説明

分級触媒組成物、装置、及び方法

本開示は、触媒組成物、特に低細粒触媒組成物を産生する装置及びプロセスに関する。クロスフロー分級デバイスは、大型の触媒粒子を触媒細粒から分離するために使用される。触媒組成物のスラリーは、前記クロスフロー分級デバイス中に導入される。分級触媒組成物は、前記触媒スラリーにクロスフロー分級プロセスを受けさせた結果として産生された残余分から回収される。分級前及び/又は分級後の触媒スラリーの固体含有率は、NMR分光法によって決定される。前記固体含有率の決定は、洗浄液の前記触媒組成物から前記スラリー液相中への移行を説明する。前記分級触媒組成物は、低い細粒含有率を有し、低いポリマー細粒含有率を有するポリオレフィン組成物を産生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年8月19日に出願された米国特許出願第61/090,098号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、分級触媒組成物を形成する方法及び装置に関し、さらに分級触媒組成物によって産生されたポリオレフィン組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
重合触媒、例えばチーグラーナッタ重合触媒は、微粒子又は粒状形のプロ触媒を含む。これらのプロ触媒は、細粒として知られるある量の小型粒子を含有することが多い。細粒は重合プロセスの間に小型ポリマー粒子を産生するため、細粒の存在は問題をはらむ。小型ポリマー粒子は、ポリマー製造の間に製造機器のダスティング(dusting)及び目詰まりを引き起こす。触媒細粒はさらに、汚損などの製造上の困難や他の問題の一因である。
【0004】
プロ触媒からの細粒除去の従来の手法は、水簸(elutriation)、沈降、及び湿式ふるい分けを含む。しかし、これらの手法は、高いコスト、不十分な作用、及び触媒粒子の精密なサイズ分けができないことを含む著しい欠点を有する。このような欠点は、粒子が脆弱性であるか、又は相互に引力を有するときに悪化する。少量の触媒細粒を含有する分級触媒組成物を生じる細粒除去プロセスが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、触媒組成物、及び特に低細粒触媒組成物を産生する装置及びプロセスに関する。本開示の装置及びプロセスの細粒除去は、触媒組成物に存在する触媒細粒の量を著しく減少させる能力を提供する。本開示は、ポリマー細粒の低い含有率を有するポリオレフィン組成物であって、低細粒触媒組成物によって産生されたポリオレフィン組成物にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1実施形態において分級触媒組成物を産生するプロセスが提供される。本プロセスは、触媒組成物で構成されたスラリーを分級デバイス中に導入することを含む。分級デバイスは、クロスフロー分級デバイスである。触媒組成物は、触媒粒子、触媒細粒、及び場合により隆起を有する触媒粒子により構成される。分級デバイスはスラリーから触媒細粒を除去して、残余分(retentate)を形成する。本プロセスは、残余分から分級触媒組成物を回収することをさらに含む。回収された分級触媒組成物は、分級触媒組成物の1重量%未満のF10.5値を有する。
【0007】
1実施形態において、最初の触媒組成物は、1重量%を超えるF10.5値を有する。本プロセスは、分級触媒組成物の約0.1重量%〜1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む。
【0008】
1実施形態において、本プロセスは触媒粒子を研磨することを含む。クロスフロー分級デバイスは、触媒粒子に付着した触媒細粒を吸引力(attractive forces)によって分離する。触媒粒子からいったん分離されると、触媒細粒はクロスフロー分級デバイスのフィルタ要素を透過物と共に通過する。クロスフロー分級デバイスは、触媒粒子から隆起も除去する。それにより研磨は、非分級触媒組成物と比較したときに、球状、又は実質的に球状の触媒粒子のより大きい重量パーセンテージを有する分級触媒組成物を生じる。
【0009】
1実施形態において、クロスフロー分級デバイスは、クロスフローフィルタ要素を有するクロスフローフィルタデバイスを備えたクロスフロー濾過アセンブリである。本プロセスは、約0.2m/秒〜約2.0m/秒の接線速度にて触媒スラリーをクロスフローフィルタ要素に沿って移動させることを含む。クロスフローフィルタ要素孔径よりも小さい触媒細粒は、クロスフローフィルタ要素を透過物として通過して、より大型の触媒粒子から分離される。より大型の触媒粒子は、残余分中に保持され、続いて回収される。さらなる実施形態において、本プロセスは、バルブレスポンプにスラリーを通過させることによって、スラリーをクロスフローフィルタ中に導入することを含む。
【0010】
1実施形態において、クロスフロー分級デバイスは、分級されるスラリーと接触した動的(dynamic)フィルタ要素を備えた動的濾過デバイスである。本プロセスは、動的フィルタ要素を移動させスラリーに対して約0.1m/秒〜約10.0m/秒の相対接線速度を生成することを含む。動的フィルタ要素孔径よりも小さい触媒細粒は、動的フィルタ要素を透過物として通過して、より大型の触媒粒子から分離される。より大型の触媒粒子は、残余分中に保持され、続いて回収される。
【0011】
1実施形態において、重合プロセスが提供される。重合プロセスは、触媒組成物のスラリーをクロスフロー分級することを含む。クロスフロー分級は、クロスフロー濾過又は動的濾過によって行われる。より大型の触媒粒子を含有する残余分は保持される。本プロセスは、分級触媒組成物を残余分から回収することと、続いてポリオレフィン組成物を形成する重合条件下で分級触媒組成物をオレフィンと反応させることとを含む。重合プロセスは、約0.1重量%〜約2重量%のF250値を有するポリオレフィン組成物を形成する。
【0012】
1実施形態において、重合プロセスは、残余分から分級触媒組成物の1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む。分級触媒組成物は、重合リアクタ中への導入の前又は間に、共触媒及び/又は選択性制御剤、並びにその組合せと組合され得る。
【0013】
1実施形態において、触媒組成物を分級して、ポリオレフィンを形成するための装置が提供される。装置は、触媒組成物のスラリーを収容して、分級触媒組成物を保持するのに適したクロスフロー分級デバイスを含む。クロスフロー分級デバイスは、クロスフロー濾過デバイス又は動的濾過デバイスであり得る。装置は、重合リアクタも含む。重合リアクタは、分級触媒組成物及びオレフィンを収容するのに適しており、ポリオレフィン組成物を形成するのに十分な重合条件も提供する。重合リアクタは、流動床(気相)重合リアクタであり得る。装置は、スラリー供給源も含み得る。
【0014】
1実施形態において、触媒組成物が提供される。触媒組成物は、分級触媒組成物の1重量%未満のF10.5値を有する複数の分級触媒組成物粒子を含む。分級触媒組成物は、重合条件下で分級触媒組成物にオレフィンを接触させたときに、約0.1重量%〜約2重量%のF250値を有するポリオレフィン組成物を形成する。
【0015】
1実施形態において、触媒スラリー中の固体含有率を決定する方法が提供される。本方法は、触媒組成物の移行補正因子(ファクター、factor)を調製する方法を含む。移行補正因子は、触媒スラリーが形成されるときに固体触媒組成物からスラリー液相中に移行する洗浄液の現象を補正する数値である。触媒組成物を含有する触媒スラリーの液体重量パーセント値は、NMR分光法によって決定される。本方法は、液体重量パーセント値及び移行補正因子から触媒スラリーの固体重量パーセント値を計算することを含む。
【0016】
NMR分析装置は、触媒スラリーの液相に存在する水素のNMR応答信号を生成する。1実施形態において、NMR分析装置は、NMR応答信号の生成前に較正される。
【0017】
移行補正因子の調製は、触媒組成物の固体重量パーセント値が既知の標準触媒スラリーを形成することと、標準触媒スラリーの測定された固体重量パーセント値を決定することとを含む。測定された固体重量パーセント値は、NMR分析装置によって生成される。本方法は、既知の固体重量パーセント値を測定された固体重量パーセント値で割り、移行補正因子を得ることを含む。
【0018】
1実施形態において、移行補正因子の調製は、触媒組成物の洗浄液重量パーセント値を決定することを含む。洗浄液体重量パーセント値は、既知の固体重量パーセント値から引かれる。
【0019】
1実施形態において、本方法は、触媒スラリーの複数の試料を提供することと、各試料をNMR分析装置に個別に配置することによって各試料の液体重量パーセント値を決定することとを含む。本方法は、各試料からそれぞれの液体重量パーセント値を計算することをさらに含む。各液体重量パーセント値に移行補正値を個別に掛けて、触媒スラリーの複数の固体重量パーセント値を得る。複数の固体重量パーセント値の標準偏差は、約0.4%未満である。
【0020】
本開示は、触媒組成物を産生するプロセスを提供する。1実施形態において、触媒組成物の個別の複数のバッチを産生することを含む、触媒組成物を産生するプロセスが提供される。各バッチで測定された触媒組成物の特性に基づいて、複数のバッチのデータセットの分散値(variance value)を計算する。本プロセスは、複数の個別のバッチを共に混合することと、マスタバッチを形成することとを含む。マスタバッチは、複数のマスタサブバッチに分割される。本プロセスは、複数のマスタサブバッチの分散値を減少させることを含む。
【0021】
1実施形態において、混合デバイスが提供される。混合デバイスは、回転軸に沿って回転可能なチャンバを含む。第1の環状部材は、回転軸に沿って延在し、チャンバ内部に位置する内部端を有する。第2の環状部材は、チャンバ内部に存在し、第1の環状部材に対して実質的に垂直である。回転式環状継手部材は第1の環状部材の内部端及び第2の環状部材を動作可能に連結して、回転式環状継手は、第1の環状部材に対する第2の環状部材の回転を可能にする。
【0022】
1実施形態において、混合デバイスは、触媒組成物(又は触媒スラリー)、又は触媒組成物のバッチのチャンバ中への/チャンバからのサブサーフェス(sub-surface)充填/排出を可能にする。
【0023】
本開示の利点は、オレフィン重合のための改良された触媒組成物の提供である。
【0024】
本開示の利点は、触媒粒子を破損しない触媒分級プロセスの提供である。
【0025】
本開示の利点は、触媒細粒の低い含有率を有する分級触媒組成物の提供である。
【0026】
本開示の利点は、改良されたオレフィン重合プロセスの提供である。
【0027】
本開示の利点は、ポリマー細粒の低い含有率を有するポリオレフィンを産生するオレフィン重合プロセスの提供である。
【0028】
本開示の利点は、非分級触媒組成物と比較して、増加した量の球状の、又は実質的に球状の触媒粒子を有する分級触媒組成物の産生である。
【0029】
本開示の利点は、所望のサイズの触媒組成物粒子を正確に提供する能力である。
【0030】
本開示の利点は、触媒スラリーの固体含有率を決定する改良された方法である。
【0031】
本開示の利点は、触媒組成物からスラリー液相中へ洗浄液の移行を説明する触媒スラリーの固体含有率を決定する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本開示の1実施形態による触媒組成物の概略図である。
【図2】図2は、本開示の1実施形態によるクロスフロー濾過アセンブリの概略図である。
【図3】図3は、本開示の1実施形態によるクロスフローフィルタ要素の断面図である。
【図4】図4は、本開示の1実施形態による動的濾過システムの概略図である。
【図5】図5は、本開示の1実施形態による動的濾過デバイスの断面図である。
【図6】図6は、本開示の1実施形態による触媒組成物の概略図である。
【図7】図7は、本開示の1実施形態による分級触媒組成物の概略図である。
【図8】図8は、本開示の1実施形態による鉱油の13C NMRスペクトルである。
【図9】図9は、本開示の1実施形態による触媒スラリーの13C NMRスペクトルである。
【図10】図10は、本開示の1実施形態による触媒組成物を製造するプロセスのグラフ表示である。
【図11】図11は、本開示の1実施形態による混合デバイスの斜視図である。
【図12】図12は、図11の線12−12に沿った断面図である。
