説明

分離取出装置

【課題】様々な状態の紙葉類に捌き効果を与える分離取出装置を提供する。
【解決手段】分離取出装置においては、複数の紙葉類が積層された積層体が支持台上に支持され、ガイドに接触して整位され、積層体に押し付け力を与えた状態で加振部から高周波振動が与えられる。積層体の最上面の紙葉類が回転するフィードローラで吸引されて取り出される。ガイドは、紙葉類が進入されるガイド口をフィードローラとの間に規定するガイド端を有し、このガイド端は、最上面の紙葉類に接触する接触位置を含む紙葉類に略平行な第1の仮想面内に略配置され、或いは、第1の仮想面と前記取り出し機構の積層体側最外周に接し、紙葉類に略平行な第2の仮想面との間に配置される。紙葉類を分離する分離部がガイド口の背後に配置され、ガイド口の付近には、積層体の側面にエアを吹き込むエア吹き出し部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙葉類が積層された積層体からから一枚ずつ紙葉類を取り出す分離取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類(紙状媒体とも称せられる。)を検査及び処理する装置、例えば、プリンタ、複写機、現金自動預払機(ATM)、銀行券処理機、郵便物処理装置等の装置においては、印刷用紙、紙幣、コピー紙、封書、葉書、カード、証券類等の紙葉類を取り扱っているが、複数枚の紙葉類を積層した状態から一枚ずつ紙葉類を取り出す必要がある。従って、これら検査処理装置は、紙葉類(紙状媒体)が積層された積層体から紙葉類を一枚ずつ分離して取り出す分離取出装置を備えている。
【0003】
従来、紙葉類を積層した積層体から紙葉類(紙状媒体)を分離して取り出す分離取出装置においては、精度良く、重ねを発生させずに装置内に紙葉類を取り出す必要がある。しかしながら、積層体は互いに紙葉類が長時間密着された状態にあり、互いに吸着を起こしていることが多く、1枚毎に確実に分離して紙葉類を取り出すことが困難とされている。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されるように、積層体の上面に振動子がスポット状に当接され、この振動子で紙葉類が加振されて予め紙葉類間の密着力を低下させる分離取出装置が提案されている。
【特許文献1】特開2007−145567
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された分離取出装置によれば、予め束状態での紙葉類間の密着力を小さくすることができ、最上面紙葉類とその下方に積層されている紙葉類との間の摩擦力を十分に抑え、最上面の紙葉類のみを次々に取り出すことができ、紙葉類の重ね取りを防止することができる。しかしながら、紙葉類の剛性が小さい(こしが弱い)と超音波振動による摩擦低減効果が減少する傾向がある。また、静電気的に帯電した束の分離には超音波振動のみでは分離しにくい問題がある。
【0006】
このように従来の分離取出装置にあっては、様々な状態の紙葉類に対して万能な捌きを実現することが出来ず、あらゆる状態の紙葉類に捌き効果を与えることが出来る分離取出装置の開発が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、様々な状態の紙葉類に捌き効果を与える分離取出装置を提供することにある。
【0008】
この発明によれば、
複数の紙葉類が積層された積層体を支持する支持台と、
前記積層体上で最上面に配置される紙葉類の位置を検知するセンサと、
前記最上面の紙葉類に接触する接触端を有し、前記積層体に高周波振動を与える加振部と、
前記加振部及び前記積層体間に押し付け力を与える押し付け機構と、
前記積層体から前記最上面の紙葉類を取り出し、搬送する紙葉類の取り出し機構と、
前記積層体が接触される整位面を有し、前記紙葉類を整位するガイドであって、当該ガイドは、前記積層体から取り出された紙葉類が進入されるガイド口を前記取り出し機構との間に規定するガイド端を有し、当該ガイド端は、前記加振部が前記最上面の紙葉類に接触する接触位置を含む前記紙葉類に略平行な第1の仮想面内に略配置され、或いは、当該第1の仮想面と前記取り出し機構の積層体側最外周に接し、前記紙葉類に略平行な第2の仮想面との間に配置されるガイドと、
前記積層体から重なって取り出された紙葉類を分離する分離部であって、前記ガイド口を介して進入した紙葉類の搬送路を定める分離部と、
前記積層体の側面にエアを吹き込むエア吹き出し部と、
