説明

切断装置

【課題】複雑な手順による被加工物の搬送をすることなく、切削加工、洗浄及びレーザー加工を行う。
【解決手段】回転可能なチャックテーブル3に保持された被加工物に切削ブレード61bを回転させながら接触させて切削する切削手段6と、チャックテーブル3に保持された被加工物に洗浄液を噴射するノズル51を備えた洗浄手段5と、チャックテーブル3に保持された被加工物をレーザー加工するレーザー加工手段4とから少なくとも構成される切断装置1であって、切削手段6と洗浄手段5とレーザー加工手段4との作用位置を同一駆動軸70上に位置させることにより、同一のチャックテーブル3に保持された被加工物が切削手段6と洗浄手段5とレーザー加工手段4とによる作用を連続して受けることができるようにして、被加工物の搬送時における破損を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一のチャックテーブルに保持された被加工物に対して、切削加工、洗浄及びレーザー加工を行うことができる切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物に対して切削加工及びレーザー加工を行う場合には、切削加工装置とレーザー加工装置とがインライン接続される。例えば、被加工物に対して切削加工の後にレーザー加工を施す場合には、切削加工装置のチャックテーブルに保持された被加工物が切削加工された後、その被加工物が切削加工装置に備えた洗浄テーブルに搬送されて被加工物が洗浄される。そして、切削加工及び洗浄が行われた被加工物は、インライン搬送手段によってレーザー加工装置のチャックテーブルに搬送され、レーザー加工される。こうしてレーザー加工された被加工物は、レーザー加工装置に備えた洗浄テーブルに搬送され、洗浄される。被加工物の切削加工及びレーザー加工並びに搬送については、例えば下記特許文献1ないし3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−339435号公報
【特許文献2】特開2005−142398号公報
【特許文献3】特開2010−045151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、切削加工とレーザー加工とが必要な被加工物を加工する場合には、加工対象の被加工物に関して、切削加工装置内部における搬送、切削加工装置からレーザー加工装置への搬送及びレーザー加工装置内部における搬送が必要であるため、搬送手順が複雑となり、搬送時に被加工物が破損する可能性がある。
【0005】
また、切削加工時とレーザー加工時とでは異なるチャックテーブルを使用することになるため、それぞれのチャックテーブルにおいて加工すべき位置を検出するアライメントの実行が必要となる。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、その目的は、複雑な手順による被加工物の搬送を回避し、効率よく、切削加工、洗浄及びレーザー加工を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、同一のチャックテーブルに保持された被加工物に対し、切削加工、洗浄及びレーザー加工を行うことができる切断装置である。具体的には、この切削装置は、被加工物を保持し回転可能なチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物に切削ブレードを回転させながら接触させることで被加工物を切削する切削手段と、チャックテーブルに保持された被加工物に洗浄液を噴射するノズルを備えた洗浄手段と、チャックテーブルに保持された被加工物をレーザー加工するためにレーザー光線を照射するレーザー加工手段と、から少なくとも構成される切断装置であって、切削手段と該洗浄手段と該レーザー加工手段との作用位置が同一駆動軸上に位置することにより、同一のチャックテーブルにおいて保持された被加工物が、該切削手段と該洗浄手段と該レーザー加工手段とによる一連の作用を受けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る切断装置は、切削手段と洗浄手段とレーザー加工手段との作用位置が同一駆動軸上に位置するため、同一のチャックテーブル上において切削加工、洗浄及びレーザー加工を行うことができる。すなわち、チャックテーブルの移動によって被加工物の搬送が行われるため、複雑な搬送手順を経る必要がなくなる。したがって、レーザー加工又は切削加工を施すための領域を検出するためのアライメントの実行を容易にすることができるとともに、搬送時に生じる被加工物の破損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施形態を表した斜視図である。
