27は、図2及び図3に示すように、支持軸31側の端部にスライダ27の最上昇位置を検出する検出片27aが設けられている。このため、筺体22aは、最上昇位置にある検出片27aの近傍に上点センサSuが設けられている。ここで、スライダ27は、昇降モータ23によって最下降位置として図4に示す位置までアーム20aと共に下降される。
【0033】
上点センサSuは、スライダ27の昇降位置を検知する位置検知手段であり、図2及び図3に示すように、スライダ27の最上昇位置を基準位置として検出片27aによって検知する。上点センサSuは、例えば、近接センサ等を使用しており、検出片27aの検知と非検知とに係るオンオフ信号を制御部15へ出力する。
【0034】
ここで、駆動機構22は、昇降モータ23が所定パルス数駆動しても、ねじ軸25aの磨耗によって昇降モータ23の駆動に伴うスライダ27の昇降量が減少する。そこで、制御部15は、上点センサSuによる検出片27aの検知と非検知とに係るオンオフ信号をもとに、そのときの昇降モータ23の最小駆動信号量をもとにねじ軸25aの磨耗量を決定する。このため、自動分析装置1においては、予め駆動機構22に関して昇降モータ23の最小駆動信号量とねじ軸25aの磨耗量との関係を求めておき、制御部15に表又は関係式として記憶させておく。
【0035】
ガイド軸28は、スライダ27の上下動を案内する軸であり、図2に示すように、下端が筺体22aの底板22bに連結され、上端が仕切り板22dに連結されている。このとき、ガイド軸28は、スライダ27との間にスラストベアリング29が配置され、スライダ27の円滑な上下動を保証している。
【0036】
支持軸31は、図2に示すように、スライダ27に設けたベアリング32を介して上方へ延出し、支柱21の下端と連結されている。また、支持軸31は、下端が筺体22aの底板22bに設けたスラストベアリング33によって下方へ下降自在に支持されている。
【0037】
回動モータ34は、図2に示すように、筺体22aの天板22eに設置され、天板22eの下方へ延出した回転軸にプーリ34aが取り付けられている。プーリ34aは、プーリ35との間にベルト36が掛け渡されている。プーリ35は、回動モータ34の回転によって支柱21を軸廻りに回動させる。このとき、プーリ35は、内部で支柱21の下端が支持軸31の上端と係合されると共に、支柱21と係合し、筺体22aの仕切り板22dに設けたベアリング37に回動自在に支持されている。このため、支持軸31は、スライダ27と共に上下動し、支柱21及びアーム20aを昇降駆動させると共に、軸周りに回動して支柱21を回動させ、アーム20aを水平面内で回動させる。
【0038】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注装置6が試薬容器2aから第一試薬を順次分注する。第一試薬が分注された反応容器5は、検体分注装置20によってラック9に保持された複数の検体容器9aから検体が順次分注される。
【0039】
このとき、検体分注装置20は、昇降モータ23の回転によるスライダ27の昇降による支柱21及びアーム20aの昇降と、回動モータ34の回転による支柱21及びアーム20aの回動とを適宜組み合わせて利用する。これにより、検体分注装置20は、検体容器移送機構8によって分注位置へ搬送されてくるラック9が保持した検体容器9aから検体を吸引し、キュベットホイール4に配列された反応容器5に検体を吐出して検体の分注を行う。
【0040】
そして、検体が分注された反応容器5は、キュベットホイール4が停止する都度、第一攪拌装置13によって攪拌されて第一試薬と検体が反応する。第一試薬と検体が攪拌された反応容器5は、試薬分注装置7によって試薬容器3aから第二試薬が順次分注された後、キュベットホイール4の停止時に第二攪拌装置14によって攪拌され、更なる反応が促進される。ここで、分析対象の検体によっては、必ずしも第一試薬と第二試薬の両方を分注せず、いずれか一方の場合もある。
【0041】
次いで、キュベットホイール4が再び回転すると、キュベットホイール4は、反応容器5が光源11aに対して順次相対移動し、反応容器5が分析光学系11を通過する。これにより、受光部11cが制御部15に光量信号を出力する。制御部15は、受光部11cから入力される波長ごとの光量信号をもとに各反応容器5内の液体試料の波長ごとの吸光度を求め、検体の成分濃度等を分析する。このとき、制御部15は、分析した検体の成分濃度等の分析結果を記憶し、分析結果を表示部17に表示する。このようにして、分析が終了した反応容器5は、洗浄機構12によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0042】
このとき、自動分析装置1は、例えば、1日の分析開始に当たって装置電源をオンした装置の初期化時、或いはサービスマンによるメンテナンスモードの際等の任意のタイミングにおいて、入力部16から制御部15への判定依頼信号の入力により、すべりねじの経時的な磨耗を以下のようにして検知し、磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する。以下、制御部15が実行する実施の形態1に係る分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法を図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0043】
