切換可能なカップ形リフター
【課題】外側部材2を備え、外側部材は、カムと接触させるための環状の底部3を有し、底部の内周縁部6から中空円筒形の付加部7を延設し、付加部の孔8内に軸線方向運動可能な内側部材9を案内し、連結部材11を設けてあり、連結部材は、カム出力変位区分の走行通過時の完全な弁行程を得るために、構成部材9,2のうちの一方の構成部材の受容部12から部分的に走出して、他方の構成部材の連行面13と係合し、両方の構成部材間に回動防止部材20を設け、回動防止部材は付加部の開口部21内に装着されていて、内側部材の外周壁16の縦溝若しくは縦面取り部24に係合するようになっている形式のカップ形リフターを改善して、公知技術の欠点を避ける。
【解決手段】付加部の開口部は、内側部材の周壁部分5の半径方向で相対する別の開口部22を通して挿入される工具によって成形されている。
【解決手段】付加部の開口部は、内側部材の周壁部分5の半径方向で相対する別の開口部22を通して挿入される工具によって成形されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の弁駆動若しくは弁作動のための切換可能なカップ形リフターであって、外側部材若しくは一方の構成部材を備えており、該外側部材(一方の構成部材又は構成要素)は、大行程カム若しくは高速カムと接触させるための環状の底部を有しており、該底部の外周縁部から中空円筒形(中空シリンダー状)の周壁部分を延設してあり、かつ前記底部の内周縁部から中空円筒形(中空シリンダー状)の付加部を延設してあり、該付加部(延長部)の孔内に、前記外側部材に対して相対的に軸線方向運動可能な内側部材若しくは他方の構成要素を案内してあり、該内側部材(他方の構成部材又は構成要素)の下側はガス交換弁のための支持部として用いられており、該カップ形リフター内に連結部材を設けてあり、該連結部材は、カム出力変位区分の走行通過時の完全な弁行程若しくは出力変位量を得るために、選択的に前記構成部材のうちの一方の構成部材の受容部から、前記両方の構成部材間の環状面(画定面)を越えて部分的に走出して、前記構成部材のうちの他方の構成部材の連行面と係合するようになっており、前記内側部材の外周壁の下方の領域に環状部材を取り付けてあり、該環状部材(環状のばね受け)にロストモーションばねを一方の端部で支持してあり、該ロストモーションばねは他方の端部では、少なくとも間接的に前記外側部材の前記底部の下側に支持されており、つまり、ロストモーションばねは少なくとも間接的に前記外側部材の前記底部の下側に作用しており、前記両方の構成部材間に回動防止部材を設けてあり、該回動防止部材は、両方の構成部材間の相対回動の防止のために、前記付加部の開口部内に装着されていて、該回動防止部材の内側でもって、前記外側部材の外周壁の対応する縦溝若しくは縦面取り部、つまり該回動防止部材と相対して前記外周壁に設けられた縦溝若しくは縦面取り部に係合するようになっている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
前記形式の切換可能なカップ形リフター若しくは可変式のカップ形リフター(バルブリフター)は、当業者にとって十分に知られているものであり、したがって詳細な説明は省略されるものである。外側部材と内側部材との間にはいわゆる内部の回動防止部材(回動防止手段若しくは回動ロック機構)を設けてある。回動防止部材は、所期の連結状態で、一方の構成部材(構成要素若しくは構成部分)に設けられていて少なくとも1つの連結部材を受容する受容部と他方の構成部材内の連行面とを合致させ、つまり同列にして、連結を可能にするために用いられている。回動防止部材として従来技術では例えば個別のニードル若しくは球体等を用いてあり、該ニードル若しくは球体等は外側部材の付加部の開口部内に装着され、その内側でもって、内側部材の外周壁の縦溝内に係合している。
【0003】
上記従来技術においては、外側部材の付加部の開口部の経済的な成形に問題がある。付加部の孔直径の極めて小さいことに基づき、付加部の孔内に工具を導入して開口部を成形することは極めて困難である。さらに、付加部の開口部内への回動防止部材の組み付けも問題である。殊に、内側部材の外周壁の縦溝が内側部材の、底部から遠い側、つまり底部側とは逆の側の端面の前で終わっていて、内側部材の該端面側の端部領域にロストモーションばねの支持のための環状体を取り付けてある場合には特に問題である。この場合には、外側部材の底部側から該外側部材内に内側部材を入れ子式(テレスコープ式)に挿入することは、内側部材が半径方向内側へ突出している回動防止部材と干渉することになるので極めて困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のカップ形リフターを改善して、上述の欠点を避けることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に基づく構成によれば、中空円筒形の付加部の開口部は、窓状に形成されていて、前記外側部材の周壁部分の半径方向で前記付加部と相対する領域、つまり重なり合う領域に設けられかつ前記開口部と合致する別の開口部を通して挿入される工具による加工によって成形されるようになっている。
【0006】
本発明に基づく上記構成により、上記欠点は避けられている。本発明の実施態様では、外側部材の付加部の開口部は、中空円筒形(中空シリンダー状)の周壁部分の別の開口部を介して、つまり周壁部分の、付加部の開口部と対応する開口部を介して、例えば打ち抜き加工若しくは穿孔加工により容易に加工成形されている。これによって、半径方向内側からの著しく手間のかかる煩雑な工具係合(工具による加工作業)は省略され、つまり避けられている。有利な実施態様によれば、付加部及び周壁部分の互いに合致(整合)する両方開口部は、同一の工具を用いて打ち抜き加工又は穴抜き加工若しくは穿孔加工により加工成形されている。
【0007】
本発明の1つの実施態様では、内側部材の縦溝若しくは縦面取り部は、リフターの底部から離れる方向に一貫して延びておらず、つまり、リフターの底部から離れた側の端面まで達しておらず、リフターの底部から離れた側の端部領域には、ロストモーションばね(空動きばね)の一方の端部の支持のための環状体(内側部材の全周に亙って延びる支持部材)を設けてあり、軸線方向で環状部材の取り付け部位のすぐ上側に組立貫通部(組立用貫通孔)を設けてある。換言すれば、内側部材の縦溝若しくは縦面取り部は、リフターの底部側で回動防止部材が少なくともカム基準円区分若しくはカムの出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、リフターの底部と離れる方向に向かって、内側部材の外周壁に取り付けられた環状部材の前で終わる長さ、若しくは該環状部材まで延びる長さを有しており、縦溝若しくは縦面取り部は組立貫通部(組立貫通穴)によって画定され、つまり組立貫通部に通じており、該組立貫通部は、内側部材の軸線方向で、連結部材による連結の解除の状態で縦溝若しくは縦面取り部内における回動防止部材の占める最も深い係合部位よりも深く(遠く)に位置しており、組立に際して回動防止部材は組立貫通部を介して、半径方向内側から半径方向外側へ、内側部材に対する外側部材の最大の移動位置(差行程)で組立貫通部と合致する、付加部の開口部内に押し込まれるようになっている。組立過程において内側部材に対する外側部材の最大の移動距離(差行程若しくは切換行程)では、回動防止本体は、組立貫通部を介して、付加部の、今や該組立貫通部と合致する開口部内へ差し込まれる。組立時に生ぜしめられる切換位置(切換行程若しくは差行程)は、外側部材がカップ形リフターの作動(遮断モード)の際に内側部材に対して移動させられる位置若しくは行程を越えている。