【図2】切断対象となるウェーハの表面を表した斜視図である。
【図3】ウェーハが保護テープを介してフレームと一体となっている状態を表した斜視図である。
【図4】ウェーハの構造を示す拡大断面図である。
【図5】第一の実施形態におけるレーザー加工工程を表した模式図である。
【図6】ウェーハに形成されたレーザー加工溝を拡大して表した断面図である。
【図7】第一の実施形態における切削工程を表した模式図である。
【図8】ウェーハが切断された状態を拡大して表した断面図である。
【図9】本発明の第二の実施形態を表した斜視図である。
【図10】第二の実施形態におけるレーザー加工工程を表した模式図である。
【図11】第二の実施形態における切削工程を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1 第一の実施形態
(1)装置構成
図1の切断装置1は、本発明の第一の実施形態を示している。この切断装置1は、複数のチャックテーブル3を等間隔に配置した回転基台7と、回転基台7の近傍に配設されたレーザー加工手段4と洗浄手段5と切断手段6とを備えている。回転基台7は、略円盤形状に形成され、当該基台7によって複数のチャックテーブル3が自転可能に支持されている。回転基台7は、図1において二点鎖線で示す円弧状の駆動軸70に沿って矢印Aに示す両方向に回転移動可能となっており、回転基台7の回転により、駆動軸70に沿ってチャックテーブル3を公転させることができる。
【0011】
チャックテーブル3は、被加工物を吸着する吸着部31と、当該吸着部31を支持する軸部32とを備えている。吸着部31は、図示しない吸引源に連通している。また、チャックテーブル3は、軸部32を中心軸として回転可能となっている。
【0012】
レーザー加工手段4には、円筒形状の照射部41を備えており、その下端部に集光器42が形成されている。また、レーザー加工手段4は、鉛直方向(Z軸方向)に延びるボールスクリュー43と、ボールスクリュー43と平行に配設された一対のガイドレール44と、ボールスクリュー43の一端に接続されたモーター45と、一端部に照射部41が固定された昇降基台46とを備えている。図示はしていないが、照射部41にはレーザー光線発振手段を備えており、照射部41の側部には、加工領域を検出するアライメント位置を調整するための撮像装置が装着されている。集光器42の下部は、チャックテーブル3の表面に向けられている。
【0013】
昇降基台46の一方の面には、一対のガイドレール44が摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー43が螺合している。そして、モーター45によって回転駆動されたボールスクリュー43が回動することにより、昇降基台46は、ガイドレール44にガイドされてZ軸方向に移動し、併せて照射部41をZ軸方向に昇降させることができる。
【0014】
また、レーザー加工手段4は、X軸方向に延びるボールスクリュー43aと、ボールスクリュー43aと平行に配設された一対のガイドレール44aと、ボールスクリュー43aの一端に接続されたモーター45aと、被加工物に対するレーザー照射のX軸方向の位置を制御するための移動基台47とを備えている。移動基台47の一方の面には、一対のガイドレール44aが摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー43aが螺合している。そして、モーター45aによって回転駆動されたボールスクリュー43aが回動することにより、移動基台47は、ガイドレール44aにガイドされてX軸方向に移動する。そして、移動基台47のX軸方向の移動により昇降基台46をX軸方向に移動させ、併せて照射部41をX軸方向に移動させることができる。
【0015】
このように、ボールスクリュー43及び43aを回動させることにより、レーザー照射時における照射部41の実際の位置、すなわちレーザー加工手段4の作用位置を、X軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。
【0016】
