説明

分注装置

【課題】患者用容器の準備を簡単かつ迅速に行うことができ、しかも分注の済んだ患者用容器から順次取り出す。
【解決手段】薬液が種類別に収容される複数の薬瓶37が配置される薬液供給部3と、患者用容器16をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部2と、薬液供給部3の薬瓶37から薬液を吸引して、容器供給部の患者用容器に分注するノズル42と、ガイド部材17に整列させた患者用容器16を押圧するロッド43を有する分注部4とを備えた構成とする。容器供給部2は、同一サイズの患者用容器16を整列させた状態で保持する複数のガイド部材17と、ロッド43によってガイド部材17から押し出された患者用容器16を分注位置に位置きめする位置決め部材27とを備えた構成とする。薬液供給部3は、各薬瓶37の上方開口部を開閉する閉鎖板40を備える。ロッド43は、ノズル42が薬瓶37に至る前に閉鎖板40を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液剤を自動分注するための分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分注装置として、所望の液剤を収容してなる液剤容器を複数個配列収容可能な液剤容器トレーを載置する液剤容器トレー載置部と、患者用容器を複数個配列収容可能な患者用容器トレーを載置する患者用容器トレー載置部と、前記液剤容器トレーに配列されている液剤容器の何れかを選択して液剤容器に収納されている液剤を吸入し、前記患者用容器トレーに配列されている患者用容器の何れかを選択して、前記吸入した液剤を吐出して分注する分注ノズルを備えた分注機構部とを備えたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記分注装置では、分注ノズルを移動させて各患者用容器に液剤を吐出するようにしている。このため、各患者用容器を所定位置に正確に位置決めしておく必要があり、設置作業が面倒で時間がかかり、又、それぞれに位置決め構造が必要となる。しかも、分注が済んだ患者用容器を順次取り出すことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−132232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、患者用容器の準備を簡単かつ迅速に行うことができ、しかも分注の済んだ患者用容器から順次取り出すことのできる分注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
分注装置を、
薬液が種類別に収容される複数の薬瓶が配置される薬液供給部と、
患者用容器をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部と、
前記薬液供給部の薬瓶から薬液を吸引して、前記容器供給部の患者用容器に分注するノズルと、前記容器供給部に整列させた患者用容器を押圧するロッドと、を有する分注部と、を備え、
前記容器供給部は、
同一サイズの患者用容器を整列させた状態で保持する複数のガイド部材と、
前記ロッドによってガイド部材から押し出された患者用容器を分注位置に位置きめする位置決め部材と、
を備え、
前記薬液供給部は、各薬瓶の上方開口部を開閉する閉鎖板を備え、
前記ロッドは、前記ノズルが薬瓶に至る前に閉鎖板を開放可能な構成としたものである。
【0007】
この構成により、患者用容器はガイド部材に整列させておくだけでよい。そして、分注部のロッドによって患者用容器を押圧し、位置決め部材によって位置決めすることにより、分注を適切に行うことができる。また、患者用容器の整列及び押出しと、閉鎖板の開放とを単一のロッドにより行うことができ、構成を簡略化することが可能となる。
【0008】
前記ガイド部材は交換可能であるのが好ましい。
【0009】
この構成により、使用頻度の高いサイズの患者用容器を自由に整列可能に配置することが可能となる。
【0010】
前記ロッドによって患者用容器を押圧することにより、位置決め部材によって分注位置に位置決めされた患者用容器が押し出される位置に取出部を設けるのが好ましい。
【0011】
この構成により、患者用容器への分注を適切に行いつつ、患者用容器を容易に取り出すことが可能となる。
【0012】
前記薬液供給部は、前記薬瓶を鉛直方向に対して傾斜させて支持することにより、薬瓶の上方開口部から侵入させたノズルが、薬瓶の底部の最も低い位置近傍に配置可能とするのが好ましい。
【0013】
この構成により、薬瓶内に収容された薬液を、ノズルにより殆ど最後まで吸引することができ、廃棄される薬液量を最小限に抑えることが可能となる。
【0014】
前記薬液供給部は、前記薬瓶を傾斜させて支持した状態に位置決めするための付勢手段を備えるのが好ましい。
【0015】
この構成により、付勢手段を設けるだけの簡単な構成で、薬液供給部に薬瓶を載置するだけで、所定位置に確実に位置決めすることができる。
【0016】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
分注装置を、
薬液が種類別に収容される複数の薬瓶が配置される薬液供給部と、
患者用容器をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部と、
前記薬液供給部の薬瓶から薬液を吸引して、前記容器供給部の患者用容器に分注するノズルと、前記容器供給部に整列させた患者用容器を押圧するロッドと、を有する分注部と、を備え、
前記容器供給部は、
同一サイズの患者用容器を整列させた状態で保持する複数のガイド部材と、
前記ロッドによってガイド部材から押し出された患者用容器を分注位置に位置きめする位置決め部材と、
を備え、
前記薬液供給部は、各薬瓶の上方開口部を開閉する閉鎖板を備え、
前記ロッドは、前記ノズルが薬瓶に至る前に閉鎖板を開放可能な構成とし、
前記薬瓶は、支軸を中心として回動可能な閉鎖板を備え、
前記閉鎖板は、
支軸から一方に延び、薬瓶の上方開口部を閉鎖可能な閉鎖部と、
支軸から他方に延びて前記ロッドにより押圧され、薬瓶の上方開口部を開放するように閉鎖部による閉鎖を解除させ、薬瓶へのノズルの侵入を可能とする押圧受部と、
から
【0017】
この構成により、患者用容器はガイド部材に整列させておくだけでよい。そして、分注部のロッドによって患者用容器を押圧し、位置決め部材によって位置決めすることにより、分注を適切に行うことができる。また、患者用容器の整列及び押出しと、閉鎖板の開放とを単一のロッドにより行うことができ、構成を簡略化することが可能となる。さらに、簡単な構成の蓋体により、薬瓶を閉鎖状態に維持して雑菌や埃、あるいは、昆虫等の侵入、さらには薬液の蒸発を防止することができる。また、蓋体は、薬液を吸引する場合ノズルと共に移動するロッドにより自動的に開放することができる。このため、単に薬瓶を薬液供給部に載置するだけで蓋体の設置と薬瓶の設置とを完了することができる。
【0018】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
分注装置を、
薬液が種類別に収容される複数の薬瓶が配置される薬液供給部と、
患者用容器をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部と、
前記薬液供給部の薬瓶から薬液を吸引して、前記容器供給部の患者用容器に分注するノズルと、前記容器供給部に整列させた患者用容器を押圧するロッドと、を有する分注部と、を備え、
前記容器供給部は、
同一サイズの患者用容器を整列させた状態で保持する複数のガイド部材と、
前記ロッドによってガイド部材から押し出された患者用容器を分注位置に位置きめする位置決め部材と、
を備え、
前記薬瓶は、支軸を中心として回動可能な閉鎖板を備え、
前記閉鎖板は、
支軸から一方に延び、薬瓶の上方開口部を閉鎖可能な閉鎖部と、
支軸から他方に延びて前記ロッドにより押圧され、薬瓶の上方開口部を開放するように閉鎖部による閉鎖を解除させ、薬瓶へのノズルの侵入を可能とする押圧受部と、
から構成したものである。
【0019】
この構成により、すなわち、簡単な構成の蓋体により、薬瓶を閉鎖状態に維持して雑菌や埃、あるいは、昆虫等の侵入、さらには薬液の蒸発を防止することができる。また、蓋体は、薬液を吸引する場合ノズルと共に移動するロッドにより自動的に開放することができる。このため、単に薬瓶を薬液供給部に載置するだけで蓋体の設置と薬瓶の設置とを完了することができる。
【0020】
前記容器供給部は、分注位置に位置決めされた患者用容器を支持して秤量する秤量部を備え、
前記秤量部は、
前記各ガイド部材の分注位置の下方側を移動可能な基台と、
前記基台上に昇降可能に設けられ、上昇することにより分注位置に位置決めされた患者用容器を支持して秤量する支持台と、
を備えるのが好ましい。
【0021】
この構成により、1つの基台で複数箇所の分注位置に位置決めされた患者用容器を秤量することができ、構成を簡略化して安価に製作することが可能となる。
【0022】
サイズの異なる患者用容器別に収容可能な薬液の収容量を記憶する記憶手段と、
