説明

制御対象物抽出装置および車両制御装置

【課題】制御対象物抽出装置において、マンホール等、先行車両の陰に入りうる物体であって制御対象物とすべきでない物体を確実に制御対象物から除外することができる技術を提供する。
【解決手段】車両制御システムにおいては、不要物体判定処理にて、監視対象領域に存在する1または複数の物体のうちから自車両に対して先行して走行する先行車両を抽出し、監視対象領域のうちの自車両と先行車両との間の領域である車両間領域に位置する1または複数の物体である対象物候補を抽出する(S420,S440)。さらに、各対象物候補のうちの追跡が開始されてからの時間を表す追跡時間が予め設定された追跡基準時間以上である対象物候補を制御対象物として抽出するよう設定し、追跡時間が追跡基準時間未満である対象物候補を制御対象物として抽出しないよう設定する(S510,S530,S570,S590)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が制御対象とする制御対象物を抽出する制御対象物抽出装置および車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両が物体と衝突することを防止したり、自車両の前方を先行して走行する先行車両との車間距離を一定に保って自動走行したりする際に、車両の制御を行うか否かの基準とする制御対象物(障害物や先行車両)を抽出する制御対象物抽出装置が知られている。このような制御対象物抽出装置においては、複数の物体を検出し、ある物体の周囲に設けた判定領域を他の物体が通過したときに、これらの物体のうちの絶対速度が小さな物体、または自車両に接近してくる物体を制御対象物から除外する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技術では、例えば、先行車両がマンホールの上を通過したときに、先行車両の周囲の判定領域を他の物体であるマンホールが通過したことを検出し、絶対速度が小さな物体、または自車両に接近してくる物体としてのマンホールを制御対象物から除外できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4210640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自車両および先行車両が直線道路を走行中の場合、マンホールは先行車両の陰に入るため、先行車両がマンホールを通過した後でしかマンホールを検出することができない。つまり、上記技術では、マンホールが先行車両の周囲の判定領域を通過した後でしかマンホールを検出できない虞があり、この場合には、判定領域を他の物体(マンホール)が通過したことを検出できない。よって、自車両においてマンホールを制御対象物から除外できない虞がある。
【0006】
そこで、制御対象物を抽出する制御対象物抽出装置において、マンホール等、先行車両の陰に入りうる物体であって制御対象物とすべきでない物体を確実に制御対象物から除外することができる技術を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の制御対象物抽出装置において、物体検出結果取得手段は、自車両の進行方向における監視対象領域に存在する1または複数の物体の検出結果を取得し、追跡手段は、過去における各物体の検出結果を参照して各物体の挙動を追跡する。そして、先行車両抽出手段は、1または複数の物体のうちから自車両に対して先行して走行する先行車両を抽出し、候補抽出手段は、監視対象領域のうちの自車両と先行車両との間の領域である車両間領域に位置する1または複数の物体である対象物候補を抽出する。さらに、対象物判定手段は、各対象物候補のうちの追跡手段によって追跡が開始されてからの時間を表す追跡時間が予め設定された追跡基準時間以上である対象物候補を制御対象物として抽出するよう設定し、追跡時間が追跡基準時間未満である対象物候補を制御対象物として抽出しないよう設定する。
【0008】
このような制御対象物抽出装置によれば、追跡基準時間以上検出されていた対象物候補、即ち車両間領域に相対移動する前から検出されていた物体については、自車両が衝突する可能性がある物体であるものとして制御対象物とする。また、追跡基準時間未満だけ検出されていた対象物候補、即ち車両間領域にて突然検出された物体については、先行車両の陰(車両の下)から出現した静止物であって、かつ先行車両同様、自車両もその物体と衝突することなくそのまま通過できるものとして、制御対象物とはしない。
【0009】
