説明

制御基板の製造方法および制御基板

【課題】小型化を図ることができる制御基板を効率よく製造することができる制御基板の製造方法、および、かかる制御基板の製造方法により製造された制御基板を提供すること。
【解決手段】制御基板の製造方法は、回路基板2と、回路基板2上に配置された半導体素子3aおよび3bそしてコネクタ4と、蓋部材5とを備える制御基板1を製造する方法である。この製造方法は、回路基板2上に半導体素子3a、3bとコネクタ4をそれぞれ位置決めして固定し、組立体10を得る組立工程と、組立体10に蓋部材5を装着する装着工程とを有する。そして、蓋部材5は、半導体素子3a、3bのそれぞれの外形形状に対応し、装着工程で半導体素子3a、3bが入り込むような形状をなす半導体素子用凹部54a、54bと、コネクタ4の外形形状に対応し、装着工程でコネクタ4が入り込むような形状をなすコネクタ用凹部55とが予め形成されたものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御基板の製造方法および制御基板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ヘッドライト、電装品等の各種機器を制御する多数の回路装置(制御基板)が搭載されている。この回路装置としては、導体回路上に複数の半導体素子や電子部品が実装された電子回路基板と、半導体素子、電子部品を導体回路ごと封止する樹脂封止材とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。樹脂封止材で封止する理由としては、例えば、厳しい条件下での使用を考慮し、湿気による電子部品間での電流のリークや基板のパターン間での電流のリークを防止することが望まれるからである。また、半導体素子、電子部品の実装済み基板の部品面上及び半田面上に防湿剤(タフィー、シリコン等)を塗布する防湿処理を程こる場合もある。
【0003】
この特許文献1に記載されているような回路装置は、例えばアルミニウム製のケースに収納された状態で、自動車に搭載されるのが一般的である。このため、ケースを用いる分だけその大きさが大きくなり、結果、自動車の総重量が増大してしまうという問題があった。また、回路装置をその都度ケースに収納しなければならず、このような収納工程も、回路装置を製造する全工程においては、煩わしい工程の1つであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−303216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、小型化を図ることができる制御基板を効率よく製造することができる制御基板の製造方法、および、かかる制御基板の製造方法により製造された制御基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 導体回路を有する回路基板と、該回路基板上に配置され、前記導体回路に電気的に接続された少なくとも1つの半導体素子と、前記回路基板上に前記半導体素子と異なる位置に配置され、前記導体回路に電気的に接続されたコネクタと、前記導体回路を覆う蓋部材とを備える制御基板を製造する方法であって、
前記回路基板上に前記半導体素子および前記コネクタをそれぞれ位置決めして固定し、前記回路基板と前記半導体素子と前記コネクタとからなる組立体を組み立てる組立工程と、
前記組立体に前記蓋部材を装着する装着工程とを有し、
前記蓋部材は、前記半導体素子の外形形状に対応し、前記装着工程で前記半導体素子が入り込むような形状をなす半導体素子用凹部と、前記コネクタの外形形状に対応し、前記装着工程で前記コネクタが入り込むような形状をなすコネクタ用凹部とが予め形成されたものであることを特徴とする制御基板の製造方法。
【0007】
(2) 前記半導体素子の外形形状は、板片状をなしており、
前記半導体素子用凹部は、その深さが前記半導体素子の厚さと同じかまたはそれよりも若干大きい部分である上記(1)に記載の制御基板の製造方法。
【0008】
(3) 前記半導体素子用凹部の内面は、前記半導体素子と接している上記(2)に記載の制御基板の製造方法。
【0009】
(4) 前記蓋部材は、板状をなすものであり、
前記コネクタ用凹部は、前記蓋部材をその厚さ方向に貫通する貫通孔で構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【0010】
(5) 前記コネクタは、前記回路基板に対し垂直方向に起立するピンで構成された複数の端子を有し、
前記貫通孔の内周面は、前記各端子の外周面と離間している上記(4)に記載の制御基板の製造方法。
【0011】
(6) 前記コネクタは、前記回路基板に対し垂直方向に起立するピンで構成された複数の端子と、該複数の端子を収納する筒状をなすハウジングとを有し、
前記貫通孔の内周面は、前記ハウジングの外周面と接しているかまたは離間している上記(4)に記載の制御基板の製造方法。
【0012】
