説明

削孔工法

【課題】可撓性ロッドを具備する自在ボーリングマシンを用いて削孔を行った後に、掘削されたボーリング孔の崩壊或いは崩落を防止することが出来て、且つ、削孔されたボーリング孔内に異物(土砂や泥水、その他)が流入して作業に必要な機器の挿入を妨げてしまうことを防止することが出来る削孔工法の提供。
【解決手段】可撓性を有する中空のロッド(1)内部の中空部分(12,13)は削孔流体の流路を構成し、前記ロッド先端(11)を閉鎖している閉鎖部材(3)は脱着自在に構成されており、前記削孔手段(15)から削孔流体を噴射して地盤を削孔し、前記閉鎖部材(3)を前記中空のロッド先端(11)から取り外し且つ前記ロッド(1)内部の中空部分(13)を介して回収し、削孔後の作業に必要な機器(5、7、9、10)を前記ロッド内側の中空部分(13)内へ挿入して中空ロッド先端(11)まで移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性ロッドを具備する自在ボーリング可能な機器を使用する削孔技術、いわゆる「曲がりボーリング」に関する。
【背景技術】
【0002】
自在ボーリングマシンを使用する曲がりボーリングは、任意のラインに沿って削孔を行うことが出来るので、広範な応用範囲を有している。
例えば、既存建造物から離隔した箇所から当該既存建造物直下の領域まで削孔して、当該既存建造物直下の領域の液状化防止を行うことが出来る(特許文献1参照)。
また、任意の地点に機器を設置して、所定のラインに沿って地中を削孔し、所望の領域に充填材を注入することが出来る(特許文献2参照)。
或いは、離隔した箇所から汚染土壌まで所定のラインに沿って地中を削孔し、削孔されたボーリング孔を利用して当該汚染土壌を浄化することが出来る(特許文献3)。
これ等の応用例について、本出願人は既に提案している。
【0003】
ここで、上述した様な各種応用技術を実施するに際しては、曲がりボーリングで削孔されたボーリング孔から、一端、自在ボーリングロッドを引き抜き、掘削されたボーリング孔へ必要な部材を挿入する必要がある。
【0004】
しかし、例えば砂地盤の様な軟弱な地盤であれば、自在ボーリングロッドを引き抜くことにより、削孔されたボーリング孔が崩壊或いは崩落してしまう恐れが存在する。
そして、比較的地盤が強固で、削孔されたボーリング孔が崩壊或いは崩落しない場合であっても、自在ボーリングロッドを引き抜いた後に、削孔されたボーリング孔内に土砂や泥水等が流入して、その後の作業に必要な機器の挿入を妨げる恐れが存在する。
上述した技術(特許文献1〜特許文献3)は有用な技術ではあるが、係る問題に対して何等寄与するものではない。
【特許文献1】特開2004−60243号公報
【特許文献2】特開2003−3459号公報
【特許文献3】特開2004−50099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、可撓性ロッドを具備する自在ボーリングマシンを用いて削孔を行った後に、掘削されたボーリング孔の崩壊或いは崩落を防止することが出来て、且つ、削孔されたボーリング孔内に異物(土砂や泥水、その他)が流入して作業に必要な機器の挿入を妨げてしまうことを防止することが出来る削孔工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の削孔工法は、先端に削孔手段(例えば、削孔流体吐出孔15)及び削孔方向制御手段(例えば、修正用反力板2)を設けた可撓性を有する中空のロッド(可撓性ロッド1)を用いてボーリング孔を削孔する削孔工法(いわゆる「曲がりボーリング」)において、前記ロッド(1)内部の中空部分(12,13)は削孔流体(例えば、ベントナイト、水)の流路を構成し、前記ロッド先端(11)を閉鎖している閉鎖部材(先端コア部3)は脱着自在に構成されており、前記削孔手段(15)から削孔流体を噴射して地盤を削孔する削孔工程と、(例えば、回収装置4を用いて)前記閉鎖部材(3)を前記中空のロッド先端(11)から取り外し且つ前記ロッド(1)内部の中空部分(13)を介して(羽口50側へ)回収する閉鎖部材回収工程と、削孔後の作業(例えば、スリーブ管5による注入、TVカメラ7による地盤状況確認、磁気探査装置9挿入による磁気探査、サンプリング装置10によるサンプリング)に必要な機器(スリーブ管5、TVカメラ7、磁気探査装置9、サンプリング装置10)を前記ロッド内側の中空部分(13)内へ挿入して中空ロッド先端(11)まで移動する挿入工程とを有することを特徴としている(請求項1)。