よって、マンホール等、先行車両の陰に入りうる物体であって制御対象物とすべきでない物体を確実に制御対象物から除外することができる。なお、先行車両抽出手段は、物体の位置、大きさ、形状、テールライトの有無等を検出する手段による検出結果に基づいて先行車両を抽出するようにすればよい。
【0010】
ところで、請求項1に記載の制御対象物抽出装置においては、請求項2に記載のように、対象物判定手段は、制御対象物として抽出しないように設定した対象物候補については、以後、前記制御対象物としては抽出しないようにしてもよい。
【0011】
このような制御対象物抽出装置によれば、一度、制御対象物として抽出しないよう設定した対象物候補についての追跡時間が追跡基準時間以上になったとしても、制御対象物として抽出しないようにすることができる。よって、制御対象物とすべきでない物体を確実に制御対象物から除外することができる。
【0012】
さらに、請求項1または請求項2に記載の制御対象物抽出装置においては、請求項3に記載のように、追跡手段による各物体の挙動の追跡結果に基づいて、各物体が静止しているか否かを判定する静止判定手段、を備え、候補抽出手段は、静止している対象物候補のみを抽出するようにしてもよい。
【0013】
このような制御対象物抽出装置によれば、静止している物体のみを制御対象物から除外することができる。従って、先行車両から何らかの物体が落下してきた場合等、静止していない物体については制御対象物として設定することができる。
【0014】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の制御対象物抽出装置においては、請求項4に記載のように、追跡手段による各物体の挙動の追跡結果に基づいて、各物体が自車両の走行車線上に位置する状態で車両間領域外から車両間領域内に進入したことを検出する進入検出手段を備えていてもよい。この場合には、対象物判定手段は、各対象物候補のうちの追跡時間が追跡基準時間以上である対象物候補であっても、進入検出手段によって進入したことが検出された物体である対象物候補を制御対象物として抽出しないよう設定すればよい。
【0015】
このような制御対象物抽出装置によれば、看板など、自車両の走行車線上(例えば先行車両の上方)を通過して車両間領域に進入した対象物候補は、先行車両が衝突することなく通過できているので自車両もそのまま通過できるものと判断する。つまり、制御対象物とはしない。よって、制御対象物をより精度よく検出することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、制御対象物の運動状態に応じて自車両の運動状態を制御する車両制御手段を備えた車両制御装置であって、制御対象物を抽出する手段として、請求項1〜請求項4の何れかに記載の制御対象物抽出装置を備えたことを特徴とする。
【0017】
このような車両制御装置によれば、制御対象物を精度よく検出することができるので、精度よく自車両の運動状態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】対象物抽出処理を示すフローチャート(a)、および除外処理を示すフローチャート(b)である。
【図3】先行車両抽出処理を示すフローチャートである。
【図4】不要物体判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1は本発明が適用された車両制御システム1の概略構成を示すブロック図である。車両制御システム1(車両制御装置)は、例えば乗用車等の車両(以下、「自車両」という。)に搭載されたシステムであって、図1に示すように、制御部10(制御対象物抽出装置)がカメラ21、レーダ22、レーザセンサ23と通信線5を介して接続されて構成されている。また、制御部10は、駆動対象30(車両制御手段)にも接続されている。
【0020】
なお、カメラ21、レーダ22、およびレーザセンサ23(以下、「レーダ22等」ともいう。)については、少なくとも何れかが備えられていればよい。カメラ21は、自車両の進行方向である前方を撮像可能に配置されており、撮像画像を制御部10に送る。
【0021】
また、レーダ22およびレーザセンサ23は、例えば周知のミリ波レーダやレーザセンサとして構成されており、電波や光波等の電磁波を自車両の前方に向けて放出し、その反射波を検出することによって前方物体の位置および形状を検出する。また、レーダ22およびレーザセンサ23は、物体の検出結果を制御部10に送る。
【0022】