(7) 前記蓋部材は、厚さが前記端子の長さよりも大きい板状をなすものである上記(5)または(6)に記載の制御基板の製造方法。
【0013】
(8) 前記蓋部材は、硬質の樹脂材料で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【0014】
(9) 前記制御基板は、前記蓋部材が接着剤を介して前記回路基板に固定されたものであり、
前記組立工程と前記装着工程との間に、前記蓋部材および前記組立体の前記回路基板のうちの少なくとも一方に前記接着剤を塗布する塗布工程を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【0015】
(10) 前記制御基板は、前記蓋部材の表側の面に金属材料で構成された板部材が設置されたものであり、
前記板部材は、前記装着工程では、前記蓋部材に設置済み状態となっている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【0016】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の制御基板の製造方法により製造されたことを特徴とする制御基板。
【0017】
(12) 前記コネクタは、光を照射する光源に接続され、
前記半導体素子は、前記光源を制御するものである上記(11)に記載の制御基板。
【0018】
(13) 当該制御基板は、自動車に搭載されるものであり、前記光源は、前記自動車のヘッドライトである上記(12)に記載の制御基板。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓋部材で導体回路や半導体素子を確実に保護することができる程度に、蓋部材の厚さをできる限り抑えることができる。その結果、制御基板の小型化を図ることができる。
【0020】
また、この小型化された制御基板を製造する際、回路基板と半導体素子とコネクタとからなる組立体に対し、その凹凸(半導体素子やコネクタ)に対応した部分(半導体素子用凹部やコネクタ用凹部)を有する蓋部材を装着するという簡単な工程を経るため、その製造を効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の制御基板の第1実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1に示す制御基板を製造する工程(本発明の制御基板の製造方法)を順に示す部分断面図である。
【図3】図1に示す制御基板を製造する工程(本発明の制御基板の製造方法)を順に示す部分断面図である。
【図4】本発明の制御基板(本発明の制御基板の製造方法)の第2実施形態を示す部分断面図である。
【図5】本発明の制御基板の第3実施形態を示す部分断面図である。
【図6】本発明の制御基板の第4実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の制御基板の製造方法および制御基板を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の制御基板の第1実施形態を示す部分断面図、図2および図3は、それぞれ、図1に示す制御基板を製造する工程(本発明の制御基板の製造方法)を順に示す部分断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図3中(図4、図5についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1中では、見易くするために制御基板の大きさを誇張して模式的に図示しており、制御基板と自動車との大きさの比率は実際とは大きく異なる。
【0024】
図1に示すように、制御基板1は、自動車20に搭載され、その前方に向かって光を照射するヘッドライト(光源)201の例えばON/OFF(点燈/消灯)を制御するものである。なお、ヘッドライト201は、図1に示す構成では多数の発光ダイオード素子(LED)202が配置されたものとなっているが、これに限定されず、例えば、ディスチャージを有するものであってもよい。
【0025】
制御基板1は、回路基板2と、半導体素子3aおよび3bと、コネクタ4と、蓋部材5とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0026】
回路基板2は、自動車20のエンジンルーム内に配置されている。回路基板2は、平面視で長方形をなしており、各角部には、それぞれ、厚さ方向に貫通する貫通孔21が形成されている。そして、回路基板2は、各貫通孔21にそれぞれボルト30が挿入され、当該ボルト30を介してエンジンルームを画成する壁部203に固定されている。
【0027】
この回路基板2は、支持板22と、支持板22上に形成された絶縁層23と、絶縁層23上に形成された導体回路24とを有する積層体で構成されている。
【0028】
