説明

削孔ビット、回転打撃式削孔装置、及び削孔底試験方法

【課題】回転打撃式削孔装置を削孔から抜去することなく試験やサンプリングを行うことを可能とする。
【解決手段】ダウンザホールハンマ2に把持される削孔ビット1のシャンク部19の中心Osと削孔先端部のブレード部21の中心Obとをずらし、シャンク部19の中心部にブレード部21まで貫通する貫通孔12を設け、ブレード部21の中心を回転中心とすることで、貫通孔12が土壌で目詰まりすることなく、ダウンザホールハンマ2の先端部に削孔ビット1を取付けて削孔を行うことができ、削孔を行った後、削孔ビット1の貫通孔12を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことができる。また、中心がブレード部19の中心Obに一致するチューブロッド16をダウンザホールハンマ2に延設し、チューブロッド16の中心を回転中心として回転することにより、既存のダウンザホールハンマ2を利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンザホールハンマを用いて削孔を行う際、その先端部に用いられる削孔ビット、削孔ビットをダウンザホールハンマの先端部に取付けた回転打撃式削孔装置、及び回転打撃式削孔装置を用いた削孔底試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような回転打撃式削孔装置の一例として、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この回転打撃式削孔装置は、ダウンザホールハンマのシリンダの後端部にクッション室を設けると共に、その先方には、ピストンの外周部との間に間隙が形成される拡径部を形成し、ピストンの後退時に、前記拡径部のピストン外周部との間の間隙を通じてクッション室に高圧エアを流通させ、拡径部通過後のピストンでクッション室の高圧エアを閉じこめて増圧し、そのクッション室の増圧された高圧エアでピストンの後退を前進に切替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−77579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば日本工業規格に定める標準貫入試験などの試験やサンプリングを削孔作業中に行いたいという要求がある。この試験やサンプリングは、削孔の底で行いたいという要求から、例えばダウンザホールハンマを用いた削孔作業では、試験やサンプリングの度に、先端部の削孔ビットごと、ダウンザホールハンマ、つまり回転打撃式削孔装置を削孔から抜去する必要がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、回転打撃式削孔装置を削孔から抜去することなく削孔底での試験やサンプリングを行うことを可能とする削孔ビット、回転打撃式削孔装置、削孔底試験方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の削孔ビットは、ダウンザホールハンマの削孔先端部に取付けられる削孔ビットであって、前記ダウンザホールハンマに把持されるシャンク部の中心と、削孔先端部のブレード部の中心とをずらし、前記シャンク部の中心部に、前記ブレード部まで貫通する貫通孔を設けたことを特徴とするものである。
また、前記貫通孔には、削孔作業中に高圧エアが送給されることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の回転打撃式削孔装置は、前記ダウンザホールハンマの中心部に貫通中空構造を形成し、当該ダウンザホールハンマの中心と前記本発明の削孔ビットのシャンク部の中心とを一致して、当該削孔ビットをダウンザホールハンマの削孔先端部に取付けたことを特徴とするものである。
また、前記貫通中空構造は、内側管の外側に外側管を被せた二重管構造を備え、内側管と外側管との間に高圧エアを供給することを特徴とするものである。
【0007】
また、中心が前記削孔ビットのブレード部の中心に一致するチューブロッドを前記ダウンザホールハンマに延設し、当該チューブロッドの中心を回転中心として回転することを特徴とするものである。
また、本発明の削孔底試験方法は、前記本発明の回転打撃式削孔装置を用いて削孔を行った後、ダウンザホールハンマの貫通中空構造及び削孔ビットの貫通孔を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
而して、本発明の削孔ビットによれば、ダウンザホールハンマに把持されるシャンク部の中心部には、削孔先端部のブレード部まで貫通する貫通孔が設けられているものの、シャンク部の中心とブレード部の中心とがずれているため、ブレード部の中心を回転中心とすれば、貫通孔が土壌で目詰まりすることなく、ダウンザホールハンマの先端部に取付けて削孔を行うことができ、削孔を行った後、削孔ビットの貫通孔を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことができ、これにより回転打撃式削孔装置を削孔から抜去することなく試験やサンプリングを行うことができる。
