説明

前もって中断させた紡糸過程を復旧させるための方法および装置

【課題】
均質な繊維流の生成と、これに続くスフ束と糸の端部との結合とを、特に効果的に行なうようにした紡糸方法および装置を提供する。
【解決手段】
停止可能な練条機と負圧室を有しているノズル装置とを備えた紡糸装置において前もって中断させた紡糸過程を復旧させるための方法であって、再作動させた練条機により供給されたスフ束が練条機を離れた後、当初不均質な繊維流を除去する目的で該スフ束を変向装置を介して一時的に廃物として吸引し、均質な繊維流が形成された後にはじめて、エアノズル装置を貫通するように搬送される糸と結合させるようにした方法において、不均質な繊維流を負圧室内の負圧の作用で除去する。紡糸過程中断時に停止可能な練条機と、繊維供給管路と糸引き出し管路と負圧室と有するエアノズル装置と、練条機から供給されたスフ束を、該スフ束と結合される糸から一時的に変向させる変向装置とを備えた紡糸装置において、変向装置に、結合管路(35;37;39)を介して練条機(3)と結合可能な負圧室(16)が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止可能な練条機と負圧室を有しているノズル装置とを備えた紡糸装置において前もって中断させた紡糸過程を復旧させるための方法であって、再作動させた練条機により供給されたスフ束が練条機を離れた後、当初不均質な繊維流を除去する目的で該スフ束を変向装置を介して一時的に廃物として吸引し、均質な繊維流が形成された後にはじめて、エアノズル装置を貫通するように搬送される糸と結合させるようにした方法に関するものである。
【0002】
また本発明は、紡糸過程中断時に停止可能な練条機と、繊維供給管路と糸引き出し管路と負圧室と有するエアノズル装置と、練条機から供給されたスフ束を、該スフ束と結合される糸から一時的に変向させる変向装置とを備えた紡糸装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
この種の方法および装置は、国際特許公開第94/00626A1号パンフレットにより従来技術として知られている。この文献は特殊な構成を備えていない一般的なエアノズル型紡糸装置に関するものであり、たとえば何らかの理由で糸切れが生じた場合に、前もって中断させていた紡糸過程を復旧させることを記載している。このように糸切れが生じた場合には、紡糸過程を中断させた後、すでに紡がれている糸の端部をまず練条機に戻さねばならない。その後、停止している練条機を再び作動させ、新たに供給されたスフ束を糸の前記端部と結合させることができる。中断時には、したがって練条機が停止しているときには、スフ束は練条機内ですでに寸断されているので、練条機を再始動すると、当初始端が比較的不均質であるようなスフ束が発生する。このため前記公知の方法および公知の装置では、当初不均質である繊維流を一時的に廃物として吸引し、練条機へ戻された糸端とすぐには結合させないような処置がとられている。均質な繊維流の形成後はじめてスフ束を、エアノズル装置を貫通するように搬送される糸と結合させる。これにより、再供給されるスフ束と糸とを結合させるため、すなわち継ぎ当てを行なうため、品質を著しく改善した結合部位が提供され、すなわち寸断により偶然に形成されたスフ束始端が糸と結合されるのではなく、新たに提供されたスフ束始端が糸と結合され、この場合新たな始端は再び均質になった繊維流から生成される。なお、不均質な繊維流の一時的な吸引には、練条機とエアノズル装置との間にある吸引管が用いられる。
【0004】
この種のものではないが、欧州特許第0807699B1号明細書により、全く特殊なエアノズル型紡糸装置において、糸の端部にスフ束を継ぎ当てすることが知られている。この紡糸装置では、延伸させたスフ束をエアノズル装置の繊維供給管路によりまず渦室内へ案内する。渦室には、糸供給管路の取り込み口のまわりに渦流を発生させる流動装置が付設されている。この場合、まず、スフ束で保持されている繊維の前端を糸引き出し管路内へ誘導し、他方糸の自由な後端を拡げて渦流により把持させ、すでに糸引き出し管路の取り込み口にあって結合されている前端のまわりに巡らし、これにより十分に真正な撚りをかけた糸を生成させる。この公知の紡糸装置でも、練条機を再始動させた後、提供されたスフ束の始端をまず吸引するが、スフ束と結合されるべき糸の端部とともに練条機とエアノズル装置との間にある吸引管の中へも吸引させる。すなわち、スフ束の始端と練条機に戻された糸の端部とは一時的に同じ吸引装置に中間蓄積される。