を具備することを特徴とする分離取出装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
積層体間の摩擦低減効果を効率的に与え、十分な捌き効果が得られる分離取出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る紙葉類の分離取出装置を説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る分離取出装置を示し、図2は、図1に示した各部の配置関係を示している。図1に示される分離取出装置は、紙葉類1を積層した積層体3を積載し、これを保持する支持台4を備え、この支持台4は、駆動機構28によって駆動されて上昇或いは降下される。従って、積層体3は、駆動機構28によってその最上面の位置が調整される。積層体は、通常矩形状(長方形)の紙葉類が積層されて構成されることから、互いに整位されて配置されている限りは、立方体(直方体)に形成される。従って、積層体3は、上下面を有すると共に前方及び後方の面を有し、また、積層体は、左右側面を有している。ここで、下面は、支持台4に接する面に相当し、上面は、下面に対向する積層体の最上面の紙葉類の面に相当している。また、前方の面は、紙葉類が取り出される搬送方向を前方としてこの前方に対向する面に相当し、後方の面は、前方の面に対向し、搬送方向とは逆の背面に相当している。後に説明されるように支持台4が傾けられている際には、この積層体は、直方体には形成されず、傾きに応じて立方体の面が傾いた形状をなしている。
【0012】
この積層体3上には、積層体3の高さ、即ち、最上面の紙葉類2の位置を検知する検知センサ12の接触子、例えば、先端にコロがついた回転レバー式の検知センサが紙葉類2に接触するように配置されている。この接触式のセンサにあっては、積層体3の最上面の紙葉類2にコロが接触されて、回動レバーの角度が検出され、積層体3の上面高さが検知される。検知センサ12は、接触型に限らず、光学式非接触変位計のような非接触センサで置き換えられても良い。
【0013】
また、積層体3に超音波振動V0を与える振動体10の先端(接触端)が積層体3に接触するように振動体10が配置されている。振動体10は、振動体10を積層体3に押し付ける定圧押し付けバネ15に機械的に連結され、この定圧押し付けバネ15によって振動体10から積層体3に与えられる押圧力が一定に維持される。この押圧力が一定に維持された状態で積層体3の面に対して略垂直の方向で超音波振動V0が振動体10から積層体3に与えられる。
【0014】
ここで、検知センサ12の接触子(コロ)は、振動体10の振動子14が接触される積層体3上の接触位置(振動付加位置)に近い場所、或いは、振動子14の接触位置を基準にこの接触位置よりも紙葉類2の取出方向とは反対側で検知センサ12の接触子が接触されることが望ましい。後に述べるように、側面エア6,7により積層体3が吹上げられるので、基準となる最上面の紙葉類2の高さを正確に検知するためには前述した位置に検知手段12の接触点を配置することが望ましい。
【0015】
ここで、図1に示されるように、振動体10は、振動子25が超音波ホーン14に連結される構造を有している。振動子25は、所謂ボルト締め型振動子と称せられ、圧電素子としての圧電セラミクス部の内部から電極が外部に延出され、この圧電セラミクス部が1対の円柱状ブロック間にボルトによってボルト締めされた構造を有し、ブロックに超音波ホーン14が螺合されて超音波ホーン14が振動子25に固定されている。
【0016】
この振動子25においては、ディスク状圧電セラミクス部が電極に印加した駆動電圧に応じて超音波振動されると、振動体10の全体が振動してその振動が円柱状ブロックの振動面に伝達される。この圧電セラミクス部の振幅は、比較的小さく、円柱状ブロックの振動面から超音波振動V0を取り出して積層体3の面に与えられても、紙葉類1,2を十分に捌くことができるような振動を積層体3に与えることができない虞がある。従って、この超音波振動V0を増幅する為に振動子25は、超音波ホーン14に機械的に連結されている。振動子25は、振動子駆動部34からの駆動信号で駆動されて振動する。
【0017】
上述した超音波ホーン14を備えた振動体10は、その先端部が積層体11の表面に対し略垂直の方向Vで振動される。振動体10において、超音波ホーン14が積層体3の上部に押し付けると、超音波ホーン14の先端と最上面の紙葉類2との間並びに最上面紙葉類2とその下方に積層されている紙葉類1との間のいずれもの摩擦も十分に低くなりその状態で最上面紙葉類を搬送することで、重ね取りの少ない分離を実現することができる。
