説明

制振制御装置

【課題】フィルタへの余剰トルク成分の蓄積を抑制する制振制御装置を提供する。
【解決手段】車両に設けられたモータを制振させる制振制御装置において、車両の車両情報を入力として、車両へのトルク入力と前記モータの回転速度の理想伝達特性のモデルGm(s)と、車両へのトルク入力とモータの回転速度の実伝達特性のモデルGp(s)とを用いたモデルGm(s)/Gp(s)を含むフィルタにより第1トルク目標値を算出する第1トルク目標値算出手段と、モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、モデルGp(s)を含むフィルタを用いて、トルク指令値及び回転速度検出手段により検出された検出回転速度に基づいて、第2トルク目標値を算出する第2トルク目標値算出手段と、第1トルク目標値と前記第2トルク目標値とを加算してトルク指令値を算出する加算手段と、トルク指令値に基づいて、モータを制御するモータ制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力源にモータ/ジェネレータを有するFRハイブリッド車両において、駆動トルクからモータ回転速度を推定するモータ回転速度推定部と、モータ回転速度を検出するレゾルバと、モータ回転速度推定値とモータ回転速度検出値の偏差から外乱を推定する外乱推定部と、車両の振動成分を抽出して振動を抑制するための第2トルク目標値を算出する第2トルク目標値演算手段と、モータ回転速度擬似値を算出する擬似モータ回転速度演算部とを備え、外乱推定部は、制振制御を開始する前の制振制御停止中、モータ回転速度検出値に代え、モータ回転速度検出値擬似値を用いて外乱を推定する制振制御装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−200587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータの回転速度が高い場合には疑似回転速度の推定精度が低下し、モータ回転速度推定値とモータ回転速度検出値との偏差が大きくなるため、回転速度検出値を用いたフィードバック制御復帰時に、当該偏差による余剰トルクが発生し、フィルタに余剰なトルク成分が蓄積するという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、フィルタへの余剰トルク成分の蓄積を抑制する制振制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トルク指令値に基づく値とモータの検出回転速度に基づく値との偏差である第1偏差を算出し、当該第1偏差に基づいて前記第2トルク目標値を算出する第1制御系と、前記トルク指令値を入力としてモデルGp(s)を含むフィルタにより算出される推定回転速度を算出し、前記トルク指令値に基づく値と、前記検出回転速度に代えて前記推定回転速度に基づく値との偏差である第2偏差を算出し、前記第2偏差に基づいて前記第2トルク目標値を出力する第2制御系とを有することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、検出回転速度を用いていない第2制御系のフィードバックでは、回転速度に基づく余剰トルク成分がフィードバックされないため、フィルタへ蓄積される余剰トルクを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る制振制御装置を含む車両の概要を示すブロック図である。
【図2】図1の制振制御部のブロック図である。
【図3】図1の車両における、駆動ねじり振動系の運動方程式を示す説明図である。
【図4】図1の制振制御装置における制振効果のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は最終出力トルクの時間特性のグラフであり、(b)はドライブシャフトトルクの時間特性のグラフであり、(c)は回転速度の時間特性のグラフである。
【図5】本発明の変形例に係る制振制御装置の制振制御部のブロック図である。
【図6】本発明の変形例に係る制振制御装置の制振制御部のブロック図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る制振制御装置の制振制御部のブロック図である。
【図8】図7の制振制御装置における制振効果のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は最終出力トルクの時間特性のグラフであり、(b)はドライブシャフトトルクの時間特性のグラフであり、(c)は回転速度の時間特性のグラフである。
【図9】本発明の他の実施形態に係る制振制御装置の制振制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、発明の実施形態に係る制振制御装置を含む車両の概要を示すブロック図である。以下、本例のモータ制御装置を電気自動車に適用した例を挙げて説明するが、本例のモータ制御装置は、例えばハイブリッド自動車(HEV)等の電気自動車以外の車両にも適用可能である。
【0011】
図1に示すように、本例のモータ制御装置を含む車両は、アクセル開度センサ1、モータトルク設定部2、制振制御部3、モータトルク制御部4、モータ5、モータ回転角センサ6、駆動軸7及び車輪8、9を備えている。
【0012】
