説明

列車無線装置

【課題】再起動可能な軽故障であっても、系切換えが行われていた。無駄な系切換えの多発を防ぎ装置の不安定を防止する。
【解決手段】列車無線装置は、再起動可能な軽故障の検出処理を行う軽故障検出部26と、軽故障が発生した原因を特定する特定処理を行う軽故障原因特定部27と、軽故障検出部26が軽故障を検出した場合は、系切換えを行わずに、軽故障原因特定部27が特定した軽故障が発生した原因に応じた復旧処理を行う復旧部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムにおいては、処理を実行している系にて異常が発生した際、待機している系に処理の実行を切換え、異常が発生した系における異常箇所を特定する作業が行われる。異常が発生した場合は、一旦系を切換えた後に異常箇所を特定するための作業を実行する。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−55797号公報(段落0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置の異常には、反復操作で復旧可能な異常、つまり再起動可能な異常(以降、軽故障と称する)と、反復操作で復旧されない異常、つまり再起動不可能な異常(以降、重故障と称する)が存在する。軽故障の具体例として、以下の2つを開示する。第1にファームウエア、ソフトウエアが正常動作では起こりえない状態となる軽故障がある。第2に環境の変化等により、ハードウエアに誤った設定がされる軽故障がある。第1の軽故障の発生原因としては、ソフトウエアに想定外の特定ルート処理が発生した場合、あるいはソフトウエアに想定外の特定データが入力された場合等が考えられる。第2の軽故障の発生原因としては、電源瞬断等が考えられる。また、重故障の具体例としては、部品の故障がある。
【0005】
大規模な無線通信システムにおける、ファームウエア、ソフトウエアの異なる論理パスの組み合わせ、異なる入力データの組み合わせは、膨大な数になる。よって、列車無線システムのように大規模な無線通信システムの構成要素である列車無線装置においては、ソフトウエアに想定外の特定データが入力されることなどが原因の第1の軽故障が発生する可能性が高くなる。また、列車無線装置、特に車上無線装置においては、架線から電力が供給されるため車上無線装置内の電圧は不安定となる。よって、列車無線装置においては、電源瞬断などが原因の第2の軽故障が発生する可能性が高くなる。
【0006】
従来技術においては、再起動可能な軽故障であっても、系切換えが行われていた。頻繁な系切換えは、装置の不安定を招く。本発明は、無駄な系切換えを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る列車無線装置においては、再起動可能な軽故障の検出処理を行う軽故障検出部と、軽故障が発生した原因を特定する特定処理を行う軽故障原因特定部と、復旧処理を行う復旧部とを備える。軽故障検出部が軽故障を検出した場合、復旧部は、系切換えを行わずに、軽故障原因特定部が特定した軽故障が発生した原因に応じた復旧処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、軽故障を検出した場合、同じ系内において、つまり系切換えを行わずに復旧処理を行う。よって、無駄な系切換えの多発による装置の不安定を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明を実施するための実施の形態1における列車無線システムの全体的な構成図である。
【図2】この発明を実施するための実施の形態1における車上無線装置の構成図である。
【図3】この発明を実施するための実施の形態1における車上無線装置の詳細な構成図である。
【図4】この発明を実施するための実施の形態1における処理ユニット毎の軽故障原因処理ユニットと特定された場合のリスタートポイントを示す図である。
【図5】この発明を実施するための実施の形態1における車上無線装置の動作を示すフロー図である。
【図6】この発明を実施するための実施の形態1における軽故障の検出処理を示すフロー図である。
【図7】この発明を実施するための実施の形態1における軽故障が発生した原因を特定する特定処理と、軽故障の原因に応じた復旧処理とを示すフロー図である。
【図8】この発明を実施するための実施の形態2における無線送受信部の構成図である。
【図9】この発明を実施するための実施の形態2における軽故障の検出処理を示すフロー図である。
【図10】この発明を実施するための実施の形態3における状態監視部の構成図である。
【図11】この発明を実施するための実施の形態3における第1の重故障の検出動作を示すフロー図である。
【図12】この発明を実施するための実施の形態3における第2の重故障の検出動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る列車無線装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各図において、同一符号は、同一または相当の構成を示す。なお、本発明は以下に示す各実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における列車無線システムの全体的な構成図である。列車無線装置には、列車運行線路沿線上に設置される基地局装置11と列車12に設置される車上無線装置13がある。基地局装置11はアンテナ14を有する。また車上無線装置13はアンテナ15を有する。基地局装置11と車上無線装置13は、無線通信を行う。
【0012】
図2は、この発明を実施するための実施の形態1における車上無線装置の構成図である。無線部21は、アンテナ15と接続され無線信号の送受信処理を行う無線送受信部22と、無線信号に対する無線通信処理を行う無線通信処理部23と、電源立上げ処理、電源立下げ処理、及び電源再立上げ処理を行う電源処理部24とを有する。電源再立上げ処理とは、電源の立下げを行った後、再度、電源立上げ処理を行う。状態監視部25は、無線部21が正常に動作しているか否かを監視する。状態監視部25は、軽故障の検出処理を行う軽故障検出部26と、軽故障が発生した原因を特定する特定処理を行う軽故障原因特定部27とを有する。状態監視部25が無線部21を監視し、その結果、正常に動作していないと判断した場合、つまり故障が発生した場合、復旧部28は、復旧処理を行う。メモリ29は、復旧方法を記憶する。