【図13】図13は、図12の線13−13に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に挙げるいずれの数値範囲も、任意の下限値と任意の上限値との間に少なくとも2単位の隔離があるという条件で、1単位刻みで下限値及び上限値からのすべての値を含む。一例として、組成的、物理的又は他の特性、例えば分子量、メルトインデックスなどが100から1,000までであることが示される場合、すべての個別の値、例えば100、101、102など及び下位範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などは、本明細書で明示的に列挙されることが意図される。1未満である値を含有する、又は1を超える分数(fractional numbers)(例えば1.1、1.5など)を含有する範囲では、1単位は必要に応じて、0.0001、0.001、0.01又は0.1と見なされる。10未満の1桁の数(例えば1〜5)を含有する範囲では、1単位は通例0.1と見なされる。これらは特に意図されることの単なる例であり、列挙された最低値と最高値との間の数値の考えられるすべての組合せは、本出願で明示的に示されると見なされる。言い換えれば、本明細書に挙げるいずれの数値範囲も、示された範囲内の任意の値又は下位範囲を含む。数値範囲は、本明細書で議論するように、密度、構成成分の重量パーセント、タンデルタ、分子量及び他の特性に関して引用されている。
【0034】
逆に記載されていない限り、文脈から暗黙的でない限り、又は当分野で慣例的でない場合、すべての部及びパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は、本明細書の出願日現在で最新である。米国特許実施の目的のために、本明細書で引用した任意の特許、特許出願又は刊行物の内容は、特に構造、合成技法及び当分野での一般知識の開示に関して、本明細書におけるその全体が参照により本明細書に組み込まれる。「含む」という用語は、組成物又は混合物に関して本明細書で使用される場合に、他の任意の化合物又は構成成分の追加の存在を除外することを意図しない。「芳香族」又は「アリール」という用語は、(4δ+2)個のπ原子を含有する多原子環式環系を指し、δは1以上の整数である。
【0035】
「組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物を含む物質の混合物、並びに組成物の物質から形成された反応生成物及び分解生成物を含む。
【0036】
「ポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、同じ種類であろうと、又は異なる種類であろうと、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。それゆえポリマーという総称は、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常使用される、ホモポリマーという用語、コポリマー(2つ以上のモノマー)、及び以下で定義されるようなインターポリマーという用語(3つ以上のモノマー)を含む。
【0037】
1実施形態において、触媒組成物を産生するプロセスが提供される。本プロセスは、触媒組成物のスラリーをクロスフロー分級デバイス中に導入することを含む。触媒組成物は、触媒粒子及び触媒細粒を含む。クロスフロー分級デバイスは、スラリーから触媒細粒を除去して、残余分を形成する。分級触媒組成物は、残余分から回収される。分級触媒組成物は、分級触媒組成物の重量に基づいて、1重量%未満のF10.5値を有する。
【0038】
本明細書で使用する場合、「スラリー」は、液体中に分散された触媒組成物粒子の液体中固体型懸濁物である。触媒組成物粒子は、触媒粒子、触媒細粒、場合により隆起を有する触媒粒子(particle with protuberances)(PWP)、及びその組合せである。液体は、水、アルコール、エーテル、炭化水素、塩素化炭化水素、油、又は上記の任意の組合せであり得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、「触媒組成物」は、重合条件下でポリオレフィンと接触したときに、ポリオレフィンを形成する組成物である。触媒組成物は場合により、共触媒、内部電子供与体、外部電子供与体、選択性制御剤、活性制限剤、及びその任意の組合せを含み得る。好適な触媒組成物の非制限的な例は、チーグラーナッタ触媒組成物、幾何拘束触媒組成物、及びメタロセン触媒組成物を含む。
【0040】
1実施形態において、触媒組成物はチーグラーナッタ触媒組成物である。本明細書で使用する場合、「チーグラーナッタ触媒組成物」は、(1)周期律表第IV族〜第VIII族の元素の遷移金属化合物(プロ触媒)及び(2)周期律表第I族〜第III族の金属の有機金属化合物(共触媒)の組合せである。好適なチーグラーナッタプロ触媒の非制限的な例は、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、及びジルコニウムのハライド又はオキシハライドを含む。チーグラーナッタ共触媒の非制限的な例は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、及びマグネシウムのヒドリド、アルキル、又はアリールを含む。
【0041】
1実施形態において、マグネシウム部分を含むプロ触媒前駆体は、プロ触媒組成物を形成するために使用され得る。このようなマグネシウム部分の供給源は、無水マグネシウムクロリド、マグネシウムアルコキシドもしくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、又は炭酸化マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドを含む。マグネシウム部分の供給源の非制限的な例は、マグネシウムジ(C1−4)アルコキシド、特にジエトキシマグネシウムである。加えて、前駆体はチタン部分を含み得る。好適な供給源は、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド、チタンアルコキシハライド、及びチタンハライドを含む。前駆体は、1つ又はそれ以上のマグネシウムジ(C1−4)−アルコキシド及び1つ又はそれ以上のチタンテトラ−(C1−4)アルコキシドを含み得る。
【0042】
プロ触媒前駆体を作製する各種の方法が当分野で公知である。これらの方法は特に米国特許出願公開第6,825,146号、同第5,034,361号;同第5,082,907号;同第5,151,399号;同第5,229,342号;同第5,106,806号;同第5,146,028号;同第5,066,737号;同第5,077,357号;同第4,442,276号;同第4,540,679号;同第4,547,476号;同第4,460,701号;同第4816,433号;同第4,829,037号;同第4,927,797号;同第4,990,479号;同第5,066,738号;同第5,028,671号;同第5,153,158号;同第5,247,031号;同第5.247,032号、及び別の箇所に記載されている。調製は特に、上記の混合されたマグネシウム及びチタンアルコキシドのハロゲン化を含み、所望の形態の特定の低分子量組成物の形成を補助する「クリッピング剤(clipping agent)」と呼ばれる、1つ又はそれ以上の化合物の使用を含み得る。好適なクリッピング剤の例は、トリアルキルボレート、特にトリエチルボレート、フェノール性化合物、特にクレゾール、及びシランを含む。
【0043】
1実施形態において、プロ触媒前駆体は、式MgTi(ORの混合マグネシウム/チタン化合物(MagTi)であり、式中、Rは、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカル又はCOR’であり、R’は、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり;各OR基は、同じであるか又は異なり;Xは独立して、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5〜6、又は2〜4であり;fは、2〜116又は5〜15であり;及びgは、0.5〜116、又は1〜3である。前駆体は、その調製で使用した反応混合物からのアルコールの除去による制御沈殿によって調製される。1実施形態において、反応媒体(medium)は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も詳細にはクロロベンゼンとアルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤は、チタンテトラブロミド、チタンテトラクロリド又はチタントリクロリド、特にチタンテトラクロリドを含む。ハロゲン化で使用した溶液からのアルカノールの除去は、特に所望の形態及び表面積を有する固体前駆体の沈殿を生じる。さらに、得られた前駆体は、粒径が特に均一である。
【0044】
前駆体は、ハロゲン化剤とのさらなる反応(ハロゲン化)(ステップC)及び内部電子供与体の包含によって、固体プロ触媒に変換される。好適なハロゲン化剤は、式Ti(ORを有するチタンハライドであり、式中、R及びXは、上で定義した通りであり、fは0〜4の整数であり;hは、0〜4の整数であり;並びにe+hは3又は4である。1実施形態において、ハロゲン化剤はTiClである。1実施形態において、ハロゲン化は、塩素化又は非塩素化芳香族液体、例えばジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンの存在下で行われる。実施形態において、ハロゲン化は、40〜60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiClを含む、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族液体の混合物の使用によって行われる。
【0045】
(ステップC)の間に、所望ならば、反応混合物が加熱され得る。1実施形態において、前駆体及びハロゲン化剤は、0℃〜60℃、又は20℃〜30℃の温度にて最初に接触され、加熱は0.1〜10.0℃/分の速度で、又は1.0〜5.0℃/分の速度で開始される。内部電子供与体は後に、ハロゲン化剤と前駆体との間の最初の接触時間の後に添加され得る。ハロゲン化の温度は、60℃〜150℃(又はその間の任意の値もしくは下位範囲(subrange therebetween))、又は90℃〜120℃である。ハロゲン化は、電子供与体の実質的非存在下で、5〜60分の、又は10〜50分の期間にわたって継続され得る。
【0046】
内部電子供与体は、カルボン酸エステル(例えばエチルベンゾアート)、ジエーテル、スクシネート、ジアルコキシベンゼン、又はジオールエステルであり得る。1実施形態において、内部電子供与体は、カルボン酸エステル、例えば芳香族ジカルボン酸のC1−10アルキルジエステル、特にフタル酸又はテレフタル酸のC1−4アルキルジエステルである。好適なカルボン酸エステルの非制限的な例は、ジエチルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジイソプロピルテレフタレート、及びジイソブチルテレフタレートを含む。上述の化合物の混合物は、所望ならば使用され得る。1実施形態において、内部電子供与体はジ(イソブチル)フタレートである。十分な内部電子供与体が通常提供されるので、調製物のこの段階における固体プロ触媒前駆体に存在する内部電子供与体のマグネシウムに対するモル比は、約0.01:1〜約1:1、又は約0.05:1〜約0.5:1、又は約0.03:1〜約0.1:1である。
【0047】
プロ触媒前駆体、ハロゲン化剤及び内部電子供与体が接触する方式は様々であり得る。実施形態において、プロ触媒前駆体はハロゲン化剤及び塩素化芳香族化合物を含有する混合物と最初に接触する。得られた混合物は撹拌され、所望ならば加熱され得る。次に、内部電子供与体は、前駆体から単離又は回収されずに、同じ反応混合物に添加される。上記のプロセスは、自動化プロセス制御によって制御された各種の成分の添加によって、単一リアクタ内で行われ得る。
【0048】
前駆体と内部電子供与体との接触時間は、少なくとも25℃又は少なくとも50℃、又は少なくとも60℃の温度から150℃までの、又は120℃までの、又は115℃までの、又は110℃までの温度にて、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも1時間である。
【0049】
得られた前駆体は次に回収されて、同じ(又は異なる)内部電子供与体の非存在下(又は存在下)で、塩素化芳香族化合物中のハロゲン化剤の混合物と、少なくとも25℃の、又は少なくとも50℃の、又は少なくとも60℃の温度から150℃までの、又は120℃までの、又は115℃までの温度にて、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は1時間まで、又は45分まで、又は30分まで1回以上接触させる(ステップD)。
【0050】