【0008】
別の実施態様では、縦溝若しくは縦面取り部は、一貫して形成され、つまり、リフターの底部から離れた側の端面まで延びており、換言すれば、外側部材の縦溝若しくは縦面取り部は、底部側で回動防止部材が少なくとも出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、内側部材の軸線方向の全長にわたって内側部材の底部から遠い側の端面まで延びる長さを有しており、組立に際して回動防止部材は半径方向内側から、付加部の孔を介して半径方向外側へ付加部の所定の開口部内に押し込まれ、次いで内側部材はリフターの底部の内周縁部を介して付加部の孔内に入れ子式(テレスコープ式)に挿入されるようになっている。このような構成により、内側部材は、付加部の開口部内に回動防止部材を予め組み付けた状態で、外側部材内に上方から入れ子式に組み込まれるようになっている。この場合に、内側部材の端部側の領域への不都合な影響、例えば端部側の領域のたわみはもはや生じなくなっている。
【0009】
本発明に基づく構成は、切換可能なカムフォロア、例えばロール形タペット若しくはきのこ形タペット、或いは切換可能な支持部材にも用いられるものである。
【0010】
本発明の別の有利な実施態様では、内側部材の縦溝若しくは縦面取り部の上方の端面への、カム基準円区分若しくは出力変位区分の走行通過時の回動防止部材の当接(ストッパー)により、1つ(一方)の構成部材の受容部内の連結部材と別(他方)の構成部材内の連結面との間の合致(整合)した位置若しくはほぼ合致する選択的に連結遊びのある位置を規定している。このような構成により、外側部材の外周壁における個別のストッパー部材、例えば止め輪等は省略されている。
【0011】
切換可能なカップ形リフターは、行程遮断装置若しくは行程停止装置として形成されていてよい。このために、外側部材の底部(カムに向いている側(上方)の端部、つまり頂部又はヘッド部)は、例えば互いに隣接する2つの大行程カム若しくは高速カムと協働(連結若しくは接触)するようになっている。内側部材の底部は、いわゆる零行程カムと接触するための回転案内面若しくは滑動案内面を有していてよい。必要に応じて内側部材にも、低速カムのための回転案内部を設けてあってよい。
【0012】
カップ形リフターの特に軽い構造を達成するために、内側部材は片側(一方の端部)で、若しくは両側(両方の端部)で開口しており、つまり中空に形成されている。一般的に有利な構成では、少なくとも1つの構成部材(外側部材、内側部材)は、軽量材料、例えば鋼薄板によって成形されている。構成部材(構成部品)は押し出し成形によって成形されていてよい。
【0013】
付加部の開口部内に装着される回動防止部材の本発明の実施態様によれば、回動防止部材は、ニードル、ロール、球体、ピン若しくはばねクリップ等によって形成されている。内側部材の外周壁に設けられる縦溝を用いる場合には、縦溝内での回動防止部材の案内は、縦溝の側面(側壁)若しくは溝底部(底面)を介して行われる。内側部材の外周壁に設けられる縦面取り部を用いる場合には、回動防止部材の半径方向内側に位置する端面が面取り部と接触するようになっている。
【0014】
本発明の有利な実施態様によれば、付加部の窓状の開口部は、回動防止部材の外周形状に相補的に形成され、つまり回動防止部材の外周形状に合わせて形成されており、換言すれば付加部の窓状の開口部の内周形状は回動防止部材の外周形状に相当し、例えば実質的に合致しており、回動防止部材は付加部の窓状の開口部内にルーズに装着(挿入)される。このような構成により、付加的な固定手段及び材料は不要になっている。しかしながら別の実施態様によれば、回動防止部材は付加部の開口部内に不動に装着され、例えば圧入若しくは溶接によって固着されている。半径方向外側に対する回動防止部材の固定若しくはロックは、外側部材の付加部の外周面に沿ってかつ該外周面に密接して延びる環状体(リング)によって行われてよい。
【0015】
次に本発明を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】カップ形リフターの縦断面図である。
【図1b】カップ形リフターの90°回動した位置での縦断面図である。
【図2】回動防止部材の1つの実施形態を示す図である。
【図3】回動防止部材の別の実施形態を示す図である。
【図4】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図5】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図6】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図7】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図8】面取り部を有する回動防止部材の実施形態の部分横断面図である。
【図9】縦溝を有する回動防止部材の実施形態の部分横断面図である。
【図10】一貫した縦面取り部を回動防止部材の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a及び図1bには、切換可能なカップ形リフター1を示してある。カップ形リフター(カップ形タペット)1は外側部材2を含んでおり、該外側部材は環状(リング状)の底部3を有している。底部3は、2つの大行程カム(高速カム)のための滑動部若しくは摺動部を形成している。底部3の外周縁部4には薄壁の周壁部分5を延設してあり、つまり外周縁部には該外周縁部からカムとは逆の側へ底部に対してほぼ垂直に、すなわちリフターの軸線方向に延びる薄壁の周壁部分を設けてある。該周壁部分(円筒壁又は外周壁部若しくはスカート状部分)5を介してカップ形リフター1は内燃機関の受容部内に案内されるようになっている。
【0018】
底部3の内周縁部6には円筒状(中空シリンダ状)の付加部7を延設してあり、つまり内周縁部には該内周縁部からカムとは逆の側へ底部に対してほぼ垂直に、すなわちリフターの軸線方向に延びる円筒状の付加部7を設けてある。付加部7の孔8内には、内側部材9を付加部7に対して相対的に軸線方向移動可能に収容(受容)してあり、内側部材9は、該内側部材の下側10で、図示省略のガス交換弁(吸気弁又は排気弁)のための支持部を成している。図1に示してあるように、内側部材9は別の実施形態では閉鎖部材(底部部材)を用いて、若しくは底部28によって閉じられていてよい。閉鎖部材若しくは底部28は、低速カム若しくは零行程カムに対する滑動部分(摺動案内部分)として用いられてよい。しかしながら、内側部材9の筒状に開口する構成の図示の実施形態では、いずれのカムも内側部材9に接触して滑動回転するようになっていない。したがってカップ形リフター1は、いわゆる行程遮断機構若しくは行程停止機構を成すものである。
