説明

切削装置

【課題】原点検出機構を構成する電極端子の交換作業を容易に実施することができる切削装置を提供する。
【解決手段】切削ブレード63の原点位置を検出するための原点検出機構7を具備する切削装置であって、原点検出機構は切削ブレードが装着された回転スピンドル62を回転支持するスピンドルハウジング61に回転スピンドルの端面と対向して装着するブラシ手段70と、ブラシ手段がスピンドルハウジングに装着された状態でブラシ手段と電気的に接続される接続端子と、接続端子とリード線を介して接続された原点検出回路80とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削装置、更に詳しくは切削ブレードの切り込み量を設定する基準となる切削ブレードの原点位置を検出するための原点検出機構を備えた切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハ等の被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードをチャックテーブルの保持面に対して垂直な切り込み送り方向に移動せしめる切り込み送り手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる加工送り手段とを具備している。このような切削装置においては、切削ブレードの切り込み量を設定する基準となる切削ブレードの原点位置を検出するための原点検出機構を備えている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】実用新案登録第2597808号公報
【0004】
上記特許文献1に開示された原点検出機構は、切削ブレードが装着された回転スピンドルを回転支持するスピンドルハウジングに回転スピンドルの端面に対向する連通穴を設け、この連通穴にカーボンからなる電極端子を摺動可能に配設するとともにスプリングを配設して電極端子を回転スピンドルの端面に押圧する。そして、連通穴の端部にリード線を取り付けたスプリング受けを螺合し、このスプリング受けに取り付けられたリード線を原点検出回路に接続した構成である。このように構成された原点検出機構は、切削ブレードを回転しつつ切削手段をチャックテーブルの保持面に向けて下降し、切削ブレードがチャックテーブルに接触すると上記原点検出回路に電流が流れるので、この電流の流れを電流計によって検出し、この電流を検出した時点における切削ブレードの切り込み位置を原点位置に設定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上述した従来の原点検出機構は、回転スピンドルを回転支持するスピンドルハウジングに回転スピンドルの端面に対向して設けられた連通穴に、カーボンからなる電極端子とスプリングおよびリード線が取り付けられたスプリング受けを配設する構成であるため、電極端子が磨耗して新たな電極端子と交換する際に、その都度リード線を取り外さなければならず、電極端子の交換作業が面倒であり時間を要するという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、原点検出機構を構成する電極端子の交換作業を容易に実施することができる切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードをチャックテーブルの保持面に対して垂直な切り込み送り方向に移動せしめる切り込み送り手段と、切削ブレードの切り込み量を設定する基準となる切削ブレードの原点位置を検出するための原点検出機構と、を具備する切削装置において、
該原点検出機構は、該切削ブレードが装着された回転スピンドルを回転支持するスピンドルハウジングに該回転スピンドルの端面と対向して装着するブラシ手段と、該スピンドルハウジングに設けられ該ブラシ手段が該スピンドルハウジングに装着された状態で該ブラシ手段と電気的に接続される接続端子と、該接続端子とリード線を介して接続された原点検出回路とを具備しており、
該ブラシ手段は、該スピンドルハウジングに着脱可能に装着され該回転スピンドルの端面と対向する開口を有するシリンダ穴を備えたホルダと、該ホルダの該シリンダ穴に摺動可能に配設された電極端子と、該ホルダに取り付けられ該電極端子と電気的に接続されるとともに該スピンドルハウジングに該ホルダが装着された状態で該スピンドルハウジングに設けられた接続端子と接触する接触端子とを具備している、
ことを特徴とする切削装置が提供される。
【0008】
上記ホルダには第1のシリンダ穴および第2のシリンダ穴が設けられており、該第1のシリンダ穴および第2のシリンダ穴にそれぞれ第1の電極端子および第2の電極端子が摺動可能に配設されているとともに、該第1の電極端子および第2の電極端子とそれぞれ電気的に接続されるとともに該スピンドルハウジングに該ホルダが装着された状態で該スピンドルハウジングに設けられた第1の接続端子および第2の接続端子とそれぞれ接触する第1の接触端子および第2の接触端子が配設されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明による切削装置においては、原点検出機構は切削ブレードが装着された回転スピンドルを回転支持するスピンドルハウジングに回転スピンドルの端面と対向して装着するブラシ手段と、スピンドルハウジングに設けられブラシ手段がスピンドルハウジングに装着された状態でブラシ手段と電気的に接続される接続端子と、接続端子とリード線を介して接続された原点検出回路とを具備し、ブラシ手段がスピンドルハウジングに着脱可能に装着され回転スピンドルの端面と対向する開口を有するシリンダ穴を備えたホルダと、ホルダのシリンダ穴に摺動可能に配設された電極端子と、ホルダに取り付けられ電極端子と電気的に接続されるとともにスピンドルハウジングにホルダが装着された状態でスピンドルハウジングに設けられた接続端子と接触する接触端子とを具備しているので、電極端子を交換する際にブラシ手段をスピンドルハウジングから取り外しても、原点検出回路にリード線を介して接続された接続端子はスピンドルハウジングに装着されているため、リード線を取り外す必要がない。