説明

制振構造および制震機能付き胴縁

【課題】 薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのを制限して、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーをより有効に伝達させること
【解決手段】 建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、薄板を躯体フレーム側として設け、制振機能付き胴縁の長手方向と壁パネルの長さ方向が直交する壁パネルを、帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に薄板に対して固定した構造とし、帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成した構造であって、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明人は、これまで、建築物の制振を目的として、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁を考案し、特願2007−157173号(特許文献1)に記載した技術を出願ずみである。
【0003】
特許文献1に記載された建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁は、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設け、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成した制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁であった。
【0004】
特許文献1では、地震時に、壁パネルと躯体フレームの間に相対変位が生じた際、壁パネルに固定された帯板が躯体フレーム側に設けられた薄板に対して相対変位を生じることになり、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に剪断変形が生じ、粘弾性体に振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体の内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供することが可能となった。
【0005】
また、上記の建築物の制振構造に用いる制振機能付き胴縁として、薄板を長尺とし、帯板を割付けして構成すれば、制振機能付き胴縁を長尺寸法と出来、施工時に、効率よく制振機能付き胴縁を配置することが可能となった。
【0006】
【特許文献1】特願2007−157173号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、地震時に、所定長さで割り付けた帯板単位では、薄板との相対的な剪断変形が生じ、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーを有効に伝達することが出来、一定の効果は認められるものの、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転して、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーが伝わりにくくなる傾向があり、特に、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で割り付けた帯板では、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーが伝わりにくいという問題があった。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、地震時に、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのを制限して、躯体フレーム側と壁パネルの間に介在させた粘弾性体に、振動エネルギーをより有効に伝達させ、制振効果を高めた建築物の制振構造を提供することである。
【0009】
更に、本発明は、これらの建築物の制振構造に用いることが可能で、上記目的を容易に達成することが可能な制振機能付き胴縁を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明に係る請求項1に記載の建築物の制振構造の構成は、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設け、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成した構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る請求項2に記載の制振機能付き胴縁の第1構成は、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けた構成であって、長手方向端部近傍で、帯板を貫通する透孔または切欠きを設けたことを特徴とする。
【0012】
次に、本発明に係る請求項3に記載の制振機能付き胴縁の第2構成は、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けた構成であって、長手方向端部近傍で、少なくとも薄板を長手方向に延長して設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る建築物の制振構造の第1構成によれば、建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設け、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成した構造であって、前記制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定したため、地震時に、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのを制限して、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーをより有効に伝達させることが可能となる。また、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で割り付けた帯板においても、長手方向中間部近傍で割り付けた帯板とほぼ同等に、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に有効に振動エネルギーを伝えることが可能となり、全体として、制振効果をより高めた建築物の制振構造を提供することが出来る。
【0014】