【0013】
図3は、この発明を実施するための実施の形態1における車上無線装置13の詳細な構成図である。無線通信処理部23は、無線通信処理を行う。無線通信処理は順次実行される複数の処理からなる。無線通信処理部23は、複数の処理ユニット31、32、33を有する。複数の処理各々は、異なる処理ユニットにて実行される。
【0014】
電波探索処理ユニット31は、電源処理部24の電源立上げ処理、あるいは電源再立上げ処理後に、無線送受信部22にて受信した無線信号である受信電波22−1を探索する電波探索処理を行う。電波探索処理ユニット31は、電波探索処理の結果を出力信号31−1にて同期検出処理ユニット32へ出力する。電波探索処理の結果としては、電波探索完了通知、電波探索未完了通知、電波探索が完了した受信電波の周波数情報、電波探索が完了した受信電波などがある。電波探索完了通知とは、電波探索が完了したことを示す。つまり電波探索処理ユニット31が行う処理が正常に終了したことを示す。電波探索未完了通知は、電波探索が完了していないこと示す。つまり電波探索処理ユニット31が行う処理が正常に終了していないことを示す。電波探索が完了していない場合は、電波を検出できなかったことを示し、圏外と称される。
【0015】
同期検出処理ユニット32は、電波探索処理ユニット31から出力信号31−1にて通知された電波探索処理の結果と、無線送受信部22にて受信した受信電波22−2とを用いて、同期を検出する同期検出処理を行う。あるいは同期検出処理ユニット32は、電波探索処理ユニット31から出力信号31−1にて通知された電波探索が完了した受信電波の同期を検出する同期検出処理を行う。同期検出処理ユニット32は、同期検出処理の結果を出力信号32−1にて復調処理ユニット33へ出力する。同期検出処理の結果としては、同期検出完了通知、同期検出未完了通知、同期検出が完了した受信電波などがある。同期検出完了通知とは、同期検出が完了したことを示す。つまり同期検出処理ユニット32が行う処理が正常に終了したことを示す。同期検出未完了通知とは、同期検出が完了していないことを示す。つまり同期検出処理ユニット32が行う処理が正常に終了していないことを示す。
【0016】
復調処理ユニット33は、同期検出処理ユニット32から出力信号32−1にて通知された同期検出処理の結果と、無線送受信部22にて受信した受信電波22−3とを用いて、復調処理を行う。復調処理ユニット33は、同期検出処理ユニット32から出力信号32−1にて通知された同期検出が完了した受信電波の復調処理を行う。復調処理ユニット33は、復調処理の結果を出力信号33−1にて出力する。復調処理の結果としては、復調処理完了通知、復調処理未完了通知、復調処理が完了した受信データなどがある。復調処理完了通知とは、復調処理が完了したことを示す。つまり復調処理ユニット33が行う処理が正常に終了したことを示す。復調処理未完了通知とは、復調処理が完了していないことを示す。つまり復調処理ユニット33が行う処理が正常に終了していないことを示す。
【0017】
なお、処理ユニットの分離方法が変わり、無線通信処理部23内の処理ユニット数が増減してもよい。例えば、電波検索処理ユニット31と同期検出処理ユニット32とを一つの処理ユニットで構成してもよい。
【0018】
また、各処理ユニットは、複数の小処理ユニットを有する。電波探索処理ユニット31は、小処理ユニット31−2、31−3を有する。小処理ユニット31−2は、処理結果を通知信号31−4を用いて、小処理ユニット31−3へ通知する。同期検出処理ユニット32は、小処理ユニット32−2、32−3を有する。小処理ユニット32−2は、処理結果を通知信号32−4を用いて、小処理ユニット32−3へ通知する。復調処理ユニット33は、小処理ユニット33−2、33−3を有する。小処理ユニット33−2は、処理結果を通知信号33−4を用いて、小処理ユニット33−3へ通知する。なお、各処理ユニット内の小処理ユニット数が増減してもよい。
【0019】
軽故障検出部26は、無線通信処理部23内の各処理ユニットの出力信号31−1、32−1、33−1を用いて軽故障の検出を行う。検出の際、無線通信処理部23の出力信号34をあわせて用いてもよい。軽故障検出部26は、軽故障を検出した場合、復旧部28へその旨を通知する。
【0020】
軽故障原因特定部27は、軽故障が発生した軽故障原因処理ユニットの特定処理を行う。軽故障原因特定部27は、軽故障原因処理ユニットを復旧部28へ通知する。
【0021】
復旧部28は、無線通信処理部23内の処理ユニット毎に、該処理ユニットが軽故障原因処理ユニットと特定された場合の再実行を開始する最初の処理であるリスタートポイントを、無線部21内の処理のうちいずれか一つに予め決定しておき、軽故障原因処理ユニットに応じたリスタートポイントから再実行を開始する復旧処理を行う。復旧部28は、復旧処理にて、リスタートポイントから再実行を開始することを無線部21へ指示する。
【0022】
処理ユニット毎の軽故障原因処理ユニットと特定された場合の復旧方法、つまり処理ユニット毎のリスタートポイントは、メモリ29に記憶してもよい。軽故障検出部26が軽故障を検出し、軽故障原因特定部27が軽故障原因処理ユニットを特定した場合に、復旧部28がメモリ29に記憶されている軽故障原因処理ユニットと特定された処理ユニット毎のリスタートポイントを確認すればよい。メモリに記憶することで以下の効果を有する。処理ユニット数が増減した場合や、最適なリスタートポイントを変更する場合においても、メモリの記憶内容を変更することで対応可能となる。
【0023】
次に、実施の形態1における車上無線装置13の動作について説明する。軽故障の検出条件を以下に示す。車上無線装置13と基地局装置11とが接続状態にあるにも関わらず通信不可の場合に軽故障を検出する。接続状態とは、例えば電波探索処理ユニット31が電波探索完了、かつ同期検出処理ユニット32が同期検出完了している場合である。通信可であるか否かは、後述するように、復調処理ユニット33にて復調処理が完了した受信データにおける、復調結果が正しいか否かで判断する。
【0024】
電波探索処理ユニット31が電波探索完了であるか否かは、電波探索処理ユニット31の出力信号31−1を用いて、軽故障検出部26が判断する。電波探索処理の結果、すなわち出力信号31−1が、電波探索完了通知であれば電波探索完了、電波探索未完了通知であれば電波探索未完了であると判断する。また、電波探索が完了した受信電波の周波数情報、あるいは電波探索が完了した受信電波が、出力信号31−1にて通知されれば、電波探索完了であると判断し、出力信号31−1にて通知されなければ、電波探索未完了であると判断してもよい。