従って、電極端子の交換作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された切削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成された切削装置の斜視図が示されている。図1に示された切削装置は、静止基台2と、該静止基台2に切削送り方向(X軸方向)である矢印Xで示す方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)である矢印Yで示す方向に移動可能に配設されたスピンドル支持機構4と、該スピンドル支持機構4の後述するチャックテーブルの被加工物保持面に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)である矢印Zで示す方向に移動可能に配設された切削手段としてのスピンドルユニット5が配設されている。
【0011】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該一対の案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設されたチャックテーブル支持基台32と、該チャックテーブル支持基台32上に円筒部材33によって支持されたカバーテーブル34と、円筒部材33に回転自在に支持された被加工物保持手段としてのチャックテーブル35を具備している。チャックテーブル支持基台32には上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられている、この一対の被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、チャックテーブル支持基台32は一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す切削送り方向(X軸方向)に移動可能に構成される。上記チャックテーブル35は、ステンレス鋼によって構成された枠体350と、該枠体350の上面に形成された嵌合凹部に嵌合された多孔性材料から形成された吸着チャック351とからなっている。このように構成されたチャックテーブル35の枠体350の上面と吸着チャック351の上面は面一に形成されており、吸着チャック351の上面が被加工物を保持する保持面となる。このように構成されたチャックテーブル35は、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル35は、円筒部材33内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられるようになっている。なお、チャックテーブル35には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ352が配設されている。
【0012】
図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、チャックテーブル35を矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめる切削送り手段36を具備している。切削送り手段36は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド361と、該雄ネジロッド361を回転駆動するためのサーボモータ362等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド361は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック363に回転自在に支持されており、その他端が上記サーボモータ362の出力軸に連結されている。なお、雄ネジロッド361は、チャックテーブル支持基台33の中央部に形成された雌ネジ322に螺合されている。従って、サーボモータ362によって雄ネジロッド361を正転および逆転駆動することにより、チャックテーブル支持基台32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられる。
【0013】
上記スピンドル支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該一対の案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、一対の案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。移動支持部421の下面には上記一対の案内レール41、41と嵌合する一対の被案内溝421a、421aが形成されており、この一対の被案内溝421a、421aを一対の案内レール41、41に嵌合することにより、可動支持基台42は一対の案内レール41、41に沿って移動可能に構成される。また、装着部422は、一側面に矢印Zで示すチャックテーブル35の被加工物保持面に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための割り出し送り手段43を具備している。割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0014】