支持板22は、導体回路24を支持するベースとなるものである。支持板22は、金属材料で構成され、特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されているのが好ましい。支持板22がアルミニウムまたはその合金で構成されている場合、当該支持板22は、熱伝導性が比較的高いものとなり、よって、半導体素子3aおよび3b、その他、コネクタ4や導体回路24が発した熱を確実に放熱することができる。
【0029】
支持板22の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、1〜5mmであるのが好ましく、1〜2mmであるのがより好ましい。支持板22の厚さをこのような数値範囲に設定することにより、回路基板2を自動車20に載置可能な程度の強度に確保することができる。また、回路基板2が比較的薄いものとなり、制御基板1の小型化にも寄与する。さらに、前記熱を効率よく放熱することができる。
【0030】
絶縁層23は、支持板22と導体回路24との間に形成され、支持板22と導体回路24とを絶縁する層である。この絶縁層23により、導体回路24のショート(短絡)を確実に防止することができる。絶縁層23の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種樹脂材料が挙げられ、特に、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0031】
また、絶縁層23の厚さとしては、例えば、50〜200μmであるのが好ましく、80〜150μmであるのがより好ましい。
【0032】
導体回路24は、導電性を有する金属材料で構成されたものである。この導体回路24は、絶縁層23の上面全面に積層された金属箔をエッチングにより所定のパターンに形成したものである。なお、導体回路24を構成する金属材料としては、特に限定されないが、例えば、銅を好適に用いることができる。これにより、比較的抵抗値が小さい導体回路24となる。
【0033】
導体回路24の厚さとしては、例えば、10〜200μmであるのが好ましく、18〜70μmであるのがより好ましい。
【0034】
また、導体回路24には、その少なくとも一部を覆うように形成された被覆層(ソルダーレジスト層)25が積層されている。これにより、導体回路24を保護することができ、よって、例えば、導体回路24の劣化やショートを防止することができる。なお、導体回路24の半導体素子3aおよび3bが接続される部分は、被覆層25が省略されており、露出している。また、被覆層25の構成材料としては、特に限定されず、例えば、絶縁層23と同様の樹脂材料を用いることができる。
【0035】
被覆層25の厚さとしては、例えば、10〜100μmであるのが好ましく、10〜30μmであるのがより好ましい。
【0036】
図1に示すように、回路基板2上には、ヘッドライト201の作動を制御する半導体素子3aおよび3bが配置されている。半導体素子3aおよび3bは、それぞれ、その外形形状(全体形状)が板片状をなすものであり、互いに厚さが異なるものである。図1に示す構成では、半導体素子3aの厚さtは、半導体素子3bの厚さtよりも大きい。
【0037】
半導体素子3aと半導体素子3bとの構成は、ほぼ同じであるため、以下、半導体素子について代表的に説明する。
【0038】
半導体素子3aの内部には、銅等の導電性金属材料で構成される配線パターン(図示せず)が、所定形状で設けられている。この配線パターンは、下面31から突出した複数の端子32に電気的に接続されている。そして、各端子32がそれぞれ導体回路24と接合され、これにより、半導体素子3aが導体回路24と電気的に接続されることとなる。なお、各端子32は、それぞれ、例えば、半田、銀ろう、銅ろう、燐銅ろうのようなろう材を主材料として構成されている。
【0039】
なお、半導体素子3aの外装部を構成するモールド部33は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のような熱硬化性樹脂で構成されている。
【0040】
図1に示すように、回路基板2上には、半導体素子3aおよび3bと異なる位置にコネクタ4が配置されている。コネクタ4は、中継ケーブル204を介して、ヘッドライト201に接続されている。なお、中継ケーブル204のヘッドライト201と反対側の端部には、コネクタ4と接続されるコネクタ205が設置されている。
【0041】
コネクタ4は、いわゆる「オス側」のコネクタであり、複数のピン(端子)41で構成されている。各ピン41は、それぞれ、銅等の導電性金属材料で構成され、導体回路24に電気的に接続されている。そして、各ピン41と、いわゆる「メス側」のコネクタ205の各端子(図示せず)とが嵌合により接続することができる。
【0042】
各ピン41は、それぞれ、回路基板2に対し垂直方向に、すなわち、鉛直上方に向かって起立している。これにより、コネクタ4に中継ケーブル204のコネクタ205を接続する際、コネクタ205を上方から差し込むことができ、その接続作業を容易に行なうことができる。
【0043】
