説明

切替装置および切替方法

【課題】 例えば伝送速度40Gb/s以上の高速な光ネットワークに適用する場合にも、小規模で低消費電力の回路構成により現用系と冗長系間の遅延量の調整が実現可能な切替装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 入力した第1の伝送信号および第2の伝送信号のいずれか一方から他方に切替を行って出力する切替装置であって、前記第1の伝送信号および前記第2の伝送信号の間の遅延量に基づくオフセットをクロック信号に与えたオフセットクロック信号を用いて前記遅延量の調整を行う遅延量調整手段を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信技術に関し、特に、例えば通信システムにおける現用系と冗長系の切替を行う切替装置および切替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伝送路の切り替えを無瞬断、無誤りで行う回路において、予め遅延用のメモリを伝送路に挿入しておく必要無しに、必要最小限のメモリ量で実現可能なものを提供することを目的として、切り替える伝送路と切り替え先の伝送路を選びだすセレクタスイッチと、これに接続された遅延差測定回路と、遅延を与えるメモリ回路と、このメモリ回路に接続されたダミーデータの挿入/削除回路と、切り替えスイッチとを有し、現用伝送路の遅延量が切り替え先の伝送路の遅延量より少ない場合には現用伝送路にメモリ回路を接続し、ダミーデータの挿入を行って遅延量を等しくした後切り替えを行い、現用伝送路の遅延量の方が多い場合にはメモリ回路を切り替え先の伝送路に接続し、遅延量を等しく設定した後切り替え、その後ダミーデータの削除によって遅延を減らしてメモリ回路を抜き取るように構成されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−201841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来の無瞬断切り替え回路では、ダミーデータの挿入/削除回路により現用系と冗長系間の遅延量の調整を行うようにしていたので、例えば伝送速度40Gb/s以上の高速な光ネットワークに適用しようとすると、電気回路が処理可能な低速の並列処理によりダミーデータの生成等を行う構成が想定されることから、ダミーデータの挿入/削除回路の回路規模が増大し、ひいては消費電力も増大してしまうという問題点があった。また、ダミーデータが挿入された伝送信号が下流に流れ、後続の通信装置が、例えば、ダミーデータを無効信号であるアイドル信号として扱えるパケット通信方式ではないとき、有意な情報を含まないダミーデータの受信により本来の伝送信号による通信を行えない時間が生じることが問題となる場合があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、現用系と冗長系に予め遅延用のメモリを挿入しておく必要無しに、必要最小限の共用のメモリ量で無瞬断切替が実現可能であるとともに、例えば伝送速度40Gb/s以上の高速な光ネットワークに適用する場合にも、小規模で低消費電力の回路構成により現用系と冗長系間の遅延量の調整が実現可能な切替装置を提供することを目的としている。また、パケット通信方式ではないとき、伝送信号にダミーデータとしてのアイドル信号を挿入しなくても、現用系と冗長系間の遅延量の調整が実現可能な切替装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る切替装置は、入力した第1の伝送信号および第2の伝送信号のいずれか一方から他方に切替を行って出力する切替装置であって、前記第1の伝送信号および前記第2の伝送信号の間の遅延量に基づくオフセットをクロック信号に与えたオフセットクロック信号を用いて前記遅延量の調整を行う遅延量調整手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、切替装置において、例えば伝送速度40Gb/s以上の光ネットワークのように高速な場合にも、オフセットクロック信号を用いる小規模で低消費電力の構成により、伝送信号にアイドル信号を挿入しない場合でも、現用系と冗長系間の遅延量の調整が実現可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による切替装置を示す構成図
【図2】この発明の実施の形態1による切替装置を説明するための説明図
【図3】この発明の実施の形態1による切替装置を説明するための説明図
【図4】この発明の実施の形態1による切替装置を説明するための説明図
【図5】この発明の実施の形態2による切替装置を示す構成図
【図6】この発明の実施の形態2による切替装置を説明するための説明図
【図7】この発明の実施の形態3による切替装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1による切替装置は、現用系と冗長系に予め遅延用のメモリを挿入しておく必要無しに、必要最小限の共用のメモリ量で切替を行う切替装置において、複数のフレーム間に渡る遅延時間の情報を示す遅延時間信号を利用して現用系と冗長系間の遅延量を求め、この遅延量に基づくオフセットをクロック信号に与えたオフセットクロック信号を生成し、クロック信号に基づいて共用メモリの書き込みの制御を行い、オフセットクロック信号に基づいて共用メモリの読み出しの制御を行うことにより、共用メモリを介する伝送信号の遅延量の調整を行うようにしたものである。これにより、例えば伝送速度40Gb/s以上の光ネットワークのように高速な場合にも、オフセットクロック信号を用いる小規模で低消費電力の構成により、伝送信号にアイドル信号を挿入しなくても、現用系と冗長系間の遅延量の調整が実現可能になり、さらに、複数のフレーム間に渡る長周期の遅延量の調整を行うことができるという作用効果を奏する。