【0007】
本発明において、前記挿入工程では、削孔後の作業に必要な機器(5,6,7,9,10)を挿入する際に、ロッド(1)内部の中空空間(13)に削孔流体を噴射するのが好ましい(請求項2)。
【0008】
本発明において、前記閉鎖部材回収工程では、前記閉鎖部材(3)を前記中空のロッド先端(11)から取り外して前記ロッド内部の中空部分(13)を介して(羽口50側へ)回収する際に、ロッド内部の中空空間(12)における前記閉鎖部材(3)よりもロッド先端(11)側の領域へ削孔流体を噴射するのが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
上述する構成を具備する本発明によれば、閉鎖部材(3)を羽口(50)側へ回収することにより、曲がりボーリングで用いられる可撓性ロッド(1)の内部における中空部分(13)を介して、上述した様な必要な機器(例えば、スリーブ管5、TVカメラ7、磁気探査装置9、サンプリング装置10)を、ロッド先端(11)に位置させることが出来る。
その際に、可撓性ロッド(1)は上述の必要な機器(5,6,7,9,10)の移動経路を確保する作用を奏するので、軟弱な地盤が崩落等を起こしても、可撓性ロッド(1)の内部における中空部分(13)を介して、各種作業に必要な機器(5,6,7,9,10)を所定箇所へ配置することが出来る。そして、可撓性ロッド内部の中空部分(12,13)には異物は侵入し難いので、異物による機器の設置が妨げられてしまう恐れもない。
【0010】
可撓性ロッド内部の中空部分(12,13)に異物が侵入したと仮定しても、本発明において、削孔後の作業に必要な機器(5,6,7,9,10)を挿入する際に、ロッド内部の中空空間(12,13)に削孔流体を噴射する様に構成すれば(請求項2)、ロッド内部の中空空間(12,13)に存在する異物は、ロッド内部の中空空間(12,13)に噴射される削孔流体により、ロッド内部から除去される。
従って、上述した様な異物が、削孔後の作業に必要な機器(5,6,7,9,10)の挿入を妨げてしまう恐れは未然に防止されるのである。
【0011】
さらに本発明では、前記閉鎖部材回収工程では、前記閉鎖部材(3)を前記中空のロッド先端(11)から取り外して前記ロッド内部の中空部分(13)を介して(羽口50側へ)回収する際に、ロッド内部の中空空間(12)における前記閉鎖部材(3)よりもロッド先端(11)側の領域へ削孔流体を噴射しているので(請求項3)、前記閉鎖部材(3)よりもロッド先端(11)側の領域に負圧が生じることが防止され、ロッド先端(11)からロッドの中空空間(12,13)内に異物が侵入するのを抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面(図1〜図34)を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図34において、同一の部材には、同一の符号が付してある。
【0013】
本発明は、例えば、
(a) 曲がりボーリングにより所定領域を掘削した後、パッカを具備した注入スリーブを挿入して固化材その他の薬液を注入する作業、
(b) 曲がりボーリングの先端にTVカメラを挿入して、地盤の状況を確認する作業、
(c) 曲がりボーリングの先端に磁気探査装置を挿入して、磁気探査を行う作業、
(d) 曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、回収する作業(地盤のサンプリング)、
等に適用可能である。
【0014】
ここで、上述した項目(a)の注入スリーブの挿入は、例えば薬液注入工法において、効率的な薬液注入を可能ならしめるために行われる。
【0015】
上述した項目(b)のTVカメラの挿入は、挿入されたTVカメラによって掘削孔の先端の状況や、掘削孔先端位置が把握出来るので、正確な掘削経路を確認しつつ施工できると言うメリットがある。
【0016】
上述した項目(c)の磁気探査装置とは、管や杭が存在する場合、その位置を把握するために、すなわち施工領域に存在する異物の探査を行う装置である。そして、その様な既存の異物の位置を把握できるので、当該異物と干渉しない様に掘削できる。
【0017】
上述した項目(c)の地盤のサンプリングは、掘削しようとする地盤の性状を予め把握して、適正な施工を可能ならしめる予備工程である。