図1に示すように、蓋部材5は、導体回路24や半導体素子3aおよび3b、特に、導体回路24と半導体素子3aおよび3bとの接続部を覆うものである。この蓋部材5は、硬質の樹脂材料で構成された板状の部材であり、その下面53が接着剤(接着剤層)6を介して回路基板2の上面26に固定されている。
【0044】
蓋部材5は、半導体素子3aが入り込む半導体素子用凹部54aと、半導体素子3bが入り込む半導体素子用凹部54bと、コネクタ4(端子41)が入り込むコネクタ用凹部55とを有している。半導体素子用凹部54a、54b、コネクタ用凹部55は、それぞれ、蓋部材5が回路基板2に装着、固定されるときに、当該回路基板2上の半導体素子3a、3b、コネクタ4に対応する位置に配置されている。
【0045】
半導体素子用凹部54aは、半導体素子3aの外形形状に対応し、半導体素子3aが入り込むような形状をなす部分である。換言すれば、半導体素子用凹部54aは、半導体素子3aとほぼ同じ板片状の空間を有し、その深さdが半導体素子3aの厚さtと同じ部分である。これにより、半導体素子用凹部54aの内面541が半導体素子3aのモールド部33と接することとなり、よって、半導体素子3aを蓋部材5で確実に固定することができる。従って、自動車20が走行しているときにその振動が制御基板1に伝達したとしても、当該振動による半導体素子3aの離脱を確実に防止することができる。
【0046】
なお、深さdは、図示の構成では厚さtと同じであるが、これに限定されず、厚さtよりも若干大きくてもよい。
【0047】
半導体素子用凹部54aと同様に、半導体素子用凹部54bも、半導体素子3bの外形形状に対応し、半導体素子3bが入り込むような形状をなす部分である。換言すれば、半導体素子用凹部54bは、半導体素子3bとほぼ同じ板片状の空間を有し、その深さdが半導体素子3bの厚さtと同じ部分である。これにより、半導体素子用凹部54bの内面541が半導体素子3bのモールド部33と接することとなり、よって、半導体素子3bを蓋部材5で確実に固定することができる。従って、自動車20が走行しているときにその振動が制御基板1に伝達したとしても、当該振動による半導体素子3bの離脱を確実に防止することができる。
【0048】
なお、深さdは、図示の構成では厚さtと同じであるが、これに限定されず、厚さtよりも若干大きくてもよい。
【0049】
コネクタ用凹部55は、コネクタ4の外形形状に対応し、コネクタ4が入り込むような形状をなす部分である。換言すれば、コネクタ用凹部55は、蓋部材5をその厚さ方向に貫通する貫通孔で構成され、当該貫通孔をコネクタ4を構成する複数のピン41が一括して挿通する程度の大きさの部分である。そして、コネクタ用凹部55(貫通孔)の内周面551は、各ピン41の外周面と離間している。このようにコネクタ用凹部55は、複数のピン41の集合体よりも十分に大きいものである。これにより、コネクタ用凹部55内に位置するピン41とコネクタ205とを接続する際に、当該コネクタ205をコネクタ用凹部55に確実に挿入することができ、よって、その接続操作を容易に行なうことができる。また、図3に示すように蓋部材5を回路基板2に装着する際、コネクタ用凹部55の内周面551が各ピン41に接触するのを防止しつつ、その装着作業を行なうことができる。これにより、装着作業時に、コネクタ用凹部55の内周面551が各ピン41に接触して、当該ピン41が折れ曲がってしまうのを防止することができる。
【0050】
また、蓋部材5の厚さtは、各ピン41の長さhよりも大きい。これにより、各ピン41がそれぞれ蓋部材5の上面51から突出するのが防止され、よって、各ピン41に例えば指先等が不本意に触れるのを防止することができる。
【0051】
以上のように、蓋部材5により、半導体素子3aやコネクタ4等を確実に保護することができる。さらに、蓋部材5で半導体素子3a等を確実に保護することができる程度に、蓋部材5の厚さtをできる限り抑えることができる。その結果、制御基板1の小型化(軽量化)を図ることができる。
【0052】
なお、蓋部材5を構成する硬質の樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、半導体素子3aのモールド部33やハウジング42の構成材料と同様の熱硬化性樹脂を用いることができ、特にエポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0053】
また、蓋部材5は、硬質ものものであるため、従来のように車積時にアルミニウム製のケースで制御基板1を覆わなくとも、半導体素子3a等を確実に保護することができる。このように、制御基板1では、車積時に用いられる従来のアルミニウム製のケースを省略することができ、その省略した分だけ、自動車20の総重量を抑えることができる。
【0054】
また、図1に示すように、半導体素子3a等が蓋部材5に保護された状態となるため、これらに対する防水・防塵機能が発揮される。
【0055】
蓋部材5を構成する樹脂材料には、アルミナ等の金属酸化物、窒化ホウ素等の窒化物に代表される電気絶縁性かつ高熱伝導性フィラーを充填されているのが好ましい。これにより、蓋部材5を介して、半導体素子3a等が発した熱の放熱が促進される。そして、この放熱と、前述した支持板22を介しての放熱とが相まって、制御基板1は、全体として放熱性に極めて優れたものとなる。