洗浄手段5には、洗浄液を噴射するためのノズル51と、旋回動により洗浄位置を制御するためのアーム53とを備えている。ノズル51の端部には、洗浄液噴出口52が形成されており、アーム53の旋回により、洗浄水噴出時の洗浄液噴出口52の位置、すなわち洗浄手段5の作用位置を移動させることができる。
【0017】
図1に示すように、切削手段6は、Y軸方向の軸心を有するスピンドル61aと、スピンドル61aの先端部に取り付けられた切削ブレード61bと、切断ブレード61bをカバーするブレードカバー61cと、スピンドル61aの側部に固定され被加工物の切削すべき位置を検出する撮像装置61dとを備えている。
【0018】
切削手段6は、Z軸方向に延びるボールスクリュー62と、ボールスクリュー62と平行に配設された一対のガイドレール63と、ボールスクリュー62の一端に接続されたモーター64と、被加工物に対する切削ブレード61bの切り込み深さを制御するための昇降基台65とを備えている。昇降基台65の一方の面には、一対のガイドレール63が摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー62が螺合している。そして、モーター64によって回転駆動されたボールスクリュー62が回動することにより、昇降基台65がガイドレール63にガイドされてZ軸方向に移動し、併せて切削ブレード61bをZ軸方向に昇降させることができる。
【0019】
また、切削手段6は、Y軸方向に延びるボールスクリュー62aと、ボールスクリュー62aと平行に配設された一対のガイドレール63aと、ボールスクリュー62aの一端に連結されたモーター64aと、被加工物に対する切削ブレード61bのY軸方向の切り込み位置を調整するための移動基台66とを備えている。移動基台66の一方の面には、一対のガイドレール63aが摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー62aが螺合している。そして、モーター64aによって回転駆動されたボールスクリュー62aが回動することにより、移動基台66は、一対のガイドレール63aにガイドされてY軸方向に移動する。そして、移動基台66のY軸方向の移動により昇降基台65をY軸方向に移動させ、併せて切削ブレード61bをY軸方向に移動させることができる。
【0020】
このように、ボールスクリュー62及び62aを回動させることにより、切削加工時における切削ブレード61bの実際の位置、すなわち切削ブレード61bの作用位置を、Y軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。なお、図示はしていないが、切削手段6は、X軸方向にも駆動可能な構成としてもよい。
【0021】
切断装置1では、レーザー加工手段4と洗浄手段5と切削手段6との作用位置を、チャックテーブル3の公転経路、すなわち回転基台7における駆動軸70上に位置させることができる。したがって、チャックテーブル3に保持された被加工物は、レーザー加工手段4、洗浄手段5及び切削手段6によって一連の作用を受けることができる。
【0022】
(2)装置の動作例
図2に示すウェーハWは、図1に示した切断装置1によって加工される被加工物の一例であり、その表面WAには、格子状のストリートSによって区画されて複数のデバイスDが形成されている。このウェーハWについて、裏面WBからレーザー加工及び切削加工を行う。
【0023】
ウェーハWの裏面WB側から加工を行う場合は、図3に示すように、ウェーハWの表面WAを保護テープTに貼着して裏面WB側を露出させ、保護テープTにリング状のフレームFを貼着することにより、ウェーハWが保護テープTを介してフレームFと一体となって支持される。なお、ウェーハWの表面WA側から加工を行う場合は、保護テープTをウェーハWの裏面WBに貼着して表面A側を露出させた状態で、ウェーハWが保護テープTを介してフレームFと一体となって支持される。
【0024】
図4に示すように、ウェーハWの裏面WBには、被膜Mが形成されている。被膜Mを切削ブレード61bによって切削すると切削ブレード61bに目詰まりを起こさせる場合や、被膜がLow−k膜であって切削ブレード61bで切削するとLow−k膜が剥離して回路にも悪影響を及ぼす場合には、最初にストリートSに沿って被膜Mにレーザー照射による溝を形成し、その後、当該溝に沿って切削ブレード61bによる切削を行うことによりストリートSを切断する。
【0025】
ア レーザー加工工程