上記のハロゲン化手順の後、得られた固体プロ触媒組成物は、最終プロセスで使用した反応媒体から例えば濾過によって分離されて、湿潤濾過ケークを生じる。次に湿潤濾過ケークは、未反応TiClを除去するために液体希釈剤ですすがれ得るか、又は洗浄され得、所望ならば残留液体を除去するために乾燥され得る。通例、固体の交換プロ触媒組成物は、液体炭化水素、例えば脂肪族炭化水素、例えばイソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、又はオクタンである、「洗浄液」によって1回以上洗浄される。次に固体の交換プロ触媒組成物は、さらなる貯蔵又は使用のために、分離され、乾燥されるか、又は炭化水素、特に比較的重い炭化水素、例えば鉱油中でスラリー化することができる。
【0051】
得られた固体プロ触媒組成物は、総固体重量に基づいて約0.1重量パーセント〜約6.0重量パーセントの、又は約1.0重量パーセント〜約4.5重量パーセントの、又は約1.5重量パーセント〜約3.5重量パーセントのチタン含有率を有する多孔性粒子の形である。固体の交換プロ触媒組成物におけるチタンのマグネシウムに対する重量比は好適には、約1:3〜約1:160、又は約1:4〜約1:20、又は約1:6〜1:13である。内部電子供与体は、約0.005:1〜約1:1の、又は約0.04:1〜約0.4:1の内部電子供与体のマグネシウムに対するモル比でプロ触媒組成物中に存在し得る。
【0052】
1実施形態において、本明細書のプロ触媒は、式MgTi(OR(ED)の混合マグネシウム/チタン化合物であり、式中、Rは、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカル又はCOR’であり、R’は、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり;各OR基は、同じであるか又は異なり;Xは独立して、塩素、臭素又はヨウ素であり;EDは、内部電子供与体、例えばジイソブチルフタレートであり;dは、0.5〜56であり;fは、0〜2、又は0〜0.5、又は0.01〜0.3であり;gは、3〜116であり;及びhは、0.005〜1.5である。
【0053】
プロ触媒組成物は、固体プロ触媒の単離の前又は後に、以下の手順の1つ又はそれ以上によってさらに処理され得る。固体プロ触媒組成物は所望ならば、さらなる量のチタンハライド化合物と接触され得る(ハロゲン化され得る);これはメタセシス条件下で酸塩化物、例えばフタロイルジクロリド又はベンゾイルクロリドと交換され得、すすぎ又は洗浄され、加熱、処理、又はエージングされ得る。上記の追加の手順は、任意の順序で組合され得るか、又は別個に使用され得るか、全く無くてもよい。
【0054】
いかなる特定の理論によって縛られることを望むものではないが、先に形成されたプロ触媒組成物をチタンハライド化合物、特にハロ炭化水素希釈剤によるその溶液と接触させることによるさらなるハロゲン化が、おそらく、上記の希釈剤に溶解性である、ある不活性金属化合物の除去によって、プロ触媒組成物の所望の修飾を生じることが考えられる。したがって1実施形態において、プロ触媒は単離又は回収の前に、ハロゲン化剤、例えばチタンハライド及びハロ炭化水素希釈剤、例えばTiCl及びクロロベンゼンの混合物と1回以上接触される。
【0055】
触媒組成物は、約10μm〜約60μmの粒径分布D50を有する。本明細書で使用する場合、「D50」は、試料粒子体積の50%が示した粒径範囲を超えるような粒子分布である。
【0056】
触媒組成物は複数の粒子であり、粒子は各種のサイズを有する。図1に示すように、触媒組成物3は複数の粒子:隆起を有する触媒粒子(PWP)5、触媒粒子7、及び触媒細粒9を含む。本明細書で使用する場合、「触媒細粒」は、カリフォルニア州サンタバーバラのParticle Sizing Systemsから入手可能なAccusizer粒子サイズ測定装置で測定された場合に、10.5μm以下の最大直径を有する粒子である。Accusizer装置は光遮蔽を使用して、約0.5μm〜約2500μmのサイズ範囲で、粒子を1度に1個ずつカウント及びサイズ測定する。所与の試料は、試料中で1度に1個の粒子をAccusizerで「見る」ときまで、自動的に希釈される。本明細書で使用する場合、「最大直径」は、粒子表面上の2点の間の最大直線距離である。実施形態において、PWP 5及び粒子7は、約10μm〜約100μm、又は約20μm〜約90μmの最大直径を有する。PWP 5は、1個以上の隆起6を有する。いかなる特定の理論によって縛られることを望むものではないが、細粒の供給源はPWP 5からの隆起6の摩滅であると考えられる。言い換えれば、処理及び/又は重合の間のPWP 5に対する物理的な力が隆起6をPWP 5から破断させる。PWPからいったん離脱すると、隆起6は細粒9となり得る。触媒細粒の他の原因は、触媒の取扱い及び重合から生じる応力を含む。
【0057】
触媒組成物を産生する本プロセスは、触媒組成物粒子のスラリーを分級デバイス中に導入することを含む。1実施形態において、スラリーは、プロ触媒を回収するために使用する1回以上のすすぎ操作の間に形成された懸濁物(ステップEにおいて)又は固体プロ触媒の回収に続いて固体粒状化生成物として形成された懸濁物である。
【0058】
1実施形態において、スラリーは、約10重量%〜約40重量%の触媒組成物を、又は約20重量%〜約35重量%の、もしくは約25重量%の、鉱油に懸濁された触媒組成物粒子を含む。さらなる実施形態において、触媒組成物粒子に所望のサイズ範囲が選択され、スラリーに2つの異なるサイズの濾過媒体を使用して2回の濾過操作を受けさせて、所望のサイズ範囲外のサイズの粒子を除去する。
【0059】
スラリーは、クロスフロー分級デバイス中に導入される。本明細書で使用する場合、「クロスフロー分級デバイス」は、(1)液体中に懸濁された固体粒子と(2)同じ液体に接触した多孔性固体濾過媒体との間に、相対接線運動を与えるデバイスである。クロスフロー分級デバイスは、特定の粒径範囲をそれぞれ含有する2つ以上のクラスに粒子を分離する。それに応じて、「クロスフロー分級」、「クロスフロー分級すること」、又は「クロスフローにより分級すること」は、触媒懸濁物と多孔性濾過媒体との間に相対接線運動を与えることと、1つの粒径のクラスを濾過媒体を通じて元の懸濁物から移動させることとによって、液体中固体懸濁物中の粒子を、特定の粒径範囲の2つ以上のクラスに分離するプロセスである。したがって、「分級触媒組成物」は、分級プロセス、例えばクロスフロー分級を受けた触媒組成物であり、したがって特定の粒径範囲内の大部分の粒子を含有する。
【0060】
クロスフロー分級デバイスは、クロスフロー濾過デバイス又は動的濾過デバイスである。実施形態において、クロスフロー分級デバイスは、図2に示すようなクロスフロー濾過アセンブリ10である。それに応じて、低細粒触媒組成物を産生するプロセスは、スラリーにクロスフロー濾過を受けさせることを含む。「クロスフロー濾過」又は「クロスフロー濾過すること」は、懸濁物がフィルタ要素の多孔性表面に対して平行に、又は実質的に平行に流れる分離プロセスである。クロスフロー濾過では、スラリーは、フィルタ要素を横切って、又はフィルタ要素に沿って接線方向に移動する。クロスフローフィルタ要素の孔径よりも小さい、スラリー中に存在する粒子は、フィルタ要素を液体と共に透過物として通過する。クロスフローフィルタ要素を通過しないものはすべて残余分である。クロスフローフィルタ要素を横切るスラリーの接線運動は、フィルタ要素の中/表面に捕捉された粒子がフィルタ要素に沿って又はフィルタ要素から脱離して移動して、フィルタ要素の孔から離れて(away)移動できるようにする。それゆえクロスフロー濾過は、スラリーの粒子によるクロスフローフィルタ要素孔の遮断を防止する。フィルタ要素孔の粒子による閉塞を避けることによって、クロスフロー濾過は、粒子の正確及び精密な分級を促進する。1実施形態において、クロスフロー分級は、単純な形態及び限定された深さで、ねじれのない、又は実質的にない特定の(well-defined)流路を備えたクロスフローフィルタ要素によって達成される。
【0061】
ポンプ12は、図2に示すようなスラリー源18からのスラリーを収容する。ポンプ12は、スラリーをクロスフローフィルタデバイス14中に導入して、スラリーをクロスフローフィルタ要素16に対して接線方向に移動させて、スラリーがクロスフローフィルタ要素16に沿って、又はクロスフローフィルタ要素16に対して平行に、又は実質的に平行に流れるようにする(図3)。図3に示すように、クロスフローフィルタ要素16を通過する触媒細粒32及び液体34は、透過物リザーバ20に収集される(図2)。クロスフローフィルタ要素16を通過しない触媒粒子36及び液体34は残余分を形成する。1実施形態において、残余分は、スラリー供給源18、ポンプ12、及びクロスフローフィルタデバイス14を所望に応じて1回以上循環する。
【0062】
1実施形態において、クロスフローフィルタ要素を通じた透過物の除去は、表面速度又は流束(単位面積当たりの流量)で所望のとおりに制御される。クロスフローフィルタ要素を通じたプロセススラリーの表面速度は約0.0002m/秒〜約0.002m/秒である。さらなる実施形態において、細粒は、透過物から除去又はそうでなければ分離することができる。非制限的な濾過技法は、濾過、蒸発、デカンテーション及びその組合せを含む。これによって好都合に、懸濁液をリサイクルして、クロスフロー分級プロセスで再使用することができる。
【0063】
1実施形態において、本プロセスは、スラリーを希釈剤で希釈してプロセススラリーを形成することを含む。本明細書で使用する場合、「プロセススラリー」は、懸濁化液体中に懸濁された触媒組成物の粒子である。「懸濁化液体」は、鉱油(触媒/鉱油スラリーからの鉱油)及び希釈剤の混合物である。希釈剤供給源22からの希釈剤は触媒スラリーと混合されて、プロセススラリーを形成し得る。プロセススラリーはクロスフローフィルタデバイス14中に導入される。希釈剤に好適な液体の非制限的な例は、液体炭化水素、例えば液体脂肪族炭化水素及び液体芳香族炭化水素を含む。1実施形態において、希釈剤は、ペンタン、イソペンタン、オクタン、イソオクタン、及び/又はトルエンである。希釈剤は、クロスフローフィルタアセンブリ10を通じた流体流を促進して、クロスフローフィルタ要素16の目詰まりも防止する。クロスフロー濾過は、不活性環境において、及び/又は窒素もしくは希ガスなどの不活性ガスブランケット下で行われ得る。実施形態において、クロスフロー濾過は、窒素ブランケット26下で行われる。秤量デバイス28、例えば天秤を使用して、クロスフロー濾過から回収された透過物の量が決定され得る。
【0064】
1実施形態において、クロスフローフィルタ要素16は、約10μm〜約100μmの、又は約20μm〜約80μmの、又は約40μmの孔径を有する。孔径の選択が、クロスフローフィルタ要素16を通過することができる触媒細粒のサイズに影響を及ぼし得ることが理解される。1実施形態において、クロスフローフィルタ要素16は、Fuji Filter Mfg.Co.,Ltd.から入手可能な、40μm孔開口を有するFujiloyクロスフローフィルタ要素である。
【0065】
1実施形態において、ポンプ12は、ポンプが触媒組成物中に存在するPWP 5及び/又は触媒粒子7の摩滅を引き起こさないように選択される。驚くべきことに、バルブレスポンプは触媒組成物の摩滅を引き起こさないことが見出されてきた。バルブレスポンプの非制限的な例は、バルブレスピストンポンプ、容積移送式ポンプ、及び/又はバルブレス計量ポンプを含む。それに応じて、本プロセスの1実施形態は、スラリーをバルブレスポンプに通過させることと、分級の間に(すなわちクロスフロー濾過の間に)触媒組成物の摩滅を回避又はそうでなければ防止することとを含む。
【0066】
1実施形態において、本プロセスは、触媒組成物の摩滅を回避するスラリーの接線速度を選択することを含む。約0.2m/秒〜約2.0m/秒の、又は約0.4m/秒〜約0.8m/秒の接線速度でクロスフローフィルタ要素16に沿ってスラリーをポンプ注入することが触媒組成物の摩滅を引き起こさず、効率的な分級を促進することが見出されている。さらなる実施形態において、ポンプ12によって触媒組成物に加えられる圧力は、摩滅を回避しながら、同時に触媒細粒9にフィルタ要素16を強制的に通過させるのに十分な圧力を供給するように選択され得る。またさらなる実施形態において、スラリー供給源18内部の圧力が上昇されて、透過物にフィルタ要素16を所望の流束で通過させる。このように、ポンプ12は懸濁物に対して圧力を与える必要がない。むしろポンプ12は、懸濁物に所定の速度でフィルタ要素16を通過させるだけである。このことは触媒摩滅をさらに減少させる。
【0067】
本プロセスは、残余分から分級触媒組成物を回収することを含む。残余分からの分級触媒組成物の回収は、濾過及び/又は真空濾過によって達成され得る。回収された分級触媒組成物は、当分野で公知であるように、洗浄され、必要に応じて乾燥され得る。
【0068】