アクセル開度センサ1は、ドライバーによるアクセル操作量を検出センサである。モータトルク設定部2は、車両情報としてアクセル開度センサ1で検出されるアクセル開度とモータ回転角センサ6により検出されるモータ回転速度とに基づいて、モータトルクの目標値(第1トルク目標値(Tm1))を算出し、設定する。モータトルク設定部2には、アクセル開度とモータ回転速度とを指標として、モータ5の出力トルクの目標値と対応させるマップが予め記憶されている。そして、モータトルク設定部2は、アクセル開度とモータ回転速度とから当該マップを参照して目標値を算出し、さらに当該目標値を、Gm(s)/Gp(s)からなる伝達特性を有するフィルタに通して、第1トルク目標値を演算する。なお、モータトルク設定部2は、アクセル開度及びモータ回転速度の代わりに、外部から入力されるトルク指令値を用いて、第1トルク目標値を演算してもよい。ここで、Gm(s)は車両へのトルク入力とモータ回転速度の応答目標を示すモデル(理想伝達特性のモデル)であり、Gp(s)は車両へのトルク入力とモータ回転速度の実伝達特性を示すモデルである。
【0013】
制振制御部3は第1トルク目標値(Tm1)とモータ回転速度とを入力とし、トルク指令値(T)を算出し、モータトルク制御部4に出力する。なお、制振制御部3によるトルク指令値(T)の算出方法は後述する。
【0014】
モータトルク制御部4は、モータ5の出力トルクを、制振制御部3から出力されるトルク指令値(T)に一致させる、又は、追随させるように制御する。モータトルク制御部4は、トルク指令値(T)に基づいてPWM信号を生成し、当該スイッチング信号を、モータ5を駆動させるインバータの駆動回路に出力することで、モータ5を制御する。
【0015】
モータ5は、三相交流電力の永久磁石モータであり、走行駆動源として駆動し、電気自動車の駆動軸7に結合されており、駆動軸7を介して車輪8、9を回転させる。
【0016】
次に、図2を用いて、制振制御部3の具体的な構成を説明する。図2は、モータトルク設定部2、制振制御部3及びモータ5の制御ブロックを示すブロック図である。
【0017】
第1トルク目標値算出部21は、モータトルク設定部2に相当し、Gm(s)/Gp(s)からなる伝達特性を含むフィルタを用いて、第1トルク目標値(Tm1)を算出し、加算器31に出力する。
【0018】
制振制御部3は、加算器31、時間遅れ制御器32、制御ブロック33、回転速度推定部34、第一項算出部35、スイッチ36、第二項算出部37、減算器38を有している。加算器31は、第1トルク設定部21から出力される第1トルク目標値(Tm1)と、減算器38から出力される第2トルク目標値(Tm2)とを加算し、その加算値をトルク指令値(T)とし、加算器41に出力する。
【0019】
時間遅れ制御器32はトルク指令値(T)を所定の時間だけ遅らせて、制御ブロック33に出力する。当該所定の時間は、モータ5を示す制御ブロック51にトルク指令値が(T)が入力されたから指令トルクが発生するまでの時間、及び、回転角センサ6によりモータ5回転速度が検出されて減算器38に入力するまでの時間を加算した時間である。制御ブロック33は、モータ5の出力トルクが指令トルクに収束するまでの応答時定数に相当する伝達特性を示すフィルタを備えている。時間遅れ制御器32及び制御ブロック33は、モータ5の回転速度の位相差を補償するための補償器に相当する。制御ブロック33の出力値は、回転速度推定部34及び第1項算出部35に出力される。
【0020】
回転速度推定部34は、制御ブロック33からの出力値に、後述するGp(s)からなる伝達関数を有するフィルタを通して、モータ5の回転速度を推定し、スイッチ36を介して第二項算出部37に出力する。第一項算出部35は、制御ブロック33からの出力値に、後述するH(s)からなる伝達関数を有するバンドパスフィルタを通して、第2トルク目標値(Tm2)の第一項を算出する。
【0021】
スイッチ36は、回転速度推定部34と第二項算出部37との間の制御ラインと、回転角センサ6により検出されるモータ5の検出回転速度の出力と第二項算出部37との間の制御ラインとを切り替えるためのスイッチである。すなわち、スイッチ36により、回転速度推定部34と第二項算出部37との間がオンになっている場合には、回転速度推定部34により推定された推定回転速度が検出回転速度の代わりに、第二項算出部37に入力される。一方、スイッチ36により、回転角センサ6の出力と第二項算出部37との間がオンになっている場合には、モータ5の検出回転速度が第二項算出部37に入力される。
【0022】
第二項算出部37は、回転速度推定部34の推定回転速度、または、回転角センサ6の検出回転速度を入力として、後述するH(s)と後述するGp(s)の逆系のモデルとからなる伝達関数(H(s)/Gp(s))を有するフィルタを通して、第2トルク目標値の第二項であるトルク算出値を算出する。減算手段38は、第一項算出部35により算出される第2トルク目標値の第一項から、第二項算出部37により算出される第2トルク目標値の第二項を減算することで、第2トルク目標値(Tm2)を算出し、加算器31に出力する。
【0023】
加算器41は、加算器31から出力されるトルク指令値(T)と、外部から実プラントに入力される外乱トルク(Td)とを加算し、モータ5の制御ブロック51に出力する。制御ブロック51は、モータ5に相当し、伝達特性Gp’(s)を有し、加算器31からの出力値に基づいて、回転速度(ω)で駆動する。そして、当該回転速度(ω)が回転角センサ6で検出される。なお、図1に示すモータトルク制御部4は、伝達特性に影響しないため、図2には表示していないが、加算器31と制御ブロック51との間に設けられる。
【0024】
