説明

制振シートおよび水槽

【課題】
水槽の外周面に貼り付ける作業が簡単な制振シートの提供
【解決手段】
この制振シート1は、水槽2の外周面に貼り付けるシート状の粘弾性材3と、ゴムを拘束するシート状の拘束材4とを積層し一体的に加硫接着したので、水槽2の外周面に制振シート1を貼り付ける作業が簡単である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、台所に設置される流し台などの水槽の外周面に貼り付ける制振シート、および、制振シートを貼り付けた水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流し台としては、キッチン(たとえば、システムキッチン)や洗面化粧台などが挙げられ、流し台には水槽が設けられている。キッチン,洗面化粧台における各水槽は、通常はそれぞれシンク,洗面ボールと呼ばれている。
【0003】
近年は、ダイニングやリビングに向けて開放したレイアウトのキッチンが次第に普及している。そのため、キッチンで調理,後片付けなどを行うとき、蛇口から吐出した水がシンクに強く当たったり、食器や鍋等をシンクに置いたり又は熱湯でシンクの底部が急激に熱変形を起こしたりすると、衝撃音や反響音(以下、衝撃音等と記載)を発生していた。上述したレイアウトのキッチンでは、この衝撃音等がダイニングやリビングに直接伝わりやすいので、ダイニングやリビングでの会話やテレビの観賞を妨げる要因となっていた。
【0004】
そこで、衝撃音等を低減する技術としては、例えば、実公平7−28215号公報(特許文献1)には、流し台などの水槽の外周面に制振シートを接着し、この制振シートの上から水槽の外周面に結露防止シートを取り付け、制振シートの全周を含む全体を結露防止シートで覆う技術が記載されている。また、特開2005−133411号公報(特許文献2)には、この結露防止シートに制振シートが填り込むための凹部を形成したものが開示されている。また、制振シートについては、水槽本体の底部外周面に固着するための弾性層とこの弾性層の外周面側の拘束層とを貼り合わせた複数層構造をなしたものが開示されている。弾性層は、水槽本体が衝撃などで振動すると、水槽本体と一緒に変形動作して水槽本体の振動を低減させる制振機能を発揮する。拘束層は、弾性層の反対側が振動で変形する動作を拘束し、弾性層のせん断変形を拡大する機能を有している。
【特許文献1】実公平7−28215号公報
【特許文献2】特開2005−133411号公報 請求項6、0022
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2005−133411号公報には、制振シートについては、水槽本体の底部外周面に固着するための弾性層とこの弾性層の外周面側の拘束層とを貼り合わせた複数層構造をなしたものが開示されている。これは、具体的には、弾性層と拘束層が別部材であり、これを重ねて設置していたため設置作業が煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制振シートは、水槽の外周面に貼り付ける制振シートであって、水槽の外周面に貼り付けるシート状の粘弾性材と、ゴムを拘束するシート状の拘束材とを積層し一体的に加硫接着したものである。
【発明の効果】
【0007】
この制振シートは、水槽の外周面に貼り付けるシート状の粘弾性材と、ゴムを拘束するシート状の拘束材とを積層し一体的に加硫接着したので、水槽の外周面に制振シートを貼り付ける作業を簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る制振壁構造の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同様の作用を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明する。
【0009】
この制振シート1は、図1、2に示すように、水槽2の外周面に貼り付ける粘弾性材3と、粘弾性材3を拘束する拘束材4とを積層し、一体的に加硫接着した構造を備えている。制振シート1を貼り付ける水槽2として、この実施形態では、台所の流し台に設置するシンク5に適用している。シンク5は、図1に示すように、外周面に制振シート1と貼り付けた後、その外周面に結露防止シート6を貼り付けている。
【0010】
この実施形態では、拘束材4に、シンク5の外周面に貼り付ける粘弾性材3よりも硬度(剛性)の高いゴムを用いている。具体的には、シンク5の外周面に貼り付ける粘弾性材3として用いるゴムには、ゴム硬度がショアA硬度で30度〜50度のもので、ゴムの損失係数(tanδ)が0.25〜0.50のものを用いており、拘束材4として用いるゴムには、ゴム硬度がショアA硬度で70度〜90度のものを用いている。なお、損失係数は温度25%、周波数10Hz、ひずみ1%の値である。
【0011】
斯かる制振シート1の製造方法としては、高硬度な未加硫ゴムシートと減衰製の高い未加硫ゴムシートを貼り合わせ、連続して加硫する、又は所定の大きさに高硬度ゴムシートを切り取り、同程度の大きさの未加硫ゴムシートに貼り合わせ、プレス加硫する事で片面を粘弾性材とし、反対側を拘束材とする制振シートが得られる。
【0012】
図1に示すように、シンク5に貼り付ける場合は、その制振シート1をシンク5に貼り付けるのに適切な所望の寸法に切断して用いれば良い。制振シート1を切断する方法としては、例えば、トムソン刃等を用いて、所定の寸法形状とした刃型で打ち抜くことにより、任意の大きさの制振シート1を得るとよい。大きな制振シート1を作成し、そこから貼り付けるシンク5に合わせて、所定の形状に裁断することにより量産化が容易に行える。
【0013】
