説明

前処理方法、グラフェンの形成方法及びグラフェン製造装置

【課題】結晶性の高い良質なグラフェンを、極力低い温度で効率よく成長させる方法を提供する。
【解決手段】グラフェンの成長に先立ち、前処理を行う。前処理は、排気装置99を作動させて処理容器1内を減圧排気しながら、シャワーリング57から処理容器1内に希ガスを導入するとともに、シャワープレート59から処理容器1内に還元性ガス及び窒素含有ガスをそれぞれ導入する。この状態で、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を、導波管47及び同軸導波管49を介して所定のモードで平面アンテナ33に導き、平面アンテナ33のマイクロ波放射孔33a、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、還元性ガス及び窒素含有ガスをプラズマ化し、ウエハW表面の触媒金属層に活性化処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンを形成するための前処理方法、グラフェンの形成方法及びグラフェン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、電子移動度が200,000cm/Vsと極めて高いことから、高速動作可能なチャネル材料として期待されている。また、グラフェンは、電子が散乱を受けずに伝播するバリスティック伝導が可能であり、優れた電気伝導性(低電気抵抗)を有することから、低抵抗の半導体配線材料としても期待されている(例えば、特許文献1)。さらに、グラフェンは、散乱を受けずにスピンを伝播させる性質も有することから、スピントロニクスデバイスのチャネル材料の候補としても検討が進められている。このように、グラフェンは、次世代エレクトロニクスの中心となる材料として注目されている。
【0003】
グラフェンの成長手法として、例えば非特許文献1では、30μm厚の銅箔及び12μm厚のアルミニウム箔を、それぞれArガスとHガスのプラズマで清浄化した後、300〜400℃未満の温度で、CHガス、ArガスおよびHガスの表面波プラズマを生成させてCVD(化学気相成長)を行う方法が開示されている。また、非特許文献2では、石英、シリコン、プラチナ等の基板を、Hガスのプラズマで清浄化した後、700℃の温度で、CHガスおよびHガスのマイクロ波プラズマを生成させてCVDを行い、グラフェンを成長させることが報告されている。さらに、非特許文献3では、SiO/Si基板上の鉄層を触媒として、650℃の温度でCガス及びArガスをソースガスとして熱CVDを行い、グラフェンを成長させることが報告されている。さらに、特許文献2では、グラフェンをCVD法により成長させるための触媒として、NiとCuを含むNi含有触媒層を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−96980号公報
【特許文献2】特開2011−102231号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jaeho Kim, APPLIED PHYSICS LETTERS 98, 091502 (2011)
【非特許文献2】Alexander Malesevic, Nanotechnology 19 (2008) 305604
【非特許文献3】Daiyu Kondo, Applied Physics Express 3 (2010) 025102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献1のように500℃を下回る低温でCVD法によりグラフェンを成長させた場合、650〜1000℃程度の高温のCVD法で成長させた場合に比べ、グラフェンの結晶性が約1/10程度まで低下してしまう。それ故、CVD法により良質なグラフェンを得るためには、成長温度を高くして結晶性を高めることが有効である。しかし、高温での成膜処理は、基板や材料膜の材質が制約されたり、熱履歴が増加したりするという問題を生じる。従って、本発明の目的は、結晶性の高い良質なグラフェンを、極力低い温度で効率よく成長させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前処理方法は、被処理体上に形成された触媒金属層の上にCVD法によってグラフェンを成長させる前に行う前処理方法である。この前処理方法は、触媒金属層に還元性ガスと窒素含有ガスとを含む処理ガスのプラズマを作用させて触媒金属層の表面を活性化するプラズマ処理工程を備えている。
【0008】
本発明の前処理方法は、還元性ガスと窒素含有ガスとの体積比(還元性ガス:窒素含有ガス)が、10:1〜1:10の範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明の前処理方法は、還元性ガスが水素ガスであり、窒素含有ガスが窒素ガス又はアンモニアガスであってもよいし、還元性ガスが水素ガス又はアンモニアガスであり、窒素含有ガスが窒素ガスであってもよい。
【0010】
本発明の前処理方法は、触媒金属層が、Ni、Co、Cu、Ru、Pd及びPtよりなる群から選ばれる1種以上の金属種により構成されていてもよい。
【0011】
本発明のグラフェンの形成方法は、上記いずれかに記載の前処理方法により触媒金属層の表面を活性化するプラズマ処理工程と、
プラズマ処理がされた触媒金属層の上にCVD法によりグラフェンを成長させる工程と、
を備えている。
【0012】
本発明のグラフェンの形成方法は、グラフェンを成長させる工程を、プラズマCVD法により行ってもよい。この場合、プラズマCVD法による処理温度が、300℃〜600℃の範囲内であることが好ましい。また、プラズマCVD法は、複数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナにより処理容器内にマイクロ波を導入して原料ガスのプラズマを生成させ、該原料ガスのプラズマによりグラフェンを成長させることが好ましく、平面アンテナがラジアル・ライン・スロット・アンテナであることがより好ましい。
【0013】
本発明のグラフェンの形成方法は、グラフェンを成長させる工程を、熱CVD法により行ってもよい。この場合、熱CVD法による処理温度が、300℃〜600℃の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明のグラフェン製造装置は、被処理体上に形成された触媒金属層の上にグラフェンを成長させる前に行う前処理と、前処理がされた触媒金属層の上にCVD法によりグラフェンを成長させる工程と、を同一の処理容器内で順次行うグラフェン製造装置である。このグラフェン製造装置は、被処理体を処理する上部が開口した処理容器と、処理容器内で、被処理体を載置する載置台と、処理容器の開口部を塞ぐ誘電体板と、誘電体板の外側に設けられて処理容器内にマイクロ波を導入する、多数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナと、載置台上に載置された被処理体に対向して設けられた複数のガス放出孔を有して処理容器内に処理ガスを導入するガス導入部と、処理容器内を減圧排気する排気装置に接続される排気口と、を備えている。そして、このグラフェン製造装置において、ガス導入部は、前処理に用いる還元性ガスと窒素含有ガスとを含む処理ガスを供給するガス供給源及びグラフェンの原料ガスを供給する原料ガス供給源に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の前処理方法によれば、触媒金属層を、還元性ガスと窒素含有ガスとを含む処理ガスプラズマにより活性化する工程を含むことにより、触媒の活性化比率を高めることができる。そして、この前処理方法を含む本発明のグラフェンの形成方法によれば、被処理体の表面に、多層構造を有し、結晶性が良好なグラフェンを600℃以下、好ましくは500℃以下の低温で形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る前処理方法及びグラフェンの形成方法に利用可能な処理装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の処理装置における平面アンテナの構成例を示す図面である。