図示の実施形態のおける切削手段としてのスピンドルユニット5は、ユニットホルダ51に装着されている。このユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示すチャックテーブル35の保持面に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。図示の実施形態におけるスピンドルユニット5は、ホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って切り込み送り方向(Z軸方向)に移動させるための切り込み送り手段52を具備している。切り込み送り手段52は、上記切削送り手段36や割り出し送り手段43と同様に一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ522等の駆動源を含んでおり、パルスモータ522によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。
【0015】
次に、スピンドルユニット5について、図2を参照して説明する。
図2に示すスピンドルユニット5は、スピンドルハウジング61と、該スピンドルハウジング61内に回転自在に配設された回転スピンドル62と、該回転スピンドル62の先端に装着される切削ブレード63を具備している。スピンドルハウジング61は略円筒状に形成され、軸方向に貫通する軸穴611を備えている。上記スピンドルハウジング61に形成された軸穴611に挿通して配設される回転スピンドル62は、その前端部(図2において左端部)に切削ブレード63が装着される。切削ブレード63は、アルミニウムによって形成されたブレード基台631と、該ブレード基台631の側面に形成されて円環状の切れ刃632とからなっている。このように構成された切削ブレード63は、回転スピンドル62に装着されたマウンター63aにナット63bによって取り付けられる。なお、切削ブレード63を構成する円環状の切れ刃632は、ブレード基台631の側面に砥粒をニッケル等の金属メッキで結合した電鋳ブレードからなっている。
【0016】
上記回転スピンドル62の外周には径方向に突出して形成されたスラスト軸受フランジ621が設けられている。このように構成された回転スピンドル62は、スピンドルハウジング61に形成された軸穴611に挿通して配設され、軸穴611の内壁との間に供給される高圧エアーによって回転自在に支持される。
【0017】
図示のスピンドルユニット5は、回転スピンドル62を回転駆動するための電動モータ64を備えている。図示の電動モータ64は、永久磁石式モータによって構成されている。永久磁石式の電動モータ64は、回転スピンドル62の後端部に形成されたモータ装着部622に装着された永久磁石からなるロータ641と、該ロータ641の外周側においてスピンドルハウジング61に配設されたステータコイル642とからなっている。このように構成された電動モータ64は、ステータコイル642が図示しない電力供給手段接続されている。
【0018】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態における切削装置は、上記切削ブレード63の切り込み量を設定する基準となる切削ブレードの原点位置を検出するための原点検出機構7を具備している。原点検出機構7は、上記切削ブレードが装着された回転スピンドル62と電気的に接続するためのブラシ手段70と、該ブラシ手段70に接続された原点検出回路80とからなっている。ブラシ手段70について、図3および図4を参照して説明する。
【0019】
図3および図4に示す実施形態におけるブラシ手段70は、電極端子保持部711と該電極端子保持部711の後端に連続して形成され上記スピンドルハウジング61に取り付けるための装着部712とを有するホルダ71を具備している。このホルダ71は、合成樹脂等の絶縁材によって形成されている。ホルダ71の電極端子保持部711は円柱状に形成されており、ホルダ71をスピンドルハウジング61に装着した状態で回転スピンドル62の後端面と対向する開口を有する第1のシリンダ穴711aと第2のシリンダ穴711bが設けられている。ホルダ71の装着部712は電極端子保持部711の径より大きい円形状に形成されており、その前端面には銅等の導電性材料によって形成された第1の接触端子取り付け部材712aと第2の接触端子取り付け部材712bが取り付けられる。また、装着部712には、上記電極端子保持部711に設けられた第1のシリンダ穴711aおよび第2のシリンダ穴711bと第1の接触端子取り付け部材712aおよび第2の接触端子取り付け部材712bをそれぞれ連通する2個の配線通路712c(図4には一方だけが示されている)が設けられている。なお、上記第1の接触端子取り付け部材712aおよび第2の接触端子取り付け部材712bは、図4において右端部が小径に形成されており、この右端部が配線通路712cに嵌合されてホルダ71に取り付けられる。なお、装着部712には、図3に示すように2個の取り付け穴712d、712dが設けられている。
【0020】
このように構成されたホルダ71の電極端子保持部711に設けられた第1のシリンダ穴711aおよび第2のシリンダ穴711bには、それぞれカーボンからなる第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bが摺動可能に配設されるとともに導電性材料によって形成されたコイルバネからなる第1の押圧バネ73aおよび第2の押圧バネ73bが配設されている。従って、第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bは、それぞれ第1の押圧バネ73aおよび第2の押圧バネ73bのバネ力によって前方(図4において左方)に向けて押圧されている。一方、ホルダ71を構成する装着部712に設けられた第1の接触端子取り付け部材712aおよび第2の接触端子取り付け部材712bには、それぞれ導電性材料によって形成されたコイルバネからなる第1の接触端子74aおよび第2の接触端子74bが装着されている。そして、上記第1の押圧バネ73aおよび第2の押圧バネ73bと第1の接触端子取り付け部材74aおよび第2の接触端子取り付け部材74bが2個の配線通路712cにそれぞれ配設された2本の導線75(図4には一方だけが示されている)によって接続されている。従って、第1の接触端子74aおよび第2の接触端子74bは、それぞれ第1の接触端子取り付け部材712aおよび第2の接触端子取り付け部材712bと導線75を介して第1の押圧バネ73aおよび第2の押圧バネ73bに接続される。