ここに、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定するのは、長手方向の片側端部のみで、薄板を躯体フレーム側に固定しても、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのを制限することは可能であるが、長手方向の両側端部で、薄板を躯体フレーム側に固定すれば、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのをより確実に制限することが可能となり、好ましい。
【0015】
制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定する方法は、木ねじ、セルフタップビス、拡張釘、釘などのアンカー類、接着材、薄板に躯体フレーム側へ突出したツメを設けて叩き込むなどの手段があるが、簡便で確実な強度を期待出来るのは、木ねじ、セルフタップビスなどのアンカー類であり、好ましい。アンカー類は、長手方向の片側端部で1本に限らず、2本以上で確実に固定してもよい。
【0016】
また、躯体フレームが、鉄骨の場合には、溶接固定する方法が、確実な固定度が得られる。
【0017】
なお、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定する際に、帯板も同時に固定してしまうと、該帯板の薄板に対する面内方向の回転を拘束することになり、その結果、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍においては、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に有効に振動エネルギーを伝えることが出来なくなるが、一方では、地震時に、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのを制限出来るため、長手方向中間部近傍で割り付けた帯板部分では、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーをより有効に伝達させることが可能である。よって、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板と共に帯板も同時に躯体フレーム側に固定してしまう方法であってもかまわないし、有効である。
【0018】
しかし、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍においても、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に有効に振動エネルギーを伝えるためには、薄板を躯体フレーム側に固定する際に、帯板も同時に固定しないようにするのが、より好ましい。その場合で、木ねじ、セルフタップビスなどのアンカー類で固定する場合には、固定位置に相当する帯板の部分に、貫通する透孔または切欠きを設け、アンカー類をその部分を貫通させることで帯板を避けて、薄板を躯体フレーム側に固定するとよい。
【0019】
また、本発明に係る請求項2に記載の制振機能付き胴縁の第1構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けた構成であって、長手方向端部近傍で、帯板を貫通する透孔または切欠きを設けたため、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側にアンカー類を用いて固定する際に、透孔または切欠きを貫通させることで帯板を避けて、薄板を躯体フレーム側に固定することが可能となる。よって、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍においても、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に有効に振動エネルギーを伝えることが出来る。
【0020】
更に、本発明に係る請求項3に記載の制振機能付き胴縁の第2構成によれば、薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けた構成であって、長手方向端部近傍で、少なくとも薄板を長手方向に延長して設けたため、当該延長した薄板部分で、薄板を躯体フレーム側にアンカー類を用いて簡単に固定することが可能となる。
【0021】
なお、前記延長部に、帯板や粘弾性体を配して、薄板を躯体フレーム側に固定する際に、帯板も同時に帯板や粘弾性体も固定してもかまわない。この場合は、該延長部の帯板部分のみ、該帯板の薄板に対する面内方向の回転を拘束することになり、その結果、制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍において、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に有効に振動エネルギーを伝えることが出来なくなるが、地震時に、薄板全体が躯体フレームに対して壁パネルの面内方向に回転するのを制限出来るため、長手方向中間部近傍で割り付けた帯板部分では、帯板と薄板の間に積層接着された粘弾性体に振動エネルギーをより有効に伝達させることは可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図により本発明に係る建築物の制振構造および制振機能付き胴縁の実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る建築物の制振構造の実施例を示す立面および平面説明図、図2は本発明に係る建築物の制振構造の実施例を示す斜視説明図、図3は図2に示した実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図、図4は従来技術の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図、図5は本発明に係る建築物の制振構造の実施例において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【0023】
また、図6は本発明に係る制振機能付き胴縁の3実施例を示す斜視説明図、図7は本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例において長手方向端部近傍の断面を示す説明図である。
【0024】
〔建築物の制振構造の実施例〕
図1〜図5において、建築物の制振構造の実施例について説明する。実施例は、木造軸組構造への適用の例であり、間柱に対しては、幅40mmの制振機能付き胴縁3を、本柱に対しては、幅90mmの制振機能付き胴縁3を採用している。
【0025】
