説明

前処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法

【課題】高密度かつ高い垂直配向性でカーボンナノチューブを形成するために、触媒金属微粒子を効率よく活性化する方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブの形成のための前処理方法は、触媒金属層にプラズマを作用させて触媒金属を微粒子化して触媒金属微粒子を形成する第1のプラズマ処理工程と、触媒金属微粒子に、水素含有ガスと窒素ガスとの混合ガスのプラズマを作用させて触媒金属微粒子を活性化させる第2のプラズマ処理工程と、を備えている。前記触媒金属層の下に、TiN、TaNなどの窒化物からなる助触媒層を備えていることが好ましく、水素含有ガスと窒素ガスとの混合ガスのプラズマにより助触媒層が窒化され、触媒金属微粒子の活性化比率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを形成するための前処理方法、及びカーボンナノチューブの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、電子が散乱を受けずに伝播するバリスティック伝導が可能であり、優れた電気伝導性(低電気抵抗)、高い電流密度耐性(高エレクトロマイグレーション耐性)という特徴を持つことから、現在主流になっているCu配線に代わる次世代半導体装置の配線材料として期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブの成長手法として、高エネルギーのプラズマを利用して原料となる炭化水素分子などを励起・分解し、その活性種と触媒金属を反応させることでカーボンナノチューブを成長させる方法が挙げられる(プラズマCVD法)。プラズマCVD法によるカーボンナノチューブの成膜方法として、例えば特許文献1では、Ni、Fe、Co等の遷移金属で構成された触媒層を基板上に形成し、その上に炭素含有ガスと水素ガスとを用いたプラズマCVD法により600℃の処理温度でカーボンナノチューブを成膜する方法が提案されている。この特許文献1には、触媒金属を微粒子化した場合に、微粒子表面が酸化して触媒活性が低下することを防止する目的で、触媒金属の表面に炭素含有ガスと水素ガスとを用いたプラズマ中のラジカルを作用させて活性化させることが記載されている。しかし、この特許文献1の技術では、プラズマCVD法でも600℃程度の加熱が必要であることから、基板自体や、基板上に形成された材料膜に相応の耐熱性が要求され、例えばプラスチック基板などへの適用は困難である。
【0004】
一方、原料の炭化水素分子を触媒金属表面で熱分解させてカーボンナノチューブを成長させる方法(熱CVD法)も知られている。熱CVD法によるカーボンナノチューブの成膜方法として、例えば特許文献2では、微粒子化された触媒が形成された基板上に、炭化水素系ガスを原料として800〜1000℃の温度で熱CVD法によりカーボンナノチューブを成膜する方法が提案されている。この特許文献2の方法では、基板上に形成されたFe等の触媒金属薄膜を、酸素雰囲気中(例えば大気中)で800〜1000℃に加熱、溶融してから冷却することにより、粒子状にする細分化工程と、この粒子状の触媒を、酸素雰囲気中(例えば大気中)で800〜1000℃に加熱して微粒子状にする再細分化工程を行うことが記載されている。しかし、特許文献2に記載された技術では、触媒金属を担持させた基板の温度を800℃以上の高温に加熱する必要があるため、不純物の拡散を引き起こしたり、サーマルバジェットを増大させたりする懸念から、半導体装置の製造工程への適用は、さらに困難であると考えられる。
【0005】
また、特許文献3では、金属触媒層に酸素プラズマ処理を施した後、水素含有プラズマ処理を施して金属触媒層の表面を活性化させ、この活性化させた金属触媒層の上にプラズマCVD法によりカーボンナノチューブ膜を成膜する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−252970号公報
【特許文献2】特開2007−261867号公報
【特許文献3】特開2011−68513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンナノチューブを半導体装置などの配線材料として用いるためには、
i)高密度であること、
ii)高い垂直配向性を有すること、及び、
iii)高品質であること、
が必要と考えられている。上記iii)の高品質化を実現するためには、カーボンナノチューブの成長温度を高くして結晶性を高めることが有効である。上記ii)の高い垂直配向性を実現するためには、細いカーボンナノチューブが互いに支え得るようにカーボンナノチューブの密度を高くしておくことが有効である。そのためには、上記i)の高密度化が重要になってくる。
【0008】
ところが、カーボンナノチューブ形成の核となる触媒金属微粒子を高密度に基板上に配置しても、触媒の活性化比率が小さい場合には、カーボンナノチューブを高密度に形成することはできない。上記特許文献3の提案は、酸素プラズマ処理の後で水素プラズマ処理を行い、触媒金属微粒子の活性化比率を高めている点で優れたものである。しかし、触媒金属微粒子の活性化比率をさらに向上させることが可能であれば、より高密度にカーボンナノチューブを形成することができるとともに、高い垂直配向性も実現できると考えられる。
【0009】
従って、本発明の目的は、高密度かつ高い垂直配向性でカーボンナノチューブを形成するために、触媒金属微粒子を効率よく活性化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前処理方法は、被処理体上に形成された触媒金属微粒子の上にCVD法によってカーボンナノチューブを成長させる前に行うものである。この前処理方法は、表面に、触媒金属層を有する被処理体を準備する工程と、前記触媒金属層にプラズマを作用させて触媒金属を微粒子化して触媒金属微粒子を形成する第1のプラズマ処理工程と、前記触媒金属微粒子に、水素含有ガスと窒素ガスとを含有する混合ガスのプラズマを作用させて前記触媒金属微粒子を活性化させる第2のプラズマ処理工程と、を備えている。
【0011】
本発明の前処理方法において、前記被処理体は、前記触媒金属層の下に、窒化物からなる助触媒層を備えていてもよい。この場合、前記助触媒層が、TiN、TaN、SiN及びAlNからなる群より選ばれる窒化物から構成されていてもよい。
【0012】
また、本発明の前処理方法は、前記第1のプラズマ処理工程の処理温度がTであり、前記第2のプラズマ処理工程の処理温度Tが、前記温度Tより高くてもよい。この場合、前記温度Tが100℃〜450℃の範囲内であり、前記温度Tが100℃〜550℃の範囲内であってもよい。さらに、前記温度Tと前記温度Tとの温度差(T−T)が50℃以上であってもよい。また、前記温度Tから前記温度Tまでの温度変化の過程で、少なくとも100℃/分以上の昇温速度による加熱区間を有していてもよい。
【0013】
本発明のカーボンナノチューブの形成方法は、上記いずれかの前処理方法により前処理を行う工程と、前記活性化された触媒金属微粒子の上にCVD法によりカーボンナノチューブを成長させる工程と、を備えている。
【0014】
本発明のカーボンナノチューブの形成方法は、前記第2のプラズマ処理工程と、前記カーボンナノチューブを成長させる工程を、同一の処理容器内で連続的に行ってもよい。
【0015】
また、本発明のカーボンナノチューブの形成方法は、前記カーボンナノチューブを成長させる工程を、熱CVD法により行ってもよい。この場合、前記熱CVD法による処理温度が、300℃〜550℃の範囲内であってもよい。
【0016】
また、本発明のカーボンナノチューブの形成方法は、前記カーボンナノチューブを成長させる工程を、プラズマCVD法により行ってもよい。この場合、前記プラズマCVD法による処理温度が、100℃〜550℃の範囲内であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の前処理方法によれば、触媒金属微粒子を、水素含有ガスと窒素ガスとの混合ガスのプラズマにより活性化する工程を含むことにより、触媒の活性化比率を高めることができる。そして、この前処理方法を含む本発明のカーボンナノチューブの形成方法によれば、被処理体の表面に高密度のカーボンナノチューブを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る前処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法に利用可能な処理装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の処理装置の制御部の構成例を説明する図面である。
【図3】図1の処理装置を備えたマルチチャンバタイプの処理システムの構成例を示す図面である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るカーボンナノチューブの形成方法を示すフローチャートである。
【図5A】処理対象となる触媒金属層を有するウエハの構造を示す模式図である。
【図5B】微粒子化処理によって、触媒金属層を微粒子化した状態を説明する模式図である。
【図5C】活性化処理によって、触媒金属微粒子を活性化した状態を説明する模式図である。
【図5D】カーボンナノチューブを形成した状態を模式的に説明する図面である。
【図6】カーボンナノチューブを形成する際のウエハWの温度変化の一例を示す図面である。
【図7】カーボンナノチューブを形成する際のウエハWの温度変化の別の例を示す図面である。