また、この実施形態では、粘弾性材3と拘束材4の両方にゴムを用いているので、加硫後に両者の熱収縮の程度に差がほとんどないから、制振シート1に生じる反りを小さく抑えることができる。また、製造が容易で、製造コストも安価である。また、拘束材4に高硬度のゴムを用いることで、粘弾性材3と拘束材4とで、ポリマーや老化防止剤、加硫系等の基本的な配合を合わせやすくなり、配合の違いによる加硫遅れや、経年的な劣化による剥離などの問題が生じ難く、品質のよい制振シート1を製造することができる。
【0014】
シンク5の外周面に貼り付ける粘弾性材3は、水道水を受けたときの衝撃などでシンク5が振動すると、シンク5と一緒に変形動作してシンク5の振動を低減させる制振機能を発揮する。拘束材4は、粘弾性材3を拘束する機能を有しており、粘弾性材3の厚さを薄くしても高い制振効果を得ることができる。また、拘束材4を一体的に加硫接着しているので、特開2005−133411号公報に開示されているように、粘弾性材3と拘束材4を別々にシンク5の外周面に貼り付ける場合に比べて、作業性が格段に向上する。
【0015】
以上、本発明の一実施形態に係る制振シートおよび制振シートを貼り付けた水槽を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0016】
例えば、拘束材4には鋼板を用いることもできる。この場合、鋼板としては、ステンレス製や鉄製の鋼板を用いることができる。
【0017】
粘弾性材3と鋼板を加硫接着させる場合は、例えば、粘弾性材3となる未加硫のゴム板に粘着材を貼り付け、その上にゴム板より少し小さい鋼板を貼り、全体を金型の中で加硫焼き付けて作るとよい。また、より確かな方法としては、鋼板表面を脱脂した後ショットブラスト等で表面を粗し、その上に加硫接着剤を塗布(1〜2回)した後、未加硫のゴムシートを乗せ、全体を金型の中で加硫焼き付けて作るとよい。
【0018】
また、拘束材4には、図3に示すように、合成繊維コード材を用いることもできる。合成繊維コード材としては、例えば、ナイロンやポリエステルなどの比較的容易に切断できる糸状繊維7をすだれ状に織り、これにゴム等の粘弾性体8を含浸させたトップ反を用いることができる。糸状繊維7をすだれ状に織ったトップ反を用いる場合は、糸状繊維7の繊維方向をずらして重ね合わせたものを用いるとよい。斯かるすだれ状のトップ反は、繊維方向を直角、60度、45度など所定の角度にずらして複数層重ねるとよい。また、糸状繊維7を平織りしたものを用いてもよい。
【0019】
また、斯かる制振シート1は、例えば、シンク5のように金属板製の水槽の外周面に貼り付けるとよく、この場合、図1に示すように、制振シート1の外側にさらに結露防止シート6を貼り付けてもよい。また、図4に示すように、シンク5の外周面に結露防止シート6を貼り付け、結露防止シート6の外側に上述した制振シート1を貼り付けてもよい。また、図1、図4のようにシンク5の外周面に部分的に貼ってもよいし、図示は省略するがシンク5の外周面に全体的に貼ってもよい。また、シンク5の外周面の曲面に貼り付ける場合には、図5(a)(b)に示すように、制振シート1の粘弾性材3側の表面に溝9を形成してもよい。これにより、シンク5の外周面の曲面形状に合わせて制振シート1を曲げ易くなり、シンク5の外周面に取り付け易くなる。
【0020】
また、制振シート1は、既設の台所のシンクに接着することもでき、粘弾性材側の面に粘着テープを設置し、既設の台所のシンクに接着してもよい。また、シンク5の外周面に貼り付ける側を区別するため、拘束材4側には加硫成形時に表面にマークを入れると良い。例えば、この際、拘束材4側の面に、略1〜2mm程度、灰色や茶色などの着色をしたゴムを配置することで、意匠性を持たせてもよい。
【0021】
また、斯かる制振シート1を取り付ける水槽としては、台所のシンクに限らず、洗面台など、その他の種々の水槽に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る制振シートを取り付けたシンクを示す縦断側面図。
【図2】本願発明の一実施形態に係る制振シートを示す断面図。
【図3】本願発明の他の実施形態に係る制振シートを示す断面図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る制振シートを取り付けたシンクを示す縦断側面図。
【図5】(a)(b)はそれぞれ制振シートに形成した溝を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 制振シート
2 水槽
3 粘弾性材
4 拘束材
5 シンク
6 結露防止シート
7 糸状繊維
8 粘弾性体
9 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の外周面に貼り付ける制振シートであって、水槽の外周面に貼り付けるシート状の粘弾性材と、ゴムを拘束するシート状の拘束材とを積層し一体的に加硫接着した制振シート。
【請求項2】
前記拘束材が水槽の外周面に貼り付ける粘弾性材よりも硬度の高いゴムであることを特徴とする請求項1に記載の制振シート。
【請求項3】
前記拘束材が鋼板であることを特徴とする請求項1に記載の制振シート。
【請求項4】
前記拘束材が合成繊維コード材であることを特徴とする請求項1に記載の制振シート。
【請求項5】
外周面に制振シートを貼り付けた金属板製の水槽であって、前記制振シートが請求項1から4の何れかに記載した制振シートであることを特徴とする水槽。
【請求項6】
前記制振シートの外側に結露防止シートを貼り付けたことを特徴とする請求項5に記載の水槽。
【請求項7】
外周面に結露防止シートを貼り付け、結露防止シートの外側に請求項1から4の何れかに記載した制振シートを貼り付けたことを特徴とする金属板製の水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−39947(P2007−39947A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224340(P2005−224340)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】