【0025】
同期検出処理ユニット32が同期検出完了であるか否かは、同期検出処理ユニット32の出力信号32−1を用いて、軽故障検出部26が判断する。同期検出処理の結果、すなわち出力信号32−1が、同期検出完了通知であれば同期検出完了、同期検出未完了通知であれば同期検出未完了であると判断する。また、同期検出が完了した受信電波が、出力信号32−1にて通知されれば、同期検出完了であると判断し、出力信号32−1にて通知されなければ、同期検出未完了であると判断してもよい。
【0026】
復調処理ユニット33が復調処理完了であるか否かは、復調処理ユニット33の出力信号33−1を用いて、軽故障検出部26が判断する。復調処理の結果、すなわち出力信号33−1が、復調処理完了通知であれば復調処理完了、復調処理未完了通知であれば復調処理未完了であると判断する。また、復調処理が完了した受信データが出力信号33−1にて通知されれば、復調処理完了であると判断し、出力信号33−1にて通知されなければ、復調処理未完了であると判断してもよい。
【0027】
通信可であるか否かは、無線通信処理部23の出力信号34、あるいは復調処理ユニット33の出力信号33−1を用いて、軽故障検出部26が判断する。復調処理を完了した受信データの復調結果が正しいか否かで判断する。復調結果が正しいとは、例えば復調処理が完了した受信データにて、CRCチェックを行い、チェック結果がOKとなる場合である。復調結果が正しくないとは、例えば復調処理が完了した受信データにて、CRCチェックを行い、チェック結果がNGとなる場合である。復調結果が正しい場合、通信可であると判断する。また復調結果が正しくない場合は通信不可であると判断する。
【0028】
また、圏外状態が所定時間以上継続する場合に軽故障を検出するとしてもよい。列車無線装置では、車上無線装置13を搭載した列車12が決められた列車運行線路上を走行する。列車無線システムでは、通常、列車運行線路周辺がカバレッジとなるように基地局装置11が設置されており、原則圏外地域は無くなる。よって、圏外状態が所定時間以上継続することは、正常動作では起こりえない状態である。
【0029】
さらに、電波探索処理ユニット31が所定時間以上、電波探索完了状態を継続し、かつ同期検出処理ユニット32が所定時間以上、同期検出完了状態を継続としているにも関わらず、車上無線装置13と基地局装置11とが通信不可の場合に軽故障を検出するとしてもよい。
【0030】
なお、その他の条件が、軽故障の検出条件へ加えられてもよい。ファームウエア、ソフトウエアが正常動作では起こりえない状態となる場合、該状態が発生する条件を軽故障の検出条件とできる。
【0031】
軽故障原因特定部27は、各処理ユニットに含まれる複数の小処理ユニット間の各通知信号を用いて軽故障原因処理ユニットを特定する。例えば、電波探索処理ユニット31に含まれる小処理ユニット31−2、32−3間の通知信号31−4と、同期検出処理ユニット32に含まれる小処理ユニット32−2、32−3間の通知信号32−4と、復調処理ユニット33に含まれる小処理ユニット33−2、33−3間の通知信号33−4を用いて軽故障原因処理ユニットを特定する。特定方法としては、小処理ユニット間の通知信号が正常か否かを判断し、正常でないと判断した通知信号を出力した小処理ユニットを含む処理ユニットを軽故障原因処理ユニットと特定する。
【0032】
復旧部28が決定する予め決められたリスタートポイントが、軽故障原因処理ユニットと特定された処理ユニットが行う処理とは異なる処理に決定されてもよい。軽故障原因処理ユニットと特定された処理ユニットが行う処理と同じ処理に、リスタートポイントが決定される処理ユニットとしては、電波探索処理ユニット31、同期検出処理ユニット32がある。軽故障原因処理ユニットと特定された処理ユニットが行う処理とは異なる処理に、リスタートポイントが決定される処理ユニットとしては、復調処理ユニット33がある。予め決められたリスタートポイントが、軽故障原因処理ユニットと特定された処理ユニットが行う処理とは異なる処理に決定されてもよい点において、単なる再実行(リトライ)とは異なる。これにより、軽故障原因処理ユニットに応じた、最適なリスタートポイントから再実行を開始することができるようになり、短い時間での復旧処理を行うことが可能となる。
【0033】
図4にメモリ29に記憶するマトリックスを示す。図4は、この発明を実施するための実施の形態1における処理ユニット毎の軽故障原因処理ユニットと特定された場合のリスタートポイントを示す図である。軽故障原因処理ユニット毎(図4の最左列)に復旧方法、つまりリスタートポイントを記憶する。例えば、復調処理ユニットが軽故障原因処理ユニットと特定された場合(図4の2行目)、リスタートポイント(図4の最右列)は、電源再立上げ処理となる。軽故障の分類を合わせて記憶してもよい。分類として、以下の2つを開示する。第1の分類としては、ファームウエア、ソフトウエアが正常動作では起こりえない状態となる軽故障がある。言い換えればソフトウエア異常(S/W異常)である。第2の分類としては、ハードウエアに誤った設定がされる軽故障がある。言い換えればハードウエア異常(H/W異常)である。これにより、故障の原因がソフトウエア異常であるか、ハードウエア異常であるかを即座に判断することができる。例えば、復旧処理ユニットが軽故障原因処理ユニットと特定された場合(図4の2行目)、分類(図4の右から2列目)は、ハードウエア異常となる。
【0034】
図5は、この発明を実施するための実施の形態1における車上無線装置の動作を示すフロー図である。以下では、図5に示すフロー図を用いて、実施の形態1における車上無線装置の動作について説明する。ステップST51にて、軽故障検出部26は、軽故障の検出処理として、軽故障を検出したか否かを判断する。ソフトウエア、ファームウエアが正常動作では起こりえない状態となっていないかなど、無線通信処理部23内の複数の処理ユニットの各出力信号を用いて軽故障の検出を行う。軽故障の検出処理の詳細動作説明は、図6を用いて後述する。軽故障を検出した場合は、軽故障検出部26は、軽故障を検出した旨を復旧部28へ通知し、ステップST52へ移行する。軽故障を検出しない場合は、ステップST51の判断を繰り返す。