【図8】実施例1におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9】比較例1におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10A】実施例2におけるカーボンナノチューブの形成実験(マイクロ波パワー0.5kW)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10B】実施例2におけるカーボンナノチューブの形成実験(マイクロ波パワー1.0kW)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10C】実施例2におけるカーボンナノチューブの形成実験(マイクロ波パワー1.5kW)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図11A】実施例3におけるカーボンナノチューブの形成実験(Nガス流量200mL/min(sccm))の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図11B】実施例3におけるカーボンナノチューブの形成実験(Nガス流量400mL/min(sccm))の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図11C】実施例3におけるカーボンナノチューブの形成実験(Nガス流量800mL/min(sccm))の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12A】実施例4におけるカーボンナノチューブの形成実験(活性化処理時間3分間)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12B】実施例4におけるカーボンナノチューブの形成実験(活性化処理時間5分間)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12C】実施例4におけるカーボンナノチューブの形成実験(活性化処理時間10分間)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12D】実施例4におけるカーボンナノチューブの形成実験(活性化処理時間15分間)の結果を示す基板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図13】比較例2におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】比較例3におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図15】比較例4におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図16】比較例5におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図17A】実施例5におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図17B】図17Aの要部を拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図18A】比較例6におけるカーボンナノチューブの形成実験の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図18B】図18Aの要部を拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図19A】参考例におけるカーボンナノチューブの形成実験(2nmNi層)の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図19B】図19Aの要部を拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図20A】参考例におけるカーボンナノチューブの形成実験(2.3nmCo層)の結果を示す基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図20B】図20Aの要部を拡大して示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
[処理装置]
まず、本発明の実施の形態にかかる前処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法に利用可能な処理装置の概要について説明する。図1は、処理装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す処理装置100は、マイクロ波を平面アンテナの多数のマイクロ波放射孔から放射させて処理容器内に均質なマイクロ波プラズマを形成できるRLSA(Radial Line Slot Antenna)方式のマイクロ波プラズマ処理装置として構成されている。マイクロ波プラズマはラジカルを主体とする低電子温度プラズマであるため、カーボンナノチューブの形成の前処理としての微粒子化処理、活性化処理に適している。また、処理装置100は、熱CVD法によりカーボンナノチューブの形成を行う熱CVD装置、あるいは、プラズマCVD法によりカーボンナノチューブの形成を行うプラズマCVD装置としても使用できる。
【0021】
この処理装置100は、主要な構成として、略円筒状の処理容器1と、処理容器1内に設けられ、被処理体である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wを載置するステージ3と、処理容器1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入部5と、処理容器1内にガスを導くガス供給部7と、処理容器1内を排気する排気部11と、処理装置100の各構成部を制御する制御部13と、を有している。
【0022】
(処理容器)
処理容器1の底壁1aの略中央部には円形の開口部15が形成されており、底壁1aにはこの開口部15と連通し、下方に向けて突出する排気室17が設けられている。また、処理容器1の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口19と、この搬入出口19を開閉するゲートバルブG1とが設けられている。
【0023】
(ステージ)
ステージ3は、例えばAlN等のセラミックスから構成されている。ステージ3は、排気室17の底部中央から上方に延びる円筒状のセラミックス製の支持部材23により支持されている。ステージ3の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング25が設けられている。また、ステージ3の内部には、ウエハWを昇降するための昇降ピン(図示せず)がステージ3の上面に対して突没可能に設けられている。
【0024】
また、ステージ3の内部には抵抗加熱型のヒータ27が埋め込まれている。このヒータ27にヒータ電源29から給電することによりステージ3を介してその上のウエハWを加熱することができる。また、ステージ3には、熱電対(図示せず)が挿入されており、ウエハWの加熱温度を50〜650℃の範囲で制御可能となっている。なお、ウエハWの温度は、特に断りのない限り、ヒータ27の設定温度ではなく、熱電対により計測された温度を意味する。また、ステージ3内のヒータ27の上方には、ウエハWと同程度の大きさの電極31が埋設されている。この電極31は接地されている。
【0025】
(マイクロ波導入部)
マイクロ波導入部5は、処理容器1の上部に設けられ、多数のマイクロ波放射孔33aが形成された平面アンテナ33と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部35と、誘電体からなる透過板39と、処理容器1の上部に設けられた枠状部材41と、マイクロ波の波長を調節する誘電体からなる遅波板43と、平面アンテナ33及び遅波板43を覆うカバー部材45と、を有している。また、マイクロ波導入部5は、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を平面アンテナ33に導く導波管47及び同軸導波管49と、導波管47と同軸導波管49との間に設けられたモード変換器51とを有している。
【0026】
マイクロ波を透過させる透過板39は、誘電体、例えば石英やA1、AlN等のセラミックス等の材質で構成されている。透過板39は、枠状部材41に支持されている。この透過板39と枠状部材41との間は、Oリング等のシール部材(図示せず)により気密にシールされている。したがって、処理容器1内は気密に保持される。
【0027】
平面アンテナ33は、例えば円板状をなしており、表面が金または銀メッキされた銅板、アルミニウム板、ニッケル板およびそれらの合金などの導電性部材で構成されている。平面アンテナ33は、透過板39の上方(処理容器1の外側)において、ステージ3の上面(ウエハWを載置する面)とほぼ平行に設けられている。平面アンテナ33は、枠状部材41の上端に係止されている。平面アンテナ33は、マイクロ波を放射する多数の長方形状(スロット状)のマイクロ波放射孔33aを有している。マイクロ波放射孔33aは、所定のパターンで平面アンテナ33を貫通して形成されている。典型的には隣接するマイクロ波放射孔33aが所定の形状(例えばT字状)に組み合わされて対をなし、さらにそれが全体として同心円状、螺旋状、放射状等に配置されている。マイクロ波放射孔33aの長さや配列間隔は、マイクロ波の波長(λg)に応じて決定される。
【0028】
平面アンテナ33の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する遅波板43が設けられている。この遅波板43は、真空中ではマイクロ波の波長が長くなることから、マイクロ波の波長を短くしてプラズマを調整する機能を有している。遅波板43の材質としては、例えば石英、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0029】
これら平面アンテナ33および遅波材43を覆うように、カバー部材45が設けられている。カバー部材45は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料によって形成されている。カバー部材45の上壁(天井部)の中央には、同軸導波管49が接続されている。同軸導波管49は、平面アンテナ33の中心から上方に伸びる内導体49aとその周囲に設けられた外導体49bとを有している。同軸導波管49の他端側には、モード変換器51が設けられ、このモード変換器51は、導波管47によりマイクロ波発生部35に接続されている。導波管47は、水平方向に延びる矩形導波管であり、モード変換器51は、導波管47内をTEモードで伝播するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。以上のような構成のマイクロ波導入部5により、マイクロ波発生装置35で発生したマイクロ波が同軸導波管49を介して平面アンテナ33へ伝送され、さらに透過板39を介して処理容器1内に導入されるようになっている。マイクロ波の周波数としては、例えば2.45GHzが好ましく用いられ、他に8.35GHz、1.98GHz等を用いることもできる。以下、特に明記しない限り、周波数2.45GHzのマイクロ波を用いることとする。
【0030】
(ガス供給部)
ガス供給部7は、処理容器1の内壁に沿ってリング状に設けられた第1のガス導入部としてのシャワーリング57と、このシャワーリング57の下方において、処理容器1内の空間を上下に仕切るように設けられた第2のガス導入部としてのシャワープレート59と、を有している。
【0031】
シャワーリング57は、処理容器1内空間へガスを導入するガス放出孔57aと、このガス放出孔57aに連通するガス流路57bとを有しており、該ガス流路57bは、ガス供給配管71を介して第1ガス供給部7Aに接続されている。第1ガス供給部7Aは、ガス供給配管71から分岐した3本の分岐管71a、71b、71cを有している。なお、分岐管71a、71b、71cには、図示しない流量制御装置やバルブが設けられている。
【0032】
