説明

制御装置、制御方法、および制御プログラム

【課題】通信装置が無線通信可能な複数の基地局のうち、スループット値の相対値が大きい基地局に通信装置を帰属させることができる制御装置、制御方法、および制御プログラムが望まれていた。
【解決手段】複数のBSと無線通信可能なMSを制御する制御装置1であって、MSがBSから受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求めるスループット演算部12と、MSが無線通信可能な複数のBSのうち、スループット値の相対値が大きいBSに当該MSが帰属するように、MSの通信確立動作及びHO実行動作の少なくとも一方を制御する制御部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局と無線通信可能な通信装置を制御する制御装置、制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信によって広域にブロードバンド・サービスを提供することが可能となるアクセス手段として制定された標準規格の1つとして、IEEE 802.16標準がある。
現在、IEEE802.16 Working Groupにおいて、固定通信用途向けのIEEE 802.16-2004仕様と、モバイル通信用途向けのIEEE 802.16e仕様とが標準化されている(非特許文献1および2参照)。
【0003】
また、WiMAXフォーラムにおいて、IEEE 802.16-2004/IEEE 802.16e標準に準拠した機器に対するプロファイルの策定や認証が行われている。そしてこれらの標準に準拠した無線通信システムはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)と称されている。
IEEE 802.16-2004/IEEE 802.16e標準では、いずれも物理層を規定しており、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)やOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)等の技術が主に使用される。
OFDMA方式を採用する場合の特徴は、各サブキャリアをサブセット化して複数の論理サブチャネルに分割して扱い、各ユーザーにサブチャネルを割り当てることで、TDM(Time Division Multiplex)に加えてFDM(Frequency Division Multiplex)を併用した多元接続を実現している(非特許文献3参照)。
【0004】
また、モバイル通信においては、通信装置(Mobile Station、以下「MS」ともいう。)が複数の基地局(Base Station、以下「BS」ともいう。)で構成されるエリアを移動するなどの状況変化に対して、通信を行っている基地局から隣接する基地局に無線インターフェースを切り替えることで、通信の維持および通信品質の確保を行う機能として、ハンドオーバー(Handover、以下「HO」ともいう。)機能がある(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE Std 802.16-2004
【非特許文献2】IEEE Std 802.16e-2005
【非特許文献3】服部武、藤岡雅宣編著、「改訂版ワイヤレス・ブロードバンド教科書 高速IPワイヤレス編」、株式会社インプレスR&D、2006年6月、p.160−212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の通信装置の通信を多重化する無線通信においては、1つの基地局に帰属する通信装置の数が増加するにしたがってスループット(伝送速度)が低下する、という問題点があった。
【0007】
例えば通信装置がハンドオーバーを実行した場合、ハンドオーバー後の帰属先の基地局に多数の通信装置が帰属していた場合などは、ハンドオーバー後のスループットがハンドオーバー前より低下することがある、という問題点があった。
【0008】
また、OFDM変調信号を利用し、1つの基地局と複数の通信装置との通信を多重化する方式により無線通信を行う場合、1つの通信装置に割り当てられるデータ領域は、OFDM変調信号に多重化される通信の数によって動的に変化する。この場合、通信装置と基地局との間の現在の通信状態におけるスループット値を求めることができない、という問題点があった。
【0009】
したがって、通信装置が無線通信可能な複数の基地局のうち、スループット値の相対値が大きい基地局に通信装置を帰属させることができる制御装置、制御方法、および制御プログラムが望まれていた。
また、ハンドオーバーに伴うスループットの低下を防ぐことができる制御装置、制御方法、および制御プログラムが望まれていた。
また、OFDM変調信号に多重化される通信の数が動的に変化する場合でも、通信装置と基地局との間の現在の通信状態におけるスループット値を求めることができる制御装置、制御方法、および制御プログラムが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る制御装置は、複数の基地局と無線通信可能な通信装置を制御する制御装置であって、前記通信装置が前記基地局から受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求めるスループット演算部と、前記通信装置が無線通信可能な前記複数の基地局のうち、前記スループット値の相対値が大きい基地局に当該通信装置が帰属するように、前記通信装置の通信確立動作及びハンドオーバー実行動作の少なくとも一方を制御する制御部とを備えたものである。
【0011】
本発明に係る制御方法は、複数の基地局と無線通信可能な通信装置を制御する制御方法であって、前記通信装置が前記基地局から受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求めるステップと、前記通信装置が無線通信可能な前記複数の基地局のうち、前記スループット値が最大の基地局に当該通信装置が帰属するように、前記通信装置の通信確立動作及びハンドオーバー実行動作の少なくとも一方を制御するステップとを有するものである。
【0012】
本発明に係る制御プログラムは、上記の制御方法をコンピュータに実行させるものである。
【0013】