【0018】
尚、円柱状ブロックの振動面から取り出される超音波振動V0で紙葉類1,2を十分に捌くことができる場合には、必ずしも超音波ホーン14が設けられなくとも良い。また、効果的な超音波の周波数は、可聴帯域以上の低周波数として18kHz〜28kHz程の周波数に設定される。
【0019】
図1に示す分離取出装置には、図3に示されるように、紙葉類1を整位する前面ガイド5が設けられている。前面ガイド5は、後に説明するように図3に示される形態に限らず、図4或いは図5に示されるような形態に形成されても良い。前面ガイド5には、積層体3の前方の面が当接されて紙葉類1が整位される。また、前面ガイド5に接するように前面ガイド5の取出方向には、分離部13が設けられている。この分離部13は、積層体3の上面から紙葉類1を取り出す取出方向に沿って斜面を有している。前面ガイド5の上方端上には、この上方端から間隔Gを空けるように、積層体3から最上面の紙葉類2を取り出し搬送する取り出し機構としてのフィードローラ9が配置されている。従って、このフィードローラ9と前面ガイド5のガイド端との間にガイド口が規定される。このフィードローラ9は、また、分離部13の斜面との間に同様に間隙Gを空けるように配置され、ガイド口に連続する搬送路が規定されている。フィードローラ9は、回転駆動機構30によって回転駆動され、また、吸引機構32に連結されてその内に負圧が与えられる。振動体10による超音波振動によって捌かれて取り出された紙葉類1は、負圧が与えられたフィードローラ9に吸引されて分離部13の斜面に向けられ、矢印R0で示すようなフィードローラ9の回転に伴い分離部13の斜面上を搬送される。
【0020】
フィードローラ9は、円筒状に形成され、吸引機構32に連通された負圧室を有する吸引部11を備えている。フィードローラ9の外周或いは外周の一部に吸引口を有する可撓性シート、例えば、ゴムシートが貼り付けられている。吸引機構32は、吸引部用の第1の電磁バルブ(図示せず)を備え、この第1の電磁バルブの開閉に応じて吸引部11の負圧室に負圧が与えられる。フィードローラ9の回転が安定した後、検知センサ12からの検知信号に応答して第1のバルブが開成されて吸引機構32から真空(負圧)が負圧室に与えられる。従って、可撓性シートが紙葉類2に対向した時に紙葉類2の先端が吸引部11の吸引口に吸引され、フィードローラ9の回転とともに紙葉類2が引き上げられて紙葉類2の先端が間隙G内に導入される。
【0021】
尚、図1に示される分離取出装置においては、重ね取りを防止しながら紙葉類1を取り出す機構として真空吸着による取出機構32を採用しているが、この真空吸着による取出機構32に代えて取り出し機構として摩擦力を利用した摩擦分離機構が用いられても良い。
【0022】
分離部13には、吸引機構32に連通する空洞部(図示せず)を有し、紙葉類2が搬送される傾斜面に開口する複数の開口部にこの空洞部がチャネル(図示せず)を介して連通されている。吸引機構32は、分離部用の第2の電磁バルブ(図示せず)を備え、この第2の電磁バルブの開閉に応じて分離部13内の空洞部に負圧が与えられる。検知センサ12からの検知信号に応答して、第2の電磁バルブが開成されて吸引機構32から負圧が分離部13内の空洞部に与えられ、吸引力が傾斜面の開口部に生じて紙葉類2が傾斜面上の開口部に吸引される。吸引部11での吸引力及び傾斜面上の開口部での吸引力が適切に選定され、調和されることによってフィードローラ9の回転とともに紙葉類が傾斜面上を搬送される。
【0023】
図1に示される分離取出装置においては、積層体3の最上面の紙葉類2に振動体10がスポット状に接触して加振をすることにより予め紙葉類1、2間の密着力を小さくすることができる。即ち、予め束状態での紙葉類1、2間の密着力を小さくし、最上面の紙葉類2との間並びに最上面の紙葉類2とその下方に積層されている紙葉類1との間の摩擦力を十分に低減し、紙葉類2を取り出すことで、紙葉類1、2の重ね取りを防止することが出来る。この超音波振動による捌き方式は、実験的には剛性が高い新券(所謂、こしが強い紙葉類1、2)などに効果が高いことが確認されている。また、摩擦係数が異なる紙葉類1、2からなる束に対しても紙葉類1、2間の摩擦を低減することにより初期摩擦係数の差異が緩和されて、安定した分離取出ができることも確認されている。しかしながら、剛性が小さい紙葉類1、2(所謂、こしが弱い紙葉類1、2)にあっては、超音波振動による摩擦低減効果が減少する傾向があることも実験的に確認されている。そこで、図1に示される分離取出装置にあっては、エア吹き出し部6,7が積層体3の前方の両側に夫々設けられている。エア吹き出し部6,7は、エア供給部34に連通され、エア供給部34から供給されたエアがエア吹き出し部6,7から積層体3を構成する紙葉類1、2に供給される。従って、剛性が小さい紙葉類1、2(所謂、こしが弱い紙葉類1、2)にあっても、効果的に予め捌くことが出来る。