【0019】
内側部材9の内部を軸線方向に対して実質的に垂直方向(半径方向若しくは直径方向)に延びる部分、つまり横ウエブは、1つのラジアル孔(半径方向孔)として形成された受容部12を有しており、該受容部は、直径方向で相対する2つの連結部材11を受容(収容)している。連結部材11は、ピストンとして形成されており、該ピストンは、上側を端面側から一部分にわたって面取りされており、つまり、ピストンの外周の上側には、端面側から一部分(所定の長さ)にわたって延びる面取り部を設けてある。連結部材11は、カムの出力変位区分若しくはカム基準円区分の走行通過時には、付加部7の孔8内に設けられかつ例えばポケットとして形成されている連行面13と相対している(図1b、参照)。
【0020】
図1bは、カップ形リフター1の連結状態を示しており、この場合に、外側部材2の底部3を負荷する大行程カム対の行程は、内側部材の下側(下面)10に接続するガス交換弁に伝達されるようになっている。
【0021】
さらに図1a,及び図1bから当業者にとって容易に理解されるように、内側部材9の外周壁16の下方の領域15には、薄壁状の環状部材17を取り付けてある。薄壁状(薄肉)の環状部材17は、内側部材9を取り囲むロストモーションばね18の一方の端部のための支持部として用いられており、ロストモーションばね18は他方の端部で、底部3の下側19に直接に支持され、つまり、底部3の下側19に直接に作用するようになっている。
【0022】
内側部材9の外周壁16には、外側部材の長手方向(縦方向)に延びる縦溝若しくは縦面取り部24を設けてある。図1aに示す実施形態では、縦溝若しくは縦面取り部24は、内側部材9の、底部から離れた側、つまり底部と反対の側の端面26に達しておらず、つまり、内側部材9における環状部材17の取り付け部位の上側までしか延びていない。環状溝若しくは縦面取り部24内には、回動防止部材20を係合させてある。回動防止部材(回動ロック部材)20は、外側部材の付加部7の開口部21内に装着されている。回動防止部材20は、開口部(孔)21内にルーズに挿入され、つまり取り付けられ、若しくは圧入されている。回動防止部材20は、該回動防止部材の外側の端面42でもって環状体41に当接しており、該環状体(環状部材)41は、付加部7の外周面(外側)40に沿って延びていて、さらに底部3の下側(下面)19及び周壁部分5の内周壁に沿って導かれ、つまり延びている、すなわち延在している。
【0023】
付加部7に設けられた前記開口部21は、半径方向外側で、周壁部分5に設けられた開口部22と同列を成して相対し、つまり合致している。これによって、開口部21の容易な成形を可能にしている。開口部21は、開口部22を通される加工用工具によって加工成形される。有利には穴抜き工具又は打ち抜き工具若しくは穿孔工具を用いられ、打ち抜き工具若しくは穿孔工具は、いわば1つの作業工程で開口部21,22を成形加工するようになっている。開口部の成形を複数の加工工程で行うことも可能である。
【0024】
回動防止部材20の組立(組み付け)は、縦溝若しくは縦面取り部24の構成に応じて種々に行われる。縦溝若しくは縦面取り部24は環状部材17の前から軸線方向に延びており、あらゆる側で包囲されて突出する固定部を形成するために、縦溝若しくは縦面取り部24は組立貫通部25を備えている。組立貫通部は軸線方向で、運転中の差行程に際して縦溝若しくは縦面取り部24内への回動防止部材の最も深い係合箇所よりも深くに位置している。これによって外側部材2は、組立貫通部25と付加部7の開口部21とが互いに同列を成す、つまり互いに合致するまで、軸線方向で内側部材9に対して下方へ移動させられるようになっている。次いで、回動防止部材20は内側から組立貫通部25を介して付加部7の開口部21内へ押し込まれる。
【0025】
縦溝若しくは縦面取り部24を一貫して形成してある場合には、つまり内側部材9の、底部から遠い側の端面26まで延びるように形成してある場合(図10、参照)には、付加部7の孔8内に内側部材9を挿入する前に、回動防止部材20は付加部7の開口部21内に装着され、つまり差し込まれる。次いで、内側部材9は軸線方向で上方から内周縁部6を介して付加部7の孔8内に挿入されて回動防止されるようになっている。
【0026】
図2は、回動防止部材20が、カム基準円区分若しくは出力変位零区分の走行通過時に縦溝若しくは縦面取り部24の上方の端面27に当接するようになっている状態を示している。さらに、内側部材9の受容部12内の連結部材11と付加部7内の連行面13との同列位置を示してある。
【0027】
図2〜図7には回動防止部材の種々の実施形態を示してある:図2に示す実施形態によれば、回動防止部材は、付加部7の開口部21内に軸線方向に向けて配置され、つまり縦向きに配置されたニードル若しくはロール30として形成されており、該ニードル若しくはロール30はその内側23で内側部材の縦溝24内に係合して、つまり入り込んでいる。図3に示す実施形態によれば、回動防止部材は、付加部7の開口部21内に軸線方向に対して横方向に、若しくは実質的に垂直に配置され、つまり横向きに配置されたニードル若しくはロール30として形成されている。図4に示す実施形態によれば、回動防止部材は、横向きに配置された中実のロール34として形成されており、該ロール(ローラ若しくはころ部材又は円柱体)の内側端面は、ロールの半径方向に拡大された係合つば36を有している。係合つば36は、その軸線方向内側で付加部7の孔8に接触するようになっている。この場合に、ロール34は環状体41の、付加部の開口部21と相対(合致)する開口部43内に突入している。該開口部(ポケット)43の内周形状はロールの外周形状に相当していてよい。図5に示す実施形態によれば、回動防止部材は、図4の実施形態に類似して形成されている。この場合に異なる点として、ロール37は中空に形成され、かつ軸線方向にスリットを付けられ、つまり、割りを入れられており、すなわち中空でスリット付きのロールとして成形されている。図6に示す実施形態によれば、回動防止部材20は、球体として形成されており、球体(ボール)は、回動防止若しくは回動ロックのために、半径方向内側で内側部材の縦溝24内に係合している。図7に示す実施形態によれば、回動防止部材20はピン32として形成されており、該ピンは球状の内側係合端部33を有している。
【0028】
図8及び図9には、回動防止部材20の構成に応じて、縦面取り部24(図8)を用いるか、縦溝24(図9)を用いるかを示してある。縦溝24を用いる場合には、案内は溝底部で行われるか、若しくは溝側面で行われる。
【符号の説明】
【0029】