【0021】
以上のように構成されたブラシ手段70は、図2に示すようにスピンドルハウジング61の後端(図2において右端)からホルダ71の電極端子保持部711を挿入し、ホルダ71の装着部712に設けられた2個の取り付け穴712d、712d(図3参照)にそれぞれ挿通して配設された締め付けボルト76をスピンドルハウジング61に形成された図示しない雌ネジ穴に螺合することによってスピンドルハウジング61に取り付けられる。このようにブラシ手段70がスピンドルハウジング61に取り付けられた状態においは、ホルダ71を構成する電極端子保持部711に設けられた第1のシリンダ穴711aおよび第2のシリンダ穴711bに配設された第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bが第1の押圧バネ73aおよび第2の押圧バネ73bのバネ力によって回転スピンドル62の後端面に押圧した状態で接触せしめられる。また、ブラシ手段70がスピンドルハウジング61に取り付けられた状態においては、第1の接触端子74aおよび第2の接触端子74bがスピンドルハウジング61に設けられた2個の接続端子77(図2には一方だけが示されている)にそれぞれ接触するように構成されている。そして、2個の接続端子77は、それぞれ第1のリード線78aおよび第2のリード線78bを介して原点検出回路80に接続される。
【0022】
図2を参照して説明を続けると、原点検出回路80は直流電源81を具備しており、直流電源81の陽極(+)が電源スイッチ82および配線83を介して上記第1のリード線78aに接続されるとともに、電源スイッチ82および配線84を介して上記チャックテーブル35に接続されている。また、直流電源81の陰極(−)が配線85を介して上記第2のリード線78bに接続されている。上記配線83には開閉スイッチ86が配設されているとともに、第1の電流計87が配設されている。また、上記配線84には第2の電流計88が配設されている。
【0023】
図示の実施形態における原点検出機構7は以上のように構成されており、以下切削ブレード63の切り込み量を設定する基準となる切削ブレード63の原点位置を検出する手順について説明する。
先ず、ブラシ手段70の第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bが回転スピンドル62の後端面に接触しているか否かについて確認する電極端子接触確認工程を実施する。この電極端子接触確認工程は、電源スイッチ82および開閉スイッチ86を閉路(ON)して実施する。電源スイッチ82および開閉スイッチ86が閉路(ON)すると、直流電源81から電源スイッチ82、開閉スイッチ86、配線83、第1のリード線78a、一方の接続端子77、第1の接触端子74a、第1の接触端子取り付け部材712a、一方の導線75、第1の押圧バネ73a、第1の電極端子72a、回転スピンドル62、第2の電極端子72b、第2の押圧バネ73b、他方の導線75、第2の接触端子取り付け部材712b、第2の接触端子74b、他方の接続端子77、第2のリード線78b、配線85に電流が流れる。この電流の流れを第1の電流計87によって確認することにより、ブラシ手段70の第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bが回転スピンドル62の後端面に接触していることを確認することができる。従って、上記のように電流が流れる回路は、第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bが回転スピンドル62の端面に接触しているか否かを確認する確認回路を構成している。なお、この電極端子接触確認工程において第1の電流計87が作動しない場合には、ブラシ手段70の第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bのいずれか一方または両方が回転スピンドル62の後端面に接触していない可能性が高いので、ブラシ手段70をスピンドルハウジング61から取り外して構成部材を確認する。
【0024】
上述したように電極端子接触確認工程を実施することにより、ブラシ手段70の第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bが回転スピンドル62の後端面に接触していることを確認したならば、開閉スイッチ86を開路(OFF)した後、原点位置設定工程を実施する。原点位置設定工程は、チャックテーブル35をスピンドルユニット5の切削ブレード63の下側に移動し、上記スピンドルユニット5の電動モータ64を駆動して回転スピンドル62を回転し切削ブレード63を回転せしめるとともに、切り込み送り手段52のパルスモータ522を作動してスピンドルユニット5を下降せしめる。そして、切削ブレード63の円環状の切れ刃632がチャックテーブル35を構成するステンレス鋼によって構成された枠体350の上面に接触すると、直流電源81から電源スイッチ82、配線84、チャックテーブル35の枠体350、切削ブレード63、回転スピンドル62、第2の電極端子72b、第2の押圧バネ73b、他方の導線75、第2の接触端子取り付け部材712b、第2の接触端子74b、他方の接続端子77、第2のリード線78b、配線85に電流が流れる。この電流の流れを第2の電流計88によって確認した時点におけるスピンドルユニット5の位置即ち切削ブレード63の切り込み位置を原点位置とする。このようにして、原点位置設定工程を実施したならば、電源スイッチ82を開路(OFF)する。