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態1による切替装置を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図1において、1100は切替装置としての無瞬断切替装置、1101は障害監視器、1102は強制切替制御器、1103は位相差判定回路としてのマルチフレーム位相差判定回路、1104はライトポインタ生成器、1105はオフセットクロック生成器、1106はリードポインタ生成器、1111は第1の終端器としての第1のOTU4(completely standardized Optical Channel Transport Unit−4)終端器、1112は第2の終端器としての第2のOTU4終端器、1113は第1の選択器、1114は共有FIFO(First In, First Out)、1115は第2の選択器、1121は例えば現用系としての低遅延側伝送路、1122は例えば冗長系としての高遅延側伝送路である。なお、強制切替制御器1102、ライトポインタ生成器1104、リードポインタ生成器1106および共有FIFO1114により遅延量調整手段を構成する。
【0011】
次に動作について説明する。図1において、障害監視器1101は、無瞬断切替装置1100の内部あるいは外部から得られる障害情報を監視し、障害発生と判定したとき、障害発生通知信号を強制切替制御器1102に出力する。強制切替制御器1102は、障害監視器1101から障害発生通知信号が入力されたとき、この障害発生通知信号に基づいて強制切替指示信号を生成する。また、強制切替制御器1102には、無瞬断切替装置1100の外部、例えば図示しない監視・制御システムから強制切替指示信号が入力される場合もある。この強制切替指示信号に基づいて、強制切替制御器1102は、一連の無瞬断切替制御信号を生成し、後述する無瞬断切替手順に従って無瞬断切替装置1100の各構成要素の制御を行う。
【0012】
また、第1のOTU4終端器1111は、低遅延側伝送路1121から入力した第1の伝送信号としての現用系の伝送信号を終端し、その埋め込みクロック信号およびOTU4 OH(OverHead)中のMFAS(MultiFrame Alignment Signal) Byteに基づく第1の遅延時間信号としてのマルチフレーム同期信号MFASを抽出してマルチフレーム位相差判定回路1103に出力するとともに、第1の伝送信号としてのOTU4のペイロード信号Q1を第1の選択器1113に出力し、第1の伝送信号としてのOTU4のペイロード信号R1を第2の選択器1115に出力する。
【0013】
これと並行して、第2のOTU4終端器1112は、高遅延側伝送路1122から入力した第2の伝送信号としての冗長系の伝送信号を終端し、その埋め込みクロック信号およびOTU4 OH中のMFAS Byteに基づく第2の遅延時間信号としてのマルチフレーム同期信号MFASを抽出してマルチフレーム位相差判定回路1103に出力するとともに、第2の伝送信号としてのOTU4のペイロード信号Q2を第1の選択器1113に出力し、第2の伝送信号としてのOTU4のペイロード信号R3を第2の選択器1115に出力する。なお、現用系の伝送信号および冗長系の伝送信号は、同一の情報を並列的に伝送している信号であることは言うまでもない。
【0014】
また、マルチフレーム位相差判定回路1103は、第1のOTU4終端器1111から入力したマルチフレーム同期信号MFASと第2のOTU4終端器1112から入力したマルチフレーム同期信号MFASとの間の位相差を比較し、この位相差を示す位相差信号としてのMFAS位相差信号を出力する。これとともに、マルチフレーム位相差判定回路1103は、第1のOTU4終端器1111または第2のOTU4終端器1112から入力した埋め込みクロック信号に基づいてサーバクロック信号を生成してライトポインタ生成器1104およびオフセットクロック生成器1105に出力する。
【0015】
また、第1の選択器1113は、現用系のペイロード信号Q1および冗長系のペイロード信号Q2を受け、いずれかのペイロード信号を選択して共有FIFO1114に出力する。共有FIFO1114は、入力されたペイロード信号を、同じ順序を保つ遅延伝送信号としての遅延ペイロード信号R2として第2の選択器1115に出力する。第2の選択器1115は、現用系のペイロード信号R1、冗長系のペイロード信号R3、および、遅延ペイロード信号R2を受け、何れかのペイロード信号を選択し、図示しないクライアント光トランシーバや多重分離器といった後続の回路に出力する。
【0016】
また、ライトポインタ生成器1104は、マルチフレーム位相差判定回路1103から入力したサーバクロック信号に基づいて、共有FIFO1114に入力されたペイロード信号の書き込み位置を指定するライトポインタ信号を生成し、共有FIFO1114に出力する。オフセットクロック生成器1105は、マルチフレーム位相差判定回路1103から入力したMFAS位相差信号に基づいて、マルチフレーム位相差判定回路1103から入力したサーバクロック信号のクロック周波数を僅かに変化させたオフセットクロック信号を生成し、リードポインタ生成器1106に出力する。リードポインタ生成器1106は、オフセットクロック生成器1105から入力したオフセットクロック信号に基づいて、共有FIFO1114が保持するペイロード信号の読み出し位置を指定するリードポインタ信号を生成し、共有FIFO1114に出力する。
【0017】
次に低遅延側から高遅延側への無瞬断切替の動作について詳細に説明する。図2は、この発明の実施の形態1による切替装置を説明するための説明図であり、無瞬断切替装置1100における低遅延側伝送路1121から高遅延側伝送路1122への無瞬断切替手順を示すフローチャートである。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0018】