【0035】
ステップST52にて、軽故障原因特定部27は、無線通信処理部23内の複数の処理ユニットの中で軽故障が発生した処理ユニットを軽故障原因処理ユニットとして特定し、特定した軽故障原因処理ユニットを復旧部28へ通知する。無線通信処理部23内の複数の処理ユニット各々に含まれる複数の小処理ユニット間の各通知信号が正常か否かを判断し、正常でないと判断した通知信号を出力した小処理ユニットを含む処理ユニットを軽故障の発生原因であると特定する。つまり、軽故障原因特定部27は、軽故障原因処理ユニットの特定処理においては、軽故障検出部26の軽故障の検出処理の際と比較して、無線通信処理部23を細かい処理単位で監視する。即ち、軽故障検出部26は、出力信号31−1、32−1、33−3を用いて、無線通信処理部23内の処理ユニット単位で監視する、一方、軽故障原因特定部27は、通知信号31−4、32−4、33−4を用いて、各処理ユニット31、32、33内の小処理ユニット単位で監視する。このように2段階の動作とすることで軽故障の検出前は、細かい監視は不要となる。これにより、軽故障の検出前、つまり正常動作での状態監視部25の処理負荷軽減、消費電力削減という効果を得る。
【0036】
ステップST53にて、復旧部28は、軽故障検出部26が軽故障を検出した場合は、同じ装置内、同じ系内において、つまり系切換えを行わずに復旧処理を行う。復旧部28は、無線通信処理部23内の処理ユニット毎に軽故障原因処理ユニットと特定された場合の再実行を開始する最初の処理であるリスタートポイントを、無線部内の処理のうちいずれか一つに予め決定しておき、ステップST52にて特定した軽故障原因処理ユニットに応じたリスタートポイントから再実行を開始する復旧処理を行う。これにより、軽故障発生時の無駄な系切換えの多発を防ぐことができる。軽故障の原因に応じた復旧処理の説明は、図7を用いて後述する。同じ装置内において、復旧処理を行うことから、ステップST53の後、ステップST51の判断に戻る。
【0037】
リスタートポイントから再実行を開始する場合、再実行を開始する処理以降の処理をリセットしてもよい。リセット処理としては、リセットする処理で用いるテーブルの初期化、リセットする処理で用いるデータの削除、リセットする処理で用いるメモリ領域の初期化などがある。
【0038】
一般的に電源再立上げ処理は、時間を要する。軽故障を検出した全ての場合に、電源再立上げ処理を行うのではなく、ステップST52、及びステップST53を実行し、ステップST52にて特定した軽故障原因処理ユニットに応じたリスタートポイントから再実行を開始する復旧処理を行うことは、不要な電源再立上げ処理を防ぐことができる。これにより、短い時間での復旧処理を行うことが可能となり、通信が行えない時間を短くすることができ、より安定的な無線通信処理を提供することができるとの効果を得ることができる。
【0039】
一方、ステップST52、及びステップST53を省略して、ステップST51にて軽故障を検出した場合は、系切換えを行わず再起動でもよい。例えば、ステップST51にて軽故障を検出した場合は、復旧部28は、無線部21内の電源処理部24に電源再立ち上げ処理、つまり車上無線装置のリブートを指示してもよい。これにより、ステップST52、及びステップST53を実行した場合と比較して、状態監視部25の処理を簡略化しつつ、軽故障発生時の無駄な系切換えの多発を防ぐことができる。
【0040】
次に実施の形態1の軽故障の検出処理の動作について図6を用いて説明する。図6は、この発明を実施するための実施の形態1における軽故障の検出処理を示すフロー図である。図6は、図5のステップST51を詳細に説明したフロー図である。ステップST61にて、電波探索処理ユニット31が電波探索処理を実行する。ステップST62にて、軽故障検出部26は、電波探索処理ユニット31が電波探索を完了したか否か判断する。つまり電波探索処理ユニット31が電波を検出したか否かを判断する。電波探索処理ユニット31が電波探索未完了の場合、つまり電波を検出しなかった場合は、ステップST63へ移行する。電波探索処理ユニット31が電波探索完了の場合、つまり電波を検出できた場合は、ステップST65へ移行する。
【0041】
ステップST63にて、軽故障検出部26は、圏外状態が所定の時間以上継続しているか否か判断する。圏外状態が所定の時間以上継続している場合は、ステップST64へ移行する。つまり前記軽故障の検出条件を満たしたとして、ステップST64へ移行する。圏外状態が所定の時間以上継続していない場合は、ステップST61へ戻る。ステップST64にて、軽故障検出部26は、軽故障を検出したと判断し、軽故障を検出した旨を復旧部28へ通知し、図5のステップST52へ移行する。
【0042】
ステップST65にて、同期検出処理ユニット32が同期検出処理を実行する。ステップST66にて、軽故障検出部26は、同期検出処理ユニット32が同期検出を完了したか否か判断する。同期検出処理ユニット32が同期検出未完了の場合、ステップST65へ戻る。あるいは、ステップST61へ戻ってもよい。同期検出処理ユニット32が同期検出完了した場合、ステップST67へ移行する。
【0043】
ステップST67にて、軽故障検出部26は、基地局装置と接続を確立したか否か判断する。接続を確立していないと判断した場合は、ステップST65へ戻る。あるいは、ステップST61へ戻ってもよい。接続を確立したと判断した場合は、ステップST68へ移行する。ステップST68にて、復調処理ユニット33が復調処理を実行する。ここで復調処理ユニット33が復調処理を完了したか否かを判断する。ステップST69にて、軽故障検出部26は、通信可であるか否かを判断してもよい。通信可である場合は、ステップST68へ戻る。通信不可である場合は、ステップST64へ移行する。つまり前記軽故障の検出条件を満たしたとして、ステップST64へ移行する。
【0044】