ここで、車両へのトルク入力とモータ回転速度の伝達特性のモデルGp(s)について、図3を用いて説明する。図3は、駆動ねじり振動系の運動方程式を示す説明図であり、同図における各符号は、以下に示すとおりである。
【0025】
【数1】

【0026】
そして、図3より、以下の運動方程式を導くことができる。
【数2】

【0027】
そして、運動方程式(1)〜(5)に基づいて、モータトルクからモータ回転数までの伝達特性Gp(s)を求めると、以下に示す式(6)〜(14)で表される。
【数3】

【0028】
上記(6)式に示す伝達関数の極と零点を調べると、1つの極と1つの零点は極めて近い値を示す。これは、次の(15)式のαとβが極めて近い値を示すことに相当する。
【数4】

【0029】
従って、式(15)における極零相殺(α=βと近似する)を行うことにより、次の式(16)に示す如く、(2次)/(3次)の伝達特性Gp(s)を構成する。
【数5】

【0030】
さらに、上記の運動方程式に基づいて、駆動系の固有振動周波数(ねじり共振周波数)をfp、共振角速度をωpとし、ωmをωpに近似させ、式(16)で表される伝達特性のモデルGp(s)を、2次振動系モデルで近似すると、伝達特性Gp(s)は式(17)で表される。
【数6】

ただし、
【数7】

【0031】
次に、伝達特性H(s)について説明する。H(s)は、バンドパスフィルタであり、振動を低減するフィードバック要素となる。当該バンドパスフィルタの特性は、ローパス側及びハイパス側の減衰特性が一致し、少なくともねじり共振周波数(fp)を通過帯域にもつ。
【0032】
図2に戻り、本例の制振制御装置の制御について説明する。上記の通り、本例ではスイッチ36の切り換えにより、制御ループが切り替わる。以下、回転角センサ6の出力と第二項算出部37と間が繋がっている状態を第1制御系と称し、回転速度推定部34と第二項算出部37と間が繋がっている状態を第2制御系と称す。
【0033】
第1制御系はモータ5を含めた制御対象が線形領域に属する場合に選択され、第2制御系はモータ5を含めた制御対象が非線形領域に属する場合に選択される。線形領域に属する場合とは、制振制御を行っている状態であり、例えば、モータ5の軸と駆動軸とが図示しないトランスミッションを介して繋がり動力が伝達可能な状態であって、回転角センサ6により検出回転数を制振制御に有効に用いることできる状態である。一方、非線形領域に属する場合とは、制振制御を停止している状態であって、例えば、当該トランスミッションにより、モータ5の軸と駆動軸との間で動力が遮断されている状態である。非線形領域では、ユーザのアクセル操作等に基づく入力トルクに対して、モータ5は当該入力トルクに基づいて制御できない状態であるため、回転角センサ6の検出回転速度を制振制御のために有効に用いることができない。
【0034】
まず第1制御系について説明する。第1制御系において、第一項算出部35から出力されるトルク値は、トルク指令値(T)から位相補償され、かつ、バンドパスフィルタH(s)により振動成分が除去された値となる。また第二項算出部37から出力されるトルク算出値は、回転角センサ6の検出回転速度から、Gp(s)の逆系のモデルを用いて算出され、かつ、外乱による振動成分が除去された後のトルクである。そして、減算器38により、これらのトルク算出値のトルク差をとり、当該トルク差を加算器31に出力することで、第1制御系では、トルク指令値(T)に実トルクが一致もしくは追随するよう制御する。
【0035】
次に第2制御系について説明する。第2制御系において、制御ブロック33から出力されるトルク値をTmnとすると、第一項算出部35から出力される第2トルク目標値(Tm2)の第一項は、Tmn×H(s)となる。回転速度推定部34には、トルク値(Tmn)が入力されるため、推定回転速度は、Tmn×Gp(s)で表される。第2制御系では、スイッチ36を介して、推定回転速度(Tmn×Gp(s))が入力され、第二項算出部37により算出される第2トルク目標値(Tm2)の第二項は、Tmn×Gp(s)×(H(s)/Gp(s))から、Tmn×H(s)となる。そして、減算器38には、第2トルク目標値(Tm2)の第一項と、当該第一項と逆符号の同じ値である第二項とが入力されることになり、第2トルク目標値(Tm2)の第一項と第二項との偏差を算出するとゼロになる。
【0036】
これにより、制振制御停止中、第1のトルク目標値(Tm1)の挙動がどのようになっても、あるいは、第1のトルク目標値(Tm1)が過渡的に変動したとしても、第2のトルク目標値(Tm2)はゼロになる。
【0037】
次に、図4を用いて、本例における制振効果のシミュレーション結果を、比較例と比較して説明する。図4の(a)は最終出力トルクの時間特性を示し、(b)はドライブシャフトトルクの時間特性を示し、(c)は回転速度の時間特性を示す。またグラフaは本発明の特性を、グラフbは比較例の特性を示す。比較例では、第1トルク目標値算出部21によるフィードフォワード制御のみを行い、図2のうちフィードバック制御に係る制御は行っていない。そして、時間tの時点で所定のステップトルク指令を入力し、時間tの時点で所定の外乱トルクを入力することを条件に、シミュレーションを行った。また本例では、時間tより前では、第2制御系でフィードバック制御を行い、時間tの時点で、第2制御系から第1制御系に切り換え、時間t以降、第1制御系でフィードバック制御を行った。
【0038】
図4(b)及び(c)に示すように、比較例では、時間t以降、外乱トルクの入力により、ドライブシャフトトルク及び回転速度がそれぞれ振動している。一方、本例では、時間t以降、制振制御を行うことで、ドライブシャフトトルク及び回転速度の振動がそれぞれ速やかに収束している。これにより、本例は、振動発生時に、外乱に対して遅れて制振制御を行った場合でも、制振効果を得ることができる。