処方データから、ある薬液の処方量を抽出し、前記記憶手段に記憶した容量から適切なサイズの患者用容器を選択する容器選択手段と、
をさらに備え、
前記容器選択手段は、前記処方量が、前記記憶手段に記憶した最大サイズの患者用容器の収容量を超える場合、処方量を分割して分割処方量を算出し、算出された分割処方量に基づいて収容可能な適正サイズの患者用容器を選択するのが好ましい。
【0023】
この構成により、分注可能な患者用容器を自動的に選択することができるだけでなく、最大サイズの患者用容器に分注できない量の薬液が処方された場合であっても、自動的に複数の患者用容器に分割して分注することができる。
【0024】
患者用容器について、収容量と、1服用を示す目盛り数とを互いに関連付けて記憶する記憶手段と、
処方データから、ある薬液の処方量を抽出し、1服用当たりの容量と、前記記憶手段に記憶した収容量と目盛り数から算出した1目盛り当たりの容量とを比較し、希釈液の混合容量を算出する希釈量算出手段と、
を備えるのが好ましい。
【0025】
この構成により、患者用容器の目盛り数に応じて希釈量を自動的に設定することができる。
【0026】
前記処方データは指定日数を含み、
前記希釈量算出手段は、指定日数分の処方量についてのみ希釈液の混合容量を算出するのが好ましい。
【0027】
この構成により、指定日数分の薬液のみを希釈し、それ以降の薬液については原液のまま提供することができる。原液は使用時に希釈すればよく、希釈水を混合した際に雑菌等の侵入により汚染される恐れもない。したがって、指定日数を超える時期であっても問題なく使用することができる。
【0028】
前記ノズルが降下することにより侵入可能な上方開口部を有し、洗浄水が供給される洗浄容器を備えた洗浄部を設け、
前記洗浄容器の上方開口部は、開放可能な閉鎖板で閉鎖され、該閉鎖板は、前記ノズルと共に降下するロッドによって押圧され、前記上方開口部を開放する押圧受部を備えるのが好ましい。
【0029】
この構成により、ノズルを洗浄する際、昇降させるだけでよく、水平方向に移動させる必要がないので、時間のロスを抑制して効率的な作業が可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ガイド部材により患者用容器を整列させておくだけでよいので、準備を簡単かつ迅速に行うことができる。また、分注の完了した患者用容器を順次押し出して取り出すことができ、作業性を高めることが可能となる。また、患者用容器の整列及び押出しと、閉鎖板の開放とを単一のロッドにより行うことができ、構成を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る分注装置の概略を示す斜視図である。
【図2】図1の上方扉及び下方扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2の容器供給部の概略を示す平面図、(b)はその側面断面図である。
【図4】図3の容器保持部を示す側面図である。
【図5】(a)は図2の薬液供給部の概略を示す平面図、(b)はその側面断面図である。
【図6】(a)は図2の分注部の概略を示す平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【図7】(a)は図2の洗浄部の概略を示す側面図、(b)はその平面図である。
【図8】図2の薬液供給部の蓋体をロッドにより開放し、ノズルを挿入する一連の動作を示す概略説明図である。
【図9】第2実施形態に係る分注装置の概略を示す正面図である。
【図10】(a)は図8の容器供給部を示す平面図、(b)はその側面図である。
【図11】(a)は図8の薬液供給部を示す平面図、(b)はその側面図、(c)は(b)の薬瓶に装着される閉鎖板を示す側面図である。
【図12】(a)は患者容器の正面図、(b)はその側面図である。
【図13】分注部のノズルを示す側面図である。
【図14】(a)は洗浄部を示す概略正面図、(b)はその洗浄容器を示す概略断面図である。
【図15】(a)は図9の容器供給部、図12の洗浄部、及び、殺菌部の位置関係を示す平面図、(b)は殺菌部の拡大図である。
【図16】図8の表示パネルに表示されるログインダイアログ画面を示す図である。
【図17】図8の表示パネルに表示される水剤分注モニタ画面を示す図である。
【図18】図8の表示パネルに表示される水剤分注詳細モニタ画面を示す図である。
【図19】図8の表示パネルにポップアップ表示される患者詳細ダイアログ画面を示す図である。
【図20】図8の表示パネルにポップアップ表示される分割ダイアログ画面を示す図である。
【図21】図8の表示パネルにポップアップ表示される日数ダイアログ画面を示す図である。
【図22】図8の表示パネルにポップアップ表示される投薬容器選択ダイアログ画面を示す図である。
【図23】図8の表示パネルにポップアップ表示される用法選択ダイアログ画面を示す図である。
【図24】図8の表示パネルにポップアップ表示される薬品選択ダイアログ画面を示す図である。
【図25】図8の表示パネルにポップアップ表示される受信モード変更画面を示す図である。
【図26】図8の表示パネルにポップアップ表示される分注モード選択画面を示す図である。
【図27】図8の表示パネルにポップアップ表示される通信情報画面を示す図である。
【図28】図8の表示パネルにポップアップ表示される薬品回収確認ダイアログ画面を示す図である。
【図29】図8の表示パネルにポップアップ表示される保留一覧画面を示す図である。
【図30】図8の表示パネルにポップアップ表示される未処理一覧画面を示す図である。
【図31】図8の表示パネルにポップアップ表示される再発行画面を示す図である。
【図32】第2実施形態に係る分注装置による分注処理の内容を示すフローチャートである。
【図33】第2実施形態に係る分注装置による分注処理の内容を示すフローチャートである。
【図34】他の実施形態に係る分注部を示す正面図である。
【図35】図8の表示パネルに表示される水剤分注モニタ画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(1.第1実施形態:全体構成)
図1及び図2は、本実施形態に係る分注装置を示す。この分注装置は、装置本体1内に、容器供給部2と、薬液供給部3と、分注部4と、洗浄部5とを備える。
【0034】
(1−1.装置本体1)
装置本体1は略直方体形状で、前面には、上方側と下方側でそれぞれ観音開き可能な扉6、8がそれぞれ設けられている。
【0035】
上方扉6の前面には、液晶ディスプレイ等の表示パネル7が設けられている。表示パネル7には、これから分注しようとする薬液の名称、容量等が表示されるようになっている。また、上方扉6を開放した内側空間には、左半部に容器供給部2が配置され、右半部に薬液供給部3が配置されている。また、両供給部の間の奥側には洗浄部5が配置され、これらの上方には分注部4が移動可能となっている。
【0036】
下方扉8を開放した内側空間には、右半部に、洗浄水供給タンク9と、排水回収タンク10とがそれぞれ取出可能に収容されている。洗浄水供給タンク9に収容された洗浄水は、図示しないポンプにより後述する洗浄部5の洗浄容器48へと供給されるようになっている。また、洗浄水供給タンク9内の水位は水位検出センサ(図示せず)によって検出されるようになっている。そして、洗浄水の水位が所定位置まで低下すれば、その旨を報知することが可能となっている。一方、排水回収タンク10には、洗浄部5でノズル42を洗浄することにより得られた排水が回収されるようになっている。排水回収タンク10にも水位センサ(図示せず)が設けられ、廃液で満杯となれば、その旨が報知することが可能となっている。
【0037】
上方扉6と下方扉8の間には、左側にジャーナルプリンタ11及びラベルプリンタ12が設けられ、これらプリンタの上方には、後述する容器供給部2の前面が位置し、さらにその上方には容器取出口13が形成されている。また、プリンタの右側には、引出式(又は転倒式)の棚14と、図示しないバーコードリーダを収容するための凹部15とがそれぞれ形成されている。バーコードリーダは、後述する薬瓶37に貼着されたラベルに印刷されたバーコードを読み取るために使用する。バーコードリーダでこのバーコードを読み取ることにより、データベースから薬瓶37に収容された液薬に関する情報を呼び出して表示パネル7に表示することが可能となっている。
【0038】
(1−2.容器供給部2)
容器供給部2は、図3に示すように、患者用容器16をサイズ別に複数列で収容可能としたもので、全体がガイドレール(図示せず)によって支持されて前方に引き出し可能となっている。患者用容器16は、合成樹脂材料からなる軽量のもので、断面略楕円形状で、上方に口部が形成されている。そして、患者用容器16は、各列で、その短軸方向に整列して配置されている。
【0039】