【0009】
また、削孔作業中は、貫通孔に高圧エアを送給することにより、土壌などが貫通孔に侵入するのを防止することができる。
また、本発明の回転打撃式削孔装置によれば、ダウンザホールハンマの中心部に貫通中空構造を形成し、当該ダウンザホールハンマの中心と前記本発明の削孔ビットのシャンク部の中心とを一致して、当該削孔ビットをダウンザホールハンマの削孔先端部に取付けたことにより、ダウンザホールハンマにより削孔ビットに打撃を与えながら削孔を行った後、ダウンザホールハンマの貫通中空構造及び削孔ビットの貫通孔を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことができ、これにより回転打撃式削孔装置を削孔から抜去することなく試験やサンプリングを行うことができる。
【0010】
また、貫通中空構造に、内側管の外側に外側管を被せた二重管構造を備え、内側管と外側管との間に高圧エアを供給することにより、試験やサンプリングは二重管構造の内側管の内側を通じて行うことができる。
また、中心が削孔ビットのブレード部の中心に一致するチューブロッドをダウンザホールハンマに延設し、当該チューブロッドの中心を回転中心として回転することにより、既存のダウンザホールハンマを用いて削孔作業を行うことができる。
【0011】
また、本発明の削孔底試験方法によれば、前記本発明の回転打撃式削孔装置を用いて削孔を行った後、ダウンザホールハンマの貫通中空構造及び削孔ビットの貫通孔を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことができ、これにより回転打撃式削孔装置を削孔から抜去することなく試験やサンプリングを行うことができ、削孔作業の手間と時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の削孔ビット、回転打撃式削孔装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の削孔ビット及びダウンザホールハンマの縦断面図である。
【図3】図2の削孔ビットの縦断面図である。
【図4】図3の削孔ビットの底面図である。
【図5】図1の回転打撃式削孔装置を用いた削孔底試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の削孔ビット、回転打撃式削孔装置、削孔底試験方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の削孔ビット1をダウンザホールハンマ2の先端部(図の下端部)に取付けた回転打撃式削孔装置の縦断面図であり、図2は、図1の削孔ビット1及びダウンザホールハンマ2の縦断面図である。削孔ビット1は、チャック3を介してダウンザホールハンマ2の先端部に取付けられている。本実施形態では、ダウンザホールハンマ2には、僅かな改造を施して、既存のものを利用した。勿論、実施にあたってダウンザホールハンマ2を新規に作製してもよい。ダウンザホールハンマ2のシリンダ内部には、周知のように削孔ビット1を打撃するピストン4が、図2の上下方向に移動可能に収納されている。ダウンザホールハンマ2の上端部にあるバックヘッド5には、高圧エアを供給するエア供給路6が上下に貫通するように形成されているが、本実施形態では、このエア供給路6内に、個別の貫通チューブ7を挿通固定して二重管構造としてあり、高圧エアは貫通チューブ7の外側、つまり内側管と外側管との間を通じて供給される。貫通チューブ7は、後述するプラグ及びチェックバルブをも貫通して、ディストリビュータ8の下端部まで、つまりピストン4の上方まで貫通されている。そして、この貫通チューブ7に連続するように、ピストン4の回転中心部に貫通孔11が貫通形成され、ピストン4の貫通孔11に連続するように、削孔ビット1の回転中心部にも貫通孔12が貫通形成されており、貫通チューブ7、貫通孔11,12によって、ダウンザホールハンマ2の中心部に中空貫通構造が形成されている。削孔ビット1の貫通孔12の上端部には、エグゾーストチューブ15が差し込まれている。
【0014】