【0039】
上記のように、本例は、トルク指令値(T)に基づいて算出された第2トルク目標値の第一項と、検出回転速度に基づいて算出された第2トルク目標値の第二項との偏差(第1偏差に相当)を算出し、当該偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を算出する第1制御系と、第一項算出部35によりトルク指令値(T)に基づいて算出された第2トルク目標値の第一項と、第二項算出部37により検出回転速度の代わりに推定回転速度に基づいて算出された第2トルク目標値の第二項との偏差(第2偏差に相当)を算出し、当該偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を算出する第2制御系とを切り替えて、フィードバック制御を行う。これにより、第2制御系によりフィードバック制御をしている時には、減算器38の出力がゼロになるため、モデルGp(s)を含むフィルタに、実回転速度(ω)による余計なフィードバックトルク成分が蓄積することを防ぐことができる。また、第2制御系から第1制御系に切り替える際には、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。また、本例では、第2制御系において、検出回転速度を用いていないため、モータの回転速度が過渡状態になった場合でも、減算器38における偏差をゼロにすることができ、余剰トルクがフィルタに蓄積することを防ぐことができる。また本例では、制振制御の停止中であっても、第2制御系によるフィードバック制御を継続させることができるため、フィードバック制御に含まれる各フィルタの状態が最新の状態になり、制振効果を得ることができる。
【0040】
また本例は、モータ5を含む制御対象が線形領域に属する場合には、第1制御系で第2トルク目標値(Tm2)を算出し、制御対象が線形領域に属する場合には、第2制御系で第2トルク目標値(Tm2)を出力する。これにより、制御対象が非線形領域から線形領域に属するようになった場合に、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。また本例では、制御対象が非線形状態に属する状態であっても、第2制御系によるフィードバック制御を継続させることができるため、フィードバック制御に含まれる各フィルタの状態が最新の状態になり、制振効果を得ることができる。
【0041】
また本例において、第1制御系は、トルク指令値(T)に基づいて算出された第2トルク目標値の第一項と、検出回転速度を入力としてモデルGp(s)の逆系のモデルを含むフィルタにより第2トルク目標値の第二項を算出し、当該第一項と当該第二項との偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を算出し、第2制御系で、推定回転速度を、スイッチ36を介して第二項算出部37に入力して、モデルGp(s)の逆系のモデルを含むフィルタにより第2トルク目標値の第二項を算出し、当該第一項と当該第二項との偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を出力する。これにより、第2制御系によりフィードバック制御をしている時には、減算器38の出力がゼロになるため、モデルGp(s)を含むフィルタに、実回転速度(ω)による余計なフィードバックトルク成分が蓄積することを防ぐことができる。また、第2制御系から第1制御系に切り替える際には、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。また、本例では、第2制御系において、検出回転速度を用いていないため、余剰トルクがフィルタに蓄積することを防ぐことができる。また本例では、制振制御の停止中であっても、第2制御系によるフィードバック制御を継続させることができるため、制振効果を得ることができる。
【0042】
また本例において、第1制御系は、第一項算出部35により、トルク指令値(T)を入力として、H(s)を含むフィルタにより第2トルク目標値(Tm2)の第一項を算出し、第二項算出部37により、検出回転速度を入力としてH(s)/Gp(s)を含むフィルタにより第2トルク目標値(Tm2)の第二項を算出する。これにより、第2制御系から第1制御系に切り替える際には、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。
【0043】
なお本例において、制振制御部3は、必ずしも時間遅れ制御部32及び制御ブロック33を用いて、第1制御系及び第2制御系のフィードバック制御を行う必要はなく、図5に示すように、時間遅れ制御部32及び制御ブロック33を有さない構成で、フィードバック制御を行ってもよい。図5は、本発明の変形例に係る制振制御装置の制振制御部のブロック図である。図5に示すように、加算器31により算出されたトルク指令値(T)は、回転速度推定部34及び第一項算出部35にそれぞれ入力され、第1制御系で、当該トルク指令値(T)に基づいて第2トルク目標値(Tm2)の第一項を算出し、第2制御系で、当該トルク指令値(T)に基づいて第2トルク目標値(Tm2)の第二項を算出する。また、図5に示す変形例において、本発明はバンドパスフィルタH(s)を省略してもよい。
【0044】