容器供給部2の各列には、底面及び両側面で構成されるガイド部材17が取外可能に配置されている。ガイド部材17の一端側(前方側)の両側内面には弾性片18がそれぞれ取り付けられている。各弾性片18は、前方側の一端側に、内側に向かって斜めに突出している。ガイド部材17の他端側(後方側)には、押圧片19が配置されている。押圧片19は、断面略L字形に折り曲げられた金属製プレートで、黒色に着色されている。黒色に着色したのは、後述する第1検出センサ25での検出を可能とするためであるが、同じ目的で開口部を形成した構成とすることも可能である。押圧片19は、後述する分注部4に設けたロッド43によって押圧され、ガイド部材17に配置した患者用容器16の整列及び移動に利用される。患者用容器16が整列された状態では、押圧片19の自重により患者用容器16が後方側へと位置ずれすることはない。
【0040】
ガイド部材17の弾性片18のさらに前方側には容器保持部20が配設されている。容器保持部20は、図4に示すように、支持プレート21の上面に所定間隔で一対の保持プレート22を固定したものである。支持プレート21は、中央の平坦部23と、この平坦部23から両側(前後)に向かって斜め下方に延びる脚部24とで構成されている。平坦部23の中央には貫通孔23aが形成され、その下方に設けた第1検出センサ25によって、その上方の所定位置(分注位置)に位置決めされた患者用容器16や前述の押圧片19を検出できるようになっている。これにより、第1検出センサ25は、患者用容器16が分注位置に位置決めされたことを検出するだけでなく、押圧片19を検出することにより、その列で患者用容器16が欠品したことを検出することができる。脚部24の先端(下端部)は、平坦部23と平行にさらに両側へと延びている。保持プレート22は、支持プレート21の両側から立設するプレート本体26と、このプレート本体26の上縁の突出部に設けた弾性ガイド27とで構成されている。プレート本体26の間隔は、患者用容器16(長軸方向)が通過可能な寸法に設定されている。弾性ガイド27の先端は、患者用容器16に外面に沿って湾曲し、その弾性力で患者用容器16を分注位置に位置決めする。
【0041】
なお、各列のガイド部材17及び容器保持部20は、整列させる患者用容器16のサイズに応じて自由に変更することができる。通常、分注装置の納品時に、ユーザの希望に応じて自由に選択して装着することが可能となっている。また、全ての分注位置は、上方側に配置したカメラ(図示せず)によって撮影され、その位置に患者用容器16が適切な方向(患者用容器16の長軸方向が左右方向と合致する方向)で位置決めされているか否かの判断に利用されるようになっている。さらに、ガイド部材17の下方側には第1受け皿17aが設けられ、容器保持部20の下方側には第1受け皿17aよりも一段下がった位置に第2受け皿17bが設けられている。これら受け皿17a、17bは、万一、薬液や洗浄水が飛散したとしても、その下方側の電装部品等に至ることを防止する。また、容器保持部20の側方に患者用容器16を載置可能な補助保持部28が設けられている。この補助保持部28は、大型であまり利用頻度の高くない患者用容器16を手動で載置する際に利用する。この場合、補助保持部28でも後述する秤量部29での秤量が可能となっている。
【0042】
容器保持部20の下方側には秤量部29が配置されている。秤量部29では、左右方向に延びる2本のレール29aに基台29bが往復移動可能に設けられている。基台29bにはベルト29cを介して図示しないモータからの駆動力が伝達され、往復移動するようになっている。基台29b上には2本の軸部29dが立設され、これら軸部29dに沿って支持台29eが図示しない別のモータの駆動により昇降可能に設けられている。このような構成の秤量部29は、秤量しようとする容器保持部20の下方側で停止し、上昇することにより容器保持部20及び空の患者用容器16を秤量して基準値とし、一旦降下して薬液を分注した後、再度秤量する。秤量部29は往復移動可能な構成となっており、複数箇所の容器保持部20に対して1つだけでよい。したがって、安価に製作することができる。また、秤量時以外は下方側で待機している。
【0043】
容器保持部20のさらに前方側は取出部30となっている。取出部30の一部を構成する前方壁の内面が、上方に向かうに従って徐々に斜め前方へと傾斜する傾斜面30aとなっている。そして、容器保持部20から排出された患者用容器16は、取出部30で傾斜面に支持されることにより、装置本体1の前方側から取出容易となるように上方側を斜め前方へと位置させる。前方壁の前面には貫通孔30bが形成され、この貫通孔30bを介して第2検出センサ31によって取出部30に排出された患者用容器16が検出されるようになっている。第2検出センサ31の近傍にはLED32が配置され、装置本体1の前面に設けた開口を介して前方側から視認可能となっている。LED32は、第2検出センサ31によって患者用容器16が検出されることにより点灯する。また、LED32の下方側には凹所20aが形成されている。この凹所は、容器供給部2の全体を引っ張り出すために利用される。
【0044】
(1−3.薬液供給部3)
薬液供給部3は、図5に示すように、供給部本体33と、この供給部本体33の後方側の支軸34aを中心として回動可能に取り付けた蓋体34とを備える。供給部本体33内には、薬瓶37を保持するための複数の開口部35aが形成された天板35を有する保持容器36が収容されている。開口部35aは、薬瓶37の外周面に沿う円形状に形成されている。薬瓶37の上方開口部には、環状体38が取り付けられている。この環状体38には、バーコードが印刷されたラベルが貼着されると共に、RFID(Radio Frequency IDentification)が内蔵されている。また、薬瓶37には元々製薬会社でラベルが貼着されている。ラベルには、薬液の名称や内容量のほか、バーコードが印刷されている。RFIDには、環状体38を取り付ける薬瓶37に収容されている薬液に対応する情報が記憶されている。薬瓶37に環状体38を取り付ける際、バーコードリーダで、薬瓶37に貼着したラベルのバーコードと、環状体38のバーコードとを読み取ることにより、合致しているか否かを確認する。RFIDに記憶させてある薬液に関するデータは、後述するリーダーで読み取られるようになっている。蓋体34は、上面、前面及び両側面を備え、前面中央部には取っ手39が設けられている。蓋体34の上面には、前記保持容器36の各開口部に対応する位置(詳しくは、各開口部に保持された薬瓶37の上端開口部に対応する位置)に筒状部34bがそれぞれ形成されている。各筒状部34bの中心孔は、軸部40aを中心として回動可能に設けた閉鎖板40によって閉鎖されている。閉鎖板40は、中心孔を覆う蓋部40bと、軸部40aを挟んで反対側に延びる押圧受部40cとで構成されている。閉鎖板40は、通常、蓋部40bの自重(又は軸部40aに設けたコイルスプリングの付勢力)により中心孔を閉鎖し、上方開口部が開放したままの薬瓶37への埃等の侵入を防止する。また閉鎖板40は、押圧受部40cを後述する分注部4のロッド43によって押し下げられることにより、開放位置へと回動する。なお、3aは換気用のファンである。
【0045】
(1−4.分注部4)
分注部4は、図6に示すように、支持部41に支持されたノズル42とロッド43を備える。ノズル42には、チューブ(図示せず)を介してポンプ(図示せず)が接続され、洗浄水を吸引及び排出することができるようになっている。なお、ノズル42の移動、洗浄水の吸引水の排出の制御については、従来公知の方法によって行うことが可能である(例えば、特開2004−245715号公報参照)。
【0046】
支持部41は、図2及び図6に示すように、装置本体1の両側内面に設けた前後に延びる第1レール44と、この第1レール44に沿って前後方向に移動可能に設けた第2レール45と、この第2レール45に沿って左右方向に移動可能に設けた枠体4aの第3レール46とによって、内部空間をX軸、Y軸及びZ軸方向に移動可能となっている。すなわち、支持部41は、第3レール46に沿って昇降し、第3レール46は、第2レール45に沿って左右に移動し、第2レール45は、第1レール44に沿って前後に移動する。
【0047】
支持部41の下方側には、上面に湾曲した凹部47aを形成された液ダレ防止部47が設けられている。そして、液ダレ防止部47は、モータ47bの駆動によりプーリ47c、ベルト47dを介して第3レール46の側方に設けた支軸47eを中心としてノズル42の下方側に位置する受取位置と、その側方に位置する退避位置とにそれぞれ旋回可能となっている。また、支持部41の下方側には、薬瓶37の環状体38に内蔵したRFIDに書き込んだ情報を読み取るためのリーダー(図示せず)が設けられている。
【0048】
ノズル42は、図示しないシリンダに接続され、シリンダ内のピストンを後退することにより薬瓶37から薬液を吸引し、一旦貯留する。そして、ピストンを前進させることにより吸引した薬液を患者用容器16へと排出する。なお、シリンダでは、予め内部に一定量の空気を封入しておき、薬液を吸引する際、この薬液が直接ピストンに触れることが無いようにするのが好ましい。
【0049】
ロッド43は、ノズル42の前方に配置され、支持部41に対して昇降可能に支持されている。ロッド43の下端位置は、ノズル42の下端位置よりも下方側に位置している。これにより、まず、ロッド43の下端部で薬液供給部3の閉鎖板40の押圧受部40cを押圧し、閉鎖板40が開放してからノズル42が筒状部34bの中心孔を介して薬瓶37の上方開口部から内部へと侵入できるようになっている。そして、支持部41を下方側へと移動させると、支持部41に対してロッド43がスライドし、ノズル42の降下を阻害しないようになっている。また、ロッド43は、容器供給部2に整列させた患者用容器16の移動にも利用される。つまり、1つのロッド43で、2つの機能を発揮することができるように構成されている。