図2において、まず、無瞬断切替装置1100は、低遅延パスとして現用系のペイロード信号R1側で運用されているとする(ステップST1)。すなわち、低遅延側伝送路1121は現用系として第1のOTU4終端器1111に接続され、高遅延側伝送路1122は予備系として第2のOTU4終端器1112に接続され、第2の選択器1115は現用系のペイロード信号R1側を選択し、これにより、低遅延側伝送路1121を介して実データの導通が行われている。なお、第1の選択器1113は任意(Don’t care)の側X(Q1またはQ2)を選択している。
【0019】
ステップST1において伝送障害がないときに、ネットワークの工事などその時点以後に計画的に生じる伝送障害が予め見込まれており、その影響の回避のために、実データの導通が行われる伝送路を強制的に切り替える場合がある。そのような場合には、例えばネットワークの管理者の操作により監視・制御システムから強制切替指示信号が強制切替制御器1102に向けて発せられる(ステップST2)。
【0020】
この強制切替指示信号を受け、強制切替制御器1102から一連の無瞬断切替制御信号が送出され、無瞬断切替装置1100の各構成要素の制御が行なわれる。すなわち、まず、第1の選択器1113は現用系のペイロード信号Q1側を選択して切替を行い、第2の選択器1115は遅延ペイロード信号R2側を選択して切替を行い、共有FIFO1114の占有を開始する(ステップST3)。これにより、無瞬断切替装置1100内において、現用系の伝送信号は共有FIFO1114を介して導通される。
【0021】
ただし、この時点では過剰遅延の付加はまだ行われていない。マルチフレーム位相差判定回路1103は、第1のOTU4終端器1111により抽出された埋め込みクロック信号に同期したサーバクロック信号を出力し、オフセットクロック生成器1105は、第1のOTU4終端器1111により抽出された埋め込みクロックに同期した、すなわちオフセットゼロのオフセットクロック信号を出力する。従って、ライトポインタ生成器1104からのライトポインタ信号とリードポインタ生成器1106からのリードポインタ信号は略等しい共有FIFO1114の書き込み位置と読み出し位置を指し示す。これにより、意図した過剰遅延の付加なく、無瞬断切替装置1100内における現用系の通信経路が共有FIFO1114を介して導通される。
【0022】
次に、オフセットクロック生成器1105は、マルチフレーム位相差判定回路1103からのMFAS位相差信号によりサーバクロックに対して付加する周波数偏差量とその偏差付加時間を判定し、この判定結果に基づいて負のオフセットをクロック信号に与えた負オフセットクロック信号を生成してリードポインタ生成器1106に出力し、共有FIFO1114の蓄積量の増大を開始する(ステップST4)。
【0023】
ここで、例えば、現用系に対して予備系の伝送信号が1ms遅延しており、下流側で受信可能といったクロック信号の仕様上の理由から+/−1ppmの周波数偏差付加が許容されるとした場合、−1ppmの周波数偏差を1000sの間に付加してから、クロックオフセットを解除する。これにより、1msに相当する約100Mbitの現用系のペイロード信号Q1が共有FIFO1114に蓄積され、1msの意図した過剰遅延が付加され、予備系のペイロード信号R3と現用系の遅延ペイロード信号R2の間の位相同期が完了する(ステップST5)。なお、オフセットクロック生成器1105は、偏差付加時間をタイマーにより判定しても良いし、または、図示しないマルチフレーム同期判定回路により共有FIFO1114の下流で判定するようにしても良い。
【0024】
これ以降の任意の時間において第2の選択器1115を予備系のペイロード信号R3側に切替を行うことにより、予備系側に無瞬断パス切替を実施することができる(ステップST6)。これにより、強制切替は終了となり、また、共有FIFO1114を開放し、他の無瞬断切替手順にて使用することも可能となる(ステップST7)。これ以降、無瞬断切替装置1100は、高遅延パスとして予備系のペイロード信号R3側で運用されることになる(ステップST8)。
【0025】
以上の手順により、低遅延側の現用系の伝送信号から高遅延側の予備系の伝送信号への無瞬断強制切替を実施することができ、この無瞬断強制切替の実施前後の通常運用時に過剰な遅延時間を付加することなく通信を行うことができ、加えて、この過剰な遅延時間を付加するための高速大容量なFIFOメモリを省略でき、ひいてはその電力消費を削減でき、FIFOメモリの共有によりシステム回路規模の削減が実現できるという作用効果を奏する。
【0026】
なお、上述のように、1系統の現用系に対して1系統の予備系からなる構成だけでなく、M(Mは2以上の整数)系統の現用系に対してN(Nは1以上でM以下の整数)系統の予備系からなる構成においても、M系統のうちの1系統の現用系およびN系統のうちの1系統の予備系における同様の動作により、同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
次に高遅延側から低遅延側への無瞬断切替の動作について詳細に説明する。図3は、この発明の実施の形態1による切替装置を説明するための説明図であり、無瞬断切替装置1100における高遅延側伝送路1122から低遅延側伝送路1121への無瞬断切替手順を示すフローチャートである。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0028】
図3において、まず、無瞬断切替装置1100は、高遅延パスとして予備系のペイロード信号R3側で運用されているとする(ステップST8)。すなわち、低遅延側伝送路1121は現用系として第1のOTU4終端器1111に接続され、高遅延側伝送路1122は予備系として第2のOTU4終端器1112に接続され、第2の選択器1115は予備系のペイロード信号R3側を選択し、これにより、高遅延側伝送路1122を介して実データの導通が行われている。なお、第1の選択器1113は任意(Don’t care)の側X(Q1またはQ2)を選択している。