【図3】図1の処理装置におけるシャワープレートの構成例を示す下面図である。
【図4】図1の処理装置の制御部の構成例を説明する図面である。
【図5A】処理対象となる触媒金属層を有するウエハの構造を示す模式図である。
【図5B】活性化処理によって、触媒金属層を活性化した状態を説明する模式図である。
【図5C】グラフェンを形成した状態を模式的に説明する図面である。
【図6A】実施例1におけるグラフェンの形成実験(Ni触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図6B】実施例1におけるグラフェンの形成実験(Co触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図6C】実施例1におけるグラフェンの形成実験(Ni触媒金属層)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図6D】図6Cの要部を拡大した画像である。
【図7A】実施例2におけるグラフェンの形成実験(Ni触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7B】実施例2におけるグラフェンの形成実験(Co触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図8A】実施例3におけるグラフェンの形成実験(Ni触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図8B】実施例3におけるグラフェンの形成実験(Co触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図9A】実施例4におけるグラフェンの形成実験(グラフェン成長時間;1分間)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図9B】実施例4におけるグラフェンの形成実験(グラフェン成長時間;3分間)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図9C】実施例4におけるグラフェンの形成実験(グラフェン成長時間;5分間)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図9D】実施例4におけるグラフェンの形成実験(グラフェン成長時間;15分間)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図10】実施例4で得られたグラフェンをラマン散乱分光分析法により測定した結果を示すチャートである。
【図11A】実施例5におけるグラフェンの形成実験(処理温度;350℃)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図11B】実施例5におけるグラフェンの形成実験(処理温度;390℃)の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図12】実施例6におけるグラフェンの形成実験の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図13】実施例7におけるグラフェンの形成実験の結果を示す基板断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図14A】実施例8におけるグラフェンの形成実験(Ni触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図14B】実施例8におけるグラフェンの形成実験(Co触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図15A】実施例9におけるグラフェンの形成実験(Ni触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図15B】実施例9におけるグラフェンの形成実験(Co触媒金属層)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
[処理装置]
まず、本発明の実施の形態にかかる前処理方法及びグラフェンの形成方法に利用可能な処理装置の概要について説明する。図1は、処理装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す処理装置100は、マイクロ波を平面アンテナの多数のマイクロ波放射孔から放射させて処理容器1内に均質なマイクロ波プラズマを形成できるRLSA(Radial Line Slot Antenna)方式のマイクロ波プラズマ処理装置として構成されている。このマイクロ波プラズマはラジカルを主体とする低電子温度プラズマであるため、グラフェンの形成の前処理としての触媒金属層の活性化処理に適している。また、処理装置100は、熱CVD法によりグラフェンの形成を行う熱CVD装置、あるいは、プラズマCVD法によりグラフェンの形成を行うプラズマCVD装置としても使用できる。
【0019】
この処理装置100は、主要な構成として、略円筒状の処理容器1と、処理容器1内に設けられ、被処理体(被処理基板)である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wを載置するステージ3と、処理容器1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入部5と、処理容器1内にガスを導くガス供給部7と、処理容器1内を排気する排気部11と、処理装置100の各構成部を制御する制御部13と、を有している。
【0020】
(処理容器)
処理容器1は、接地電位であり、例えばアルミニウムもしくはその合金、又はステンレス鋼等の金属材料から構成されている。処理容器1の底壁1aの略中央部には円形の開口部15が形成されており、底壁1aにはこの開口部15と連通し、下方に向けて突出する排気室17が設けられている。また、処理容器1の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口19と、この搬入出口19を開閉するゲートバルブGとが設けられている。
【0021】
(ステージ)
ステージ3は、例えばAlN等のセラミックスから構成されている。ステージ3は、排気室17の底部中央から上方に延びる円筒状のセラミックス製の支持部材23により支持されている。ステージ3の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング25が設けられている。また、ステージ3の内部には、ウエハWを昇降するための昇降ピン(図示せず)がステージ3の上面に対して突没可能に設けられている。
【0022】
また、ステージ3の内部には抵抗加熱型のヒータ27が埋め込まれている。このヒータ27にヒータ電源29から給電することによりステージ3を介してその上のウエハWを加熱することができる。また、ステージ3には、熱電対(図示せず)が挿入されており、ウエハWの加熱温度を50〜650℃の範囲で制御可能となっている。なお、ウエハWの温度は、特に断りのない限り、ヒータ27の設定温度ではなく、熱電対により計測された温度を意味する。また、ステージ3内のヒータ27の上方には、ウエハWと同程度の大きさの電極31が埋設されている。この電極31は接地されている。
【0023】
(マイクロ波導入部)
マイクロ波導入部5は、処理容器1の上部に設けられ、多数のマイクロ波放射孔33aが形成された平面アンテナ33と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部35と、誘電体からなる透過板39と、処理容器1の上部に設けられた枠状部材41と、マイクロ波の波長を調節する誘電体からなる遅波板43と、平面アンテナ33及び遅波板43を覆うカバー部材45と、を有している。また、マイクロ波導入部5は、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を平面アンテナ33に導く導波管47及び同軸導波管49と、導波管47と同軸導波管49との間に設けられたモード変換器51とを有している。