【0050】
(1−5.洗浄部)
洗浄部5は、図7に示すように、洗浄容器48と、その上方側に配置されたエアー供給筒49とを備える。洗浄容器48は、外容器50と内容器51とからなる。内容器51は、チューブ51aを介して洗浄水供給タンク9に接続され、図示しないポンプの駆動により、適宜、洗浄水が供給されるようになっている。内容器51から溢れた洗浄水は、外容器50との間の外側領域に貯留され、外容器50の側壁に接続したチューブ50aを介して回収タンク10へと回収されるようになっている。エアー供給筒49では、内部を通過するノズル42に対して、側壁に形成した開口部42aを介してブロア42bからエアーが吹き付けられる。これにより、ノズル42の先端に残った雫や外周面に付着した水滴を落下させることができる。
【0051】
(2.動作)
次に、前記構成からなる分注装置の動作について説明する。
【0052】
分注を開始する前に、容器供給部2では、サイズ別に各列のガイド部材17に患者用容器16を短軸方向に整列させる。そして、後方側に押圧片19を配置しておく。これにより、各列での患者用容器16の整列状態が維持される。また、薬液供給部3では、バーコードリーダで薬瓶37のバーコードを読み取ることにより、表示パネル7に表示させた薬瓶37のセット位置情報に従って薬瓶37をセットする。そこで、ユーザは、取っ手39を持って蓋体34を開放し、この薬瓶37を、表示パネル7に表示された位置(薬液供給部3の天板35に形成した開口部35a)に配置すればよい。なお、分注装置の電源をオンした時点で一度だけ、分注部4を原点位置(装置本体1の奥側左隅の位置)に移動し、その位置を基準位置とする原点取りを実行する。
【0053】
図示しないサーバ等から処方データが入力されると、支持部41を移動させ、分注しようとする患者用容器16が配置された列へとロッド43を位置させる。そして、ロッド43で該当する列の後方側に位置する患者用容器16を前方へと押圧する。ロッド43は、前方の患者用容器16が分注位置に至り、第1検出センサ25によって検出されるまで前進させる。分注位置まで押し出された患者用容器16は、弾性ガイド27によって保持されて位置決めされる。この状態で、秤量部29を上昇させ、患者用容器16及び支持プレート21を秤量し、患者用容器16の重量を減算した値を記憶しておく。
【0054】
続いて、支持部41を、処方データに従って該当する薬液が収容された薬瓶37の上方位置へと移動させる。このとき、リーダーでRFIDに書き込んだ情報を読み取り、薬瓶37に収容されている薬液の照合を行う。これにより、その薬液が処方データに含まれる薬液と合致するか否かの確認を行うことができる。薬瓶37は、表示パネル7に表示した位置に従って配置されていれば、問題ないはずであるが、人為的ミスを防止するために、このチェックを行っている。
【0055】
そして、該当する薬液が収容された薬瓶37であれば、液ダレ防止部47を旋回させた後、支持部41を降下させる。支持部41の降下に伴い、まず、図8(a)に示すように、ロッド43が閉鎖板40の押圧受部40cに当接する。閉鎖板40は、ロッド43の自重によって回動し、筒状部34bの中心孔を開放する。閉鎖板40は、開放してその押圧受部40cの先端が蓋体34に当接することにより、それ以上の回動を阻止される。このとき、図8(b)に示すように、ロッド43は、支持部41に対してスライドしてノズル42のみが降下する。続いて、図8(c)に示すように、ノズル42が中心孔を通過して薬瓶37の内部へと至る。そして、ノズル42が薬液の液面に至れば、前述のように、従来公知の方法によって、薬液を吸引しながら液面が低下するのに合わせて徐々にノズル42を降下させる。これにより、ノズル42の外周面が薬液に浸かることなく、シリンダ内に薬液を吸引して一旦貯留することが可能となる。
【0056】
このようにしてノズル42を介してシリンダ内に処方データに基づいた所定量の薬液が吸引されれば、支持部41(ノズル42及びロッド43)を上昇させる。このとき、ロッド43が自重により元の位置へと移動する。これにより、閉鎖板40はロッド43による押圧状態を解除され、蓋体34の筒状部34bの中心孔を閉鎖する。支持部41が所定位置まで上昇すれば、分注位置の該当する患者用容器16へと移動させる。
【0057】
ノズル42が分注位置に至れば、降下させて先端部分を患者用容器16内に位置させる。そして、ピストンを前進させてシリンダ内に吸引した薬液を患者用容器16内に供給する。シリンダ内の薬液の供給が完了すれば、再びノズル42を上昇させて、今度はこのノズル42を洗浄部5へと移動させる。このとき、秤量部29を上昇させて、薬液が供給された患者用容器16と支持プレート21を秤量し、その結果を記憶する。そして、秤量結果から患者用容器16の重量を減算することにより分注された薬液の重量を算出する。
【0058】
ノズル42が洗浄部5に至れば、降下させて先端部分を洗浄容器48の内容器51へと侵入させる(ここでは、ノズル42の先端から約1cmを浸水させている。)。そして、ピストンを後退させシリンダ内に洗浄水を吸引する。洗浄水が吸引されれば、ノズル42を一旦上昇させ、内容器49と外容器50の間に形成される外側領域へと移動させ、吸引した洗浄水を排出することにより洗浄処理を行う。排出された洗浄水は排水回収タンク10へと回収される。この洗浄処理は複数回行ってもよいし、洗浄できるのであれば、1回であってもよい。洗浄処理が終了すれば、ノズル42を上昇させる。このとき、エアー供給筒49でノズル42に向かってエアーを吹き付け、ノズル42に付着した洗浄水や薬液を除去する。
【0059】
以下、同様にして、ノズル42による薬瓶37からの薬液の吸引、吸引した薬液の患者用容器16への分注、ノズル42の洗浄を繰り返し、処方データに基づいて患者用容器16に該当する各薬液を所定量ずつ分注する。そして、分注する毎に、秤量部29にて患者用容器16及び支持プレート21を秤量し、分注した薬液量を算出する。但し、秤量は、全ての薬液が分注された後に1回だけ行うようにしても構わない。
【0060】
ある患者用容器16への薬液の分注が完了すれば、支持部41を移動してロッド43により分注が完了した患者用容器16が並ぶ列の押圧片19を前方へと押圧する。これにより、薬液の分注が完了した前方先頭の患者用容器16は、弾性ガイド27による保持状態を振り切って取出部30へと押し出される。
【0061】
取出部30へと押し出された患者用容器16は、前方内面の傾きによって上方側が斜め前方へと突出する。そして、この状態が第2検出センサ31によって検出され、LED32が点灯する。これにより、ユーザは、分注が完了した患者用容器16が払い出されたことが分かる。
【0062】
ユーザは、棚14を引き出し、払いだされた患者用容器16を、この棚14に載置し、キャップを装着する。このとき、取出部30から患者用容器16が取り出されたことを第2検出センサ31で検出し、ジャーナルプリンタ11を起動し、その薬液情報を印刷する。印刷された薬液情報は監査等で使用する。さらに、ラベルプリンタ12を起動し、患者名やバーコードを印刷したラベルを排出する。このラベルは患者用容器16に貼着して使用する。このとき、患者用容器16と、分注された薬液の情報(薬液の名称、用量等)とが関連付けられる。
【0063】
(3.第2実施形態)
第2実施形態に係る分注装置の基本的な構成は、前記第1実施形態に係るものと同様であるので、以下、主に相違する構成のみについて説明する。
【0064】
(3−1.装置本体101)
装置本体101は、図9に示すように、上方側の観音開き可能な扉106a、106bには、ソレノイド等によるロック機構が設けられている。そして、このロック機構によるロック状態は、右扉106aに設けたキー穴106cにキーを差して回転させることにより解錠することができるようになっている。詳しくは、図示しない本体電源がオン状態のとき、キー操作により両扉106a、106bは電気的に同時にアンロック状態となる。一方、本体電源がオフ状態のとき、キー操作により右扉のロック状態のみが機械的にアンロック状態となり、左扉106bはロック状態を維持する。この場合、左扉106bは右扉106aを開放し、手動によりアンロック状態とすることが可能となっている。なお、これら扉106a、106bは、閉鎖状態で密封状態となるように周縁にパッキンが設けられている。但し、パッキンは装置本体側に設けることも可能である。
【0065】
右扉106aの中央部には、縦長矩形状で、透光性を有する窓部107が形成されている。ユーザは、この窓部107を介して薬液供給部103の状態を視認可能である。
【0066】
装置本体101の上面にはHEPAフィルタ108とファン109とが設けられ、装置本体101の内部空間へと清浄された空気を供給可能となっている。装置本体101内に供給された空気は、容器供給部102、薬液供給部103、分注部104、洗浄部105等から下方側に配置した構成部品の隙間を介して外部へと排出される。これにより、分注作業を行う領域が埃等のないクリーンな状態に維持される。