【0029】
ここで、例えばネットワークの工事が終了するなどで、過剰な遅延時間が削減されるように高遅延側伝送路1122から低遅延側伝送路1121に切戻すといった意図から、例えばネットワークの管理者の操作により監視・制御システムから強制切替指示信号が強制切替制御器1102に向けて発せられる(ステップST9)。
【0030】
この強制切替指示信号を受け、強制切替制御器1102から一連の無瞬断切替制御信号が送出され、無瞬断切替装置1100の各構成要素の制御が行なわれる。すなわち、まず、第1の選択器1113は現用系のペイロード信号Q1側を選択して切替を行い、第2の選択器1115は予備系のペイロード信号R3側を選択したままとし、FIFO1114の占有を開始し、低遅延の現用系の伝送信号のデータの共有FIFO1114への蓄積を開始する(ステップST10)。
【0031】
過剰な遅延時間以上の時間が経過した後、ライトポインタ信号の書き込み位置に対して過剰な遅延時間に相当する値だけ後ろの共有FIFO1114の読み出し位置をリードポインタ信号が指し示すようにリードポインタ生成器1106の設定を更新する。これとともに、マルチフレーム位相差判定回路1103は、第1のOTU4終端器1111により抽出された埋め込みクロック信号に同期したサーバクロック信号を出力し、オフセットクロック生成器1105は、第1のOTU4終端器1111により抽出された埋め込みクロック信号に同期したオフセットクロック信号を出力する。これにより、現用系のペイロード信号Q1に、意図した過剰遅延が付加される(ステップST11)。
【0032】
このように、遅延時間差の待機が完了し、共有FIFO1114への蓄積が完了する(ステップST12)。
【0033】
次に、第2の選択器1115を現用系の遅延ペイロード信号R2側に切替を行うことにより、現用系側に無瞬断パス切替を実施することができる(ステップST13)。これにより、無瞬断切替装置1100内において、通信経路が切り替わり、過剰な遅延時間を意図して付加した現用系の伝送信号が共有FIFO1114を介して導通される。
【0034】
その後、オフセットクロック生成器1105は、マルチフレーム位相差判定回路1103からのMFAS位相差信号によりサーバクロックに対して付加する周波数偏差量を判定し、この判定結果に基づいて正のオフセットをクロック信号に与えた正オフセットクロック信号を生成してリードポインタ生成器1106に出力し、共有FIFO1114の蓄積量の減少を開始する(ステップST14)。
【0035】
ここで、例えば、現用系に対して予備系の伝送信号が1ms遅延しており、下流側で受信可能といったクロック信号の仕様上の理由から+/−1ppmの周波数偏差付加が許容されるとした場合、+1ppmの周波数偏差を1000sの間付加すると、共有FIFO1114に蓄積されていた1msに相当する約100Mbitの現用系のペイロード信号Q1のデータが開放され、1msの意図して付加された過剰遅延が現用系の遅延ペイロード信号R2から除去される。
【0036】
このように、ライトポインタ生成器1104からのライトポインタ信号とリードポインタ生成器1106からのリードポインタ信号が略等しい共有FIFO1114の書き込み位置と読み出し位置を指し示すようになるまで周波数偏差量の付加を行ってから、クロックオフセットを解除する。これにより、共有FIFO1114の蓄積が払底され、意図した過剰遅延がなくなり、現用系のペイロード信号R1と現用系の遅延ペイロード信号R2の間の位相同期が完了する(ステップST15)。
【0037】
これ以降の任意の時間において第2の選択器1115を現用系のペイロード信号R1側に切替を行うことにより、無瞬断パス切替を実施することができる(ステップST16)。これにより、強制切替は終了となり、また、共有FIFO1114を開放し、他の無瞬断切替手順にて使用することも可能となる(ステップST17)。これ以降、無瞬断切替装置1100は、低遅延パスとして現用系のペイロード信号R1側で運用されることになる(ステップST18)。
【0038】
以上の手順により、高遅延側伝送路1122から低遅延側伝送路1121への無瞬断切替を実施することができる。また、図2に示される低遅延側の現用系の伝送信号から高遅延側の予備系の伝送信号への無瞬断強制切替手順が実施され、上述の計画的に生じる一連の伝送障害事象が終了した後、高遅延側の予備系の伝送信号から低遅側の現用系の伝送信号への切戻しのための強制切替を行うことができる。
【0039】
なお、上述のように、1系統の現用系に対して1系統の予備系からなる構成だけでなく、M(Mは2以上の整数)系統の現用系に対してN(Nは1以上でM以下の整数)系統の予備系からなる構成においても、M系統のうちの1系統の現用系およびN系統のうちの1系統の予備系における同様の動作により、同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
次にマルチフレーム位相差判定回路1103の動作について詳細に説明する。図4は、この発明の実施の形態1による切替装置を説明するための説明図であり、無瞬断切替装置1100におけるマルチフレーム位相差判定回路1103で利用するOTU4 OH中のMFAS Byteの具体例を示すフレーム構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図4において、FAS(Frame Alignment Signal)はフレーム同期に用いるデリミタByteである。
【0041】
図4において、マルチフレーム位相差判定回路1103は、FASによるフレーム毎の位相同期を行った後、フレーム間に振られている連続番号に対応するMFASの利用により、複数のフレーム、すなわちマルチフレーム間に渡って、より長周期の位相同期を行い、マルチフレーム間に渡る長周期の位相差を求める。これにより、マルチフレーム間に渡る長周期の遅延量の調整を行うことができる。
【0042】