これにより、吸引されたスフ束と同様に吸引された糸とは比較的偶然に結合され、品質的に優れた継ぎ当て部位を得ようとする努力はなされない。それ故、実際に製造されたこの種の紡糸装置では、前記文献には説明されていないが、重ね継ぎ装置が設けられている。重ね継ぎ装置は、糸にスフ束を継ぎ当てた後、結合部位を再び切り離し、より品質の優れた重ね継ぎ部位に取り替える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の方法および紡糸装置において、均質な繊維流の生成と、これに続くスフ束と糸の端部との結合とを、特に効果的に行なうようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、方法では、不均質な繊維流を負圧室内の負圧の作用で除去することによって解決される。
【0007】
紡糸装置においては、対応的に、変向装置に、結合管路を介して練条機と結合可能な負圧室が含まれていることによって解決される。
【0008】
本発明の構成により、不均質な繊維流は外部からの吸引によって変向されるのではなく、不均質な繊維流を排出させるために紡糸装置にもともと設けられている装置が利用される。通常の紡糸作動の場合、渦流に供給される圧縮空気を排出させ、同時に紡糸方法においては不可避の繊維屑を搬出させるためには、エアノズル内の負圧室が必要である。この負圧は、本発明によれば、不均質な繊維理由を当初糸の端部から変向させ、その後該端部を均質な繊維流と結合させるために利用される。好ましくは、負圧室内の通常作動時の負圧を、不均質な繊維流を除去するために一時的に増大させるのがよい。これにより、不均質な繊維流を、通常の紡糸過程において設けられているような通常作動時の搬送経路から簡単に変向させることができる。適正なタイミングにより均質な繊維流の始端と糸の端部とのオーバーラップ部位を非常に短くさせることができ、その結果たとえば織物のような最終生産物には現れない容認できる欠陥と見なすことができる小さな厚み部しか生じない。
【0009】
1つの変形実施形態では、スフ束をエアノズル装置の内部で通常作動時の搬送経路から変向させる。したがって不均質な繊維流は通常の紡糸作動時と同様にまずエアノズル装置の内部に侵入するが、そこで廃物として一時的に変向させる。その結果、均質化された繊維流と糸の端部との継ぎ当ては、一時的に増大させた負圧が再び紡糸作動にとって通常の大きさに減少するとすぐにエアノズル装置の内部でも行なわれる。
【0010】
他の実施形態では、スフ束を練条機とエアノズル装置との間で通常作動時の搬送経路から変向させる。したがって、不均質な繊維流は通常の態様で一時的にエアノズル装置の内部に侵入するのではなく、他の態様で侵入する。これは効果的である。なぜなら、通常エアノズル装置の侵入口は非常に小さく採寸されており、それ故特に糸番が大きく供給速度が高い場合には、糸塊が継ぎ当て糸とともにこの小さな開口部を正常に通過することができないからである。このような場合には、エアノズル装置に到達する前に均質な繊維流と糸の端部とを部分的に結束させる。
【0011】
廃物として排出される不均質の繊維流の量を可能な限り少なくさせるように、本発明の構成では、不均質な繊維流を除去している間にスフ束の繊維塊を減少させるので有利である。したがってスフ束は練条機により、まず、減少させた供給速度で供給され、ある程度時間が経過した後にスフ束を通常の搬送経路から変向させるので、このような方法によっても均質な繊維流が達成される。
【0012】
本発明の範囲内では、練条機に戻される、継ぎ当てされるべき糸の端部は、練条機の供給ロール対を通過する位置まで戻されるにもかかわらず、糸の端部をエアノズル装置と練条機との間でも適当な態様ですでに保持することができることを付記しておく。
【0013】
本発明による紡糸装置では、負圧室が負圧を一時的に増大させる接続部を備えているので合目的である。これはたとえば吸引接続部であってもよく、吸引接続部は、定置または走行可能な保守装置に装着されている別個の負圧源と結合可能である。しかし、接続部が圧縮空気で付勢可能な噴射管路を含んでいるのも有利である。これは、圧縮空気の噴射は継ぎ当てにとっても合目的であるので、負圧を増大させるには特に効果的である。
【0014】
負圧室を練条機と連通させる場合、1つの実施形態では、結合管路として通常作動時の繊維供給管路が設けられ、該繊維供給管路から糸引き出し管路を好ましくは切り離し可能である。これは、糸引き出し管路と繊維供給管路との切り離しは糸の挿通に対しても渦室のクリーニングに対しても有利であるので、多大なコストを要することのない簡潔な技術的解決手段である。