【0067】
なお、左扉106bの下方側に形成される容器取出口113は、開放可能なシャッター114によって閉鎖可能となっている。また、容器取出口113の下方側には、患者用容器120を載置するための引出式の棚115と、薬瓶137のキャップを収容するためのキャップ収納ボックス116とが並設されている。また、これらの右側の領域(右扉106aの下方側に形成した凹部117)には、ジャーナルプリンタ118aと、ラベルプリンタ118bと、バーコードリーダ119とがそれぞれ配置されている。
【0068】
(3−2.容器供給部102)
容器供給部102は、図10に示すように、患者用容器120がサイズ別に収容された列毎に、取出部130の位置が調整されている。具体的に、小型の患者用容器120が収容された容器供給部102に対応する取出部130では、取出部130を構成する側壁が低く形成されている。これにより、ユーザが患者用容器120を把持しやすくなり、取出作業を容易に行うことが可能となる。また、取出部130は、患者用容器120のサイズに応じて前後及び上下の位置を調整されている。患者用容器120が大型になる程、取出部130は前方及び下方へと位置を調整されている(図10(b)では、取出部130が右側に位置するに従ってそのように位置を調整されている。)。これにより、取出部130に排出された全ての患者用容器120の把持位置を、取出容易となるように、ほぼ同じ位置とすることが可能となっている。なお、各容器供給部102の取出部130のいずれかに患者用容器120が排出されれば、取出部130に形成したセンサ孔130aを介して図示しないセンサによって検出することができる。したがって、センサを複数設ける必要がない。
【0069】
(3−3.薬液供給部103)
薬液供給部103は、図11(a)、(b)に示すように、第1実施形態のような蓋体34を備えていない。また、供給部本体133には、開口部35aに代えて、略U字形となるように一対の保持ガイド134を備えた薬瓶保持部135が設けられている。薬瓶保持部135の底面135aは、前方に向かうに従って徐々に低くなるように傾斜し、載置される薬瓶137を傾斜させた状態、すなわち、薬瓶137の外周面が保持ガイド134に当接して保持された状態に支持する。このときの薬瓶137の傾斜角度は、薬瓶137の上端開口部から鉛直下方に向かってノズル142を挿入した際、ノズル142の先端部分が、傾斜した薬瓶137の最も深い位置に到達可能となるように設定している。これにより、後述するようにして薬瓶137から薬液を抽出する際、残量が殆どなくなる状態まで吸引することができ、薬液が吸引し切れずに破棄される量を抑制することが可能となる。また、各薬瓶137の上端開口部には閉鎖板140がそれぞれ取り付けられている。閉鎖板140は、薬瓶137の上端開口部を閉鎖する閉鎖部140aと、この閉鎖部140aから斜めに延びる押圧受部140bとで構成されている。閉鎖板140は、支軸141を中心として回動可能に設けられ、薬瓶137が傾斜状態で支持される関係上、図11(c)に示すように、支軸141に設けたスプリング141aによって閉鎖方向に付勢されている。これにより、閉鎖板140による閉鎖状態を確実なものとすることができる。閉鎖板140は、前記第1実施形態と同様に、ノズル142と共に昇降するロッド(図示せず)によって押圧受部140bを押圧されることにより、スプリング141aの付勢力に抗して開放位置に回動する。ロッドは、後述するように、支持部145に昇降可能に支持されており、自重により前記押圧受部140bを押し下げて閉鎖板140を開放位置へと回動させる。そして、閉鎖板140を開放させた後は支持部145をスライドし、ノズル142のみが降下を続ける。この結果、閉鎖板140を開放状態に維持したままで、ノズル142を薬瓶137の上端開口部から内部へと侵入させることが可能である。
【0070】
ここでは、薬剤供給部103の最前列に配置される左端の1本の薬瓶137には、薬液の希釈を行うための希釈水が収容されている。ここでは、希釈水として水道水又は精製水が使用される。なお、薬瓶137に希釈水を収容する代わりに、洗浄水供給タンク110から供給される洗浄水をそのまま希釈水として利用することも可能である。
【0071】
また、薬瓶137に収容した薬液は、ノズル142を使用して定期的に攪拌させるのが好ましい。すなわち、薬瓶137内にノズル142を挿入し、薬液の吸引及び排出を繰り返す。これにより、薬瓶137内の薬液の攪拌が可能となる。なお、使用したノズル142は洗浄しておけばよい。
【0072】
(3−4.分注部104)
分注部104では、図13に示すように、ノズル142が着脱可能となっている。すなわち、本体電源をオフしているときに、分注部104を降下させ、支持部145からノズル保持部143の螺合状態を解除する。そして、このノズル保持部143に保持したノズル142を取り外す。分注部104を一旦降下させているので、ノズル142を取り外すのに十分なスペースを確保することができる。したがって、ノズル142の着脱作業をスムーズに行うことができる。またこのように、ノズル142の着脱作業を容易に行うことができるので、定期的に新品と交換すれば、コンタミ等の問題も発生しにくく清潔である。なお、分注部104には、前記第1実施形態と同様に、支持部145に図示しないロッドが昇降可能に取り付けられている。
【0073】
(3−5.洗浄部105)
洗浄部105では、図14に示すように、洗浄容器148内に、底面から上方に向かって突出し、洗浄水供給タンク110に連通する給水管150が設けられ、底面に回収タンク111へと連通する排水口151が開口し、図14(a)に示すように、容器供給部102の側方に配置されている。給水管150の上端開口部は、回動可能な閉鎖板152によって閉鎖されている。詳しくは、図14(b)に示すように、閉鎖板152は、給水管150の上端開口部を閉鎖する閉鎖部152aと、そこから斜めに延びる押圧受部152bとで構成されている。常態においては、閉鎖板152はスプリング152cの付勢力により閉鎖部152aで給水管150の上端開口部を閉鎖するように回動している。閉鎖板152は、洗浄部105内に移動させた分注部104に設けたロッド143によって押圧受部152bを押圧されることにより回動し、上端開口部を開放する。この状態で、分注部104をさらに降下させることにより、ノズル142で給水管150内の洗浄水を吸引可能となる。また、洗浄容器148自体は、レバー153を回動させることにより、ワンタッチで取り外すことができるようになっている。これにより、洗浄容器148の洗浄を簡単に行うことができる。
【0074】
前記構成の洗浄部105では、ノズル142を洗浄する場合、洗浄容器148内にノズル142及びロッド143を移動させる。そして、ロッド143で閉鎖板152の押圧受部152bを押圧し、この閉鎖板152を回動させることにより給水管150の上端開口部を開放する。そして、ノズル142を降下させて洗浄水を吸引した後、上昇させる。これにより、閉鎖板152が自重により回動し、給水管150の上端開口部は閉鎖される。ここで、ノズル142から吸引した洗浄水を排出する。排出された洗浄水は、閉鎖板152から洗浄容器148の下方側へと流下し、排水口151を介して回収タンク111へと回収される。なお、ノズル142は、ブロア144から吹き付けられるエアーによって乾燥される。このように、ノズル142を洗浄する際、昇降させるだけでよく、前記第1実施形態のように水平方向に移動させる必要がないので、時間のロスを抑制して効率的な作業が可能となる。洗浄水供給タンク109に連通する給水管150を図示しない一般の水道へ直結し、回収タンク110に連通する排水口151を図示しない一般の水道の排水口へ連通する構成としてもよい。こうすることで、重量物である洗浄水供給タンク109および回収タンク110の運搬および設置作業が不要となる。
【0075】
(3−6.殺菌部160)
殺菌部160は、図15(b)に示すように、金属材料からなるケーシング161の内部に一対の殺菌灯162を配置したもので、上面中央部には、殺菌灯162の間にノズル142を挿入可能な挿通孔161aが形成されている。殺菌部160は、洗浄部105の前方に配置されており、挿通孔161aから挿入されたノズル142を殺菌する。
【0076】
(4.動作)
次に、前記第2実施形態に係る分注装置の動作について説明する。
【0077】
分注処理の前に各種設定を行うことができるようになっている。すなわち、自動希釈を行うか否かの設定(設定1)、原液を使用するか希釈するかの設定(設定2)、1回量に基づいて希釈するか否かの設定(設定3)、日数による希釈の設定(設定4)、患者の年齢の違いによる希釈薬品の設定(設定5)、患者用容器120への目盛り表示の設定(設定6)を行うことができるようになっている。
【0078】
設定1では、(1−1)自動希釈オン、又は、(1−2)自動希釈オフに設定する。設定2では、(2−1)全て原液調剤、(2−2)薬瓶払出、端数は原液調剤、(2−3)指定日数以内は希釈調剤、指定日数以降は原液調剤のいずれかに設定する。設定3では、(3−1)1回量が小数を含む場合、希釈を行う、又は、(3−2)1回量が小数を含む場合、希釈を行わないに設定する。設定4では、希釈を行う日数(指定日数)を設定する。設定5では、患者の年齢に応じた適切な希釈薬を設定する。設定6では、患者用容器120に貼着するラベルに印刷する目盛りの設け方を設定する。