なお、上述のOTU4、OTU4 OH、MFAS、FAS、図4に示すフレーム構成は、ITU−T(International Telecommunication Union−Telecommunication sector)勧告G.709で規定されているものである。
【0043】
以上のように、この発明の実施の形態1による切替装置は、MFASを利用して現用系と冗長系間の遅延量、すなわち位相差を求め、この位相差を示すMFAS位相差信号に基づくオフセットをクロック信号に与えたオフセットクロック信号を生成し、クロック信号に基づいて共有FIFOの書き込みの制御を行い、オフセットクロック信号に基づいて共有FIFOの読み出しの制御を行うことにより、共有FIFOを介する遅延ペイロード信号R2の遅延量の調整を行うようにしたものである。
【0044】
これにより、現用系と冗長系に予め遅延用のメモリを挿入しておく必要無しに、必要最小限の共用のメモリ量で無瞬断切替が実現可能であるとともに、例えば伝送速度40Gb/s以上の光ネットワークのように高速な場合にも、オフセットクロック信号を用いる小規模で低消費電力の構成により現用系と冗長系間の遅延量の調整が実現可能になるという作用効果を奏する。さらに、MFASの利用により、複数のフレーム間に渡る長周期の遅延量の調整を行うことができるという作用効果を奏する。
【0045】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2による切替装置は、実施の形態1と同様の構成にクロスコネクト回路を加え、クライアント側で設定される遅延時間の情報を示す遅延時間信号に基づいて遅延量を調整するように構成したものである。これにより、実施の形態1と同様の作用効果に加え、クロスコネクトとして交換されたクライアント信号に対し、さらに任意の長大な周期の遅延量を調整して無瞬断切替を行うことができるという作用効果を奏する。
【0046】
図5は、この発明の実施の形態2による切替装置を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図5において、1100aは切替装置としての無瞬断切替装置,1110はクロスコネクト回路(図中XCで表す)、1111aは終端器、1112aは終端器、1111bは第1の終端器としての第1のLO ODU2(Lower Order Optical channel Data Unit−2)終端器、1112bは第2の終端器としての第2のLO ODU2終端器である。なお、実施の形態1と同一の構成、および、その構成による同一の動作については説明を省略する。
【0047】
次に動作について説明する。図5において、クロスコネクト回路1110は、低遅延側伝送路1121に接続された終端器1111aから出力されるクライアント信号および高遅延側伝送路1122に接続された終端器1112aから出力されるクライアント信号を回路内で交換し、交換された各クライアント信号を第1のLO ODU2終端器1111bまたは第2のLO ODU2終端器1112bに出力する。
【0048】
また、第1のLO ODU2終端器1111bは、クロスコネクト回路1110からの第1の伝送信号としてのクライアント信号を終端し、その埋め込みクロックおよびLO ODU2 OH(Overhead)中のDMp(Delay Measurement of ODUk Path) Bitに基づく第1の遅延時間信号としてのクライアント遅延時間信号DMpを抽出してマルチフレーム位相差判定回路1103に出力するとともに、第1の伝送信号としてのLO ODU2のペイロード信号Q1を第1の選択器1113に出力し、第1の伝送信号としてのLO ODU2のペイロード信号R1を第2の選択器1115に出力する。
【0049】
これと並行して、第2のLO ODU2終端器1112bは、クロスコネクト回路1110からの第2の伝送信号としてのクライアント信号を終端し、その埋め込みクロックおよびLO ODU2 OH中のDMp Bitに基づく第2の遅延時間信号としてのクライアント遅延時間信号DMpを抽出してマルチフレーム位相差判定回路1103に出力するとともに、第2の伝送信号としてのLO ODU2のペイロード信号Q2を第1の選択器1113に出力し、第2の伝送信号としてのLO ODU2のペイロード信号R3を第2の選択器1115に出力する。
【0050】
また、マルチフレーム位相差判定回路1103は、第1のLO ODU2終端器1111bから入力したクライアント遅延時間信号DMpと第2のLO ODU2終端器1112bから入力したクライアント遅延時間信号DMpと間の位相差を比較し、この位相差を示す位相差信号としてのDMp位相差信号を出力する。これとともに、マルチフレーム位相差判定回路1103は、第1のLO ODU2終端器1111bまたは第2のLO ODU2終端器1112bから入力した埋め込みクロック信号に基づいてサーバクロック信号を生成してライトポインタ生成器1104およびオフセットクロック生成器1105に出力する。
【0051】
以上の構成および動作以外は実施の形態1による無瞬断切替装置1100と同様の構成および動作であり、これにより、無瞬断切替装置1100aは、クロスコネクト回路1110で交換された低遅延側の現用系のクライアント信号R1および高遅延側の冗長系のクライアント信号R2に対して、無瞬断切替を行うことができる。
【0052】
次にマルチフレーム位相差判定回路1103の動作について詳細に説明する。図6は、この発明の実施の形態2による切替装置を説明するための説明図であり、無瞬断切替装置1100aにおけるマルチフレーム位相差判定回路1103で利用するLO ODU2 OH中のDMp Bitの具体例を示すフレーム構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0053】