1 カップ形リフター、 2 外側部材、 3 底部、 4 外周縁部、 5 周壁部分、 6 内周縁部、 7 付加部、 8 孔、 9 内側部材、 10 下側、 11 連結部材、 12 受容部、 13 連行面、 14 環状面、 15 下方の領域、 16 外周壁、 17 環状部材、 18 ロストモーションばね、 19 下側、 20 回動防止部材、 21,22 開口部、 23 内側、 24 縦面取り部、 25 組立貫通部、 26,27 端面、 28 底部、 29,30 ロール、 31 球体、 32 ピン、 33 内側係合端部、 34 ロール、 35 内側端面、 36 係合つば、 37 ロール、 38 内側端面、 39 係合つば、 40 外周面、 41 環状体、 42 外側端面、 43 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の弁駆動若しくは弁作動のための切換可能なカップ形リフターであって、外側部材若しくは一方の構成部材を備えており、該外側部材(一方の構成部材又は構成要素)は、大行程カム若しくは高速カムと接触させるための環状の底部を有しており、該底部の外周縁部から中空円筒形(中空シリンダー状)の周壁部分を延設してあり、かつ前記底部の内周縁部から中空円筒形(中空シリンダー状)の付加部を延設してあり、該付加部(延長部)の孔内に、前記外側部材に対して相対的に軸線方向運動可能な内側部材若しくは他方の構成要素を案内してあり、該内側部材(他方の構成部材又は構成要素)の下側はガス交換弁のための支持部として用いられており、該カップ形リフター内に連結部材を設けてあり、該連結部材は、カム出力変位区分の走行通過時の完全な弁行程若しくは出力変位量を得るために、選択的に前記構成部材のうちの一方の構成部材の受容部から、前記両方の構成部材間の環状面(画定面)を越えて部分的に走出して、前記構成部材のうちの他方の構成部材の連行面と係合するようになっており、前記内側部材の外周壁の下方の領域に環状部材を取り付けてあり、該環状部材(環状のばね受け)にロストモーションばねを一方の端部で支持してあり、該ロストモーションばねは他方の端部では、少なくとも間接的に前記外側部材の前記底部の下側に支持されており、つまり、ロストモーションばねは少なくとも間接的に前記外側部材の前記底部の下側に作用しており、前記両方の構成部材間に回動防止部材を設けてあり、該回動防止部材は、両方の構成部材間の相対回動の防止のために、前記付加部の開口部内に装着されていて、該回動防止部材の内側でもって、前記外側部材の外周壁の対応する縦溝若しくは縦面取り部、つまり該回動防止部材と相対して前記外周壁に設けられた縦溝若しくは縦面取り部に係合するようになっている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
前記形式の切換可能なカップ形リフター若しくは可変式のカップ形リフター(バルブリフター)は、当業者にとって十分に知られているものであり、したがって詳細な説明は省略されるものである。外側部材と内側部材との間にはいわゆる内部の回動防止部材(回動防止手段若しくは回動ロック機構)を設けてある。回動防止部材は、所期の連結状態で、一方の構成部材(構成要素若しくは構成部分)に設けられていて少なくとも1つの連結部材を受容する受容部と他方の構成部材内の連行面とを合致させ、つまり同列にして、連結を可能にするために用いられている。回動防止部材として従来技術では例えば個別のニードル若しくは球体等を用いてあり、該ニードル若しくは球体等は外側部材の付加部の開口部内に装着され、その内側でもって、内側部材の外周壁の縦溝内に係合している。
【0003】
上記従来技術においては、外側部材の付加部の開口部の経済的な成形に問題がある。付加部の孔直径の極めて小さいことに基づき、付加部の孔内に工具を導入して開口部を成形することは極めて困難である。さらに、付加部の開口部内への回動防止部材の組み付けも問題である。殊に、内側部材の外周壁の縦溝が内側部材の、底部から遠い側、つまり底部側とは逆の側の端面の前で終わっていて、内側部材の該端面側の端部領域にロストモーションばねの支持のための環状体を取り付けてある場合には特に問題である。この場合には、外側部材の底部側から該外側部材内に内側部材を入れ子式(テレスコープ式)に挿入することは、内側部材が半径方向内側へ突出している回動防止部材と干渉することになるので極めて困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のカップ形リフターを改善して、上述の欠点を避けることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に基づく構成によれば、中空円筒形の付加部の開口部は、窓状に形成されていて、前記外側部材の周壁部分の半径方向で前記付加部と相対する領域、つまり重なり合う領域に設けられかつ前記開口部と合致する別の開口部を通して挿入される工具による加工によって成形されるようになっている。
【0006】
本発明に基づく上記構成により、上記欠点は避けられている。本発明の実施態様では、外側部材の付加部の開口部は、中空円筒形(中空シリンダー状)の周壁部分の別の開口部を介して、つまり周壁部分の、付加部の開口部と対応する開口部を介して、例えば打ち抜き加工若しくは穿孔加工により容易に加工成形されている。これによって、半径方向内側からの著しく手間のかかる煩雑な工具係合(工具による加工作業)は省略され、つまり避けられている。有利な実施態様によれば、付加部及び周壁部分の互いに合致(整合)する両方開口部は、同一の工具を用いて打ち抜き加工又は穴抜き加工若しくは穿孔加工により加工成形されている。
【0007】
本発明の1つの実施態様では、内側部材の縦溝若しくは縦面取り部は、リフターの底部から離れる方向に一貫して延びておらず、つまり、リフターの底部から離れた側の端面まで達しておらず、リフターの底部から離れた側の端部領域には、ロストモーションばね(空動きばね)の一方の端部の支持のための環状体(内側部材の全周に亙って延びる支持部材)を設けてあり、軸線方向で環状部材の取り付け部位のすぐ上側に組立貫通部(組立用貫通孔)を設けてある。換言すれば、内側部材の縦溝若しくは縦面取り部は、リフターの底部側で回動防止部材が少なくともカム基準円区分若しくはカムの出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、リフターの底部と離れる方向に向かって、内側部材の外周壁に取り付けられた環状部材の前で終わる長さ、若しくは該環状部材まで延びる長さを有しており、縦溝若しくは縦面取り部は組立貫通部(組立貫通穴)によって画定され、つまり組立貫通部に通じており、該組立貫通部は、内側部材の軸線方向で、連結部材による連結の解除の状態で縦溝若しくは縦面取り部内における回動防止部材の占める最も深い係合部位よりも深く(遠く)に位置しており、組立に際して回動防止部材は組立貫通部を介して、半径方向内側から半径方向外側へ、内側部材に対する外側部材の最大の移動位置(差行程)で組立貫通部と合致する、付加部の開口部内に押し込まれるようになっている。組立過程において内側部材に対する外側部材の最大の移動距離(差行程若しくは切換行程)では、回動防止本体は、組立貫通部を介して、付加部の、今や該組立貫通部と合致する開口部内へ差し込まれる。組立時に生ぜしめられる切換位置(切換行程若しくは差行程)は、外側部材がカップ形リフターの作動(遮断モード)の際に内側部材に対して移動させられる位置若しくは行程を越えている。