【0024】
尚、紙葉類は、材質や大きさや厚さや周囲環境(特に湿度)によって剛性(ヤング率)が大きく異なっている。一般的には、葉書なども含めた紙葉類のヤング率は、大体1〜20[GPa]の範囲にあると言われているが、通常のコピー用紙などの類は、1〜3GPa程度である。ヤング率の値が高いとこしが強いと称し、値が低いとこしが弱いと称している。紙幣等にあっては、その使用状態によってこしの強さが大きく異なり、折れ目がついていたり、しわくちゃだったり、新品だったりする。新券はヤング率が高い(こしが強い)、しわくちゃな券はこしが弱い、などと称している。なお、紙のヤング率で言えばこの明細書では、目安としておよそ1GPa以下の範囲がこしの弱い紙葉類であると考えている。
【0025】
エア供給部34からのエアによって紙葉類1,2の側面にエアを吹付けるエア捌き方式のみの採用では、すべての紙葉類1,2の取り出し方向と直交する側面に一方または両方から、取り出し方向寄りの積層体先端部付近にエアを吹き込むことが望ましい。積層体の先端部の方が積層体への拘束が少なくエアが入り易く、取り出し方向寄りをほぐした方が安定した取り出しができる。単に、積層体3にエアを吹き付けても紙葉類1,2の間にエアが吹き込まれるわけではない。特に、エアを利用した紙葉類1,2の捌きにあっては、新券の紙葉類の捌きは苦手であり、紙葉類間の摩擦の影響を受け易い傾向がある。図1に示される分離取出装置にあっては、エアでの捌きに加えて超音波振動での捌きが併用されていることから、紙葉類1、2間の摩擦或いは紙葉類の剛性の如何に拘わらず紙葉類を安定して分離し、取り出すことが可能となる。
【0026】
尚、超音波振動による捌き及びエアによる捌きは、併用されて用いられても良く、また、束の状態により捌き方式を選択しても良い。例えば、超音波振動による捌き及びエアによる捌きが実施されて紙葉類1,2が捌かれた後に、超音波振動による捌き及びエアによる捌きのいずれかのみが実施されても良い。超音波振動による捌きが実施されない場合には、図示せぬ移動機構によって振動体10が退避される。また、積層体の束状態を検知するセンサが別途設けられ、積層体の束の状態(捌かれた状態)が検出されても良い。
【0027】
エア吹き出し部6,7は、積層体3の取り出し方向と直交する側面の一方または両方に対向するように設けられ、フィードローラ9で取り出される積層体3、即ち、紙葉類1,2の先端部付近にエアを吹き込むことが望ましい。積層体3の先端部は、積層体3の中央に比べて積層体3内での紙葉類1,2の拘束が少なくエアが入り易く、紙葉類2の取り出しに際して紙葉類1,2をほぐすことができる。
【0028】
エア供給部34は、具体的には、図6に示すように構成される。即ち、エア供給部34は、コンプレッサ19を備え、図示しない電磁開閉バルブが開になった時にこのコンプレッサ19からの圧縮空気が空気流供給路部20、例えば、ホース或いはパイプを介してエア吹き出し部6,7に供給されてエア吹き出し部6,7から紙葉類1,2のガイド側前端部に吹き付けられる。
【0029】
エア吹き出し部6,7からは、イオン化したエアが吹き出され、静電気的に帯電した紙葉類1,2の帯電を除電することができる。通常、帯電した紙葉類1、2の束にイオン化したエアを与えても、紙葉類束の表面のみが徐電され、紙葉類1,2間の徐電はできない。超音波振動により紙葉類1,2を振動させて紙葉類1,2間をわずかに剥離させた隙間にイオン化したエアを吹き込むことにより、イオン化したエアが紙葉類1、2間に行き亘り、紙葉類1,2間の確実な徐電が可能となる。従って、湿度の低く帯電しやすい環境下においても安定した紙葉類2の分離取出が可能となる。
【0030】
イオン化したエアを供給するエア供給部34は、具体的には、図7に示されるように空気流供給路部20に除電部21が設けられ、この除電部21は、アース23に接続された高圧電源22に接続されている。除電器21には、電極針が設置され、この電極針に高圧電源22からプラスの高電圧とマイナスの高電圧が交互に印加される。従って、この高電圧の印加に伴い、除電器21中でコロナ放電が生じ、コンプレッサ19により供給された圧縮空気がイオン化され、イオン化されたエアがエア吹き出し部6,7から紙葉類1,2のガイド側前端部に吹き付けられる。