ウェーハWを裏面WB側からレーザー加工する場合には、図1に示すように、チャックテーブル3の吸着部31にフレームFと一体となっているウェーハWの表面WA側(保護テープT)を吸着させる。そして、回転基台7を矢印A1方向に回転させることにより、チャックテーブル3をレーザー加工手段4の直下に移動させる。
【0026】
レーザー加工手段4は、アライメントを実行してウェーハWの加工すべきストリートSを検出する。そして、図5に示すように、レーザー加工手段4の集光器42が、ストリートSの照射開始位置P1の直上に位置付けられ、集光器42を介してウェーハWに対するレーザー光線の照射を開始する。そして、図1に示した移動基台47をX軸方向にガイドレール44aに沿って移動させながら、図5に示すように、ストリートSの一方の端部である照射開始位置P1から、ストリートSの他方の端部である照射終了位置P2までレーザー光線を照射する。
【0027】
レーザー光線は、裏面WBに被覆された被膜Mに集光する。そうすると、集光された部分の被膜が除去され、図6に示すように、ストリートSに沿ってレーザー加工溝Hが形成される。
【0028】
次に、図1に示した回転基台7を矢印A1方向に回転させ、集光器42をレーザー加工済みのストリートSの隣に位置するストリートSの一方の端部の上方に移動させる。回転基台7を回転させると、その回転角度の分だけストリートSの方向が変化するため、チャックテーブル3を回転基台7の回転方向と逆の方向に同じ角度分だけ回転させることにより、次に加工しようとするストリートSの向きをX軸方向に合致させる。そして、図5に示したように、ストリートSの照射開始位置P1から照射終了位置P2までレーザー光線を照射する。
【0029】
このようにして順次ストリートSにレーザー光線を照射し、同方向のすべてのストリートSにレーザー加工溝Hが形成されると、チャックテーブル3を回転させ、Y軸方向に向いていたストリートSをX軸方向に向けさせる。そして、上記と同様にストリートSに沿ってレーザー光線を照射することにより、すべてのストリートSに沿ってレーザー加工溝Hが形成される。
【0030】
イ 洗浄工程
レーザー加工溝H形成の際には、レーザー光線の照射位置付近に加工屑が飛散し、ウェーハWの裏面WBには加工屑が付着するため、洗浄手段5によってウェーハWの裏面WBに付着した加工屑を除去する。
【0031】
ウェーハWの裏面WBを実際に洗浄する場合には、回転基台7を矢印A1方向に回転させ、ウェーハWを保持したチャックテーブル3を洗浄手段5の直下に移動させる。すなわち、チャックテーブル3を駆動軸70に沿って移動させる。そして、チャックテーブル3を高速回転させるとともに、アーム53がノズル51を洗浄位置に移動させ、ノズル51の端部に形成されている洗浄水噴出口52から洗浄液の噴射が開始され、アーム53が揺動しながら、高速回転中のチャックテーブル3に保持されたウェーハWの裏面WBに向けて洗浄液が噴射される。こうして洗浄液が噴射されると、ウェーハWの裏面WBに付着した加工屑が除去される。このように、チャックテーブル3は、洗浄工程においては、スピンナーテーブルとしての機能を発揮する。
【0032】
ウェーハWの裏面WBから加工屑を除去した後は、ノズル51からの洗浄液の噴射を停止する。更に、洗浄液の噴射が停止した後は、図示してはいないが、エアーノズルが水平方向に回転してその先端部をウェーハWの裏面WBに向かせて高圧エアーを噴出することにより、使用済みの洗浄水が除去され、ウェーハWの裏面WBが乾燥される。
【0033】
ウ 切削工程
洗浄手段5によって洗浄されチャックテーブル3に保持されたウェーハWは、回転基台7を矢印A1方向に回転させることにより、切削手段6の直下に移動する。すなわち、チャックテーブル3を駆動軸70に沿って移動させる。
【0034】
そして、切削ブレード61bを、ストリートSの切削加工の開始位置上方に位置付けるとともに高速回転させた後、その状態から切削ブレード61bを降下させることにより、図7に示すように、ストリートSに形成されたレーザー加工溝Hの切削加工開始位置P1から当該レーザー加工溝Hの切削加工終了位置P2に至るまで、高速回転中の切削ブレード61bを接触させて切り込ませ、ストリートSを切断する。ストリートSの切削時は、回転基台7とチャックテーブル3とを同時に回転させることにより、切削ブレード61bとウェーハWとがX軸方向に相対移動するように制御する。
【0035】