【0025】
以上のようにして切削ブレード63の原点位置を設定したならば、チャックテーブル35を構成する枠体350の上面と面一の吸着チャック351の上面(保持面)上に被加工物を保持し、切削ブレード63を上記原点位置を基準として所定の切り込み深さ位置に位置付けて切削作業を実施する。
なお、上記ブラシ手段70の第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bは回転スピンドル62の後端面に接触しているので磨耗するため、所定量磨耗したら第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bを交換する必要がある。第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bを交換するには、スピンドルハウジング61にブラシ手段70のホルダ71を固定している締め付けボルト76を弛め、ブラシ手段70をスピンドルハウジング61から取り外す。そして、ブラシ手段70を構成するホルダ71の電極端子保持部711に設けられた第1のシリンダ穴711aおよび第2のシリンダ穴711bに配設された第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72bを取り出し、新しい電極端子と交換する。この電極端子の交換の際には、ブラシ手段70をスピンドルハウジング61から取り外すが、原点検出回路80に接続された第1のリード線78aおよび第2のリード線78bはスピンドルハウジング61に装着された2個の接続端子77にそれぞれ接続されているので、第1のリード線78aおよび第2のリード線78bを取り外す必要がないため上記交換作業が容易となる。
【0026】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては、電極端子が回転スピンドル62の後端面に接触していることを確認するためにブラシ手段70には2個の電極端子(第1の電極端子72aおよび第2の電極端子72b)を備えた例を示したが、切削ブレード63の原点位置を検出するためには1個の電極端子を備えていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従って構成された切削装置の斜視図
【図2】図1に示す切削装置に装備される原点検出機構の要部を破断して示す説明図。
【図3】図2に示す原点検出機構を構成するブラシ手段を分解して示す斜視図。
【図4】図3に示すブラシ手段の断面図。
【符号の説明】
【0028】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
35:チャックテーブル
36:切削送り手段
4:スピンドル支持機構
42:可動支持基台
43:割り出し送り手段
5:スピンドルユニット
52:切り込み送り手段
61:スピンドルハウジング
62:回転スピンドル
63:切削ブレード
64:電動モータ
7:原点検出機構
70:ブラシ手段
71:ホルダ
72a:第1の電極端子
72b:第2の電極端子
78a:第1のリード線
78b:第2のリード線
80:原点検出回路
81:直流電源
87:第1の電流計
88:第2の電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードをチャックテーブルの保持面に対して垂直な切り込み送り方向に移動せしめる切り込み送り手段と、切削ブレードの切り込み量を設定する基準となる切削ブレードの原点位置を検出するための原点検出機構と、を具備する切削装置において、
該原点検出機構は、該切削ブレードが装着された回転スピンドルを回転支持するスピンドルハウジングに該回転スピンドルの端面と対向して装着するブラシ手段と、該スピンドルハウジングに設けられ該ブラシ手段が該スピンドルハウジングに装着された状態で該ブラシ手段と電気的に接続される接続端子と、該接続端子とリード線を介して接続された原点検出回路とを具備しており、
該ブラシ手段は、該スピンドルハウジングに着脱可能に装着され該回転スピンドルの端面と対向する開口を有するシリンダ穴を備えたホルダと、該ホルダの該シリンダ穴に摺動可能に配設された電極端子と、該ホルダに取り付けられ該電極端子と電気的に接続されるとともに該スピンドルハウジングに該ホルダが装着された状態で該スピンドルハウジングに設けられた接続端子と接触する接触端子とを具備している、
ことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該ホルダには第1のシリンダ穴および第2のシリンダ穴が設けられており、該第1のシリンダ穴および第2のシリンダ穴にそれぞれ第1の電極端子および第2の電極端子が摺動可能に配設されているとともに、該第1の電極端子および第2の電極端子とそれぞれ電気的に接続されるとともに該スピンドルハウジングに該ホルダが装着された状態で該スピンドルハウジングに設けられた第1の接続端子および第2の接続端子とそれぞれ接触する第1の接触端子および第2の接触端子が配設されている、請求項2記載の切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−82709(P2010−82709A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251500(P2008−251500)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】