制御部10は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコンとして構成されており、CPUがROMやRAMに格納されたプログラムに基づく処理を実施する。そして、処理結果に応じて、例えばブレーキやステアリング、シートベルト巻き上げモータ等のアクチュエータとして構成された駆動対象30を駆動させる。
【0023】
[本実施形態による処理]
このように構成された車両制御システム1においては、駆動対象30を駆動させるために、レーダ22等によって検出された物体のうちから自車両が制御対象とする制御対象物を抽出する処理を実施する。この処理について、図2以下の図面を用いて説明する。
【0024】
図2(a)は制御部10が実行する対象物抽出処理を示すフローチャート、図2(b)は対象物抽出処理のうちの除外処理を示すフローチャートである。また、図3は除外処理のうちの先行車両抽出処理を示すフローチャート、図4は除外処理のうちの不要物体判定処理を示すフローチャートである。
【0025】
対象物抽出処理は、イグニッションスイッチ等の車両の電源が投入されると開始され、その後、定期的(例えば、50msや100ms毎)に起動される処理である。なお、本処理が最初に実施されるときにおいて、本処理にて利用する各フラグおよびカウンタについては、全てクリア(0に設定)されているものとする。
【0026】
対象物抽出処理の詳細は、図2(a)に示すように、まず、自車両の進行方向における監視対象領域に存在する1または複数の物体の検出結果を、カメラ21、レーダ22、レーザセンサ23等取得する(S110:物体検出結果取得手段)。この際、車速センサ(図示省略)から車速の情報も取得する。
【0027】
なお、監視対象領域とは、レーダ22等が物体を検出できる領域を示す。また、カメラ21から撮像画像を取得する場合においては、別途、パターンマッチング等を利用して撮像画像中から物体を抽出する処理を実施しておき、この処理結果を取得する。
【0028】
続いて、レーダ22等から取得した自車両の前方に位置する物体過去における各物体の検出結果を参照して各物体の挙動を追跡して前方物体を確定する(S120:追跡手段)。この際、今回の物体検出結果をRAM等のメモリに記録しておく。
【0029】
そして、前方物体のうち、マンホールや橋梁の継ぎ目、或いは車両上方の看板や案内板等、車両が衝突することなくそのまま通過することができる物体や、車両の情報を通過する看板等の物体等、制御対象物として車両の運動状態を制御すると、自車両の乗員にとって却って煩わしくなる物体を除外する除外処理を実施する(S130)。なお、除外処理の詳細については後述する。
【0030】
続いて、前方物体のうちの不要物体として除外された物体(除外フラグが立てられた物体)以外の物体を、制御対象物として特定し、この結果をRAM等のメモリに格納して(S140)、対象物抽出処理を終了する。このような処理が終了すると、制御対象物との相対速度や相対的な位置等を考慮して、自車両と制御対象物との衝突可能性が演算され、必要に応じて駆動対象30を作動させる処理(車両の運動状態を制御する処理)が実施される。
【0031】
次に、除外処理について図2(b)を用いて説明する。除外処理では、まず、前方物体のうちから自車両に対して先行して走行する先行車両を抽出する処理である先行車両抽出処理を実施する(S210:先行車両抽出手段)。
【0032】
この先行車両抽出処理は、図3に示すように、まず、自車両が直進走行中であるか否かを判定する(S310)。具体的には、例えば、車速と走行路の推定半径とを利用して直進走行中であるか否かを判定する。なお、詳細なパラメータ値としては、車速が20km/h以上であって、かつ走行路の推定半径が1000m以上であるか否か等を判定すればよい。また、走行路の推定半径は、ステアリング角を検出するステアリングセンサ(図示省略)による検出結果や、カメラ21による撮像画像から走行路の外縁を示す白線を抽出する周知の処理によって求めればよい。
【0033】
自車両が直進走行中でなければ(S310:NO)、選択中の前方物体を先行車両の候補として検出した回数を表す先行車両カウンタJをリセット(0にセット)し(S340)、後述するS370の処理に移行する。また、自車両が直進走行中であれば(S310:YES)、各前方物体について先行車両条件が成立するか否かを判定する(S320)。
【0034】
ここで、先行車両条件とは、前方物体から先行車両を抽出するための条件であって、例えば、前方物体が自車両と同じ走行車線に存在する確率である自車線確率が50%以上であること、かつ前方物体自車両前方物体までの距離が所定範囲内(例えば10m〜100mの範囲内)であること、かつ移動している前方物体(絶対速度が2km/h以上の前方物体)であること、かつ自車両と以前の処理で既に制御対象物として抽出している物体であること、等を示す。