次に実施の形態1の軽故障が発生した原因を特定する特定処理と、軽故障の原因に応じた復旧処理とについて図7を用いて説明する。図7は、この発明を実施するための実施の形態1における軽故障が発生した原因を特定する特定処理と、軽故障の原因に応じた復旧処理とを示すフロー図である。図7は、図5のステップST52と、ステップST53とを詳細に説明したフロー図である。図5のステップST51にて軽故障を検出したと判断された場合、ステップST71にて、軽故障原因特定部27は、復調処理ユニット33が軽故障原因処理ユニットであるか否か判断する。判断としては、復調処理ユニット33に含まれる小処理ユニット33−2、33−3間の通知信号33−4が正常か否かを判断する。正常でないと判断すれば、復調処理ユニット33が軽故障原因処理ユニットであると特定し、軽故障原因特定部27は、軽故障の原因が復調処理ユニット33であると、復旧部28へ通知し、ステップST72へ移行する。正常であると判断すれば、復調処理ユニット33が軽故障原因処理ユニットでないと判断し、ステップST73へ移行する。復調処理ユニット33が軽故障原因処理ユニットでないと判断すれば、更に上流の処理ユニットが軽故障原因処理ユニットであるとして、ステップST73へ移行する。
【0045】
ステップST72において、復旧部28は、軽故障の原因である復調処理ユニット33に応じた復旧処理を行うため、メモリ29に記憶されている復調処理ユニット33が軽故障原因処理ユニットと特定された場合のリスタートポイントを確認する。結果、復旧部28は、リスタートポイントが「電源再立上げ処理」であると認識する。復旧部28は、無線部21へリスタートポイントを「電源再立上げ処理」として再実行を指示し、その後、図5のステップST51へ移行する。電源再立ち上げ処理の際に、ハードウエアの初期設定が行われ、誤った設定は改善される。これにより、軽故障の原因は解消され、車上無線装置は復旧する。またステップST72において、復旧部28は、メモリ29に記憶されている復調処理ユニット33が軽故障原因処理ユニットと特定された場合の軽故障の分類を確認してもよい。結果、復旧部28は、発生している軽故障が、ハードウエア異常であることを認識する。
【0046】
ステップST73において、軽故障原因特定部27は、同期検出処理ユニット32が軽故障原因処理ユニットであるか否か判断する。判断としては、同期検出処理ユニット32に含まれる小処理ユニット32−2、32−3間の通知信号32−4が正常か否かを判断する。正常でないと判断すれば、同期検出処理ユニット32が軽故障原因処理ユニットであると特定し、軽故障原因特定部27は、軽故障の原因は同期検出処理ユニット32であると、復旧部28へ通知し、ステップST74へ移行する。正常であると判断すれば、同期検出処理ユニット32が軽故障原因処理ユニットでないと判断し、ステップST75へ移行する。同期検出処理ユニット32が軽故障原因処理ユニットでないと判断すれば、更に上流の処理ユニットが軽故障原因処理ユニットであるとして、ステップST75へ移行する。
【0047】
ステップ74において、復旧部28は、軽故障の原因である同期検出処理ユニット32に応じた復旧処理をおこなうため、メモリ29に記憶されている同期検出処理ユニット32が軽故障原因処理ユニットと特定された場合のリスタートポイントを確認する。結果、復旧部28は、リスタートポイントが「同期検出処理」であると認識する。復旧部28は、無線部21へリスタートポイントを「同期検出処理」として再実行を指示し、その後、図5のステップST51へ移行する。再実行の際に、ソフトウエアの特定ルート処理が解消、あるいはソフトウエアに特定データが入力されることがなくなり、軽故障の原因は解消され、車上無線装置は復旧する。またステップST74において、復旧部28は、メモリ29に記憶されている同期検出処理ユニット32が軽故障原因処理ユニットと特定された場合の軽故障の分類を確認してもよい。結果、復旧部28は、発生している軽故障が、ソフトウエア異常であることを認識する。
【0048】
ステップST75において、軽故障原因特定部27は、電波探索処理ユニット31が軽故障原因処理ユニットであるか否か判断する。判断としては、電波探索処理ユニット31に含まれる小処理ユニット31−2、31−3間の通知信号31−4が正常か否かを判断する。正常でないと判断すれば、電波探索処理ユニット31が軽故障原因処理ユニットであると特定し、軽故障原因特定部27は、軽故障の原因は電波探索処理ユニット31であると、復旧部28へ通知し、ステップST76へ移行する。正常であると判断すれば、電波探索処理ユニット31が軽故障原因処理ユニットでないと判断し、ステップST77へ移行する。
【0049】
ステップST76において、復旧部28は、軽故障の原因である電波探索処理ユニット31に応じた復旧処理を行うため、メモリ29に記憶されている電波探索処理ユニット31が軽故障原因処理ユニットと特定された場合のリスタートポイントを確認する。結果、復旧部28は、リスタートポイントが「電波探索処理」であると認識する。復旧部28は、無線部21へリスタートポイントを「電波探索処理」として再実行を指示し、その後、図5のステップST51へ移行する。再実行の際に、ソフトウエアの特定ルート処理が解消、あるいはソフトウエアに特定データが入力されることがなくなり、軽故障の原因は解消され、車上無線装置は復旧する。またステップST76において、復旧部28は、メモリ29に記憶されている電波探索処理ユニット31が軽故障原因処理ユニットと特定された場合の軽故障の分類を確認してもよい。結果、復旧部28は、発生している軽故障が、ソフトウエア異常であることを認識する。
【0050】
ステップST77において、復旧部28は、無線部21内の電源処理部24に電源再立ち上げ処理、つまり車上無線装置のリブートを指示する。電源再立ち上げ処理にて無線部21で行う処理が初めから再実行されることにより、ソフトウエアの特定ルート処理が解消、あるいはソフトウエアに特定データが入力されることがなくなり、あるいは無線部21のハードウエアの初期設定が行われ、軽故障の原因は解消され、車上無線装置が復旧する可能性がある。
【0051】
ステップST78において、状態監視部25は、無線部21において電源再立上げ処理が正常に完了したか否かを判断する。正常に完了した場合、軽故障の原因は解消されたと判断し、図5のステップST51へ移行する。正常に完了しなかった場合、ステップST79へ移行する。
【0052】
ステップST79において、復旧部28は、無線部21内の電源処理部24に電源立下げ処理を指示する。あわせて、エラー表示をすることで、車上無線装置13の重故障を作業員に通知することができる。あるいは、無線部21などが冗長構成となっている場合は、待機している系に動作を切換えてもよい。あるいは、ステップST79において、状態監視部25は、重故障であると判断してもよい。
【0053】