1実施形態において、分級触媒組成物は、1重量%未満の、又は0重量%〜1重量%未満の、又は約0.1重量%〜約1重量%未満のF10.5値を有する。本明細書で使用する場合、「F10.5値」は、分級触媒組成物の重量に基づく、10.5μm以下の容積平均粒径を有する触媒組成物粒子の粒子の重量パーセントである。F10.5値は、カリフォルニア州サンタバーバラのParticle Sizing Systemsから入手可能なAccusizer粒子サイズ測定装置を用いて決定される。さらなる実施形態において、最初又は分級前の触媒組成物は、1重量%を超えるF10.5値を有し、本プロセスは、1重量%未満の、又は約0.1重量%〜1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む。それゆえ「低細粒触媒組成物」は、1重量%未満であるF10.5値を有する。
【0069】
1実施形態において、クロスフロー分級デバイスは、図4に示すような、動的濾過システム50で使用されるような動的濾過デバイスである。本明細書で使用する場合、「動的濾過」は、スラリーと接触したフィルタ要素が回転、振動、又は往復運動して、フィルタ要素に対するスラリーの相対接線流を引き起こす分離プロセスである。固体粒子は、フィルタ要素及び/又は追加の浸漬されたインペラ(impeller)の運動を通じて、液体に均質に懸濁される、又は実質的に均質に懸濁される。1実施形態において、スラリーはプロセススラリーである。鉱油の希釈剤に対する比は、有効な粘度及び固体濃度を達成するために十分である。
【0070】
1実施形態において、圧力は、例えば圧縮ガスを使用してプロセススラリーに印加されて、動的フィルタ要素にわたって圧力勾配を達成する。圧力勾配は動的フィルタ要素を通じて透過物の表面速度又は流束を生じさせ、プロセススラリー流に動的フィルタ要素の開口を通過させ、それにより動的フィルタ要素を通じて動的フィルタ要素開口のサイズよりも小さい懸濁粒子を透過物として運搬する。フィルタ要素を通過しないものはすべて残余分である。移動するフィルタ要素から伝達された運動量は隣接するスラリーの対流及び残余分中に懸濁された粒子の混合を誘発する。フィルタ要素を通過しないものはすべて残余分である。移動するフィルタ要素から伝達された運動量は隣接するスラリーの対流及び残余分中に懸濁された粒子の混合を誘発する。
【0071】
1実施形態において、残余分に懸濁された粒子の混合は、スラリーと接触したインペラをさらに作動させることによって増強され得る。増強された混合は、懸濁した粒子の移動性を維持して、動的フィルタ要素の開口への粒子、特に開口よりも小さい粒子(細粒)による接近を絶えず繰り返す。動的フィルタ要素の運動は、その開口の入射粒子による閉塞を防止し、それにより開口のサイズ及び形状並びに達成されたサイズ分級を維持する。細粒の除去にもかかわらず、残余分中に存在する固体の質量濃縮は実質的に一定である。固体の質量濃度は、細粒を含有する透過物が除去されるときに、固体を含まない液体の添加によって制御される。
【0072】
図4は、動的濾過システム50の概略図である。動的濾過システム50は、スラリー(又は懸濁物)の供給源52を含む。スラリーはスラリー供給源容器54に供給され、ここで好適なプロセススラリーが希釈剤供給源56からの希釈剤の添加によって調製される(すなわち触媒組成物及び場合により希釈剤のスラリー)。希釈剤は、本明細書で先に開示された任意の希釈剤であり得る。動的濾過デバイス58には、プロセススラリー及び希釈剤供給56からの希釈剤が供給される。動的濾過デバイス58では、プロセス流は、透過物流及び残余分流に分離される。透過物流は、小型粒子及び/又は細粒を含有する懸濁化液体からなる。残余分流は、プロセススラリー及び所望のサイズ範囲の固体粒子を含む。透過物流は、希釈剤の再生及び/又は微粒子の回収のために細粒除去ユニット60に送出され得る。
【0073】
図5は、動的濾過デバイス58の1実施形態を示す。動的濾過デバイス58は、スラリー入口ポート72及び残余分排出ポート74を有するハウジング70を含む。可動フィルタアセンブリは、ハウジング70に位置する。好適な可動フィルタアセンブリの非制限的な例は、回転動的フィルタ要素、振動動的フィルタ要素、往復運動動的フィルタ要素、及び上記の任意の組合せを含む。
【0074】
1実施形態において、動的濾過デバイス58は、回転式フィルタアセンブリ76を含む。回転式フィルタアセンブリ76は、中心中空回転支持体78及び1個以上の中空フィルタアセンブリ80を有する。各中空フィルタアセンブリ80は、外面84及び内面86を備えた動的フィルタ要素82(すなわち回転式動的フィルタ要素)を有する。内面86は、外面84に対する構造支持体を備え、細粒を含有する透過物の排出を促進する。動的フィルタ要素82は、任意の所望の孔径及び形状を有し得る。1実施形態において、フィルタ要素82は、ねじれがほとんど又は全くない、単純な形態及び限定された深さの特定の流路(すなわち孔)を有する。動的フィルタ要素82は、任意のミクロ又はマクロ孔性材料、例えばセラミック、金属、及び/又はポリマー材料からなり得る。中心中空回転支持体78は、各中空フィルタアセンブリ80の内部と透過物排出出口88との間に流体連通を与える。
【0075】
(矢印Bによって示すような)回転フィルタアセンブリ76の運動は、入射粒子がフィルタ要素84の外面の開口を閉塞又は改変するのを防止して、動的クロスフロー効果を生じさせる。このような運動も周囲の懸濁物に運動量を与え、対流及び混合を促進して、細粒を均質に分散させ、フィルタ要素の外面84への細粒の接近を連続的に繰り返す。ハウジング70内部のプロセススラリーに与えられた流体圧は、各動的フィルタ要素82の深さにわたって圧力勾配を生成する。この圧力勾配は、プロセススラリーに移動するフィルタ要素82を通過させる機械力を構成する。動的フィルタ要素の孔径よりも小さい任意のスラリー粒子は、図5の矢印Aによって示されるように、懸濁化液体によって外面84を通じ、次に内面86を通じて、フィルタアセンブリ80の中空内面中へ運搬される。中空フィルタアセンブリ80の中空内部中へ通過する粒子及び懸濁化液体は、透過物となり、元の懸濁物から分離される。特に、孔径よりも小さい触媒細粒は、懸濁化液体と共に動的フィルタ要素82を通過する。細粒の透過懸濁物は、透過物排出出口88を通じて排出される。動的フィルタ要素82の孔よりも大きいスラリー粒子は、動的フィルタ要素82の外側に残存する。回転フィルタアセンブリ76の運動は、残余分粒子を懸濁した可動状態で維持して、動的フィルタ要素82の外面84への粒子の蓄積を防止する。透過物が出口88にて除去されるときに懸濁固体の所望の濃度を維持するために、希釈剤供給90からの補給希釈剤(make-up diluent)は、多孔性表面91を通じてハウジング70の内部へ、又は流体入口ポート72中に添加され得る。
【0076】
1実施形態において、動的クロスフロー効果は、希釈剤供給56と動作可能に連通した希釈剤供給マニホールド92(図4)を使用して、動的フィルタ要素82の外面84にわたって、又は外面84に隣接して希釈剤を導くことによって増強することができる。希釈剤供給マニホールド92は、動的フィルタ要素82の外面84上に希釈剤流を導き、所望ならば、衝撃時に希釈剤流の速度を上昇させるためのノズル(図示せず)を装備し得る。希釈剤を供給することに加えて、希釈剤供給マニホールドを回転フィルタ要素82に近接して配置することは、フィルタ要素82の表面で乱流を誘発して、その要素の表面及び開口の障害物除去を促進することができる。希釈剤マニホールドのサイズ及び形状は、濾過ユニットの形態に適合して、フィルタ要素82の外面84の完全な被覆を与えるように改変され得る。
【0077】
1実施形態において、動的濾過デバイスは、円筒形状であり、複数の希釈剤マニホールドがディスク形状動的フィルタ要素の間に交互配置されている。本実施形態において、希釈剤供給マニホールドは、動的濾過デバイスの円形断面のセクタを占有している。
【0078】
1実施形態において、プロセススラリー供給容器54に供給される圧力を使用して、動的濾過デバイス58にプロセススラリーが充填される(図4)。又は、プロセススラリーは、低剪断ポンプ、例えばバルブのない容積移送式ポンプを使用して、動的濾過デバイス58中にポンプ注入され得る。回転式フィルタアセンブリ76を約10rpm〜約1000rpmの、又は約25rpm〜約500rpmの、又は約60rpm〜約300rpmの速度で回転させる間に、透過物を除去して、補給希釈剤を必要に応じて供給する。回転式フィルタアセンブリ76の回転は、スラリーを生成するか、又はそうでなければスラリーに約0.1m/秒〜約10.0m/秒の、又は約0.2m/秒〜約2.0m/秒、又は約0.5m/秒〜約1.8m/秒の接線相対速度を受けさせる。動的フィルタ要素を流過するプロセススラリーの表面速度は、約0.0002m/秒〜約0.002m/秒である。動的フィルタ要素82のプロセススラリー(及び細粒)による通過を引き起こすために必要な圧力は、動的濾過ユニット58に圧力下で常に供給されている希釈剤によって供給される。細粒及び/又は過小粒子を含有する透過物は除去され、固体を含まない希釈剤は動的濾過デバイス58に戻されて、フィルタ要素82の開口よりも大きい粒子の比較的安定した濃度を維持する。新たな固体を含まない希釈剤は、透過物の外部濾過によって作製することができる。本プロセスは、プロセススラリー中の細粒を所望のレベルまで減少させるのに十分な時間継続される。
【0079】
次に残余分は、動的濾過デバイス58から加圧又は重力排出によって除去され得る。その後プロセスは、反復され得るか、又は分級触媒組成物が残余分から回収され得る。動的濾過残余分からの分級触媒組成物の回収は、濾過及び/又は真空濾過によって遂行され得る。回収された分級触媒組成物は、当分野で公知であるように、必要に応じて洗浄及び乾燥され得る。1実施形態において、動的濾過プロセスから回収された分級触媒組成物は、Accusizer粒子サイズ測定装置で決定された場合に、(分級触媒組成物の重量に基づいて)1重量%未満の、又は0重量%〜1重量%未満の、又は約0.1重量%〜1重量%未満のF10.5値を有する。
【0080】
又は動的濾過は、直列の複数の動的濾過デバイス、又は単一の濾過ユニット内の複数の連続したフィルタアセンブリを利用することによって、連続方式で行われ得る。プロセススラリーを複数の動的フィルタデバイスにわたって通過させることによって、触媒細粒を含まない、又は実質的に含まない、最終残余分を動的濾過システムから排出させることができる。所望の分級又はサイズ範囲より大きい粒子は、プロセススラリーを動的濾過システムへの進入前に、第1の大孔径フィルタに通過させること(事前濾過)によって除去され得る。一般に、大型粒子は、その製造で使用されるプロセスのゆえに(because of)、プロ触媒組成物では形成されない。このような状況では、事前濾過は通常不要である。好適には、得られた分級触媒組成物は、1重量%未満のF10.5値も有する。
【0081】
他の種類の動的濾過システムは、本開示の範囲内である。例えば、動的フィルタデバイスは、中心中空回転支持体の上に積層構造で近接して隔設された複数のディスク形状動的フィルタ要素を含み得る。回転式積層動的フィルタ要素は、ディスク積層の外側のマニホールド又はハウジング内面から内側に延伸する、静止した動的フィルタ要素と交互配置されている。回転支持体は中空であり、静止した動的フィルタ要素を通じて移動する透過物を収容する。好適な動的濾過システムの他の非制限的な例は、米国特許第3,477,575号;同第6,106,713号;及び同第6,117,322号に開示されており、それぞれの内容は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらなる実施形態において、動的濾過システムは、ドイツ、バートクロイツナッハのPall Corporationから入手可能なSchenk(商標)ZEF Thickenerである。
【0082】
1実施形態において、本プロセスは、触媒粒子を研磨することを含む。本明細書で使用する場合、「研磨すること」は、触媒粒子表面からの触媒細粒及び/又は隆起の除去である。図6は、動的濾過を受ける前の触媒組成物の概略図である。図6に示すように、触媒組成物は、隆起を有する粒子(PWP)5、触媒粒子7、及び触媒細粒9を含む。いかなる特定の理論によって縛られることを望むものではないが、吸引力、例えば静電力は触媒細粒9を触媒粒子7の表面に付着させると考えられる。動的濾過の間に回転力によって与えられた触媒粒子5、7と触媒細粒9との間のひずみは、触媒細粒9と触媒粒子5、7との間の吸引力よりも大きい。その結果として、触媒組成物に動的濾過を受けさせることは、触媒細粒9を触媒粒子5、7の表面から除去する。
【0083】
動的濾過に関連する運動、乱流及び混合も、PWP 5、触媒粒子7、及び触媒細粒9の間の衝突を引き起こす。衝突はPWP 5から隆起6を除去して、触媒粒子7を産生する。注目すべきなのは、PWP 5と比較した、触媒粒子7の平滑な表面形態である。図7は、動的濾過後の触媒組成物の概略図である。図7は、触媒組成物が動的濾過後に、より多くの触媒粒子7、より少ないPWP 5を含有し、触媒細粒9を全く又は実質的に含有しないことを示す。
【0084】
1実施形態において、本開示は、重合プロセスを提供する。重合プロセスは、触媒組成物のスラリーを分級して残余分を形成することと、残余分から分級触媒組成物を回収することを含む。本プロセスは、分級触媒組成物をオレフィンと反応させることと、ポリオレフィン組成物を形成することとをさらに含む。分級触媒組成物は、本明細書で開示するような任意の分級触媒組成物であり得る。