【0035】
先行車両条件が成立する物体がなければ(S320:NO)、先行車両カウンタJをリセットし(S340)、後述するS370の処理に移行する。また、先行車両条件が成立する物体があれば(S320:YES)、先行車両カウンタJをインクリメントし(S330)、先行車両カウンタJが5以上であるか否かを判定する(S350)。
【0036】
先行車両カウンタJが5以上であれば(S350:YES)、先行車両を抽出した旨を示す先行車両抽出フラグKをインクリメントし(S360)、先行車両抽出処理を終了する。また、先行車両カウンタJが5未満であれば(S350:NO)、先行車両抽出フラグKをリセットし、先行車両抽出処理を終了する。
【0037】
このような先行車両抽出処理が終了すると、図2(b)に戻り、先行車両が抽出されたか否かを判定する(S220)。具体的には、先行車両抽出フラグKが1であるか否かを判定する。先行車両が抽出されていなければ(S220:NO)、直ちに除外処理を終了する。
【0038】
一方、先行車両が抽出されていれば(S220:YES)、前方物体のうちの1つを選択し(S230)、この前方物体を不要物体判定処理を実施する(S240)。不要物体判定処理は、図4に示す。なお、不要物体判定処理においては、S420,S440の処理が本発明でいう候補抽出手段に相当し、S510,S530,S570〜S590の処理が対象物判定手段に相当する。また、S420の処理は、静止判定手段にも相当し、S420,S440,S510,S530の処理は、進入検出手段に相当する。
【0039】
不要物体判定処理では、まず、選択中の物体を前方物体として連続して検出した回数を表す物体検出カウンタLをインクリメントする(S410)。そして、除外候補条件が成立するか否かを判定する(S420)。
【0040】
ここで、除外候補条件とは、制御対象物として除外する可能性がある前方物体を抽出するための条件であって、前方物体の位置や運動状態、或いは追跡状態(連続検出回数)に応じて設定される。具体的に、除外候補条件が成立する場合とは、例えば、先行車両カウンタJが1以上であること、かつ物体検出カウンタLが2以上であること、かつ静止している前方物体(絶対速度が2km/h以上の前方物体)であることとの条件を満たし、かつ自車線確率が50%以上であること、または選択中の前方物体の横位置が先行車両の横位置から基準横位置距離未満であること、のうちの少なくとも一方の条件を満たすことを示す。
【0041】
なお、除外候補条件や、後述するS560の処理等において、カウンタ値が2以上のものを採用し、カウンタ値が1のものを採用しないようにしているのは、ノイズ等による誤検出を防止するためである。つまり、本実施形態では、2回以上連続して検出されれば、実際に物体が存在する蓋然性が高いものとし、物体として認識するようにしている。
【0042】
ただし、物体を認識する際のカウンタ値については、任意に設定することができる。また、上記の処理において、前方物体が静止していることを検出するには、各物体の挙動の追跡結果に基づいて判断すればよい。
【0043】
除外候補条件が成立しなければ(S420:NO)、後述する看板仮カウンタM、看板カウンタN、路面物カウンタPをリセットし(S430)、後述するS580の処理に移行する。また、除外候補条件が成立すれば(S420:YES)、選択中の前方物体までの距離と先行車両までの距離とを比較する(S440)。
【0044】
先行車両までの距離が選択中の前方物体までの距離未満であれば(S440:NO)、後に看板であると判定される可能性がある旨を示す看板仮カウンタMをインクリメントし(S450)、後述するS580の処理に移行する。なお、本処理では前方物体の挙動の追跡しつつ、S450の処理にて看板仮カウンタMをインクリメントしているので、次にS440の処理を実施したときに、この物体が自車両の走行車線上に位置する状態で車両間領域外から車両間領域内に進入したことを検出できるようにしている。
【0045】
また、先行車両までの距離が選択中の前方物体までの距離以上であれば(S440:YES)、選択中の前方物体は、監視対象領域のうちの自車両と先行車両との間の領域である車両間領域に位置する(対象物候補)。このような前方物体が、路面上に位置する路面物であるか、看板等、車両の上方に位置する物体であるか、或いはどちらとも特定できない物かを、以下の処理において判定する。
【0046】