なお、ステップST75において、電波探索処理ユニット31が軽故障原因処理ユニットでないと判断すれば、軽故障の原因特定が不可能、あるいは軽故障ではなかったと判断して、ステップST79へ移行するとしてもよい。
【0054】
また、軽故障原因特定部27が、復調処理ユニット33(ステップST71)、同期検出処理ユニット32(ステップST73)、電波探索処理ユニット31(ステップST75)を軽故障原因処理ユニットであるか否か判断する場合について示したが、全ての処理ユニットについて判断しなくてもよい。
【0055】
図7では、無線通信処理の順次処理される複数の処理のうち下流の処理を実行する処理ユニットから軽故障原因処理ユニットの特定処理を実行することを説明したが、上流の処理を実行する処理ユニットから軽故障原因処理ユニットの特定処理を実行してもよい。なお、下流の処理とは、順次実行される複数の処理において、より後に実行される処理を示す。また、上流の処理とは、順次実行される複数の処理において、より前に実行される処理を示す。また、図7では、1つの処理ユニット毎に軽故障原因処理ユニットであるか否かを判断する場合について説明したが、複数の処理ユニットにて軽故障原因処理ユニットであるか否かを並行して判断してもよい。
【0056】
下流、あるいは上流から軽故障原因処理ユニットの特定処理を実行する場合は、複数の処理ユニットにて並行して軽故障原因処理ユニットの特定処理を実行する場合と比較して、状態監視部25の処理負荷軽減、消費電力削減という効果を得ることができる。
【0057】
また、複数の処理ユニットにて並行して軽故障原因処理ユニットの特定処理を実行する場合は、軽故障の原因特定の時間を短縮できるという効果を得ることができる。
【0058】
本実施の形態1により、軽故障の検出を行うことが可能となる。これにより、軽故障においては、同じ系内において、つまり系切換えを行わずに復旧処理を行うことができる。よって、無駄な系切換えの多発による装置の不安定を防ぐことができる。
【0059】
また、軽故障原因処理ユニットを特定することができる。これにより、軽故障原因処理ユニットに応じた復旧処理を行うことができる。そのため、短い時間での復旧処理を行うことが可能となり、通信が行えない時間をより短くすることができ、より高品質で、信頼性の高い、安定的な無線通信処理を提供することができる。
【0060】
さらに、重故障が発生しない装置、あるいは重故障が発生しにくい装置においては、待機している系をもつ、いわゆる2重構成、冗長構成をとる必要がなくなる。これにより、装置の低コスト化、小型化が可能となる。冗長構成においては、待機している系が切換え時に直ちに動作可能とするために、待機している系にも予め電源を投入しておくことがある。このような場合、冗長構成を不要とする本発明は低消費電力という効果も有する。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態1では、状態監視部25が、軽故障の検出の際、及び軽故障が発生した原因を特定する際、無線部21の無線通信処理部23を監視することについて説明した。実施の形態2では、状態監視部25が、軽故障の検出の際、及び軽故障の発生した原因を特定する際、無線部21の無線送受信部22を監視することについて説明する。なお、無線送受信部22の構成、及び実施の形態1での動作と異なる部分を中心に説明し、説明していない部分については、実施の形態1と同様とする。
【0062】
実施の形態2における無線送受信部22の構成について図8を用いて説明する。図8は、この発明を実施するための実施の形態2における無線送受信部22の構成図である。無線送受信部22は、パワーアンプ35(以下、PAと称する)を有する。軽故障検出部26は、PA35の出力信号を用いて軽故障の検出を行う。なお、軽故障検出部26は、無線送受信部22の他の部品も監視してもよい。
【0063】
次に、実施の形態2における車上無線装置13の動作について説明する。軽故障検出部26が行う軽故障の検出条件を以下に説明する。変調処理が正常に動作し、かつオートパワーコントロール回路(APC)が正常に動作しているにもかかわらず、PA35の送信出力が異常である場合、軽故障検出部26は、軽故障を検出したと判断する。なお、その他の検出条件が加えられてもよい。変調処理が正常に動作しているか否かの判断として、以下の2つを開示する。第1の判断としては、変調精度が、設置範囲内であれば、変調処理が正常に動作していると判断し、設定範囲外であれば、変調処理が正常に動作していないと判断する。第2の判断としては、PA35の出力信号が設定通りの周波数であれば、変調処理が正常に動作していると判断し、設定通りの周波数でなければ、変調処理が正常に動作していないと判断する。
【0064】
PA35の送信出力が異常であるか否かの判断のとして、以下の2つを開示する。第1の検出条件として、PA35の出力信号を用いて、所望の周波数以外の周波数での漏洩電力が閾値以上であるか否かで判断する。所望の周波数以外の周波数での漏洩電力が閾値以上であれば、PA35の送信出力が異常と判断する。所望の周波数以外の周波数での漏洩電力が閾値未満であれば、PA35の送信出力は正常であると判断する。漏洩電力を測定する周波数は、漏洩電力が発生しやすい周波数とすればよく、例えば所望の周波数の2倍、3倍、あるいは1/2倍、1/3倍の周波数に限定すれば、効率的に軽故障を検出できる。第2の検出条件として、PA35の出力信号の電力が設定どおりの電力を満たしていない場合、PA35の送信出力が異常と判断する。
【0065】
PA35が軽故障の原因である場合、復旧部28は、軽故障の原因であるPA35に応じた復旧処理を行うため、無線部21内の電源処理部24に電源再立ち上げ処理、つまり車上無線装置のリブートを指示する。電源再立ち上げ処理の際に、ハードウエアの初期設定が行われ、軽故障の原因は解消され、車上無線装置は復旧する。実施の形態2における軽故障の原因と、リスタートポイントは、実施の形態1同様メモリ29に記憶しておいてもよい。
【0066】
次に実施の形態2の軽故障の検出処理の動作について図9を用いて説明する。図9は、この発明を実施するための実施の形態2における軽故障の検出処理を示すフロー図である。ステップST81にて、軽故障検出部26は、変調処理が正常か否かを判断する。変調処理が正常に動作していないと場合は、ステップST82へ移行する。変調処理が正常に動作している場合は、ステップST83へ移行する。ステップST82にて、復旧部28は、無線部21内の電源処理部24に電源立下げ処理を指示する。あわせて、エラー表示をすることで、車上無線装置13の重故障を作業員に通知することができる。あるいは、無線部21などが冗長構成となっている場合は、待機している系に動作を切換えてもよい。あるいは、ステップST82において、状態監視部25は、重故障であると判断してもよい。