【0008】
別の実施態様では、縦溝若しくは縦面取り部は、一貫して形成され、つまり、リフターの底部から離れた側の端面まで延びており、換言すれば、外側部材の縦溝若しくは縦面取り部は、底部側で回動防止部材が少なくとも出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、内側部材の軸線方向の全長にわたって内側部材の底部から遠い側の端面まで延びる長さを有しており、組立に際して回動防止部材は半径方向内側から、付加部の孔を介して半径方向外側へ付加部の所定の開口部内に押し込まれ、次いで内側部材はリフターの底部の内周縁部を介して付加部の孔内に入れ子式(テレスコープ式)に挿入されるようになっている。このような構成により、内側部材は、付加部の開口部内に回動防止部材を予め組み付けた状態で、外側部材内に上方から入れ子式に組み込まれるようになっている。この場合に、内側部材の端部側の領域への不都合な影響、例えば端部側の領域のたわみはもはや生じなくなっている。
【0009】
本発明に基づく構成は、切換可能なカムフォロア、例えばロール形タペット若しくはきのこ形タペット、或いは切換可能な支持部材にも用いられるものである。
【0010】
本発明の別の有利な実施態様では、内側部材の縦溝若しくは縦面取り部の上方の端面への、カム基準円区分若しくは出力変位区分の走行通過時の回動防止部材の当接(ストッパー)により、1つ(一方)の構成部材の受容部内の連結部材と別(他方)の構成部材内の連結面との間の合致(整合)した位置若しくはほぼ合致する選択的に連結遊びのある位置を規定している。このような構成により、外側部材の外周壁における個別のストッパー部材、例えば止め輪等は省略されている。
【0011】
切換可能なカップ形リフターは、行程遮断装置若しくは行程停止装置として形成されていてよい。このために、外側部材の底部(カムに向いている側(上方)の端部、つまり頂部又はヘッド部)は、例えば互いに隣接する2つの大行程カム若しくは高速カムと協働(連結若しくは接触)するようになっている。内側部材の底部は、いわゆる零行程カムと接触するための回転案内面若しくは滑動案内面を有していてよい。必要に応じて内側部材にも、低速カムのための回転案内部を設けてあってよい。
【0012】
カップ形リフターの特に軽い構造を達成するために、内側部材は片側(一方の端部)で、若しくは両側(両方の端部)で開口しており、つまり中空に形成されている。一般的に有利な構成では、少なくとも1つの構成部材(外側部材、内側部材)は、軽量材料、例えば鋼薄板によって成形されている。構成部材(構成部品)は押し出し成形によって成形されていてよい。
【0013】
付加部の開口部内に装着される回動防止部材の本発明の実施態様によれば、回動防止部材は、ニードル、ロール、球体、ピン若しくはばねクリップ等によって形成されている。内側部材の外周壁に設けられる縦溝を用いる場合には、縦溝内での回動防止部材の案内は、縦溝の側面(側壁)若しくは溝底部(底面)を介して行われる。内側部材の外周壁に設けられる縦面取り部を用いる場合には、回動防止部材の半径方向内側に位置する端面が面取り部と接触するようになっている。
【0014】
本発明の有利な実施態様によれば、付加部の窓状の開口部は、回動防止部材の外周形状に相補的に形成され、つまり回動防止部材の外周形状に合わせて形成されており、換言すれば付加部の窓状の開口部の内周形状は回動防止部材の外周形状に相当し、例えば実質的に合致しており、回動防止部材は付加部の窓状の開口部内にルーズに装着(挿入)される。このような構成により、付加的な固定手段及び材料は不要になっている。しかしながら別の実施態様によれば、回動防止部材は付加部の開口部内に不動に装着され、例えば圧入若しくは溶接によって固着されている。半径方向外側に対する回動防止部材の固定若しくはロックは、外側部材の付加部の外周面に沿ってかつ該外周面に密接して延びる環状体(リング)によって行われてよい。
【0015】
次に本発明を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】カップ形リフターの縦断面図である。
【図1b】カップ形リフターの90°回動した位置での縦断面図である。
【図2】回動防止部材の1つの実施形態を示す図である。
【図3】回動防止部材の別の実施形態を示す図である。
【図4】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図5】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図6】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図7】回動防止部材のさらに別の実施形態を示す図である。
【図8】面取り部を有する回動防止部材の実施形態の部分横断面図である。
【図9】縦溝を有する回動防止部材の実施形態の部分横断面図である。
【図10】一貫した縦面取り部を回動防止部材の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a及び図1bには、切換可能なカップ形リフター1を示してある。カップ形リフター(カップ形タペット)1は外側部材2を含んでおり、該外側部材は環状(リング状)の底部3を有している。底部3は、2つの大行程カム(高速カム)のための滑動部若しくは摺動部を形成している。底部3の外周縁部4には薄壁の周壁部分5を延設してあり、つまり外周縁部には該外周縁部からカムとは逆の側へ底部に対してほぼ垂直に、すなわちリフターの軸線方向に延びる薄壁の周壁部分を設けてある。該周壁部分(円筒壁又は外周壁部若しくはスカート状部分)5を介してカップ形リフター1は内燃機関の受容部内に案内されるようになっている。
【0018】
底部3の内周縁部6には円筒状(中空シリンダ状)の付加部7を延設してあり、つまり内周縁部には該内周縁部からカムとは逆の側へ底部に対してほぼ垂直に、すなわちリフターの軸線方向に延びる円筒状の付加部7を設けてある。付加部7の孔8内には、内側部材9を付加部7に対して相対的に軸線方向移動可能に収容(受容)してあり、内側部材9は、該内側部材の下側10で、図示省略のガス交換弁(吸気弁又は排気弁)のための支持部を成している。図1に示してあるように、内側部材9は別の実施形態では閉鎖部材(底部部材)を用いて、若しくは底部28によって閉じられていてよい。閉鎖部材若しくは底部28は、低速カム若しくは零行程カムに対する滑動部分(摺動案内部分)として用いられてよい。しかしながら、内側部材9の筒状に開口する構成の図示の実施形態では、いずれのカムも内側部材9に接触して滑動回転するようになっていない。したがってカップ形リフター1は、いわゆる行程遮断機構若しくは行程停止機構を成すものである。
【0019】
内側部材9の内部を軸線方向に対して実質的に垂直方向(半径方向若しくは直径方向)に延びる部分、つまり横ウエブは、1つのラジアル孔(半径方向孔)として形成された受容部12を有しており、該受容部は、直径方向で相対する2つの連結部材11を受容(収容)している。連結部材11は、ピストンとして形成されており、該ピストンは、上側を端面側から一部分にわたって面取りされており、つまり、ピストンの外周の上側には、端面側から一部分(所定の長さ)にわたって延びる面取り部を設けてある。連結部材11は、カムの出力変位区分若しくはカム基準円区分の走行通過時には、付加部7の孔8内に設けられかつ例えばポケットとして形成されている連行面13と相対している(図1b、参照)。