【0024】
マイクロ波を透過させる透過板39は、誘電体、例えば石英やA1、AlN等のセラミックス等の材質で構成されている。透過板39は、枠状部材41に支持されている。この透過板39と枠状部材41との間は、Oリング等のシール部材(図示せず)により気密にシールされている。したがって、処理容器1内は気密に保持される。
【0025】
平面アンテナ33は、例えば円板状をなしており、表面が金または銀メッキされた銅板、アルミニウム板、ニッケル板およびそれらの合金などの導電性部材で構成されている。平面アンテナ33は、透過板39の上方(処理容器1の外側)において、ステージ3の上面(ウエハWを載置する面)とほぼ平行に設けられている。平面アンテナ33は、枠状部材41に支持されている。平面アンテナ33は、マイクロ波を放射する多数の長方形状(スロット状)のマイクロ波放射孔33aを有している。マイクロ波放射孔33aは、所定のパターンで平面アンテナ33を貫通して形成されている。典型的には、図2に示したように、隣接するマイクロ波放射孔33aが所定の形状(例えばT字状)に組み合わされて対をなし、さらにそれが全体として例えば同心円状に配置されている。マイクロ波放射孔33aの長さや配列間隔は、同軸導波管49内のマイクロ波の波長(λg)に応じて決定される。例えば、マイクロ波放射孔33aの間隔は、λg/4〜λgとなるように配置される。図2においては、同心円状に形成された隣接するマイクロ波放射孔33aどうしの間隔をΔrで示している。なお、マイクロ波放射孔33aの形状は、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、マイクロ波放射孔33aの配置形態は特に限定されず、同心円状のほか、例えば、螺旋状、放射状等に配置することもできる。
【0026】
平面アンテナ33の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する遅波板43が設けられている。この遅波板43は、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。遅波板43の材質としては、例えば石英、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0027】
これら平面アンテナ33および遅波材43を覆うように、カバー部材45が設けられている。カバー部材45は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。カバー部材45の中央には、同軸導波管49が接続されている。同軸導波管49は、平面アンテナ33の中心から上方に伸びる内導体49aとその周囲に設けられた外導体49bとを有している。同軸導波管49の他端側には、モード変換器51が設けられ、このモード変換器51は、導波管47によりマイクロ波発生部35に接続されている。導波管47は、水平方向に延びる矩形導波管であり、モード変換器51は、導波管47内をTEモードで伝播するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。以上のような構成のマイクロ波導入部5により、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波が同軸導波管49を介して平面アンテナ33へ伝送され、さらに透過板39を介して処理容器1内に導入されるようになっている。マイクロ波の周波数としては、例えば2.45GHzが好ましく用いられ、他に8.35GHz、1.98GHz等を用いることもできる。以下、特に明記しない限り、周波数2.45GHzのマイクロ波を用いることとする。
【0028】
(ガス供給部)
ガス供給部7は、処理容器1の内壁に沿ってリング状に設けられた第1のガス導入部としてのシャワーリング57と、このシャワーリング57の下方において、処理容器1内の空間を上下に仕切るように設けられた第2のガス導入部としてのシャワープレート59と、を有している。
【0029】
シャワーリング57は、処理容器1内空間へガスを導入するガス放出孔57aと、このガス放出孔57aに連通するガス流路57bとを有しており、該ガス流路57bは、ガス供給配管71を介して第1ガス供給部7Aに接続されている。第1ガス供給部7Aは、ガス供給配管71から分岐した3本の分岐管71a、71b、71cを有している。なお、分岐管71a、71b、71cには、図示しない流量制御装置やバルブが設けられている。
【0030】
分岐管71aは、プラズマ生成等の目的で用いる希ガスを供給する希ガス供給源73に接続されている。希ガスとしては、例えばAr、He、Ne、Kr、Xeなどを用いることができる。これらの中でも、プラズマを安定に生成できるArを用いることが特に好ましい。
【0031】
分岐管71bは、処理容器1内のクリーニングに用いる酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給源75に接続されている。酸素含有ガスとしては、例えば、O、HO、O、NO等を用いることができる。
【0032】
分岐管71cは、パージガスを供給するパージガス供給源77に接続されている。パージガスとしては、例えば、Nガスなどを用いることができる。
【0033】
処理容器1内のステージ3とマイクロ波導入部5との間には、前処理及びCVD処理のための処理ガスを導入するためのシャワープレート59が水平に設けられている。シャワープレート59は、例えばアルミニウム等の材質からなる平面視格子状に形成されたガス分配部材61を有している。このガス分配部材61は、その格子状の本体部分の内部に形成されたガス流路63と、ガス流路63に連通して形成され、ステージ3に対向するように開口する多数のガス放出孔65とを有しており、さらに、格子状のガス流路63の間は、多数の貫通開口67が設けられている。図3に示すように、ガス流路63は、格子状流路63aと、この格子状流路63aに連通してこれを囲むように設けられたリング状流路63bと、を有している。シャワープレート59のガス流路63には処理容器1の壁に達するガス供給路69が接続されており、このガス供給路69はガス供給配管79を介して第2ガス供給部7Bに接続されている。第2ガス供給部7Bは、ガス供給配管79から分岐した3本の分岐管79a、79b、79cを有している。なお、分岐管79a、79b、79cには、図示しない流量制御装置やバルブが設けられている。
【0034】
分岐管79aは、グラフェンの原料となる炭素含有ガスを供給する炭素含有ガス供給源81に接続されている。炭素含有ガスとしては、例えばエチレン(C)、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)、アセチレン(C)、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等を用いることができる。
【0035】
分岐管79b,79cは、活性化処理に用いる処理ガスを供給するガス供給源に接続されている。活性化処理に用いる処理ガスとしては、還元性ガスと窒素含有ガスとの組み合わせを挙げることができる。図1では、分岐管79bは、還元性ガスを供給する還元性ガス供給源83に接続され、分岐管79cは、窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給源85に接続されている。還元性ガスとしては例えばHガス、NHガス等を挙げることができる。また、窒素含有ガスとしては例えばNガス、NHガス等を挙げることができる。ここで、NHガスは、還元性を有し、かつ、窒素を含有するため、還元性ガスと窒素含有ガスの双方に分類しているが、NHガスどうしの組み合わせ(つまり、NHガス単独)は含まないものとする。
【0036】