本発明に係るスループット算出装置は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調信号を利用し、1つの基地局と複数の通信装置との通信を多重化する方式による無線通信のスループットを算出するスループット算出装置であって、前記通信装置が前記基地局から受信した前記OFDM変調信号のうち、1つの通信装置の通信に割り当てられたサブキャリア数及び時間領域に基づいて、単位時間当たりに1つの通信装置が送信又は受信するOFDMシンボル数であるシンボルレートを求め、前記シンボルレートに基づき、前記スループット値を求めるスループット演算部を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、通信装置が基地局から受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求め、通信装置が無線通信可能な複数の基地局のうち、スループット値の相対値が大きい基地局に当該通信装置が帰属するように、通信装置の通信確立動作及びハンドオーバー実行動作の少なくとも一方を制御する。
このため、通信装置が無線通信可能な複数の基地局のうち、スループット値の相対値が大きい基地局に通信装置を帰属させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係る制御装置及びMSの構成図である。
【図2】MSによるハンドオーバーを説明する図である。
【図3】MSのハンドオーバーの実行によるスループット低下を説明する図である。
【図4】実施の形態1に係る制御装置及びMSの動作シーケンスを示す図である。
【図5】OFDMAフレーム構造を示す図である。
【図6】OFDMAフレームにおいてバーストを構成するシンボル数を説明する図である。
【図7】WiMAXにおいて1秒間に送受信するフレーム数を説明する図である。
【図8】実施の形態2に係る制御装置及びMSの構成図である。
【図9】実施の形態2に係る制御装置及びMSの動作シーケンスを示す図である。
【図10】実施の形態3に係る制御装置及びMSの構成図である。
【図11】実施の形態4に係るスループット算出装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る制御装置及びMSの構成図である。
図1に示すように、制御装置1は、通信制御部11、スループット演算部12、スループット比較部13、前回スループット記憶部14、HO制御部15、HOリトライカウンタ16、HO待ちタイマ17、及びメッセージ送受信部18を備えている。
制御装置1は、例えばPC(Personal Computer)に搭載され、I/F19を介してMS(Mobile Station)と接続される。
本実施の形態における制御装置1は、MSのハンドオーバーの実行を制御するものである。
【0017】
MSは、メッセージ送受信部22、WiMAX通信制御部21、及びI/F23を備えている。
このMSは、無線通信方式として、例えばIEEE 802.16-2004/IEEE 802.16e標準に準拠したWiMAXを適用し、基地局(BS)と無線通信可能である。
【0018】
なお、「スループット比較部13」、「HO制御部15」、「HOリトライカウンタ16」、及び「HO待ちタイマ17」は、本発明における「制御部」に相当する。
また、「前回スループット記憶部14」は、本発明における「記憶部」に相当する。
また、「MS」は、本発明における「通信装置」に相当する。
【0019】
なお、本実施の形態では、制御装置1をPCに搭載する場合について説明するが本発明はこれに限るものではない。例えば、制御装置1をMSに内蔵するようにしても良いし、制御装置1の機能のみを備えた機器としても良い。また、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)に搭載しても良い。
【0020】
通信制御部11は、制御装置1とMSとの間でデータ通信するための制御を行う。また、通信制御部11はMSがBSから受信した通信情報を取得する。
スループット演算部12は、通信制御部11が取得した通信情報の少なくとも一部に基づいてスループット値を求める。なお、スループット値の算出動作については後述する。
スループット比較部13は、HO(ハンドオーバー)前のスループット値と、HO後のスループット値とを比較する。
前回スループット記憶部14は、HO前のスループット値を記憶する。前回スループット記憶部14は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置で構成することができる。
【0021】
HO制御部15は、スループット比較結果に基づいてHO再実行の制御を行う。
HOリトライカウンタ16は、HOリトライ数をカウントし、最大値に達した場合、HO制御部15に通知する。
HO待ちタイマ17は、HO制御部15がMSに対してHO再実行要求を行った場合、MSからのHO再実行通知を受信するまでのタイマの計時を行う。
メッセージ送受信部18は、MSとの間でHO実行に関するメッセージのやり取りを行う。また、メッセージ送受信部18は、MSに対して、HOの再実行要求を送出する。
動作の詳細は後述する。
【0022】
なお、制御装置1を構成する通信制御部11、スループット演算部12、スループット比較部13、HO制御部15、HOリトライカウンタ16、HO待ちタイマ17、メッセージ送受信部18は、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置(コンピュータ)上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
ソフトウェアとして実現する場合は、HDD(Hard Disk Drive)等にこれら各部の機能を実現するプログラムを格納しておき、マイコンやCPU等の演算装置がそのプログラムを読み込んで、プログラムの指示に従って各部の機能に相当する処理を実行するように構成することができる。
【0023】
I/F19及びI/F23は、制御装置1とMSとの間を有線又は無線で接続し、制御装置1とMSとの間でデータの授受をする。
I/F19及びI/F23に適用されるインターフェース規格としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)を用いる。
なお、これに限らず、赤外線通信(IrDA規格)、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(IEEE 802.11シリーズ等)などを用いても良い。
【0024】
メッセージ送受信部22は、制御装置1との間でHO実行に関するメッセージのやり取りを行う。
WiMAX通信制御部21は、IEEE 802.16-2004/IEEE 802.16e標準に準拠して、WiMAX通信の制御を行う。