【0020】
図1bは、カップ形リフター1の連結状態を示しており、この場合に、外側部材2の底部3を負荷する大行程カム対の行程は、内側部材の下側(下面)10に接続するガス交換弁に伝達されるようになっている。
【0021】
さらに図1a,及び図1bから当業者にとって容易に理解されるように、内側部材9の外周壁16の下方の領域15には、薄壁状の環状部材17を取り付けてある。薄壁状(薄肉)の環状部材17は、内側部材9を取り囲むロストモーションばね18の一方の端部のための支持部として用いられており、ロストモーションばね18は他方の端部で、底部3の下側19に直接に支持され、つまり、底部3の下側19に直接に作用するようになっている。
【0022】
内側部材9の外周壁16には、外側部材の長手方向(縦方向)に延びる縦溝若しくは縦面取り部24を設けてある。図1aに示す実施形態では、縦溝若しくは縦面取り部24は、内側部材9の、底部から離れた側、つまり底部と反対の側の端面26に達しておらず、つまり、内側部材9における環状部材17の取り付け部位の上側までしか延びていない。環状溝若しくは縦面取り部24内には、回動防止部材20を係合させてある。回動防止部材(回動ロック部材)20は、外側部材の付加部7の開口部21内に装着されている。回動防止部材20は、開口部(孔)21内にルーズに挿入され、つまり取り付けられ、若しくは圧入されている。回動防止部材20は、該回動防止部材の外側の端面42でもって環状体41に当接しており、該環状体(環状部材)41は、付加部7の外周面(外側)40に沿って延びていて、さらに底部3の下側(下面)19及び周壁部分5の内周壁に沿って導かれ、つまり延びている、すなわち延在している。
【0023】
付加部7に設けられた前記開口部21は、半径方向外側で、周壁部分5に設けられた開口部22と同列を成して相対し、つまり合致している。これによって、開口部21の容易な成形を可能にしている。開口部21は、開口部22を通される加工用工具によって加工成形される。有利には穴抜き工具又は打ち抜き工具若しくは穿孔工具を用いられ、打ち抜き工具若しくは穿孔工具は、いわば1つの作業工程で開口部21,22を成形加工するようになっている。開口部の成形を複数の加工工程で行うことも可能である。
【0024】
回動防止部材20の組立(組み付け)は、縦溝若しくは縦面取り部24の構成に応じて種々に行われる。縦溝若しくは縦面取り部24は環状部材17の前から軸線方向に延びており、あらゆる側で包囲されて突出する固定部を形成するために、縦溝若しくは縦面取り部24は組立貫通部25を備えている。組立貫通部は軸線方向で、運転中の差行程に際して縦溝若しくは縦面取り部24内への回動防止部材の最も深い係合箇所よりも深くに位置している。これによって外側部材2は、組立貫通部25と付加部7の開口部21とが互いに同列を成す、つまり互いに合致するまで、軸線方向で内側部材9に対して下方へ移動させられるようになっている。次いで、回動防止部材20は内側から組立貫通部25を介して付加部7の開口部21内へ押し込まれる。
【0025】
縦溝若しくは縦面取り部24を一貫して形成してある場合には、つまり内側部材9の、底部から遠い側の端面26まで延びるように形成してある場合(図10、参照)には、付加部7の孔8内に内側部材9を挿入する前に、回動防止部材20は付加部7の開口部21内に装着され、つまり差し込まれる。次いで、内側部材9は軸線方向で上方から内周縁部6を介して付加部7の孔8内に挿入されて回動防止されるようになっている。
【0026】
図2は、回動防止部材20が、カム基準円区分若しくは出力変位零区分の走行通過時に縦溝若しくは縦面取り部24の上方の端面27に当接するようになっている状態を示している。さらに、内側部材9の受容部12内の連結部材11と付加部7内の連行面13との同列位置を示してある。
【0027】
図2〜図7には回動防止部材の種々の実施形態を示してある:図2に示す実施形態によれば、回動防止部材は、付加部7の開口部21内に軸線方向に向けて配置され、つまり縦向きに配置されたニードル若しくはロール30として形成されており、該ニードル若しくはロール30はその内側23で内側部材の縦溝24内に係合して、つまり入り込んでいる。図3に示す実施形態によれば、回動防止部材は、付加部7の開口部21内に軸線方向に対して横方向に、若しくは実質的に垂直に配置され、つまり横向きに配置されたニードル若しくはロール30として形成されている。図4に示す実施形態によれば、回動防止部材は、横向きに配置された中実のロール34として形成されており、該ロール(ローラ若しくはころ部材又は円柱体)の内側端面は、ロールの半径方向に拡大された係合つば36を有している。係合つば36は、その軸線方向内側で付加部7の孔8に接触するようになっている。この場合に、ロール34は環状体41の、付加部の開口部21と相対(合致)する開口部43内に突入している。該開口部(ポケット)43の内周形状はロールの外周形状に相当していてよい。図5に示す実施形態によれば、回動防止部材は、図4の実施形態に類似して形成されている。この場合に異なる点として、ロール37は中空に形成され、かつ軸線方向にスリットを付けられ、つまり、割りを入れられており、すなわち中空でスリット付きのロールとして成形されている。図6に示す実施形態によれば、回動防止部材20は、球体として形成されており、球体(ボール)は、回動防止若しくは回動ロックのために、半径方向内側で内側部材の縦溝24内に係合している。図7に示す実施形態によれば、回動防止部材20はピン32として形成されており、該ピンは球状の内側係合端部33を有している。
【0028】
図8及び図9には、回動防止部材20の構成に応じて、縦面取り部24(図8)を用いるか、縦溝24(図9)を用いるかを示してある。縦溝24を用いる場合には、案内は溝底部で行われるか、若しくは溝側面で行われる。
【符号の説明】
【0029】