【0015】
しかし特に好ましいのは、結合管路として別個のバイパス管路を設けることである。1つの実施形態では、バイパス管路は閉鎖装置を備え、閉鎖装置は通常の紡糸作動ではバイパス管路を閉鎖させ、不均質な繊維流を変向させる目的に対してはバイパス管路を開口させる。その操作は走行可能な保守装置により行なうことができる。
【0016】
他の実施形態では、バイパス管路として、作動時に練条機に対して指向するクリーニング管路が設けられている。この場合には、このバイパス管路を介して練条機の供給ロール対を飛翔繊維に対し吸引により常時清掃することができるので、バイパス管路を作動時に閉鎖させる必要はない。このとき、不均質な繊維流を変向させるために負圧室の負圧を一時的に増大させることができるので、繊維流をクリーニング管路を介して通常の搬送路から簡単に変向させることができる。
【0017】
本発明の他の利点および構成は、いくつかの実施形態に関する以下の説明から明らかである。
図1は本発明に関わる領域における紡糸装置の作動時の軸断面図である。
図2は不均質な繊維流の除去時における図1の紡糸装置の図である。
図3は不均質な繊維流の除去時における紡糸装置の他の構成の軸断面図である。
図4は通常の紡糸作動時における図3の紡糸装置の図である。
図5は不均質な繊維流の除去時における他の紡糸装置の軸断面図である。
図6は図5の紡糸装置の作動時の図である。
図7は練条機に付属の供給ロールの供給速度を説明するグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に図示した紡糸装置は正常な紡糸作動状態で図示したものであり、スフ束2から紡いだ糸1を製造するために用いる。紡糸装置は練条機3とエアノズル装置4とを有している。
【0019】
紡糸されるスフ束2は練条方向Aにおいて練条機3に供給され、紡いだ糸1として引き出し方向Bへ引き出され、図示していない巻取り装置へ転送される。一部のみを図示した練条機3は3シリンダ練条機であるのが好ましく、したがって全部で3つのロール対を有しており、これらロール対はそれぞれ(ハッチングで示した)駆動される下側ロールと押圧ロールとして形成される上側ロールとを有している。図面には供給ロール対5,6と、その前に配置され、ガイドエプロン9,10を備えたエプロン付きロール対7,8のみを図示した。このような練条機3においてスフ束2は公知の態様で所望の繊度まで練条される。練条機3に引き続いて薄いスライバー11があり、これは練条されているが、まだ撚っていない繊維である。
【0020】
エアノズル装置4には繊維供給管路12を介してスライバー11が供給される。繊維供給管路12に続いていわゆる渦室13があり、渦室13内でスライバー11に撚りがかけられ、その結果紡いだ糸1が生じる。紡いだ糸1は糸引き出し管路14を通じて引き出される。
【0021】
流動化装置は、渦室13に対し接線方向に開口する圧縮空気ノズル15を通じて圧縮空気を吹き込むことによって渦室13で紡糸過程を行っている間に渦流を発生させる。ノズルオリフィスから流出する圧縮空気は負圧室16に開口している排気管路17を通じて排気され、この場合排気管路17は、通常作動時定置のスピンドル状部材18であって糸引き出し管路14を含んでいる前記スピンドル状部材18のまわりでリング状の横断面を有している。
【0022】
渦室13の領域には、ねじれ防止手段として、繊維案内面19のエッジが配置されている。繊維案内面19のエッジは糸引き出し管路14の取り込み口20の領域で糸引き出し管路14に対しわずかに偏心して配置されている。
【0023】
紡糸される繊維はエアノズル装置4内においてスライバー11の状態に維持され、したがって実質的に撚りをかけられずに繊維供給管路12から糸引き出し管路14内へ案内されるが、他方繊維は繊維供給管路12と糸引き出し管路14との間の領域において渦流の作用を受ける。これにより繊維または少なくともその端部領域は糸引き出し管路14の取り込み口20から半径方向へ離間する。したがって、ここで説明している紡糸装置で製造される糸1は、ほぼ糸長手方向に延在しほとんど撚りをかけられていない繊維または繊維領域のコアと、このコアのまわりに繊維または繊維領域が撚りをかけられている外側領域とを示す。この種の紡糸装置の紡糸速度は非常に高く、そのオーダーは300m/分と600m/分との間である。
【0024】
圧縮空気ノズル15から渦室13内へ流出する圧縮空気は作動時に圧縮空気管路21を介して供給方向Cにおいてエアノズル装置4に供給される。圧縮空気管路21から圧縮空気は、まず、渦室13を取り囲んでいる環状管路22内へ達する。環状管路22には前記圧縮空気ノズル15が直接接続されている。