つまり、WiMAX通信制御部21は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調信号を利用し、1つの基地局と複数のMSとの通信を多重化するOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Acc)方式により無線通信を行う。
また、WiMAX通信制御部21は、後述する動作により、制御装置1から「HO再実行要求」を受信すると、HOを実行する。
【0025】
以上、本実施の形態における制御装置1及びMSの構成について説明した。
次に、MSが実行するHOと、HOに伴うスループットの低下について説明する。
【0026】
図2MSによるハンドオーバーを説明する図である。
図3MSのハンドオーバーの実行によるスループット低下を説明する図である。
なお、図2及び図3においては、PCに接続された状態のMSを示している。
【0027】
例えば図2に示すように、WiMAXネットワークにおいて、あるBS(基地局A)に帰属するMSが、その帰属先の基地局よりも信号品質の高いBS(基地局B)を見つけた場合や、その帰属先のBS(基地局A)の信号品質がしきい値を下回った場合、HOの実行契機(トリガー)として、隣接するBS(基地局B又は基地局C)にHOを実行する。
信号品質の尺度としてはRSSI(Receive Signal Strength Indicator)や、CINR(Carrier-to-Interference and Noise Ratio)が用いられる。
【0028】
ここで、WiMAXが採用するOFDMAでは、OFDM変調信号におけるサブキャリアをサブセット化して複数のサブチャネルに分割する。そしてリソース割当ては、このサブチャネルに時間スロットを組み合わせた単位(サブチャネルごとのシンボルの最小単位)を複数組み合わせて、各MSからのデータ(ユーザーデータ)の多重化が行われる。
【0029】
このため、例えば図3に示すように、HO先のBS(基地局B)に多数のMSが帰属していた場合などは、HO前よりHO後のスループット(伝送速度)が低下する場合がある。
すなわち、1つのBSに帰属するMSの数が増加するに従い、1つのMSの通信に割り当てられるデータ領域は減少することになり、スループットは低下することになる。
【0030】
このようなHOの実行によるスループット低下を回避する動作について次に説明する。
【0031】
図4は実施の形態1に係る制御装置及びMSの動作シーケンスを示す図である。
以下、図4の各ステップに基づいて説明する。
【0032】
(S101)
通常のWiMAX通信動作中において、制御装置1のスループット演算部12は、通信制御部11が取得した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値Ttを算出する。算出動作の詳細は後述する。
スループット演算部12は、所定時間Δt秒間におけるスループット値の平均値を計算する。そして、スループット演算部12は、当該平均値を、HO実行前の平均スループット値T’avgとして、前回スループット記憶部14に記憶させる。
ここで、Δtの値は、例えば任意の時間(例えば1秒)を予め設定する。
なお、Δtの値は、これに限らず、例えば、IEEE802.16標準に規定されている通信にかかわる所定の時間に応じた時間に設定するようにしても良い。例えば、通信信号の送出間隔や、1フレーム当たりの時間間隔などを基準とした値にしても良い。
【0033】
(S102)
次に、制御装置1のHO制御部15は、MSから「HO実行通知」を受信したか否かを判断する。
「HO実行通知」を受信しない場合、ステップS101に戻り、定期的にHO実行前の平均スループット値T’avgを更新する。
【0034】
(S201)
一方、MSのWiMAX通信制御部21は、通常のWiMAX通信動作中において、常時又は定期的に信号品質を検出する。そして、MSのWiMAX通信制御部21は、現在帰属しているBSよりもRSSI、CINR値が高い隣接BSを見つけた場合、HOを実行する。
【0035】
(S202)
HOを実行したMSのメッセージ送受信部22は、I/F23及びI/F19を介して、制御装置1に対して、「HO実行通知」を送信する。
制御装置1のメッセージ送受信部18は、MSからの「HO実行通知」を受信し、当該情報をHO制御部15に入力する。
【0036】
(S103)
HO制御部15は、「HO実行通知」を取得すると、HOリトライカウンタ16のHOリトライカウントnの初期値として「1」を設定する。
【0037】
(S104)
次に、スループット演算部12は、通信制御部11が取得した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値Ttを算出する。すなわち、MSがHOを実行したとき、当該HO後のスループット値を求める。算出動作の詳細は後述する。
そして、スループット演算部12は、所定時間Δt秒間におけるスループット値の平均値Tavgを計算する。
ここで、Δtの値は、例えば任意の時間(例えば1秒)を予め設定する。
なお、Δtの値は、これに限らず、例えば、IEEE802.16標準に規定されている通信にかかわる所定の時間に応じた時間に設定するようにしても良い。例えば、通信信号の送出間隔や、1フレーム当たりの時間間隔などを基準とした値にしても良い。
【0038】
(S105)
次に、スループット比較部13は、スループット演算部12が算出したHO後のスループット値の平均値Tavgと、前回スループット記憶部14に記憶されたHO前のスループット値の平均値T’avgとを比較する。
そして、HO制御部15は、HO後のスループット値の平均値Tavgが、HO前のスループット値の平均値T’avgより小さいか否かを判断する。
平均値Tavgが平均値T’avgより小さくない場合、ステップS112に進む。
【0039】
(S106)
一方、平均値Tavgが平均値T’avgより小さい場合、制御装置1のHO制御部15は、HO前に帰属していたBSのエリアよりもスループットが低下したと判断する。
そして、HO制御部15は、HOリトライカウントnが、HOリトライカウント最大値NHO以下であるか否かを判断する。このHOリトライカウント最大値NHOとしては、予め任意の値を設定する。
HOリトライカウントnが、HOリトライカウント最大値NHO以下でない場合、ステップS112に進む。
【0040】
(S107)
一方、HOリトライカウントnが、HOリトライカウント最大値NHO以下である場合、HO制御部15は、メッセージ送受信部18からMSに対して「HO再実行要求」を送信させる。これにより、MSに再度のHOを実行させる。
【0041】
(S108)