分岐管71aは、プラズマ生成ガスを供給するプラズマ生成ガス供給源73に接続されている。プラズマ生成ガスとしては、例えば希ガスなどを用いることができる。希ガスとしては、例えばAr、Ne、Kr、Xe、Heなどを用いることができる。これらの中でも、プラズマを安定に生成できるArを用いることが特に好ましい。
【0033】
分岐管71bは、第1のプラズマ処理としての微粒子化処理や、処理容器1内のクリーニングに用いる酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給源75に接続されている。微粒子化処理に用いる酸素含有ガスとしては、例えば、O、HO、O、NO等を用いることができる。なお、微粒子化処理では、酸素含有ガスを使用せず、上記希ガスのみによりプラズマを生成することもできる。
【0034】
分岐管71cは、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源77に接続されている。不活性ガスとしては、例えば、Nガスなどを用いることができる。不活性ガス供給源77からの不活性ガスは、例えば、パージガス、圧力調整用ガス等の用途で使用される。
【0035】
シャワープレート59は、例えばアルミニウム等の材質からなる平面視格子状に形成されたガス分配部材61を有している。このガス分配部材61は、その格子状の本体部分の内部に形成されたガス流路63と、このガス流路63からステージ3に対向するように開口する多数のガス放出孔65とを有している。また、格子状のガス分配部材61は、多数の貫通開口67を有している。シャワープレート59のガス流路63には処理容器1の壁に達するガス供給路69が接続されており、このガス供給路69はガス供給配管79を介して第2ガス供給部7Bに接続されている。第2ガス供給部7Bは、ガス供給配管79から分岐した3本の分岐管79a、79b、79cを有している。なお、分岐管79a、79b、79cには、図示しない流量制御装置やバルブが設けられている。
【0036】
分岐管79aは、活性化処理及びカーボンナノチューブの形成に用いる水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給源81に接続されている。水素含有ガスとしては、例えばH、NH等を用いることができる。
【0037】
分岐管79bは、カーボンナノチューブの原料となる炭素含有ガスを供給する炭素含有ガス供給源83に接続されている。炭素含有ガスとしては、例えばエチレン(C)、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)、アセチレン(C)、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等を用いることができる。
【0038】
分岐管79cは、Nガスを供給するNガス供給源85に接続されている。Nガス供給源85からのNガスは、例えば活性化処理において水素含有ガスに混合されるほか、パージガス、キャリアガス等の用途で使用される。
【0039】
(排気部)
排気部11は、排気室17と、この排気室17の側面に設けられた排気管97と、この排気管97に接続された排気装置99とを有している。排気装置99は、図示は省略するが、例えば真空ポンプや圧力制御バルブ等を有している。
【0040】
(プラズマ生成空間・混合拡散空間)
処理装置100では、処理容器1内において、マイクロ波を導入する透過板39と、シャワープレート59との間の空間S1に、シャワーリング57からプラズマ生成ガスを導入する構成となっている。従って、空間S1は主にプラズマ生成を行うプラズマ生成空間である。
【0041】
また、処理容器1内において、シャワープレート59とステージ3との間の空間S2は、シャワープレート59により導入される炭素含有ガスと、空間S1で生成したプラズマとを混合するとともに、プラズマ中の活性種をステージ3上のウエハWへ向けて拡散させる混合・拡散空間である。
【0042】
(制御部)
制御部13は、処理装置100の各構成部を制御するモジュールコントローラである。制御部13は、典型的にはコンピュータであり、例えば図2に示したように、CPUを備えたコントローラ101と、このコントローラ101に接続されたユーザーインターフェース103および記憶部105を備えている。コントローラ101は、処理装置100において、例えば温度、圧力、ガス流量、マイクロ波出力などのプロセス条件に関係する各構成部(例えば、ヒータ電源29、第1ガス供給部7A、第2ガス供給部7B、マイクロ波発生部35、排気装置99など)を制御する制御手段である。
【0043】
ユーザーインターフェース103は、工程管理者が処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。また、記憶部105には、処理装置100で実行される各種処理をコントローラ101の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピなどが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース103からの指示等にて任意のレシピを記憶部105から呼び出してコントローラ101に実行させることで、コントローラ101の制御により処理装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。また、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体107に格納された状態のものを利用できる。そのような記録媒体107としては、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどを用いることができる。さらに、前記レシピを他の装置から例えば専用回線を介して伝送させて利用することも可能である。
【0044】
[処理システム]
次に、図3を参照しながら、本実施の形態の前処理方法及びカーボンナノチューブの形成方法に利用可能な処理システムの構成例について説明する。図3に示す処理システム200は、複数(図3では4つ)のプロセスモジュール100A〜100Dを備えたマルチチャンバ構造のクラスタツールとして構成されている。
【0045】
処理システム200は、主要な構成として、4つのプロセスモジュール100A,100B,100C,100Dと、これらのプロセスモジュール100A〜100Dに対してゲートバルブG1を介して接続された真空側搬送室203と、この真空側搬送室203にゲートバルブG2を介して接続された2つのロードロック室205a,205bと、これら2つのロードロック室205a,205bに対してゲートバルブG3を介して接続されたローダーユニット207とを備えている。
【0046】
(プロセスモジュール)
4つのプロセスモジュール100A〜100Dは、それぞれが図1の処理装置100と同様の構成を有しており、ウエハWに対して微粒子化処理、活性化処理、及びカーボンナノチューブ形成処理を行うことができるように構成されている。なお、プロセスモジュール100A〜100DをウエハWに対して異なる処理を行うものとして構成することもできる。各プロセスモジュール100A〜100D内には、それぞれウエハWを載置するためのステージ3A,3B,3C,3Dが配備されている。
【0047】
(真空側搬送室)
真空引き可能に構成された真空側搬送室203には、プロセスモジュール100A〜100Dやロードロック室205a,205bに対してウエハWの受け渡しを行う第1の基板搬送装置としての搬送装置209が設けられている。この搬送装置209は、互いに対向するように配置された一対の搬送アーム部211,211を有している。各搬送アーム部211,211は同一の回転軸を中心として、屈伸及び旋回可能に構成されている。また、各搬送アーム部211,211の先端には、それぞれウエハWを載置して保持するためのフォーク213,213が設けられている。搬送装置209は、これらのフォーク213,213上にウエハWを載置した状態で、各プロセスモジュール100A〜100Dの間、あるいはプロセスモジュール100A〜100Dとロードロック室205a,205bとの間でウエハWの搬送を行う。
【0048】
(ロードロック室)
ロードロック室205a,205b内には、それぞれウエハWを載置するステージ206a,206bが設けられている。ロードロック室205a,205bは、真空状態と大気開放状態を切り替えられるように構成されている。このロードロック室205a,205bのステージ206a,206bを介して、真空側搬送室203と大気側搬送室219(後述)との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0049】
(ローダーユニット)
ローダーユニット207は、ウエハWの搬送を行う第2の基板搬送装置としての搬送装置217が設けられた大気側搬送室219と、この大気側搬送室219に隣接配備された3つのロードポートLPと、大気側搬送室219の他の側面に隣接配備され、ウエハWの位置測定を行なう位置測定装置としてのオリエンタ221とを有している。オリエンタ221は、図示しない駆動モータによって回転される回転板233と、この回転板233の外周位置に設けられ、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ237とを備えている。
【0050】
(大気側搬送室)
大気側搬送室219は、例えば窒素ガスや清浄空気などの循環設備(図示省略)を備えた平面視矩形形状をなしており、その長手方向に沿ってガイドレール223が設けられている。このガイドレール223に搬送装置217がスライド移動可能に支持されている。つまり、搬送装置217は図示しない駆動機構により、ガイドレール223に沿ってX方向へ移動可能に構成されている。この搬送装置217は、上下2段に配置された一対の搬送アーム部225,225を有している。各搬送アーム部225,225は屈伸及び旋回可能に構成されている。各搬送アーム部225,225の先端には、それぞれウエハWを載置して保持する保持部材としてのフォーク227,227が設けられている。搬送装置217は、これらのフォーク227,227上にウエハWを載置した状態で、ロードポートLPのウエハカセットCRと、ロードロック室205a,205bと、オリエンタ221との間でウエハWの搬送を行う。
【0051】
(ロードポート)
ロードポートLPは、ウエハカセットCRを載置できるようになっている。ウエハカセットCRは、複数枚のウエハWを同じ間隔で多段に載置して収容できるように構成されている。
【0052】
(統括制御部)
処理システム200の各構成部は、統括制御部250に接続されて制御される構成となっている。統括制御部250は、例えばロードロック室205a,205b、搬送装置209、搬送装置217等を制御するほか、各プロセスモジュール100A〜100Dを個別に制御する制御部13を統括して制御する。
【0053】
[前処理及びカーボンナノチューブの形成]