図6において、マルチフレーム位相差判定回路1103は、OTN(Optical Transport Network)フレーム同期に用いるデリミタByteであるFASによるフレーム毎の位相同期を行った後、DMp Bitの値を判定することができる。このDMp Bitの値は、図示しないクライアント信号の送信器により、LO ODU2 OHには含まれないFASやMFASといったフレーム同期信号とは独立した任意の周期で制御される。従って、DMp Bitの値が長周期に設定されることにより、マルチフレーム位相差判定回路1103は、MFASよりさらに長い周期、例えば1sの周期で、位相同期を行うことができる。また、マルチフレーム位相差判定回路1103は、FASやMFASを用いる場合と異なり、LO ODU2を収容する図示しないOTU3あるいはOTU4のような伝送路フレームの形式やその伝送レートに依存せずに長大な位相差、すなわち遅延時間差を判定することができる。
【0054】
以上の動作により、マルチフレーム位相差判定回路1103は、クロスコネクト回路1110により交換されるクライアント信号に対し、遅延時間差を判定することができ、さらには任意の長大な周期の遅延時間差を判定することができる。これにより、クライアント側で設定される任意の長周期の遅延量の調整を行うことができる。
【0055】
なお、上述のLO ODU2、LO ODU2 OH、DMp、図6に示すフレーム構成、OTNは、ITU−T勧告G.709で規定されているものである。
【0056】
以上のように、この発明の実施の形態2による切替装置においては、実施の形態1と同様の構成に加え、クロスコネクト回路1110により交換されるクライアント信号に対し、MFASに代えてDMp Bitを利用して位相差を求める動作を行うように構成している。これにより、実施の形態1と同様の作用効果に加え、クロスコネクトとして交換されたクライアント信号に対し、フレーム間に渡って、さらに任意の長大な周期の遅延量を調整して無瞬断切替を行うことができるという作用効果を奏する。
【0057】
なお、上述の特許文献1に開示された従来の無瞬断切り替え回路では、送信側と受信側双方で協調してダミーデータの挿入/削除制御を行うことが必要な場合があるという問題点があり、また、クライアント信号のフレーム形式に応じたダミーデータの挿入/削除を行うため、汎用的ではない個別設計のフレーム送受信LSIを用意する必要があるという問題点があった。
【0058】
これに対し、この発明の実施の形態1、2による無瞬断切替装置によれば、送信側に特殊な構成を必要とせず、従って、伝送路中にも特殊な信号を流す必要がなく、受信側のみで無瞬断切替を行うことができ、また、汎用のフレーム送受信LSIに共用可能で簡易かつ低消費電力な回路を付加することで多様な形式のクライアント信号に対して幅広く対応でき、また、伝送信号にアイドル信号を挿入しないことから本来の伝送信号による通信を行えない時間が生じることがなく、オフセットクロック信号を用いて遅延量の増大および減少の双方向の操作を滑らかに無瞬断で行うことができるという作用効果を奏する。
【0059】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3による切替装置は、実施の形態2と同様の構成において、終端器をパケット通信方式のものに代え、アイドル生成器を加え、オフセットクロック信号およびアイドル信号を併用して遅延量を調整するように構成したものである。これにより、実施の形態2と同様の作用効果に加え、アイドル信号のみを用いる場合と比べて、アイドル生成器の回路規模を小さくできるという作用効果を奏する。
【0060】
図7は、この発明の実施の形態3による切替装置を示す構成図である。なお、各図において、同一符号は同一または相当部分を示す。図7において、1100bは切替装置としての無瞬断切替装置、1103aは位相差判定回路としてのトラフィック位相差判定回路、1111cは第1の終端器としての第1のGFP/MAC(Generic Framing Procedure / Media Access Control)終端器、1112bは第2の終端器としての第2のGFP/MAC終端器、1107はアイドル生成器である。なお、実施の形態2と同一の構成、および、その構成による同一の動作については説明を省略する。
【0061】
次に動作について説明する。図7において、クロスコネクト回路1110は、低遅延側伝送路1121に接続された終端器1111aから出力されるパケット収容クライアント信号および高遅延側伝送路1122に接続された終端器1112aから出力されるパケット収容クライアント信号を回路内で交換し、交換された各パケット収容クライアント信号を第1のGFP/MAC終端器1111cまたは第2のGFP/MAC終端器1112cに出力する。
【0062】
また、第1のGFP/MAC終端器1111cは、クロスコネクト回路1110からの第1の伝送信号としてのパケット収容クライアント信号を終端し、その埋め込みクロック信号およびCMF(Client Management Frame)に基づく第1の遅延時間信号としてのクライアント遅延時間信号CMFを抽出してトラフィック位相差判定回路1103aに出力するとともに、第1の伝送信号としてのパケット収容クライアント信号Q1を第1の選択器1113に出力し、第1の伝送信号としてのパケット収容クライアント信号R1を第2の選択器1115に出力する。
【0063】
これと並行して、第2のGFP/MAC終端器1112cは、クロスコネクト回路1110からの第2の伝送信号としてのパケット収容クライアント信号を終端し、その埋め込みクロック信号およびCMFに基づく第2の遅延時間信号としてのクライアント遅延時間信号CMFを抽出してトラフィック位相差判定回路1103aに出力するとともに、第2の伝送信号としてのパケット収容クライアント信号Q2を第1の選択器1113に出力し、第2の伝送信号としてのパケット収容クライアント信号R3を第2の選択器1115に出力する。
【0064】