次に、HO制御部15は、HO待ちタイマ17をスタートさせる。このHO待ちタイマ17のタイマ値の初期値としては、予め任意の値を設定する。
【0042】
(S203)
MSのメッセージ送受信部22は、制御装置1からの「HO再実行要求」を受信する。
MSのWiMAX通信制御部21は、「HO再実行要求」を取得すると、HOを再実行する。
なお、当該MSが帰属するBS以外に隣接するBSがない場合や、当該MS帰属するBSより通信品質が高いBSがない場合などは、HOの実行は行われない。
【0043】
(S204)
WiMAX通信制御部21がHOを実行した場合、MSのメッセージ送受信部22は、制御装置1に対して、「HO再実行通知」を送信する。
制御装置1のメッセージ送受信部18は、MSからの「HO再実行通知」を受信した場合、当該情報をHO制御部15に入力する。
【0044】
(S109)
HO制御部15は、「HO再実行通知」を取得すると、HO待ちタイマ17のタイマ動作をストップさせる。
【0045】
(S110)
次に、HO制御部15は、HOリトライカウンタ16のHOリトライカウントnをインクリメントする。
【0046】
(S111)
次に、HO制御部15は、HO待ちタイマ17がタイムアウトしたか否かを判断する。
タイムアウトしていない場合、すなわち、HO待ちタイマ以内にMSから「HO再実行通知」を受け取った場合、ステップS104に戻り、再び、HO後のスループット値の平均値Tavgを計算する。
そして、TavgがT’avg以上となるか、又はnがNHOよりも大きくなるまでステップS104〜S111の動作を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS111において、HO待ちタイマ17がタイムアウトした場合、すなわち、HO待ちタイマ以内にMSがHOの再実行を行わず、「HO再実行通知」を受け取れない場合、ステップS112に進む。
【0048】
(S112)
HO制御部15は、前回スループット記憶部14に記憶されたHO前のスループット値の平均値T’avgを、HO後のスループット値の平均値Tavgで更新する。
そして、制御装置1及びMSは、通常のWiMAX通信動作に遷移する。
【0049】
このような動作により、MSによりHOが実行された場合、HO後のスループット値がHO前のスループット値より大きくなるまで、HOの再実行を繰り返すことになる。すなわち、MSが無線通信可能なBSのうち、スループット値の相対値が大きいBSにMSが帰属することになる。
これにより、HOの実行によるスループット低下を回避することができる。
【0050】
また、HOの再実行の回数がHOリトライカウント最大値NHOを超えた場合、又はHO待ちタイマ以内にHOの再実行がされない場合には、HOの再実行を停止することになる。
これにより、隣接するBSの中に、HO前のスループット値より大きくなるBSが存在しない場合には、HOの再実行要求を停止させて通常のWiMAX通信動作に遷移させることができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、無線通信方式がWiMAXの場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、PDC(Personal Digital Cellular)、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)等の携帯電話方式やPHS(Personal Handyphone System)など、HOを実行す任意の無線通信方式に本発明を適用することができる。この場合においても、制御装置1は、無線通信方式に応じた算出方法によりスループット値を求め、上記と同様の動作により、スループット低下を回避することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、所定時間Δt秒間におけるスループット値の平均値を用いて、HO前後のスループット値の比較を行う場合を説明したが、本発明はこれに限らずスループットの瞬時値を用いても良い。
【0053】
次に、スループット演算部12によるスループット値の算出動作の詳細について説明する。
【0054】
WiMAXにおけるスループットの計算は、IEEE802.16-2004/16e規格に基づくと、以下の式(1)となる。
【0055】
スループット=(シンボル・レート)×(1シンボル当たりのビット数)×(符号化率)(単位:bps) ・・・(1)
【0056】
ここで、式(1)において、「シンボルレート」は、1秒間当たりにMSが送受信するOFDMシンボル数である。また、「1シンボル当たりのビット数」は、OFDMシンボル1つのシンボルが持つビット数である。また、「符号化率」は、情報ビット数と符号化後のビット数の割合である。
【0057】
しかし、「シンボルレート」は、OFDM変調信号に多重化される通信の数によって動的に変化する。
このため、HOの前後により動的に変化するシンボルレートを求めるために上記式(1)を適用するには、MSが帰属するBSとの通信に用いるOFDM信号のシンボルレートを動的に算出する必要がある。
このようなことから、本実施の形態における制御装置1のスループット演算部12は、以下のような算出動作により、スループットを算出する。
【0058】
まず、制御装置1の通信制御部11は、MSがBSから受信した通信情報を取得する。
そして、制御装置1のスループット演算部12は、通信制御部11が取得した通信情報の少なくとも一部に基づき、以下の式(2)により、シンボルレートを算出する。
【0059】
シンボルレート=(1フレームに含まれるシンボル数)×(1秒間に送受信するフレーム数) ・・・(2)
【0060】
上記式(2)の「1フレームに含まれるシンボル数」は、後述するOFDMAにおける1フレーム中のDL−MAP、UL−MAPの情報によって、当該MSに割り当てられたバースト領域、及びバーストを構成するシンボルの数から求める。
ここで、OFDMA方式におけるフレーム構造の一例について図5により説明する。
【0061】
図5はOFDMAフレーム構造を示す図である。
図5において、横軸はシンボル単位で表される時間方向を示している。また、縦軸は論理サブチャネル(複数のサブキャリアをグループ化した単位)で表される周波数方向を示している。
なお、図5は復信方式にTDD(Time Division Duplex)を採用した例である。また、フレームの前半がDLサブフレーム、後半がULサブフレームに時分割されている。
DLサブフレームは、BSからMSへ送信されるフレームである。
ULサブフレームは、MSからBSへ送信されるフレームである。
【0062】