同様に、同方向に向くすべてのレーザー加工溝Hに沿って切削加工を行う。そしてその後、切削をしていないY軸方向に向く列のストリートSに対しても切削をするために、チャックテーブル3を回転させ、Y軸方向に向く列をX軸方向に向けさせる。そして、前記同様にストリートSに形成されたレーザー加工溝Hに沿って、切削ブレード61bにより切削をする。このようにして、図8に示すように、ウェーハWが個々のデバイスDに切断される。
【0036】
以上のように、図1に示した切断装置1では、レーザー加工手段4と洗浄手段5と切削手段6との作用位置が、チャックテーブル3の公転経路、すなわち回転基台7における同一駆動軸70上に位置するため、搬送手段を用いてそれぞれの手段毎における異なるチャックテーブル間を逐一搬送する必要がなく、同一のチャックテーブル3に保持されたウェーハWに対してレーザー加工、洗浄及び切削加工を連続して施すことができる。したがって、レーザー加工又は切削加工を施す領域を検出するためのアライメントの実行を容易にすることができるとともに、搬送時に生じる被加工物の破損を回避することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、レーザー加工手段4において、切削加工するストリートSと同一のアライメント位置を検出しているが、切削加工位置の調整が必要である場合は、切削手段6においても、再度、アライメント位置の調整をすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、レーザー加工の後に切削加工を行う場合について示したが、切削加工の後にレーザー加工を行うこともできる。
【0039】
2 第二の実施形態
(1)装置構成
図9の切断装置2は、本発明の第二の実施形態を示している。この切断装置2は、X軸方向に延びる基台8と、基台8上に所定間隔で配設されたレーザー加工手段40と洗浄手段50と切削手段60とを備えている。基台8には、その中央部にレーザー加工手段40から切削手段60までを軸通したボールスクリュー8aと、ボールスクリュー8aと平行に配設された一対のガイドレール8bと、ボールスクリュー8aの一端に連結されたモーター8cとを備えた駆動軸9を設けている。レーザー加工手段40と洗浄手段50と切削手段60とは、X軸方向に向く1本の駆動軸9に沿ってそれぞれ配設され、レーザー加工手段40と洗浄手段50と切削手段60との作用位置が駆動軸9上に位置することにより、被加工物を同一駆動軸上でレーザー加工、洗浄及び切削加工することができる構成となっている。
【0040】
チャックテーブル10は、ウェーハWを吸着する吸着部101と、当該吸着部101を支持する軸部102と、被加工物を支持するフレームFを固定する固定部103と、軸部102を固着させた移動基台104とを備えている。また、チャックテーブル10は、軸部102を中心軸として高速回転可能となっている。
【0041】
図9に示すように、レーザー加工手段40には、2つの円筒形状の照射部41を備えており、その下端部にそれぞれ集光器42が形成されている。照射部41の近傍には、加工すべき位置を検出するための撮像装置41aを備えている。
【0042】
レーザー加工手段40は、鉛直方向(Z軸方向)に延びる2本のボールスクリュー43と、2本のボールスクリュー43のそれぞれに対して平行に配設された一対のガイドレール44と、それぞれのボールスクリュー43の一端に接続されたモーター45と、被加工物に対するレーザー照射のZ軸方向の位置を制御するための2つの昇降基台46とを備えている。照射部41は、2つの昇降基台46にそれぞれ固定されている。
【0043】
各昇降基台46の一方の面には、一対のガイドレール44がそれぞれ摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にそれぞれボールスクリュー43が螺合している。そして、モーター45によって回転駆動されたボールスクリュー43が回動することにより、2つの昇降基台46は、ガイドレール44に沿ってガイドされてそれぞれZ軸方向に移動するとともに、併せて照射部41をそれぞれ独立してZ軸方向に昇降させることができる。
【0044】
また、レーザー加工手段40は、Y軸方向に延びるボールスクリュー43a及び43bと、ボールスクリュー43a及び43bと平行に配設された一対のガイドレール44aと、ボールスクリュー43aの一端に連結された図示しないモーターと及びボールスクリュー43bの一端に連結されたモーター45aと、ウェーハWに対するレーザー照射のY軸方向の位置を制御するための2つの移動基台47とを備えている。それぞれの移動基台47の一方の面には、一対のガイドレール44aが摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー43a及び43bがそれぞれ螺合している。そして、図示しないモーター及びモーター45aによって回転駆動されたボールスクリュー43a及び43bが回動することにより、2つの移動基台47がガイドレール44aにガイドされてそれぞれY軸方向に移動するとともに、併せて2つの照射部41をそれぞれ独立してY軸方向に移動させることができる。