また、トラフィック位相差判定回路1103aは、第1のGFP/MAC終端器1111cから入力したクライアント遅延時間信号CMFと第2のGFP/MAC終端器1112cから入力したクライアント遅延時間信号CMFと間の位相差を比較し、この位相差を示す位相差信号としてのCMF位相差信号を出力する。これとともに、トラフィック位相差判定回路1103aは、第1のGFP/MAC終端器1111cまたは第2のGFP/MAC終端器1112cから入力した埋め込みクロック信号に基づいてサーバクロック信号を生成してライトポインタ生成器1104およびオフセットクロック生成器1105に出力する。
【0065】
一方、アイドル生成器1107は、遅延伝送信号としての遅延パケット収容クライアント信号R2に対して挿入または除去されるためのアイドル信号R4を生成して第2の選択器1115に出力する。このアイドル信号R4は、第2の選択器1115によりクライアントパケット間に挿入される。このようにして、現用系および冗長系のパケット収容クライアント信号の位相差の調整は、オフセットクロック信号およびアイドル信号を併用して行うことができる。なお、例えばクロック信号の仕様上の理由からオフセットクロック信号による遅延量の調整が若干不足する分を補う程度にアイドル信号による遅延量の調整を行うようにしても良い。これにより、アイドル信号のみを用いて全ての遅延量を調整する場合と比べて、アイドル生成器1107の回路規模を削減し、ひいてはその電力消費を削減できるという作用効果を奏する。
【0066】
以上の構成および動作以外は実施の形態2による無瞬断切替装置1100aと同様の構成および動作であり、これにより、無瞬断切替装置1100bは、クロスコネクト回路1110で交換された低遅延側の現用系のパケット収容クライアント信号および高遅延側の冗長系のパケット収容クライアント信号に対して、無瞬断切替を行うことができる。
【0067】
なお、無瞬断切替装置1100bを含む実施の形態3による光通信システムおいては、パケット通信方式を前提としているので、アイドル信号が挿入された伝送信号が下流に流れても、後続の通信装置がアイドル信号を本来の伝送信号と区別して認識して処理できることから、有意な情報を含まないアイドル信号の受信は問題とならない。
【0068】
また、パケット収容クライアント信号間の位相差の検出に用いるクライアント遅延時間信号としては、上述のCMFに限られるものではなく、例えば、MCF(Management Control Frame)のようにGFPクライアントペイロードデータ以外を載せるGFPフレームを用いても良いし、UPI(User Payload Identifier)のようにGFPクライアントペイロードフレームのペイロード情報領域以外の部分を用いるようにしても良く、同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
また、クライアント遅延時間信号としては、Orderedsetのような制御監視情報を埋め込んだMACアイドル信号あるいはGFPアイドル信号を用いるようにしても良く、このときVLAN(Virtual Local Area Network)ヘッダの有無に関わらず、いずれも同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
また、MPLS(MultiProtocol Label Switching)あるいはMPLS−TP(MultiProtocol Label Switching‐Transport Profile)においても、SHIMヘッダにおける20bitのラベル値としてLER(Label Edge Router)によりMPLSあるいはMPLS−TP網外にポップされない値を用い、無瞬断切替装置1100b自身がこのラベル値のMPLSパケットあるいはMPLS−TPパケットを受けることによっても同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
なお、上述のGFP、CMF、MCF、UPI、GFPアイドル信号は、ITU−T勧告G.7041で規定されているものである。上述のMAC、Orderedset、MACアイドル信号は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers) 802.3で規定されているものである。上述のMPLS、SHIMヘッダは、IETF RFC(Internet Engineering Task Force Request For Comment)3031で規定されているものである。上述のMPLS−TP、SHIMヘッダは、IETF RFC5654およびITU−T勧告G.8101.1で規定されているものである。
【0072】
以上のように、この発明の実施の形態3による切替装置においては、実施の形態2と同様の構成において、終端器をパケット通信方式のものに代え、アイドル生成器1107を加え、クロスコネクト回路1110により交換されるパケット収容クライアント信号に対し、CMFを利用して位相差を求め、この位相差の調整を、オフセットクロック信号およびアイドル信号を併用して行うように構成している。これにより、実施の形態2と同様の作用効果に加え、クロスコネクトとして交換されたパケット収容クライアント信号に対し、フレーム間に渡って、任意の長大な周期の遅延量を調整して無瞬断切替を行うことができ、さらに、アイドル信号のみを用いる場合と比べて、アイドル生成器1107の回路規模を小さくできるという作用効果を奏する。
【0073】
なお、上述のように、この発明の実施の形態1〜3においては、現用系が低遅延側伝送路で、冗長系が高遅延側伝送路である場合を示したが、これに限られるものでなく、現用系が高遅延側伝送路で、冗長系が低遅延側伝送路であっても良く、逆の手順に基づく同様の動作により同様の作用効果を奏する。
【0074】
また、上述のように、この発明の実施の形態1〜3においては、冗長系と現用系の切替を無瞬断かつ無誤りで行う場合を示したが、これに限られるものでなく、例えばシステム運用上の許容範囲内であれば、断時間があっても良い場合もあり、また、冗長系と現用系の伝播時間差に比して非常に短い断時間で行うようにしても良い場合もある。