DLサブフレームには、プリアンブル、DL−MAP、UL−MAP及びDL Burstの各領域が用意されている。
【0063】
プリアンブルは、MSがBSを検出し、BSが送信するフレームに同期するために用いられる既知の信号パターン(同期信号)である。
【0064】
DL−MAP及びUL−MAPは、DLサブフレーム及びULサブフレームのバースト(DL Burst、UL Burst)のMSに対する割当情報が含まれる信号である。
具体的には、論理サブチャネル数(周波数領域)を示す「No_subchannel」と、OFDMシンボル数(時間領域)を示す「No_OFDM_symbols」の2つのパラメータが含まれてる。
図5に示す例では、DLサブフレームに、#1〜#4の4つのDL Burstが割り当てられる様子を示している。
【0065】
なお、DL−MAPの一部には、図示しないFCH(Frame Control Header)が割り当てられる。FCHは、BSに関する情報やMSがDLサブフレームのバーストを復号するのに用いる情報を規定する信号であり、DL−MAPのDLサブフレームにおけるマッピング領域、符号化方式、繰り返し回数等の情報が含まれる。
【0066】
ULサブフレームには、複数のUL Burstをマッピングすることが可能であり、UL Burstには、MSからBS宛のデータをマッピングすることが可能である。
図5に示す例では、ULサブフレームに、#1〜#4の4つのUL Burstが割り当てられる様子を示している。
なお、UL Burstの一部をMSがBSに対して初期接続を行う場合等に用いられるレンジングサブチャネルとして割り当てることも可能である。
【0067】
なお、「DLサブフレーム」は、本発明における「下りサブフレーム」に相当する。
また、「DL Burst」は、本発明における「下りサブフレーム内で1つの通信装置に割り当てられたデータ領域」に相当する。
また、「ULサブフレーム」は、本発明における「上りサブフレーム」に相当する。
また、「UL Burst」は、本発明における「上りサブフレーム内で1つの通信装置に割り当てられたデータ領域」に相当する。
また、「No_subchannel」及び「No_OFDM_symbols」は、本発明における「データ領域の情報」に相当する。
【0068】
上記のようなOFDMAフレーム構造においては、1つのフレーム内で1つのMSに割り当てられたOFDMシンボル数は、「No_subchannel」に示される論理サブチャネル数と、「No_OFDM_symbols」に示されるOFDMシンボル数とを乗算することで求めることができる。
一例を図6により説明する。
【0069】
図6はOFDMAフレームにおいてバーストを構成するシンボル数を説明する図である。
図6においては、図5のフレーム構造の例において、DL Burst#1に割り当てられたシンボル数を示している。
図6の例では、「No_subchannel」に示される論理サブチャネル数は「3」である。また、「No_OFDM_symbols」に示されるOFDMシンボル数は「5」である。
よって、図6の例では、DL Burst#1を構成するシンボル数が、3×5=15シンボルであることが求まる。
【0070】
このように、制御装置1のスループット演算部12は、DL−MAP及びUL−MAPを参照することで、当該MSに割り当てられたバースト領域、及びこのバーストを構成するシンボル数を求めることができる。
【0071】
次に、上記式(2)における「1秒間に送受信するフレーム数」について、図7を用いて説明する。
【0072】
図7はWiMAXにおいて1秒間に送受信するフレーム数を説明する図である。
WiMAXにおける1フレームの長さは、IEEE802.16-2004/16e規格により5msと規定されている。
このため、図7に示すとおり、1秒間に200フレームを送受信することができる。
そのため、WiMAXにおける「1秒間に送受信するフレーム数」は、200(定数)となる。
【0073】
このように、スループット演算部12は、現在の通信状態において、MSが単位時間当たり送受信するOFDMシンボル数であるシンボルレートを求めることができる。
【0074】
次に、制御装置1のスループット演算部12は、上記式(1)における「1シンボル当たりのビット数」を求める。
この「1シンボル当たりのビット数」は、変調多値数に基づき以下の式(3)により求めることができる。
【0075】
1シンボル当たりのビット数=log2(変調多値数) ・・・(3)
【0076】
上記式の変調多値数は、変調方式から知ることができ、変調方式はMACメッセージ”DCD”から知ることができる。
ここで、「MACメッセージ」とは、BSがMSに対してブロードキャストする物理層のプロファイル仕様を示したメッセージである。
【0077】
そこで、スループット演算部12は、MSが受信したMACメッセージを、通信制御部11から取得することで変調方式を得る。
そして、この変調方式により変調多値数を求める。
例えば、変調方式が64QAMの場合、変調多値数は64であるから、1シンボル当たりのビット数=log264=6ビットとなる。
【0078】
次に、制御装置1のスループット演算部12は、上記式(1)における「符号化率」を求める。
この符号化率とは、情報ビット数と符号化後のビット数の割合である。
この符号化率についても、MACメッセージ”DCD”から知ることができる。
【0079】
そこで、スループット演算部12は、MSが受信したMACメッセージを、通信制御部11から取得することで符号化率を得る。
例えば、符号化率が3/4である場合、送受信される4ビットのうち、3ビットが情報ビット、1ビットが誤り訂正用ビットという意味になる。
【0080】
以上により、スループット演算部12は、求めた各パラメータを上記式(1)に代入することで、以下の式(4)により、スループット値を求めることができる。
【0081】
スループット=No_subchannel×No_OFDM_symbols×200×log2(変調多値数)×符号化率 ・・・(4)
【0082】
このようなスループットの算出動作により、OFDM変調信号に多重化される通信の数によってシンボルレートが動的に変化する場合でも、当該MSとBSとの間の現在の通信状態におけるスループット値を求めることが可能となる。
【0083】
なお、上記の説明では、WiMAXが採用するOFDMA方式におけるフレーム構造によるスループットの算出動作を説明したが、本発明はこれに限るものではない。
BS及びMSがOFDM変調信号を利用し、1つの基地局と複数のMSとの通信を多重化する方式により無線通信を行う場合であれば、本発明を適用することができる。