次に、処理装置100において行われる前処理方法、及びカーボンナノチューブの形成方法について説明する。図4は、本発明の一実施の形態に係る前処理方法、及びカーボンナノチューブの形成方法の手順を説明するためのフローチャートである。図5A〜図5Dは、カーボンナノチューブの形成方法の主要な工程を説明するウエハWの表面付近の縦断面図である。本実施の形態のカーボンナノチューブの形成方法では、カーボンナノチューブの形成に先立って行われる第1のプラズマ処理(微粒子化処理)及び第2のプラズマ処理(活性化処理)を含めている。微粒子化処理は、触媒金属を微粒子化するとともに、生成した触媒金属微粒子の表面を酸化することにより、凝集によって必要以上の大きさまで粒子が大きくなることを抑制する工程である。また、活性化処理は、微粒子化処理によって表面酸化されることがある触媒金属微粒子の表面を還元して活性化する工程である。本実施の形態では、これら微粒子化処理及び活性化処理を合わせてカーボンナノチューブ形成の「前処理(方法)」と称する。また、以下の説明では、プラズマ生成ガスとしてArガス、酸素含有ガスとしてOガス、水素含有ガスとしてHガス、不活性ガスとしてNガス、炭素含有ガスとしてCガスを用いる場合を例に挙げる。
【0054】
まず、触媒金属層が形成されたウエハWを準備し、処理装置100のゲートバルブG1を開放して、このウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3上に載置する。このウエハWとしては、例えば図5Aに示すように、シリコン基板301の表層付近に、下地層303と、該下地層303の上に積層された下地層305と、該下地層305の上に積層された触媒金属層307と、が形成されたものを用いる。
【0055】
下地層303,305は、いずれも触媒金属の凝集による粗大化を防止する膜として機能するものである。つまり、下地層303,305は、触媒金属に対する助触媒として機能する助触媒層である。下地層303,305の材質としては、例えばAl、AlN、Ti、Al、TiN、Ta、TaN、SiO、SiN等を挙げることができるが、助触媒としての機能を高めるため、上記材質の中でも、TiN、TaN、SiN、AlN等の窒化物を用いることが好ましい。これらの下地層303,305を形成する手法としては、例えば、スパッタリング、蒸着法、CVD法、めっき等の公知の成膜技術を用いることができる。下地層303,305の厚さは、例えば、それぞれ5〜100nmであることが好ましい。なお、下地層303,305は、2層に限るものではなく、1層でもよい。また、下地層303,305より下層に、さらに絶縁層等の任意の層を有していてもよい。
【0056】
触媒金属層307は、カーボンナノチューブの成長の核となる触媒金属微粒子を形成するための金属膜である。触媒金属層307を構成する金属としては、例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Au等の遷移金属、またはこれらの遷移金属を含む合金を挙げることができる。この触媒金属層307を形成する手法としては、例えば、スパッタリング、蒸着法、CVD法、めっき等の公知の成膜技術を用いることができる。触媒金属層307の厚さは、微粒子化処理工程(STEP1)で生成される触媒金属微粒子の大きさに影響を与えるため、例えば0.1〜5nmとすることが好ましい。
【0057】
なお、被処理体である基板としては、半導体基板であるウエハWの代わりに、例えばガラス基板、プラスチック(高分子)基板などを用いることもできる。
【0058】
(STEP1;微粒子化処理)
STEP1では、ステージ3上に載置されたウエハWを加熱しながら、触媒金属層307に対して微粒子化処理を施す。この処理は、触媒金属層307をプラズマの作用によって微粒子化して、図5Bに示したように触媒金属微粒子307Aを生成させる工程である。すなわち、微粒子化処理では、触媒金属層307の金属表面に付着している有機物等の不純物をプラズマにより除去することで、金属原子が動きやすくなる。その結果、触媒金属層307の表面に加熱によるマイグレーションが起こり、触媒金属層307を構成している金属に適度の凝集が生じて微粒子化を進行させる。このように、微粒子化処理では、熱とプラズマにより、触媒金属層307において、金属表面の原子が動けるだけのエネルギーを与え、金属原子がある程度寄り集まった島状に近い表面へと変化させる(これを「凝集」と呼ぶ)。微粒子化処理に用いるプラズマとしては、例えば酸素プラズマ、アルゴンプラズマなどを用いることができる。特に、酸素プラズマを用いる場合、生成した触媒金属微粒子307Aの表面は、酸素プラズマにより酸化され、必要以上の凝集によって粒子が大きくなることが抑制されるため、粒子の大きさを制御できる。
【0059】
STEP1で形成する触媒金属微粒子307Aの大きさとしては、例えば1〜50nm程度が好ましい。なお、触媒金属層307の最初の膜厚が薄いほど、形成される島の大きさが小さくなり、触媒金属微粒子307Aの直径も小さくなる。例えば触媒金属層307の膜厚が1nmでは生成する触媒金属微粒子307Aの直径は10nm程度、触媒金属層307の膜厚が2nmでは生成する触媒金属微粒子307Aの直径は20nm程度となる。
【0060】
STEP1では、シャワーリング57から処理容器1内にArガス(及び必要に応じて、Oガス等)を導入するとともに、マイクロ波発生部35で発生したマイクロ波を、導波管47及び同軸導波管49を介して所定のモードで平面アンテナ33に導き、平面アンテナ33のマイクロ波放射孔33a、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、Arガス(及び必要に応じて、Oガス等)をプラズマ化し、ウエハW表面の触媒金属層307に微粒子化処理を施し、触媒金属微粒子307Aに変化させる。
【0061】
微粒子化処理の際の温度Tは、ウエハWの温度として、例えば100℃〜450℃とすることが好ましく、250℃〜350℃がより好ましい。温度Tが100℃未満では、触媒金属層307の微粒子化が十分に進行せず、450℃を超えると、触媒金属微粒子307Aの凝集が進み、肥大化するおそれがある。
【0062】
処理容器1内の圧力は、プラズマ中のラジカルの生成を多くする観点から、例えば66.7〜400Pa(0.5〜3Torr)とすることが好ましく、133〜266Pa(1〜2Torr)がより好ましい。
【0063】
Arガス流量は、プラズマを安定的に生成するため、及び、Oガス等を添加する場合に活性種の生成効率を高める観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。
【0064】
ガス等を添加する場合、その流量は、触媒金属微粒子307Aの必要以上の酸化を抑制する観点から、例えば50〜500mL/min(sccm)とすることが好ましく、100〜200mL/min(sccm)がより好ましい。
【0065】
マイクロ波パワーは、プラズマを安定的に生成するため、及び、Oガス等を添加する場合にプラズマ中で活性種を効率よく生成させるとともに、低温でカーボンナノチューブの生成を可能にする観点から、例えば500W〜4000Wとすることが好ましく、500W〜2000Wがより好ましい。
【0066】
処理時間は、触媒金属層307から触媒金属微粒子307Aへの微粒子化を最適にする観点から、例えば1分〜20分とすることが好ましく、5分〜10分がより好ましい。
【0067】
STEP1の微粒子化処理の終了時には、まずマイクロ波の供給を停止し、さらにOガスの供給を行っている場合は、その供給を停止する。なお、この微粒子化処理を行う際のガスとしては、例えばOガスの他、HO、O、NO等を用いることができる。
【0068】
(STEP2;活性化処理)
次に、STEP2では、活性化処理を行う。活性化処理には、水素含有ガス(例えば水素ガス)と窒素ガスとを含有する還元性の混合ガスのプラズマを用いる。活性化処理は、STEP1の後に行う処理であり、STEP1の微粒子化処理により形成された触媒金属微粒子307Aの表面を還元性の混合ガスのプラズマにより還元して活性化する(活性化処理)。図5Cでは、活性化処理された後の活性化触媒金属微粒子を符号307Bで示している。活性化処理を行うことにより、活性化触媒金属微粒子307Bを微粒子の状態に保ちながら高密度化することができる。また、活性化処理では、水素含有ガスと窒素ガスとを含有する還元性の混合ガスのプラズマを用いることにより、触媒金属微粒子307Aの活性化に加え、下地層305がTiN、TaN、SiN、AlN等の窒化物で形成されている場合に、下地層305を窒化することができる。すなわち、助触媒層を構成するTiN、TaN等の窒化物の組成の乱れ(例えば、TiON、TaONなどの酸化物が形成された状態)を窒化処理によって正し、窒化物を化学量論比に近づけることが可能になる。これにより、助触媒機能が大幅に向上することから、活性化触媒金属微粒子307Bの凝集が抑制され、活性化触媒金属微粒子307Bの活性化比率を向上させることができ、次のSTEP3でカーボンナノチューブを高密度に形成できる。
【0069】
STEP2では、STEP1の微粒子化処理の終了後、Arガスを流したまま、マイクロ波発生部35から導波管47及び同軸導波管49を介してマイクロ波を平面アンテナ33に導き、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、Arガスをプラズマ化し、プラズマが着火されたタイミングでシャワープレート59を介してHガス及びNガスを処理容器1内に導入し、ArプラズマによりHガス及びNガスをプラズマ化する。このように形成されたマイクロ波プラズマにより、触媒金属微粒子307Aの表面に活性化処理を施し、表面の酸化膜(図示せず)を還元して活性化触媒金属微粒子307Bへと変化させる。また、助触媒層である下地層305に対して窒化処理を行うことにより、助触媒としての機能を高めることができる。
【0070】
この活性化処理の温度Tは、触媒金属微粒子307Aの活性化を図りつつ、粒子の肥大化を防ぐ観点から、ウエハWの温度として、例えば100〜550℃とすることが好ましく、250〜550℃がより好ましい。温度Tが100℃未満では、触媒金属微粒子307Aの表面の酸化膜の還元が十分に進行せず活性化が不十分となり、550℃を超えると、活性化触媒金属微粒子307Bの凝集が進み、肥大化するおそれがある。また、活性化処理の温度Tは、微粒子化処理の温度Tより高い(T>T)ことが好ましい。この点は後述する。
【0071】
処理容器1内の圧力は、プラズマ中のラジカルの生成を多くする観点から、例えば66.7〜400Pa(0.5〜3Torr)とすることが好ましく、66.7〜133Pa(0.5〜1Torr)がより好ましい。
【0072】
ガス流量は、プラズマ中での活性種の効率的な生成の観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、100〜500mL/min(sccm)がより好ましい。
【0073】