【0045】
このように、ボールスクリュー43、43a及び43bを回動させることにより、レーザー照射時における照射部41の実際の位置、すなわちレーザー加工手段40の作用位置を、Y軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。
【0046】
洗浄手段50には、洗浄液を噴射するためのノズル51と、旋回動により洗浄位置を制御するためのアーム53とを備えている。ノズル51の端部には、洗浄液噴出口52が形成されており、アーム53の旋回により、洗浄水噴出時の洗浄液噴出口52の位置、すなわち洗浄手段50の作用位置を移動させることができる。
【0047】
図9に示すように、切削手段60は、Y軸方向の軸心を有する一対のスピンドル61aと、スピンドル61aの先端部に取り付けられた一対の切削ブレード61bと、切断ブレード61bをカバーする一対のブレードカバー61cと、スピンドル61aの側部に固定され切削すべきストリートSを検出する撮像装置61dとを備えている。
【0048】
また、切削手段60は、Y軸方向に延びるボールスクリュー62a及び62bと、ボールスクリュー62a及び62bと平行に配設された一対のガイドレール63aと、ボールスクリュー62aの一端に連結された図示しないモーター及びボールスクリュー62bの一端に連結されたモーター64aと、ウェーハWに対する切削位置のY軸方向の調整を行うための2つの移動基台66とを備えている。それぞれの移動基台66の一方の面には、一対のガイドレール63aが摺接し、図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー62a及び62bが螺合している。そして、図示しないモーター及びモーター64aによって回転駆動されたボールスクリュー62a及び62bが回動することにより、それぞれの移動基台66がガイドレール63aに沿ってガイドされてY軸方向に移動する。移動基台66のY軸方向の移動により、それぞれの昇降基台65を独立してY軸方向に移動させ、併せてそれぞれの切削ブレード61bを独立してY軸方向に移動させることができる。なお、図示してはいないが、一対のスピンドル61a、切削ブレード61b及びブレードカバー61cは、X軸方向にも駆動可能な構成としてもよい。
【0049】
このように、ボールスクリュー62、62a及び62bを回動させることにより、切削加工時における切削ブレード61bの実際の位置、すなわち切削ブレード61bの作用位置を、Y軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。
【0050】
切断装置2では、レーザー加工手段40と洗浄手段50と切削手段60との作用位置を、チャックテーブル3の移動経路、すなわち基台8における駆動軸9上に位置させることができる。したがって、チャックテーブル3に保持された被加工物は、レーザー加工手段40、洗浄手段50及び切削手段60によって一連の作用を受けることができる。
【0051】
(2)装置の動作例
以下では、第一の実施形態と同様に、図2に示したように表面WAにおいて格子状のストリートSによって区画されて複数のデバイスDが形成されたウェーハWについて、裏面WB側からストリートSに沿ってレーザー加工溝を形成し、その加工溝を切削して切断する場合について説明する。
【0052】
図3に示したように、ウェーハWの表面WAを保護テープTに貼着して裏面WB側を露出させ、保護テープTにリング状のフレームFを貼着することにより、ウェーハWが保護テープTを介してフレームFと一体となって支持される。なお、ウェーハWの表面WA側から加工を行う場合は、保護テープTをウェーハWの裏面WBに貼着して表面A側を露出させた状態で、ウェーハWが保護テープTを介してフレームFと一体となって支持される。また、図4に示したように、ウェーハWの裏面WBには、被膜Mが形成されている。
【0053】
(1)レーザー加工工程