【0018】
上記(a)〜(d)の作業時に、曲がりボーリング(以下、曲がりボーリングをボーリングロッドと言う)1の先端コア部3を回収した際に土砂等が流入した場合に、ジャミング等を生じない様にする必要がある。
【0019】
そのため、図示の実施形態では、ボーリングロッド1から先端コア部3を回収しても、土砂等の流入に起因するジャミングが発生しない様に、図1〜図6で示す様な態様で、曲がりボーリング先端の先端コア部3を羽口側(或いは地上側)へ回収し、そして、再び先端コア部3を曲がりボーリング先端に配置させるのである。
【0020】
先ず、図1は、例えば、可撓性を有するボーリングロッド1で土壌Gを所定距離まで削孔した状態が示されている。
【0021】
ボーリングロッド1の先端11は、傾斜した平面の端面11Cを有し、その端面11Cには、修正用反力板2が、端面11Cの最先端よりも図示における前方上方に延在するように取り付けられている。
【0022】
ボーリングロッド1はいわゆる「中空」の部材であり、その全長に亘って中空部分13が設けられている。中空部分13の先端部の先端中空部12は、前記端面11Cを貫通しするように構成されている。
修正用反力板2にも、あたかも、その先端中空部12が反力板2を貫通するが如く、中空孔22が形成されている。
先端中空部12の内径は、中空部分13の内径よりも小さく形成されている。
【0023】
図1において、その先端中空部12と中空部分13に跨って、先端コア部3が配置されている。先端コア部3は、その前面3fは、修正用反力板2の傾斜した前面21と面一となる様に構成されている。
先端コア部3は、先端中空部12及び中空部分13を閉塞させるように挿入されており、先端コア部3の形状は、中空部分13と先端中空部12と相補の形状となっている。すなわち、先端コア部3の前部31が先端中空部12と同径で、先端コア部3の後部32が中空部分13と同径である。
【0024】
ボーリングロッド1の先端中空部12の外殻側に相当する部分には、削孔水流路14が形成されている。この削孔水流路14は、ボーリングロッド1の先端中空部12に到達した削孔水(削孔流体)を、ボーリングロッド1の先端近傍に形成された削孔水吐出口15へ供給する。
削孔水吐出口15の向き、より詳細には削孔水吐出口15から噴射される削孔水の噴射噴射方向は、修正用反力板2の向いている方向と同じである。
【0025】
前記先端コア部3の軸の中心部にはセンター孔33が形成されており、センター孔33は、先端コア部3の後面3rに開口部33oを有しており、先端コア部3の前部31の中程まで達する様に形成されている。
センター孔33において、開口部33o近傍には、内径の拡大した拡径部34が形成されている。拡径部34は、後述する回収装置(以下、「回収装置」を「回収ロッド」と記載する)4のロック爪を引っ掛けるために形成されている。
【0026】
前端コア部3の前部31の領域には削孔水通路35が形成され、その削孔水通路35の一方の開口部は前記ボーリングロッド1側の削孔水流路14の開口部に一致し、他方の開口部は前記センター孔33に開口している。
尚、図1中、符号100は削孔されたボーリング孔を示し、符号50はボーリング孔100の羽口(地上側)を示している。
【0027】
図1で示す削孔工程に続く図2の工程では、前記先端コア部3のセンター孔33の開口部33oに、回収装置である回収ロッド4の先端の細径部42が差し込まれる。
回収ロッド4は、本体部41と、先端の円錐部42tを有する細径部42とにより構成され、細径部42先端の円錐部42tがセンター孔33に差し込まれる。
【0028】
回収ロッド4における細径部42先端の円錐部42tがセンター孔33に差し込まれた状態で、すなわち回収ロッド4が先端コア部3と係合した状態で、回収ロッドと共に先端コア部3が羽口50側(地上側)に回収される。
【0029】
回収ロッド4を先端コア部3と係合させる場合、前記細径部42には、図示しない公知のロック機構が設けてある。図示はされていないが、その様なロック機構としては、例えば、スプリング等で半径方向外方へ付勢された爪が細径部42の外周から飛び出し、先端コア部3のセンター孔33の拡径部34と係合するような機構が採用可能である。
係るロック機構の作用により、先端コア部3が回収ロッド4から逸脱しないで地上側に回収されるのである。
【0030】