【0085】
1実施形態において、重合プロセスは、クロスフロー分級デバイス及び重合リアクタを含む装置で行われる。クロスフロー分級デバイスは、(i)重合リアクタに動作可能に連通すること、(ii)重合リアクタに近接していること、又は(iii)重合リアクタから離隔していることが可能である。クロスフロー分級デバイスは、触媒組成物のスラリーを収容して、分級触媒組成物を保持することに適している。クロスフロー分級デバイスは、本明細書で先に議論したようなクロスフロー濾過アセンブリ又は動的濾過システムである。重合リアクタによって与えられた重合条件下での分級触媒組成物とオレフィンとの間の接触は、ポリオレフィンを産生する。オレフィンは、式C2xを有する任意のアルケンであり得る。本開示の目的のためには、エチレンはオレフィンと見なされる。1実施形態において、オレフィンは、1つ又はそれ以上のC−Cアルファ−オレフィン及び/又はエチレンである。1実施形態において、重合リアクタは、流動床重合リアクタであり得る。好適な流動床重合リアクタ(及び好適な重合状態)の非制限的な例は、米国特許第4,302,565号;同第4,302,566号;及び同第4,303,771号に開示されており;それぞれの内容は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
1実施形態において、重合プロセスは、上述のように、(残余分から)(分級触媒組成物の重量に基づいて)1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む。分級は、触媒組成物のスラリーにクロスフロー濾過又は動的濾過のどちらかを受けさせることによって行われ得る。言い換えれば、分級は、上で議論したように(i)クロスフローフィルタ要素に沿って通過させること、又は(ii)スラリーに対して動的フィルタ要素を移動させることのどちらかによって行われ得る。残余分からいったん回収されると、分級触媒組成物は、重合リアクタ中への導入の前又は間に、他の任意の構成成分と組み合わされて「重合触媒」が形成され得る。1実施形態において、重合触媒は、以下の1つ又はそれ以上:共触媒、外部電子供与体、及び選択性制御剤と組み合わされた分級触媒組成物である。
【0087】
共触媒は、チタンハライド、又は有機アルミニウム化合物を使用するオレフィン重合触媒系の公知のアクチベータのいずれかから選択され得る。好適な共触媒の非制限的な例は、トリアルキルアルミニウム化合物、オリゴマーもしくはポリマーアルモキサン又は1つ又はそれ以上の異なるトリアルキルアルミニウム化合物の組み込み(incorporation)によって修飾された修飾アルモキサンを含むアルキルアルミニウムアルコキシド化合物、及びアルキルアルミニウムハライド化合物を含む。1実施形態において、上記のリストの化合物は、アルキル基を含有し、各アルキル基は独立して1〜6個の炭素原子を有する。さらなる実施形態において、共触媒は、トリアルキルアルミニウム又はジアルキルアルミニウムハライド化合物であり、アルキル基それぞれは独立して、1〜4個の炭素原子を含有する。またさらなる実施形態において、共触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、又はその混合物である。共触媒は、約1:1〜約500:1の分級触媒組成物のアルミニウム対チタンのモル比で、又は約10:1〜約200:1のモル比で使用され得る。
【0088】
選択性制御剤(SCA)及び/又は外部電子供与体も分級触媒組成物に添加され得る。好適なSCAは、チタンベースのチーグラーナッタ触媒組成物と併せて従来使用されているSCAである。好適な選択性制御剤の実例となるのは、モノカルボン酸エステルのC1−4アルキルエーテル、例えばp−エトキシエチルベンゾアート(PEEB)、並びに少なくとも1個のケイ素−酸素−炭素結合を含有する有機シラン又はポリ有機シラン化合物である。好適なケイ素化合物は、式R’SiYX’のケイ素化合物、又はそのオリゴマーもしくはポリマー誘導体を含み、式中:R’は、3〜20個の炭素原子を含有し、ヘテロ原子を場合により含有して、ヘテロ原子とケイ素との間に結合を含み得る、炭化水素ラジカルである。Yは、−OR又はOCORであり、ここでRは、1〜20個の炭素原子を含有して、ヘテロ原子を場合により含有する炭化水素基(radical)であり、X’は、水素又はハロゲンであり、mは、0〜3の値を有する整数であり、nは、1〜4の値を有する整数であり、pは、0〜1、又は0の値を有する整数であり、m+n+p=4である。1実施形態において、R’は少なくとも1回の出現において第1級アルキル基ではなく、その非第1級炭素又はヘテロ原子は、ケイ素原子に直接付着されている。R’の非制限的な例は、シクロペンチル、t−ブチル、イソプロピル又はシクロヘキシルを含む。Rの例は、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、フェニル、ベンジル及びt−ブチルを含む。X’の例は、Cl及びHである。
【0089】
各R’及びRは、同じであるか又は異なることがあり、多原子基ならば、重合中に使用される反応条件下で不活性である任意の置換基によって置換され得る。Rは、Rが脂肪族であるときに1〜10個の炭素原子を含有し得、立体障害脂肪族基又は脂環式基であり得る。Rが芳香族であるとき、Rは6〜10個の炭素原子を有し得る。2個以上のケイ素原子が酸素原子によって相互に結合されているケイ素化合物、例えばシロキサン又はポリシロキサンも、必要なケイ素−酸素−炭素結合も存在するという条件で使用され得る。1実施形態において、選択性制御剤は、環式アルコキシ置換芳香族カルボン酸のアルキルエステル、特にエチルp−エトキシエチルベンゾアート(PEEB)並びにモノ及びジアルコキシシラン、特にn−プロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン又はシクロヘキシルメチルジメトキシシランである。上述のSCAの混合物も同様に使用され得る。一般に選択性制御剤は、共触媒の添加と同時に又は同時でなくオレフィン重合混合物に添加され、アイソタクチックポリマーの産生を増加させるために使用される。
【0090】
選択性制御剤は、分級触媒組成物中のチタン1モル当り0.01モル〜約100モルの、又は分級触媒組成物中のチタン1モル当り約0.5モル〜約60モルの量で提供され得る。重合触媒は、分級触媒組成物、共触媒及び1つ又はそれ以上の選択性制御剤を接触させる任意の好適な手順によって産生される。重合触媒構成成分又はその組合せは、重合リアクタ中への導入前に事前接触されて、事前形成された重合触媒を形成し得る。又は分級触媒組成物、共触媒及び/又は1つ又はそれ以上の選択性制御剤は、オレフィンモノマーとの接触時に同時接触され得る。1実施形態において、重合触媒構成成分は好適な容器内で混合されて、事前形成された重合触媒は、重合の開始が望まれるときに、重合リアクタ中に導入される。又は重合触媒構成成分は、重合リアクタ中に導入され、触媒はインサイチューで形成される。さらなる実施形態において、重合触媒構成成分は、1個の重合リアクタ及び/又はプレ重合リアクタに、1つ又はそれ以上のオレフィンモノマーと共に導入されて、続いて最初の重合又は事前重合で使用されたオレフィンモノマーと同じであり得る又は異なり得る追加のオレフィンモノマーと接触され得る。続いての重合は、同じ又は異なる重合リアクタ内で起こり得る。
【0091】
重合触媒は、スラリー、液相、ガス相又はバルク、オレフィン重合の分野で公知であるような液体モノマー型重合プロセスで、又はこのようなプロセスの組合せで使用され得る。本明細書で使用する場合、「重合条件」は、オレフィン重合を生じるのに十分な、条件(温度及び圧力)及び重合リアクタ内に存在する開始物質である。1実施形態において、重合は、3〜8個の炭素原子を有するアルファオレフィン、及び/又はエチレンを重合触媒と連続的に接触させることによって、流動床重合リアクタ内で行われ得る。重合触媒の別個の分量は、アルファオレフィン及び任意の追加の構成成分と共に、連続的又は半連続的にリアクタに触媒的有効量で供給され得る。反応生成物、すなわちポリオレフィン組成物は、重合リアクタから連続的又は半連続的に除去され得る。本明細書で示すように、重合条件は、流動床重合条件であり得る。重合条件を提供するために、及び/又はアルファオレフィンを連続的に重合するために好適な流動床リアクタの非制限的な例は、米国特許第4,302,565号;同第4,302,566号;及び同第4,303,771号に開示されており;それぞれの内容は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
重合プロセスにおいて、触媒組成物は通例、触媒スラリーとして重合リアクタ中に導入される。「触媒スラリー」は、油中に懸濁された触媒組成物の粒子の液体中固体型懸濁物である。触媒組成物粒子は、上で議論したように、非分級触媒粒子又は分級触媒粒子であることができる。触媒スラリーに好適な油の非制限的な例は鉱油である。触媒スラリーの「固体含有率」は、スラリーに存在する触媒組成物の量又は重量パーセントであり、スラリーの重量に基づく。固体含有率は、触媒活性及び重合プロセスの供給速度に影響を及ぼす。それゆえ固体含有率の正確な決定は、製造効率を最大化するために重要である。
【0093】
1実施形態において、触媒組成物は洗浄液を含む。「洗浄液」は、触媒合成の間に触媒組成物を洗浄するために使用される液体炭化水素である。洗浄液は触媒組成物に結合する。驚くべきことに、スラリー形成のために触媒粒子が油に添加されるときに、洗浄液が油中に移行することが見出されている。この洗浄液は、スラリーの液相の一部となる。それに応じて、洗浄液はもはやスラリーの固相の一部ではない。
【0094】
図8と図9との比較は、この現象を示している。図8は、ニューヨーク州、タリータウンのSonneborn,Inc.から入手可能な商標Hydrobrite(登録商標)380で販売されている100%鉱油の13C NMRスペクトルである。図9は、Hydrobrite(登録商標)380鉱油に懸濁されたチーグラーナッタ触媒組成物からなる触媒スラリーの13C NMRスペクトルである。触媒合成の間に、触媒組成物は液体炭化水素、例えばイソペンタンによって洗浄される。図9に示す触媒スラリーの13C NMRスペクトルは11.8ppmにピークを示す。11.8ppmのピークは、イソペンタンの存在による。図8に示す鉱油の13C NMRスペクトルは、11.8ppmのピークを欠いている。図9の13C NMRスペクトルの積分は、イソペンタンの存在が液相の約0.6重量%であることを決定する。それゆえNMR分光法は、洗浄液の触媒組成物から鉱油中への移行を裏付けている。
【0095】
驚くべきことに、油の一部が孔及び触媒粒子の表面に結合することも見出されている。この触媒に結合した油は、スラリーの液相から除去される。従来のスラリー固体含有率の測定技法は、これらの現象を説明していない。例えば触媒スラリーの誘導結合プラズマ(ICP)分光法は、下に示すようなチタン検出に基づいている。
【0096】
%固体=(%Ti粉末)/(%Tiスラリー)×100%
【0097】
チタンの検出は、洗浄液の触媒組成物粒子から液相中への移行を説明していない。その結果として、触媒スラリーの固体含有率を測定するための従来技法は不正確であり、幅広い程度の誤差を有する。
【0098】
重合プロセスは、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0099】
本開示の1実施形態は、スラリー、及び特に触媒スラリーの固体含有率を決定する改良された方法を提供する。本方法は、触媒スラリーの液体重量パーセントを測定して、それに移行補正因子を適用する。触媒スラリーは、未知の重量パーセントの固体を有する。液体重量パーセント値及び移行補正因子を使用する計算は、スラリー固体含有率の正確な測定値を与える。
【0100】
本方法は、触媒組成物の移行補正因子を調製することを含む。油中に懸濁された触媒組成物の粒子を含有する触媒スラリーについて、NMR応答信号が得られる。本方法は、触媒スラリーの液体重量パーセント値を決定することを含む。液体重量パーセント値は、触媒スラリーのNMR応答信号から決定される。本方法は、液体重量パーセント値及び移行補正因子から触媒スラリーの固体重量パーセント値を計算することをさらに含む。
【0101】
NMR(核磁気共鳴)分析装置を使用して、触媒スラリーのNMR応答信号を生成する。NMR分析装置は、触媒スラリーの液相中に存在する水素を検出して、液相中に存在する水素原子の数に比例するNMR応答信号を産生する。NMR応答信号は、液相中に存在する水素の量の正確な表現を提供する。1実施形態において、NMR分析装置は、液相中に存在する水素の自由誘導減衰応答を測定して、それから応答信号を産生する。
【0102】