【0031】
尚、金属体は除電能力を低下させるので、エア吹き出し部6,7の筐体等は、金属製でないことが好ましい。また、高圧電源22は、必ずアース電極に接続され、或いは、アース接地23されることが必要とされる。アースされないと、除電器21の内部で帯電が起こり、除電器21から放電が起り、除電器21自体の破損につながる虞がある。
【0032】
一般的に、紙葉類1,2が置かれる雰囲気中の相対湿度が35%を下回ると、静電気が発生しくい紙(紙葉類)も帯電し易くなるが、相対湿度を上げると(相対湿度65%以上で)帯電防止が可能となる。従って、エア吹き出し部6,7から吹き出されるエアの湿度が高くなることが好ましい。従って、図8に示されるように除電気21に代えて、或いは、除電気21に加えて加湿器24が空気流供給路部20に設けられても良い。加湿器24での圧縮空気(エア)の加湿方法にはスチーム式(水を沸騰させる)、気化式(水を蒸発させる)、超音波式(水を細かな粒々にしてそのまま出す)などがあるが、いずれも使用可能である。加湿器24で圧縮空気(エア)に水分が含ませられてエア中の湿度が上昇され、このエアが紙葉類1,2のガイド側前端部に吹き付けられる。従って、紙葉類1,2は、静電気が発生し難く、互いに分離が容易となる。
【0033】
図1に示される分離取出装置においては、図2に示されるように、前面ガイド5の上方端とフィードローラ9の外周との間に距離ΔH1を有する間隙Gが空けられ、紙葉類2に接触する振動体10の先端、即ち、積層体3の最上面の紙葉類2とこの紙葉類2に平行な仮想面であって、フィードローラ9の外周に接する仮想面との間に距離ΔH2が与えられている。ここで、距離ΔH2が距離ΔH1以上になるように定められている。(ΔH2≧ΔH1)この関係は、前面ガイド5の上方端と略等しい高さの位置に或いは前面ガイド5の上方端よりも低い位置に積層体3の最上面の紙葉類2が配置され、最上面の紙葉類2の先端がフィードローラ9の吸引部11とエア吹き出し部6,7からのエアにより略距離ΔH2だけ持ち上げられて吸引部11に吸着され、最上面の紙葉類2が距離ΔH1を有する間隙Gに導かれることを意味している。
【0034】
図2に示される配置は、次のような理由に基づいている。
【0035】
超音波振動による捌き方式では、紙葉類1,2間の摩擦が非常に小さくなり、わずかな外力(重力や券搬送中連出力)により券が上の方から少しずつ取出方向に順次移動してしまう虞がある。紙葉類1,2の分離取出中に多数の紙葉類1,2が前面ガイド5の上端よりも上方に位置されると、多くの紙葉類1,2がフィードローラ9と分離部13間の隙間Gに進入し、紙葉類1,2を一枚一枚に分離する分離部13の機能を阻害する虞がある。負圧を利用した吸着による分離方式にあっては、このような紙葉類1,2の束の進入に対して分離能力が著しく低下する虞がある。
【0036】
上述したように図1に示される分離取出装置では、積層体3の上面に振動を与えて紙葉類1,2間の摩擦を著しく軽減し、いわゆる真空取出分離方式により捌かれた紙葉類を1枚ずつ給紙している。この給紙に当たっては、支持台4は、積層体3の上面高さが常に一定の高さ範囲、或いは、振動体11の接触部と紙葉類1,2と間の押付力が所定の範囲内にあるように制御されている。
【0037】
このようなことを考慮して、振動子14が紙葉類2と接触する前の高さが前面ガイド5の先端部の高さ以下(ΔH1≦ΔH2)であることが望ましい。それと同時に取出並びに搬送中にあっても、最上面の紙葉類2の高さが取出方向前面ガイド5の上端部の高さ以下(ΔH1≦ΔH2)になるように支持台4を制御することが望ましい。このような設定により、積層体3の一部の紙葉類1が直接フィードローラ9と分離部13間の隙間17に進入することが阻止される。実際に実験した結果においても、最上面紙葉類2の取出及び搬送中高さが取出方向前面ガイド5上端部の高さと同等以下(ΔH1≦ΔH2)の場合には、紙葉類を安定して取り出すことができるが、同等の位置より1mm上方に設定すると取り出し不良が発生する確率が高くなっていることが確認されている。
【0038】
尚、繰出ロータ9の最下部位置と最上面紙葉類2の間隔16が開いても最上面の紙葉類2はフィードローラ9の吸引力と側面エア6、7(手前側は図示せず)の吹上げにより、吸着され搬送されていく。尚、側面エア6,7は、積層体3の両側に限らず、いずれか一方の側に設けられても良い。
【0039】