【0056】
蓋部材5を回路基板2に接着、固定する接着剤6としては、特に限定されないが、例えば、光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができる。
【0057】
次に、制御基板1を製造する方法(本発明の制御基板の製造方法)について、図2、図3を参照しつつ説明する。
【0058】
この製造方法は、準備工程と、組立工程と、塗布工程と、装着工程と、硬化工程とを有する。
【0059】
[1] 準備工程
まず、図2(a)に示すように、回路基板2と、半導体素子3aおよび3bと、端子41とを用意する。
【0060】
[2] 組立工程
次に、図2(b)に示すように、回路基板2の所定の箇所に、半導体素子3aおよび3bと、各端子41とをそれぞれ位置決めする。そして、位置決めした状態の半導体素子3aおよび3bと、各端子41とをそれぞれ例えば半田(図示せず)を介して接合し固定する。これにより、回路基板2、半導体素子3aおよび3b、各端子41からなる組立体10を組み立てることができる。
【0061】
[3] 塗布工程
次に、図2(c)に示すように、半導体素子用凹部54a、半導体素子用凹部54b、コネクタ用凹部55が予め形成された蓋部材5を用意し、当該蓋部材5の上下を反転させる。そして、蓋部材5の組立体10の回路基板2との接合面(下面53)に例えばスプレー50を用いて接着剤6を塗布する。本実施形態では、接着剤6が紫外線硬化型接着剤である場合を一例に挙げる。
【0062】
なお、接着剤6の塗布方法としては、スプレー50による方法の他、例えば、ディッピングによる方法、ディスペンサーによる方法も用いることができる。
【0063】
また、本工程では、蓋部材5に接着剤6を塗布していたが、これに限定されず、組立体10の回路基板2に接着剤6を塗布してもよいし、蓋部材5および回路基板2の双方に接着剤6を塗布してもよい。
【0064】
[4] 装着工程
次に、図3(d)に示すように、組立工程で得られた組立体10に、塗布工程で接着剤6が塗布された蓋部材5を装着する。このとき、前述したように、蓋部材5の半導体素子用凹部54aに半導体素子3aが入り込み、半導体素子用凹部54bに半導体素子3bが入り込み、コネクタ用凹部55に各ピン41が入り込む。
【0065】
[5] 硬化工程
次に、図3(e)に示すように、接着剤6に対し紫外線60を照射し、当該接着剤6を硬化させる。
以上の工程を経ることにより、小型の制御基板1が得られる。
【0066】
また、本製造方法では、組立体10に対し、その上面の凹凸(例えば半導体素子3a等)に対応した部分(例えば半導体素子用凹部54a)を有する蓋部材5を装着するという簡単な工程で、制御基板1を製造することができる。これにより、その製造を効率よく行なうことができる、すなわち、生産性が高い製造となる。
【0067】
また、制御基板1は、前述したように、そのままの状態で自動車20に搭載することができる。これにより、従来のように制御基板をさらにケースに収納して自動車20に搭載する場合に比べて、制御基板1をケースに収納する収納工程を省略できるので、制御基板1を効率よく製造することができる。
【0068】
<第2実施形態>
図4は、本発明の制御基板(本発明の制御基板の製造方法)の第2実施形態を示す部分断面図である。
【0069】
以下、この図を参照して本発明の制御基板の製造方法および制御基板の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、蓋部材の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0070】
図4に示す制御基板1では、蓋部材5の上面51(表側の面)に放熱板7が設置されている。放熱板7は、金属材料、特に、アルミニウムで構成されている。このような放熱板7が設置されていることにより、当該放熱板7を介して、半導体素子3a等が発した熱の放熱が促進される。そして、この放熱と、前述した蓋部材5自体を介しての放熱とが相まって、制御基板1は、全体として放熱性に極めて優れたものとなる。
【0071】
なお、放熱板7の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、0.5〜15mmであるのが好ましく、1〜5mmであるのがより好ましい。
【0072】
また、図4(a)に示すように、組立体10に蓋部材5を装着する装着工程では、当該蓋部材5は、放熱板7が既に設置済み状態のものとなっている。このように、放熱板7が設置済み状態の蓋部材5を予め製造して用意しておくことができる。そして、この蓋部材5を使用したいとき、すなわち、蓋部材5を組立体10に装着するときに、いつでも当該蓋部材5を使用することができる。
【0073】
そして、図4(b)に示すように、接着剤6を硬化する硬化工程を経ることにより、放熱板7が設置された蓋部材5を有する制御基板1を得る。