【0079】
電源を投入してプログラムを起動すると、表示パネル7に、図16に示すログインダイアログ画面が表示される。ログインダイアログ画面には、ユーザIDとパスワードの入力欄が表示されている。両者が入力されてログインボタンが操作されることにより、その照合が行われ、登録したデータであれば、図17に示す水剤分注モニタ画面、又は、図18に示す水剤分注詳細モニタ画面のいずれか一方を表示する。いずれの画面も表示内容は同じであるが、表示形態が相違する。すなわち、前者は患者名を一覧表示する欄が強調されているのに対し、後者は薬剤名を一覧表示する欄が強調されている。初期設定で、いずれの画面でも選択でき、又、前回終了時の画面情報に基づいて表示することも可能である。
【0080】
図17に示す水剤分注モニタ画面で詳細ボタン170を操作すると、図18に示す水剤分注詳細モニタ画面に切り替わり、図18に示す水剤分注詳細モニタ画面で分注モニターボタン171を操作すると、図17に示す水剤分注モニタ画面に切り替わるようになっている。
【0081】
また、水剤分注詳細モニタ画面には、患者ボタン172、分割欄173、日数欄174、適用容器欄175、用法欄176、薬品名177、順次読込モードボタン178、自動分注モードボタン179、機器接続欄180、停止ボタン181、保留ボタン182、未処理一覧ボタン183、再発行ボタン184が含まれる。
【0082】
患者ボタン172をタッチ操作すると、図19に示すように、患者詳細ダイアログ画面がポップアップ表示され、患者の氏名、身長、ID等を確認できるようになっている。分割欄173をタッチ操作すると、図20に示すように、分割ダイアログ画面がポップアップ表示され、分注総量に対する適用容器の容量、分割後の分注容量、適用容器の容量等を確認できるようになっている。日数欄174をタッチ操作すると、図21に示すように、処方日数を選択するための日付等を含む日数ダイアログ画面がポップアップ表示される。適用容器欄175をタッチ操作すると、図22に示すように、適用可能な患者用容器120とその容量の一覧である投薬容器選択ダイアログ画面がポップアップ表示される。用法欄176をタッチ操作すると、図23に示すように、服用時期等を含む用法選択ダイアログ画面が表示される。薬品名177をタッチ操作すると、図24に示すように、薬品選択ダイアログ画面がポップアップ表示される。この薬品選択ダイアログ画面では、薬品(薬液)、添加物、希釈水のいずれか、あるいは、これら全てを選択して表示させることができるようになっている。順次読込モードボタン178をタッチ操作すると、図25に示すように、受信モード変更画面がポップアップ表示され、処方データの受信モードを設定できるようになっている。分注モード選択ボタン179をタッチ操作すると、図26に示すように、自動分注又は手動分注のいずれかを選択するための分注モード選択画面がポップアップ表示される。ボタンの表示は、手動分注が選択されている場合には自動分注、自動分注が選択されている場合には手動分注となる。機器接続欄180をタッチ操作すると、図27に示すように、バーコードリーダやプリンタ等、分注装置に接続されている機器の一覧表からなる通信情報画面がポップアップ表示される。停止ボタン181をタッチ操作すると、図28に示すように、分注装置が停止するが、そのとき、分注処理を中止する警告表示である薬品回収確認ダイアログ画面がポップアップ表示される。保留ボタン182をタッチ操作すると、図29に示すように、分注処理を保留されている患者の一覧表である保留一覧画面がポップアップ表示される。未処理一覧ボタン183をタッチ操作すると、図30に示すように、未処理一覧画面がポップアップ表示される。未処理一覧画面では、分注処理が未処理である患者が一覧表示され、各患者を選択することにより、その患者について処方データが表示されるようになっている。再発行ボタン184をタッチ操作すると、図31に示すように、再発行画面がポップアップ表示され、処方データの再発行を、その内容を確認しつつ行えるようになっている。
【0083】
分注処理では、図32及び図33のフローチャートに示すように、まず、上位システムであるサーバから入力される処方データに基づいて、分注を行えるか否かの判断を行う(ステップS1)。例えば、ある薬液Aが複数回に分けて服用するものである場合、処方量が全体についてのみなされており、1回毎の服用量が含まれていない場合であれば、分注を行えないと判断する。
【0084】
分注を行えないと判断すれば、処方データを前記サーバに返し、縦割り処理を行わせる(ステップS2)。縦割り処理では、全体の処方量(分注総量)を1回毎の服用量に分解した複数の処方データに分解する。例えば、ある患者について、薬液Aを、朝2ml、昼1ml、夕3ml処方する場合、処方1を薬液A、朝2mlとし、処方2を薬液A、昼1mlとし、処方3を薬液A、夕3mlとする。これにより、分注処理で取扱い可能な処方データとなる。
【0085】
次に、処方データに基づいて、薬液の処方形態を確認する(ステップS3)。すなわち、薬液を希釈せずに原液で供給するのか、希釈して供給するのかを判断する。なお、ある薬液について、処方形態が原液と希釈の両方が混在する場合、原液として扱う。
【0086】
処方形態が原液であると判断された場合、前記設定2に基づいて、いずれの調剤方法を選択するのかを判断する(ステップS4)。
【0087】
調剤方法が、(2−1)全て原液調剤に設定されている場合、前記設定3に基づいて、(3−1)1回量が小数を含む場合であって、希釈を行うものであるか、あるいは、(3−2)1回量が小数を含む場合であって、希釈を行わないものであるか、のいずれに設定されているのかを判断する(ステップS5)。
【0088】
(3−1)の場合、1回量を、その値よりも大きくて最も近い整数となるように希釈量を決定する(ステップS6)。例えば、薬液Aの1回量が4.5mlである場合、希釈量を0.5mlとし、1回量が5mlの整数とする。但し、1回量が小数を含む場合であっても、1日量を算出し、得られた値が小数を含まなければ、希釈しないようにしてもよい。また、1日量としても、小数が含まれる場合には、その値よりも大きくて最も近い整数となるように希釈量を決定するようにすればよい。
【0089】
(3−2)の場合、すなわち、1回量に小数が含まれていたとしても、希釈しない場合、処方データに従って、患者用容器120及び本数を算出する(ステップS7)。
【0090】
調剤方法が、(2−2)薬瓶払出、端数は原液調剤ボトル払出に設定されている場合、処方データに含まれる薬液毎に払出方法を決定する(ステップS8)。
【0091】
例えば、薬液Aの処方量が60ml×3回×14日分=2520mlであり、薬液Bの処方量が45ml×3回×14日分=1890mlである場合、薬液Aが収容される薬瓶の容量は500mlであるので、薬瓶で払出可能な本数は、2520ml÷500ml=5.04となり、5本に決定する。端数の20mlについては、患者用容器120に分注して払い出す。一方、薬液Bが収容される薬瓶の容量は300mlであるので、薬瓶で払出可能な本数は、1890ml÷300ml=6.3となり、6本に決定する。端数の90mlについては、患者用容器120に分注して払い出す。
【0092】
調剤方法が、(2−3)指定日数以内は希釈調剤、指定日数以降は原液調剤に設定されている場合、設定された指定日数については、後述する処方形態が希釈である場合と同様にして希釈量を算出し、この希釈量を加算した値を調剤量とする(ステップS9)。また、指定日数を超える分については、前記同様にして患者用容器120のサイズ及び本数を決定する(ステップS10)。
【0093】
処方形態が希釈であると判断された場合(ステップS3:希釈)、前記設定4に基づいて、(4−1)日数均等分割であるのか、又は、(4−2)指定日数では希釈調剤、指定日数以降は原液調剤であるのかを判断する(ステップS11)。
【0094】
(4−1)の場合、次のようにして希釈量を算出して希釈調剤を行う(ステップS12)。
【0095】
(1)処方データに含まれる全ての薬液についての処方量の総計を算出する。
(2)得られた算出値に基づいて、この算出値と同じ容量の患者用容器120か、そのような患者用容器120がなければ、それよりも大きくて最も近いサイズの患者用容器120を選定する。
(3)各薬液の1回量をそれぞれ算出し、全ての薬液の1回量の総計値を求める。
(4)患者用容器120のマスタファイルを参照し、各患者用容器120の1目盛り当たりの用量を算出する。
(5)(3)で求めた全ての薬液の1回量の総計値と、(4)で算出した1目盛り当たりの用量値とを比較し、同じか、同じものがなければ、総計値よりも大きくて最も近い用量値に決定する。
(6)(4)で算出した用量値から(3)で算出した総計値を減算し、得られた値に分数(1日当たりの服用数)と日数を乗算することにより、患者用容器120の1本当たりの希釈量を算出する。
【0096】