なお、本例は、減算器38においてトルク差を算出して、当該トルク差に基づいて、第2トルク目標値(Tm2)を算出したが、図6に示すように、回転速度差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を算出してもよい。図6は本発明の変形例に係る制振制御装置の制振制御部のブロック図である。図6に示すように、制振制御部3は、回転数推定部61及び制御ブロック62を有している。
【0045】
回転速度推定部61は、トルク指令値(T)を入力として、モデルGp(s)を含むフィルタを用いて回転速度を推定し、推定回転速度として減算器38に出力する。そして、減算器38に入力される推定回転速度が、第2トルク目標値(Tm2)の第一項となる。また回転速度推定部61と減算器38との間からスイッチ36に向かって制御ラインが接続されている。減算器38と加算器31との間には、制御ブロック62が接続され、制御ブロック62はモデルGp(s)の逆系のモデルとバンドパスフィルタのモデルH(s)とを用いたモデルH(s)/Gp(s)を含むフィルタを有している。制御ブロック62は、減算器38により算出される回転速度差を入力として、モデルH(s)/Gp(s)を含むフィルタを用いて第2トルク目標値(Tm2)を算出し、加算器31に出力する。
【0046】
次に、図6に示す変形例に係る制振制御装置の制御について説明する。スイッチ36により、回転角センサ6の出力と減算器38とを繋げると、第1制御系の閉ループが形成され、回転速度推定部61と減算器38との間からスイッチ36に繋がる制御ラインと、減算器38の入力ラインとを繋げると、第2制御系の閉ループが形成される。
【0047】
第1制御系において、減算器38は、回転速度推定部61の推定回転速度と、回転角センサ6の検出回転速度との偏差(第1偏差に相当)を算出し、制御ブロック62は当該偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を算出する。第2の制御系において、減算器38は、回転速度推定部61の推定回転速度と、前記スイッチ36を介した当該推定回転速度との偏差(第2偏差に相当)を算出する。そして、当該偏差はゼロになるため、第2トルク目標値(Tm2)はゼロで出力される。すなわち、減算器38に入力される、第2トルク目標値(Tm2)の第二項は、第1制御系では検出回転速度に基づく値となり、第2制御系では検出回転速度の代わりに推定回転速度に基づく値となる。
【0048】
上記のようの本発明の変形例において、第1制御系は、トルク指令値(T)に基づく値と検出回転速度に基づく値との偏差から第2トルク目標値(Tm2)を算出し、第2の制御系では、トルク指令値(T)に基づく値と検出回転速度に代えて推定回転速度に基づく値との偏差から第2トルク目標値(Tm2)を出力する。これにより、第2制御系によりフィードバック制御をしている時には、減算器38の出力がゼロになるため、モデルGp(s)を含むフィルタに、実回転速度(ω)による余計なフィードバックトルク成分が蓄積することを防ぐことができる。また、第2制御系から第1制御系に切り替える際には、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。また、本例では、第2制御系において、検出回転速度を用いていないため、モータの回転速度が過渡状態になった場合でも、減算器38における偏差をゼロにすることができ、余剰トルクがフィルタに蓄積することを防ぐことができる。また本例では、制振制御の停止中であっても、第2制御系によるフィードバック制御を継続させることができるため、フィードバック制御に含まれる各フィルタの状態が最新の状態になり、制振効果を得ることができる。
【0049】
また本発明の変形例において、第1制御系は、トルク指令値(T)を入力としてモデルGp(s)を含むフィルタにより推定回転速度を算出し、当該推定回転速度と検出回転速度との差から偏差を算出し、当該偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を演算し、第2制御系では、推定回転速度と、スイッチ36を介した推定回転速度との差により偏差を算出する。これにより、回転速度の差を用いても、減算器38の出力がゼロになるため、モデルGp(s)を含むフィルタに、実回転速度(ω)による余計なフィードバックトルク成分が蓄積することを防ぐことができる。
【0050】
また本発明の変形例において、第1制御系は、制御ブロック62において、推定回転速度と検出回転速度との偏差を入力として、モデルH(s)/Gp(s)を含むフィルタにより第2トルク目標値(Tm2)を算出する。これにより、第2制御系から第1制御系に切り替える際には、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。
【0051】
なお、図6に示す変形例において、本発明はバンドパスフィルタH(s)を省略してもよい。
【0052】
上記第1トルク目標値算出部21は、本発明の「第1トルク目標値算出手段」に相当し、回転角センサ6は本発明の「モータ回転速度検出手段」に相当し、加算器31が「加算手段」に相当し、モータトルク制御部4が「モータ制御手段」に相当し、回転速度推定部34、61、第一項算出部35、スイッチ36、第二項算出部37、減算器38、制御ブロック62のうち、少なくとも一部の制御ブロックが本発明の「第2トルク目標値算出手段」に相当し、スイッチ36が本発明の「切替部」に相当する。
【0053】
《第2実施形態》