【0067】
ステップST83にて、軽故障検出部26は、PA35の出力信号を用いてオートパワーコントロール回路(APC)が正常に動作しているか否かを判断する。正常に動作していないと判断した場合、ステップST82へ移行する。正常に動作していると判断した場合、ステップST84へ移行する。ステップST84にて、軽故障検出部26は、PA35の送信出力が正常であるか否か判断する。正常であるか否かの判断は前記の通りであるので説明を省略する。正常であると判断した場合、ステップST84の判断を繰り返す。異常であると判断した場合、ステップST85へ移行する。つまり前記軽故障の検出条件を満たしたとして、ステップST85へ移行する。ステップST85にて、軽故障検出部26は、軽故障を検出したと判断し、軽故障を検出した旨を、復旧部28へ通知する。ステップST86にて、軽故障原因特定部27は、PA35を軽故障の原因であると特定し、軽故障の原因は、PA35であると復旧部28へ通知し、図5のステップST53へ移行する。
【0068】
本実施の形態2により、実施の形態1の効果に加えてPAの送信出力レベル異常を早急に検出可能となる。
【0069】
本実施の形態2は、状態監視部25が、軽故障の検出の際、及び軽故障の発生した原因を特定する際、無線部21の無線送受信部22を監視するのみではなく、あわせて無線部21の無線通信処理部23を監視してもよい。つまり、実施の形態1と組み合わせて用いることができる。
【0070】
実施の形態3
実施の形態1、及び実施の形態2では、軽故障を検出することについて説明した。実施の形態3では、軽故障と、重故障とを検出することについて説明する。なお、状態監視部の構成、及び実施の形態1の動作と異なる部分を中心に説明し、説明していない部分については、実施の形態1と同様とする。
【0071】
実施の形態3における状態監視部25の構成について図10を用いて説明する。図10は、この発明を実施するための実施の形態3における状態監視部25の構成図である。状態監視部25は、無線部21が正常に動作しているか否かを監視する。状態監視部25は、故障の検出処理を行う故障検出部36と、重故障の検出処理を行う重故障検出部37とを有する。
【0072】
次に、実施の形態3における車上無線装置13の動作について説明する。重故障検出部37が行う重故障の検出動作として、以下の2つを開示する。第1の検出動作としては、故障検出部36が故障を検出した場合であって、かつ軽故障検出部26が軽故障を検出しない場合に、重故障検出部37は重故障を検出する。故障の検出動作としは、列車無線装置が想定している動作と異なる動作を行っているか否かを、故障検出部36が、判断し、想定している動作と異なる動作を行っていると故障検出部36が、判断した場合に故障を検出する。第2の検出動作としては、軽故障の検出条件とは異なる重故障の検出条件を設けて、重故障検出部37が、重故障の検出条件を満たしたと判断した場合に、重故障を検出する。重故障の検出条件としては、重故障検出部37が、電源処理部24による電源立上げ処理が完了したか否かを判断し、完了しないと判断した場合に、重故障検出部37が重故障を検出する。重故障検出部37が、電源処理部24による電源立上げ処理が完了したにも関わらず無線部21が正常に動作を開始するか否かを判断し、開始しないと判断した場合に、重故障検出部37が重故障を検出するとしてもよい。
【0073】
復旧部28は、重故障検出部37が重故障を検出した場合と、軽故障検出部26が軽故障を検出した場合とで、異なる復旧処理を行う。軽故障を検出した場合、同じ装置内、あるいは同じ系内において、つまり系切換えを行わずに復旧処理を行う。また、実施の形態1、実施の形態2で示した通り、軽故障原因特定部27が軽故障の発生した原因を特定する特定処理を行い、復旧部28が軽故障の原因に応じた復旧処理を行う。軽故障の原因に応じた復旧処理としては、実施の形態1、実施の形態2で示した通りである。重故障検出部37が重故障を検出した場合の復旧部28が行う復旧処理として、以下の2つを開示する。第1の復旧処理として、エラー表示をする。これにより、重故障を作業員に通知することができる。第2の復旧処理として、無線部21などが冗長構成となっている場合は、待機している系に動作を切換える。これにより、無線通信を継続することが可能となり、安定的な無線通信処理を提供することができる。
【0074】
次に実施の形態3の第1の重故障の検出動作について図11を用いて説明する。図11は、この発明を実施するための実施の形態3における第1の重故障の検出動作を示すフロー図である。ステップST91にて、故障検出部36は、故障を検出したか否かを判断する。故障を検出した場合、ステップST92へ移行する。故障を検出しない場合、ステップST91の判断を繰り返す。
【0075】
ステップST92にて、軽故障検出部26は、軽故障の検出処理として、軽故障を検出したか否かを判断する。軽故障の検出処理としては、実施の形態1、実施の形態2で示した通りである。軽故障を検出した場合は、その旨を復旧部28へ通知し、ステップST93へ移行する。軽故障を検出しない場合は、ステップST95へ移行する。ステップST93にて、軽故障原因特定部27は、軽故障が発生した原因の特定処理を行い、軽故障が発生した原因を復旧部28へ通知する。軽故障が発生した原因の特定処理としては、実施の形態1、実施の形態2で示した通りである。
【0076】
ステップST94にて、復旧部28は、ステップST93にて特定した軽故障の原因に応じた復旧処理を行い、ステップST91へ戻る。復旧部28は、同じ装置内、あるいは、同じ系内において、つまり系切換えを行わずに復旧処理を行う。これにより、軽故障発生時の無駄な系切換えの多発を防ぐことができる。同じ装置内において、復旧処理を行うことから、ステップST94の後、ステップST91の判断に戻る。
【0077】
ステップST95にて、重故障検出部37は、ステップST91にて検出した故障が、重故障であると判断し、その旨を復旧部28へ通知する。ステップST96にて、復旧部28は、重故障に応じた復旧処理を行い、処理を終了する。重故障に応じた復旧処理にて、無線部21の待機している系に動作を切換える場合、処理を終了せずに、切換え後の無線部21に対して、ステップST91を実行してもよい。