ここで、回収ロッド4には全長に亘って流体流路43が形成されており、その流体流路を流れる流体が、回収ロッドの先端42tに形成された噴射孔43nから噴射されるように構成されている。
【0031】
図3に示すように、先端コア部3をボーリングロッド1の先端11から回収ロッド4で羽口50側に回収する場合は、前記噴射孔43nから削孔流体その他の流体を噴射させることにより、噴射された流体(矢印J)は、先端コア部3に形成された前記センター孔33及び削孔水通路35を経由して、ロッド1の中空部分3における先端コア部3よりも先端側(図3では左側)の領域に流入し、同領域における負圧の発生を防止して、土砂がロッド1の内部(ボーリングロッド1の先端中空部12及び中空部分13)に吸引されるのを抑制する。
【0032】
図4〜図6は、図1〜図3で示す工程を経て地上側に回収された先端コア部3を、曲がりボーリング先端11の所定箇所へ再度設置する工程を示している。
【0033】
図4において、羽口側50からボーリングロッド1の先端11に向かって、先端コア部3を係合した回収ロッド4を再挿入する。再挿入に際しては、回収ロッド4の先端の噴射孔43nから、掘削流体(水、ベントナイト)を噴射する(矢印J)。
ボーリングロッド先端11の開口部内に土砂が流入したとしても、流入した土砂Gaは、噴射孔43nから噴射される掘削流体(水、ベントナイト)により、開口部(修正用反力板2の中空孔)22外へ排出することができる。
【0034】
図5は、先端コア部3のボーリングロッド1の先端11への挿入が完了した状態を示している。
ここで、図4で示す様に、ボーリングロッド先端11の開口部内に土砂が流入したとしても、当該土砂は噴射孔43nから噴射される掘削流体(水、ベントナイト)により排出されるので、ジャミングを生じることなく、先端コア部3をボーリングロッド1の先端11における適正位置に設置できるのである。
【0035】
図6は、回収ロッド4を先端コア部3から抜き去り、地上側に回収ロッド4が引抜かれ、再びボーリングロッド1で削孔を開始しようとしている状態を示している。
図2に関連して説明した図示しないロック機構においては、例えば図示しないロック爪を回収ロッド4内に格納し、回収ロッド4の先端コア部3との係合を解除する。
【0036】
ここで、切削流体としては、次のような性質が要求される
(1) 回転の抵抗を減少する潤滑効果が必要である(水とベントナイトは、この条件を見たしている)。
(2) 掘削箇所先端(刃先)を冷却する効果を奏する必要がある(水とベントナイトは、この条件を見たしている)。
(3) 削孔土砂を排出するため、削孔流体には、或る程度の比重(削孔土砂が浮き上がる程度の比重:1.02〜1.05)があるのが望ましい。この点で、ベントナイトは望ましい。
(4) 逸水防止のために、削孔壁面に膜を作る必要がある(ベントナイト(泥水)は膜を作るので、好適)。
【0037】
図1には明示されていないが、削孔流体としてベントナイトを用いた場合には、削孔工程と同時に、曲がりボーリングの中空ロッド(ボーリングロッド)1の内壁面にベントナイト(削孔用液体)との薄膜(70μm程度)を形成して、ボーリングロッド先端11から流入した土砂が内壁面に付着しない様にする工程を実行していることになる。
【0038】
図7で示す様に、湾曲した掘削路の場合、先端コア部3が曲がりロッド内壁面13fと接触してしまう恐れが存在する。先端コア部3とロッド内壁面13fとが面接触であれば、土砂が多少存在してもジャミングしないが、点接触の箇所に土砂が存在すると、ジャミングを起こし易い。
しかし、切削流体としてベントナイトを用いれば、ボーリングロッド内壁面13fに膜が形成されるので、ロッド内壁面13fに対して流入土砂が常に分離した状態を維持しており(ロッド内壁面13fと流入土砂との間には、ベントナイトの膜が介在するため)、また、先端コア部3挿入時に流入土砂の洗浄を行い、点接触箇所に流入土砂が残存してしまうことが完全に防止されるので、係るジャミングを防止することが出来る。
尚、図7に示す先端コア部3の外径E及び長さLと、ボーリングロッド1の中空部分13の内径D及び内径中心点の軌跡の曲率半径Rの関係については、後述する。
【0039】
なお、切削流体として水を用いた場合においても、先端コア部3挿入時に流入土砂の洗浄を行うので、点接触箇所に流入土砂が残存してしまうことが完全に防止され、ジャミングが防げる。
【0040】
すなわち、削孔用流体としては、粘性があり、膜を形成する流体であるベントナイトが望ましい。