図1に示されるようにセンサ12で検出された積層体3の最上面位置の位置信号は、制御部36に供給され、この制御部36で基準位置と比較されて差信号が駆動機構28に与えられる。従って、駆動機構28によって支持台4が制御され、積層体3の最上面位置が一定位置に維持される。また、制御部36からの回転指示に従って回転駆動部30が動作され、この回転駆動部30からの回転駆動信号によってフィードローラ9が定回転で回転される。同様に、制御部36からのエア供給指示に従ってエア供給部34が動作され、このエア供給部34からエアがエア吹き付け部に供給され、積層体3に向けて吹き出される。また、制御部36からは、検知センサ12からの検知信号を基に第1及び第2の吸引指令信号が夫々吸引機構32に与えられ、第1及び第2のバルブが開成され、取り出し動作終了信号により電磁バルブおよび吸引用のモータが停止する。従って、停止するまでの間、第1及び第2の吸引開始指令で吸引部11及び分離部13で吸着が生ずることとなる。
【0040】
図1に示された分離取出装置においては、制御部36下の制御で次のように動作される。始めに、回転駆動部30に回転開始信号が制御部36から与えられてフィードローラ9の回転が開始される。回転開始時点では、吸引機構32の第1の電磁バルブは閉じられて吸引機構32は、非吸引状態に維持される。制御部36が駆動機構28に動作開始信号を与えると、駆動機構28が作動して積層体3が載置された支持台4が上昇し、積層体3が上昇される。センサ12の検出で紙葉類2の高さが所定の高さまで到達したことが判明すると、制御部36は、積層体3の最上面位置をこの位置のままに維持するように駆動部28を制御する。また、積層体3の高さが最適位置(所定高さ)に維持されると、制御部は、振動子駆動部35に振動開始を指示し、振動子駆動部35は、振動子25に駆動信号を供給して振動子25を振動させて積層体3に超音波振動を与えて紙葉類1を捌き、搬送可能とする。また、制御部36からの指令で吸引機構32が動作し、吸引可能な状態に維持された状態で、検知センサ12からの検知信号を基に制御部36から第1の指令が吸引機構32の第1の電磁バルブに供給されて第1の電磁バルブが開成され、フィードローラ9の吸引部11が分離部13に対向した際に、紙葉類2の先端が吸引される。この時、フィードローラ9と積層体3の最上部の紙葉類2間に生じる吸引力と側面エア6,7からの供給されるエアにより、紙葉類2の先端部が持ち上がりフィードローラ9の吸引部11に吸引され、吸引部11の表面のゴムシートの摩擦力によって紙葉類2が取り出され、重ね取り防止の為の分離部13を介して紙葉類処理装置(図示せず)内に取り込まれる。フィードローラ9は、例えば1回転で1枚を給紙しても良く、1回転で複数枚を給紙しても良い。また、第1の指令と同時に第2の指令によって第2のバルブが開成されて分離部13に紙葉類1を吸引する吸引力が発生される。従って、紙葉類2が給紙されている時に、隙間Gに連なって進入する後続の紙葉類1の隙間Gへの進入が阻止される。
【0041】
次々に紙葉類1,2が搬送するに伴いセンサ12が積層体3の高さを検出して紙葉類2の高さが所定の高さに維持するように駆動機構28によって支持台4が上昇され、積層体3が所定の高さに維持される。
【0042】
図1に示された分離取出装置では、紙葉類1が重力方向に沿って積層されているが、重力方向に沿って積層される場合に限らず、重力と直交する方向に積層させるよう支持台4上で紙葉類1,2が互いに密着された縦列に積層配置されても良い。このような積層配置では、前面ガイド5が上方に配置されるように図1に配置で搬送方向が重力方向とは反対の方向となり、図1の図面上右側が上方に定められる。この明細書において、積層体3に関して最上面の紙葉類とは、支持体上に積み重ねられる方向が重力に抗する方向である場合に限らず、略水平な方向であっても、支持台4上に重ねられる方向を基準として支持台4から最も離れて位置される紙葉類を最上面の紙葉類と定義する。従って、密着されて縦列に積層配置された積層体においては、取り出し対象とされる最外側に露出されている紙葉類が最上面の紙葉類に該当する。
【0043】