ガス流量は、プラズマ中での活性種の効率的な生成の観点から、例えば10〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、20〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。
【0074】
また、Arガス流量は、プラズマ中での活性種の生成効率を高める観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。
【0075】
活性化処理では、下地層305が窒化物により構成される場合に、それを窒化して助触媒機能を高め、活性化触媒金属微粒子307Bの活性化比率を高めるために、HガスとNガスの比率(H:N)を10:1〜1:5の範囲内とすることが好ましく、1:1〜1:3の範囲内とすることがより好ましい。
【0076】
マイクロ波パワーは、プラズマ中で活性種を効率よく生成させるとともに、低温でカーボンナノチューブの生成を可能にする観点から、例えば500W〜4000Wとすることが好ましく、500W〜1500Wがより好ましい。特にマイクロ波パワーを500W〜1000Wの範囲内にすることにより、カーボンナノチューブの垂直配向性を高めることができるので最も好ましい。
【0077】
処理時間は、触媒金属微粒子307Aの凝集を抑制しながら活性化し、活性化触媒金属微粒子307Bを高密度化させる観点から、例えば1分〜15分が好ましく、5分〜10分がより好ましい。
【0078】
STEP2の活性化処理の終了時には、まずマイクロ波の供給を停止し、さらにHガス及びNガスの供給を停止する。なお、この活性化処理を行う際の水素含有ガスとしては、Hガスの代わりにNHガス等を用いることができる。
【0079】
(STEP3;カーボンナノチューブの形成)
次に、STEP3では、カーボンナノチューブの形成を行う。このカーボンナノチューブの形成は、活性化処理によって活性化された活性化触媒金属微粒子307Bが不活性化することを防止するため、STEP2の活性化処理に引き続き行うことが好ましく、活性化処理と同一の処理容器内において連続して行うことがより好ましい。処理装置100において、カーボンナノチューブの形成は、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等により行うことができる。以下、STEP3の処理を熱CVD法により行う場合と、プラズマCVD法により行う場合とに分けて説明する。
【0080】
<熱CVD法>
STEP2の活性化処理の後、Arガスを供給したまま、さらにNガスもしくはHガスをキャリアガスとしてシャワープレート59を介してCガスを処理容器1内に導入し、空間S2でCガスを熱分解させて、図5Dに示すように活性化触媒金属微粒子307Bの上にカーボンナノチューブ309を形成する。
【0081】
熱CVD法によるカーボンナノチューブ309の成長処理の際の温度Tは、低温プロセスを実現する観点から、ウエハWの温度として、例えば300℃〜550℃とすることが好ましく、300℃〜500℃がより好ましい。本実施の形態では、前処理として、上記STEP1の微粒子化処理とSTEP2の活性化処理を行うことにより、550℃以下、好ましくは300℃〜550℃という低い温度でカーボンナノチューブ309を成長させることが可能である。なお、この温度Tは、活性化処理(STEP2)と異なっていてもよいし、同じ温度でもよい。活性化処理(STEP2)と同じ温度の場合は、スループットを高めることができる。
【0082】
処理容器1内の圧力は、カーボンナノチューブの十分な成長速度を維持する観点から、例えば66.7〜667Pa(0.5〜5Torr)とすることが好ましく、400Pa〜667Pa(3〜5Torr)がより好ましい。
【0083】
ガス流量は、効率的にカーボンナノチューブ309を成長させる観点から、例えば、5〜200mL/min(sccm)とすることが好ましく、6〜30mL/min(sccm)がより好ましい。
【0084】
また、Cガスとともに、ArガスおよびNガスもしくはHガスを処理容器1内に導入することで、カーボンナノチューブ309の成長速度を速め、かつ品質を向上させることができる。ただし、ArガスおよびNガスもしくはHガスの使用は任意である。Arガスを導入する場合、その流量は、効率的にカーボンナノチューブ309を成長させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。また、NガスもしくはHガスを導入する場合、その流量は、効率的にカーボンナノチューブ309を成長させる観点から、例えば100〜1000mL/min(sccm)とすることが好ましく、100〜300mL/min(sccm)がより好ましい。
【0085】
処理時間は、触媒活性が低下することを防ぎつつ、十分な長さまでカーボンナノチューブ309を成長させる観点から、例えば10分〜120分とすることが好ましく、30分〜90分がより好ましい。
【0086】
熱CVD法によるカーボンナノチューブ309の形成においては、エチレン(C)ガスに限らず、例えばメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)、アセチレン(C)等の他の炭化水素ガスや、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等の炭素含有ガスを用いることができる。また、Arガスに代えて、例えば、He、Ne、Kr、Xeなどの他の希ガスを用いることもできる。さらに、炭素含有ガスに加えて、例えば、Nなどの不活性ガス、H、NHなどの還元性ガス、O、O、HO、NOなどの酸化性ガスなどを同時に処理容器1内に導入することで、カーボンナノチューブ309の成長速度を高くすることが可能であり、また、品質を向上させることができる。
【0087】
熱CVD法では、カーボンナノチューブ309は、活性化触媒金属微粒子307Bの性状を保ったまま成長する。したがって、STEP2の活性化処理により、活性化および高密度化された活性化触媒金属微粒子307Bの上に、高密度のカーボンナノチューブ309をウエハW(下地層305)表面に対して略垂直に配向させることができる。本実施の形態では、従来の熱CVD法よりも格段に低い550℃以下の温度でカーボンナノチューブ309を形成できる。また、熱CVD法では、カーボンナノチューブ309に電子やイオンによるダメージを与えることがないため、結晶欠陥や不純物の導入を抑制し、不純物が少なく、G/D比が高く、結晶性の良好なカーボンナノチューブ309を形成することができる。
【0088】
<プラズマCVD法>
STEP2の活性化処理の後、Arガスを所定流量で流したまま、マイクロ波発生部35から導波管47及び同軸導波管49を介してマイクロ波を平面アンテナ33に導き、透過板39を介して処理容器1内に導入する。このマイクロ波により、Arガスをプラズマ化し、プラズマが着火したタイミングでシャワープレート59を介してCガスおよび必要に応じHガスを処理容器1内に導入し、ArプラズマによりCガス(およびHガス)をプラズマ化する。そして、生成したマイクロ波プラズマにより、図5Dに示すように、活性化触媒金属微粒子307Bの上にカーボンナノチューブ309を形成する。
【0089】
プラズマCVD法によるカーボンナノチューブ309の成長処理の際の温度Tは、低温プロセスを実現する観点から、ウエハWの温度として、例えば100℃〜550℃とすることが好ましく、100℃〜350℃がより好ましい。本実施の形態では、前処理として、上記STEP1の微粒子化処理とSTEP2の活性化処理を行うことにより、550℃以下、好ましくは350℃以下の低い温度でカーボンナノチューブ309を成長させることが可能である。なお、この温度Tは、活性化処理(STEP2)と異なっていてもよいし、同じ温度でもよい。活性化処理(STEP2)と同じ温度の場合は、スループットを高めることができる。
【0090】
処理容器1内の圧力は、プラズマ中のラジカルの生成を多くする観点から、例えば66.7〜400Pa(0.5〜3Torr)とすることが好ましく、266Pa〜400Pa(2〜3Torr)がより好ましい。
【0091】
ガス流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば、5〜200mL/min(sccm)とすることが好ましく、6〜30mL/min(sccm)がより好ましい。
【0092】
また、Arガス流量は、プラズマを安定して生成させる観点から、例えば100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、300〜1000mL/min(sccm)がより好ましい。
【0093】
また、また、CガスとともにHガスを処理容器1内に導入することで、カーボンナノチューブ309の成長速度を速め、かつ品質を向上させることができる。ただしHガスの使用は任意である。Hガスを用いる場合、その流量は、プラズマ中で活性種を効率的に生成させる観点から、例えば、100〜2000mL/min(sccm)とすることが好ましく、300〜1200mL/min(sccm)がより好ましい。
【0094】
マイクロ波パワーは、活性種を効率的に生成させてカーボンナノチューブ309の成長を促進する観点から、例えば500W〜4000Wとすることが好ましく、500W〜1500Wがより好ましい。
【0095】
処理時間は、触媒活性が低下することを防ぎつつ、十分な長さまでカーボンナノチューブ309を成長させる観点から、例えば1分〜60分とすることが好ましく、5分〜30分がより好ましい。
【0096】
プラズマCVD法によるカーボンナノチューブ309の形成においては、エチレン(C)ガスに限らず、例えばメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、プロピレン(C)、アセチレン(C)等の他の炭化水素ガスや、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等の炭素含有ガスを用いることができる。また、プラズマ生成用のArガスに替えて、例えば、N、He、Ne、Kr、Xeなどの不活性ガスを用いることもできる。さらに、炭素含有ガス及び希ガスに加えて、H、NHなどの還元性ガス、またはO、O、HO、NOなどの酸化性ガスを同時に処理容器1内に導入することで、カーボンナノチューブ309の成長速度を高くすることが可能であり、また、品質を向上させることができる。
【0097】
プラズマCVD法では、カーボンナノチューブ309が活性化触媒金属微粒子307Bの性状を保ったまま成長する。したがって、STEP2の活性化処理により、活性化および高密度化された活性化触媒金属微粒子307Bの上に、高密度のカーボンナノチューブ309をウエハW(下地層305)表面に対して略垂直に配向させることができる。また、プラズマCVD法では、100℃〜350℃の低温でもカーボンナノチューブ309を形成することができるため、例えばガラス基板や合成樹脂製(高分子)基板などの耐熱性の低い基板上にもカーボンナノチューブ309を形成できる。
【0098】