NMR応答信号から、NMR分析装置はスラリーのNMR液体重量パーセント値を計算する。液体重量%+固体重量%の和=100%であるため、触媒スラリーの固体重量パーセントは:100%−液体重量%=固体重量%のように計算される。1実施形態において、NMR分析装置は、ドイツ、エットリンゲンのBruker Optik GmbHから入手可能なMinispec MQ−20ベンチトップパルスプロトン核磁気共鳴分析装置である。触媒スラリーの固体重量パーセント値は、下の式(I)に示すように、液体重量パーセント値及び移行補正因子から計算される。
(I)
固体重量%値=移行補正因子×[100−液体重量%値]
【0103】
本開示は触媒スラリーに関するが、いずれの種類の液体中固体型スラリーも本開示の範囲内であることが理解される。本方法は特に、液相と固相との間の液体移行を示すスラリーに好適である。
【0104】
本方法は、触媒スラリーの移行補正因子を作成することを含む。本明細書で使用する場合、「移行補正因子」は、スラリーの固相からスラリーの液相中への洗浄液の移動を説明する数値である。移行補正因子は、触媒スラリー及びその構成成分から測定した値(すなわち重量測定値及び/又はNMR分析)に対する計算の結果である。1実施形態において、移行補正因子は、スラリー固相に結合する液相の部分を説明するためにも調整又はそうでなければ計算され得る。
【0105】
1実施形態において、洗浄液はイソペンタンである。触媒組成物粒子が油に添加されてスラリーを形成するとき、イソペンタンは触媒組成物粒子から油中へ移動、移行又はそうでなければ進行する。移行補正因子は、スラリーの液相中への洗浄液であるイソペンタンの添加を好都合に説明する。別の言い方をすれば、本方法は、触媒スラリーの固体含有率を決定するときに、洗浄液の触媒組成物からの離脱を説明する。移行補正因子の提供は、スラリー固体含有率の正確な決定を生じる。
【0106】
1実施形態において、本方法は、標準触媒スラリーを形成することによって移行補正因子を調製又はそうでなければ計算することと、NMR分析装置によって測定されたような(1)触媒スラリーの固体含有率を(2)標準触媒スラリーの固体含有率と比較することとを含む。本明細書で使用する場合、「標準触媒スラリー」は、その中に懸濁された触媒組成物の既知の固体重量パーセント値を有する触媒スラリーである。標準触媒スラリーは、触媒組成物を別々に秤量することと、油を別々に秤量することとによって調製される。個別に事前秤量された構成成分は次に共に混合されて、標準触媒スラリーを作製する。
【0107】
NMR分析装置は、標準触媒スラリーのNMR応答信号を生成して、標準触媒スラリーの測定された固体重量パーセント値を計算するために使用される。「測定された固体重量パーセント値」は、NMR分析装置によって測定又はそうでなければ検出された標準触媒スラリーの固体重量パーセントである。NMR分析装置はスラリー液相の重量パーセントを測定するため、測定された固体重量パーセント値は液相中の洗浄液の存在を説明している。本方法は、下の式(II)で示されるような移行補正因子を計算又はそうでなければ決定するために、既知の固体重量パーセント値を測定された固体重量パーセント値で割ることをさらに含む。
【数1】

【0108】
1実施形態において、移行因子の調製は、触媒組成物の洗浄液重量パーセント値を決定することをさらに含む。高分解能NMR分光法及び/又はガスクロマトグラフィー(GC)は、スラリー形成前の触媒組成物の洗浄液の量を決定するために使用される。例えばGC試料を形成するために、触媒組成物の既知の量を溶媒(例えばクロロホルム又は2−メチル−エタノール)に希釈又は溶解することができる。GC試料をガスクロマトグラフに注入することができる。試料中に存在する洗浄液の量は、洗浄液ピークの積分によって決定することができる。洗浄液のGCピーク同定は、既知の重量及び試料濃度の洗浄液のGCピークスペクトルを用いた比較分析によって決定できる。
【0109】
既知の固体重量パーセント値は、下の式(III)で示すように、洗浄液重量パーセント値を既知の固体重量パーセント値から引くことによって調整される。
【0110】
既知の固体重量パーセント値は、下の式(III)で示すように、洗浄液重量パーセント値を既知の固体重量パーセント値から引くことによって調整される。
(III)
既知の固体重量%値=事前秤量した触媒×[1−(洗浄液重量%値/100)]
【0111】
次に式(III)の既知の固体重量%値は、式(II)のように、測定された固体重量パーセント値で割られて移行補正因子を提供する。
【0112】
1実施形態において、本方法は、触媒スラリーの複数の試料を提供又はそうでなければ調製することを含む。触媒スラリー試料は、個別のNMR管で調製される。本方法は、各試料の液体重量パーセント値を(NMR分析装置によって)決定することを含む。各試料の液体重量パーセント値に、式(I)に示すように移行補正因子を掛けて、各試料の固体重量パーセントを計算する。これは触媒スラリーの複数の固体重量パーセント値を生じる。複数の固体重量パーセント値の標準偏差は計算され、約0.4%未満である。それゆえ本方法は、複数の試料から(各固体重量パーセント値に移行補正因子を掛けることによって)約0.4%未満の標準偏差を有する触媒スラリーの固体重量パーセント値を計算することを含む。本方法は、触媒スラリーの固体含有率を決定する精密な技法を好都合に提供する。
【0113】
1実施形態において、本方法は、NMR分析装置を較正することを含む。NMR分析装置の較正は、100%油の事前秤量した試料を分析することを含む。NMR分析装置は、比例的により低いパーセンテージの液体を用いて試料をシミュレートするようにプログラムされる。例えば100%油試料の質量が0.90で割られて、測定値は90重量%油及び10重量%触媒組成物を有する触媒スラリー試料をシミュレートすると見なされ、100%油試料の質量が0.80で割られて、測定値は80重量%油及び20重量%触媒組成物を有する触媒スラリーをシミュレートすると見なされる。次に触媒スラリーのNMRスペクトルを生成するために、較正されたNMR分析装置が使用される、。
【0114】
触媒スラリーの固体含有率がいったん決定されると、触媒組成物の所望の量を気相重合(流動床重合としても知られる)リアクタに導入することができる。気相重合の間に、流動床は、流動床リアクタからの未反応モノマーのリサイクル流を使用して、作動され得、それによってリサイクル流の一部が濃縮される。加えて、液体濃縮剤は反応混合物にも含まれ得る。上記の手順は、「濃縮モード」又は「スーパー濃縮モード」と呼ばれ、米国特許第4,543,399号及び同第4,588,790号に開示されている;それぞれの内容は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。濃縮モード又は超濃縮モードの利用は、アイソタクチックポリプロピレン中のキシレン可溶物(solubles)の量を減少させて、触媒性能全体を改善することが見出されている。
【0115】
固体含有率を決定する方法は、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0116】
本重合プロセスによって産生されたポリオレフィン組成物は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであり得る。実施形態において、ポリオレフィン組成物は、高い剛性、弾性(modulus)及び強度特性を有するポリプロピレンホモポリマーである。又は、本重合プロセスは、エチレン及びプロピレンのコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー並びにエチレン/プロピレンゴム修飾プロピレンを含むポリプロピレンインパクトコポリマーを含むコポリマーであり得る。液体、スラリー又は気相反応条件を使用して、本明細書で提供するガイドラインを使用して、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は他の生成物の適切な重合を行うために、本重合プロセスが使用され得ることが理解される。
【0117】
本重合プロセスは、比較的高いバルク密度を有するポリオレフィン組成物を、重合触媒の比較的高い生産性を反映する量で産生する。例えば重合プロセスは、重量分析によって決定されるような、少なくとも0.40g/cm、又は少なくとも0.45g/cmのポリマーバルク密度(Pbd)を有するポリプロピレン生成物を産生する。この程度のバルク密度は、より高いリアクタ能力利用度及び/又は動作効率を好都合に生じる。
【0118】
1実施形態において、本重合プロセスは、1重量%から5重量%未満の、又は4重量%未満の又は3重量%未満のキシレン可溶物含有率を有するポリオレフィン組成物を産生する。さらなる実施形態において、ポリオレフィン組成物は減少した量の触媒残留物を含有する。ポリオレフィン組成物は、約1×10−3重量%未満の、又は1×10−4重量%未満の、又は5×10−5重量%未満のチタン含有率を有し得る。重量パーセントは、ポリオレフィン組成物の総重量に基づく。
【0119】
本重合プロセスでの分級触媒組成物の使用は、ポリオレフィン組成物中のポリマー細粒の数を好都合に減少させる。本明細書で使用する場合、「ポリマー細粒」は、Gradex2000自動粒径分析装置を使用して測定された場合に、250μm未満の最大直径を有するポリマー粒子である。1実施形態において、重合プロセスは、約0.1重量%〜約2重量%の、又は約0.5重量%〜約1.5重量%の、又は約1重量%のF250値を有するポリオレフィン組成物を形成する。本明細書で使用する場合、「F250値」は、ポリマーの重量に基づいた、サイズが250μm未満であるポリオレフィン組成物の粒子の重量パーセントである。F250値は、Gradex 2000自動粒径分析装置によって決定される。それゆえ重合プロセスでの分級触媒組成物の提供は、ポリマー細粒の減少により、より大きい均質性を備えたポリオレフィン組成物を好都合に生じる。
【0120】
さらなる実施形態において、触媒組成物が提供される。触媒組成物は、複数の分級触媒組成物粒子を含む。分級触媒組成物は、約1重量%未満の、又は約0.1重量%〜約1重量%未満のF10.5値を有する。重合条件下で分級触媒組成物がオレフィンに接触するときに、分級触媒組成物粒子は、2重量%未満の、又は約0.1重量%〜2.0重量%のF250値を有するポリオレフィン組成物を形成する。1実施形態において、分級触媒組成物はチタンを含有する。さらなる実施形態において、分級触媒組成物はチーグラーナッタ触媒である。
【0121】
1実施形態において、触媒組成物を産生するプロセスが提供される。本プロセスは、触媒組成物の複数の個別のバッチを産生することを含む。選択した触媒特性の分散値は、複数の個別のバッチをデータセットとして使用して計算される。分散値が計算され得る触媒特性の非制限的な例は、チタンの重量パーセント、内部電子供与体の重量パーセント、固体含有率、及びその任意の組合せを含む。
【0122】
本プロセスは、複数の個別のバッチを共に混合することと、マスタバッチを形成することとを含む。マスタバッチは、マスタサブバッチに分割される。同じ触媒特性の分散値は、マスタサブバッチについても計算される。本プロセスは、複数のマスタサブバッチの分散値を減少させることを含む。
【0123】
触媒組成物は、オレフィンの重合に使用される任意の触媒組成物であり得る。1実施形態において、触媒組成物は、外部電子供与体を含み得る又は含み得ないチーグラーナッタ触媒組成物である。一実施形態において、チーグラーナッタ触媒組成物は、本明細書で開示するいずれの手順によっても産生され得る。別の実施形態において、触媒組成物はチーグラーナッタ触媒組成物のスラリーである。
【0124】
従来の触媒産生はバッチ操作である。触媒組成物のバッチは固有の変動性を示す。例えば、チーグラーナッタ触媒組成物の最初のバッチは、同じ機器及び同じ手順を用いて産生されたチーグラーナッタ触媒組成物の次の1つ又はそれ以上のバッチのチタン重量パーセントとは実質的に異なる、チタン重量パーセントを有し得る。バッチ分散の原因は、製造における変化並びに最終生成物の測定における変化を含む。
【0125】
触媒組成物のバッチ間の分散は、重合の間に問題を引き起こす可能性がある。例えば触媒組成物の新たなバッチのリアクタ中への導入時に、新たなバッチと前のバッチとの間の分散(例えばチタン重量パーセントにおける)があまりに大きいために、リアクタの破壊を引き起こす可能性がある。リアクタのオペレータは、新たなバッチのリアクタ中への導入から生じる変化を予期して、産生パラメータの調整を過補償しがちである。その結果として、バッチの分散がリアクタのダウンタイムのリスクを上昇させ、ポリマー産生の労働コストを上昇させるのは、高い分散値を有する触媒組成物が、円滑な操作及び破壊の回避を確実にするためにリアクタ係員のより多くの努力及び付添(atendance)を必要とするためである。
【0126】
驚くべきことに及び予想外に、多バッチ混合のための本プロセスは、触媒組成物バッチ間の分散の減少を生じることが見出されている。言い換えれば、本プロセスは触媒組成物のバッチ間の均質性を上昇させる。
【0127】