もちろん、高圧水を削孔用流体として使用することは可能である
【0041】
排出された土壌(掘削孔100の内壁面とボーリングロッド1の外周面との間の環状の空間)と、ボーリングロッド1の推進力とにより、ベントナイトの注入量(地上側のポンプの吐出流量)を制御する。具体的な注入量についてはケース・バイ・ケースである。
ベントナイト注入量の制御に関しては、例えばデータベースに貯えられた既存のデータや、施工管理者の経験等により行われる。
掘削流体が水の場合も同様である。
【0042】
図示はされていないが、先端コア部3の回収時や再挿入時において、ボーリングロッド1の先端11の開口部に流入した土砂がボーリングロッド1よりも外に位置する様に、修正用反力板2及び後述するスリーブ管5を地上側に若干量引いて、土砂自体は移動しなくても、機構に対する相対的な位置を変位せしめ、以って、土砂が機構外に位置する様にせしめても良い。
【0043】
図示はされていないが、掘削流体を充填することに代えて、ロッド1内部に泡を充填しても良い。その場合、図1の掘削工程終了時に、ベントナイトと泡とを置換し、泡の存在下で、計測器等の出し入れを行う。そして、先端コア部3の再挿入時で、例えば、計測器をボーリングロッド1から外した時に、中空ロッドの泡をベントナイトに置換するようにできる。
【0044】
次に、上述した(a)〜(d)の各作業、すなわち
(a) 曲がりボーリングにより所定領域を掘削した後、パッカを具備したスリーブ管を挿入して固化材その他の薬液を注入する作業、
(b) 曲がりボーリングの先端にTVカメラを挿入して、地盤の状況を確認する作業、
(c) 曲がりボーリングの先端に磁気探査装置を挿入して、磁気探査を行う作業、
(d) 曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、サンプル土壌を回収する作業、
について、以下に詳細に説明する。
【0045】
先ず、作業(a)、すなわち曲がりボーリング(ボーリングロッド)1により所定領域を掘削した後、パッカを具備したスリーブ管を挿入して固化材その他の薬液を注入するに関して、図8〜図16を参照して説明する。
【0046】
図8において、中空状のボーリングロッド1の先端部11を先端コア部3によって閉塞させた状態で、所定領域を削孔する。
次に、回収ロッド4を羽口(地上)50側から挿入して、先端コア部3のセンター孔33に回収ロッド4の先端部42を係合させる(図9)。
【0047】
図10では、先端コア部3を係合させた状態の回収ロッド4を羽口50側に抜き取る。換言すれば、先端コア部3をボーリングロッド1の先端から取り外す。
その際に、図3を参照して説明したのと同様に、先端コア部3から削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の内部に負圧が発生して土砂が流入することを、事前に防止する。
【0048】
図11では、羽口50側からボーリングロッド1の中空部13にスリーブ管5を挿入し、そのスリーブ管5をボーリングロッド1の先端部11よりも前方まで貫通させる。
その際に、図4で説明した通り、スリーブ管5の先端の図示しない噴射機構より、削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の中空部13に流入した土砂を排除する。
【0049】
スリーブ管5をボーリングロッド1の先端部11よりも前方まで貫通させた後、ボーリングロッド1を地上側に抜き取る(図12)。なお、図12では、ボーリングロッド1が抜き取られた後の状態が描かれている。
図13において、スリーブ管5の内部にパッカ6を挿入し、その挿入したパッカ6をスリーブ管5の前端部まで押込む。
【0050】
図14では、掘削してあったボーリング孔100の内部に、例えば、固化材Kを充填し、図15において、固化材Kが充填された状態でパッカ6の1対の膨張部材61、61を膨張させ、その1対の膨張部材61、61の間に形成された噴射孔(薬液Nの噴出箇所)から薬液Nを噴出する(1段目の注入)。薬液Nは土壌G側まで浸透する。
【0051】
1段目の注入が終われば、図16で示す様に、スリーブ管5及びパッカ6を所定量だけ羽口50側に引抜き、その位置で、2段目の薬液の注入を行う。以下、順次、羽口50側に向かって、薬液の注入を行う。
【0052】