第1実施例では、薄板3a、粘弾性体3b、帯板3cを接着積層した複数本の制振機能付き胴縁3を、互いに平行に、間柱と本柱に添うように鉛直に設けた。これに対して、壁パネル2は、長さ方向2cを水平方向とするように、横張りで、制振機能付き胴縁3の長手方向と壁パネル2の長さ方向2cが直交するように配し、壁パネル2をスクリュー釘5で帯板3cに固定している。
【0026】
帯板3cは、長さの中央一点を、アンカー部材4で躯体フレーム1側まで、面内・面外ともに固定した。ただし、帯板3cは、アンカー部材4を中心に、面内方向に回転することが可能である。壁パネル2は、スクリュー釘5で帯板3cに、さらに、アンカー部材4で帯板3cを躯体フレーム1側まで面外に固定したため、壁パネル2に作用する面外力に対して、粘弾性体3bや接着面を介さずとも、躯体フレーム1側に面外力を伝達することが可能となる。
【0027】
壁パネル2の幅寸法2aは455mmであり、帯板3cは、同寸法455mmで割付けし、割付け位置が壁パネル2の横目地に対して20mm上になるように配した。このように、壁パネル2の幅寸法2aと帯板3cの割付け寸法を合致させ、帯板3cの割付け位置と壁パネル2の幅端部位置を、略合致させたので、1枚の壁パネル2を、一本の制振機能付き胴縁3に対して、割付けされた帯板3c1枚のみに固定するのが、確実・容易になり、地震時に、壁パネル2と躯体フレーム1の間に相対変位が生じた際、壁パネル2に固定された帯板3cが躯体フレーム1側に固定された薄板3aに対して相対変位を生じることになり、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに剪断変形が生じ、粘弾性体3bに振動エネルギーが有効に伝達されるため、粘弾性体3bの内部摩擦によって制振効果を発揮することがことが出来る。
【0028】
ここに、図1〜図3では、所定長さ455mmで帯板3cを4枚割り付けた全長1820mmの制振機能付き胴縁3において、長手方向の最上部に割付けられた帯板3cを中心に描い説明図である。制振機能付き胴縁3の長手方向(上)端部近傍で、帯板3cには、透孔3hが設けられており、透孔3hを貫通して木ねじ6で薄板3aを躯体フレーム1に固定している。また、ここには図示していないが、制振機能付き胴縁3の長手方向(下)端部近傍で、長手方向の最下部に割付けられた帯板3cにおいても、透孔3hを設け、透孔3hを貫通して木ねじ6で薄板3aを躯体フレーム1に固定した。透孔3hの径は15mm、木ねじ6は、頭寸法12mm、軸径8mm、長さ50mmとした。
【0029】
このように、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、薄板3aを躯体フレーム1に固定したため、地震時に、薄板3a全体が躯体フレーム1に対して壁パネル2の面内方向に回転するのを制限して、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに振動エネルギーをより有効に伝達させることが可能となる。
【0030】
このような作用効果を、図4(従来技術)および図5(本技術:実施例)の、地震時の動きを模式的に示した立面説明図によって、さらに説明する。図4、図5共に、制振機能付き胴縁3の長手方向(上)端部近傍と、その上方に連続する他の制振機能付き胴縁3の長手方向(下)端部近傍の接続部を、上方に図示している。
【0031】
図4による従来技術では、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、薄板3aを躯体フレーム1に固定していないので、制振機能付き胴縁3の長手方向端部で、薄板3aが躯体フレーム1に対して壁パネル2の面内方向に回転Δしている。そのため、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに振動エネルギーが伝わりにくくなる。
【0032】
なお、従来技術でも、制振機能付き胴縁3の薄板3aは、長手方向で、所定寸法で割付けられた帯板3cごとに、アンカー部材4で複数箇所を固定されているため、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、薄板3aを躯体フレーム1に固定しなくとも、ある程度は、回転Δを制限できるが、アンカー部材4の固定度にも依存するが、地震時に、繰り返しの振動が作用すると、アンカー部材4の周囲が損傷したりして、アンカー部材4に引き抜けが生じ、制振機能付き胴縁3の薄板3aが躯体フレーム1に対して壁パネル2の面内方向に回転Δする。その際に、制振機能付き胴縁3の開放端である長手方向端部で、薄板3aが躯体フレーム1に対して壁パネル2の面内方向の回転Δは顕著となる。よって、特に、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で割り付けた帯板3cにおいて、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに有効に振動エネルギーを伝えることが出来なくなる。
【0033】
一方、図5による本技術では、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、固定位置に相当する帯板3cの部分に、貫通する透孔3hを設け、木ねじ6を透孔3hに貫通させることで帯板3cを避けて、薄板3aを躯体フレーム1に固定しているので、地震時に、薄板3aが躯体フレーム1に対して壁パネル2の面内方向に回転するのを制限して、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに振動エネルギーをより有効に伝達させることが可能となる。
【0034】
また、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で割り付けた帯板3cにおいても、長手方向中間部近傍で割り付けた帯板3aとほぼ同等に、帯板3cと薄板3aの間に積層接着された粘弾性体3bに有効に振動エネルギーを伝えることが可能となり、全体として、制振効果をより高めた建築物の制振構造を提供することが出来る。
【0035】
なお、図4、図5は、躯体フレーム1が図中にDの矢印で示したように変形した場合で、層間変形角を極端に1/10程度として描いたものである。従来技術を含めた基本メカニズムは、このように、躯体フレーム1、薄板3aは、層間変形に応じて転倒するが、帯板3cとそれに固定されている壁パネル2は、スライド変形し、その結果、薄板3aと帯板3cの間に相対変位が生じ、その間に積層接着された粘弾性体3bに、振動エネルギーが有効に伝達され、制振効果を高めることが出来るものである。本技術により、このような基本メカニズムによる制振効果をより効果的に生かすことが出来る。
【0036】