本プロセスは、触媒組成物の複数の個別のバッチを産生することを含む。触媒組成物の選択された特性について分散値が計算される。選択された触媒組成物の特性の標準偏差(σ)及び/又は分散(σ)は、当分野で一般に公知であるように計算され得る。バッチ数は、選択した特性の分散が決定されるデータセットを構成する。例えば、各バッチのチタン重量%が測定され得、そこからデータセットについてσ及び/又はσが計算され得る。
【0128】
本プロセスは、個別のバッチを共に混合して触媒組成物のマスタバッチを形成することを含む。混合は混合デバイスで行う。混合は、マスタバッチが個別のバッチの均質なブレンドとなるまで継続する。マスタバッチは次に、マスタサブバッチに分割される。本プロセスは、マスタサブバッチデータセットにわたる触媒組成物特性の分散値を減少させることを含む。バッチデータセット及びマスタサブバッチデータセットの試料の数(すなわちバッチの数)は、同じであり得るか、又は異なり得る。
【0129】
図10は、マスタバッチを作製するのに使用された個別のバッチの数が触媒組成物のバッチ間の分散をどのように減少させるかを示す、グラフ描写を提供する。触媒組成物は、チーグラーナッタ触媒組成物である。選択された触媒組成物特性は、チタン重量%である。1バッチ、2バッチ、及び4バッチ混合物から得たバッチの上方管理限界(UCL)及び下方管理限界(LCL)を図10に示す。図10からわかるように、4バッチ混合の分散は、バッチ混合なしよりも小さい2バッチ混合の分散よりも小さい。言い換えれば、1つのバッチの(チタン含有率の)管理限界は、2つの別個のバッチを混合することによって作製したマスタバッチから得た試料(バッチ)の管理限界よりも高く、2つの別個のバッチを混合することによって作製したマスタバッチから得た試料(バッチ)の管理限界は、4つの別個のバッチを混合することによって作製したマスタバッチから得た試料(バッチ)の管理限界よりも高い。
【0130】
下の表1は、マスタバッチを作製するために混合された別個のバッチの数が分散の減少にどのように影響を及ぼすかを示している。マスタバッチを作製するのに使用されるバッチの数が増加するにつれ、分散は減少する。このことは表1で明らかであり、個別のバッチの数の増加が変動性低減因子(variability reduction factor)の上昇を引き起こす。4つの別個のバッチが混合されてマスタバッチを形成するとき、変動性低減因子は2である。言い換えれば、4バッチのマスタバッチからのマスタサブバッチの分散は、未混合バッチの分散の半分である。同様に、16バッチのマスタバッチから生じるマスタサブバッチの分散は、未混合バッチの分散の4分の1を示す(すなわち4の変動性低減因子)。
【表1】

【0131】
1実施形態において、本プロセスは、触媒組成物の少なくとも4つの個別のバッチを共に混合してマスタバッチを形成することを含む。これは選択された触媒組成物特性の分散値を少なくとも2分の1に減少させる(すなわちマスタサブバッチの分散値は、未混合の個別のバッチの分散値の2分の1である)。
【0132】
1実施形態において、本プロセスは、触媒組成物の少なくとも12の、又は少なくとも16の個別のバッチを共に混合してマスタバッチを形成することを含む。本プロセスはさらに、バッチの選択された触媒組成物特性の分散値を少なくとも4分の1に減少させる(すなわちマスタサブバッチの分散値は、未混合の個別のバッチの分散値の4分の1である)。
【0133】
1実施形態において、混合デバイスは、図11〜13に示すような回転式混合デバイス110である。混合デバイス110は、支持体114に回転自在に取り付けられたチャンバ112と、駆動デバイス116を含む。駆動機構(図示せず)は、駆動デバイス116にチャンバ112を操作可能に連結して、回転軸Cに沿ったチャンバ112の回転を可能にする(図12)。第1の環状部材118は、支持体を通じてチャンバ内部120の中へ延伸する。第1の環状部材118の内部端122は、図12に示すように、チャンバ112の内部に位置する。
【0134】
チャンバ112は、所望通りに任意の断面形状を有し得る。チャンバ112の好適な断面形状の非制限的な例は、円筒状、球状、楕円状、ひし形形状、また双対錐を含む。
【0135】
1実施形態において、チャンバ112は、図11〜13に示すように、双対錐断面形状を有する。双対錐混合デバイスは、チャンバ112の内容物を回転動作によって静かに混合し、交互に折り畳み、広げて、低剪断混合動作を提供する。チャンバ112は、チャンバ内部120を画定する内面130を含む。図13の区域Fは、回転軸Cから最も遠い内面である内面130の一部を示す。比較すると、区域G及び区域Hはそれぞれ、回転軸Cから最も遠い内面ではない内面部分を示す。
【0136】
第2の環状部材124は、チャンバ内部120に位置する。第2の環状部材124は、第1の環状部材118に対して実質的に垂直、又は垂直である。回転式環状継手部材126は、内部端122を第2の環状部材124と動作可能に連結する。回転式環状継手部材126は、図13の矢印Dで示すように、第2の環状部材124が第1の環状部材118に対して移動又はそうでなければ回転できるようにする。チャンバ112が図13の矢印Eで示すように回転するときに、回転式環状継手部材126はさらに第2の環状部材124が移動できるようにする(矢印D)。
【0137】
1実施形態において、第2環状部材124は末端128を有する。末端128は、回転軸Cから最も遠い内部表面部(すなわち区域F)に近接している。さらなる実施形態において、末端128と最も遠い内面部である区域Fとの間の距離は、0cm超〜約100cm、又は約1cm〜約50cm、又は約10cm〜約50cmである。
【0138】
本混合デバイス110は、チャンバ112への/からの触媒組成物又は触媒スラリーの「サブサーフェス」充填及び/又は排出を可能にする。1実施形態において、チャンバ112は、触媒組成物/スラリーが中に導入される液体140を含有する。液体は、水、アルコール、エーテル、炭化水素、塩素化炭化水素、油、又は上記の任意の組合せであり得る。1実施形態において、触媒スラリーは、油中に懸濁されたチーグラーナッタ触媒組成物である。
【0139】
「サブサーフェス充填」という用語は、本明細書で使用する場合、触媒組成物(又は触媒スラリー)とチャンバ112の蒸気空間との間の接触を伴わない、触媒組成物(又は触媒スラリー)のチャンバ112内部への供給である。サブサーフェス充填/排出は、触媒組成物(又は触媒スラリー)をチャンバ112内の蒸気空間に暴露する従来の充填/排出手順よりも安全である。多くの触媒組成物、及び特にチーグラーナッタ触媒組成物は可燃性である。サブサーフェス充填による触媒組成物とチャンバ蒸気空間との間の接触の低減又は排除はそれに応じて、触媒組成物の発火、爆発及び/又は分解のリスクを低減及び/又は排除する。
【0140】
1実施形態において、液体140は、触媒組成物(又は触媒スラリー)のチャンバ112への導入前に、チャンバ112中に導入される。液体140も、触媒組成物のチャンバ112中への供給と同時に導入され得る。液体140は、環状部材(118、126、124)によって、又は供給ハッチ142によって導入され得る。液体140は、触媒スラリーの担体液体であっても、担体液体でなくてもよい。
【0141】
1実施形態において、混合デバイス110を使用する、混合デバイスのサブサーフェス充填のプロセスが提供される。本プロセスは、触媒組成物(又は触媒スラリー)を、第1の環状部材118を通じて、回転式環状継手部材126を通じて、第2の環状部材124を通じて、末端128を通じて、チャンバ内部120に存在する液体140中に供給することを含む。このようにして、触媒組成物(又は触媒スラリー)は、蒸気空間との接触を回避する。さらなる実施形態において、触媒スラリーは、圧力下でチャンバ内部120に導入される。
【0142】
1実施形態において、触媒組成物(又は触媒スラリー)はチャンバ内部120に第1の環状部材118、回転式環状継手部材126、及び第2の環状部材124を通じて供給される。液体140は、チャンバ内部120に存在して、第2の環状部材124の末端128を被覆する。触媒組成物(又は触媒スラリー)は、チャンバ内部に末端128を通じて液体140中に進入する。このようにして、触媒組成物(又は触媒スラリー)とチャンバ内部120の蒸気空間との間に接触が起こらない。触媒組成物とチャンバ蒸気空間との間の接触を低減、又は完全に排除することによって、本混合デバイス110は、触媒組成物と蒸気空間との間の接触を与える従来の混合デバイスと比較して、触媒組成物(又は触媒スラリー)のより安全な取扱い及び混合を提供する。本サブサーフェス混合プロセスは、触媒分解を減少させることによって、触媒の寿命及び有効期間を改善する。
【0143】
混合デバイス110の内容物は、圧力を用いて環状部材118、124、126を通じて排出され得る。
【0144】
混合デバイスは、本明細書で開示した2つ以上の実施形態を含み得る。
【0145】
混合デバイス110は、触媒組成物/触媒スラリーの個別のバッチを混合して、触媒組成物の1つ又はそれ以上のマスタバッチを産生するために使用され得る。
【0146】
触媒組成物を産生するプロセスは、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0147】
本開示の実施例を制限でなく一例として、ここに与える。
【実施例】
【0148】
1.分級
【0149】
一連のマグネシウム−チタン(MagTi)ベース触媒組成物は、マグネシウム、チタン、アルコキシド及びハライド部分を含むプロ触媒前駆体を使用して調製される。前駆体は、マグネシウムジエトキシド、チタンテトラエトキシド、及びチタンテトラクロリドを、オルトクレゾール、エタノール及びクロロベンゼンの混合物中で約75℃の温度にて約2時間反応させることによって調製される。固体反応生成物は、(約90℃まで加熱することによって)溶液からエタノールを除去することによって沈殿され、回収した固体をヘキサンで洗浄して、乾燥させる。得られた前駆体組成物は、実験式(empirical formula):MgTi(OCClによって表される。
【0150】
本前駆体組成物は、TiCl及びクロロベンゼンの50/50体積混合物との接触によって、プロ触媒組成物に変換される。前駆体約3.0グラムを150mlフラスコに添加する。TiCl及びクロロベンゼン(60ml)の混合物をフラスコに添加して、250rpmにて撹拌する。ジイソブチルフタレート内部電子供与体をハロゲン化の間に添加する。フラスコは、絶えず撹拌しながら電熱マントルを指示された加熱速度で使用して加熱する。115℃に達した後、撹拌を約1時間維持する。得られたスラリーは、フラスコ底部のフリットディスクを通じて濾過する。
【0151】
次に固体をTiClクロロベンゼンの50/50体積混合物60mlに2回以上接触させて、30分間にわたって115℃まで加熱する。得られた固体の微粒子生成物を約25℃まで冷却して、イソオクタンの一定分量70mlで3回洗浄し、乾燥窒素流で7時間乾燥させた。
【0152】
A.クロスフロー濾過による分級
図2及び3に示すクロスフロー濾過アセンブリを使用して、上で開示したように調製したMagTiベース触媒組成物を分級する。クロスフロー濾過アセンブリは、窒素ブランケット下の乾燥ボックス中に含有されている。クロスフロー濾過アセンブリは、バルブレスピストンポンプを含む。鉱油中にMagTiベース触媒組成物を含有するスラリーは、アセンブリに注射器を用いて手動で注入される。MagTiベース触媒スラリーがアセンブリ中を短期間循環して、次にラインが開放されて、イソオクタン希釈剤補給のニードルバルブが開かれ、ラインが液体で満されたままとなる。透過物収集の開始時の時間が記録される。透過物収集リザーバは天秤上に配置され、回収されたプロセススラリー(触媒+鉱油+希釈剤)の量は、実験中にときどき時間と共に記録される。各クロスフロー濾過ラン(run)は、日本、東京のFuji Filter Mfg.Co.,LtdによるFujiloyクロスフローフィルタ要素(40μmと評価された開口)を使用する。
【0153】
クロスフローフィルタデバイスから排出されて、残余分溶液はボトルに収集される。残余分溶液は薄く、分級触媒組成物を収集するための濾過ステップを必要とする。分級触媒組成物は、乾燥ボックス内で中程度のガラスフリットを使用して真空濾過によって単離される。分級触媒組成物は収集され、鉱油中に分散される。触媒粒径分布は、Accusizer粒径分析装置によって得られる。
【0154】
プロピレンは、C供与体(シクロヘキシルメチルジメトキシシラン)を使用して、分級触媒組成物によって重合される。分級触媒組成物は注入の前に、200:1のAl:Tiモル比及び62.5のC供与体:Tiモル比で、TEAl(トリエチルアルミニウム)及びC供与体と3分間事前混合される。事前混合した触媒構成成分を25℃のプロピレン1375gを装入したオートクレーブに充填して、続いて3,000秒間のH充填を続ける。オートクレーブの内容物は25℃にて15分間維持され、次に65℃まで上昇されて、オートクレーブの内容物を排出することによって反応を停止させる前に、この温度で約1時間保持される。ポリマー細粒の測定は、PSD(Gradex 2000)によって行われる。