ウェーハWをレーザー加工する場合には、図9に示すように、吸着部31にフレームFと一体となっているウェーハWの表面WA側(保護テープT側)を吸着させて、フレームFを固定部103で固定する。そして、チャックテーブル10をレーザー加工手段40の直下に移動させる。レーザー加工手段40は、アライメントを実行して被加工物であるウェーハWの加工すべきストリートSを2本検出する。ストリートSの検出後、図10に示すように、レーザー加工手段40の2つの集光器42が、2本のストリートSの照射開始位置Pの直上にそれぞれ位置付けられ、集光器42を介してウェーハWに対するレーザー光線の照射を開始する。そして、図9に示したチャックテーブル10を駆動軸9に沿ってX軸方向に移動させながら、ストリートSの一方の端部から他方の端部までレーザー光線を照射する。
【0054】
レーザー光線を裏面WBに被覆された被膜Mに集光すると、集光された部分から被膜Mが除去され、図6に示したように、ストリートSに沿ってレーザー加工溝Hが形成される。
【0055】
次に、図10に示すように、2つの集光器42を互いが近づく方向(Y軸方向)に移動させ、次の加工対象のストリートSの直上に移動させる。そして、前記と同様に、チャックテーブル10をX軸方向に移動させながら、ストリートSの一端部から他端部までレーザー照射を行う。このようにして、2つの集光器42をY軸方向に移動させながら、順次ストリートSにレーザー光線を照射すると、同方向のすべてのストリートSにレーザー加工溝が形成される。また、チャックテーブル3を回転させ、Y軸方向に向いていたストリートSをX軸方向に向けさせる。そして、上記と同様にストリートSに沿ってレーザー光線を照射することにより、すべてのストリートSに沿ってレーザー加工溝Hが形成される。
【0056】
(2)洗浄工程
レーザー加工溝H形成の際には、レーザー光線の照射位置付近に加工屑が飛散し、ウェーハWの裏面WBには加工屑が付着するため、洗浄手段50によってウェーハWの裏面WBに付着した加工屑を除去する。
【0057】
ウェーハWの裏面WBを実際に洗浄する場合には、移動基台104をX軸方向に相対移動させ、ウェーハWを保持したチャックテーブル3を洗浄手段50の直下に移動させる。すなわち、チャックテーブル3を駆動軸9に沿って移動させる。そして、チャックテーブル3を高速回転させるとともに、アーム53がノズル51を洗浄位置に移動させ、ノズル51の端部に形成されている洗浄水噴出口52から洗浄液の噴射が開始され、アーム53が揺動しながら、高速回転中のチャックテーブル3に保持されたウェーハWの裏面WBに向けて洗浄液が噴射される。こうして洗浄液が噴射されると、ウェーハWの裏面WBに付着した加工屑が除去される。このように、チャックテーブル3は、洗浄工程においては、スピンナーテーブルとしての機能を発揮する。
【0058】
ウェーハWの裏面WBから加工屑を除去した後は、ノズル51からの洗浄液の噴射を停止する。更に、洗浄液の噴射が停止した後は、図示してはいないが、エアーノズルが水平方向に回転してその先端部をウェーハWの裏面WBに向かせて高圧エアーを噴出することにより、使用済みの洗浄水が除去され、ウェーハWの裏面WBが乾燥される。
【0059】
(3)切削工程
洗浄手段50によって洗浄されチャックテーブル3に保持されたウェーハWは、移動基台104をX軸方向に相対移動させることにより、切削手段60の直下に移動させる。すなわち、チャックテーブル3を駆動軸9に沿って移動させる。
【0060】
そして、図11に示すように、一方の切削ブレード61bを一方の端部のストリートSに形成されたレーザー加工溝Hの加工開始位置上方に位置付けるとともに、他方の切削ブレード61bを他端のストリートSに形成されたレーザー加工溝Hの加工開始位置上方に位置付ける。そして、2つの切削ブレード61bを高速回転させるとともに降下させ、チャックテーブル10をX軸方向に移動させながら、レーザー加工溝Hの切削加工開始位置から当該レーザー加工溝Hの加工終了位置に至るまで、高速回転中の切削ブレード61bを接触させて切り込ませ、ストリートSを切断する。なお、切断装置2では、レーザー加工手段40に撮像装置41aを備えているため、レーザー加工手段40において切削加工位置の検出が可能であるが、切削加工位置の調整が必要である場合は、切削手段60に備えた撮像装置61dを用いて、再度、切削位置の調整をすることができる。
【0061】