エア供給路6の下端部には、上端部にプラグ9を備えたチェックバルブ10が配設されており、図示しないスプリングによって上方、即ちエア供給路6に押付けられている。プラグ9及びチェックバルブ10は貫通チューブ7の外側に緊密に被嵌されている。従って、貫通チューブ7の外側のエア供給路6、即ち二重管構造の内側管と外側管との間に高圧エアが供給されるとチェックバルブ10が図示下方に押し下げられ、高圧エアはピストン4の下方にあるリターンチャンバー13内に流入し、ピストン4を上方に押し上げる。ピストン4がディストリビュータ8の外周を覆うと、図示しないバルブが切替わって、ピストン4の上方のドライブチャンバー14に高圧エアが流入する。このとき、リターンチャンバー13内の高圧エアは、削孔ビット1の上端部に取付けられているエグゾーストチューブ15から削孔ビット1の下方に排出される。ドライブチャンバー14内の圧力が十分に高まると、ピストン4を加速しながら下方に押し下げ、それが削孔ビット1の上端部に衝突して打撃が加えられる。ピストン4がディストリビュータ8の外周から抜け落ちると、ドライブチャンバー14内の高圧エアは、ピストン4の貫通孔11、削孔ビット1の貫通孔12を通って削孔ビット1の下方に排出される。
【0015】
ダウンザホールハンマ2は、チューブロッド16と呼ばれる中空管の下端部に取付けられている。チューブロッド16は、予め所定の長さの中空管からなり、これを、削孔の深さに合わせて連結してなる。チューブロッド16の外周にはスクリューガイド20が形成されており、このスクリューガイド20に沿って、掘削された土壌が削孔上方に排出される。このとき、削孔ビット1の下端部から排出される高圧エアが土壌排出を促進する。チューブロッド16の上端部は、アダプター17を介して回転装置18に接続されており、この回転装置18によって、ダウンザホールハンマ2や削孔ビット1が、チューブロッド16ごと回転される。なお、チューブロッド16及びアダプター17の詳細については後段に詳述する。また、チューブロッド16の内部には、前記二重管構造になっている貫通チューブ7の外側のエア供給路6に高圧エアを供給するための二重パイプ22が設けられている。即ち、二重パイプ22の内側管と外側管との間から、前記貫通チューブ7の外側のエア供給路6に高圧エアが供給される。
【0016】
図3、図4には、削孔ビット1の詳細を示す。図3は、削孔ビット1の縦断面図、図4は削孔ビット1の底面図である。削孔ビット1は、上部のシャンク部19がダウンザホールハンマ2のチャック3に納まってダウンザホールハンマ2に取付けられている。シャンク部19の下方に、実際の削孔に係るブレード部21が設けられている。なお、実質的に刃部が形成されていないものについても、シャンク部の下方で、実際の削孔に関与する部分をブレード部と定義する。
【0017】
ブレード部21の底面は、図4に明示するように、図中の符号Obを中心とする円形体である。このブレード部21には四方向に窪み部23が形成され、各窪み部23には前記貫通孔12に連通する連通孔24が開設され、これにより各窪み部23がエアブローを構成する。一方、図中の符号Osは、シャンク部19の中心である。図から明らかなように、本実施形態では、ブレード部21の中心Obとシャンク部19の中心Osはずれている。そして、前述した貫通孔12の中心は、シャンク部19の中心Osに一致している。即ち、ブレード部21の中心Obとシャンク部19の中心Osはずれており、そのシャンク部19の中心部に、ブレード部21まで貫通する貫通孔12が形成されている。
【0018】
更に、図1に示すように、前記ダウンザホールハンマ2の中心及びチューブロッド16内の二重パイプ22の中心は、前記削孔ビット1のシャンク部19の中心Osに一致し、チューブロッド16の中心及びアダプター17の中心は、前記削孔ビット1のブレード部21の中心Obに一致している。チューブロッド16は、アダプター17の中心と共にブレード部21の中心Obを回転中心として回転するから、ダウンザホールハンマ2及び削孔ビット1のシャンク部19は、この回転中心から偏心して回転する。つまり、削孔ビット1の貫通孔12も偏心して回転する。
【0019】
このように削孔ビット1の削孔先端部に開設された孔部が偏心して回転する場合には、その孔部の回転軌跡は、他の刃部で削孔されるので、前記貫通孔12が土壌で目詰まりすることがなく、通常と同様にダウンザホールハンマ2の削孔先端部に削孔ビット1を取付けて削孔を行うことができる。その削孔の後、例えば日本工業規格に定める標準貫入試験を行う場合には、回転打撃式削孔装置の回転を停止すると、図5に示すように、チューブロット16の二重パイプ、貫通チューブ7、削孔ビット1の貫通孔12は連通しているので、アダプター17を取外し、地上部から、貫入試験用ボーリングロッドR、コーン付きサンプラーSを貫通孔12内に装入し、ウインチWに滑車Kを取付け、コーンプーリ巻上ドラムDでハンマHを持ち上げ、それをノッキングヘッドNに落下させて試験及びサンプリングを行う。
【0020】
前述したように、削孔作業中に、削孔している土壌の試験やサンプリングを行いたいという要求がある。これは、例えば削孔を進めていくうちに削孔底の土壌がどのように変化しているのかを判定したいという要求からきている。しかしながら、従来のダウンザホールハンマでは、削孔作業中に削孔底の試験やサンプリングを行うためには、ダウンザホールハンマを削孔から抜去しなければならない。これは、単に作業が面倒であるというだけでなく、ダウンザホールハンマを削孔から抜去することで削孔自体が崩落する恐れもある。本実施形態では、削孔からダウンザホールハンマを抜去することなく、削孔底の試験やサンプリングを行うことができるので、作業が容易であるばかりでなく、削孔の崩落自体を回避することもできる。