図7は、発明の他の実施形態に係る制振制御装置における、回転速度の時間特性を示す。本例では上述した第1実施形態に対して、制振制御部の制御の一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を援用する。以下、図1、図2及び図7を用いて、本例の制振制御装置の制御について説明する。
【0054】
制振制御部3は、制振制御中、回転角センサ6の検出回転速度を補正し、補正後の検出回転速度を入力回転速度として第二項算出部37に入力し、第2トルク目標値(Tm2)の第二項を演算する。また、制振制御部3は、検出回転速度を補正する際のオフセット値(補正値)を演算し、当該オフセット値を用いて、制振制御中における検出回転速度の補正を行う。
【0055】
制振制御停止中であって、スイッチ36により回転速度推定部34と第二項算出部37との間の制御ラインが繋がっている場合に、制振制御部3は、フィードバック周期で、回転速度推定部34の出力である推定回転速度を図示しないメモリなどに保存する。スイッチ36の切り換えにより、回転角センサ6の出力と第二項算出部37との間の制御ラインが繋がると、制振制御部3は、スイッチ36の切り換え前の推定回転速度と、スイッチ36の切り換え後の検出回転速度との偏差からオフセット値を算出する。そして、制振制御部3は、モータ5の検出回転速度からオフセット値を減算した回転速度を第二項算出部37に入力し、第2トルク目標値(Tm2)の第二項を演算する。
【0056】
すなわち、制振制御部3は、第1制御系と第2制御系との間の切り換え前の、第二項算出部37に入力される入力回転速度と、第1制御系と第2制御系との間の切り換え後の、第二項算出部37に入力される入力回転速度との偏差からオフセット値を算出し、制振制御中に、検出回転速度を当該オフセット値で補正する。
【0057】
図7について、実施形態1の図4に示す条件と同様に、時刻tの時点で所定の外乱トルクが入力され、時間tの時点で第2制御系から第1制御系に切り換え、時間t以降、第1制御系でフィードバック制御を行ったとする。時刻tの時点で外乱の入力により、検出回転速度が変化している。この時点で、第二項算出部37への入力回転速度は回転速度推定部34の推定回転速度であるため、入力回転速度は、外乱による検出回転速度の変化には影響されない。そして、時刻tの時点でスイッチ36を切り換え制振制御が行われると、図7のグラフbに示すように、入力回転速度は検出回転速度(グラフa)をオフセットした状態で推移する。
【0058】
次に、図8を用いて、本例(本発明2)における制振効果のシミュレーション結果を、実施形態1に係る制振制御装置(本発明1)と比較して説明する。図8の(a)は最終出力トルクの時間特性を示し、(b)はドライブシャフトトルクの時間特性を示し、(c)は回転速度の時間特性を示す。またグラフaは本発明1の特性を、グラフcは本発明2の特性を示す。時間tの時点で所定のステップトルク指令を入力し、時間tの時点で所定の外乱トルクを入力することを条件に、シミュレーションを行った。また本例では、時間tより前では、第2制御系でフィードバック制御を行い、時間tの時点で、第2制御系から第1制御系に切り換え、時間t以降、第1制御系でフィードバック制御を行った。
【0059】
図8(b)に示すように、本発明1と同様に本発明2においても時間t以降、制振制御を行うことで、ドライブシャフトトルクの振動が速やかに収束している点から、本発明2は制振効果を得ることができる。また本発明2では、スイッチ36の切り換え前後における過渡的な要素が補正されるため、図8(a)に示すように、時間t以降のトルク出力の変化がより抑制されている。
【0060】
上記のように、本例は、第1制御系と第2制御系との間で制御系を切り換え制御系の切り換え前の推定回転速度と制御系の切り換え後の検出回転速度との偏差をオフセット値として算出し、当該オフセット値を用いて制御系の切り換え後の検出回転速度を補正する。これにより、第2トルク目標値(Tm2)を算出する際の入力回転数に対して、制御系の切り換えによる影響を排除し、制御系の切り換え後の出力トルクの変動を抑制することができる。
【0061】
なお本例は、オフセット値を用いて、第二項算出部37への入力回転速度を補正したが、図6において、スイッチ36から減算器38に入力される入力回転速度を補正してもよい。
【0062】
《第3実施形態》
図9は、発明の他の実施形態に係る制振制御装置の制振制御部及びエンジントルク設定部を示すブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、エンジントルク設定部を設けた点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1実施形態及び第2実施形態に係る記載を適宜、援用する。
【0063】
本例では制振制御装置は図示しないエンジン及びモータ5を動力源とするハイブリッド車両に搭載されている。エンジントルク設定部90は、車両情報としてアクセル開度センサ1で検出されるアクセル開度とモータ回転角センサ6により検出されるモータ回転速度とに基づいて、エンジントルクの指令値を算出し、設定する。エンジントルク設定部90には、アクセル開度とモータ回転速度とを指標として、モータ5の出力トルクの目標値と対応させるマップが予め記憶されている。そして、エンジントルク設定部90は、アクセル開度とモータ回転速度とから当該マップを参照して指令値を算出する。
【0064】