【0025】
糸引き出し管路14の取り込み口20と繊維案内面19との間には、紡糸過程実施中に非常に小さな間隔が存在する。この間隔はたとえば0.5mmである。この小さな間隔は、糸引き出し管路14を含んでいるスピンドル状部材18が軸線方向に移動可能に配置されていることにより形成される。前記間隔は作動状態で固定させることができる。この間隔を拡大させるには、スピンドル状部材18の一部をピストンシリンダユニットのピストン状部材18として構成する。
【0026】
何らかの理由でスフ束11または糸1が切れると、まず、渦室13に供給されている過圧を遮断する(図2の×印で消した矢印Cを参照)。同時に、練条機3および図示していない糸引き出しロール並びに巻取り装置のすべての駆動を停止させる。
【0027】
スピンドル状部材18の一部がピストンとして構成されているので、非常に簡単な手段で糸引き出し管路14を繊維供給管路12から離間させることができる。たとえばスピンドル状部材18を取り囲む環状管路24を設ける。この環状管路24をスピンドル状部材18が貫通し、環状管路24は圧縮空気供給管25に接続されている。この圧縮空気(図2の矢印Dと図1の×印で消した矢印とを参照)は紡糸過程を中断した場合にだけ供給される。このとき環状管路24に侵入する圧縮空気はスピンドル状部材18を図2において上方へ移動させ、その結果ピストン行程のために環状管路24は大きな環状室に拡大される。したがって、スピンドル状部材18に固定されている画成ピストン23は作動時に環状管路24を画成し、紡糸過程中断時に拡大される前記環状室を画成する。この場合画成ピストン23は、圧縮空気中断時、すなわち紡糸過程中にピストン状部材を作動ロック位置へ押している荷重ばね26に抗して作用する。このように、糸引き出し管路14を繊維供給管路12から離間させるには、供給管25を介して供給される圧縮空気を用い、これに対し逆方向の運動には荷重ばね26を用いる。
【0028】
繊維案内面19と糸引き出し管路14の取り込み口20との間の、作動時の非常に小さな前記間隔は、スピンドル状部材18の離間運動により、繊維案内面19と取り込み口20との間の空間のクリーニングを可能にさせるような間隔へ拡大する。
【0029】
糸引き出し管路14が繊維供給管路12から切り離されると、紡いだ糸1の糸切れ端36を引き出し方向Bとは逆の方向へ練条機3へ戻すことができる(図2を参照)。このため補助手段として第1の噴射管路27が設けられている。第1の噴射管路27は環状管路24と同じ圧縮空気源に接続可能で、そのオリフィスは糸引き出し管路14に接続されるとともに、該糸引き出し管路14の取り込み口20の方へ指向している。これにより糸引き出し管路14内に練条機3の方へ向けられる吸引空気流が得られ、この吸引空気流が紡いだ糸1の端部36を供給ロール対5,6へ戻す。
【0030】
以上の説明から明らかであるように、供給管25を介して環状管路24に供給される圧縮空気は、スピンドル状部材18を繊維供給管路12から離間させるために用いられるばかりでなく、同時に噴射管路27を介して、糸1の継ぎ当てされる糸端36のスフ束2への挿通を可能にする噴射空気流にも用いられる。ピストン状部材はいわば弁として構成されており、圧縮空気供給時に操作可能であり、このとき供給管25と噴射管路27とを作用的に連通させる。
【0031】
中断した紡糸過程を再開するために練条機3と図示していない糸引き出しロールと巻取り装置との駆動部を再び通電した場合、もし特別な処置を講じなければ、スフ束2と糸1の端部36との間に品質的に好ましくない結合部位が生じることがある。すなわち、紡糸過程を中断させた場合、練条機3内のスフ束2がガイドエプロン9,10と供給ロール対5,6との間で寸断し、比較的コントロール不能になっていることを考慮する必要がある。再供給されるスフ束2の始端は必要とする秩序を持っておらず、この無秩序性はエプロン付きロール対7,8と供給ロール対5,6との間にタイムディレイが起こることによってさらに倍加する。したがって、継ぎ当て過程でかなりの質量変動が生じる恐れがある。このため、スフ束2が均質な繊維流34(図1を参照)になるまで初期の不均質な繊維流32(図2を参照)を廃物33として除去する必要がある。したがって、不均質な繊維流32をいわゆる繊維流切換えによりまず変向させて、この不均質な繊維が問題の継ぎ当て領域において糸1の端部36と結合されないようにする。つまり前記繊維流切換えは不具合な初期の繊維質量分布が継ぎ当て過程を阻害しないよう配慮するものである。