先ず、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、スライダ27を最上昇位置(以下、「上点」という)まで上昇させる(ステップS100)。これにより、スライダ27の検出片27aを検知して上点センサSuがオンとなり、オン信号を制御部15へ出力する。
【0044】
次に、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、上点センサSuがオフになるまでスライダ27を下降させる(ステップS102)。このとき、制御部15は、昇降モータ23の最小駆動信号量として駆動パルス数をカウントし、記憶しておく。このようにしてカウントされる駆動パルス数は、検出片27aと上点センサSuとの距離が非常に接近しているので、数パルス程度の値となる。
【0045】
次いで、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、再度スライダ27を上点まで上昇させる(ステップS104)。このとき、制御部15は、同様に昇降モータ23の最小駆動信号量として駆動パルス数をカウントし、記憶しておく。
【0046】
そして、制御部15は、すべりねじ25の磨耗量を検知する(ステップS106)。即ち、カウントした駆動パルス数の差(=最小駆動信号量)から上点近傍におけるねじ軸25aの磨耗量を検知する。即ち、制御部15は、記憶している表又は関係式からこの駆動パルス数の差(=最小駆動信号量)をもとにすべりねじ25のねじ軸25aの経時的な磨耗量を決定する。
【0047】
次に、制御部15は、検知した磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する(ステップS108)。判定の結果、磨耗量が所定許容範囲内の場合(ステップS108,Yes)、制御部15は、検体分注装置20が正常であると表示部17に表示して告知し(ステップS110)、判定作業を終了する。
【0048】
一方、判定の結果、磨耗量が所定許容範囲を超えている場合(ステップS108,No)、制御部15は、検体分注装置20が異常である旨を表示部17に表示して告知する(ステップS112)。この告知により、サービスマンによるメンテナンスが行われ、磨耗が軽微な場合にはすべりねじ25にグリスアップが施され、軽微な状態を越えている場合には、検体分注装置20が交換される。そして、メンテナンス終了の信号が入力部16から入力されることにより、制御部15は、判定作業を終了する。
【0049】
以上のように、実施の形態1によれば、スライダ27を上点の近傍で昇降させ、上点センサSuによるスライダ27に設けた検出片27aの検知と非検知との間の昇降モータ23の最小駆動信号量(駆動パルス数)をもとにすべりねじ25の磨耗量を検知し、磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定するので、すべりねじ25の磨耗量を簡易に検知することができ、検体分注装置20の異常の兆候を容易に自己診断することができる。
【0050】
ここで、スライダ27の上点から上点センサSuがオフになるまでの下降と、上点センサSuがオフの位置からスライダ27の上点までの上昇の一往復で昇降モータ23の最小駆動信号量をカウントしたのは、一方のみでは正確な磨耗を検知することができないことによる。また、上点センサSuを使用したのは、すべりねじ25の磨耗が上半側に偏る傾向があること、また、自動分析装置1は通常上点センサSuによって検出される上点を基準として検体分注装置20の昇降動作を制御していることによる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注装置及び分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の分注装置は、上点センサを使用してすべりねじの磨耗を検知したが、実施の形態2の分注装置は、上点センサと下点センサとを使用してすべりねじ全体の磨耗を検知している。図6は、実施の形態2の検体分注装置を示す概略構成図である。なお、実施の形態2の検体分注装置は、実施の形態1の検体分注装置と同一の構成要素には同一の符号を使用している。
【0052】
検体分注装置40は、検体分注装置20と同様に、自動分析装置1に搭載して制御部15の制御の下に作動し、図6に示すように、検出片27aの最下降位置(以下、「下点」という)近傍となる筐体22aに下点センサSlが設けられている。
【0053】
以下、制御部15が実行するすべりねじの経時的な磨耗の検知と、磨耗量が所定許容範囲内か否かの判定手順を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0054】
先ず、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、スライダ27を上点まで上昇させる(ステップS200)。これにより、スライダ27の検出片27aを検知して上点センサSuがオンとなり、オン信号を制御部15へ出力する。
【0055】