【0075】
また、上述のように、この発明の実施の形態1〜3においては、1系統の現用系に対して1系統の予備系からなる構成例を示したが、これに限られるものでなく、M(Mは2以上の整数)系統の現用系に対してN(Nは2以上でM以下の整数)系統の予備系からなるように構成しても良く、M系統のうちの1系統の現用系およびN系統のうちの1系統の予備系における同様の動作により同様の作用効果を奏する。
【0076】
また、上述のように、この発明の実施の形態1〜3においては、例えば、強制切替制御器、位相差判定回路等といった回路として説明したが、制御機能については、切替装置に設けたマイクロコンピュータ等に切替方法を実行させるコンピュータプログラムを用いてソフトウエア処理により実現するようにしても良い。
【0077】
また、上述のように、この発明の実施の形態1〜3においては、光ネットワークといった光通信システムに適用する場合を示したが、適用システムがこれに限られるものではなく、要するに、低遅延側と高遅延側との間で切替が行われるものであり、オフセットクロック信号を利用することにより遅延量の調整のための構成が簡略化されるようなものであれば、どのような通信システムにおいても同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0078】
1100、1100a、1100b 無瞬断切替装置
1102 強制切替制御器
1103 マルチフレーム位相差判定回路
1103a トラフィック位相差判定回路
1104 ライトポインタ生成器
1105 オフセットクロック生成器
1106 リードポインタ生成器
1107 アイドル生成器
1110 クロスコネクト回路
1111 第1のOTU4終端器
1111b 第1のLO ODU2終端器
1111c 第1の第1のGFP/MAC終端器
1112 第2のOTU4終端器
1112b 第2のLO ODU2終端器
1112c 第2のGFP/MAC終端器
1113 第1の選択器
1114 共有FIFO
1115 第2の選択器
1121 低遅延側伝送路
1122 高遅延側伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した第1の伝送信号および第2の伝送信号のいずれか一方から他方に切替を行って出力する切替装置であって、
前記第1の伝送信号および前記第2の伝送信号の間の遅延量に基づくオフセットをクロック信号に与えたオフセットクロック信号を用いて前記遅延量の調整を行う遅延量調整手段
を備えたことを特徴とする切替装置。
【請求項2】
入力した第1の伝送信号を終端し前記第1の伝送信号の遅延時間を示す第1の遅延時間信号およびクロック信号を抽出する第1の終端器と、
入力した第2の伝送信号を終端し前記第2の伝送信号の遅延時間を示す第2の遅延時間信号を抽出する第2の終端器と、
前記第1の遅延時間信号および前記第2の遅延時間信号の位相差を判定し前記位相差を示す位相差信号を出力する位相差判定回路と、
前記位相差信号に基づくオフセットを前記クロック信号に与えたオフセットクロック信号を生成するオフセットクロック生成器と、
前記第1の伝送信号および前記第2の伝送信号のいずれかを選択して出力する第1の選択器と、
前記オフセットクロック信号を用いて前記第1の選択器からの前記第1の伝送信号または前記第2の伝送信号の遅延量の調整を行って遅延伝送信号として出力する遅延量調整手段と、
前記第1の伝送信号、前記第2の伝送信号および前記遅延伝送信号のいずれかを選択して出力する第2の選択器であって、前記遅延伝送信号が前記第1の伝送信号に同期しているとき、前記遅延伝送信号および前記第1の伝送信号のいずれか一方から他方に切替を行い、前記遅延伝送信号が前記第2の伝送信号に同期しているとき、前記遅延伝送信号および前記第2の伝送信号のいずれか一方から他方に切替を行う第2の選択器と、
を備えたことを特徴とする切替装置。
【請求項3】
前記遅延量調整手段は、前記クロック信号に基づいてライトポインタ信号を生成するライトポインタ生成器と、前記オフセットクロック信号に基づいてリードポインタ信号を生成するリードポインタ生成器と、前記ライトポインタ信号により書き込み位置が指定され前記リードポインタ信号により読み出し位置が指定されることで前記遅延伝送信号の遅延量の調整を行うFIFOと、を有することを特徴とする請求項2に記載の切替装置。
【請求項4】
前記遅延量調整手段は、前記遅延伝送信号に挿入されるアイドル信号および前記オフセットクロック信号を併用して前記遅延伝送信号の遅延量の調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の切替装置。
【請求項5】
前記第1の遅延時間信号および前記第2の遅延時間信号は、FASバイト、MFASバイト、DMpビット、CMFフレーム、GFPフレーム、GFPアイドル信号、MACアイドル信号、MPLSパケットのSHIMヘッダにおける20bitのラベル値、または、MPLS−TPパケットのSHIMヘッダにおける20bitのラベル値であることを特徴とする請求項2に記載の切替装置。
【請求項6】
入力した第1の伝送信号および第2の伝送信号のいずれか一方から他方に切替を行って出力する切替方法であって、
前記第1の伝送信号および前記第2の伝送信号の間の遅延量に基づくオフセットをクロック信号に与えたオフセットクロック信号を用いて前記遅延量の調整を行う遅延量調整ステップ
を備えたことを特徴とする切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199896(P2012−199896A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64229(P2011−64229)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】