次に図17〜図21を参照して、上記作業(b)、すなわちボーリングロッド1の先端にTVカメラを挿入して、地盤の状況を確認する作業に関して説明する。
【0053】
図17〜図21の内、図17〜図19の工程の説明は、前記図8〜図10と同様であるので省略する。
ここで、図19の工程に際しては、図3を参照して説明したのと同様に、先端コア部3から削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の内部に負圧が発生して土砂が流入することを、事前に防止する。
【0054】
次の図20では、羽口50側からボーリングロッド1の中空部13に、先端にTVカメラ7を装着した回収ロッド4を羽口50側から挿入し、TVカメラ7をボーリングロッド1の先端部11よりも前方に配置する。
先端にTVカメラ7を装着した回収ロッド4を挿入する際に、図4で説明した通り、スリーブ管5の先端の図示しない噴射機構より、削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の中空部13に流入した土砂を排除する。
【0055】
TVカメラ7をボーリングロッド1の先端部11よりも前方まで押出した後、図21においてTVカメラ7を用いて地盤状況の確認を行う。
【0056】
次に、上記作業(c)、すなわちボーリングロッド1の先端に磁気探査装置を挿入して磁気探査を行う作業に関して、図22〜図28を参照して説明する。
【0057】
図22〜図28の内、図22〜図24の工程の説明は、前記図8〜図10と同様であるので省略する。
ここで、図24の工程に際しては、図3を参照して説明したのと同様に、先端コア部3から削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の内部に負圧が発生して土砂が流入することを、事前に防止する。
【0058】
次の図25では、羽口50側からボーリングロッド1の中空部13に塩化ビニル製のパイプ8を挿入し、その塩化ビニル製のパイプ8をボーリングロッド1の先端部11よりも前方まで貫通させる。
塩化ビニル製のパイプ8をボーリングロッド1の中空部13へ挿入する際に、図4で説明したのと同様に、スリーブ管5の先端の図示しない噴射機構より、削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の中空部13に流入した土砂を排除する。
【0059】
図26では、塩化ビニル製のパイプ8をボーリングロッド1の先端部11よりも前方まで貫通させた後、ボーリングロッド1を地上側に抜き取って回収する。
【0060】
次の図27では、磁気探査装置9を先端に取り付けた回収ロッド4を羽口50側から挿入して、磁気探査装置9を塩化ビニルパイプの先端部に配置し、図28では、磁気探査装置9によって磁気探査を開始する。
【0061】
次に上述した作業(d)、すなわち、曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、サンプリング土壌を採取し、採取したサンプリング土壌及びサンプリング装置を回収する作業に関して、図29〜図34を参照して説明する。
【0062】
図29〜図34の内、図29〜図31の工程の説明は、前記図8〜図10と同様であるので省略する。
図31の工程において、図3を参照して説明したのと同様に、先端コア部3から削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の内部に負圧が発生して土砂が流入することを、事前に防止する。
【0063】
次の図32では、サンプリング装置10を先端に取り付けた回収ロッド4を羽口50側から挿入して、サンプリング装置10をボーリングロッド1の先端部11に配置する。
サンプリング装置10を挿入するに際して、図4で説明したのと同様に、スリーブ管5の先端の図示しない噴射機構より、削孔流体を噴射して、ボーリングロッド1の中空部13に流入した土砂を排除する。
【0064】
図33では、ボーリングロッド1の先端部11よりも前方(図33では左側)のサンプリング土壌Gsをサンプリング装置10によって採取し、採取したサンプリング土壌Gs及びサンプリング装置10を地上側に回収する(図34)。
【0065】
繰り返しにはなるが、図8〜図34で説明した作業において、すなわち上述した作業(a)のスリーブ管5注入、作業(b)のTVカメラ7挿入、作業(c)の磁気探査装置9挿入、作業(d)のサンプリング装置10挿入において、「先端コア部取り外し」作業(図10、図19、図24、図31)に際しては、開口部22から土砂が流入しないように、図3で示すのと同様に、水やベントナイト等を噴射して開口部22近傍箇所で負圧が発生するのを防止している。