つまり、スループット演算部12は、OFDM変調信号のうち、1つのMSの通信に割り当てられたサブキャリア数及び時間領域に基づいて、単位時間当たりに1つのMSが送信又は受信するOFDMシンボル数であるシンボルレートを求めることができる。そして、通信方式に応じて、変調多値数、符号化率なども求めることで、シンボルレートに基づき、スループット値を求めることができる。
【0084】
以上のように本実施の形態においては、MSがBSから受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求め、MSが無線通信可能なBSのうち、スループット値の相対値が大きいBSに当該MSが帰属するように、MSのHOの実行動作を制御する。
このため、MSが無線通信可能なBSのうち、スループット値の相対値が大きいBSにMSを帰属させることができる。
【0085】
また、MSがHOを実行したとき、当該HO後のスループット値を求め、HO後のスループット値と、HO前のスループット値とを比較し、HO後のスループット値が、HO前のスループット値より小さいとき、MSに再度のHOを実行させる。
このため、HOに伴うスループットの低下を防ぐことができる。
【0086】
また、MSがBSから受信した通信情報のうち、DL−MAPの情報と、UL−MAPの情報とに基づき、1つのフレーム内で1つのMSに割り当てられたOFDMシンボル数を求め、当該OFDMシンボル数と単位時間当たりに送受信されるフレーム数とに基づき、シンボルレートを求める。
このため、OFDM変調信号に多重化される通信の数によってシンボルレートが動的に変化する場合でも、当該MSとBSとの間の現在の通信状態におけるスループット値を求めることが可能となる。
【0087】
なお、本実施の形態1では、HO後に帰属したBSからの通信情報に基づいて、スループット値を算出する場合を説明した。本発明はこれに限らず、MSがBSに帰属する前にBSのスループットを算出することも可能である。
本実施の形態1の動作によれば、BSから広告される通信情報により、当該MS以外のMSに割り当てられたバースト領域(シンボル数)により、帰属していないBSのスループットを算出することが可能となる。
これにより、例えば、HO前よりスループット値が小さいBSに対する同期確立やレンジング処理などを行うことなく、迅速にスループット値の相対値が大きいBSに帰属することができる。
【0088】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、MSがHOを実行した際におけるスループットの低下を防止する動作について説明した。
本実施の形態2では、MSが帰属するBSとの通信において、スループットが低下した場合に積極的にHOを実行する形態について説明する。
【0089】
図8は実施の形態2に係る制御装置及びMSの構成図である。
図8に示すように、本実施の形態2における制御装置1は、上記実施の形態1の構成に代えて、スループット判定部31、及びしきい値記憶部32を備えている。
なお、制御装置1のその他の構成、及びMSの構成は、上記実施の形態1と同様であり同一部分には同一の符号を付する。
【0090】
スループット判定部31は、後述する動作により、スループット値が所定のしきい値より小さいか否かを判断し、判断結果をHO制御部15に入力する。
なお、スループット判定部31は、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0091】
しきい値記憶部32は、予め、スループット値のしきい値の情報が記憶される。
なお、このしきい値としては、任意の値を設定することができる。また、BSに収容されるMSの数として想定される最大数におけるスループット値などに応じて設定するようにしても良い。
なお、しきい値記憶部32は、例えばHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置で構成することができる。
【0092】
図9は実施の形態2に係る制御装置及びMSの動作シーケンスを示す図である。
以下、本実施の形態2における動作について、図9の各ステップに基づき、実施の形態1(図4)との相違点を中心に説明する。
なお、上記実施の形態1と同様の動作には同一のステップ番号を付する。
【0093】
(S301)
通常のWiMAX通信動作中において、制御装置1のHO制御部15は、スループット判定タイミングであるか否かを判断する。
スループット判定タイミングでない場合、通常のWiMAX通信動作を継続する。
一方、スループット判定タイミングであると判断した場合、ステップS103へ進む。
【0094】
ここで、スループット判定タイミングは、予め任意に設定することができる。例えば、所定の時間間隔毎(例えば60秒間隔)に設定しても良いし、スリープモードやアイドルモードからの復帰時を判定タイミングとしても良い。
なお、ここでは、スループット判定タイミングの判定を行う場合を説明するが、ステップS301を設けずに、以降のステップを常時行うようにしても良い。
【0095】
(S103、S104)
上記実施の形態1と同様に、HOリトライカウントnの初期値として「1」を設定し、通信制御部11が取得した通信情報の少なくとも一部に基づいて、現在のスループット値の平均値Tavgを算出する。
【0096】
(S302)
次に、スループット判定部31は、算出された現在のスループット値の平均値Tavgと、しきい値記憶部32に記憶されたしきい値とを比較し、現在のスループット値が、しきい値より小さいか否かを判断する。
現在のスループット値が、しきい値より小さくない場合、制御装置1及びMSは、通常のWiMAX通信動作に遷移する。
一方、現在のスループット値が、しきい値より小さい場合、ステップS106へ進む。
【0097】
(S106〜S111、S203、S204)
上記実施の形態1と同様に、nがNHO以下の場合、HO再実行を行い、HO待ちタイマ以内にHOがされた場合、ステップS104に戻り、上記の動作を繰り返す。
【0098】
このような動作により、MSが帰属するBSとの通信において、スループットがしきい値より低下した場合に、HOを実行させることが可能となる。
【0099】
以上のように本実施の形態においては、MSが帰属するBSから受信した通信情報の少なくとも一部に基づき、定期的にスループット値を求め、スループット値が所定値より小さいとき、MSにHOを実行させる。
このため、スループット値が所定値より大きいBSにMSを帰属させることができる。
【0100】
なお、本実施の形態2においても、上記実施の形態1で説明したHO時のHO再実行動作を行うようにしても良い。
【0101】
実施の形態3.