具体的に、表1に示す処方データのとき、表2に示す患者用容器120のマスタファイルから希釈量を算出する場合について説明する。図12は、表に示す100mlの目盛りを付された患者容器120を示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
(1)処方量の総計は、(薬液Aの1回量10ml×3回分×7日分)+(薬液Bの1回量12ml×3回分×7日分)=462mlとなる。
【0100】
(2)患者用容器120のサイズには、処方量の総計が462mlであるので、500mlを選定する。
【0101】
(3)全ての薬液の1回量の総計値は、薬液Aの1回量10ml+薬液Bの1回量12ml=22mlとなる。
【0102】
(4)各患者用容器120の1目盛り当たりの用量は表3に示す通りとなる。
【0103】
【表3】

【0104】
(5)用量値は、(3)で算出した22mlと、(4)で算出した各用量値とを比較し、22mlよりも大きくて最も近い値である23.8mlに決定する。
【0105】
(6)患者用容器120の1本当たりの希釈量は、(5)で得られた23.8mlから(3)で算出した22mlを減算し、得られた1.8mlに分数3及び日数7を乗算することにより、37.8mlを得る。
【0106】
これにより、選択した患者用容器120に、薬液A及びBと希釈液とを収容すると、丁度、容量である500mlとすることができ、1目盛りが1服用分となる。
【0107】
表4に示す処方データのとき、表5に示すサイズの患者用容器120に分注する場合、次のようにして希釈量を算出する。
【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
すなわち、薬液Aの総量は、4.5ml×3服用分×14日分=189mlとなり、薬液Bの総量は、3.0ml×3服用分×14日分=126mlとなるので、全体の総量は、189ml+126ml=315mlとなる。使用可能な患者用容器120のサイズが、表5に示すように、最大300mlであるので、1本では分注できない。そこで、分注対象を2本とし、1本当たりの分注量として、315ml÷2=157.5mlを得る。
【0111】
自動希釈がオンの場合(1−1)、1本当たりの分注量として算出された157.5mlに最も近くて大きなサイズである200mlの患者用容器120を選定する。そして、表5から1目盛り当たりの用量として表6を得る。
【0112】
【表6】

【0113】
薬液A及びBの1回量の合計が7.5mlであるので、それ以上で最も近い値である9.5mlを選定し、その差である9.5ml−7.5ml=2.0mlから、服用数3回分及び7日分を乗算して(2.0ml×3×7)、1本の患者用容器120当たりの希釈量である42.0mlを得る。
【0114】
(4−2)の場合、前記表4の例で、指定日数が7日であれば、次のようにして希釈調剤(ステップS13)及び原液調剤(ステップS14)を行う。
【0115】
希釈調剤では、前記同様にして、薬液A及びBの7日分の総量を算出する。すなわち、薬液Aの7日分の総量は、4.5ml×3服用分×7日分=94.5mlとなり、薬液Bの7日分の総量は、3.0ml×3服用分×7日分=63.0mlとなるので、7日分の全体の総量は、94.5ml+63.0ml=157.5mlとなる。そこで、200mlの患者用容器120を選定し、7日分の希釈量として42.0mlを得る。これにより、選定した200mlの患者用容器120に原液157.5mlと希釈液42.0mlとを収容すれば、ほぼ200mlに近い199.5mlとなる。
【0116】
また、原液調剤では、薬液A及びBの14日分の総量から7日分の総量を減算した値である157.5mlを、200mlの患者用容器120に収容しておく。そして、患者が実際に使用する際に、希釈液(一般に、水道水)で希釈して200mlとして使用する。これにより、実際の使用に至るまでは、雑菌等の侵入を防止することができ、清潔である。
【0117】
以上のようにして、一連の各処理が終了すれば、処方データに含まれる年齢情報に基づいて希釈液の選定を行う(ステップS15)。ここでは、幼児用希釈液、成人用希釈液、及び、老人用希釈液のいずれに該当するのかを選定する。例えば、幼児用希釈液の場合、シロップを選択し、成人用希釈液の場合、水道水を選択する。なお、年齢が特定できない場合には、成人用希釈液を選定する。
【0118】
最後に、ジャーナルプリンタを駆動し、ラベルを印刷する(ステップS16)。ラベルへの印刷では、設定6に従った用量の単位とする。ここでは、ml表現とするか、あるいは、目盛り表現とするかのいずれか一方の印刷を行う。
【0119】
(他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0120】
例えば、前記実施形態では、薬液供給部3で薬瓶37を平坦な面上に載置したが、載置する面を傾斜させるようにしてもよい。但し、その傾斜角度は、薬瓶37の上方開口部から侵入させたノズル42の先端が、傾斜した薬瓶37の底面の深い位置近傍に到達可能な程度とする必要がある。これによれば、ノズル42によって吸引される薬瓶37内に残留する薬液の量を平坦な場合に比べて少なくすることができる。つまり、無駄に廃棄される薬液の量を抑制することが可能となる。
【0121】
また、薬瓶37内で薬液の吸引及び排出を繰り返すことにより、薬瓶37内の薬液を攪拌するようにしてもよい。これによれば、沈殿しやすいタイプの薬液であっても、特別な構成を付加することなく、吸引する薬液の均質化を図ることができる。
【0122】
また、洗浄部5では、エアー供給筒49でエアーを吹き付けてノズル42に付着した洗浄水や薬液の付着液を除去するようにしたが、エアーを吹き付ける前に、ノズル42を繰り返し上下動させたり、振動させたりすることにより、予め付着液を落下させるようにしてもよい。これにより、エアー供給筒49での付着液の除去時間を短縮化あるいはなくすことができる。
【0123】
また、カメラにより分注位置の患者用容器16を確認するだけとしたが、各薬液の分注時の画像を患者データ、処方データと共に記憶し、監査や履歴として閲覧可能としてもよい。これにより、患者用容器16に複数の薬液を分注する場合であっても、各薬液を供給する毎に記憶させた画像データ等により適切に分注されているか否かを判断する場合等に利用することが可能となる。
【0124】
また、分注部104では、ノズル142とポンプ146との間をチューブによって接続するようにしたが、ノズル142を昇降する際、チューブに弛みが発生し、洗浄液が残留する恐れがある。このため、図34に示すように、ノズル保持部143の上部にポンプ146を固定することにより、ノズル142とポンプ146とを直結し、両者を一体的に昇降させるようにしてもよい。
また、ノズル142とポンプを直結せず、図示しないチューブで接続した場合であっても、チューブが弛まないように両者を昇降させるようにすることも可能である。
【0125】
また、希釈では薬液の濃度を考慮しなかったが、希釈後の薬液の濃度を考慮するのが好ましく、例えば、原液の容量を1.5倍から2倍の範囲で希釈するようにすればよい。
表7は、A薬及びB薬を同一の患者用容器16に12回分処方する場合を示す。
【0126】
【表7】

【0127】
患者用容器16に収容するA薬及びB薬の総量が66mlであるので、希釈の最小値は、66(ml)×1.5=99ml、最大値は、66(ml)×2=132mlとなる。したがって、採用する患者用容器16は、99ml〜132mlを満足するものである必要がある。そこで、前記表2に従って患者用容器16をサイズの小さい方から検索し、99ml〜132mlを満足する最小サイズである100mlの患者用容器16を選定する。また、表5から、100mlの患者用容器16のうち、12回分すなわち目盛り数が12を満足する「4」番の目盛りを選定する。容量が100mlで、「4」番の目盛りでは、1目盛り当たりの容量が8.33mlである。したがって、「4」番の目盛りの1目盛り当たりの容量と、1回量との差は、8.33(ml)−5.5(ml)=2.83mlとなる。したがって、A薬及びB薬を収容する100mlの患者用容器16への希釈液の総量は、2.83(ml)×12=33.96ml≒34mlとなる。
【0128】
このように、前記例では、希釈後の薬液の濃度を考慮し、一定の範囲内に収まるようにしたので、患者が服用する際、原液に近くて苦い等、飲みづらくなるといった不具合を発生させることがない。
【0129】
また、前記図15に示す水剤分注モニタ画面での表示内容に加えて、さらに図33に示すように、「薬品形態を優先」ボタン185、「原液調剤」ボタン186、「希釈調剤」ボタン186を表示させるようにしてもよい。「薬品形態を優先」ボタン185をタッチ操作することにより、各薬局の調剤内規により予めユーザが登録した薬品形態で分注させることができる。薬品形態としては、例えば、薬品Aは原液のまま調剤する、薬品Bは所定の希釈をして調剤する、等が挙げられる。また、「原液調剤」ボタン186をタッチ操作することにより、原液による調剤を行わせることができる。この場合、前述のように、患者が実際に使用する際に、希釈液(一般に、水道水)で希釈して使用する。また、「希釈調剤」ボタン187をタッチ操作することにより、希釈調剤を行わせることができる。この場合の希釈液量は、既に述べたいずれのやり方によっても行うことが可能である(いずれかのやり方を選択できるようにしてもよい。)。