エンジントルク設定部90は、制御ブロック91、92及び第三項算出部93を有している。制御ブロック91は、上記のマップにより算出されたトルク指令値を入力として、Gm(s)/Gp(s)からなる伝達特性を有するフィルタを用いて、エンジントルク目標値を演算する。制御ブロック92は、Ge(s)なる伝達特性を有している。Ge(s)は、エンジン設定部90により算出されたエンジンのトルク指令値が図示しないエンジンコントローラに出力されたから実際のエンジントルクが発生するまでの遅れを示すモデルである。そして、制御ブロック91から出力されるエンジントルク目標値を、制御ブロック92を通すことで、エンジントルク指令値(Ten)が算出される。エンジントルク指令値(Ten)は加算器39及び第三項算出部93に出力される。
【0065】
第三項算出部93は、制御ブロック92からの出力されるエンジントルク指令値(Ten)に、H(s)からなる伝達関数を有するバンドパスフィルタを通して、第2トルク目標値(Tm2)の第三項を算出する。
【0066】
制振制御部3は加算器39を有している。加算器39は、エンジントルク指令値(Ten)と制御ブロック33から出力されるトルク値(Tmn)とを加算し、その加算値を回転速度推定部34に出力する。加算器38は、第一項算出部35から出力される第2トルク目標値(Tm2)の第一項と第三項算出部93から出力され第三項との加算値から、第二項算出部37から出力される第二項を減算することで、第2トルク目標値(Tm2)を算出する。
【0067】
本例において、第1制御系では、回転角センサ6の出力と第二項算出部37との間の制御ラインが繋がり、第2制御系では、加算器39の出力から回転速度推定部34を介して第二項算出部37までの制御ラインが繋がる。第2制御系では、加算器38に対して、エンジントルク指令値(Ten)に基づく第2トルク目標値(Tm2)の第三項が入力されるため、本例は、加算器38の出力値をゼロにするよう、回転速度推定部34の前に加算器39を設け、加算器39にエンジントルク指令値(Ten)を入力する。
【0068】
第2制御系において、第一項算出部35から出力される第2トルク目標値(Tm2)の第一項は、Tmn×H(s)となる。回転速度推定部34からスイッチ36を介して第二項算出部37に入力される推定回転速度は、(Tmn+Ten)×Gp(s)となるため、第二項算出部37から出力される第2トルク目標値(Tm2)の第二項は、(Tmn+Ten)×Gp(s)×(H(s)/Gp(s))から、(Tmn+Ten)×H(s)となる。第三項算出部93から出力される第2トルク目標値(Tm2)の第三項は、Ten×H(s)となる。そして、減算器38には、第一項と第三項との加算値((Tmn+Ten)×H(s))と、当該加算値と逆符号の同じ値である第二項とが入力されることになり、第2トルク目標値(Tm2)の第一項と第二項との偏差を算出するとゼロになる。
【0069】
これにより、制振制御停止中、第1のトルク目標値(Tm1)及びエンジントルク指令値(Ten)の挙動がどのようになっても、あるいは、第1のトルク目標値(Tm1)及びエンジントルク指令値(Ten)が過渡的に変動したとしても、第2のトルク目標値(Tm2)はゼロになる。
【0070】
上記のように、本例において、第1制御系は、トルク指令値(T)に基づく第2トルク目標値(Tm2)の第一項と、エンジントルク目標値に基づく第2トルク目標値(Tm2)の第三項とを加算し、その加算値から、第二項算出部37により算出されるトルク算出値(第2トルク目標値(Tm2)の第二項に相当)を減算することで偏差を算出し、その偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を演算する。また、第2制御系は、検出回転速度の代わりに、エンジントルク指令値とトルク指令値から推定された推定回転速度を用いて第二項算出部37のトルク算出値を算出し、第一項と第三項との加算値から当該トルク算出値を減算することで偏差を算出し、その偏差に基づいて第2トルク目標値(Tm2)を演算する。これにより、第2制御系によりフィードバック制御をしている時には、減算器38の出力がゼロになるため、モデルGp(s)を含むフィルタに、余計なフィードバックトルク成分が蓄積することを防ぐことができる。また、第2制御系から第1制御系に切り替える際には、第1制御系の制御開始時に、余剰トルクがないため、トルクが急変することを防ぐことができる。また、本例では、第2制御系において、検出回転速度を用いていないため、モータの回転速度及びエンジンの回転速度が過渡状態になった場合でも、減算器38における偏差をゼロにすることができ、余剰トルクがフィルタに蓄積することを防ぐことができる。また本例では、制振制御の停止中であっても、第2制御系によるフィードバック制御を継続させることができるため、フィードバック制御に含まれる各フィルタの状態を最新の状態になり、制振効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…アクセル開度センサ
2…モータトルク設定部
21…第1トルク目標値算出部
3…制振制御部
31…加算器
32…時間遅れ制御部
33…制御ブロック
34…回転速度推定部
35…第一項算出部
36…スイッチ
37…第二項算出部
38…減算器
61…回転速度推定部
62…制御ブロック
4…モータトルク制御部
5…モータ
51…制御ブロック
6…回転角センサ
7…駆動軸
8、9…タイヤ
90…エンジントルク設定部
91、92…制御ブロック
93…第三項算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたモータを制振させる制振制御装置において、