次に、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、上点センサSuがオフになるまでスライダ27を下降させる(ステップS202)。このとき、制御部15は、昇降モータ23の最小駆動信号量として駆動パルス数をカウントし、記憶しておく。制御部15は、この駆動パルス数によってすべりねじ25のねじ軸25aの磨耗量を検知することができる。
【0056】
次いで、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、再度スライダ27を最上昇位置まで上昇させる(ステップS204)。このとき、制御部15は、同様に昇降モータ23の最小駆動信号量として駆動パルス数をカウントし、記憶しておく。
【0057】
そして、制御部15は、すべりねじ25の磨耗量を検知する(ステップS206)。即ち、カウントした駆動パルス数の差から上点近傍におけるねじ軸25aの磨耗量を検知する。このとき、制御部15は、予め記憶してある駆動パルス数の差と磨耗量との関係についての表又は関係式から磨耗量を読み出し、或いは演算することにより磨耗量を検知する。
【0058】
次に、制御部15は、検知した磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する(ステップS208)。判定の結果、磨耗量が所定許容範囲内の場合(ステップS208,Yes)、制御部15は、検体分注装置20のねじ軸25aの上点近傍が正常であると表示部17に表示して告知する(ステップS210)。
【0059】
一方、判定の結果、磨耗量が所定許容範囲を超えている場合(ステップS208,No)、制御部15は、検体分注装置20のねじ軸25aの上点近傍が異常である旨を表示部17に表示して告知し(ステップS212)、ステップS224へ移行する。
【0060】
他方、ステップS210でねじ軸25aの上昇点近傍が正常であると表示した後、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、スライダ27を下点まで下降させる(ステップS214)。これにより、スライダ27の検出片27aを検知して下点センサSlがオンとなり、オン信号を制御部15へ出力する。
【0061】
その後、制御部15は、昇降モータ23に制御信号を出力し、下点センサSlがオフになるまでスライダ27を上昇させる(ステップS216)。このとき、制御部15は、昇降モータ23の最小駆動信号量として駆動パルス数をカウントし、記憶しておく。
【0062】
次に、制御部15は、すべりねじ25の磨耗量を検知する(ステップS218)。即ち、カウントした駆動パルス数の差から下点近傍におけるねじ軸25aの磨耗量を検知する。
【0063】
次いで、制御部15は、検知した磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する(ステップS220)。判定の結果、磨耗量が所定許容範囲内の場合(ステップS220,Yes)、ねじ軸25aの下点近傍も正常であるので、制御部15は、検体分注装置20は正常と表示部17に表示し(ステップS222)、判定作業を終了する。
【0064】
一方、判定の結果、磨耗量が所定許容範囲を超えている場合(ステップS220,No)、ねじ軸25aの下点近傍が異常であるので、制御部15は、検体分注装置20が異常である旨を表示部17に表示して告知する(ステップS224)。この告知により、サービスマンによるメンテナンスが行われ、磨耗が軽微な場合にはすべりねじ25にグリスアップが施され、軽微な状態を越えている場合には、検体分注装置20が交換される。そして、メンテナンス終了の信号が入力部16から入力されることにより、制御部15は、判定作業を終了する。
【0065】
以上のように、本発明によれば、スライダ27を上点センサSuの近傍と下点センサSlの近傍の二箇所で昇降させ、上点センサSuや下点センサSlによるスライダ27に設けた検出片27aの検知と非検知との間の昇降モータ23の最小駆動信号量(駆動パルス数)をもとにすべりねじ25の上点近傍と下点近傍における磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定するので、すべりねじ25の磨耗量を簡易に検知することができ、検体分注装置20の異常の兆候を容易に自己診断することができる。
【0066】
尚、スライダ27の昇降位置を検知する位置検知手段の数を増やせば、すべりねじ25の全長に沿った磨耗量を更に細かく検知することができ、また、所望の位置の磨耗量を検知することも可能である。
【0067】
また、実施の形態1,2の分注装置は、検体分注装置の場合について説明したが、すべりねじを使用した分注装置であれば試薬分注装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】本発明の分注装置として図1の自動分析装置で使用する実施の形態1の検体分注装置を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す分注装置のA部拡大図である。
【図4】スライダが最下降位置まで下降した際の図2に示す検体分注装置の概略構成図である。
【図5】実施の形態1に係る分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法を説明するフローチャートである。
【図6】実施の形態2の検体分注装置を示す概略構成図である。