【0032】
前述したように、繊維流切換え自体は冒頭で述べた従来の技術により公知のものである。この公知の装置では、供給ロール対5,6と繊維供給管路12の取り込み部との間に、不均質な繊維を排出させるための外部吸引管が設けられていた。これとは異なり、本発明によれば、不均質な繊維流32を変向させるために外部の別個の負圧源を利用するのではなく、もともとエアノズル装置4内にある負圧室16を利用する。
【0033】
図1と図2に図示した実施形態によれば、不均質な繊維流32を廃物33としてエアノズル装置4の内部で変向させる。負圧室16内の負圧は作動中断時も維持され、他方、すでに述べたように、圧縮空気管路21を介しての圧縮空気の供給は中断されている。不均質な繊維流32を継ぎ当てされるべき糸1から確実に離間させておくため、本発明の構成では、通常作動時の負圧室16内の負圧を一時的に増大させる。これにより、廃物33として除去されるべき繊維をその次の負圧管路28を介して吸引方向Eへ簡単に排出させることができる。その後、負圧室16内の負圧の一時的中断を解除し、同時に、渦室13内へ誘導される過圧を再び供給すると、供給されていまや均質になっているスフ束2の繊維流34は自ずと糸1に追従して糸引き出し管路14を通過する。この場合、品質的に十分に優れた継ぎ当て過程が行なわれ、後で重ね継ぎにより是正する必要のない継ぎ当て過程が得られる。なお、糸1の端部36を正確に採寸し、且つ公知の態様で前処理されていれば、糸1の端部36とスフ束2の始端との重合部位が非常に短くなるように継ぎ当て過程を制御することができる。
【0034】
負圧室16内の負圧の一時的な増大は種々の態様で行なうことができる。本発明によれば、有利には、負圧室16のための接続部30が設けられている。この接続部30は圧縮空気で付勢可能な第2の噴射管路29を含んでいる。すなわち、不均質な繊維流32を除去するため、まず圧縮空気流を矢印Fの方向に応じて接続部30を介し供給し、その際圧縮空気はまず環状管路31に達し、次に吸引方向Eにおいて負圧管路28に対し指向している第2の噴射管路29へ達する。これにより負圧室16内の負圧が著しく増大し、その結果不均質な繊維流32は通常作動時の搬送経路から、すなわち糸引き出し管路14から簡単に変向する。
【0035】
図1と図2の実施形態では、結合管路35として、もともと設けられている繊維供給管路12を利用する。この場合、不均質な繊維流32と糸1との切り離しを容易にするため、すでに述べたように、スピンドル状部材18を繊維案内面19からわずかに離間させる。しかしその距離は、第1の噴射管路27が環状管路24に達しない程度のわずかなものである。それにもかかわらず、この場合糸1はその強度により搬送方向Gへ、糸引き出し管路14を貫通するように搬送される。
【0036】
継ぎ当て過程は時間的に次のように制御される。すなわち、不均質な繊維流32が完全に除去されたときに、均質な繊維流34と結合されるべき端部36が渦室13の領域に達するように制御する。この瞬間に通常の低い紡糸負圧を負圧室16へ導入し、渦室13への圧縮空気の供給を行なう。もちろん、スピンドル状部材18を再びその通常作動時の領域へ戻さねばならない。これは圧縮空気流Dの供給を中止することにより行なう。
【0037】
以下の択一的な実施形態を説明するにあたっては、図1および図2の実施形態の場合と同一の部材である限りは、個々の部材を重複して説明することは省略する。以下の説明は、この変形実施形態を図1および図2の実施形態と相違させている部材のみに限定して行なう。
【0038】
図3と図4の実施形態では、不均質な繊維流32をエアノズル装置4の内部で変向させるのではなく、すでに練条機3の供給ロール対5,6とエアノズル装置4との間で変向させる。このため、結合管路として、練条機3と負圧室16との間にバイパス管路37が設けられている。バイパス管路37は繊維供給管路12のすぐ近くにおいて該繊維供給管路12に対しほぼ平行に延在している。このバイパス管路37は作動時に閉鎖装置38により閉鎖可能で、不均質な繊維流32を除去している間は、たとえば走行可能な保守装置により一時的に開口させることができる。図3はバイパス管路37の開口状態を示すもので、図4は閉鎖作動状態を示している。図3は、いかにして不均質な繊維流32がバイパス管路37を通って負圧室16に達し、そこから負圧管路28へ達して吸引方向Eにて除去されるかを示したものである。この実施形態でも、不均質な繊維流32を除去している間に負圧室16内の負圧をすでに説明した態様で一時的に増大させるのが合目的であり、それ故このような処置がとられている。