同様に、2つの切削ブレード61bをY軸方向に送りながら、同方向に向くすべてのレーザー加工溝Hに沿って、2つの切削ブレード61bを用いて切削加工を行う。そしてその後、チャックテーブル3を回転させ、Y軸方向に向く列をX軸方向に向けて、前記同様にストリートSに形成されたレーザー加工溝Mに沿って、2つの切削ブレード61bにより切削をする。このようにして、ストリートSに沿って切断され、図8に示したように、ウェーハWが個々のデバイスDに切断される。
【0062】
以上のように、切断装置1では、レーザー加工手段40と洗浄手段50と切削手段60との作用位置が、チャックテーブル3の直線状の経路、すなわち駆動軸9上に位置するため、搬送手段を用いてそれぞれの手段毎における異なるチャックテーブル間を逐一搬送する必要がなく、同一のチャックテーブル3に保持されたウェーハWに対してレーザー加工、洗浄及び切削加工を連続して施すことができる。したがって、レーザー加工又は切削加工を施す領域を検出するためのアライメントの実行を容易にすることができるとともに、搬送時に生じる被加工物の破損を回避することができる。
【0063】
なお、上記の第一及び第二の実施形態では、レーザー加工手段により、ウェーハWのストリートSにレーザー加工溝Hを形成した後、洗浄を経て、切削手段によりウェーハWを個々のデバイスDに切断する例を示したが、装置の動作はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、まず、切削手段によりウェーハWに切削溝を形成した後、洗浄を経て、レーザー加工手段によるレーザー加工を施すようにしてもよい。
【0064】
第一及び第二の実施形態において、レーザー加工手段又は切削手段によってウェーハWを切断した後には、加工屑がウェーハWに付着するため、再度、洗浄手段により洗浄することも可能である。また、第一及び第二の実施形態では、洗浄手段がレーザー加工手段と切削手段との間に配設されているが、別の洗浄手段をチャックテーブルの送り経路上にさらに配設する構成としてもよい。そのような構成とすれば、ウェーハWを個々のデバイスに切断した後に、レーザー加工手段と洗浄手段と切削手段との作用位置と同一駆動軸上でさらに別の洗浄手段による洗浄を実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、2:切断装置
3:チャックテーブル 31:吸着部 32:軸部
4、40:レーザー加工手段
41:照射部 41a、撮像装置
42:集光器 43、43a、43b:ボールスクリュー
44、44a:ガイドレール 45、45a:モーター 46:昇降基台
47:移動基台
5、50:洗浄手段 51:ノズル 52:洗浄液噴出口 53:アーム
6、60:切削手段
61a:スピンドル 61b:切削ブレード 61c:ブレードカバー
61d:撮像装置
62、62a、62b:ボールスクリュー 63、63a:ガイドレール
64、64a:モーター 65:昇降基台 66:移動基台
7:回転基台 70:駆動軸
8:基台 8a:ボールスクリュー 8b:ガイドレール 8c:モーター
9:駆動軸
10:チャックテーブル
101:吸着部102:軸部 103:撮像装置 104:移動基台
W:ウェーハ S:ストリート D:デバイス T:保護テープ F:フレーム
WA:表面 WB:裏面 M:被膜 H:レーザー加工溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持し回転可能なチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物に切削ブレードを回転させながら接触させることで該被加工物を切削する切削手段と、
該チャックテーブルに保持された被加工物に洗浄液を噴射することができるノズルを備えた洗浄手段と、
該チャックテーブルに保持された被加工物をレーザー加工するためにレーザー光線を照射するレーザー加工手段と、
から少なくとも構成される切断装置であって、
該切削手段と該洗浄手段と該レーザー加工手段との作用位置が同一駆動軸上に位置することにより、同一のチャックテーブルにおいて保持された被加工物が、該切削手段と該洗浄手段と該レーザー加工手段とによる一連の作用を受けることを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−8823(P2013−8823A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140303(P2011−140303)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】