本実施の形態3では、MSの通信確立動作(ネットワークエントリー)において、スループット値の相対値が大きいBSにMSが帰属するように動作する形態について説明する。
【0102】
図10は実施の形態3に係る制御装置及びMSの構成図である。
図10に示すように、本実施の形態3における制御装置1は、上記実施の形態1の構成に代えて、通信確立動作制御部41及びスループット値記憶部42を備えている。また、本実施の形態では、HOリトライカウンタ16及びHO待ちタイマ17を設けない構成である。
なお、制御装置1のその他の構成、及びMSの構成は、上記実施の形態1と同様であり同一部分には同一の符号を付する。
以下、本実施の形態における通信確立動作について説明する。
【0103】
MSの電源をオンとした初期動作や通信が一旦切断された場合には、MSが新たにネットワークに参加するために通信確立動作(ネットワークエントリー)の処理が行われる。
WiMAX通信において、MSのWiMAX通信制御部21は、周囲のBSの存在を探索(スキャン)するため、BSからの通信信号(下りチャネル)を捕捉する処理を行う。
BSからの下り信号が捕捉され、プリアンブル信号によって同期が可能となった場合には、リンク制御に必要な各種のパラメータを取得する。このパラメータには、上述したDL−MAP、DCDが含まれる。
【0104】
本実施の形態3における通信制御部11は、捕捉されたBSの通信信号に含まれる上記のパラメータを、I/F23及びI/F19を介して取得する。
そして、スループット演算部12は、上記実施の形態1と同様の動作により、当該BSのスループットを算出する。
次に、スループット演算部12は、算出したスループット値を当該BSの識別符号と共に、スループット記憶部42に記憶させる。
スループット演算部12は、WiMAX通信制御部21によるスキャンにより、新たなBSが捕捉される度に、上記スループットの算出及び記憶を繰り返す。
【0105】
WiMAX通信制御部21による周辺BSのスキャンが完了した場合、通信確立動作制御部41は、スループット比較部13により、スループット記憶部42に記憶された各BSごとのスループット値を比較させる。
通信確立動作制御部41は、捕捉されたBSのスループット値のうち、最大のスループット値となるBSの識別符号を取得する。
そして、通信確立動作制御部41は、メッセージ送受信部18からMSに対して、当該BSの識別符号の情報を送信させる。
【0106】
MSのメッセージ送受信部22は、制御装置1からBSの識別符号の情報を取得する。
そして、WiMAX通信制御部21は、捕捉されたBSのうち、上記識別符号のBSに対して、通信確立動作(ネットワークエントリー)の処理を実行する。
以降、WiMAX通信制御部21は、WiMAXの通常の動作により、レンジング、認証、登録などの処理が実行される。
【0107】
このような動作により、MSの通信確立動作において、MSが無線通信可能なBSのうち、スループット値の相対値が大きいBSに当該MSが帰属することになる。
【0108】
以上のように本実施の形態においては、MSの通信確立動作により複数のBSが捕捉されたとき、複数のBSのスループット値をそれぞれ求め、複数のBSのうちスループット値が最大のBSに、MSを帰属させる。
このため、通信確立動作時に、スループット値が最大のBSにMSを帰属させることができる。
【0109】
なお、本実施の形態3においても、上記実施の形態1で説明したHO時のHO再実行動作、及び上記実施の形態2で説明したスループット低下時のHO再実行動作の何れか一方、又は双方を行うようにしても良い。
【0110】
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3では、スループットに基づき、HO又は通信確立動作を制御する制御装置1について説明した。
本実施の形態4では、OFDM変調信号を利用し、1つのBSと複数のMSとの通信を多重化する方式による無線通信のスループットを算出するスループット算出装置について説明する。
【0111】
図11は実施の形態4に係るスループット算出装置の構成図である。
図11に示すように、スループット演算装置2は、通信制御部11、及びスループット演算部12を備えている。
制御装置1は、例えばPC(Personal Computer)に搭載され、I/F19を介してMS(Mobile Station)と接続される。
【0112】
本実施の形態4における通信制御部11及びスループット演算部12は、上記実施の形態1と同様の動作を行う。
なお、MSの構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0113】
スループット演算装置2には、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示部51、HDDなどの記憶装置52、USBなどの出力I/F53が接続される。
このスループット演算装置2は、スループット値を算出して、表示部51、記憶装置52、及び出力I/F53の少なくとも1つに、当該スループット値の情報を出力するものである。
【0114】
このような構成により、スループット演算装置2のスループット演算部12は、上記実施の形態1と同様の動作により、MSがBSから受信したOFDM変調信号のうち、1つのMSの通信に割り当てられたサブキャリア数及び時間領域に基づいて、単位時間当たりに1つのMSが送信又は受信するOFDMシンボル数であるシンボルレートを求める。
そして、シンボルレートに基づき、スループット値を求める。
【0115】