処理装置100では、希ガスを除き、触媒金属層の活性化処理に用いる処理ガス(還元性ガス、窒素含有ガス)と、グラフェンの成長に用いる原料ガス(炭素含有ガス)を、すべてウエハWに近いシャワープレート59から処理容器1内に導入することにより、活性化処理やグラフェンの成長処理における反応効率を高めている。ここで、処理容器1における透過板39の下面から、ウエハWを載置するステージ3の上面までの間隔(ギャップ)Gは、処理装置100でプラズマ処理を行う場合に、プラズマの電子温度をウエハW近傍で十分に下げて、ウエハW表面で成長するグラフェンや下地膜等へのダメージを抑制する観点から、140mm〜200mmの範囲内とすることが好ましく、160mm〜185mmの範囲内とすることがより好ましい。また、シャワープレート59の下端(ガス放出孔65の開口位置)から、ウエハWを載置するステージ3の上面までの間隔Gは、触媒金属層の活性化処理に用いる処理ガスやグラフェンの成長に用いる原料ガスの反応効率を出来るだけ高く維持する観点と、プラズマ処理の場合にウエハW表面で成長するグラフェンや下地膜へのイオン照射を抑制し、ダメージを低減する観点から、80mm以上とすることが好ましく、100mm以上とすることがより好ましい。
【0037】
(排気部)
排気部11は、排気室17と、この排気室17の側面に設けられた排気管97と、この排気管97に接続された排気装置99とを有している。排気装置99は、図示は省略するが、例えば真空ポンプや圧力制御バルブ等を有している。
【0038】
(プラズマ生成空間・混合拡散空間)
処理装置100でプラズマ処理を行う場合、処理容器1内において、マイクロ波を導入する透過板39と、シャワープレート59との間の空間S1に、シャワーリング57からプラズマ生成用の希ガスを導入する構成となっている。従って、空間S1は主にプラズマ生成を行うプラズマ生成空間である。
【0039】
また、処理容器1内において、シャワープレート59とステージ3との間の空間S2は、処理装置100でプラズマ処理を行う場合、空間S1で生成したプラズマと、シャワープレート59により導入される、活性化処理のための処理ガス又はグラフェン成長の原料となる炭素含有ガスと、を混合するとともに、プラズマ中の活性種をステージ3上のウエハWへ向けて拡散させる混合・拡散空間である。
【0040】
(制御部)
制御部13は、処理装置100の各構成部を制御するモジュールコントローラである。制御部13は、典型的にはコンピュータであり、例えば図4に示したように、CPUを備えたコントローラ101と、このコントローラ101に接続されたユーザーインターフェース103および記憶部105を備えている。コントローラ101は、処理装置100において、例えば温度、圧力、ガス流量、マイクロ波出力などのプロセス条件に関係する各構成部(例えば、ヒータ電源29、第1ガス供給部7A、第2ガス供給部7B、マイクロ波発生部35、排気装置99など)を制御する制御手段である。
【0041】
ユーザーインターフェース103は、工程管理者が処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。また、記憶部105には、処理装置100で実行される各種処理をコントローラ101の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピなどが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース103からの指示等にて任意のレシピを記憶部105から呼び出してコントローラ101に実行させることで、コントローラ101の制御により処理装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。また、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体107に格納された状態のものを利用できる。そのような記録媒体107としては、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどを用いることができる。さらに、前記レシピを他の装置から例えば専用回線を介して伝送させて利用することも可能である。
【0042】
以上の構成を有する処理装置100は、ラジカルを主体とする低電子温度のマイクロ波プラズマによる処理が可能であるため、グラフェンの形成の前処理としての触媒金属層の活性化処理に適している。また、処理装置100は、プラズマCVD法によりグラフェンの形成を行うプラズマCVD装置、あるいは、熱CVD法によりグラフェンの形成を行う熱CVD装置としても使用できる。従って、処理装置100は、触媒金属層の活性化処理と、プラズマCVD法又は熱CVD法によるグラフェンの成長処理とを、同一の処理容器内で、真空状態を保持したまま、一連の工程として順次実施することができる。このように、グラフェンの製造に処理装置100を使用することによって、活性化処理とグラフェンの成長処理の工程間での基板(ウエハW)の入れ替えが不要であり、スループットの向上、設備の集約による簡素化、省エネルギー化が実現できる。
【0043】
[前処理及びグラフェンの形成]
次に、処理装置100において行われる前処理方法、及びグラフェンの形成方法について説明する。図5A〜図5Cは、グラフェンの形成方法の主要な工程を説明するウエハWの表面付近の縦断面図である。本実施の形態のグラフェンの形成方法では、グラフェンの形成に先立って行われる活性化処理を含めている。活性化処理は、触媒金属層の表面を還元性ガスと窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマで処理して活性化する工程である。本実施の形態では、活性化処理をグラフェン形成の「前処理(方法)」と称する。なお、以下に説明する前処理方法及びグラフェンの形成方法において、ガス流量やマイクロ波パワー等の条件は、200mm径のウエハWを被処理体とする場合を想定したものであり、被処理体の大きさに応じて適宜その条件を調整できる。
【0044】
まず、触媒金属層が形成されたウエハWを準備し、処理装置100のゲートバルブGを開放して、このウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3上に載置する。このウエハWとしては、図5Aに例示するように、シリコン基板300の表層付近に、絶縁層301と、該絶縁層301の上に積層された下地層303と、該下地層303の上に積層された下地層305と、該下地層305の上に積層された触媒金属層307と、を有するものを用いることができる。
【0045】
絶縁層301は、触媒金属層307とシリコン基板300との密着性を高め、触媒金属層307の剥離を防止する。絶縁層301としては、例えばSiO膜、SiN膜、Al膜、AlN膜等を用いることができる。下地層303,305の材質としては、半導体装置の多層配線構造への適用を考慮して、例えばTi、TiN、Ta、TaN、Zr、ZrB等の導電性材料を挙げることができる。これらの下地層303,305を形成する手法としては、例えば、スパッタリング、蒸着法、CVD法、めっき等の公知の成膜技術を用いることができる。下地層303,305の厚さは、例えば、それぞれ5〜100nmの範囲内であることが好ましい。なお、絶縁層301、下地層303,305は、任意であり、設けなくてもよい。
【0046】
触媒金属層307は、グラフェンの成長を促進する触媒となる金属膜である。触媒金属層307を構成する金属としては、例えば、Ni、Co、Cu、Ru、Pt、Pd等の金属、又はこれらの金属を含む合金を挙げることができる。これらの金属種の中でも、多層構造のグラフェンを形成する場合には、Ni又はCoを選択することが好ましい。この触媒金属層307を形成する手法としては、例えば、スパッタリング、蒸着法、CVD法、めっき等の公知の成膜技術を用いることができる。触媒金属層307の厚さは、例えば10〜200nmの範囲内が好ましく、20〜50nmの範囲内がより好ましい。触媒金属層307の厚さが10nm未満になると、前処理工程で島状に凝集してしまい、該凝集状態の金属を起点としてカーボンナノチューブが成長してしまい、グラフェンの成長が阻害される可能性がある。また、触媒金属層307を、200nmを超えて厚く形成しても、グラフェンの成長を促進する効果の向上が期待できない。