【図7】実施の形態2に係る分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
4 キュベットホイール
5 反応容器
6,7 試薬分注装置
8 検体容器移送機構
9 ラック
10 読取装置
11 分析光学系
12 洗浄機構
13 第一攪拌装置
14 第二攪拌装置
15 制御部
16 入力部
17 表示部
20 検体分注装置
21 支柱
22 駆動機構
23 昇降モータ
24 ジョイント
25 すべりねじ
26 ベアリング
27 スライダ
28 ガイド軸
29 スラストベアリング
31 支持軸
32 ベアリング
33 スラストベアリング
34 回動モータ
35 プーリ
36 ベルト
37 ベアリング
Su 上点センサ
Sl 下点センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段によって駆動されるすべりねじと、前記すべりねじによって昇降される昇降部材と、前記昇降部材の昇降位置を検知する位置検知手段とを有し、水平面内の回動と、前記昇降部材の昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する分注装置において、
前記昇降部材を前記位置検知手段の近傍で昇降させ、前記位置検知手段による前記昇降部材の検知と非検知との間の前記駆動手段の最小駆動信号量をもとに前記すべりねじの磨耗量を検知する磨耗量検知手段を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記磨耗量検知手段の検知した磨耗量が所定許容範囲を超えている場合に、当該分注装置が異常である旨を告知する告知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、パルスモータであり、
前記位置検知手段は、前記昇降部材の最上昇位置を基準位置として検知する上点センサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記昇降部材の最下降位置を検知する下点センサを備えることを特徴とする請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
駆動手段によって駆動されるすべりねじと、前記すべりねじによって昇降される昇降部材と、前記昇降部材の昇降位置を検知する位置検知手段とを有し、水平面内の回動と、前記昇降部材の昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する分注装置を用いて分注される検体と試薬とを反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、
前記分注装置は、前記昇降部材を前記位置検知手段の近傍で昇降させ、前記位置検知手段による前記昇降部材の検知と非検知との間の前記駆動手段の最小駆動信号量をもとに前記すべりねじの磨耗量を検知する磨耗量検知手段を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
前記磨耗量検知手段の検知した磨耗量が所定許容範囲を超えている場合に、当該分注装置が異常である旨を告知する告知手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、パルスモータであり、
前記位置検知手段は、前記昇降部材の最上昇位置を基準位置として検知する上点センサであることを特徴とする請求項5又は6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記昇降部材の最下降位置を検知する下点センサを備えることを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
すべりねじによって昇降される昇降部材と、前記昇降部材の昇降位置を検知する位置検知手段とを有し、水平面内の回動と、前記昇降部材の昇降とによって試薬又は検体を含む液体試料を分注する分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法であって、
前記昇降部材を前記位置検知手段の近傍で昇降させ、前記位置検知手段による前記昇降部材の検知と非検知との間の最小駆動信号量を測定する測定工程と、
測定した最小駆動信号量をもとに前記すべりねじの磨耗量を検知する検知工程と、
を備えたことを特徴とする分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法。
【請求項10】
検知した磨耗量が所定許容範囲内か否かを判定する判定工程と、
磨耗量が所定許容範囲を超えている場合に当該分注装置が異常である旨を告知する告知工程と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の分注装置のすべりねじの磨耗量検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175300(P2010−175300A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15926(P2009−15926)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】