まず、物体検出カウンタLが4以上であるか否かを判定する。物体検出カウンタLが4未満であれば(S510:NO)、先行車両の下から突然現れた物体である物と判断して路面物カウンタPをインクリメントし(S520)、S560の処理に移行する。また、物体検出カウンタLが4以上であれば(S510:YES)、看板仮カウンタMおよび看板カウンタNの値を判定する(S530)。
【0047】
看板仮カウンタMが2未満であって、かつ看板カウンタNが2未満であれば(S530:NO)、後述するS580の処理に移行する。また、看板仮カウンタMが2以上であって、または看板カウンタNが2以上であれば(S530:YES)、看板カウンタNをインクリメントし(S540)、路面物カウンタPと看板カウンタNの値を判定する(S560)。
【0048】
路面物カウンタPまたは看板カウンタNが2以上であれば(S560:YES)、車両間領域に位置する前方物体が路面物や看板等の制御対象物とすべきでない不要物体であると判断し、制御対象物から除外する旨の除外フラグQを1にセットし(S570)、不要物体判定処理を終了する。また、路面物カウンタPおよび看板カウンタNがそれぞれ2未満であれば(S560:NO)、除外フラグQの状態を判定する(S580)。
【0049】
除外フラグQが1にセットされていれば(S580:YES)、除外フラグQを1のままにセットして(S570)、不要物体判定処理を終了する。また、除外フラグQが0にセットされていれば(S580:NO)、除外フラグQを0のままにセットして(S590)、不要物体判定処理を終了する。
【0050】
このような不要物体判定処理が終了すると、図2(b)に戻り、全ての前方物体を選択したか否かを判定する(S250)。何れかの前方物体を選択していなければ(S250:NO)、未選択の前方物体のうちの何れかの前方物体を選択し(S260)、S240以下の処理を繰り返す。
【0051】
また、全ての前方物体を選択していれば(S250:YES)、除外処理を終了する。
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した車両制御システム1において、制御部10は、対象物抽出処理にて、自車両の進行方向における監視対象領域に存在する1または複数の物体の検出結果を取得し、過去における各物体の検出結果を参照して各物体の挙動を追跡する。そして、制御部10は、1または複数の物体のうちから自車両に対して先行して走行する先行車両を抽出し、監視対象領域のうちの自車両と先行車両との間の領域である車両間領域に位置する1または複数の物体である対象物候補を抽出する。
【0052】
さらに、制御部10は、各対象物候補のうちの追跡が開始されてからの時間を表す追跡時間(物体検出カウンタLの値)が予め設定された追跡基準時間(L=4)以上である対象物候補を制御対象物として抽出するよう設定し、追跡時間が追跡基準時間未満である対象物候補を制御対象物として抽出しないよう設定する。
【0053】
このような車両制御システム1によれば、追跡基準時間以上検出されていた対象物候補、即ち車両間領域に相対移動する前から検出されていた物体については、自車両が衝突する可能性がある物体であるものとして制御対象物とする。また、追跡基準時間未満だけ検出されていた対象物候補、即ち車両間領域にて突然検出された物体については、先行車両の陰(車両の下)から出現した静止物であって、かつ先行車両同様、自車両もそのままその物体と衝突することなく通過できるものとして、制御対象物とはしない。
【0054】
よって、マンホール等、先行車両の陰に入りうる物体であって制御対象物とすべきでない物体を確実に制御対象物から除外することができる。
また、車両制御システム1において、制御部10は、制御対象物として抽出しないように設定した対象物候補については、原則として、以後、前記制御対象物としては抽出しない。
【0055】
このような車両制御システム1によれば、一度、制御対象物として抽出しないよう設定した対象物候補についての追跡時間が追跡基準時間以上になったとしても、制御対象物として抽出しないようにすることができる。よって、制御対象物とすべきでない物体を確実に制御対象物から除外することができる。
【0056】
さらに、車両制御システム1において、制御部10は、各物体の挙動の追跡結果に基づいて、各物体が静止しているか否かを判定し、静止している対象物候補のみを抽出する。
このような車両制御システム1によれば、静止している物体のみを制御対象物から除外することができる。
【0057】