図1に示される前面ガイド5は、図3に示されるように分離部13の斜面に連接するように配置され、前面ガイド5の端面は、紙葉類1と接触する前面ガイド5の接触面に対して略直角(搬送路に沿って略直角)に形成されているが、図4に示されるように前面ガイド5の端部がL字状に折り曲げられて分離部13の斜面に埋設されても良い。また、図5に示されるように前面ガイド5上に分離部13が設けられ、この分離部13の斜面の紙葉類1の進入側が紙葉類1と接触する前面ガイド5の接触面に対して直角に形成される進入端を備えても良い。この進入端は、ガイド5とは別体であるが、実質的にガイドとして機能するガイド端と称する。このように分離部に進入する入口部を直角形状にすることによって、取出並びに分離中の紙葉類2の後続の紙葉類が分離部13に進入する入口部においても必要以上に分離部13に進入しないようにすることができる。通常、紙葉類1,2の先端部が進入する部分は滑らかな曲線面に形成されるが、滑らかな曲線面に形成される場合には、隙間が複数の紙葉類1,2が重なった状態で進入し易くなることから、図1から図5に示されるように紙葉類2の進入部は、直角形状に形成されることが好ましい。
【0044】
図9は、図1に示した分離取出装置の変形例を示している。図1に示した分離取出装置では、支持台4は、前面ガイド5に対して直交する積層体3を載置する載置面を有しているが、図10に示すように前面ガイド5に対して鋭角(90°より小さい角)をなすような載置面を有しても良い。載置面が傾斜されている支持台41は、図9に示すように支持台41は、紙葉類取出方向Wと取出方向Wと直角を成す方向に傾斜を設けた載置面を有している。具体的には、積層体3がセットされた時に重力を利用して取出方向(搬送方向)W及びそれと直交する方向に向けて整位の為の力が働き、前面ガイド5に前のめり状態で紙葉類1、2が折衝するように載置面が傾斜されている。取出方向Wへの載置面の傾斜によって、積層体3がずれて取出方向前面ガイド5に整位される。さらには、振動子10と接触した際には、ホーン14と積層体3の上面にある最上面の紙葉類2とのなす角度が直角ではなく(振動子が取出方向とは逆に倒れるように)斜めに接触するため、取出方向Wに分力が生じ、より、取出方向の前面ガイド5に整位しやすくなる。なお、図9に示すように、図2を参照して説明したと同様に、最上面紙葉類2の高さは、前面ガイドの上端よりも下方に配置され、分離部に多数の紙葉類1が進入し、取出不良になることは防止される。
【0045】
通常異券種混合の分離取出装置などでは、取出し方向と直角を成す方向であり支持台傾斜が高い方の積層体3の側面側から紙葉類1,2としての券を補充している。即ち、装置筐体に扉が設けられ、この扉が開かれた際に支持台4上に紙葉類1,2の取り出し方向に対して略直交する方向から紙葉類1,2が補充される。この補充の方向に沿って支持体4は、その高さが低くなるように傾けられている。従って、扉を開いて紙葉類1,2を補充する際には、扉を開くと、支持台4の高い側が表れ、その支持台4の高い側からから低い側に沿って紙葉類1、2を滑り込ませることとなり、スムーズな紙葉類の補充が可能となる。また、図9に示す装置においては、取出方向Wと直角を成す方向に傾斜を設けることで、補充時に積層体3が補充する方向へと崩れることが少なくなる効果もある。
【0046】
支持台が取出方向Wに向けてその高さが低くなるととともに紙葉類1,2の補充の方向に沿って支持体4は、その高さが低くなるように傾けられるように斜めに支持体の面が傾斜されても良いことは明らかである。
【0047】
また、特に支持台4に傾斜された載置面を設けなくとも、図11に示すように装置に予め高さ調整機構48―1〜48−4が装置筐体50の底面の4隅に設けて、装置全体を傾斜させても良い。置装置筐体50が傾斜して配置されることによって図7に示した支持台41と同様に支持体4においてもその載置面をガイド5に向けて傾斜させることが出来る。
【0048】
以上のように、積層体間の摩擦低減効果を効率的に与え、十分な捌き効果が得られる分離取出装置を実現することができる。
【0049】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
【0050】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る分離取出装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示された分離取出装置の各部の配置を説明する為の分離取出装置を示す概略図である。
【図3】図1に示された分離取出装置の前面ガイドを拡大して示す概略図である。
【図4】図3に示された分離取出装置の前面ガイドの変形例を示す概略図である。
【図5】図1に示された分離取出装置の前面ガイドに代えて分離部に紙葉類進入部を設けた変形例に係る分離部を拡大して示す概略図である。
【図6】図1に示された分離取出装置におけるエア供給部の構成を示す概略図である。