前記車両の車両情報を入力として、前記車両へのトルク入力と前記モータの回転速度の理想伝達特性のモデルGm(s)と、前記車両へのトルク入力と前記モータの回転速度の実伝達特性のモデルGp(s)とを用いたモデルGm(s)/Gp(s)を含むフィルタにより第1トルク目標値を算出する第1トルク目標値算出手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、
前記モデルGp(s)を含むフィルタを用いて、トルク指令値及び前記回転速度検出手段により検出された検出回転速度に基づいて、第2トルク目標値を算出する第2トルク目標値算出手段と、
前記第1トルク目標値と前記第2トルク目標値とを加算して前記トルク指令値を算出する加算手段と、
前記トルク指令値に基づいて、前記モータを制御するモータ制御手段とを備え、
前記第2トルク目標値算出手段は、
前記トルク指令値に基づく値と前記検出回転速度に基づく値との偏差である第1偏差を算出し、前記第1偏差に基づいて前記第2トルク目標値を算出する第1制御系と、
前記トルク指令値を入力として前記モデルGp(s)を含むフィルタにより算出される推定回転速度を算出し、前記トルク指令値に基づく値と、前記検出回転速度に代えて前記推定回転速度に基づく値との偏差である第2偏差を算出し、前記第2偏差に基づいて前記第2トルク目標値を出力する第2制御系とを有する
ことを特徴とする制振制御装置。
【請求項2】
前記第2トルク目標値算出手段は、
前記モータを含む制御対象が線形領域に属する場合には、前記第1制御系で前記第2トルク目標値を算出し、
前記モータを含む制御対象が線形領域に属する場合には、前記第2制御系で前記第2トルク目標値を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の制振制御装置。
【請求項3】
前記第2トルク目標値算出手段は、
前記第1制御系と前記第2制御系とを切り替える切替部を有し、
前記第1制御系は、
前記トルク指令値を入力として前記モデルGp(s)を含むフィルタにより前記推定回転速度を算出し、
前記推定回転速度と前記検出回転速度との差により前記第1偏差を算出し、
前記第1偏差を入力として前記モデルGp(s)の逆系のモデルを含むフィルタにより前記第2トルク目標値を算出し、
前記第2制御系は、
前記推定回転速度と、前記切替部を介した前記推定回転速度との差により前記第2偏差を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制振制御装置。
【請求項4】
前記第2トルク目標値算出手段は、
前記第1制御系と前記第2制御系とを切り替える切替部を有し、
前記第1制御系は、
前記検出回転速度を入力として前記モデルGp(s)の逆系のモデルを含むフィルタによりトルク算出値を算出し、
前記トルク指令値に基づく値と前記トルク算出値との差により前記第1偏差を算出し、
前記第2制御系は、
前記切替部を介して前記検出回転速度の代わりに前記推定回転速度を入力として前記モデルGp(s)の逆系のモデルを含むフィルタにより前記トルク算出値を算出し、
前記トルク指令値に基づく値と前記トルク算出値との差により前記第2偏差を出力する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制振制御装置。
【請求項5】
前記第1制御系は、
前記第1偏差を入力として、前記モデルGp(s)及びバンドパスフィルタの伝達特性を示すモデルH(s)を用いたモデルH(s)/Gp(s)を含むフィルタにより前記第2トルク目標値を算出する
ことを特徴とする請求項3記載の制振制御装置。
【請求項6】
前記第1制御系は、
前記検出回転速度を入力として前記モデルGp(s)及びバンドパスフィルタの伝達特性を示すモデルH(s)を用いたモデルH(s)/Gp(s)を含むフィルタにより前記トルク算出値を算出し、
前記トルク指令値を入力として前記H(s)を含むフィルタにより前記トルク指令値に基づく値を算出する
ことを特徴とする請求項4記載の制振制御装置。
【請求項7】
前記車両に含まれるエンジンの目標トルク指令を入力として、前記Gm(s)/Gp(s)を含むフィルタによりエンジントルク目標値を算出するエンジン目標値算出手段をさらに備え、
前記第1制御系は、
前記トルク指令値に基づく値と前記エンジントルク目標値に基づく値とを加算した加算値から前記トルク算出値の差をとった値を前記第1偏差として算出し、
前記第2制御系は、
前記トルク指令値及び前記エンジントルク目標値を入力として前記モデルGp(s)を含むフィルタにより前記推定回転速度を算出し、
前記トルク指令値に基づく値と前記エンジントルク目標値に基づく値とを加算した加算値から前記トルク算出値の差をとった値を前記第2偏差として算出する
ことを特徴とする請求項4又は6に記載の制振制御装置。
【請求項8】
前記第2トルク目標値算出手段は、
前記第1制御系と前記第2制御系との間で制御系を切り換え、
前記制御系の切り換え前の前記推定回転速度と切り換え後の前記検出回転速度との偏差をオフセット値として算出し、
前記オフセット値を用いて、前記制御系の切り換え後の前記検出回転速度を補正する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の制振制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99018(P2013−99018A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236914(P2011−236914)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】