【0047】
なお、被処理体である基板としては、半導体基板であるウエハWの代わりに、例えば、石英基板、サファイア基板などや、低温処理の場合には、ガラス基板、プラスチック(高分子)基板などを用いることもできる。
【0048】
前処理では、例えば、排気装置99を作動させて処理容器1内を減圧排気しながら、シャワーリング57から処理容器1内にプラズマ生成用の希ガス(例えばArガス)を導入するとともに、シャワープレート59から処理容器1内に還元性ガス(例えばHガス)及び窒素含有ガス(例えばNガス)をそれぞれ導入する。この状態で、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を、導波管47及び同軸導波管49を介して所定のモードで平面アンテナ33に導き、平面アンテナ33のマイクロ波放射孔33a、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、まず、プラズマ生成用の希ガスをプラズマ化し、プラズマが着火したタイミングで、さらに還元性ガス及び窒素含有ガスをプラズマ化して、ウエハW上の触媒金属層307の表面に活性化処理を施し、図5Bに示すように、活性化触媒金属層307Aに変化させる。なお、図5Bでは、活性化触媒金属層307Aの表面が活性化されている状態を破線で示した。活性化処理では、還元性ガスと窒素含有ガスとを含有する混合ガスのプラズマを用いることにより、触媒金属層307の表面の酸化物を還元して活性化する。また、活性化処理では、窒素含有ガスを用いるため、触媒金属層307の結晶構造を安定化させて優先配向面を形成することにより、次のグラフェンの形成工程でグラフェンを多層構造に形成できる。
【0049】
この活性化処理の温度は、触媒金属層307の活性化を効率よく進める観点から、ウエハWの温度として、例えば300〜600℃の範囲内とすることが好ましく、300〜500℃の範囲内とすることがより好ましく、300〜400℃の範囲内が望ましい。活性化処理の温度が300℃未満では、触媒金属層307の表面の酸化物の還元が十分に進行せず、活性化が不十分となり、600℃を超えると、活性化触媒金属層307Aが凝集するおそれがある。
【0050】
処理容器1内の圧力は、プラズマ中のラジカルの生成を多くする観点から、例えば66.7〜400Pa(0.5〜3Torr)の範囲内とすることが好ましく、66.7〜133Pa(0.5〜1Torr)の範囲内がより好ましい。
【0051】
還元性ガス(例えばHガス)の流量は、プラズマ中での活性種の効率的な生成の観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、100〜500mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0052】
窒素含有ガス(例えばNガス)の流量は、プラズマ中での活性種の効率的な生成の観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、100〜1000mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0053】
また、プラズマ生成用の希ガス(例えばArガス)の流量は、プラズマを安定して生成させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0054】
活性化処理では、触媒金属層307を確実に活性化させるとともに、活性化した触媒金属層の結晶構造を安定化して優先配向面を形成するために、還元性ガス(例えばHガス)と窒素含有ガス(例えばNガス)の比率(還元性ガス:窒素含有ガス)を10:1〜1:10の範囲内とすることが好ましく、5:1〜1:5の範囲内とすることがより好ましい。
【0055】
マイクロ波パワーは、プラズマ中で活性種を効率よく生成させるとともに、低温でグラフェンの生成を可能にする観点から、例えば250W〜4000Wの範囲内とすることが好ましく、300W〜1000Wの範囲内がより好ましい。
【0056】
処理時間は、触媒金属層307の凝集を抑制しながら、確実に活性化する観点から、例えば30秒〜15分の範囲内が好ましく、3分〜10分の範囲内がより好ましい。
【0057】
活性化処理の終了時には、まずマイクロ波の供給を停止し、さらに還元性ガス及び窒素含有ガスの供給を停止する。
【0058】
(グラフェンの形成)
次に、グラフェンの形成を行う。このグラフェンの形成は、活性化処理によって活性化された活性化触媒金属層307Aが不活性化することを防止するため、活性化処理に引き続き行うことが好ましく、活性化処理と同一の処理容器内において連続して行うことがより好ましい。処理装置100において、グラフェンの形成は、例えばプラズマCVD法、熱CVD法等により行うことができる。以下、グラフェンの形成処理をプラズマCVD法により行う場合と、熱CVD法により行う場合とに分けて説明する。
【0059】
<プラズマCVD法>
活性化処理の後、希ガス(例えばArガス)を所定流量で流したまま、マイクロ波発生部35から導波管47及び同軸導波管49を介してマイクロ波を平面アンテナ33に導き、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、まず、プラズマ生成用の希ガスをプラズマ化し、プラズマが着火したタイミングでシャワープレート59を介して炭素含有ガス(例えばCガス)および必要に応じHガスを処理容器1内に導入し、炭素含有ガス(及びHガス)をプラズマ化する。そして、生成したマイクロ波プラズマにより、図5Cに示すように、活性化触媒金属層307Aの上にグラフェン309を形成する。
【0060】
プラズマCVD法によるグラフェン309の成長処理の際の温度は、低温プロセスを実現する観点から、ウエハWの温度として、例えば300℃〜600℃の範囲内とすることが好ましく、300℃〜500℃の範囲内がより好ましく、300℃〜400℃の範囲内が望ましい。本実施の形態では、前処理として、上記活性化処理を行うことにより、好ましくは500℃以下、最も好ましくは400℃以下の低い温度でもグラフェン309を成長させることが可能である。なお、このプラズマCVD処理の温度は、活性化処理と異なっていてもよいし、同じ温度でもよい。活性化処理と同じ温度の場合は、スループットを高めることができるので好ましい。
【0061】
処理容器1内の圧力は、プラズマ中のラジカルの生成を多くする観点から、例えば66.7〜667Pa(0.5〜5Torr)の範囲内とすることが好ましく、266Pa〜400Pa(2〜3Torr)の範囲内がより好ましい。
【0062】
炭素含有ガス(例えばCガス)の流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば、5〜200mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、6〜30mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0063】
また、プラズマ生成用の希ガス(例えばArガス流量)は、プラズマを安定して生成させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0064】
また、また、炭素含有ガス(例えばCガス)とともにHガスを処理容器1内に導入することで、グラフェン309の成長速度を速め、かつ品質を向上させることができる。ただしHガスの使用は任意である。Hガスを用いる場合、その流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば、100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、300〜1200mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0065】
マイクロ波パワーは、活性種を効率的に生成させてグラフェン309の成長を促進する観点から、例えば250W〜4000Wの範囲内とすることが好ましく、250W〜1000Wの範囲内がより好ましい。