【0066】
また、項目(a)のスリーブ管5注入における「スリーブ管挿入」作業(図11)、項目(b)のTVカメラ7挿入における「TVカメラ挿入」作業(図20)、項目(c)の磁気探査装置挿入における「塩化ビニル製のパイプ8挿入」作業(図25)、項目(d)のサンプリング装置10挿入における「サンプリング装置挿入」作業(図32)において、開口部22から流入した土砂を排除するために、図4で示すのと同様に、開口部22近傍箇所で水やベントナイト等を噴射している。
【0067】
図1〜図34を参照して説明した各作業において、ボーリングロッド1内で先端コア部3や計測器機等が引っ掛かって移動不能にならない様にするため、先端コア部3或いは計測器機等の長手方向長さLと外径Eについては、次で示す様に数値範囲を限定する必要がある。
図7において、ボーリングロッド1の軸中心の曲率半径をR、内径寸法をD、先端コア部3或いは計測器機等の外径をEとした場合に、図示の角度をθとすれば、挿入する先端コア部3或いは計測器機等の長さをLは、下式
L<(2R+D)sinθ
の範囲とする必要がある。
【0068】
先端コア部3の長さLが予め決定しているが、先端コア部3或いは計測器機等の外径Eが決定していない場合には、ボーリングロッド1の曲率中心から先端コア部3外周までの距離をCとすれば、先端コア部3或いは計測器機等の外径Eは、次の式を充足する必要がある。
E<C−R+D/2
【0069】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、先端コア部を曲がりボーリング先端から外すことなく、切削流体流路にジャイロを通過せしめ、以って、掘削経路を正確に計測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態において、曲がりボーリング先端の先端コア部を羽口側へ回収する態様を示す初期状態図。
【図2】回収装置を先端コア部に装着する態工程を示した状態図。
【図3】負圧防止用の流体を吐出させる態工程を示した状態図。
【図4】回収した先端コア部をボーリングロッド先端の所定箇所に再度設置する工程の内、先端コア部を係合した回収ロッドをボーリングロッドの先端に向かって再挿入する状態を示した工程図。
【図5】先端コア部のボーリングロッド先端への挿入が完了した状態を示した工程図。
【図6】回収ロッドを先端コア部から抜き去り、地上側に回収ロッドが引抜かれ、再びボーリングロッドで削孔を開始しようとしている状態を示した工程図。
【図7】先端コア部の外径及び長さと、ボーリングロッドの中空部分の内径及び内径中心点の軌跡の曲率半径の関係について解説図。
【図8】曲がりボーリングにより所定領域を掘削した後、パッカを具備したスリーブ管を挿入して固化材その他の薬液を注入する作業の一連の工程の内、ボーリングロッドの先端部を先端コア部によって閉塞させた状態で、所定領域を掘削する工程を示した工程図。
【図9】ボーリングロッドの先端部の先端コア部に、地上側から挿入された回収ロッドを係合させる工程を示した工程図。
【図10】回収ロッドを羽口側から挿入して、先端コア部を地上側へ回収する工程を示した工程図。
【図11】スリーブ管をボーリングロッドの先端部よりも前方まで貫通させる工程を示した工程図。
【図12】ボーリングロッドを地上側に抜き取る工程を示した工程図。
【図13】挿入したパッカをスリーブ管の前端部まで押込む工程を示した工程図。
【図14】ボーリング孔の内部に、固化材Kを充填する工程を示した工程図。
【図15】薬液のボーリング孔の内部への注入(1段目の注入)を示した工程図。
【図16】薬液の2段目の注入を示した工程図。
【図17】ボーリングロッドの先端にTVカメラを挿入して、地盤の状況を確認する作業の一連の工程の内、ボーリングロッドの先端部を先端コア部によって閉塞させた状態で、所定領域を掘削する工程を示した工程図。
【図18】回収ロッドを羽口側から挿入して、先端コア部に回収ロッドを係合させる工程を示した工程図。
【図19】先端コア部を地上側へ回収する工程を示した工程図。
【図20】先端にTVカメラを装着した回収ロッドを羽口側から挿入し、TVカメラをボーリングロッドの先端部よりも前方に配置する工程を示した工程図。