【0078】
次に実施の形態3の第2の重故障の検出動作について図12を用いて説明する。図12は、この発明を実施するための実施の形態3における第2の重故障の検出動作を示すフロー図である。ステップST92にて、軽故障検出部26は、軽故障の検出処理として、軽故障を検出したか否かを判断する。軽故障の検出処理としては、実施の形態1、実施の形態2で示した通りである。軽故障を検出した場合は、その旨を復旧部28へ通知し、ステップST93へ移行する。軽故障を検出しない場合は、ステップST92の判断を繰り返す。ステップST93にて、軽故障原因特定部27は、軽故障が発生した原因の特定処理を行い、軽故障の発生した原因を復旧部28へ通知する。軽故障が発生した原因の特定処理体としては、実施の形態1、実施の形態2で示した通りである。
【0079】
ステップST94にて、復旧部28は、ステップST93にて特定した軽故障の原因に応じた復旧処理を行い、ステップST92へ戻る。復旧部28は、同じ装置内、あるいは同じ系内において、つまり系切換えを行わずに復旧処理を行う。これにより、軽故障発生時の無駄な系切換えの多発を防ぐことができる。同じ装置内において、復旧処理を行うことから、ステップST94の後、ステップST92の判断に戻る。
【0080】
ステップST101にて、重故障検出部37は、重故障の検出処理として、重故障を検出したか否かを判断する。重故障を検出した場合は、重故障検出部37は、その旨を復旧部28へ通知し、ステップST102へ移行する。重故障を検出しない場合は、ステップST101の判断を繰り返す。重故障の検出条件は、前述の通りであるので説明を省略する。ステップST92と、ステップST101は並行して実行する。あるいは、ステップST92と、ステップST101は独立して実行してもよい。ステップST102にて、復旧部28は、重故障に応じた復旧処理を行った後、処理を終了する。重故障に応じた復旧処理にて、無線部21の待機している系に動作を切換える場合、処理を終了せずに、切換え後の無線部21に対して、ステップST101を実行してもよい。
【0081】
本実施の形態3は、実施の形態1、及び実施の形態2と組み合わせて用いることができる。
【0082】
本実施の形態3により、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0083】
上記説明では、この発明を列車無線装置、特に車上無線装置に利用する場合について述べたが、列車無線装置の基地局装置にも利用できる。また、列車無線装置に限らず適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
21 無線部、23 無線通信処理部、24 電源処理部、25 状態監視部、26 軽故障検出部、27 軽故障原因特定部、28 復旧部、29 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源立上げ処理を行う電源処理部と、前記電源立上げ処理の後に無線通信処理を行う無線通信処理部とを有する無線部と、
再起動可能な軽故障の検出処理を行う軽故障検出部と、前記軽故障検出部が軽故障を検出した場合、前記軽故障が発生した軽故障原因処理ユニットの特定処理を行う軽故障原因特定部とを有する状態監視部と、
前記軽故障検出部が軽故障を検出し、前記軽故障原因特定部が前記軽故障原因処理ユニットを特定した場合、前記軽故障原因処理ユニットに応じた復旧処理を行う復旧部と
を備え、
前記無線通信処理は、順次実行される複数の処理からなり、
前記無線通信処理部は、複数の処理ユニットを含み、
前記複数の処理各々は、異なる処理ユニットにて実行され、
前記軽故障検出部は、前記複数の処理ユニットの各出力信号を用いて前記軽故障の検出処理を行い、
前記軽故障原因特定部は、前記複数の処理ユニット各々に含まれる複数の小処理ユニット間の各通知信号が正常か否かを判断し、正常でないと判断した前記通知信号を出力した小処理ユニットを含む処理ユニットを軽故障原因処理ユニットとする特定処理を行い、
前記復旧部は、前記複数の処理ユニット毎に、該処理ユニットが前記軽故障原因処理ユニットと特定された場合の再実行を開始する最初の処理であるリスタートポイントを、前記無線部内の処理のうちいずれか一つに予め決定しておき、前記軽故障原因処理ユニットに応じた前記リスタートポイントから再実行を開始する復旧処理を行う
列車無線装置。
【請求項2】
前記軽故障検出部が、前記複数の処理ユニットの各出力信号を用いて、全ての処理ユニットが行う処理が正常に終了したと判断し、かつ通信不可と判断した場合に、軽故障の検出を行うこと
を特徴とする請求項1記載の列車無線装置。
【請求項3】
所定の処理ユニットに対する前記リスタートポイントが、前記軽故障原因処理ユニットと特定された処理ユニットが行う処理とは異なる処理であること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の列車無線装置。
【請求項4】
前記複数の処理ユニット毎の前記リスタートポイントを記憶するメモリを備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の列車無線装置。
【請求項5】
前記軽故障原因特定部が、下流の処理ユニットから順次上流の処理ユニットに向かって、処理ユニット内に含まれる複数の小処理ユニット間の各通知信号について正常か否かを判断すること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の列車無線装置。
【請求項6】
前記状態監視部が、再起動不可能な重故障の検出処理を行う重故障検出部を備え、
前記重故障検出部が重故障を検出した場合と、前記軽故障検出部が軽故障を検出した場合とで、前記復旧部が異なる復旧処理を行うこと
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の列車無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−70253(P2013−70253A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207542(P2011−207542)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】