【0066】
処理時間は、触媒活性が低下することを防ぎつつ、十分な層数までグラフェン309を成長させる観点から、例えば30秒〜60分の範囲内とすることが好ましく、1分〜30分の範囲内がより好ましい。
【0067】
プラズマCVD法によるグラフェン309の形成においては、エチレン(C)ガスに限らず、例えばメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)、アセチレン(C)等の他の炭化水素ガスや、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等の炭素含有ガスを用いることができる。また、プラズマ生成用の希ガスとしては、Arガス以外に、例えば、He、Ne、Kr、Xeなどを用いることもできる。
【0068】
プラズマCVD法では、活性化触媒金属層307Aの上に、グラフェン309を層状に堆積させることができる。また、プラズマCVD法では、600℃以下、好ましくは500℃以下、望ましくは400℃以下の低温でもグラフェン309を形成することができるため、例えばガラス基板や合成樹脂製(高分子)基板などの耐熱性の低い基板上にもグラフェン309を形成できる。
【0069】
<熱CVD法>
活性化処理の後、希ガス(例えばArガス;但し、熱CVD処理ではプラズマ生成の目的ではない)を供給したまま、さらにシャワープレート59を介して炭素含有ガス(例えばCガス)及びHガス(必要な場合)を処理容器1内に導入し、空間S2で炭素含有ガスを熱分解させて、図5Cに示すように活性化触媒金属層307Aの上にグラフェン309を形成する。
【0070】
熱CVD法によるグラフェン309の成長処理の際の温度は、低温プロセスを実現する観点から、ウエハWの温度として、例えば300〜600℃の範囲内とすることが好ましく、300〜500℃の範囲内とすることがより好ましく、400℃〜500℃の範囲内が望ましい。本実施の形態では、前処理として、上記の活性化処理を行うことにより、500℃以下という低い温度でも熱CVD法によりグラフェン309を成長させることが可能である。なお、この熱CVD処理の温度は、活性化処理と異なっていてもよいし、同じ温度でもよい。活性化処理と同じ温度の場合は、スループットを高めることができるので好ましい。
【0071】
処理容器1内の圧力は、グラフェンの十分な成長速度を維持する観点から、例えば66.7〜667Pa(0.5〜5Torr)の範囲内とすることが好ましく、400Pa〜667Pa(3〜5Torr)の範囲内がより好ましい。
【0072】
炭素含有ガス(例えばCガス)の流量は、効率的にグラフェン309を成長させる観点から、例えば、5〜200mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、6〜30mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。
【0073】
また、熱CVD法によるグラフェン309の形成においては、炭素含有ガスとともに、希ガスおよびHガスを処理容器1内に導入することで、グラフェン309の成長速度を速め、かつ品質を向上させることができる。ただし、希ガスおよびHガスの使用は任意である。希ガスを導入する場合、その流量は、効率的にグラフェン309を成長させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。また、Hガスを導入する場合、その流量は、効率的にグラフェン309を成長させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。
【0074】
処理時間は、触媒活性が低下することを防ぎつつ、十分な層数までグラフェン309を成長させる観点から、例えば30秒〜120分の範囲内とすることが好ましく、30分〜90分の範囲内がより好ましい。
【0075】
熱CVD法によるグラフェン309の形成においては、エチレン(C)ガスに限らず、例えばメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)、アセチレン(C)等の他の炭化水素ガスや、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等の炭素含有ガスを用いることができる。また、希ガスとしては、Arガスに代えて、例えば、He、Ne、Kr、Xeなどの他の希ガスを用いることもできる。
【0076】
熱CVD法では、活性化触媒金属層307Aの上に、グラフェン309を層状に堆積させることができる。本実施の形態では、従来の熱CVD法よりも格段に低い500℃以下の温度でもグラフェン309を形成できる。また、熱CVD法では、グラフェン309に電子やイオンによるダメージを与えることがないため、結晶欠陥や不純物の導入を抑制し、不純物が少なく、G/D比が高く、結晶性の良好なグラフェン309を形成することができる。
【0077】
以上のようにプラズマCVD法又は熱CVD法によってグラフェン309を形成した後、マイクロ波の供給(プラズマCVD法の場合)及びガスの供給を停止し、処理容器1内の圧力を調整した後に、ゲートバルブGを開放してウエハWを搬出する。なお、本実施の形態のグラフェンの形成方法は、上記活性化処理工程及びグラフェンの形成工程以外の任意の工程を含むことができる。
【0078】
[Nパージ処理工程]
活性化処理工程とグラフェンの形成工程の間に、処理容器1内をパージする工程(Nパージ処理工程)を設けてもよい。Nパージ処理は、活性化触媒金属層307Aを有するウエハWをステージ3に載置した状態で、排気装置99によって一旦処理容器1内を急速に排気した後、Nガスを流すことにより実施できる。Nパージ処理を行うことによって、処理容器1内の雰囲気を置換できる。また、Nパージ処理によって、活性化触媒金属層307Aの凝集を抑制してカーボンナノチューブが成長することを防ぎ、グラフェンの正常な成長を促す効果が得られる。このようなNパージ処理による凝集抑制効果は、特に活性化触媒金属層307AがCoを含む場合に有効である。
【0079】
このNパージ処理の温度は、活性化処理と同じ温度で行うことが好ましい。
【0080】
パージ処理における処理容器1内の圧力は、活性化処理工程に使用したガスを十分に置換してグラフェン成長に影響させないようにする観点から、例えば66.7〜667Pa(0.5〜5Torr)の範囲内とすることが好ましく、133〜400Pa(1〜3Torr)の範囲内がより好ましい。
【0081】
パージ処理におけるNガス流量は、活性化処理工程に使用したガスを十分に置換する観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)の範囲内とすることが好ましく、200〜1000mL/min(sccm)の範囲内がより好ましい。なお、Nパージ処理では、Nガスとともに、例えばArなどの希ガスを処理容器1内に導入してもよい。
【0082】
処理時間は、活性化触媒金属層307Aの凝集を抑制しながら、活性化状態を保持する観点から、例えば30秒〜10分の範囲内が好ましく、1分〜5分の範囲内がより好ましい。
【0083】
以上述べたように、本実施の形態の製造方法により、ウエハW上の活性化触媒金属層307Aの表面に高密度に形成され、かつ多層に積層された構造を有するグラフェン309を製造できる。このように形成されたグラフェン309は、例えば半導体装置のビア配線などの用途や、トランジスタのチャネル材料等の用途において利用価値が高いものである。
【0084】
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより制約されるものではない。
【0085】
[実施例1]
プラズマCVD法によるグラフェンの形成:
図5Aと同様に、シリコン基板上に、絶縁層、下地層(2層)及び触媒金属層が積層形成されたウエハWを準備した。ここで、図5Aを参照しながら説明すると、絶縁層301にはTEOS(テトラエトキシシラン)を使用して厚さ約500nmに形成したSiO膜を用いた。下地層303は、Tiにより厚さ10nmで形成した。下地層305は、TiNにより厚さ5nmで形成した。触媒金属層307は、Ni又はCoにより厚さ30nmで形成した。このウエハWを図1の処理装置100と同様の構成を有する処理装置の処理容器内に搬入し、下記の条件で触媒金属層の表面の活性化処理を行った後、プラズマCVD法によってグラフェンを成長させた。なお、活性化処理とプラズマCVD処理との間に、下記の条件でNパージ処理を行った。
【0086】
<活性化処理の条件>
処理圧力:133Pa(1Torr)
処理ガス:
ガス 462mL/min(sccm)
ガス 100mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:0.5kW
処理温度:470℃(基板温度として)
処理時間:5分間
【0087】
<パージ処理の条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃(基板温度として)
処理時間:2分間
【0088】
<プラズマCVD(グラフェン成長)条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 6.3mL/min(sccm)
ガス 370mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:0.5kW
処理温度:470℃(基板温度として)
処理時間:30分間
【0089】
[実施例2〜3、比較例1〜3]
実施例1における触媒金属層の活性化処理の条件を表1に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性化処理、Nパージ処理及びプラズマCVD処理を行うことによりグラフェンを成長させた。なお、表1には実施例1の活性化処理の条件も併記した。
【0090】
【表1】

【0091】
以上のようにして成長させたグラフェンの断面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、実施例1〜3では、多層構造のグラフェンシートの成長が確認された。実施例1において、触媒金属層の材質として、Niを用いた結果を図6Aに、Coを用いた結果を図6Bに、それぞれ示した。また、実施例1において、触媒金属層の材質として、Niを用いて形成したグラフェンの断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図6Cに、その部分的な拡大画像を図6Dに、それぞれ示した。また、実施例2において、触媒金属層の材質として、Niを用いた結果を図7Aに、Coを用いた結果を図7Bに、それぞれ示した。また、実施例3において、触媒金属層の材質として、Niを用いた結果を図8Aに、Coを用いた結果を図8Bに、それぞれ示した。一方、比較例1〜3では、カーボンナノチューブの成長やカーボンの成長が観察され、多層構造のグラフェンシートの成長が阻害されていた(結果は図示を省略する)。
【0092】
[実施例4]
実施例1において、プラズマCVD(グラフェン成長)の時間を1分間、3分間、5分間又は15分間に変えた以外は、実施例1と同様にして、活性化処理、Nパージ処理及びプラズマCVD処理を行うことによりグラフェンを成長させた。なお、触媒金属層の材質としてはNiを用いた。それぞれの時間成長させたグラフェンの断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。グラフェン成長時間1分間の結果を図9Aに、同3分間の結果を図9Bに、同5分間の結果を図9Cに、同15分間の結果を図9Dにそれぞれ示した。図9A〜図9Dより、プラズマCVD(グラフェン成長)の時間が1分〜15分間でも、十分に多層構造のグラフェンシートを形成できることが確認された。
【0093】
また、実施例4の各時間のプラズマCVD(グラフェン成長)処理で得られたグラフェンの結晶性をラマン散乱分光分析法により測定した。図10にラマンシフトのチャートを示した。図10から、1分間、3分間、5分間又は15分間のどの時間のプラズマCVD(グラフェン成長)処理でも、1350cm−1前後に現れるDバンドのピークに対する1585cm−1前後に現れるGバンドのピークの比(G/D比)が約1.4前後であり、結晶性の高いグラフェンが形成されていることが確認された。なお、図10では、触媒金属層上に形成されたグラフェンの層数が10層以上と多いため、グラフェンの層間の相互作用を示すG’バンド(2700cm−1)のピークが小さくなっているものと考えられる。
【0094】
[実施例5]
実施例1において、処理温度[活性化処理、Nパージ処理及びプラズマCVD(グラフェン成長)処理の温度]をすべて350℃、又は390℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、活性化処理、Nパージ処理及びプラズマCVD処理を行うことによりグラフェンを成長させた。なお、触媒金属層の材質としてはNiを用いた。各温度で触媒金属層の活性化処理を行った後で成長させたグラフェンの断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。処理温度が350℃の結果を図11Aに、同390℃の結果を図11Bにそれぞれ示した。図11A及び図11Bより、処理温度が350℃でも十分に多層構造のグラフェンシートを形成できることが確認された。なお、グラフェンのドメインサイズは、処理温度を下げるに伴って小さくなる傾向が見られた。
【0095】
[実施例6]
実施例2において、プラズマCVD(グラフェン成長)の時間を1分間に変えた以外は、実施例2と同様にして、活性化処理、Nパージ処理及びプラズマCVD処理を行うことによりグラフェンを成長させた。なお、触媒金属層の材質としてはNiを用いた。成長させたグラフェンの断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果を図12に示した。図12より、活性化処理の処理ガスとしてHガスとNHガスとを組み合わせて用いた場合でも、多層構造のグラフェンシートを形成できることが確認された。
【0096】
[実施例7]
実施例3において、プラズマCVD(グラフェン成長)の時間を1分間に変えた以外は、実施例3と同様にして、活性化処理、Nパージ処理及びプラズマCVD処理を行うことによりグラフェンを成長させた。なお、触媒金属層の材質としてはNiを用いた。成長させたグラフェンの断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果を図13に示した。図13より、活性化処理の処理ガスとしてNガスとNHガスとを組み合わせて用いた場合でも、多層構造のグラフェンシートを形成できることが確認された。
【0097】
[実施例8]
実施例1において、Nパージ処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、活性化処理及びプラズマCVD処理を行うことによりグラフェンを成長させた。なお、触媒金属層の材質としてはNi又はCoを用いた。成長させたグラフェンの断面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、多層構造のグラフェンシートの成長が確認された。実施例8において、触媒金属層の材質として、Niを用いた結果を図14Aに、Coを用いた結果を図14Bに、それぞれ示した。図14A及び図14Bより、Nパージ処理を実施しなくても、多層構造のグラフェンシートの成長が可能であったが、触媒金属層の材質としてCoを用いた場合には、わずかにカーボンナノチューブの形成が確認された。この結果から、Nパージ処理は、Coのように凝集を生じやすい金属で活性化触媒金属層を形成した場合に、活性化触媒金属層の凝集を抑制し、カーボンナノチューブの成長を抑制して、グラフェンの成長を促す効果があるものと考えられた。
【0098】
[実施例9]
実施例1におけるプラズマCVD処理に替えて、下記条件で熱CVD処理を行った以外は、実施例1と同様にして、活性化処理、Nパージ処理を行い、熱CVD処理によってグラフェンを成長させた。なお、触媒金属層の材質としてはNi又はCoを用いた。