【0021】
このように本実施形態の削孔ビット、回転打撃式削孔装置、削孔底試験方法では、ダウンザホールハンマ2に把持される削孔ビット1のシャンク部19の中心部には、削孔先端部のブレード部21まで貫通する貫通孔12が設けられているものの、シャンク部19の中心Osとブレード部21の中心Obとがずれているため、ブレード部21の中心を回転中心とすれば、貫通孔が土壌で目詰まりすることなく、ダウンザホールハンマ2の先端部に削孔ビット1を取付けて削孔を行うことができ、削孔を行った後、削孔ビット1の貫通孔12を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことができ、これにより回転打撃式削孔装置を削孔から抜去することなく試験やサンプリングを行うことができる。
【0022】
また、削孔作業中は、貫通孔12に高圧エアを送給することにより、土壌などが貫通孔に侵入するのを防止することができる。
また、ダウンザホールハンマ2の中心部に貫通チューブ7によって貫通中空構造を形成し、当該ダウンザホールハンマ2の中心と削孔ビット1のシャンク部19の中心とを一致して、当該削孔ビット1をダウンザホールハンマ2の削孔先端部に取付けることにより、ダウンザホールハンマ2により削孔ビット1に打撃を与えながら削孔を行った後、ダウンザホールハンマ2の貫通チューブ7からなる貫通中空構造及び削孔ビット1の貫通孔12を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことができる。
また、中心が削孔ビット1のブレード部19の中心Obに一致するチューブロッド16をダウンザホールハンマ2に延設し、当該チューブロッド16の中心を回転中心として回転することにより、既存のダウンザホールハンマ2を利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1は削孔ビット、2はダウンザホールハンマ、3はチャック、4はピストン、5はバックヘッド、6はエア供給路、7は貫通チューブ、8はディストリビュータ、9はプラグ、10はチェックバルブ、11、12は貫通孔、13はリターンチャンバー、14はドライブチャンバー、15はエグゾーストチューブ、16はチューブロッド、17はアダプター、18は回転装置、19はシャンク部、20はスクリューガイド、21はブレード部、22は二重パイプ、23は窪み部、24は連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンザホールハンマの削孔先端部に取付けられる削孔ビットであって、前記ダウンザホールハンマに把持されるシャンク部の中心と、削孔先端部のブレード部の中心とをずらし、前記シャンク部の中心部に、前記ブレード部まで貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする削孔ビット。
【請求項2】
前記貫通孔には、削孔作業中に高圧エアが送給されることを特徴とする請求項1に記載の削孔ビット。
【請求項3】
前記ダウンザホールハンマの中心部に貫通中空構造を形成し、当該ダウンザホールハンマの中心と前記請求項1又は2に記載の削孔ビットのシャンク部の中心とを一致して、当該削孔ビットをダウンザホールハンマの削孔先端部に取付けたことを特徴とする回転打撃式削孔装置。
【請求項4】
前記貫通中空構造は、内側管の外側に外側管を被せた二重管構造を備え、内側管と外側管との間に高圧エアを供給することを特徴とする請求項3に記載の回転打撃式削孔装置。
【請求項5】
中心が前記削孔ビットのブレード部の中心に一致するチューブロッドを前記ダウンザホールハンマに延設し、当該チューブロッドの中心を回転中心として回転することを特徴とする請求項3又は4に記載の回転打撃式削孔装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載の回転打撃式削孔装置を用いて削孔を行った後、ダウンザホールハンマの貫通中空構造及び削孔ビットの貫通孔を通じて削孔底の試験又はサンプリングを行うことを特徴とする削孔底試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122329(P2011−122329A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279687(P2009−279687)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(591205536)JFEシビル株式会社 (39)
【出願人】(509339050)株式会社フジ・アールエムシー (2)
【Fターム(参考)】