また、車両制御システム1において、制御部10は、各物体の挙動の追跡結果に基づいて、各物体が自車両の走行車線上に位置する状態で車両間領域外から車両間領域内に進入したことを検出する。そして、各対象物候補のうちの追跡時間が追跡基準時間以上である対象物候補であっても、自車両の走行車線上に位置する状態で車両間領域外から車両間領域内に進入したことが検出された物体である対象物候補を制御対象物として抽出しないよう設定する。
【0058】
このような車両制御システム1によれば、看板など、自車両の走行車線上(例えば先行車両の上方)を通過して車両間領域に進入した対象物候補は、先行車両が通過できているので自車両もそのまま通過できるものと判断する。つまり、制御対象物とはしない。よって、制御対象物をより精度よく検出することができる。
【0059】
また、車両制御システム1においては、制御対象物の運動状態に応じて自車両の運動状態を制御する駆動対象30を備えている。
このような車両制御システム1によれば、制御対象物を精度よく検出することができるので、精度よく自車両の運動状態を制御することができる。
【0060】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0061】
例えば、上記実施形態において、先行車両条件や除外候補条件については、任意に設定することができる。また、各判定における閾値についても、各処理が実行される周期等に応じて最適な値を選択することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…車両制御システム、5…通信線、10…制御部、21…カメラ、22…レーダ、23…レーザセンサ、30…駆動対象。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が制御対象とする制御対象物を抽出する制御対象物抽出装置であって、
自車両の進行方向における監視対象領域に存在する1または複数の物体の検出結果を取得する物体検出結果取得手段と、
過去における各物体の検出結果を参照して各物体の挙動を追跡する追跡手段と、
前記1または複数の物体のうちから自車両に対して先行して走行する先行車両を抽出する先行車両抽出手段と、
前記監視対象領域のうちの自車両と先行車両との間の領域である車両間領域に位置する1または複数の物体である対象物候補を抽出する候補抽出手段と、
前記各対象物候補のうちの前記追跡手段によって追跡が開始されてからの時間を表す追跡時間が予め設定された追跡基準時間以上である対象物候補を前記制御対象物として抽出するよう設定し、前記追跡時間が前記追跡基準時間未満である対象物候補を前記制御対象物として抽出しないよう設定する対象物判定手段と、
を備えたことを特徴とする制御対象物抽出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御対象物抽出装置において、
前記対象物判定手段は、前記制御対象物として抽出しないように設定した対象物候補については、以後、前記制御対象物としては抽出しないこと
を特徴とする制御対象物抽出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御対象物抽出装置において、
前記追跡手段による各物体の挙動の追跡結果に基づいて、前記各物体が静止しているか否かを判定する静止判定手段、を備え、
前記候補抽出手段は、静止している対象物候補のみを抽出すること
を特徴とする制御対象物抽出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の制御対象物抽出装置において、
前記追跡手段による各物体の挙動の追跡結果に基づいて、前記各物体が自車両の走行車線上に位置する状態で前記車両間領域外から前記車両間領域内に進入したことを検出する進入検出手段、を備え、
前記対象物判定手段は、前記各対象物候補のうちの前記追跡時間が前記追跡基準時間以上である対象物候補であっても、前記進入検出手段によって進入したことが検出された物体である対象物候補を前記制御対象物として抽出しないよう設定すること
を特徴とする制御対象物抽出装置。
【請求項5】
制御対象物の運動状態に応じて自車両の運動状態を制御する車両制御手段を備えた車両制御装置であって、
前記制御対象物を抽出する手段として、請求項1〜請求項4の何れかに記載の制御対象物抽出装置を備えたこと
を特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−18214(P2011−18214A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162774(P2009−162774)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】