以上のSTEP1〜STEP3の工程によってカーボンナノチューブ309を形成した後、マイクロ波の供給(プラズマCVD法の場合)及びガスの供給を停止し、処理容器1内の圧力を調整した後に、ゲートバルブG1を開放してウエハWを搬出する。なお、本実施の形態のカーボンナノチューブの形成方法は、上記STEP1〜STEP3以外の任意の工程を含むことができる。例えば、STEP1〜STEP3の各工程の間に、排気装置99によって一旦処理容器1内を急速に排気した後、ArガスやNガスを流し、処理容器1内をパージする工程を設けてもよい。
【0099】
[前処理の温度]
次に、前処理として行われるSTEP1の微粒子化処理における温度Tと、STEP2の活性化処理における温度Tとの関係について説明する。STEP1の微粒子化処理は、STEP2の活性化処理よりも相対的に低い温度Tで行うことで(つまり、T>T)、触媒金属層307の微粒子化の過程で、生成した触媒金属微粒子307Aの凝集を抑制できる。一方、STEP2の活性化処理は、微粒子化処理よりも相対的に高い温度Tで行うことにより、触媒金属微粒子307Aの表面を効率的に還元し、高い活性状態にすることができる。このようにSTEP1とSTEP2の処理温度に差を設けることによって、微粒子化処理と活性化処理の効果を最大限に引き出すことができる。
【0100】
上記のように温度Tは100℃〜450℃の範囲内であり、温度Tは100℃〜550℃の範囲内であるが、温度Tと温度Tとの温度差(T−T)が50℃以上あることが好ましく、100℃以上あることがより好ましい。T−Tを50℃以上に設定することによって、STEP1とSTEP2との境界を明確にし、各処理における効果を最大限に引き出すことができる。すなわち、温度差(T−T)を設けることにより、STEP1の微粒子化処理における触媒金属の微粒子化(及び酸素プラズマを利用する場合には生成する触媒金属微粒子307Aの表面酸化による凝集抑制)と、STEP2の活性化処理における触媒金属微粒子307Aの活性化(酸化表面の還元)を、それぞれ確実に行うことができる。
【0101】
また、STEP1からSTEP2への移行は、温度TからTへの移行の過程でウエハWの温度変化が段階的に生じるように行うことが好ましい。ここで、「温度変化が段階的」とは、ゆっくりと傾斜的に温度上昇させるのではなく、STEP1からSTEP2へ移行する間に、少なくとも100℃/分以上(好ましくは200℃/分〜300℃/分)の急激な温度変化を生じさせてウエハWを昇温させることを意味する。
【0102】
温度TからTへウエハWの温度変化を段階的に生じさせる方法の例として、以下第1の方法及び第2の方法を挙げて説明する。
【0103】
(第1の方法)
第1の方法として、ステージ3を複数使用し、ウエハWを、温度Tに加熱できるように設定されたステージ3から、温度Tに加熱できるように設定された別のステージ3へ短時間で移送する方法が挙げられる。第1の方法は、例えば図3に示したようなマルチチャンバ形式の処理システム200において好ましく実施できる。例えば、図3の処理システム200において、プロセスモジュール100Aのステージ3Aにおいて温度TでSTEP1の微粒子化処理を実施し、終了後に、搬送装置209によって、ウエハWをプロセスモジュール100B〜100Dのいずれかのステージ3B〜3Dに移送し、温度Tで活性化処理を実施する。この際にウエハWを搬入するいずれかのプロセスモジュール100B〜100Dのステージ3B〜3Dは、ウエハWの加熱温度が温度Tになるように設定しておく。このように、温度TでSTEP1の処理が終了したウエハWを、直ちに別のチャンバに入れ替え、温度TでSTEP2の処理を行うことにより、ウエハWの温度を段階的に昇温させることができる。
【0104】
第1の方法における温度変化の一例を図6に示した。まず、初期温度TのウエハWを時点tで、例えばプロセスモジュール100Aのステージ3A上に載置する。ステージ3Aは、ウエハWを温度Tに加熱できるようにヒータ電源29からヒータ27への出力が調節されている。時点tからtまでは、ウエハWを初期温度TからSTEP1の微粒子化処理のための温度Tまで昇温させる期間である。そして、ウエハWの温度がTまで上昇した時点tからtまでの間微粒子化処理を行う。
【0105】
STEP1の微粒子化処理が終了したら、ウエハWをプロセスモジュール100Aから搬出し、搬送装置209によって、例えばプロセスモジュール100Bのステージ3B上に移送する。ステージ3Bは、ウエハWを温度Tに加熱できるようにヒータ電源29からヒータ27への出力が調節されている。なお、プロセスモジュール100Aから搬出し、プロセスモジュール100Bへ搬入する間に若干ウエハWの温度の低下が生じるが、搬送装置209によるウエハWの移送を迅速に行うことで無視できる範囲の低下であるため、図6では図示を省略している。プロセスモジュール100Bのステージ3B上に載置されたウエハWは、時点tからtまでの間に温度Tまで急速に加熱される。この時点tからtまでのウエハWの昇温速度は、上述のとおり少なくとも100℃/分以上となるようにする。この時点tからtまでの区間は、短いほどよい。
【0106】
次に、時点tから時点tまで、温度TでSTEP2の活性化処理を行う。この活性化処理が終了したら、温度T(この場合は温度Tと同じ)を維持したまま、引き続き時点tから時点tまで、熱CVD法又はプラズマCVD法によってSTEP3のカーボンナノチューブ309の形成処理を行う。なお、カーボンナノチューブ309の形成処理の温度Tは、温度Tと同じでもよいし、異なっていてもよい。時点tでカーボンナノチューブ309の形成が終了したら、搬送装置209によりプロセスモジュール100BからウエハWを搬出し、ロードロック室205a又は205bを介して搬送装置217により、いずれかのロードポートLPに収容する。その後、時点tまでの降温過程で、ウエハWの温度は初期温度Tに戻る。
【0107】
(第2の方法)
STEP1とSTEP2との間で、温度TからTへの変化を段階的に生じさせるための第2の方法として、一つのステージ3を使用し、温度Tで微粒子化処理を行った後、一旦ウエハWをこのステージ3から別の場所へ移送し、ヒータ電源29からヒータ27への出力を調節して当該ステージ3がウエハWを温度Tに加熱できるまで昇温した段階で、再び当該ステージ3へウエハWを戻す方法を挙げることができる。この場合、再びステージ3へ戻されたウエハWは、少なくとも100℃/分以上の昇温速度で温度Tまで加熱される。また、STEP1とSTEP2との間で、ウエハWを別の場所に保持している間、ウエハWの温度が温度Tよりも低い温度に低下することがあってもよい。
【0108】
第2の方法は、図3に示した処理システム200において、例えばプロセスモジュール100Aのステージ3Aにおいて温度TでSTEP1の微粒子化処理を実施し、終了後に、搬送装置209によって、ウエハWを一旦プロセスモジュール100Aからロードロック室205a(又は205b)へ移送し、ステージ206a(又は206b)へ載置する。そして、該ロードロック室205a(又は205b)でウエハWを待機させている間に、ヒータ27にヒータ電源29から給電することでステージ3Aの温度を上昇させる。ステージ3Aの温度がウエハWを温度Tに加熱できるまで上昇した段階で、搬送装置209によって、再びウエハWをプロセスモジュール100Aに搬入し、ステージ3Aに載置する。なお、第2の方法は、図3のようなマルチチャンバ形式の処理システム200に限らず、単一のチャンバとロードロック室とを備えた処理装置においても同様に実施できる。また、ウエハWを待機させる場所はロードロック室に限らず、ウエハWを保持できる限り任意の場所を利用できる。
【0109】
第2の方法における温度変化の一例を図7に示した。まず、初期温度TのウエハWを時点t11でプロセスモジュール100Aのステージ3A上に載置する。ステージ3Aは、ウエハWを温度Tに加熱できるようにヒータ電源29からヒータ27への出力が調節されている。時点t11からt12までは、ウエハWを初期温度TからSTEP1の微粒子化処理のための温度Tまで昇温させる期間である。そして、時点t12からt13までの間に温度Tで微粒子化処理を行う。
【0110】
STEP1の微粒子化処理が終了したら、ウエハWをプロセスモジュール100Aから搬出し、ロードロック室205a(又は205b)へ移送し、ステージ206a(又は206b)へ載置する。ウエハWを搬出したプロセスモジュール100Aでは、ヒータ電源29からヒータ27への出力を上げてステージ3Aの温度を上昇させる。ステージ3Aは、ウエハWを温度Tに加熱できるようになるまで昇温される。
【0111】
プロセスモジュール100Aから搬出し、ロードロック室205a(又は205b)に一時的に収容された待機状態のウエハWは、時点t13からt14までの間に温度Tまで下降し、その後、時点t14からt15まで同温度に保持される。温度Tは、例えば100℃程度であってもよい。なお、時点t14からt15までの間は、特段の温度管理を行わなくて良いので、必ずしも温度Tに保持する必要はない。
【0112】
次に、プロセスモジュール100Aのステージ3Aの温度が十分に上昇した段階で、ウエハWをロードロック室205a(又は205b)からプロセスモジュール100Aのステージ3Aへ戻す。ステージ3A上に載置されたウエハWは、時点t15からt16までの間に温度Tまで急速に加熱される。この時点t15からt16までのウエハWの加熱は、上述のとおり、少なくとも100℃/分以上の昇温速度の加熱区間を含むようにする。この時点t15からt16までの区間は、短いほどよい。
【0113】
次に、時点t16から時点t17まで、温度TでSTEP2の活性化処理を行う。この活性化処理が終了したら、温度T(この場合は温度Tと同じ)を維持したまま、時点t17から時点t18まで、引き続き熱CVD法又はプラズマCVD法によってSTEP3のカーボンナノチューブ309の形成処理を行う。なお、カーボンナノチューブ309の形成処理の温度Tは、温度Tと同じでもよいし、異なっていてもよい。カーボンナノチューブ309の形成が終了したら、プロセスモジュール100AからウエハWを搬出し、ロードロック室205a又は205bを介して搬送装置217により、いずれかのロードポートLPに収容する。その後、時点t19までの降温過程で、ウエハWの温度は初期温度Tに戻る。
【0114】
以上のように、温度TからTへウエハWの温度変化を段階的に生じさせる方法を採用することにより、STEP1の微粒子化処理と、STEP2の活性化処理を、温度管理において明確に区別することができる。これにより、STEP1では、触媒金属層307の微粒子化(及び酸素プラズマを利用する場合の表面酸化)を適度に進行させ、STEP2では生成した触媒金属微粒子307Aに過度の凝集を生じさせることなく、粒子表面を効率的に還元し、高い活性状態にすることができる。本実施の形態では、このようにSTEP1とSTEP2の処理温度に差を設けることによって、微粒子化処理と活性化処理とを組み合わせて実施する効果を最大限に引き出し、微粒子化および高密度化された活性化触媒金属微粒子307Bの上に、ウエハW(下地層305)表面に対して略垂直に配向した高密度のカーボンナノチューブ309を形成できる。