1 カップ形リフター、 2 外側部材、 3 底部、 4 外周縁部、 5 周壁部分、 6 内周縁部、 7 付加部、 8 孔、 9 内側部材、 10 下側、 11 連結部材、 12 受容部、 13 連行面、 14 環状面、 15 下方の領域、 16 外周壁、 17 環状部材、 18 ロストモーションばね、 19 下側、 20 回動防止部材、 21,22 開口部、 23 内側、 24 縦面取り部、 25 組立貫通部、 26,27 端面、 28 底部、 29,30 ロール、 31 球体、 32 ピン、 33 内側係合端部、 34 ロール、 35 内側端面、 36 係合つば、 37 ロール、 38 内側端面、 39 係合つば、 40 外周面、 41 環状体、 42 外側端面、 43 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の弁駆動のための切換可能なカップ形リフター(1)であって、外側部材(2)を備えており、該外側部材は、大行程カムと接触させるための環状の底部(3)を有しており、該底部の外周縁部(4)から中空円筒形の周壁部分(5)を延設してあり、かつ前記底部(3)の内周縁部(6)から中空円筒形の付加部(7)を延設してあり、該付加部の孔(8)内に、前記外側部材(2)に対して相対的に軸線方向運動可能な内側部材(9)を案内してあり、該内側部材の下側(10)は、ガス交換弁のための支持部として用いられており、該カップ形リフター(1)内に連結部材(11)を設けてあり、該連結部材は、カム出力変位区分の走行通過時の完全な弁行程を得るために、選択的に前記構成部材(9,2)のうちの一方の構成部材の受容部(12)から、前記両方の構成部材間の環状面(14)を越えて部分的に走出して、前記構成部材(9,2)のうちの他方の構成部材の連行面(13)と係合するようになっており、前記内側部材(9)の外周壁(16)の下方の領域(15)に環状部材(17)を取り付けてあり、該環状部材にロストモーションばね(18)を一方の端部で支持してあり、該ロストモーションばね(18)は他方の端部では、前記外側部材(19)の前記底部(3)の下側(19)に支持されており、両方の前記構成部材(2,9)間に回動防止部材(20)を設けてあり、該回動防止部材は前記付加部(7)の開口部(21)内に装着されていて、該回動防止部材の内側(23)でもって、前記内側部材(9)の外周壁(16)の縦溝若しくは縦面取り部(24)に係合するようになっている形式のものにおいて、前記中空円筒形の付加部(7)の前記開口部(21)は、窓状に形成されていて、前記周壁部分(5)の半径方向で相対する領域に設けられて前記開口部(21)と合致する開口部(22)を通して挿入される工具によって成形されていることを特徴とする切換可能なカップ形リフター。
【請求項2】
前記内側部材(9)の前記縦溝若しくは縦面取り部(24)は、前記底部側で前記回動防止部材(20)が少なくともカムの出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、前記底部と離れる方向に向かって、前記内側部材(9)の外周壁(16)に取り付けられた前記環状部材(17)の前で終わる長さ、若しくは該環状部材(17)まで延びる長さを有しており、前記縦溝若しくは縦面取り部(24)は組立貫通部(25)によって画定されており、該組立貫通部は、前記内側部材の軸線方向で、連結解除に際して前記縦溝若しくは縦面取り部(24)内における前記回動防止部材(20)の占める最も深い係合部位よりも深くに位置しており、組立に際して前記回動防止部材(20)は前記組立貫通部(25)を介して、半径方向内側から半径方向外側へ、前記内側部材(9)に対する前記外側部材(21)の最大の移動位置(差行程)で前記組立貫通部と合致する、前記付加部(7)の前記開口部(21)内に押し込まれるようになっている請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項3】
前記外側部材(9)の前記縦溝若しくは縦面取り部(24)は、底部側で前記回動防止部材(20)が少なくとも出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、前記内側部材(9)の軸線方向の全長にわたって前記内側部材の底部から遠い側の端面(26)まで延びる長さを有しており、組立に際して前記回動防止部材(20)は半径方向内側から、前記付加部(7)の孔(8)を介して半径方向外側へ前記付加部の前記開口部(21)内に押し込まれ、次いで前記内側部材(9)は前記底部(3)の内周縁部(6)を介して前記付加部(7)の孔(8)内に入れ子式に挿入されるようになっている請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項4】
前記内側部材(9)の前記縦溝若しくは縦面取り部(24)の上方の端面(27)への、出力変位区分の走行通過時の回動防止部材(20)の当接により、前記1つの構成部材(9,2)の受容部(12)内の連結部材(11)と前記別の構成部材(2,9)内の連結面(13)との間の合致した位置若しくは選択的に連結遊びのある位置を規定している請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項5】
前記内側部材(9)は低速カム若しくは零行程カムの滑動案内のための底部(28)に結合されており、若しくは前記内側部材(9)にカム滑動案内面を含んでいない請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項6】
前記内側部材(9)にカム滑動案内面を設けてない場合に、前記内側部材(9)は少なくとも前記底部の側で、若しくは両方の側で筒状に開口している請求項5に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項7】
前記付加部(7)及び前記周壁部分(5)の互いに合致する開口部(21,22)は、1つの工具を用いて打ち抜き加工若しくは穿孔加工により加工成形されている請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項8】
付加部(7)の開口部(21)内に装着される前記回動防止部材は、縦向き又は横向きに配置されたシリンダー状のニードル若しくはロール(29,30)として形成され、若しくは、横向きに配置されて球状の内側係合端部33を有するピン(32)として形成され、若しくは、横向きに配置された中実のロール(34)として形成され又は横向きに配置されかつ中空でかつスリット付きのロール(37)として形成されており、前記中実のロール(34)又は前記中空でかつスリット付きのロール(37)は、該ロールの内側端面(35,38)に配置されかつ半径方向に拡大していて前記付加部(7)の孔(8)に接触する係合つば(36,38)を有している請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項9】
前記回動防止部材(20)は、前記付加部(7)の前記窓状の開口部(20)内にルーズに装着され若しくは前記窓状の開口部(20)内に不動に装着されている請求項1又は8に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項10】
前記付加部(7)の外周面(40)に環状体(41)若しくは薄板製環状体を取り付けてあり、前記回動防止部材(20)は、該回動防止部材の外側端面(42)でもって前記環状体(41)の内側に接触しているか若しくは前記環状体(41)のポケット(43)内に部分的に入り込んでいる請求項8に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項1】