【0099】
<熱CVD(グラフェン成長)条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 30mL/min(sccm)
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃(基板温度として)
処理時間:60分間
【0100】
このようにして成長させた成長させたグラフェンの断面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。実施例9において、触媒金属層の材質として、Niを用いた結果を図15Aに、Coを用いた結果を図15Bに、それぞれ示した。図15A及び図15BのSEMによる断面観察結果、並びに、ラマン散乱分光分析でのG’(2D)バンドのスペクトル(図示省略)により、基板温度470℃の熱CVD法によっても、十分に多層構造のグラフェンシートを形成できることを確認した。また、熱CVD法の場合、ラマン散乱分光分析によって、G/D比がプラズマCVD法よりも約1.5倍程度向上することも確認した(結果は図示を省略する)。
【0101】
以上の実験結果から、マイクロ波プラズマを生成可能な処理装置100を用いて、還元性ガスと窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより活性化処理を行うことにより、プラズマCVD法、熱CVD法のいずれの方法でも、結晶性の高い多層構造のグラフェンを形成できることが確認された。従って、本実施の形態の前処理方法及びグラフェンの形成方法によれば、触媒金属層の表面を、還元性ガスと窒素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにより活性化する工程を含むことにより、被処理体である基板の表面に、結晶性の高い多層構造のグラフェンを効率よく形成できる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態においては、微粒子化処理及び活性化処理をRLSAマイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置で行った例を示したが、他のマイクロ波プラズマ方式を用いてもよいし、マイクロ波プラズマに限らず、例えば、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ等の他の方式のプラズマを用いてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態では、処理装置100を用い、単一の処理容器1内で前処理とグラフェン成長のためのCVD処理(プラズマCVD処理もしくは熱CVD処理)を順次行う構成としたが、前処理とCVD処理を異なる処理容器内で行うことができる。この場合、例えばマルチチャンバ形式の処理システムを用いることによって、前処理とCVD処理を、真空状態を維持した状態で順次実施できる。
【符号の説明】
【0104】
1…処理容器、3…ステージ、5…マイクロ波導入部、7…ガス供給部、7A…第1ガス供給部、7B…第2ガス供給部、11…排気部、13…制御部、15…開口部、17…排気室、19…搬入出口、23…支持部材、25…ガイドリング、27…ヒータ、29…ヒータ電源、31…電極、33…平面アンテナ、33a…マイクロ波放射孔、35…マイクロ波発生部、39…透過板、41…枠状部材、43…遅波板、45…カバー部材、47…導波管、49…同軸導波管、57…シャワーリング、57a…ガス放出孔、57b…ガス流路、59…シャワープレート、63…ガス流路、63a…格子状流路、63b…リング状流路、69…ガス供給路、71…ガス供給配管、71a,71b,71c…分岐管、73…希ガス供給源、75…酸素含有ガス供給源、77…パージガス供給源、79…ガス供給配管、99…排気装置、81…炭素含有ガス供給源、83…還元性ガス供給源、85…窒素含有ガス供給源、100…処理装置、G…ゲートバルブ、W…半導体ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体上に形成された触媒金属層の上にCVD法によってグラフェンを成長させる前に行う前処理方法であって、
前記触媒金属層に還元性ガスと窒素含有ガスとを含む処理ガスのプラズマを作用させて触媒金属層を活性化するプラズマ処理工程、
を備えていることを特徴とする前処理方法。
【請求項2】
前記還元性ガスと前記窒素含有ガスとの体積比が、10:1〜1:10の範囲内である請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
前記還元性ガスが水素ガスであり、前記窒素含有ガスが窒素ガス又はアンモニアガスである請求項1又は2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記還元性ガスが水素ガス又はアンモニアガスであり、前記窒素含有ガスが窒素ガスである請求項1又は2に記載の前処理方法。
【請求項5】
前記触媒金属層が、Ni、Co、Cu、Ru、Pd及びPtよりなる群から選ばれる1種以上の金属種により構成される請求項1から4のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の前処理方法により触媒金属層を活性化するプラズマ処理工程と、
前記プラズマ処理がされた触媒金属層の上にCVD法によりグラフェンを成長させる工程と、
を備えているグラフェンの形成方法。
【請求項7】
前記グラフェンを成長させる工程を、プラズマCVD法により行う請求項6に記載のグラフェンの形成方法。
【請求項8】
前記プラズマCVD法による処理温度が、300℃〜600℃の範囲内である請求項7に記載のグラフェンの形成方法。
【請求項9】
複数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナにより処理容器内にマイクロ波を導入して原料ガスのプラズマを生成させ、該原料ガスのプラズマによりグラフェンを成長させる請求項7又は8に記載のグラフェンの形成方法。
【請求項10】
前記平面アンテナがラジアル・ライン・スロット・アンテナである請求項9に記載のグラフェンの形成方法。
【請求項11】
前記グラフェンを成長させる工程を、熱CVD法により行う請求項6に記載のグラフェンの形成方法。
【請求項12】
前記熱CVD法による処理温度が、300℃〜600℃の範囲内である請求項11に記載のグラフェンの形成方法。
【請求項13】
被処理体上に形成された触媒金属層の上にグラフェンを成長させる前に行う前処理と、前記前処理がされた触媒金属層の上にCVD法によりグラフェンを成長させる工程と、を同一の処理容器内で順次行うグラフェン製造装置であって、
被処理体を処理する上部が開口した処理容器と、
前記処理容器内で、前記被処理体を載置する載置台と、
前記処理容器の前記開口部を塞ぐ誘電体板と、
前記誘電体板の外側に設けられて前記処理容器内にマイクロ波を導入する、多数のマイクロ波放射孔を有する平面アンテナと、
前記載置台上に載置された被処理体に対向して設けられた複数のガス放出孔を有して前記処理容器内に処理ガスを導入するガス導入部と、
前記処理容器内を減圧排気する排気装置に接続される排気口と、
を備え、
前記ガス導入部は、前記前処理に用いる還元性ガスと窒素含有ガスとを含む処理ガスを供給するガス供給源及び前記グラフェンの原料ガスを供給する原料ガス供給源に接続されていることを特徴とするグラフェン製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図10】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2013−100205(P2013−100205A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245747(P2011−245747)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】