【0155】
クロスフロー濾過の結果を下の表2に示す。
【表2】

【0156】
B.動的濾過による分級
図4及び5に示すような動的濾過アセンブリを使用して、上で開示したように調製したMagTiベース触媒組成物を分級する。試料のMagTiベース触媒組成物は、ドイツ、バートクロイツナッハのPall Corporationから入手可能なSchenk ZEF動的濾過ユニット(増粘構造)を使用して、不活性雰囲気中で分級される。Schenk ZEF動的濾過ユニットは0.3mの総濾過表面積を有する。
【0157】
動的フィルタ要素は以下から選択される。
【0158】
エッチング加工ニッケルスクリーン、40μm×450μm開口、20%開口面積;及び
【0159】
Durafil(商標)スクリーン、60μm幅細長開口。
【0160】
プロセススラリーは触媒スラリーの形で圧力下にて、希釈剤液体が事前装填された動的濾過デバイスに投入される。分級触媒組成物は重力排出によって除去され、希釈剤を蒸発させることによって濃縮され、次に収集され鉱油中に分散される。触媒粒径分布は、Accusizer粒径分析装置によって得られる。
【0161】
プロピレンは、C供与体(シクロヘキシルメチルジメトキシシラン)を使用して、分級触媒組成物によって重合される。分級触媒組成物は注入の前に、200:1のAl:Tiモル比及び62.5のC供与体:Tiモル比で、TEAl(トリエチルアルミニウム)及びC供与体と3分間事前混合される。事前混合した触媒構成成分を25℃のプロピレン1375gを充填したオートクレーブに投入して、続いて3,000秒間のH充填を続ける。オートクレーブの内容物は25℃にて15分間維持され、次に65℃まで上昇されて、オートクレーブの内容物を排出することによって反応を停止させる前、この温度で保持される。ポリマー細粒の測定は、PSD(Gradex 2000)によって行われる。
【0162】
動的濾過の結果を下の表3−1、3−2、及び3−3に示す。
【表3】


【表4】


【表5】

【0163】
触媒スラリー固体含有率の決定
【0164】
A.較正
PA236プローブを備えたMinispec MQ−20ベンチトップパルスプロトンNMR分析装置(テキサス州、ウッドランズのBruker Opticsから入手可能)(以下、「NMR分析装置」)は、以下のように較正される。100%Hydrobrite(登録商標)380鉱油を含有する事前秤量したNMR管は、加熱ブロック内に配置される。試料は、下の表4−1に示すような比例的により低いパーセンテージの液体を含有する試料を模倣するために、異なる重量で7回測定される。
【表6】

【0165】
B.標準触媒スラリー
40.264重量%の既知の固体含有率を有する触媒スラリーは、触媒及びHydrobrite(登録商標)380鉱油を、ニュージャージー州ハイツタウン(Highstown)のMettler Instrument Corp.から入手可能なMettler AE200S化学天秤で別々に秤量することによって調製される。事前秤量したMagTiベース触媒及び鉱油は混合されて、標準触媒スラリーを形成する。MagTiベース触媒組成物は、(触媒組成物に基づいて)1.44重量%のイソペンタンを有する。触媒組成物のイソペンタンの重量%は、ガスクロマトグラフィーによって決定される。標準触媒スラリーの既知の固体重量パーセントは、以下の式によって決定される。
既知の固体重量%=[(触媒+洗浄液)の重量%]×[1−(洗浄液の重量%/100)]
=40.264%×[1−(1.44/100)]
=39.684%
【0166】
標準触媒スラリーのNMR試料管はNMR分析装置に配置され、NMRスペクトルが生成されて、NMRスペクトルから標準触媒スラリーの測定されたNMR液体重量%が58.481%として計算される。標準触媒スラリーの測定固体重量パーセント値は、以下の式によって決定される。
NMR測定された固体重量% = 100%−58.481液体重量%
= 41.519%
【0167】
C.移行補正因子
標準触媒スラリーの(1)既知の固体重量%値及び(2)NMR測定された固体重量%値を使用して、以下の式によって移行補正因子を計算する。
移行補正因子 = 既知の固体重量%/測定された固体重量%
= 39.684/41.519
= 0.9558
【0168】
D.未知の固体含有率を有する触媒スラリーの固体重量%
グローブボックス内で、未知の固体含有率を有する、Hydrobrite(登録商標)380鉱油中のMagTiベース触媒の触媒スラリー試料が回転式(rotisserie)ミキサーに配置され、均質性を確保するために、40℃にて少なくとも15分間「回転」混合される。NMR管は秤量され、ピペットを使用してスラリーがNMR管に移される。スラリーが充填されたNMR管はそれぞれ秤量される。NMR管はキャップされて、40℃にて少なくとも35分間加熱される。NMR管はNMR分析装置に個別に配置され、それによりNMR分析装置は各試料の液体重量パーセントを計算する。NMR分析装置は、試料の液体重量パーセントを56.13%として計算する。移行補正因子が使用されて、以下の式によって未知の固体含有率を有する触媒スラリーの固体重量%が計算される。
固体重量%(未知) = 移行補正因子×(100−液体重量%)
= 0.9558×(100−56.13%)
= 41.93%
【0169】
未知の固体含有率を有する触媒スラリーの複数の試料の固体重量%は、上述のように計算される。複数の試料の標準偏差は0.4%である。
【0170】
本明細書に記載する現在好ましい実施形態に対する各種の変更又は修正は当業者に明らかであることが、理解されるはずである。このような変更及び修正は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、並びにその意図する利点を減少させることなく行うことができる。したがってこのような変化及び修正は添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒粒子及び触媒細粒を含む触媒組成物で構成されたスラリーをクロスフロー分級デバイス中に導入することと、
前記スラリーから前記触媒細粒を除去して残余分を形成することと、
前記残余分から分級触媒組成物を回収することと、
を含む、分級触媒組成物を製造するプロセス。
【請求項2】
1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記触媒組成物が1重量%を超えるF10.5値を有し、約0.1重量%〜1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記触媒粒子を研磨することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
約0.2m/秒〜約2.0m/秒の接線速度にてスラリーをクロスフローフィルタ要素に沿って移動させることを含み、前記クロスフローフィルタ要素を有するクロスフローフィルタデバイスを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記スラリーをバルブレスポンプに通過させることを含み、クロスフローフィルタ要素を有するクロスフローフィルタデバイスを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒細粒を前記クロスフローフィルタ要素に通過させることを含み、前記クロスフローフィルタ要素を有するクロスフローフィルタデバイスを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
動的フィルタ要素を移動させることと、前記動的フィルタ要素と前記スラリーとの間に約0.1m/秒〜10.0m/秒の相対接線速度を生成することとを含み、前記動的フィルタ要素を有する動的フィルタデバイスを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
触媒細粒を動的フィルタ要素に通過させることを含み、前記動的フィルタ要素を有する動的フィルタデバイスを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
触媒組成物のスラリーをクロスフロー分級して残余分を形成することと、
分級触媒組成物を前記残余分から回収することと、
前記分級触媒組成物をオレフィンと重合条件下で接触させることと、
ポリオレフィン組成物を形成することと、
を含む、重合プロセス。
【請求項11】
1重量%未満のF10.5値を有する分級触媒組成物を回収することを含む、請求項10に記載の重合プロセス。
【請求項12】
前記分級触媒組成物を共触媒、選択性制御剤、及びその組合せからなる群より選択される要素と組合せることを含む、請求項10から11のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項13】
約0.1重量%〜約2重量%のF250値を有するポリオレフィン組成物を形成することを含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項14】
前記スラリーにクロスフロー濾過を受けさせることを含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項15】
前記スラリーに動的濾過を受けさせることを含む、請求項10に記載の重合プロセス。
【請求項16】
触媒組成物のスラリーを収容して、分級触媒組成物を保持するのに適したクロスフロー分級デバイスと、
前記分級触媒組成物及びオレフィンを収容して、ポリオレフィンを形成するのに適した重合リアクタと、
を備える装置。
【請求項17】
前記クロスフロー分級デバイスが動的濾過デバイス及びクロスフロー濾過デバイスからなる群より選択される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
回転動的フィルタ要素、振動動的フィルタ要素、及び往復運動動的フィルタ要素からなる群より選択される動的フィルタ要素を有する動的濾過デバイスを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記重合リアクタが流動床重合リアクタである、請求項16から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記触媒組成物がチーグラーナッタ触媒組成物、幾何拘束触媒組成物、メタロセン触媒組成物、及びその組合せからなる群より選択される、請求項16から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
触媒組成物の移行補正因子を調製することと、
触媒スラリーのNMR応答信号から前記触媒組成物を含む前記触媒スラリーの液体重量パーセント値を決定することと、
前記NMR液体重量パーセント値及び前記移行補正因子から前記触媒スラリーの固体重量パーセント値を計算することと、
を含む、スラリー中の固体含有率を決定する方法。
【請求項22】
前記調製が前記触媒組成物の既知の固体重量パーセント値を有する標準触媒スラリーを形成することと、
NMR分析装置を用いて、前記標準触媒スラリーの測定された固体重量パーセント値を決定することと、
前記既知の固体重量パーセント値を前記測定された固体重量パーセント値で割って、前記移行補正因子を計算することと、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記調製が前記触媒組成物の洗浄液重量パーセント値を決定することと、前記既知の固体重量パーセント値から前記洗浄液重量パーセント値を引くこととを含む、請求項21から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記触媒スラリーの複数の試料を提供することと、
各試料の前記液体重量パーセント値を決定することと、
前記複数の液体重量パーセント値及び前記移行補正因子から、約0.4%未満の標準偏差を有する前記触媒スラリーの固体重量パーセント値を計算することと、
を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
NMR分析装置を用いて前記NMR応答信号を生成することを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
NMR分析装置を較正することと、前記NMR分析装置を用いて前記NMR応答信号を生成することを含む、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−500321(P2012−500321A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523835(P2011−523835)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/042244
【国際公開番号】WO2010/021768
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】