【図7】図6に示された分離取出装置におけるエア供給部の変形例を示す概略図である。
【図8】図6に示された分離取出装置におけるエア供給部の他の変形例を示す概略図である。
【図9】図1に示された分離取出装置の他の変形例を示す概略図である。
【図10】図9に示される支持台を概略的に示す斜視図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る分離取出装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1...紙葉類、2...積層体最上面の紙葉類、2a...最上面の紙葉類の最上部位置、3...積層体、4...支持台、41...傾斜角を有する支持台、5...取出方向前面ガイド、5a...取出方向前面ガイドの上端部、6、7...エア吹付け機構、8...奥側面ガイド(図示せず)、9...フィードローラ、10...振動体、11...吸引部(ゴムシート)、12...高さ検知手段、13...分離部、13a...分離部入口部の上端部、14...超音波ホーン、15...定圧押付用バネ、16...間隔、17...隙間、18...高さ調整機構、19...コンプレッサ、20...空気流供給路部、21...除電器、22...高圧電源、23...アース電極またはアース接地、24...加湿器、Vo...振動方向、W...取出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙葉類が積層された積層体を支持する支持台と、
前記積層体上で最上面に配置される紙葉類の位置を検知するセンサと、
前記最上面の紙葉類に接触する接触端を有し、前記積層体に高周波振動を与える加振部と、
前記加振部及び前記積層体間に押し付け力を与える押し付け機構と、
前記積層体から前記最上面の紙葉類を取り出し、搬送する紙葉類の取り出し機構と、
前記積層体が接触される整位面を有し、前記紙葉類を整位するガイドであって、当該ガイドは、前記積層体から取り出された紙葉類が進入されるガイド口を前記取り出し機構との間に規定するガイド端を有し、当該ガイド端は、前記加振部が前記最上面の紙葉類に接触する接触位置を含む前記紙葉類に略平行な第1の仮想面内に略配置され、或いは、当該第1の仮想面と前記取り出し機構の積層体側最外周に接し、前記紙葉類に略平行な第2の仮想面との間に配置されるガイドと、
前記積層体から重なって取り出された紙葉類を分離する分離部であって、前記ガイド口を介して進入した紙葉類の搬送路を定める分離部と、
前記積層体の側面にエアを吹き込むエア吹き出し部と、
を具備することを特徴とする分離取出装置。
【請求項2】
前記エア吹き出し部は、前記紙葉類の取り出し方向に対して略直交する方向に沿って前記エアを吹き出し、前記紙葉類の取り出し方向における前記積層体の端部に吹き付けることを特徴とする請求項1記載の分離取出装置。
【請求項3】
前記エア吹き出し部は、イオン化されたエアであることを特徴とする請求項1又は請求項2の分離取出装置。
【請求項4】
前記エア吹き出し部は、水分を含んだエアであることを特徴とする請求項1又は請求項2の分離取出装置。
【請求項5】
前記センサからの位置信号に従って前記支持台を駆動して前記前記最上面の紙葉類を略一定の位置に維持する駆動機構を更に具備することを特徴とする請求項1記載の分離取出装置。
【請求項6】
前記ガイド端が前記搬送路方向に略直角に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のいずれかの分離取出装置。
【請求項7】
前記支持台は、前記積層体の紙葉類に前記搬送方向に沿って高さが低くなるような傾斜を与える支持面を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の分離取出装置。
【請求項8】
前記支持台は、前記紙葉類を前記支持体上に補充方向に沿って高さが低くなるような傾斜を与える支持面を有すること特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の分離取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−208858(P2009−208858A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51057(P2008−51057)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】