【0074】
<第3実施形態>
図5は、本発明の制御基板の第3実施形態を示す部分断面図である。
【0075】
以下、この図を参照して本発明の制御基板の製造方法および制御基板の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0076】
本実施形態は、蓋部材の形状(厚さ)およびコネクタの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0077】
図5に示す制御基板1では、コネクタ4Aは、複数のピン41と、これらのピン41を一括して収納するハウジング42とで構成されている。ハウジング42は、筒体で構成され、回路基板2に対し立設している。
【0078】
各ピン41は、それぞれ、その長さh1が蓋部材5Aの厚さtよりも大きいものであり、蓋部材5Aの上面51からは突出しているが、ハウジング42に収納されているため、各ピン41に外部に突出した部分が生じるのが防止されこととなる。このようにハウジング42を有することにより、各ピン41の長さh1が蓋部材5Aの厚さtよりも大である場合でも、各ピン41が保護され、よって、当該ピン41に例えば指先等が不本意に触れるのを防止することができる。
【0079】
また、蓋部材5Aのコネクタ用凹部55の内周面551は、ハウジング42の外周面422と接している。これにより、蓋部材5Aでハウジング42を確実に固定することができ、よって、自動車20が走行しているときにその振動が制御基板1に伝達したとしても、当該振動によるハウジング42の離脱を確実に防止することができる。
【0080】
なお、蓋部材5Aのコネクタ用凹部55の内周面551は、ハウジング42の外周面422と接しているが、これに限定されず、外周面422から離間していてもよい。
【0081】
ハウジング42の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、半導体素子3aのモールド部33の構成材料と同様の熱硬化性樹脂が用いることができる。
【0082】
図5に示すように、蓋部材5Aは、その厚さtが半導体素子3aの厚さtと同じものとなっている。これにより、半導体素子3aの上面34が露出することとなり、よって、当該半導体素子3aが発した熱を上面34から直接的に放熱することができる。これにより、制御基板1は、さらに放熱性に優れたものとなる。
【0083】
なお、蓋部材5Aの厚さtは、図4に示す構成では半導体素子3aの厚さtと同じであるが、これに限定されず、例えば、厚さtよりも小さくてもよい。
【0084】
<第4実施形態>
図6は、本発明の制御基板の第4実施形態を示す部分断面図である。
【0085】
以下、この図を参照して本発明の制御基板の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0086】
本実施形態は、半導体素子の他にトランスが搭載されていることが異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0087】
図6に示すように、回路基板2上には、半導体素子3aの他に、電子部品として、トランス11が配置されている。蓋部材5の半導体素子用凹部54bは、半導体素子3bに代えて、トランス11を収納することができる。そして、トランス11は、半導体素子用凹部54bの内面541に当接している。
【0088】
トランス11は、導体回路24と電気的に接続されている。また、トランス11は、その厚さが半導体素子3aよりも小さいものである。これにより、蓋部材5の厚さtをできる限り抑えることができ、よって、制御基板1の小型化を図ることができる。
【0089】
なお、回路基板2上に実装される電子部品としては、トランスに限定されず、例えば、ノイズフィルタ、コンデンサ、抵抗器等であってもよい。
【0090】
以上、本発明の制御基板の製造方法および制御基板を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、制御基板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0091】
また、本発明の制御基板の製造方法および制御基板は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0092】
また、本発明の制御基板は、自動車に搭載されている場合、ヘッドライトを制御するよう構成されたものであるが、これに限定されず、例えば、電装品の電子制御するよう構成されたものでもよい。
【0093】
また、本発明の制御基板が搭載されるものとしては、前記各実施形態では自動車であったが、これに限定されず、例えば、船舶、航空機、鉄道車両でもよい。
【0094】
また、回路基板上には、前記各実施形態では2つの半導体素子が配置されているが、これに限定されず、例えば、1つまたは3つ以上の半導体素子が配置されていてもよい。
【0095】