内燃機関の弁駆動のための切換可能なカップ形リフター(1)であって、外側部材(2)を備えており、該外側部材は、大行程カムと接触させるための環状の底部(3)を有しており、該底部の外周縁部(4)から中空円筒形の周壁部分(5)を延設してあり、かつ前記底部(3)の内周縁部(6)から中空円筒形の付加部(7)を延設してあり、該付加部の孔(8)内に、前記外側部材(2)に対して相対的に軸線方向運動可能な内側部材(9)を案内してあり、該内側部材の下側(10)は、ガス交換弁のための支持部として用いられており、該カップ形リフター(1)内に連結部材(11)を設けてあり、該連結部材は、カム出力変位区分の走行通過時の完全な弁行程を得るために、選択的に前記構成部材(9,2)のうちの一方の構成部材の受容部(12)から、前記両方の構成部材間の環状面(14)を越えて部分的に走出して、前記構成部材(9,2)のうちの他方の構成部材の連行面(13)と係合するようになっており、前記内側部材(9)の外周壁(16)の下方の領域(15)に環状部材(17)を取り付けてあり、該環状部材にロストモーションばね(18)を一方の端部で支持してあり、該ロストモーションばね(18)は他方の端部では、前記外側部材(19)の前記底部(3)の下側(19)に支持されており、両方の前記構成部材(2,9)間に回動防止部材(20)を設けてあり、該回動防止部材は前記付加部(7)の開口部(21)内に装着されていて、該回動防止部材の内側(23)でもって、前記内側部材(9)の外周壁(16)の縦溝若しくは縦面取り部(24)に係合するようになっている形式のものにおいて、前記中空円筒形の付加部(7)の前記開口部(21)は、窓状に形成されていて、前記周壁部分(5)の半径方向で相対する領域に設けられて前記開口部(21)と合致する開口部(22)を通して挿入される工具によって成形されていることを特徴とする切換可能なカップ形リフター。
【請求項2】
前記内側部材(9)の前記縦溝若しくは縦面取り部(24)は、前記底部側で前記回動防止部材(20)が少なくともカムの出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、前記底部と離れる方向に向かって、前記内側部材(9)の外周壁(16)に取り付けられた前記環状部材(17)の前で終わる長さ、若しくは該環状部材(17)まで延びる長さを有しており、前記縦溝若しくは縦面取り部(24)は組立貫通部(25)によって画定されており、該組立貫通部は、前記内側部材の軸線方向で、連結解除に際して前記縦溝若しくは縦面取り部(24)内における前記回動防止部材(20)の占める最も深い係合部位よりも深くに位置しており、組立に際して前記回動防止部材(20)は前記組立貫通部(25)を介して、半径方向内側から半径方向外側へ、前記内側部材(9)に対する前記外側部材(21)の最大の移動位置(差行程)で前記組立貫通部と合致する、前記付加部(7)の前記開口部(21)内に押し込まれるようになっている請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項3】
前記外側部材(9)の前記縦溝若しくは縦面取り部(24)は、底部側で前記回動防止部材(20)が少なくとも出力変位区分の走行通過時に該縦溝若しくは縦面取り部と係合する部位から出発して、前記内側部材(9)の軸線方向の全長にわたって前記内側部材の底部から遠い側の端面(26)まで延びる長さを有しており、組立に際して前記回動防止部材(20)は半径方向内側から、前記付加部(7)の孔(8)を介して半径方向外側へ前記付加部の前記開口部(21)内に押し込まれ、次いで前記内側部材(9)は前記底部(3)の内周縁部(6)を介して前記付加部(7)の孔(8)内に入れ子式に挿入されるようになっている請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項4】
前記内側部材(9)の前記縦溝若しくは縦面取り部(24)の上方の端面(27)への、出力変位区分の走行通過時の回動防止部材(20)の当接により、前記1つの構成部材(9,2)の受容部(12)内の連結部材(11)と前記別の構成部材(2,9)内の連結面(13)との間の合致した位置若しくは選択的に連結遊びのある位置を規定している請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項5】
前記内側部材(9)は低速カム若しくは零行程カムの滑動案内のための底部(28)に結合されており、若しくは前記内側部材(9)にカム滑動案内面を含んでいない請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項6】
前記内側部材(9)にカム滑動案内面を設けてない場合に、前記内側部材(9)は少なくとも前記底部の側で、若しくは両方の側で筒状に開口している請求項5に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項7】
前記付加部(7)及び前記周壁部分(5)の互いに合致する開口部(21,22)は、1つの工具を用いて打ち抜き加工若しくは穿孔加工により加工成形されている請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項8】
付加部(7)の開口部(21)内に装着される前記回動防止部材は、縦向き又は横向きに配置されたシリンダー状のニードル若しくはロール(29,30)として形成され、若しくは、横向きに配置されて球状の内側係合端部33を有するピン(32)として形成され、若しくは、横向きに配置された中実のロール(34)として形成され又は横向きに配置されかつ中空でかつスリット付きのロール(37)として形成されており、前記中実のロール(34)又は前記中空でかつスリット付きのロール(37)は、該ロールの内側端面(35,38)に配置されかつ半径方向に拡大していて前記付加部(7)の孔(8)に接触する係合つば(36,38)を有している請求項1に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項9】
前記回動防止部材(20)は、前記付加部(7)の前記窓状の開口部(20)内にルーズに装着され若しくは前記窓状の開口部(20)内に不動に装着されている請求項1又は8に記載の切換可能なカップ形リフター。
【請求項10】
前記付加部(7)の外周面(40)に環状体(41)若しくは薄板製環状体を取り付けてあり、前記回動防止部材(20)は、該回動防止部材の外側端面(42)でもって前記環状体(41)の内側に接触しているか若しくは前記環状体(41)のポケット(43)内に部分的に入り込んでいる請求項8に記載の切換可能なカップ形リフター。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−138908(P2010−138908A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282484(P2009−282484)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(390009623)シエツフレル コマンディートゲゼルシャフト (99)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(390009623)シエツフレル コマンディートゲゼルシャフト (99)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]