【0115】
なお、上記第1の方法及び第2の方法はあくまでも例示であり、これらに限定されるものではない。すなわち、温度TからTへ移行させる際の温度管理を、上記第1の方法及び第2の方法と同様に段階的に実現できれば、他の構成の装置を使用することが可能であり、また、温度履歴についても種々の変形が可能である。
【0116】
本実施の形態の方法により製造されるカーボンナノチューブは、高密度かつ高い垂直配向性を有しているため、例えば半導体装置のビア配線などの用途や、電子放出素子、カーボンナノチューブ照明装置等の用途において利用価値が高いものである。
【0117】
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより制約されるものではない。
[実施例1]
熱CVD法によるカーボンナノチューブの形成(1):
図5Aと同様に、シリコン基板301上に下地層303,305及び触媒金属層307が積層形成されたウエハを準備した。下地層303はTaNにより厚さ10nmに、下地層305はTiNにより厚さ5nmに、触媒金属層307はCoにより厚さ2nmに、それぞれ形成した。このウエハWを図1の処理装置100と同様の構成を有する処理装置の処理容器内に搬入し、下記の条件で、微粒子化処理、活性化処理を行った後、熱CVD法によってカーボンナノチューブを成長させた。なお、微粒子化処理と活性化処理との間に、ウエハWを一旦ロードロック室に待機させることにより、微粒子化処理の温度Tから活性化処理の温度Tまでの温度変化が240℃/分以上の昇温過程を含むように段階的に行った。また、活性化処理とカーボンナノチューブの形成は同じ温度で連続して行った。
【0118】
<微粒子化処理の条件>
処理圧力:266Pa(2Torr)
処理ガス:
ガス 100mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:2.0kW
処理温度:350℃
処理時間:5分間
【0119】
<ロードロック室での待機の条件>
待機時間:約30分間
待機温度:100℃(安定時)
【0120】
<活性化処理の条件>
処理圧力:133Pa(1Torr)
処理ガス:
ガス 462mL/min(sccm)
ガス 100mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:2.8kW
処理温度:470℃
処理時間:5分間
【0121】
<カーボンナノチューブ形成条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 30mL/min(sccm)
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃
処理時間:60分間
【0122】
このようにして成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図8に示した。図8より、カーボンナノチューブは、略垂直に近い状態で配向し、かつ非常に高密度に形成されていることが確認された。
【0123】
[比較例1]
活性化処理において、Nガスを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブの形成を行った。成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図9に示した。図9より、カーボンナノチューブの密度が低く、長さにばらつきが多いことが判明した。その原因として、Hガスのみのプラズマでは、助触媒層であるTiN層が窒化されないため、助触媒機能が十分に働かず、触媒金属微粒子の還元による活性化比率が不十分であったためと考えられる。
【0124】
[実施例2]
熱CVD法によるカーボンナノチューブの形成(2):
活性化処理におけるマイクロ波パワーを0.5kW、1.0kW、又は1.5kWに変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブの形成を行った。各条件で成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、マイクロ波パワー0.5kWの結果を図10A、同1.0kWの結果を図10B、同1.5kWの結果を図10Cに、それぞれ示した。図10A〜10Cの比較から、どの活性化処理条件(マイクロ波パワー)でも、高密度にカーボンナノチューブを形成できたが、活性化処理におけるマイクロ波パワーが小さい方が、カーボンナノチューブの垂直配向性がよいことが判明した。
【0125】
[実施例3]
熱CVD法によるカーボンナノチューブの形成(3):
活性化処理におけるマイクロ波パワーを0.5kWに変更し、Nガスの流量を100mL/min(sccm)、200mL/min(sccm)、400mL/min(sccm)、又は800mL/min(sccm)に変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブの形成を行った。各条件で成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、Nガス流量100mL/min(sccm)の結果(実施例2と同じ)を図10A、同200mL/min(sccm)の結果を図11A、同400mL/min(sccm)の結果を図11Bに、同800mL/min(sccm)の結果を図11Cに、それぞれ示した。図10A及び図11A〜11Cの比較から、どの活性化処理条件(Nガス流量)でも、高密度にカーボンナノチューブを形成できたが、流量100〜800mL/min(sccm)の範囲内では、Nガス流量が大きい方が、カーボンナノチューブの垂直配向性と高密度の形成が安定して行えることが判明した。
【0126】
[実施例4]
熱CVD法によるカーボンナノチューブの形成(4):
活性化処理におけるマイクロ波パワーを0.5kWに変更し、かつ処理時間を3分間、5分間、10分間、又は15分間に変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブの形成を行った。各条件で成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、処理時間3分間の結果を図12A、同5分間の結果を図12B、同10分間の結果を図12Cに、同15分間の結果を図12Dに、それぞれ示した。図12A〜12Dの比較から、どの活性化処理条件(処理時間)でも、高密度にカーボンナノチューブを形成できたが、処理時間3〜15分間の範囲内では、最も処理時間が長い15分間(図12D)において、カーボンナノチューブが長く、成長が進んでいた。これは、活性化処理でTiN層の窒化処理が十分に進み、助触媒としてのTiNが十分に活性化されたためであると推測された。ただし、処理時間が最も短い3分間の場合(図12A)でも、高密度のカーボンナノチューブを形成できたことから、スループットを重視する観点からは、活性化処理の時間は3分間以上であれば十分であると考えられた。
【0127】
[比較例2]
実施例1と同様の構造のウエハWを図1の処理装置100と同様の構成を有する処理装置の処理容器内に搬入し、微粒子化処理は行わず、下記の条件で活性化処理を行った後、熱CVD法によってカーボンナノチューブの成長を試みた。活性化処理とカーボンナノチューブの形成処理は同じ温度で連続して行った。
【0128】
<活性化処理の条件>
処理圧力:133Pa(1Torr)
処理ガス:
NHガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:1kW
処理温度:470℃
処理時間:10分間
【0129】
<カーボンナノチューブ形成条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 30mL/min(sccm)
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃
処理時間:60分間
【0130】
このようにして成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図13に示した。図13より、グラファイトの塊のような、太くて短い形状のカーボンナノチューブの形成が観察されたが、配向性のあるカーボンナノチューブは形成できなかった。
【0131】
[比較例3]
実施例1と同様の構造のウエハWを図1の処理装置100と同様の構成を有する処理装置の処理容器内に搬入し、下記の条件で微粒子化処理及び活性化処理を行った後、熱CVD法によってカーボンナノチューブの成長を試みた。なお、微粒子化処理と活性化処理との間に、ウエハWを一旦ロードロック室に待機させることにより、微粒子化処理の温度Tから活性化処理の温度Tまでの温度変化が240℃/分以上の昇温過程を含むように段階的に行った。また、活性化処理とカーボンナノチューブの形成は同じ温度で連続して行った。
【0132】
<微粒子化処理の条件>
処理圧力:266Pa(2Torr)
処理ガス:
Arガス 100mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:2.0kW
処理温度:350℃
処理時間:10分間
【0133】
<ロードロック室での待機の条件>
待機時間:約30分間
待機温度:100℃(安定時)
【0134】
<活性化処理の条件>
処理圧力:133Pa(1Torr)
処理ガス:
NHガス 100mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:0.5kW
処理温度:470℃
処理時間:10分間
【0135】
<カーボンナノチューブ形成条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 30mL/min(sccm)
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃
処理時間:60分間
【0136】
このようにして成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図14に示した。図14より、活性化処理にアンモニアガスを使用した比較例3では、グラファイトの塊のようなカーボン粒の形成が観察されたが、配向性のあるカーボンナノチューブは形成できなかった。
【0137】
[比較例4]
比較例3において、微粒子化処理にOガス100mL/min(sccm)を添加したこと、微粒子化処理及び活性化処理の時間をともに5分間に変更したこと、及び、熱CVD処理の際に、Nガス200mL/min(sccm)に代えてHガス200mL/min(sccm)を用いた以外は、比較例3と同様の条件でカーボンナノチューブの形成を試みた。その結果を図15に示した。図15より、実施例1(図8)と比べるとカーボンナノチューブの密度が低く、長さも短いことが判明した。その原因として、活性化処理で使用したNHでは、TiN層の還元及び触媒Co微粒子の活性化が不十分であったためと考えられる。
【0138】
[比較例5]