また、蓋部材の回路基板に対する固定方法としては、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法に限定されず、例えば、クランプを用いて回路基板と蓋部材とを一括して挟持する方法が挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
1 制御基板
2 回路基板
21 貫通孔
22 支持板
23 絶縁層
24 導体回路
25 被覆層(ソルダーレジスト層)
26 上面
3a、3b 半導体素子
31 下面
32 端子
33 モールド部
34 上面
4、4A コネクタ
41 ピン(端子)
42 ハウジング
422 外周面
5、5A 蓋部材
51 上面
53 下面
54a、54b 半導体素子用凹部
541 内面
55 コネクタ用凹部
551 内周面
6 接着剤(接着剤層)
7 放熱板
10 組立体
11 トランス
20 自動車
201 ヘッドライト(光源)
202 発光ダイオード素子(LED)
203 壁部
204 中継ケーブル
205 コネクタ
30 ボルト
50 スプレー
60 紫外線
、d 深さ
、t、t 厚さ
長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体回路を有する回路基板と、該回路基板上に配置され、前記導体回路に電気的に接続された少なくとも1つの半導体素子と、前記回路基板上に前記半導体素子と異なる位置に配置され、前記導体回路に電気的に接続されたコネクタと、前記導体回路を覆う蓋部材とを備える制御基板を製造する方法であって、
前記回路基板上に前記半導体素子および前記コネクタをそれぞれ位置決めして固定し、前記回路基板と前記半導体素子と前記コネクタとからなる組立体を組み立てる組立工程と、
前記組立体に前記蓋部材を装着する装着工程とを有し、
前記蓋部材は、前記半導体素子の外形形状に対応し、前記装着工程で前記半導体素子が入り込むような形状をなす半導体素子用凹部と、前記コネクタの外形形状に対応し、前記装着工程で前記コネクタが入り込むような形状をなすコネクタ用凹部とが予め形成されたものであることを特徴とする制御基板の製造方法。
【請求項2】
前記半導体素子の外形形状は、板片状をなしており、
前記半導体素子用凹部は、その深さが前記半導体素子の厚さと同じかまたはそれよりも若干大きい部分である請求項1に記載の制御基板の製造方法。
【請求項3】
前記半導体素子用凹部の内面は、前記半導体素子と接している請求項2に記載の制御基板の製造方法。
【請求項4】
前記蓋部材は、板状をなすものであり、
前記コネクタ用凹部は、前記蓋部材をその厚さ方向に貫通する貫通孔で構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【請求項5】
前記コネクタは、前記回路基板に対し垂直方向に起立するピンで構成された複数の端子を有し、
前記貫通孔の内周面は、前記各端子の外周面と離間している請求項4に記載の制御基板の製造方法。
【請求項6】
前記コネクタは、前記回路基板に対し垂直方向に起立するピンで構成された複数の端子と、該複数の端子を収納する筒状をなすハウジングとを有し、
前記貫通孔の内周面は、前記ハウジングの外周面と接しているかまたは離間している請求項4に記載の制御基板の製造方法。
【請求項7】
前記蓋部材は、厚さが前記端子の長さよりも大きい板状をなすものである請求項5または6に記載の制御基板の製造方法。
【請求項8】
前記蓋部材は、硬質の樹脂材料で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【請求項9】
前記制御基板は、前記蓋部材が接着剤を介して前記回路基板に固定されたものであり、
前記組立工程と前記装着工程との間に、前記蓋部材および前記組立体の前記回路基板のうちの少なくとも一方に前記接着剤を塗布する塗布工程を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【請求項10】
前記制御基板は、前記蓋部材の表側の面に金属材料で構成された板部材が設置されたものであり、
前記板部材は、前記装着工程では、前記蓋部材に設置済み状態となっている請求項1ないし9のいずれかに記載の制御基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の制御基板の製造方法により製造されたことを特徴とする制御基板。
【請求項12】
前記コネクタは、光を照射する光源に接続され、
前記半導体素子は、前記光源を制御するものである請求項11に記載の制御基板。
【請求項13】
当該制御基板は、自動車に搭載されるものであり、前記光源は、前記自動車のヘッドライトである請求項12に記載の制御基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−253948(P2011−253948A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127023(P2010−127023)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】