図6において、本発明に係る制振機能付き胴縁の3実施例について説明する。左図は、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、帯板3cを貫通する透孔3hを設けたものである。このように、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、帯板3cを貫通する透孔3hを設けることで、木ねじ、セルフタップビスなどのアンカー類で、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、薄板3aを躯体フレーム側に簡便に固定し、確実な強度を期待することが出来る。
【0037】
また、中図は、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、帯板3cを貫通する切欠き3iを設けたものである。このように、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、帯板3cを貫通する切欠き3iを設けることで、やはり左図の実施例と同様に、木ねじ、セルフタップビスなどのアンカー類で、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、薄板3aを躯体フレーム側に簡便に固定し、確実な強度を期待することが出来る。
【0038】
さらに、右図は、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、少なくとも薄板3aを長手方向に延長して設けたものである。このように、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、少なくとも薄板3aを長手方向に延長3jして設けることで、やはり左図、中図の実施例と同様に、木ねじ、セルフタップビスなどのアンカー類で、制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、薄板3aを躯体フレーム側に簡便に固定し、確実な強度を期待することが出来る。なお、ここでは、延長3jに、薄板3aに粘弾性体3bを接着した状態で設けたが、他に、延長3j長さに対応して、小さく割付けた帯板3cを合わせて設けてもよい。
【0039】
ここでは、薄板3aの厚みを0.8mm、粘弾性体3bの厚みを2mm、帯板3cの厚みを30mmとした。また、透孔3cの径を15mmとした。
【0040】
なお、ここでは、制振機能付き胴縁3の長辺の片側の端部のみを図示したが、制振機能付き胴縁3は、更に長尺であり、図示しない下方に、他方の長手方向端部を有したものである。例えば、長さ455mmの帯板3cを4つ割付け、全長を1820mmとしたものなどと出来る。
【0041】
図7において、本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例において長手方向端部近傍の断面を説明図する。左図は、フラットな形状の薄板3aと厚さ30mmの帯板3cによって構成した制振機能付き胴縁3の長手方向端部近傍で、帯板3cを貫通する透孔3hを設けたものである。このように、粘弾性体3b自体の剛性によって粘弾性体3bの厚みを確保する構造であってよい。ここでは、薄板3aの厚みを0.8mm、粘弾性体3bの厚みを2mmとした。
【0042】
また、右図は、薄板3bとして、更に厚みの薄いの鉄板の両サイドを折り曲げて重ねたもので構成した制振機能付き胴縁3である。このように、両サイドを折り曲げて、薄板3bの幅中央だけより薄い厚みとすることにより、木ねじ、セルフタップビスなどのアンカー類で薄板3aを躯体フレーム側に固定する際に、薄板3aを貫通する抵抗を小さくすることが出来、施工の効率上、好ましい。また、粘弾性体3bの接着する側をフラット面としたので、粘弾性体3bの接着力を安定的に確保出来、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の活用例として、建築物の制振構造およびその構造に用いる制振機能付き胴縁として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る建築物の制振構造の実施例を示す立面および平面説明図である。
【図2】本発明に係る建築物の制振構造の実施例を示す斜視説明図である。
【図3】図2に示した実施例を示す斜視説明図から壁パネルを点線で省略して示した説明図である。
【図4】従来技術の制振構造において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【図5】本発明に係る建築物の制振構造の実施例において地震時の動きを模式的に示した立面説明図である。
【図6】本発明に係る制振機能付き胴縁の3実施例を示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る制振機能付き胴縁の2実施例において長手方向端部近傍の断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 躯体フレーム
2 壁パネル
2a 幅寸法
2c 長さ方向
3 制振機能付き胴縁
3a 薄板
3b 粘弾性体
3c 帯板
3d 割付け継ぎ目
3h 透孔
3i 切欠き
3j 延長
4 アンカー部材(面外拘束手段)
5 スクリュー釘(固定部材)
6 木ねじ
Δ 回転

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体フレーム側と壁パネルの間に粘弾性体を介在させた構造において、
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着した複数本の制振機能付き胴縁を、互いに平行に、薄板を躯体フレーム側として設け、前記制振機能付き胴縁の長手方向と前記壁パネルの長さ方向が直交するように配した壁パネルを、前記帯板に固定することにより、粘弾性体を介して間接的に前記薄板に対して固定した構造とし、前記帯板を所要長さで割付け、割付けた帯板1枚ごとが躯体フレームに対して面内方向に回転可能なように、かつ該帯板を躯体フレームに対して面外方向に拘束して構成した構造であって、
前記制振機能付き胴縁の長手方向端部近傍で、薄板を躯体フレーム側に固定したことを特徴とする建築物の制振構造。
【請求項2】
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けた構成であって、
長手方向端部近傍で、帯板を貫通する透孔または切欠きを設けたことを特徴とする制振機能付き胴縁。
【請求項3】
薄板、粘弾性体、帯板をこの順で積層接着し、該帯板を所要長さで割付けた構成であって、
長手方向端部近傍で、少なくとも薄板を長手方向に延長して設けたことを特徴とする制振機能付き胴縁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−144377(P2009−144377A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321598(P2007−321598)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】