【0039】
図3と図4の実施形態は、特に糸が太く、供給速度が高く、しかもスフ束2の再挿入の際に繊維供給管路12の取り込み口が小さすぎる場合に特に合目的である。これに対処するため、基本的にはバイパス管路37の開口を十分大きく構成することができる。
【0040】
なお、上述したすべての実施形態において、場合によってはエアノズル装置4をその作動位置から外側へ回動させて、不均質な繊維流32の変向を容易にしてもよい。
【0041】
図5と図6の実施形態でも、不均質な繊維流32を除去するため、別個のバイパス管路を設ける。しかしながらこのバイパス管路は閉鎖可能ではない。というのは、このバイパス管路は通常の紡糸作動時でも機能するからである。図5と図6によれば、バイパス管路として、練条機3の供給ロール対5,6の方へ指向するクリーニング管路39を使用する。
【0042】
通常の紡糸作動時に、もし負圧室16が通常作動時の高すぎない負圧状態にあれば、クリーニング管路39は、少なくとも、通例はゴムで被覆した押圧ロール6の周囲を連続的に清掃して、飛翔繊維或いは他の不純物を除去する目的に用いる。本発明によれば、このクリーニング管路39を、廃物33として負圧管路28内へ排出される不均質の繊維流32を除去するために利用することができる。このためにも、負圧室16内の負圧を前述した態様で一時的に増大させて不均質な繊維流32を除去する。これにより、再搬送されたスフ束2の繊維は当初糸1に追従して繊維供給管路12内へ到達せずに、一部は押圧ロール6の周囲に追従してクリーニング管路39内へ到達する。
【0043】
次に図7を用いて、継ぎ当て過程時の供給ロール対5,6およびエプロン付きロール対7,8の速度について説明する。ここで速度という概念はスフ束2の搬送速度のことであり、すなわち前記ロール対5,6または7,8のそれぞれの周速のことである。
【0044】
曲線40は供給ロール対5,6の速度vを示し、曲線41はエプロン付きロール対7,8の速度vを示している。なお、それぞれの駆動部により制御される紡糸過程の中断時にスフ束2がガイドエプロン9,10と供給ロール対5,6との間で破断したものとする。
【0045】
図7のグラフの横軸は時間Tを示し、縦軸は速度vを示している。
【0046】
継ぎ当て過程は供給ロール対5,6を再通電することにより時点Tで始まるものとする。グラフからわかるように、供給ロール対5,6の速度vは曲線40に応じて時点Tからまず一定の継ぎ当て速度v1Aまで増大し、このときの時点はTである。この時点Tから供給ロール対5,6は当初作動速度v1Bに比べて低い一定の継ぎ当て速度v1Aで変化する。
【0047】
エプロン付きロール対7,8はまだ再始動していないので、当初は糸1のみが搬送され、スフ束2は引き出し方向Bへ搬送されない。エプロン付きロール対7,8を遅れて始動させるのは、糸1の端部36を、本来の継ぎ当て過程を実施するための所定位置、すなわち均質な繊維流34が糸1の端部36と結合される位置へもたらすためである。図7によれば、エプロン付きロール対7,8の始動は時点Tで行なわれ、すなわち供給ロール対5,6の始動に対しある程度遅れて行われる。
【0048】
エプロン付きロール対7,8が始動すると、スフ束2の搬送が開始し、その始端は迅速に供給ロール対5,6の締め付け部位に到達し、同様に遅れを持ってこの供給ロール対5,6により搬送される。しかしスフ束2は前述したように当初不均質な繊維流32を含んでおり、すでに述べたようにこれを変向させる必要がある。その際大きな繊維塊が廃物33として搬出されないようにするため、まず、エプロン付きロール対7,8を継ぎ当て速度v2Aまで飛躍させずに、当初はさらに減少させた中間速度v2Rまでに留める処置をとる。この中間速度v2Rは時点TとTとの間にある。この時間内に大部分の廃物33が除去される。次に時点Tでエプロン付きロール対7,8の速度を継ぎ当て速度v2Aへ飛躍させる。このときの時点はTである。
【0049】
供給ロール対5,6とエプロン付きロール対7,8がそれぞれその継ぎ当て速度v1A,v2Aに達すると、不均質な繊維流32の最後の部分が廃物33として排出される。しかしその直後に、すなわち時点Tで、すでに述べた繊維流切換えを行なう。すなわち負圧室16内の増大させた負圧を再び低下させ、圧縮空気管路21を介して圧縮空気を渦室13内へ導入する。これにより時点T以降は均質な繊維流34が生じ、この時点から均質な繊維流34は通常作動時の搬送経路を占める。その直後、すなわち時点Tで、本来の継ぎ当て過程を行なう。すなわちスフ束2の均質な始端を糸1の端部36と結合させる。なお、継ぎ当て過程全体は時点Tで終了するものとする。したがってこの時点T以降は供給ロール対5,6もエプロン付きロール対7,8もそれぞれその作動速度v1B,v2Bへ飛躍させる。これにより継ぎ当て過程は終了する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に関わる領域における紡糸装置の作動時の軸断面図である。