【符号の説明】
【0130】
1…装置本体
2…容器供給部
3…薬液供給部
4…分注部
5…洗浄部
6…上方扉
7…表示パネル
8…下方扉
9…洗浄水供給タンク
10…排水回収タンク
11…ジャーナルプリンタ
12…ラベルプリンタ
13…容器取出口
14…棚
15…凹部
16…患者用容器
17…ガイド部材
18…弾性片
19…押圧片
20…容器保持部
21…支持プレート
22…保持プレート
23…平坦部
24…脚部
25…第1検出センサ
26…プレート本体
27…弾性ガイド(位置決め部材)
28…補助保持部
29…秤量部
30…取出部
31…第2検出センサ
32…LED
33…供給部本体
34…蓋体
35…天板
36…保持容器
37…薬瓶
38…環状体
39…取っ手
40…閉鎖板
41…支持部
42…ノズル
43…ロッド
44…第1レール
45…第2レール
46…第3レール
47…液ダレ防止部
48…洗浄容器
101…装置本体
102…容器供給部
103…薬液供給部
104…分注部
105…洗浄部
106a…右扉
106b…左扉
107…窓部
108…HEPAフィルタ
109…ファン
110…洗浄水供給タンク
111…回収タンク
113…容器取出口
114…シャッター
115…棚
116…キャップ収納ボックス
117…凹部
118a…ジャーナルプリンタ
118b…ラベルプリンタ
119…バーコードリーダ
120…患者用容器
130…取出部
130a…センサ孔
133…供給部本体
134…保持ガイド
135…薬瓶保持部
135a…底面
137…薬瓶
140…閉鎖板
141…軸部
141a…スプリング
142…ノズル
143…ノズル保持部
144…ブロア
145…支持部
146…ポンプ
148…洗浄容器
150…給水管
151…排水口
152…閉鎖板
152a…閉鎖部
152b…押圧受部
153…レバー
160…殺菌部
161…ケーシング
161a…挿通孔
162…殺菌灯
170…詳細ボタン
171…分注モニターボタン
172…患者ボタン
173…分割欄
174…日数欄
175…適用容器欄
176…用法欄
177…薬品名
178…読込モードボタン
179…分注モード選択ボタン
180…機器接続欄
181…停止ボタン
182…保留ボタン
183…未処理一覧ボタン
184…再発行ボタン
185…「薬品形態を優先」ボタン
186…「原液調剤」ボタン
187…「希釈調剤」ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が種類別に収容される複数の薬瓶が配置される薬液供給部と、
患者用容器をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部と、
前記薬液供給部の薬瓶から薬液を吸引して、前記容器供給部の患者用容器に分注するノズルと、前記容器供給部に整列させた患者用容器を押圧するロッドと、を有する分注部と、を備え、
前記容器供給部は、
同一サイズの患者用容器を整列させた状態で保持する複数のガイド部材と、
前記ロッドによってガイド部材から押し出された患者用容器を分注位置に位置きめする位置決め部材と、
を備え、
前記薬液供給部は、各薬瓶の上方開口部を開閉する閉鎖板を備え、
前記ロッドは、前記ノズルが薬瓶に至る前に閉鎖板を開放可能な構成としたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記ロッドによって患者用容器を押圧することにより、位置決め部材によって分注位置に位置決めされた患者用容器が押し出される位置に取出部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記薬液供給部は、前記薬瓶を鉛直方向に対して傾斜させて支持することにより、薬瓶の上方開口部から侵入させたノズルが、薬瓶の底部の最も低い位置近傍に配置可能としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の分注装置。
【請求項5】
前記薬液供給部は、前記薬瓶を傾斜させて支持した状態に位置決めするための付勢手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の分注装置。
【請求項6】
薬液が種類別に収容される複数の薬瓶が配置される薬液供給部と、
患者用容器をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部と、
前記薬液供給部の薬瓶から薬液を吸引して、前記容器供給部の患者用容器に分注するノズルと、前記容器供給部に整列させた患者用容器を押圧するロッドと、を有する分注部と、を備え、
前記容器供給部は、
同一サイズの患者用容器を整列させた状態で保持する複数のガイド部材と、
前記ロッドによってガイド部材から押し出された患者用容器を分注位置に位置きめする位置決め部材と、
を備え、
前記薬液供給部は、各薬瓶の上方開口部を開閉する閉鎖板を備え、
前記ロッドは、前記ノズルが薬瓶に至る前に閉鎖板を開放可能な構成とし、
前記薬瓶は、支軸を中心として回動可能な閉鎖板を備え、
前記閉鎖板は、
支軸から一方に延び、薬瓶の上方開口部を閉鎖可能な閉鎖部と、
支軸から他方に延びて前記ロッドにより押圧され、薬瓶の上方開口部を開放するように閉鎖部による閉鎖を解除させ、薬瓶へのノズルの侵入を可能とする押圧受部と、
からなることを特徴とする分注装置。
【請求項7】
薬液が種類別に収容される複数の薬瓶が配置される薬液供給部と、
患者用容器をサイズ別に整列して配置可能な容器供給部と、
前記薬液供給部の薬瓶から薬液を吸引して、前記容器供給部の患者用容器に分注するノズルと、前記容器供給部に整列させた患者用容器を押圧するロッドと、を有する分注部と、を備え、
前記容器供給部は、
同一サイズの患者用容器を整列させた状態で保持する複数のガイド部材と、
前記ロッドによってガイド部材から押し出された患者用容器を分注位置に位置きめする位置決め部材と、
を備え、
前記薬瓶は、支軸を中心として回動可能な閉鎖板を備え、
前記閉鎖板は、
支軸から一方に延び、薬瓶の上方開口部を閉鎖可能な閉鎖部と、
支軸から他方に延びて前記ロッドにより押圧され、薬瓶の上方開口部を開放するように閉鎖部による閉鎖を解除させ、薬瓶へのノズルの侵入を可能とする押圧受部と、
からなることを特徴とする分注装置。
【請求項8】
前記容器供給部は、分注位置に位置決めされた患者用容器を支持して秤量する秤量部を備え、
前記秤量部は、
前記各ガイド部材の分注位置の下方側を移動可能な基台と、
前記基台上に昇降可能に設けられ、上昇することにより分注位置に位置決めされた患者用容器を支持して秤量する支持台と、
を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の分注装置。
【請求項9】
サイズの異なる患者用容器別に収容可能な薬液の収容量を記憶する記憶手段と、
処方データから、ある薬液の処方量を抽出し、前記記憶手段に記憶した容量から適切なサイズの患者用容器を選択する容器選択手段と、
をさらに備え、
前記容器選択手段は、前記処方量が、前記記憶手段に記憶した最大サイズの患者用容器の収容量を超える場合、処方量を分割して分割処方量を算出し、算出された分割処方量に基づいて収容可能な適正サイズの患者用容器を選択することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の分注装置。
【請求項10】
患者用容器について、収容量と、1服用を示す目盛り数とを互いに関連付けて記憶する記憶手段と、
処方データから、ある薬液の処方量を抽出し、1服用当たりの容量と、前記記憶手段に記憶した収容量と目盛り数から算出した1目盛り当たりの容量とを比較し、希釈液の混合容量を算出する希釈量算出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の分注装置。
【請求項11】
前記処方データは指定日数を含み、
前記希釈量算出手段は、指定日数分の処方量についてのみ希釈液の混合容量を算出することを特徴とする請求項10に記載の分注装置。
【請求項12】
前記ノズルが降下することにより侵入可能な上方開口部を有し、洗浄水が供給される洗浄容器を備えた洗浄部を設け、
前記洗浄容器の上方開口部は、開放可能な閉鎖板で閉鎖され、該閉鎖板は、前記ノズルと共に降下するロッドによって押圧され、前記上方開口部を開放する押圧受部を備えたことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−16569(P2012−16569A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19916(P2011−19916)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【分割の表示】特願2011−506077(P2011−506077)の分割
【原出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】