比較例3において、微粒子化処理及び活性化処理の時間をともに5分間に変更したこと、及び、熱CVD処理の際に、Nガス200mL/min(sccm)に代えてHガス200mL/min(sccm)を用いた以外は、比較例3と同様の条件でカーボンナノチューブの形成を試みた。その結果を図16に示した。図16より、実施例1(図8)と比べるとカーボンナノチューブの密度が低く、長さも短いことが判明した。その原因として、活性化処理で使用したNHでは、TiN層の還元及び触媒Co微粒子の活性化が不十分であったためと考えられる。
【0139】
[実施例5]
プラズマCVD法によるカーボンナノチューブの形成(1):
触媒金属層として、2nmのNi層を有する以外は実施例1と同様の構造のウエハWを図1の処理装置100と同様の構成を有する処理装置の処理容器内に搬入し、下記の条件で微粒子化処理及び活性化処理を行った後、プラズマCVD法によってカーボンナノチューブを成長させた。なお、微粒子化処理と活性化処理との間に、ウエハWを一旦ロードロック室に待機させることにより、微粒子化処理の温度Tから活性化処理の温度Tまでの温度変化が240℃/分以上の昇温過程を含むように段階的に行った。また、活性化処理とカーボンナノチューブの形成は同じ温度で連続して行った。
【0140】
<微粒子化処理の条件>
処理圧力:266Pa(2Torr)
処理ガス:
Arガス 100mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:2.0kW
処理温度:350℃
処理時間:5分間
【0141】
<ロードロック室での待機の条件>
待機時間:約30分間
待機温度:100℃(安定時)
【0142】
<活性化処理の条件>
処理圧力:133Pa(1Torr)
処理ガス:
ガス 462mL/min(sccm)
ガス 100mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:0.5kW
処理温度:470℃
処理時間:5分間
【0143】
<カーボンナノチューブ形成条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 6.3mL/min(sccm)
ガス 370mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:0.5kW
処理温度:470℃
処理時間:30分間
【0144】
このようにして成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図17A,図17Bに示した。なお、図17Bは図17Aの一部分を拡大したものである。図17A,図17Bより、カーボンナノチューブは、略垂直に近い状態で配向し、かつ非常に高密度に形成されていることが確認された。これは触媒の活性化比率が高いためであると考えられた。
【0145】
[比較例6]
実施例1と同様の構造のウエハWを図1の処理装置100と同様の構成を有する処理装置の処理容器内に搬入し、微粒子化処理は行わず、下記の条件で、活性化処理を行った後プラズマCVD法によってカーボンナノチューブの成長を試みた。なお、活性化処理とカーボンナノチューブの形成処理の間にNガスによりパージ処理を行った。
【0146】
<活性化処理の条件>
処理圧力:66.7Pa(0.5Torr)
処理ガス:
ガス 462mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:1kW
処理温度:470℃
処理時間:5分間
【0147】
<パージ処理の条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 200mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
処理温度:470℃
処理時間:2分間
【0148】
<カーボンナノチューブ形成条件>
処理圧力:400Pa(3Torr)
処理ガス:
ガス 6.3mL/min(sccm)
ガス 370mL/min(sccm)
Arガス 450mL/min(sccm)
マイクロ波パワー:0.5kW
処理温度:470℃
処理時間:30分間
【0149】
このようにして成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図18A,図18Bに示した。なお、図18Bは図18Aの一部分を拡大したものである。図18A,図18Bより、カーボンナノチューブの形成が観察されたが、上記実施例5(図17A,図17B)と比べると、配向性、密度、長さともに劣っていた。
【0150】
[参考例]
触媒金属種の検討(プラズマCVD法):
触媒金属層として、2nmのNi層又は2.3nmのCo層を有する以外は、実施例1と同様の構造のウエハWを用いた。このウエハWを実施例5と同様の条件で処理してプラズマCVD法によってカーボンナノチューブを成長させた。このようにして成長させたカーボンナノチューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した結果を図19A,19B及び図20A,20Bに示した。図19Aは、触媒金属層として2nmのNi層を使用した場合の結果であり、図19Bは、図19Aの一部分を拡大したものである。図20Aは、触媒金属層として2.3nmのCo層を使用した場合の結果であり、図20Bは、図20Aの一部分を拡大したものである。図19A,19Bと図20A,20Bとの比較より、2nmのNi層を触媒金属層とした方が、2.3nmのCo層を触媒金属層とした場合より、カーボンナノチューブが長く、成長が進んでいた。しかし、図19Bと図20Bの比較より、2nmのNi層を触媒金属層とした場合より、2.3nmのCo層を触媒金属層とした方が、カーボンナノチューブの垂直配向性が高く、密度も高いことが判明した。
【0151】
以上の実験結果から、マイクロ波プラズマを生成可能な処理装置100を用いて、微粒子化処理を行い、さらにHガスとNガスの混合ガスのプラズマにより活性化処理を行うことにより、熱CVD法、プラズマCVD法のいずれの方法でも略垂直に配向したカーボンナノチューブを高密度に形成できることが確認された。このように、本実施の形態の前処理方法によれば、触媒金属微粒子を、水素含有ガスと窒素ガスとの混合ガスのプラズマにより活性化する工程を含むことにより、触媒の活性化比率を高めることができる。そして、この前処理方法を含む本実施の形態のカーボンナノチューブの形成方法によれば、被処理体である基板の表面に高密度のカーボンナノチューブを形成できる。
【0152】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態においては、微粒子化処理及び活性化処理をRLSAマイクロ波プラズマ方式のプラズマ処理装置で行った例を示したが、他のマイクロ波プラズマ方式を用いてもよいし、マイクロ波プラズマに限らず、例えば、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ等の他の方式のプラズマを用いてもよい。
【符号の説明】
【0153】
1…処理容器、3…ステージ、5…マイクロ波導入部、7…ガス供給部、11…排気部、13…制御部、100…処理装置、W…半導体ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体上に形成された触媒金属微粒子の上にCVD法によってカーボンナノチューブを成長させる前に行う前処理方法であって、
表面に、触媒金属層を有する被処理体を準備する工程と、
前記触媒金属層にプラズマを作用させて触媒金属を微粒子化して触媒金属微粒子を形成する第1のプラズマ処理工程と、
前記触媒金属微粒子に、水素含有ガスと窒素ガスとを含有する混合ガスのプラズマを作用させて前記触媒金属微粒子を活性化させる第2のプラズマ処理工程と、
を備えていることを特徴とする前処理方法。
【請求項2】
前記被処理体は、前記触媒金属層の下に、窒化物からなる助触媒層を備えている請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
前記助触媒層が、TiN、TaN、SiN及びAlNからなる群より選ばれる窒化物から構成されている請求項2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記第1のプラズマ処理工程の処理温度がTであり、前記第2のプラズマ処理工程の処理温度Tが、前記温度Tより高い請求項1から3のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項5】
前記温度Tが100℃〜450℃の範囲内であり、前記温度Tが100℃〜550℃の範囲内である請求項4に記載の前処理方法。
【請求項6】
前記温度Tと前記温度Tとの温度差(T−T)が50℃以上である請求項5に記載の前処理方法。
【請求項7】
前記温度Tから前記温度Tまでの温度変化の過程で、少なくとも100℃/分以上の昇温速度による加熱区間を有している請求項4から6のいずれか1項に記載の前処理方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の前処理方法により前処理を行う工程と、
前記活性化された触媒金属微粒子の上にCVD法によりカーボンナノチューブを成長させる工程と、
を備えているカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項9】
前記第2のプラズマ処理工程と、前記カーボンナノチューブを成長させる工程を、同一の処理容器内で連続的に行う請求項8に記載のカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブを成長させる工程を、熱CVD法により行う請求項8又は9に記載のカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項11】
前記熱CVD法による処理温度が、300℃〜550℃の範囲内である請求項10に記載のカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブを成長させる工程を、プラズマCVD法により行う請求項8又は9に記載のカーボンナノチューブの形成方法。
【請求項13】
前記プラズマCVD法による処理温度が、100℃〜550℃の範囲内である請求項12に記載のカーボンナノチューブの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【公開番号】特開2013−27843(P2013−27843A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167246(P2011−167246)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省産業技術研究開発委託費「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】