【図2】不均質な繊維流の除去時における図1の紡糸装置の図である。
【図3】不均質な繊維流の除去時における紡糸装置の他の構成の軸断面図である。
【図4】通常の紡糸作動時における図3の紡糸装置の図である。
【図5】不均質な繊維流の除去時における他の紡糸装置の軸断面図である。
【図6】図5の紡糸装置の作動時の図である。
【図7】練条機に付属の供給ロールの供給速度を説明するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止可能な練条機と負圧室を有しているノズル装置とを備えた紡糸装置において前もって中断させた紡糸過程を復旧させるための方法であって、再作動させた練条機により供給されたスフ束が練条機を離れた後、当初不均質な繊維流を除去する目的で該スフ束を変向装置を介して一時的に廃物として吸引し、均質な繊維流が形成された後にはじめて、エアノズル装置を貫通するように搬送される糸と結合させるようにした方法において、不均質な繊維流を負圧室内の負圧の作用で除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
負圧室内の通常作動時の負圧を、不均質な繊維流を除去するために一時的に増大させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スフ束をエアノズル装置の内部で通常作動時の搬送経路から変向させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スフ束を練条機とエアノズル装置との間で通常作動時の搬送経路から変向させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
不均質な繊維流を除去している間にスフ束の繊維塊を減少させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法を実施するための紡糸装置であって、紡糸過程中断時に停止可能な練条機と、繊維供給管路と糸引き出し管路と負圧室と有するエアノズル装置と、練条機から供給されたスフ束を、該スフ束と結合される糸から一時的に変向させる変向装置とを備えた紡糸装置において、変向装置に、結合管路(35;37;39)を介して練条機(3)と結合可能な負圧室(16)が含まれていることを特徴とする装置。
【請求項7】
負圧室(16)が負圧を一時的に増大させる接続部(30)を備えていることを特徴とする、請求項6に記載の紡糸装置。
【請求項8】
接続部(30)が圧縮空気で付勢可能な噴射管路(29)を含んでいることを特徴とする、請求項7に記載の紡糸装置。
【請求項9】
結合管路(35)として通常作動時の繊維供給管路(12)が設けられ、該繊維供給管路(12)から糸引き出し管路(14)を好ましくは切り離し可能であることを特徴とする、請求項7または8に記載の紡糸装置。
【請求項10】
結合管路として別個のバイパス管路(37;39)が設けられていることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか一つに記載の紡糸装置。
【請求項11】
バイパス管路として、作動時に練条機(3)に対して指向するクリーニング管路(39)が設けられていることを特徴とする、請求項7または10に記載の紡糸装置。
【請求項12】
バイパス管路(37)が閉鎖装置(38)を備えていることを特徴とする、請求項10に記載の紡糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−510823(P2007−510823A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538663(P2006−538663)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008603
【国際公開番号】WO2005/047580
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】