以上のように本実施の形態においては、OFDM変調信号に多重化される通信の数によってシンボルレートが動的に変化する場合でも、当該MSとBSとの間の現在の通信状態におけるスループット値を求めることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 制御装置、2 スループット演算装置、11 通信制御部、12 スループット演算部、13 スループット比較部、14 前回スループット記憶部、15 HO制御部、16 HOリトライカウンタ、17 HO待ちタイマ、18 メッセージ送受信部、19 I/F、21 WiMAX通信制御部、22 メッセージ送受信部、23 I/F、31 スループット判定部、32 しきい値記憶部、41 通信確立動作制御部、42 スループット値記憶部、51 表示部、52 記憶部、53 出力I/F。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と無線通信可能な通信装置を制御する制御装置であって、
前記通信装置が前記基地局から受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求めるスループット演算部と、
前記通信装置が無線通信可能な前記複数の基地局のうち、前記スループット値の相対値が大きい基地局に当該通信装置が帰属するように、前記通信装置の通信確立動作及びハンドオーバー実行動作の少なくとも一方を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記スループット値を記憶する記憶部を更に備え、
前記スループット演算部は、
前記通信装置がハンドオーバーを実行したとき、当該ハンドオーバー後のスループット値を求め、
前記制御部は、
前記スループット演算部が算出した前記ハンドオーバー後のスループット値と、前記記憶部に記憶された前記ハンドオーバー前のスループット値とを比較し、
前記ハンドオーバー後のスループット値が、前記ハンドオーバー前のスループット値より小さいとき、前記通信装置にハンドオーバーを実行させる
ことを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ハンドオーバー後のスループット値が、前記ハンドオーバー前のスループット値より大きいとき、前記ハンドオーバー後のスループット値を前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の制御装置。
【請求項4】
前記スループット演算部は、
当該通信装置が帰属する前記基地局から受信した通信情報の少なくとも一部に基づき、定期的にスループット値を求め、
前記制御部は、
前記スループット値が所定値より小さいとき、前記通信装置にハンドオーバーを実行させる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記スループット演算部は、
前記通信装置の通信確立動作により複数の基地局が捕捉されたとき、該複数の基地局のスループット値をそれぞれ求め、
前記制御部は、
前記複数の基地局のうちスループット値が最大の基地局に、前記通信装置を帰属させる
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記スループット値は、所定時間における平均値である
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記基地局及び前記通信装置は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調信号を利用し、1つの基地局と複数の通信装置との通信を多重化する方式により無線通信を行い、
前記スループット演算部は、
前記OFDM変調信号のうち、1つの通信装置の通信に割り当てられたサブキャリア数及び時間領域に基づいて、
単位時間当たりに1つの通信装置が送信又は受信するOFDMシンボル数であるシンボルレートを求め、
前記シンボルレートに基づき、前記スループット値を求める
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の制御装置。
【請求項8】
前記通信を多重化する方式は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Acc)方式であり、
前記スループット演算部は、
前記通信装置が前記基地局から受信した通信情報のうち、下りサブフレーム内で1つの通信装置に割り当てられたデータ領域の情報と、上りサブフレーム内で1つの通信装置に割り当てられたデータ領域の情報とに基づき、1つのフレーム内で1つの通信装置に割り当てられたOFDMシンボル数を求め、
当該OFDMシンボル数と単位時間当たりに送受信されるフレーム数とに基づき、前記シンボルレートを求める
ことを特徴とする請求項7記載の制御装置。
【請求項9】
前記スループット演算部は、
前記通信装置が前記基地局から受信した通信情報のうち、変調方式及び符号化率の情報を取得し、
前記変調方式に基づき、前記OFDMシンボルの1つ当たりのビット数を求め、
前記シンボルレートと、前記ビット数と、前記符号化率とを乗算して、前記スループット値を算出する
ことを特徴とする請求項8又は9記載の制御装置。
【請求項10】
複数の基地局と無線通信可能な通信装置を制御する制御方法であって、
前記通信装置が前記基地局から受信した通信情報の少なくとも一部に基づいて、スループット値を求めるステップと、
前記通信装置が無線通信可能な前記複数の基地局のうち、前記スループット値が最大の基地局に当該通信装置が帰属するように、前記通信装置の通信確立動作及びハンドオーバー実行動作の少なくとも一方を制御するステップと
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−77777(P2011−77777A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226415(P2009−226415)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】