【図21】TVカメラを用いて地盤状況の確認工程図。
【図22】ボーリングロッドの先端に磁気探査装置を挿入して、磁気探査を行う作業の一連の工程の内、ボーリングロッドの先端部を先端コア部によって閉塞させた状態で、所定領域を掘削する工程を示した工程図。
【図23】回収ロッドを羽口側から挿入して、先端コア部に回収ロッドを係合させる工程を示した工程図。
【図24】先端コア部を地上側に回収する工程を示した工程図。
【図25】塩化ビニル製のパイプをボーリングロッドの先端部よりも前方まで貫通させる工程を示した工程図。
【図26】ボーリングロッドを地上側に抜き取って回収する工程を示した工程図。
【図27】磁気探査装置を塩化ビニルパイプの先端部に配置する工程を示した工程図。
【図28】磁気探査装置によって磁気探査を開始する工程を示した工程図。
【図29】曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、サンプリング土壌を採取し、採取したサンプリング土壌及びサンプリング装置を回収する作業の一連の工程の内、ボーリングロッドの先端部を先端コア部によって閉塞させた状態で、所定領域を掘削する工程を示した工程図。
【図30】回収ロッドを羽口側から挿入して、先端コア部に回収ロッドを係合させる工程を示した工程図。
【図31】先端コア部を地上側に回収する工程を示した工程図。
【図32】曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、サンプリング土壌を採取し、採取したサンプリング土壌及びサンプリング装置を回収する作業の一連の工程の内、サンプリング装置をボーリングロッドの先端部に配置する工程を示した工程図。
【図33】曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、サンプリング土壌を採取し、採取したサンプリング土壌及びサンプリング装置を回収する作業の一連の工程の内、ボーリングロッドの先端部の前方のサンプリング土壌をサンプリング装置によって採取する工程を示した工程図。
【図34】曲がりボーリングの先端にサンプリング装置を挿入して、サンプリング土壌を採取し、採取したサンプリング土壌及びサンプリング装置を回収する工程を示した工程図。
【符号の説明】
【0071】
1・・・曲がりボーリングのロッド/ボーリングロッド
2・・・修正用反力版
3・・・先端コア部
4・・・回収用ロッド
5・・・スリーブ管
6・・・パッカ
7・・・TVカメラ
8・・・塩化ビニル製パイプ
9・・・磁気探査装置
10・・・サンプリング装置
11・・・先端
12・・・ロッド内の空間
13・・・ロッド内の中空部分
14・・・削孔流体流路
15・・・削孔水吐出口
33・・・センター孔
50・・・羽口
100・・・掘削孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に削孔手段及び削孔方向制御手段を設けた可撓性を有する中空のロッドを用いてボーリング孔を削孔する削孔工法において、前記ロッド内部の中空部分は削孔流体の流路を構成し、前記ロッド先端を閉鎖している閉鎖部材は脱着自在に構成されており、前記削孔手段から削孔流体を噴射して地盤を削孔する削孔工程と、前記閉鎖部材を前記中空のロッド先端から取り外し且つ前記ロッド内部の中空部分を介して回収する閉鎖部材回収工程と、削孔後の作業に必要な機器を前記ロッド内部の中空部分内へ挿入して中空ロッド先端まで移動する挿入工程とを有することを特徴とする削孔工法。
【請求項2】
前記挿入工程では、削孔後の作業に必要な機器を挿入する際に、ロッド内部の中空空間に削孔流体を噴射する請求項1の削孔工法。
【請求項3】
前記閉鎖部材回収工程では、前記閉鎖部材を前記中空のロッド先端から取り外して前記ロッド内部の中空部分を介して回収する際に、ロッド内部の中空空間における前記閉鎖部材よりもロッド先端側の領域へ削孔流体を噴射する請求項1、2の何れかに記載の削孔工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−23704(P2007−23704A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210819(P2005−210819)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】